株式会社 資本市場研究所きずな
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   →ディスクロージャー制度
      ・ディスクロージャー制度の見直しについて(金融審議会)(3月27日)
      ・日本市場におけるディスクロージャー制度を易しく考える(4月19日)
      ・投資家からみたディスクロージャーの目的と、その体系について (8月20日)
      ・ディスクロージャーに関する問題の現状(7月10日)
      ・海外企業を日本に呼び込んで、アジアのメイン・マーケットを目指そう (11月8日)
      ・企業側から見たディスクロージャー制度の問題 (3月30日
      ・大量保有報告書から見えるもの-その2 (2月25日)
      ・大量保有報告書から見えるもの-その1 (2月24日)
      ・四半期開示に対する利用者側の視点 (11月10日)
      ・投資家目線の開示制度 (10月6日)
      ・少し分からない事・ディスクロージャーの方向性 (8月13日)
      ディスクロージャー制度-投信の場合 (8月6日)
      ・
発行登録制度の利用促進を (4月21日)

   →取引所・業界
      ・重要な企業情報は、どう伝えられるか (4月18日)
      ・ディスクロージャーの充実は基本なのですが、・・・(5月10日)
      ・取引所決算からみえる上半期の証券業界模様 (11月4日)
      ・再び、業界のインサイダー取引について (2月10日)
      ・業界に於ける取引関連情報の取扱いに関して (10月23日)
      ・証券会社の風景 (10月2日)
      ・投資銀行について(9月11日)
      ・金融教育の3つの流れについて (8月21日)
      ・期待される取引所:東証 (7月1日)
      ・市場仲介者としての証券会社の取組み (6月19日)
      ・インサーダー取引=業界の対応 (5月27日)

   →企業の対応
      ・ファイナンス評価とディスクロージャー判断(9月26日)
      ・投資家が企業に望むこと (3月19日)
      ・今こそ、タイムリー・ディスクロージャーの徹底をお願いします (3月22日)
      ・経済界が期待する日本の金融・資本市場のあり方 (1月12日)
      ・公開企業のトップは自社株価に対するコメントを (12月13日)
      ・業績予想について (8月26日)
      ・上場企業の増資に求められるディスクロージャー (4月16日)
      ・企業におけるインサイダー情報 (4月9日)
      ・ディスクロージャーを考える:ファイナンスの場合 (2月2日)
      ・企業のIR活動に対して、業界は(8月10日)
      ・
虚偽記載事例について (7月10日)
      ・経済界の要望―金融関連 (6月17日)

   →ディスクロージャー一般
      ・ディスクロージャーに関する現状の問題=先ず投資家にとって重要なこと (4月25日)
      ・東日本大震災に対する情報対応について (3月15日)
      ・ディスクロージャーの難しさとIRビジネスへの期待 (2月28日)
      ・資本市場における情報提供のあり方 (6月17日)
      ・銀行の国債等保有について (1月14日)
      ・タンス株の行方 (5月25日)
      ・株主総会へ向けて (5月18日)
      ・新年度のディスクロージャー (4月3日)

   →企業再生・日本復興
       ・今、出来ること・・・市場から (4月9日)
       ・復興提案の概況について (4月6日)
       ・“100%減資”への代替案(私案) (1月13日)
       ・
100%減資という企業再生手法 (1月12日)

ディスクロージャー制度の見直しについて(金融審議会)(3月27日)
 投資家が自ら上場企業に関する情報を取得しようとした場合、ディスクロージャー制度に頼ることとなりますが、その目的に合わせて、次の3つの制度に分かれています。

◇決算短信など取引所規則による開示=重要な情報を、投資家に対して迅速かつ公平に提供すること
◇事業報告・計算書類など会社法による開示=株主・債権者に対して情報を提供すること
◇有価証券報告書など金融商品取引法による開示=投資家の投資判断に、必要かつ重要な情報を提供すること

 これらのディスクロージャー制度に関して、“投資家が必要とする情報を、効果的かつ効率的に提供するための 情報開示のあり方等について幅広く検討を行うこと。 ”との金融担当大臣から諮問が行われ、昨年11月から金融審議会ディスクロージャー委員会において、開示制度改革への検討が進められています。その方向性は次の様なものです。

☆ 各開示書類比較

○上記3つの開示方法の、開示内容についての整理、共通化、合理化=決算短信は速報性が求められているので、公表前の監査は不要であることを明確にする。また、速報性がそれほど求められていない経営方針などは、有価証券報告書での記載とし、その他で記載を要請する項目を可能な限り減らす。事業報告では、必ずしも経団連様式のひな形に従う必要がなく、有価証券報告書と同一の記載が可能なことを明確化する。また、有価証券報告書においては、関連する情報が分散して分かりにくいとの指摘に配慮して、体系だった開示のための整理・合理化を行う。株主の状況や新株予約権についての、事業報告と有価証券報告書それぞれの記載基準を併記したり共通化する。

○開示の日程・手続きに応じた選択肢の拡大=十分な監査時間確保の為などで株主総会を7月(3月決算期会社)にした場合、有価証券報告書と事業報告の記載共通項目の記載時点を共通化(例えば、議決権行使基準日)することの検討や、株主の事前同意なしに事業報告・計算書類等の電子開示を可能とすることを検討する。

○非財務情報の開示の充実=現在は任意で行われている非財務情報(業績に重要な影響がある場合、開示を求められてという構成)の開示について、企業のコーポレートガバナンス強化や社会問題及び環境問題への関心の高まりにより、ESG情報をはじめとするこれらの情報開示の充実が求められている。義務化にあたっては、次の4点が考慮されている。
-投資家の投資判断に真に必要な情報であるか
-当該情報が証券市場において浸透し、投資家に誤解なく利用できるものとなっているか
―開示を求めることにより企業が負担するコスト、投資家等による情報の獲得と評価のために負担するコストなど、市場全体のコストが過大とならないか
―他の法律により開示が要求されているか

○フェア・ディスクロージャー・ルール(選択的開示の禁止)=上場企業が、重要かつ未公表の内部情報を、第三者に選択的に開示することを禁止するルールの導入を検討する。(例えば、特定のアナリストや報道機関などに、公表前に情報を提供することも禁止へ)

 経済界の一部には、四半期開示や内部統制報告などの金商法開示、コーポレートガバナンス・コード導入による取引開示での充実などで開示コストが増加することへの懸念が強まっている一方、投資家側でも、機関投資家・海外投資家・個人投資家がそれぞれ公正にかつ効率的に情報を入手したいとのニーズは強いものがあります。
これらディスクロージャー制度の見直し議論の中で、開示制度改革が進むことに期待したいと考えます


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日本市場におけるディスクロージャー制度を易しく考える(4月19日)
昨年のスチュワードシップ・コード、そして今年のコーポレートガバナンス・コードと、日本市場の仕組みを基本的に改善していこうという動きが続いているのは、内外の機関投資家・市場関係者からとても評価されています。
 これらの市場改革を受けて、企業側も自社の考えや取組みを投資家・株主に伝えていく事が必要になりますが、改めて日本市場のディスクロージャー(情報開示)制度について、その概要を投資家視点から見直してみました。

 先ず、日本市場の上場企業は次の3つの開示制度に対応する必要があります。

◆金融商品取引法上の企業内容開示(※上場企業が提出する義務があるもの)
・有価証券報告書制度=企業の情報、事業の内容、財務状況など法令で定められた内容を記載したものを監査法人の監査を受けた上で財務局に提出します。内容は決算期ごとに更新されていきますが、その中の財務情報など主要な情報は四半期ごとに報告する必要があります。また、会社経営に大きな影響(M&Aや海外市場でのファイナンスなど)があるものは、臨時報告書で対応します。
なお、報告書の記載内容は開示府令の改定で毎年のように強化・改正されていますが、今年度から新たに開示を求められるのは以下のものです。
○女性の役員比率及び人数
○退職給付債務及び年金資産の記載内容の詳細化
・有価証券届出書=株式や社債を発行する時に、その内容を財務局に届け出る必要があります。上場企業の場合は、既に企業内容は上記有価証券報告書制度で届けられているので、その内容を組み込んだり参照したりします。株式や社債を実際に募集する時はこの有価証券届出書を基に目論見書を作成し、金融商品取引業者が勧誘する時に利用します。
・内部統制報告書=米国のエンロンやワールドコムなどの不正を契機に米国で導入されたSOX法を参考にしたもので、内部統制の整備状況や有効性を評価した内部統制報告書を経営者が作成し、公認会計士等がそれを監査する、二重責任制度で2008年4月以降導入されています。但し、企業側の負担が重いということで、昨年の金融商品取引法改正において、新規公開の一部新興企業はその作成が免除されるように緩和されています。
・自己株券買付状況報告書=上場企業が決定した自社株の取得決議内容や、その取得状況、処分(消却)及び保有(金庫株)の状況について、財務局に毎月報告する義務があります。

◆取引所規則による適時開示=上場規則により、上場企業は投資家の投資判断に影響を及ぼす可能性のある以下の内容について、決議・発生した場合にタイムリーに公表する必要があります。
・決算情報(決算内容に関する他、配当の変更に関するものも含む)
・会社が取締役会等で決定するもので、重要事実(金融商品取引法に定めるもの)及び取引所別途定めるもの
・災害や事故・訴訟などは発生した事実で取引所が定めるもの
・その他、上記各内容で主要なグループ会社に関係する事実

◆会社法による事業報告=株主に対して、会社の事業の状況(非財務情報)を報告するものです。会社法上の計算書類(貸借対照表、損益計算書)とは別途作成され、併せて株主に送付されますが、この部分は会計監査の対象外です。

以上の3つの開示制度以外に、企業が独自に行うIR(Investor Relations)活動があり、これは企業の状況をより詳細に投資家に伝えるとともに、上記の開示制度では伝え難い業績見通しや事業戦略を説明するために利用されています。

 ディスクロージャー制度については、今後も経済環境や市場の変化に合わせて改善・強化されていくと思いますが、むしろ課題としては伝え方の問題がある様に思われます。例えば、金融商品取引法の開示制度はEDINET(Electronic Disclosure for Investors’NETwork)、取引所の開示制度はTDNet(Timely Disclosure network)、其々で閲覧することが可能ですが、現状では一般投資家向けには1年以内の情報に限られています。また、海外投資家向けの英文開示対応を行っている企業も限られています。

 せっかく上場企業改革を行う機運が高まっているのですから、ディスクロージャー制度も個人投資家・海外投資家を含めて多様な投資家がアクセスし易い情報提供制度が、今後充実していくことに期待しています。
 
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重要な企業情報は、どう伝えられるか (4月18日)
 取引所では、上場している企業の決算関係情報、決定情報(M&Aやファイナンスなど)、発生情報(事故や事業環境などの突然の変化)について、投資家の投資判断に大きな影響を及ぼすものは、直ぐに公表して下さいという適時開示ルールがあります。また、実際の情報公開を支える適時開示情報伝達システム(TDネット)では、公開されている全ての企業(グリーンシートやプロ向け市場まで含む)の公表した情報について、インターネット上で誰でも過去1ヵ月分まで無料で見ることが出来ます。(過去5年分までは有料で閲覧可能です。)
 問題は、企業が公表していないけれども、M&Aや新株発行などのファイナンス・上場廃止となる可能性のある事情などが、マスコミで報じられたり市場で大きな噂となったような場合です。これに関して、東証は投資家全体に注意喚起を行う制度をこの5月より強化します。
 具体的には、“注意喚起”銘柄に指定し、企業側からの情報開示などで事実関係が明らかになるまで、信用取引残高を日々公表したりして投資家の注意喚起により実効性を持たせます。

☆ 東証の“注意喚起”制度

 一方、上場企業に関する重要な情報開示で、その情報が投資家間に浸透するまで、当該銘柄の売買を一時的に停止することも行われていますが、以下の様にその停止時間が順次短縮されています。
≪企業が重要な情報を公開した場合≫
・~1998年7月まで=終日売買停止
・~1999年12月=発表後、60分間
・~2004年2月=発表後、30分間
・~2011年2月~今まで=発表後、15分間
(※なお、上場廃止が決定された場合は、当日は終日売買停止⇒その後、監理銘柄として1ヵ月間の整理売買)

最近、米議会などで行われたHFT(高頻度取引)の批判の一つに、会社の重要情報を素早く入手して、一般の投資家が売買する前に売買を発注するようなケースがあるのではないかとの指摘が挙げられています。
確かに、HFTでは超高速で売買する為にアルゴリズム(プログラム)を組み、短期間で裁定取引を行うこともあります。また、企業なの情報公開に反応するイベント反応型の投資戦略も、大量に売買を行うヘッジファンドやプロップ・ハウスの得意とするものです。加えて、公開される企業の重要情報も、TDネットで公表する為にデータ化しやすくなっています。(現状では、決算情報(財務情報)までが超高速で情報を伝達することが可能なXBRL対応しており、その他の企業情報もXBRL化での情報公開を目指しています。)

 超高速で情報が伝達され、プログラムで売買される事は、金融イノベーションの一つでしょうが、その情報が売買や注文情報なの市場情報ではなく、上場企業の重要情報となる場合、その情報が浸透する時間と迅速な売買を可能とすることに関してトータル的な議論が必要ではないでしょうか。
(売買制度改革において、HFTの利点とリスク双方を含んだ市場関係者間の議論を待っています。)

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ファイナンス評価とディスクロージャー判断(9月26日)
 株式市場に上場する企業が、大きな変化を起こす時、株価も大きく動くのは当たり前ですが、その大きな変化の契機の一つとしてファイナンスがあります。

 新たに資本を調達して、事業の為の投資を行い、企業価値を上げるのですから、本来のファイナンスは買い材料であるはずです。しかし、それぞれの企業には諸々の事情があり、ファイナンスを実施しても投資の効果が分かり難かったり、逆に大幅な希薄化で1株当たりの企業価値を下げる場合もあります。このファイナンスについて、株主や投資家が買い材料なのか売り材料であるかを判断するには、上場企業のディスクロージャー資料に頼る訳ですが、ファイナンス時に注目すべき点を書き出してみました。

【ファイナンスの資金使途】
○基本的には、ファイナンスで調達した資金による投資効果が、分かりやすく記載されるべきです。
●しかし、多少厄介なことはお金に色がついていないため、実質的な借入金返済や優先株式の返済に回される場合もあります。これはこれで企業の財務基盤を強化するのに役立ちますが、ファイナンスによって起こる希薄化以上に効果を上げるかが問題です。
●更に、投資する事業や設備などが企業にとって元々計画されていたもので、株価に既に織り込んでいる場合、わざわざファイナンスの資金使途とすべきかどうかといったケースもあります。
○また、M&Aの資金とした場合、具体的な未公表の買収案件を抱えてファイナンスすることは難しいので、M&Aの実行は将来的な話になります。その為、具体的な効果はファイナンス時には推測しにく
いのですが、既に事業計画などが公表されていれば方向性や目標が分かるので投資家・株主が判断しやすくなります。

≪資金使途の効果を投資家が判断しやすいように誰がサポートするか≫

-公募ファイナンスの場合
・引受主幹事証券会社の引受審査の過程で、資金使途について効果を推測する為のチェックが行われます。しかし、そのチェック内容は一般の投資家には公表されませんし、公募株などの販売時にも利用される訳ではありません。よって、一般投資家には○○証券が主幹事で資金使途を審査しているはずだというレピュテーションのみに頼ることになります。

-第三者割当の場合
・引受け手が判断しますが、一般投資家は引受け手のネームなどから推測することになります。事業に絡んだ資本提携ならその効果は推測しやすいのですが、引受け手が投資会社などの場合、資金使途の効果は分かり難いものです。まして、新株予約権を割当てるようなケースが、資金調達の確立性を判断できません。

-その他、ライツ・オファリングなどの場合
・主幹事証券会社も第三者の引受け手もいないので、企業のファイナンス公表時の説明に頼るしかありません。ただし、他のファイナンスに比べ企業が大規模な資金調達を行うことで大きな変化をする可能性が高いと見られますので、資金使途の重要性は増しています。

【ファイナンス時のディスクロージャー制度】
・記者発表文=取引所の適時開示制度で、株価に影響の大きなファイナンスを取締役会決議した時、速やかに公表する制度ですが、資金使途の効果を含む記載内容は基本的に企業の責任において行われます。ただし、実務的には新株式を追加で上場する為、取引所側の事前のチェックが行われています。また、公募ファイナンスの場合、主幹事証券の記載内容に関する助言(指導)が行われます。

・有価証券届出書(目論見書)=法定開示資料なので、決定内容として資金使途までは記載することが可能ですが、その効果は計画であって事実ではないので記載できません。

※幹事証券会社が、投資家に勧誘するのは目論見書の利用のみですが、投資家が資金使途の効果をより知りたいと思った時、利用できそうなのが、適時開示で公表された記者発表文です。ただし、記者発表文は新株式などの勧誘活動には利用できません。

【アナリストの判断について】
 ファイナンスは企業にとっての一大イベントなので、カバーするアナリストとしてはファイナンス評価を行うことは当然です。例えば、機関投資家からこのファイナンスは買いか売りか問われた場合、今までの投資や事業計画からどの位企業価値が向上しそうかコメントすべきです。
 しかし、所属する証券会社がファイナンスの幹事証券の場合、勧誘活動は目論見書のみで行われる為、投資判断に影響するコメントをアナリストは停止しています。

ここまで長々と書きましたが、どの様なファイナンスであっても、その資金使途効果を判断することは重要なので、一般投資家も利用可能な開示内容の充実やファイナンス評価を、そろそろ議論すべき時ではないでしょうか。
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投資家からみたディスクロージャーの目的と、その体系について (8月20日)
ディスクロージャー(企業による情報公開)の目的を簡単に言いますと、投資判断に影響を及ぼす情報をすぐ株主・投資家に伝えるということです。
 しかし、実務的に対応する為にルール化が必要になるので、ディスクロージャーは、主に以下の3つに分けられています。
① 法定開示=金融商品取引法に定められた開示ルールによります。企業や大量に売買を行うものが届出書・報告書等を国(内閣総理大臣宛て)に提出し、投資家は、金融庁が運営するEDINETで閲覧することが出来ます。
② 適時開示=取引所ルールに定められた開示で、決算情報・決定情報・発生情報に分かれて開示基準が整理されています。投資家は東証が運営するTDnetで閲覧(決算情報は過去5年間、その他は過去1年分)することが可能です。
③ 企業が自主的に行う情報発信=IRとしては、決算説明会や会社説明会、中期経営計画など事業戦略の公表があります。また、自社製品の開発や事業のPRを行うこともあります。
これらのディスクロージャーの体系を以下に纏めました。

ディスクロージャーの目的と、その体系

投資家の目的に沿って、これらのディスクロージャー情報が効率的に入手できることが望ましいのですが、東証では、発行会社に関する上記の情報を企業ごとに纏めて検索できる情報プラットフォームを7月より強化しています。 ≪東証上場会社情報サービス≫

なお、罰則に関しては①は、金商法ルールなので刑事罰や課徴金、②は、上場規則違反なので最悪の場合は上場廃止、③は、企業が自主的に行うものなので民事訴訟以外はありません。
ただし、投資家にとっていずれも企業に関した情報であることは変わりませんので、企業側の負担とディスクロージャー内容充実のバランスを取ったディスクロージャー改善議論が、いつも必要だと考えます。

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ディスクロージャーの充実は基本なのですが、・・・(5月10日)
 証券会社は、業法によって3月末決算なので、この時期、筆者は約30社程度の決算短信や決算説明資料を読み込みます。これは、一応リテール証券会社の決算動向分析を依頼されているからですが、このことで、いつも軽い失望を覚えます。

 それは、決算説明資料などを見ても、例えば業界の中でどの様に勝ち上がっていくかという強いメッセージを感じることが、年々少なくなっているように思えるからです。永年、上場企業のディスクロージャーやIR活動を支援してきた筆者の経験から言いますと、勢いのある企業はディスクロージャーも積極的ですし、またその内容も充実しているものです。個人も企業も、良い情報を伝えたくなるのは当然ですが、問題は、何を重視していてどの様な変化が起きているか、持続的に情報を提供することだと考えます。

 このことで最も一般的な情報提供は、業績予想ですが、残念ながら証券業界の決算短信では、バブル崩壊後はこの業績予想が公表されません。理由は、各社とも市況などの変動要因が大きいのでディスクロージャーの対象から外すということですが、本年上場し直した日本取引所グループでは業績予想を公表し始めました。いろいろ各社ごとに難しい問題もあるかも知れませんが、投資家に市況予想を語り、上場会社には積極開示を求める証券会社なのですから、自らの業績予想も積極的にその戦略とともに述べて欲しいいものです。

 また、リテール証券およびリテール部門をもつ証券会社は、個人投資家向けに決算説明資料を作成すべきです。これらの資料は、その証券会社の年次の経営計画や中期経営計画がベースになります。簡単にプロセスを説明しますと、

・企画部門での事業計画(新しい年度の予算とその根拠の作成)⇒経営会議での同計画の承認⇒関係各部署(マネージャークラス)への説明⇒決算説明資料等への記載・公表

つまり、逆算しますと決算説明資料で強いメッセージが示されたことは、事業計画で重点が置かれているということになります。

 投資家サイドの視点でみますと、業界内の競争に勝つ戦略は、この決算説明資料が最も身近のものとなります。(決算短信での記載でも良いのですが、現状の証券会社の決算短信は記載事項が定型化していて、他社と異なる事業戦略を記載しにくいのではないかと思われます。)

決算説明資料公開は、上場リテール証券のうち三分の1程度ですが、先ず自らのディスクロージャー充実をもって、投資家と他の上場会社に範を示して欲しいものです。
(※最近のリテール証券及びリテール証券業務におけるディスクロージャー悪化は、銀行系列の統合や系列強化の影響、リテール証券を含めた事業グループ化の中での相対的地位の低下、などが影響している部分もあります。)
 
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ディスクロージャーに関する問題の現状(7月10日)
 上場した企業と投資家のあいだを繋ぐ絆は、企業が提供する情報開示=ディスクロージャーですが、この上場企業のディスクロージャーに関する問題の現状について、簡単に纏めてみました。

☆ディスクロージャー制度に関する問題の現状

上記のイメージ図の様に4つの面から見てみますが、

【投資家の信頼】
最近のオリンパスや大王製紙の問題から、関係した監査法人が行政処分されています。虚偽記載を見破れなかったという事ですが、恐れなく言うと、この虚偽記載問題は常にあると思います。約3700社の上場企業がある訳ですから、様々な業態があり、監査精度を上げていくのは監査法人そのものの問題だと思います。(厳格化された監査が良いという訳ではありません)
一方、最近は多少ブーム(書店などの取り扱い)が去ったようですが、IFRSの完全導入(全上場会社に対する)は少し遠のいたように思われます。それは、主要国間の会計制度がかなり共通化されてきたのと、現在のIFRSの議論が相当技術的になっていること、更に欧州債務問題が影を落としているのではないでしょうか。

【企業の負担】
上場会社のディスクロージャー負担は、ある中堅の上場企業の担当者の方に伺いましたところ1億円前後という事でした。勿論、この中には監査法人に支払う費用が相当分を占めています。また、法定の開示書類が増えていますので、事務負担も重くなっています。米国で5月に承認されたJobs Actでは、中堅企業の開示負担を軽減させようといった考え方が取り入れられています。

【情報提供】
基本は、投資家の求める情報の提供ですが、取引所の開示ルールでは業績予想情報の提供が上場会社に求められています。例えば、証券会社の様な市況に大きく左右される業態は、この業績予想を公表しませんが、製造業とは違った業績予想情報などがあっても良いのではないでようか。
また、中期的な企業の変化を予想する為、中期経営計画などの情報が有効です。実際は、上場企業の半分以下しか中期経営計画の開示を行っていませんが、この事業計画などからM&Aの方向性やファイナンスの可能性など推測できる可能性もあります。

【情報管理】
自社の重要事実(株価にインパクトのある情報=インサイダー情報)を管理するのは当然のことですが、最近は取引先などの上場企業の重要事実に触れる時の対応も求められるようになっています。その為、日本証券業協会では、上場会社の役員情報を証券会社間で共有することでインサイダー取引を防止しようとするシステムJ-IRISS(Japan-Insider Registration & Identification Support System)を運営しています。現状は約6割の上場企業が参加していますが、ファイナンスやM&Aなど情報に関与する証券会社など外部の関係者にも対応すべきというのが筆者の考えです。

これと、今問題になっている増資インサイダーで、証券会社として特定顧客へのインサイダー情報提供は、別の問題です。
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投資家が企業に望むこと (3月19日)
 勿論リスクを負う投資家は、そのリスクに見合った企業の成長を期待するだろうが、大切なことはその判断をし易いように企業から情報提供がされているかどうかだ。だからディスクロージャーの充実や適時開示(この言葉は、本来取引所用語だが、良いニュースも悪い出来事も素早く情報提供すること)の強化が投資家からは常に求められている。では、具体的にどの様な事に投資家が注目しているか。

 機関投資家の中核である団体である生命保険協会は、上場企業や機関投資家への調査を通じて以下の要望を取り纏めている。(以下の文節の数字は、平成23年度生命保険協会調査“株主価値向上向けた取り組みについて”より)

【経営目標の設定・公表】
8割以上の機関投資家は、企業の経営ビションを把握する為に中期経営計画の公表を求めている。これに対して、実際に公表している企業は7割強となるが、その中で最も投資家に重視されるのはROEだ。
8割以上の機関投資家が重視するROEは自己資本に対する純利益率だが、日本企業の6.0%に対して米国企業の15.1%とまだまた差は大きい。
また、最近の市況回復により今年は再び公募増資などファイナンスが増加することが予想されるが、一方では昨年上半期ベースで上場企業の内部留保額が167兆円過去最高水準(リーマンショック前の2007年の163兆円を超え)となっている。投資家としてはある程度経営計画の中に資本政策への考え方などを示すべきとしている。

【株主還元方針の公表・説明の一層の充実】
9割近い投資家が還元策の公表を求めているが、実際に配当性向や総還元性向(自社株取得も含めた指数)などの数値基準を公表しているのは3割程度の企業となる。また、9割の機関投資家の投資スタンスは配当を重視したものだ。なお、日本企業の配当性向は年々上昇する傾向にあり2010年度のそれは約30%と米国企業に等しくなっている。ただ自社株取得に関しては、約8割の投資家がもっと積極的に実施すべきとしている。

【コーポレート・ガバナンスの充実】
先ず企業も投資家も、大多数が対話の充実を上げているが、問題はどの様な方法で行うかだ。投資家側は、経営方針が分かるような開示や説明会の開催など求めるのが中心だが、企業側は多様なIR方法などによって充実しようとしており、少し双方の方向性が合っていないかもしれない。投資家が求める内容としては、その他には危機管理(法令違反・情報漏えい・自然災害対応など)や株式総会での議決権行使の利便性向上などを上げている。

 個人投資家に関しては、野村インベスター・リレーションズが昨年11月に公表した個人投資家モニターアンケート調査があるが、それによると企業に期待するIR情報は、業績見通しが最も多く、全体の72.5%が求めているが、以下は次の様になっている。
・配当政策    ・・・44.0%
・強み、競争優位性・・・42.8%
・事業内容    ・・・・38.7%
・株主優待情報   ・・・38.7%

機関投資家も個人も、自らがその企業の成長力を理解する為の事業戦略と利益還元策に関する経営トップの考え方を重要視している。
少し私見を述べるなら、経営者が市場を通して株主や投資家にどう向き合うか求められており、その為に自社の株価水準をどの様に考え、資本政策に関する考え方をある程度示すこともまた必要だろう。
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ディスクロージャーに関する現状の問題=先ず投資家にとって重要なこと (4月25日)
 ディスクロージャー(上場企業による情報開示)の問題は、その目的に関しては誰しも異論がないが、どの情報を何処までという事に関しては、其々の立場で異なることがある。勿論、ディスクロージャーを行うのは企業側なのだから、コストを負ってまで行うディスクロージャーの効果については、厳格に考えたくなるのは理解できる。しかし、永年上場企業のディスクロージャーに関して相談を受けていた者として、はっきり言えば、企業の内容が悪化し始めると、大体ディスロージャーに関する取組みも劣化する。
以下、ディスクロージャーに関する問題の現状について、以下のように投資家目線で纏めてみた。

【業績予想について】
 最低限これだけは、ちゃんとお願いしたい。大震災の影響や電力問題で、確かに3.11以前とは事業計画の大幅な変更を余儀なくされている企業は多いだろう。しかし、決算発表時に間に合わなくとも、企業は常に事業計画を追い続けるはずだし、利益計画は随時修正しながら事業を営んでいるはずなのだから、企業が今期の業績予想を行うのは当然のことだ。問題は、それを株主や投資家に向けて公表することだ。
 株主や投資家にとって、最も興味があることは、その企業の将来価値であり、その判断に業績予想は欠かせない。アナリストや四季報の記者が予想するのも、確かに業績予想だろうが、アナリストがカバーする銘柄数は多く見積もって5~600銘柄と全上場銘柄の2割にも満たないし、四季報は予想数字の根拠まで教えてくれない。上場企業が、自らの業績予想を公表することは市場に対する最低減の義務なのだが、市況の変動などを理由に、業績予想を公表しない証券関連業務の上場会社があること自体が残念だ。
 
 なお、年間の業績予想は通常前期の決算発表時(取引所の開示制度である決算短信)に行われるが、今回の様に大震災の影響が時期的に確定しなかったり、主要な取引先と交渉中などの場合は、その後の適時開示でも次善の対応となる。ちなみに昨年度の新日鉄は、前期決算発表時には需要家との間で主原料価格の大幅上昇等を踏まえた鋼材の価格改定につき交渉中であること、また今年度以降の主原料価格、値決め方法等につき各サプライヤーと交渉中であること等から、前期決算発表時に業績予想を公表していなかったが、その後の第一四半期の決算発表時に、改めて市況環境を説明した上で、当事業年度の業績予想を公表している。

【事業戦略に関して】
 業績予想と同じく将来の企業価値を推し量る為に重要なのが企業の事業戦略だが、会社説明会などで経営者が中期経営計画を語るのが一般的だろう。勿論、社内で使われる中期経営計画と株主・投資家向けの資料が異なっても構わないが、経営者が何を目指していて、それがどこまで実行されているか一般の株主や投資家が知るためIR(インベスター・リレーションズ)として、各上場企業が取り組む必要があると考える。

 繰り返しになるが、株主や投資家にとって最も重要なことは企業の将来価値であり、その判断が投資行動に繋がるのだから、上記の2つは投資家にとって最も重要なディスクロージャー要素となっている。
しかし、業績予想は取引所の適時開示ルールの中で、罰則のない開示項目だし、事業戦略は企業の自発的なIR活動に頼らざるを得ない。一般の投資家にとって、企業の将来価値を専門家であるアナリストが分析してくれるのは好ましいいことだが、アナリスト・カバーは相当にコストがかかる話で、現状2割未満のものを10割近くまでもっていくのは不可能だ。それより、取引所ルールなどで企業からの情報提供を促す方が、投資家にとっての実効性のあるディスクロージャーとして現実味がある

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今、出来ること・・・市場から (4月9日)
大震災から日本の経済も生活も、そして市場の環境も大きく変わったが、今、個人も企業も何が出来るか考えさせられるような毎日が続いている。その個人や企業の小さな積み重ねが、大きな復興ビションの礎になること信じている。

 東証は4月6日、システム開発に係るプライマリー・ベンダー選定の入札において、プライマリー・ベンダーが被災地域の企業を外部委託先として活用しているかどうかを評価項目の一つとすることを発表した。全体としては、小さな被災地企業支援の一つかもしれないが、東証が今出来ることの一つかもしれない。そして今、出来ることの目的は、被災地のそして日本の復興に集約される。その復興の為に、市場の関係者が、今、何が出来るかを考えていかなければならないが、その復興ビションの方の現段階の全体的なイメージの方を纏めてみると、次の様になる。

【第一段階:復興ビジョンを立てるため先ず被害状況を把握し、その情報を体系化する必要がある。(科学技術復興機構)】

【第二段階:必要な組織や法律の方は国にお任せするとして、国民や企業が先行きに希望をもてるような復興ビジョンと、それを実行する復興計画が必要だ。(経団連)】
その復興計画の主要テーマを上げると次の5つに纏まる。(経団連、日本総研、野村総研)
※≪≫内は、市場関係者が今の時点で行っていること

○被災者救済
≪業界団体として、企業として、そして個人としても義援金は当然の事だろうが、金融機関として被災された方々への可能な限りの対応は各社取られている。印鑑やカード紛失や早期出金への対応などだが、証券業協会はこれらの証券会社への照会フリーダイヤルを1ヵ月間設置するとしている。今後の社員などのボランティア支援などはこれからかも知れない≫

○被災地の復興支援
≪既に9日付日経の1面広告にもなっているが、東日本復興支援債券ファンドの募集を野村証券が開始した。ファンド資金が何らかの形で被災地の復興に寄与する事を目的に、政府機関・地方公共団体・企業の発行する債券や国債で運用するとしており、ファンドの信託報酬の半分程度が被災地へ寄付される。今後、被災地の復興計画が明確になれば、債券引受や復興地へのファンド等によるリスクマネーの供給スキームが提案されていくことを期待したい≫

○原発対策
≪この問題は市場関係者にとってもっとも難しい問題だろう。それは、原発問題の長期化が市場の重石となっているだけではなく、リスク回避の動きが電力会社全般に波及していて電力会社の市場からの資金調達にも影響している。取りあえずは、海外投資家にも情報を正確に伝えることで電力会社に対する風説の流布を避ける事だろう。≫

○電力対策
≪上場企業が様々な夏の電力削減プランを策定し始めている。市場関係者としては、それがどの程度企業業績に影響し、かつ日本経済への影響がどうなるのか内外の投資家に伝える必要がある。しかし、これだけでは足りないと筆者は考える。現在、復興に関して様々な提案がなされているが、原発問題・電力問題の中心にいるのは東京電力なのだから、アナリスト等を動員して東京電力に対する復興支援プランを早期に示すことが、投資銀行の今、すべきことではないだろうか≫

○防災対策見直し
≪外資系の市場関係者の中には、一部機能を関西や中京地区に移転しようとする動きもあるようだ。今回はみずほ銀行のシステムも重なったことによって、バックアップ体制強化や緊急時対応の問題が改めて強く認識されている。一応、2006年2月には証券業協会が、証券市場に係る機能の継続並びに一時停止した場合の再開・復旧又は代替する体制の整備及び適時適切な情報の集約・還元・提供を図る体制の整備を目標にB C P フォーラムを立ち上げている。≫

【復興計画実行の仕組み=復興基金の設立とその財源としての課税案(大和総研、日本総研)】
今後、復興財源として様々の課税強化案が議論されていくと思われるが、一時、株式等の譲渡益課税の軽減措置(2013年まで)の撤廃が政府においても取り上げられたようだ。その後、金融相により否定されているものの、復興の日本に必要かどうか市場関係者として議論に耐えられることが求められるだろう。
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復興提案の概況について (4月6日)
 東日本大震災からもう3週間以上がたちますが、未だ目途のつかない避難所生活を送られておられる15万人以上の方々に心よりお見舞い申し上げます。また、過酷な条件で被災地において救援活動をされている方々・原発対策に向かい合っておられる方々に対し、深く敬意の念を表します。

 様々な研究・調査機関より大震災後への取組みに関して復興提案の公表が相次いでいるが、現時点での提案内容の概況に関して纏めておきたい。復興提案内容については、先の阪神大震災での対策や反省を前提にしているのも多いが、関東大震災時の対応まで遡るものもある。

 先ず取り上げたいのが、科学技術振興機構(4月5日)の“緊急の被害調査の充実”という緊急提言だが、どの様な復興戦略やビションを立てるにしても、状況の正確な把握と、その情報を行政・国民・企業さらに海外で日本の動向に注目している人々に発信していく事を前提にすべきだろう。その為、同機構は次の2つを緊急提言としている。(以下、原文)
①緊急の被害調査は、個別分野ごとに実施され、全体像が把握しにくい面がある。日本学術会議を中心に、各学会等による緊急の被害調査の体系化、調査結果の統合化が進められることが必要である。
②国際的な活動を含む緊急の被害調査に対するサポートの充実が急がれる。総合科学技術会議、各府省に加えて、科学技術振興機構等の研究資金の配分に関係する機関も、可能な限り、サポートを充実する必要がある。

原発や電力の問題を考えると、早急に状況を正確に把握し、かつ体系化する必然性が良く分かる。

 次に復興ビジョンの全体像について、経団連は3月31日に“震災復興に向けた緊急提言~一日も早い被災地復興と新たな日本の創造に向けて~”を発表しており、スピード感を持って被災者支援、被災地復興、原子力問題の早期収束、そして、日本経済の立て直しに国を挙げて取り組むことが必要とし、政府による早期復興と新しい日本の創造に向けた「基本法」ならびに「基本計画」の策定等を急ぐべきとしている。
 また、日本総研は“-東日本大震災の影響についての論点整理-「復元」でなく「新興」に取り組め”(4月4日)において、地元主導の復興プランを立案し、国の支援により、できるだけ早期に実行に移す必要があるとして、その為に復興基金を早急に創設し、財源として寄付税制の活用、非課税ゼロクーポン債の発行、相続課税の見直しなどを通じた財源調達も検討すべきとしている。加えて、国の危機管理態勢の見直し、首都機能・東京一極集中の見直し、日本パッシングへの対応などの戦略の必要性も示している。
 金融系のシンクタンクとて野村総研は、次の5つの緊急対策を並行して進めるべきとしている。(3月31日)
①生活再建支援やヘルスケアを含めた被災者の支援。
②継続的放射線モニタリングを含めた福島第一原子力発電の事故対策
③官民連携による社会資本整備や、サービスの民営化推進も利用して、新しい発想に基づく地域・産業の再生
④当面の夏場の電力需要ピークに向けた製造業の生産調整・夏季休暇の長期化・総量規制など需要対策の総動員
⑤防災計画の見直しなど今回の大震災を踏まえた防災対策の見直し

また、大和総研は次の2つについて、3月18日早々に提言を行っている。
【東日本大震災復興基金(仮称)】=国の管理の下に創設し、大震災からの復興事業という使途に限って被災地自治体、被災事業者及び被災個人への投融資を行うことを提言
【復興連帯税(仮称)】=東西ドイツの統一の際に統一費用を連帯付加税で調達した例を参考に、復興期間の3~5 年間について消費税を1%引上げることなどの検討

 現時点の株式市場は、復興需要や回復などへのプラスの期待と、大震災の当面の悪影響や電力制限などの今後の影響が見通せないとのマイナスの不安の間で揺れているように思うが、原発問題の今後の推移も、電力の安定供給へ向けての取組みも、その中核にいるのは東京電力なのだから、感情的な責任論を唱えるより、今本当に必要なのは、東京電力への支援策と、その為のビジョンの提示ではないだろうか。東電60万人の株主への配慮ではなく、5万人以上の従業員と更に多くの関係会社の人たちが、原発の処理と電力の復旧へ向けた取組みを全力で継続的に行う為、最低限のことのように思う。 

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今こそ、タイムリー・ディスクロージャーの徹底をお願いします (3月22日)
 被災地の様子を報道する写真やビデオを目にするたびに、心が痛む思いですが、現地の方々のご健康と一日も早い復興への取組みが始まることを祈っております。また、被災された企業の方々に対しましても、心よりお悔みを申し上げます。

 東日本大震災の影響は、今後様々なかたちで企業活動に現れてくると思うが、金融庁は1995年の阪神大震災時の対応策をもとに上場企業のディスクロージャー(開示)に対して、被災して決算を作成できない場合の救済策を示したと伝えられている。その内容は次の様なものだ。
●有価証券報告書の提出期限(決算末より3ヵ月以内)の弾力運用
●損失額を確定できない場合は、分かる範囲でリスク情報の注記を加えるなどの対策

これを受けて、東証は、
・決算発表は内容が固まるまで延期できる。
・決められた期日までに有報を財務局へ提出しなくても上場廃止にしない。
・決算書をチェックする会計監査で「適正意見」が得られなくても上場廃止にしない。
という方針を固めたと報道されている。

ディスクロージャー=上場企業による情報開示は、もともと2通りあって、証券会社の担当者が上場希望企業などに説明する際、法定開示(金融商品取引法による開示義務=有報などの提出)と取引所開示(上場規則による適時開示=投資判断に影響のある発生事実や決定事項を速やかに開示する義務)とに分けてその内容を示すようにしている。そのディスクロージャーは、投資家にとっては企業価値や投資リスクを判断する上で、最も重要なもので、最近までその充実の為の取組みが強化されていたが、次の様な問題も明らかにになっていた。
●法定開示で充実された四半期開示や内部統制報告書作成において、新興企業などの財務スタッフが手薄な上場企業では、負担感が重くなっていた。
●上場企業のごくわずかの一部に、売上げや利益に関する虚偽記載があった。
○投資家からみた企業価値を分かりやすくする為、時価会計への取組みが行われていて、可能な範囲でIRFS(国際財務基準)へ会計基準を近づける作業が行われている。(最終的に上場企業に対して、IFRSを採用するかどうかは、2012年央に金融庁が決定予定)

以上は法定開示についてだが、取引所開示はタイムリー・ディスクロージャーと呼ばれる適時開示が中心になっており、今回の大震災の影響については、このタイムリー・ディスクロージャーが重要になっていると考える。震災後の14日、15日に、大震災での被害状況に関して、被災された上場企業の殆どが被害の内容について公表を行っている。これは、内部統制制度の導入により、現場の把握が徹底され影響もあると信じたい。

 今後重要になってくるディスクロージャーは、震災の業績や資本政策への影響の開示であるが、上場企業におかれてはこの部分のタイムリー・ディスクロージャーの徹底をお願いしたい。
 取引所開示における適時開示での業績予想に関しては、一部企業が業界環境の不透明さから公表していないが、震災前には、この様な状況を改善する議論も取引所ではあったように聞いている。せっかく海外投資家からは日本経済の自力再生を信頼する声が多く寄せられているのだから、上場企業が市場におけるタイムリー・ディスクロージャーの意義を十分に理解され、その為に努力されることも信じている。

タイムリー・ディスクロージャーを徹底される企業へのサポートは、取引所と証券会社の重要な仕事になっている。 
 
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東日本大震災に対する情報対応について (3月15日)
 状況が不透明では、投資家のリスク回避心理は高まるのは当然で、それが個別企業でも、被災地の状況でも、原子力発電所の事態の推移でも、そして行政の対策であっても、大きな下落は避けられない。一つ一つの状況が明らかになり、早期に投資家心理が平常に戻ることを願いたい。
 先ず14日に決定された日銀による追加資産購入5兆円について触れたいが、昨年10月の追加的緩和策と同規模の市場対策が取られることとなった。内容は、新たな取得枠として、日本株指数連動ETFが4500億円、J-REITが500億円、2012年6月末まで取得(前回分は、本年12月を目途に取得予定)を行うとしている。合わせると、市場からのリスク資産の1兆円の買付けになる。金額が充分かどうかは現状では判断できないが、早急な市場対策は評価される。

 次に、状況が正直分からない中で、投信運用会社が昨日(14日)に公表した東日本大震災の株式市場への影響は、概ね、目先の下落は避けられないものの、中期的には世界的な景気回復基調の中で、回復を予想するものだった。各社の今後の予想ポイントは次の様なものだ。

〈野村アセット〉
・円の急騰がなければ、日本株のバリュエーションは割安水準にあることと、企業の資金余剰が歴史的水準にあることなどが、市場を下支え。
〈大和投信〉
・BPS(1株当たり純資産)の減少という形等で、株価水準を引き下げる要因。フロー面でも、経済活動の停滞により全体的には当面の収益見通しが下方修正されると見込まれるため、株価のマイナス要因。
・海外での企業活動も継続されるため、震災の影響のみで株価下落が中長期的に続く可能性は低い。
〈日興アセット〉
・景気に下押し圧力だが、中長期的に復興需要が見込まれることや世界景気の回復基調がサポートする材料。
〈ゴールドマン・アセット〉
・直接的な人的被害や建物・インフラの破壊に加え、経済活動の停滞の評価が難しく、原子力発電所の動向など不透明要素も残っているため、日本の株式市場は被害の全容が見えるまで、短期的な下落リスク。一旦こうした影響を織り込んだ後に、株式市場は落ち着きを取り戻す可能性。

 一方、市場の動きと関連情報を個人投資家向けにネット上で提供している情報ベンダーにおいては、震災関連の情報(アナリストやファンド・マネージャーの予想)は多いものの、取り纏めや市場予想に関する特別な情報提供では目立ったものはない。

 また個人投資家が株価予想を通じて交流しあう代表的な株式SNSである“みんなの株式”では、通常は24時間以内に出される予想の9割以上が個別銘柄の買いだが、さすがに15日午後時点では3割が売り予想になっている。大震災に続き、原発事故の拡大で株式市場が暴落している現状で、株価予想の意味があるかどうか分からないが、会員(約24万人)の公開する日記では、個人投資家が何を考えているかリアルタイムで表示される。その直近の内容をみれば、基本的には未曽有の市場環境に驚きながらも、買える銘柄とその理由を探そうとしている姿勢が多い。
日本の個人投資家は、まだメルトダウンしていない。

 

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ディスクロージャーの難しさとIRビジネスへの期待 (2月28日)
上場企業のM&Aに係るディスクロージャーは難しい。大規模なファイナンスや業務提携、そして合併や経営統合、更に株式を大規模に買い付けるTOB、何れも投資判断に大きな影響を及ぼすが、これを取引所の適時開示ルールでは、決定した時にディスクローズ(開示)しなければならない。通常は、この決定を組織決定として解し、取締役会決議のタイミングで公表される。しかし、オーナー型や実質的な支配株主が事実上決定してしまえば、これも即時に公表すべきとされている。株主や投資家に対して情報を素早く伝えるという事もあるが、企業としてインサイダー情報を長く抱えないという情報リスク管理の問題もある。M&Aが進展し、時間が経過するほど、関係者が増加し、そのリスクは増大する。それを、避ける為には、先日の新日鉄と住金のように少数の経営者同士でM&Aの大枠を決定してしまって、開示することだが、金融機関やM&Aアドバイザーも公表までは排除されていた。

 一方、24日公表されたCSK(9737)のTOBと合併に関する公表で、改めてM&Aに関する情報開示の難しさを感じた。内容は、再生ファンド(ACAインベストメント)が保有する普通株・優先株・新株予約権・新株予約権付社債(潜在株式を含めてCSKの支配権の64%に相当する株式)を、時価を大きく下回る203円で公開買付し、6月後半の株主総会で住商情報システム(9717)との合併(合併比率住商情報株1に対しCSK株0.24)を決議し、9月下旬の上場廃止後、10月1日に住商情報に吸収合併されるというものだ。直前の住商情報の親会社である住商によるCSK株TOBが、一部マスコミで伝えられ、株価急騰後の公表となり、その後大幅に株価を下げている。市場がTOBをミスリードした形だが、似た様な状況は昨年のパナソニックによる三洋電機のTOBの時にもあった。いずれも対象のなる企業は、当初ファンドが出資、その後再生パートナーによる事業再生が進められ、その後再生パートナー若しくは子会社との統合とういストーリーであった。

 この様な再生案件は、関係者の多大な労力により進められていくが、再生の主体となる大株主とその他の一般株主(支配権に関与しない少数株主)が有る時点から利益相反する。TOB、MBO、合併比率、上場廃止など、株主や投資家の判断に大きく影響する内容を決定する時だが、ディスクロージャーで難しい点は、その時点で既に対象となる企業には決定権がないことだ。ただし上場している以上、企業はディスクロージャーの責任を全うするしかない。

 それでも、一般の上場企業は悩みながらもディスクロージャーを充実させようと、IR(インベスターズ・リレーション)活動を活発化させ、株主や投資家への情報発信に力を入れている。そんな企業のIRをサポートする企業が、3月18日にジャスダックに上場を予定している。アイ・アールジャパンという野村系のIRコンサルティングの専業会社だが、証券関連業からは久々の上場となる。業界内でいうと、かつてFX会社やファンド組成会社の公開が多かった時から5~6年経過するが、今の日本の資本市場に必要なのは、企業が株主や投資家とディスクロージャーを通じて会話していくことだと思えば、この業界内のIRコンサルティング業に期待したい。
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経済界が期待する日本の金融・資本市場のあり方 (1月12日)
 
 今年に入り、次の10年を考える様な議論が多く見られるが、経済全体は別にして少なくともバブル後日本市場に関して言えば、失われた20年だったと言うのが多くの市場関係者の感想だろう。しかし、市況は別にしても、この10年間に業界が大きく変化したことも事実だ。個人株式取引のネット化・投信販売の拡大と販売チャネルの増加・FX取引や商品投資の拡大など、取り扱う金融商品の内容やサービスは大きく変わった。次の10年先は、金融サービス業としてどう変化していくだろうか。
 この業界の一方(もう一方は投資家)の利用者である経済界は、次の10年に何を期待しているだろうか。11日に公表された経済同友会の提言:日本のあるべき国家像とその実現に向けた具体策をまとめた“2020年の日本創生”より、日本の金融・資本市場について経済界が期待している具体的施策について取り上げたい。
 資金調達やM&A支援など金融サービスできめ細かい対応を求めるのは当然として、次の10年に業界に期待することは2つある。一つは企業の成長に合わせたリスクマネーを供給する事、もう一つは東京をアジアにおける国際金融センターにすることだ。その具体策としては、次の様なものが挙げられている。

○各種リスクマネーの供給を促す環境を整備する。
(1) 「貯蓄から投資へ」の流れを促すため、確定拠出年金制度におけるマッチング拠出制度を早期に導入する。また、金融所得一体課税や「日本版ISA(個人貯蓄口座)」の対象・限度額拡大などの税制改革を実施する。
(2) 創業期の企業への資金供給を通じイノベーションの担い手を増やすため、エンジェル税制を一層拡充する。また、産業構造の変革を促し、わが国企業のグローバル競争力強化に資するリスクマネーを供給するため、税制等のインセンティブ設計を見直す。
(3) 世界的にも旺盛な資金需要が見込まれる社会インフラ整備や環境技術・資源開発等の分野において、年金資産やインフラ・ファンドを呼び込む。また、内外からの民間資金を集めて長期運用する機関投資家を増やすことで、市場に厚みを持たせ、個人を含む投資家の裾野を広げる。その際、民間部門では背負い切れない巨額あるいは長期のリスク等に関しては、公的部門による保証、保険等の機能の利用を可能にし、民間部門がリスクをとれる環境をつくる。
【現状】(筆者私見)
(1)については、日本版401Kの業界インフラは整備し直す必要がある。例えば、レコードキーパーの運用商品の不足・決済インフラの不都合・参加者向け投資教育の不十分さなど。
(2)については、投資家のベンチャー投資への業界サポートの態勢整備が必要。
(3)取りあえず政策に期待したい。

○東京をアジアにおける国際金融センターとする。
(1) 証券、金融、商品を扱う総合取引所の制度設計を急ぎ、早期に創設する。
(2) アジアにおけるクロスボーダーの証券決済機構を創設する。
(3) アジア向けインフラ・ファンドの組成や、サムライ債市場の活性化等を通じ、アジアで拡大するインフラへの投資需要に応える。
(4) アジア域内マーケットにおける取引拡大に伴うリスク巨大化に備える観点から、アジアの通貨・金融システムを安定させるための仕組みづくりを行う。
【現状】(筆者私見)
アジアのメイン・マーケットというのは、政府の成長戦略にもあっている。ロンドンのシティの様に、アジア諸国の金融仲介業者も直接参加可能な“ウインブルドン型”の市場設計が望まれるが、既存の証券業者の業態転換も進んでいくと予想される。

以上の要望を、この証券業界は投資家のニーズとマッチさせてこそ、次の10年の成長産業としてのビジョンも描けてくるのだろう。

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公開企業のトップは自社株価に対するコメントを (12月13日)
 高くなったら売却し、安くなったら買い戻す。別にヘッジファンドや個人投資家でなくとも、当たり前の経済行為であって、公開企業の経営者でも親会社でも、又は公開会社自らだって行って構わない。但し、企業の先行きに関する未発表の情報を数多く持つ立場なのだから、株価に影響を与える情報と考えるなら、基本は公開して、計画中など微妙な段階では売買を手控えるのが資本市場ルールの常識だ。また、MBOや完全子会社化などで、その公開会社(公開子会社)を完全に買い取ってしまう場合には、特別のルールが必要になる。現在(12月13日時点で)、TOB(公開買付)が12社進行中だが、その内半数の6社は実質的に経営陣もしくは親会社による公開企業の100%買い取りで、当然だが上場廃止になるので、一般の株主は原則売却せざる得なくなる。その為、TOBの買付価格には4~5割程度市場価格に上乗せして買い取るプレミアムがつくが、買い手である経営陣や親会社は、それでも安いと思い買付けを実行する。

 一連の市場での評価と、経済行為の結果なのだから、止め立てするものは何も無いが、経営陣・親会社と一般の株主の情報の非対称性は、通常の買い手・売り手のそれより格段に大きなものなので、売り手である一般株主への配慮は必要になる。2007年8月に公表されている経済産業省の企業価値研究会によるMBO(経営陣だけでなく親会社による買い取りも基本的に同じ)に関する報告書[正式名称:企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する報告書]では、
・企業の価値向上を目指したものかどうか
・既存の株主の権利が損なわれないように、第三者によるチェック機能が働くこと
の2つの原則を示している。

 この様なルールはあっても、例えば公開して数年しか経っていないような企業が、MBOや親会社による完全子会社化などを行うに事に、割り切れなさを感じるのは何故だろう。企業の多くの未公開情報を持つ経営陣や親会社が、自社株を安いと感じて、その為にMBOや完全子会社の準備を始めたのは何時なのだろうか。若し問題があれば、MBOに関した一連の裁判や、TOB実行時の第三者委員会の調査で明らかにされるかも知れないが、その事は一般の株主にとって結果如何に関わらず新たな投資判断の機会と時間を失わせるものだ。

 そこで提案したいのは、公開企業の経営者・親会社が、自社株価若しくは上場子会社株価に対してコメットを行うことを義務付けることだ。
自社株が安いか高いのか、概ねどの位の株価水準を目標とするのか、自社株と何か別の指標(競合他社株)を比較しているのか。勿論、この様な経営者の自社株に対するコメントは、IRなどで企業から発信されることもあるが、まだまだ一部の範囲に留まる。これを、決算短信などの取引所での開示制度で対応しては如何だろうか。このコメントで、一般株主や個人投資家は経営者の自社株価に関する考え方を知ることになる。また親会社の上場子会社に対する株価コメントも、一般投資家にとっての一方的な子会社上場政策を牽制することにも役立つ。
 公開会社の経営者なのだから、自社株の水準に関しては日頃から強く意識(今時、株価は市場に聞いて欲しいという公開企業の経営者はいないと思われる)しているだろうし、株価に対する割安コメントがなされれば、企業の自社株買いを促すことにもなる。

なお、自社株価コメントする経営者に対する政策的サポートも必要で、この株価コメントが経営者個人の損害賠償責任の対象とならないことの明確化も必要だろうが、議論と試案は法制審議会にお任せしたい。

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海外企業を日本に呼び込んで、アジアのメイン・マーケットを目指そう (11月8日)
 個人投資家の海外投資は外債や投信では当たり前になったが、株式の売買においても海外投資シフトが進んでいるようだ。大和証券の上期決算説明資料によると、7月~9月の株式売買手数料に占める外国株の比率は、全体の4割近くまで上昇している。また関係者からお聞きした話によると、ある地方の証券会社では、支店長が海外市場の成長力ある銘柄を選択して勧誘した結果、株式手数料の殆どが海外株式売買によるものになってしまったとの事。その中にあって、日本の株式市場の相対的低下が懸念されるが、これだけ日本の投資家の海外株投資が盛んになるなら、いっそのこと海外企業を日本市場に誘致して、より一層日本の投資家が売買しやすくしたら如何かということで、海外の上場企業が本国で行っている英文開示資料を、日本市場でもそのまま使えるようにする検討が、金融庁の開示制度ワーキング・グループで行われている。

 少し状況を見てみると、東証に上場している海外企業は12社しかない。海外企業の上場が最も多かったのは1991年12月時点で127社が上場されていたが年々減少している。日本の国家戦略では、日本の資本市場もアジアのメイン・マーケットを目指そうとのことだが、ここ5年間でのアジア主要取引所における上場外国会社の推移は次の様になっている。(2005年末と本年9月末を比較)
・東証 -16社で、現状は12社。
・シンガポール +193社で、現状は315社。
・韓国 +16社で、現状は16社。
・台湾 +15社で、現状は20社。
・香港 +5社で、現状は14社。
(ちなみに、ニューヨークは502社、ロンドンは596社の外国企業が上場されている。)
 日本経済の低迷とともに、東証に上場している海外企業数は減少し続けた一方、アジアの他の取引所においては、その経済成長を背景に、上場する外国企業数が増加している。海外企業側の立場からすれば、東京マーケットは相対的に地位が低下している割に、日本語への翻訳対応や、日本の開示制度に合わせた対応などから日本での上場に係る負担感が大きく、敬遠しがちになるという。
 日本の投資家が海外株投資に注力しているのに、その一部でも日本市場で売買出来れば、日本の資本市場の空洞化は避けられるのではないか、そんな思いの関係者もいるようだ。

 東証は上記のワーキングにおいて、次の事を提案している。
○日本で上場する海外企業の有価証券報告書等の開示書類は、英文のみで開示できるようにする。
○既に海外の主要市場に上場している企業については、上場に伴う各種の日本の制度への対応の為の負担を、出来る限り軽減する。
 ・有価証券報告書などの継続開示書類は、海外の有報等を提出すれば足りることとする。
(主要部分の日本語翻訳や、対照表の日本の制度との比較、有報記載事項で海外の有報に記載されていない事項を記載した書類等を不要とする。)
 ・海外市場で英語以外の言語で開示している会社についても、英文開示の対象とする。
・届出書や臨時報告書なども、上記の様な取扱いとする。

以上のことは、アジアのメイン・マーケットを目指す日本市場では必要な事なので、早急な制度改正が望まれるが、英文開示が先行しているプロ向け市場TOKYO AIMが昨年6月に開設されて未だ上場企業が無い事の検証も十分行う必要がありそうだ。
 市場活性化の問題は、上場にしても売買にしても、やはり市場仲介者(証券会社等)の問題が大きいのではないだろうか 
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取引所決算からみえる上半期の証券業界模様 (11月4日)
 仕事柄、証券業界のインフラ問題に接することが多いが、その面から見ると、ここ2年近くで日本の資本市場のインフラは世界最高水準になりつつある。投信まで含めた有価証券の完全ペーパレス化、現物及び先物・オプション市場の取引超高速化対応、取引ルールの整備、清算システムの信頼性など、資本市場インフラは世界的に誇れる程に整備されている。しかし、装置や道具がいくら良くても、使い手が熱心に使い込まねばその成果は見えてこない。最近の日本の資本市場の国際的な地位の低下(取引量やIPO数など)を見ていると、せっかくの機能がうまく繋がっていないのではないかとの懸念さえ生まれる。
 その資本市場インフラの中核となる取引所の上半期決算から、ここ半年間の証券業界の有様や変化を見てみたい。

先ず10月26日に公表された東証の上期決算から、営業収益面では次の様に変化している。
・収入の37%を占める取引参加料は、104.7億円と前年同期比7.3%の減少になっているが、これは株式の売買代金が同期間9.2%減少していることの影響だ。なお、TOPIX先物は殆ど取引量の変化はないが、長期国債先物の取引高は17.2%増加している。
・収入の18%を占める上場関係収入は、51.4億円と前年同期比14.8%減少しているが、昨年のメガバンクや電機などの大型ファイナンスの上場株数増加の反動となっている。なお、上半期の公募や第三者割当等での上場企業の資本調達額は、2.24兆円と昨年同期間の3.09兆円から27.6%減少している。また東証上場企業数は、9月末で2293社となり、1年間で45社減少しているが、ETFは反対に23銘柄増加して93銘柄となっている。(上半期の東証関連のIPO数は11社)
・収入の19%を占める情報関連収入は、55.1億円と前年同期比2.4%増加しており、個人向けリアルタイム個別端末台数の増加が影響している。
・収入の13%を占める証券決済関連収入は、40億円と前年同期比7.4%減少しており、これは株式の売買代金減少に連動している。
・その他の収入は、本格化し始めているコロケーションやarrownetなど、場所や専用回線を取引参加者に新たに課す事サービスが寄与して、前年同期比3.5%増加の36.4億円となっている。

 次に同日に決算を公表した大証の方も次の様な変化が見られる。(東証とは収益区分が少し異なる)
・収入の59%を占める参加者料金(取引や清算、アクセス料等)は前年同期とほぼ変わらずの65.6億円となっている。株式の売買代金は全体で4.3%減少したものの、デリバティブ取引は反対に7.2%の増加となっていることの影響だが、特に日経225miniは28.2%も取引量が伸びている。昨年7月から取引が始まった大証FXも軌道に乗りつつあるようで、取引参加者も15社に拡大している。
・収入の31%を占める機器・情報提供料は、前年同期比1.8%増の34.9億円となっている。こちらも株式のユーザーの減少を、デリバティブやコロケーションなどの関連による増加が埋めている。
・収入の9%を占める上場賦課金の方は、前年同期比32.3%減の10.2億円となっているが、東証と同様に増資による上場株数の増加分が前年に比べ減少したことが大きい。なお、上場企業数は9月末で1758社と一年前に比べ98社減少している。

 なお、決算発表時の東証社長の記者会見では、シンガポール取引所(SGX)によるオーストラリア取引所(ASX)買収問題が取り上げられている。それによると、SGXは40%程度のプレミアムをつけて総額84億豪ドルでASXを買収しようとしているが、対価はSGX株式、つまり株式交換方式なので、東証が保有するSGX株、発行済株数の4.9%(シンガポール政府保有の24%に次いで2位の株主)は、3.1%へ希薄化する。また、先物に強いSGXと、世界的な資源会社を含む900社以上を上場しているASXの統合は、アジアの中心的市場を目指す東証にとって脅威となるとしている。

 総合取引所構想をゆっくり議論している時ではないように思うのだが。

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業績予想について (8月26日)
 至極当然のことで恐縮だが、公開企業に関する情報で、最も投資家が分かり易く、かつ注目するのは業績予想に関する情報である。アナリストがレポーティングすることもあれば、企業が公表することもある。どちらが注目されるかというと一般的には企業の公表だが、一部アナリストの業績予想情報が注目されることもあり、できれば双方の予想情報が投資家に使い分けされているような状況が望ましい。しかし、アナリストがカバーするのは公開企業の2割弱であるのに対し、公開企業の業績予想公表は96.8%(昨年の東証調査による)が対応しており、個人投資家の多くは企業のディスクロージャーに頼るしかない。

 その企業による業績予想は必ず公表せねばならぬルールかというと、若干微妙な位置つけになっている。 開示規則=ディスクロージャー・ルールには、金融商品取引法で定められた法定開示と、取引所ルールによる適時開示(タイムリー・ディスクロージャー)があるが、法的開示では事実や決定されたことを公表していく構成になっているので、企業の業績予想は適時開示に含まれる。取引所の決算短信雛形で示される業績予想の記載内容は、売上高・経常利益・営業利益・当期純利益だが、もしこれらの公表を行わなければ適時開示の上場規則違反で上場廃止になるかというと、そんな事はない。実際、業績予想を一切記載しない公開企業の中には日本の代表するような企業も含まれていて、業績予想を適時に自ら公表しないだけで上場廃止には出来ない。また、業績予想を公表しない側には、以下のような企業側の理由が東証の調査により示されている。

①業績が市況等に左右される部分が大きく、業績予想の算出が困難である。
②ビジネスモデルが大幅に転換することから、本年に関しては開示しなかった。
③大幅な環境の変化があったことから、四半期ベースの業績予想を未定とした。

 確かに企業の業態によっては市況が大きく影響するものもあるだろう。しかし実際は企業としての事業計画もあって業務が遂行されているのだから、業績予想が困難というのは理由として良く解らない。業績予想はしても、業績予想が困難と企業が思い込んでいるのは、投資家をミスリードする懸念を指摘する大企業がいるが、これもかなりおかしな理由だ。企業の公表した業績予想を投資家がどう判断するかは投資家の問題であって、企業の問題ではない。業績予想を公表しない企業側の理由の背景には、一旦公表した予想を修正していく煩わしさを避けたい企業心理が、大きく影響しているように思う。業務遂行上、業績予想は適時=リアルに実施しているのが企業なのだから、投資家からすると実際の業績結果よりも、今後どうなるか企業が予想として考えていることを知るのは重要な投資情報だ。

ちなみに業績予想については、適時開示ルール上は通期予想が出来ない場合は、次の四半期予想でも良いことになっている。投資家も企業の多様性は認めているのだから、別に一律の数値予想でなくともいいので、数字が予想困難な場合は、その理由につき公表していくことも業績予想の一つと考えられる。四半期開示や内部統制報告よりは、企業にとっての負担感は本来軽いはずなので、市況変動の大きさを理由に業績予想を公表していない大企業は、是非何らかの業績予想公表に向けた取り組みを実行してほしいと思う。

 なお、公開企業の業績予想を個人投資家が利用する場合は、企業公表とアナリストの分析を併用することが望ましいが、個人にとってアナリスト情報が入手しにくかったり、そもそもアナリストカバーが約8割近い銘柄でない現状では、業績予想の分析情報がないケースも多い。その解消の一策として、四季報の業績予想など情報ベンダーの予想数値とその根拠の公表を、取引所若しくは協会でコスト負担して、個人投資家に提供するシステムを作っては如何だろうか。
 
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資本市場における情報提供のあり方 (6月17日)

結論は明らかである。“適時、簡単、明瞭”これが資本市場での情報提供のあり方の全てである。ちなみに、情報提供は誰の事を想定しているかというと、金融機関の審査部の方でも、会計士などでもなく、市場の一般の参加者を想定したもの、つまり公表ベースのことである。

 しかし、実際の資本市場における情報提供は、そうでないことが多いので、改善を求められたり、情報提供のあり方を再検討することも最近多くなっていると思う。市場関係者としては、自らの文章においても、上記原則の簡単・明瞭は肝に銘じなければならないが、これに反するような文章は、MBOに関するものに多い。特に失敗と言われるようなMBOでは、まるで悪文の見本のようなものがある。この悪文は、会社側(経営者でMBOの主体者、もともと一般株主とは利益相反する)の言いたいことに、弁護士が法的リスクを避けようと手直しした結果だと思われるが、普通の株主は、多分会社側の言いたい事の半分も理解できないのではないだろうか。

 反対に簡単すぎて問題なのは、銀行グループのファイナンスでの資金使途の記載だ。子会社銀行の増資資金にするというのは、確かに簡単明瞭だ。しかし、3~4割も希薄化をする増資で、株主が知りたいのは、それも押してまで増資する資金の前向きな使われ方であり、株式を保有し続ける明るい材料だ。その期待に結果応えられるかどうかは確かに分からないが、株主の鼻を木でくくるような記載はいただけない。
 また、資本市場に関する数字のあり方も、いろいろと使う立場で問題がありそうだ。例えば、公募増資の場合、当初1000億円の増資だと公表されるが、値決めまで1割株価が下落してしまい、かつ5%デスカウントなので、850億円の増資になったかと思いきや、この中で50億円分は引受証券会社が手数料としてとるので、会社側は800億円の増資ということになる。(投資家からは、850億円集めている)
結局、1000億円増資を計画していたが、800億円の増資で終わったということになるが、実際の増資統計では、更に以下の様に複雑になる。
 800億円のうち、600億円が普通の公募、200億円が所謂グリーン・シュー・オプション(主幹事証券に、第三者割当増資の形で割り当てる新株の追加発行請求権)であれば、本来は株主や市場からみて800億円の公募増資のはずが、統計上は600億円の公募、200億円の第三者割当ということになる。更に、国内と海外で同時に募集を行うグローバル・オファーリングの場合、この事例で、国内・海外がそれぞれ半数の時は、最終的に増資統計上は次の様に集計される。
国内公募増資:300億円、海外公募増資:300億円、国内第三者割当100億円、海外第三者割当100億円(合計は確かに800億円の増資だが、850億円支払った投資家からみると随分細分化された統計になる。※実際は、これほど乖離するケースはない。)

 上記のケースは、増資の実態と統計方法のミスマッチに見えるが、増資方法が進化しているのに、統計方法が昔ながらだと、この様な実態を現わさない統計数字が出来てしまう。

 この様な資本市場に関する統計数字の問題は、実は業界では古くから指摘されており、証券や金融機関の商品部門や企画部門は、自ら人手をかけ集計し直すか、データー集計会社の統計を活用していた。しかし、協会等が公表する統計数字は、一般投資家が無料で入手できる唯一ものだ。せっかくある資本市場の統計を個人を含む投資家が活用できるよう、その見直しが始まった。6月2日、日本証券業協会より“金融・資本市場統計の整備に向けた具体的な課題・取組について(中間整理)”が公表されているが、来年の10月を目途に、統計方法の見直しと提供するポータルサイドの整備を行う。実効性にある取組みを期待したい。
  

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上場企業の増資に求められるディスクロージャー (4月16日)
 これから3月決算期会社の決算発表が始まり、6月下旬の株主総会に向けて企業の準備が本格化するので、この時期はファイナンス案件が減少する。昨年度は、年度ベースでみて上場企業の増資が6兆円を超え、バブル期以来21年振りの水準となったが、本年も7月に入ったら昨年同様に公募増資ラッシュの可能性もあり、市場関係者にとっては、この時期はつかの間の安堵かも知れない。
 最近、大量の第3者割当に対する金融庁の実質規制強化策(拙稿、4月12日“最近の規制強化2点”で概要を紹介)が公表されたが、株主にとっては、公募増資であっても大量の増資は大幅な希薄化を招き、ダメージを受ける。しかし、保有し続けるのは増資資金が企業の事業戦略上必要で、将来の企業価値の向上に役立つ、と信じるからだ。その株主の信頼の為には、企業側は増資資金の資金使途を明確にし、事業戦略との関係性を示す必要がある。増資の際のディスクロージャーでは、資金使途に関して定型的な文言の2~3行で済ませてはならない。

この事に関して、内閣府は“増資におけるコミットメントの有無と株価投資収益率”というレポートを今月5日に公表している。昨年1月から11月末まで公募増資を公表した企業54社を対象に、TOPIXをベンチマークに収益率を算出していて、概要は以下の通り。
●増資公表から120日後で、オーバーパフォームしている企業は16社。アンダーパフォームしている企業は38社。
●増資で得た資金使途に関して、具体的な戦略を示した企業は、増資公表後60日後を境に収益率が改善に転じたが。戦略的記載を行わなかった企業の収益率は低迷を続けた。
●業種別には、オーバーパフォーマンスだった電気・精密には戦略明示型が多く含まれていた。

 一方、投資家側の立場から、生保協会が毎年実施している“株式価値向上に向けた取組みについて”が3月19日公表されている。その中で、平成21年度の増資に関する投資家側(機関投資家168社)の意識として、以下に様な調査結果となっている。
●増資に関する企業側の説明は、一定程度されているとする53.9%に対して、あまり説明されていないとするのが42.7%。十分に説明されているとする者はいない。
●企業の説明に不足がある部分としては、
・資金使途の内容=7.9%
・増資に見合った今後の収益向上策=76.4%
・希薄化率や発行価格等の発行条件の妥当性=10.1%
●増資の結果、将来的な株主還元が求められるが、企業の資本コストとして意識されているかという点については、約3分の2が満足出来ないとしている。
 この資本コストに対する企業側の把握は、53%の企業(調査対象1132社)が把握していない現状だが、把握している企業の加重平均資本コストの平均値は約5.8%になっている 。

増資を実施したら、いつどの様に使い、既存株主にはどう還元していくのか、ということは公募増資を引き受ける証券会社の引受審査でしっかり行っていると思うが、定型的な開示内容で済ますのではなく、株主や投資家に、調達企業の戦略がしっかり伝わる様に助言をしていくのも、市場仲介者としての引受証券の大事な仕事ではないだろうか。

 ちなみに、生保協会は上場企業の経営目標の設定・公表に関して以下の提言をしている。
①具体的な中期経営計画の策定・公表及び説明の充実
②目標とする経営指標の設定・公表
③経営計画に沿った適切な資本政策・株主還元の実施
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企業におけるインサイダー情報 (4月9日)
証券会社の上場企業担当者は、時々上場会社から頼まれて、インサイダー取引の説明会を行う。自社の売買管理部などのメンバーを同行して、上場会社の役社員向けに行うものだが、企業にとって自社の役社員を、インサイダー取引のリスクから守ることは、重要なコンプライアンス対応になっている。自社株だけではなく、取引先のインサイダー情報に触れるリスクもあり、その際に情報をどう対応するか、役社員自身のインサイダー取引に関する認識も必要だ。
 といっても、何がインサイダー情報なのかというと、法規制やルール面から一般の個人には分かり難い部分もある。

 インサイダー情報の規定は、金融商品取引法の166条第二項に定められる“重要事実”だが、企業が決定するもの、発生したもの、決算情報などに関する未公開情報(子会社分も)で、詳細も定められているが、一方に軽微基準もある。例えば、M&Aに関する情報は基本的には重要事実だが、売上げの10%増減に影響しないようなものは除かれる。最近、話題の不測の社長交代はどうかというと、代表者の交代は取引所の適時開示要件だが、重要事実ではない。ただし、多少やっかいなのは、投資判断に著しい影響を及ぼす事項=バスケット条項がこの“重要事実”に含まれることだ。社長交代そのものは、重要事実でなくとも、その交代の背景に投資判断に影響を及ぼす可能性がある重要な子会社の再編問題があると、こちらの方は“重要事実”になる可能性もある。このバスケット条項は、何か一般の投資家の判断に影響するか、企業が置かれている環境や、市場の状況によっても解釈が難しいので、証券会社はよく問合せを受けるが、最も良い方法は、情報のある程度まで公表してしまうことだ。

 インサイダー取引は、未公開の重要事実をもって、株式を売買することなので、役社員に株式の売買を禁止してしまうというのは本末転倒である。それは、証券会社の役社員であっても国会議員であっても同様であるが、未公開の重要事実=インサイダー情報を持たなければ、株式の売買は規制されるべきではない。但し、本人が意図せざるインサイダー情報への関与もあるので、企業は、重要事実情報の管理を徹底するとともに、役社員(家族も含む)の株式売買を捕捉しておく必要がある。この為に、以前、弁護士や会計士やマスコミなど資本市場に関与した業務を行う人々も対象にすべきとして紹介した日本証券業協会のJ-IRISS(ジェイ・アイリス:内部者取引管理システム)の活用が望まれる。

 実際のインサーダー取引の状況がどうなっているかというと、証券取引等監視委員会によるインサイダー取引での課徴金納付命令勧告べースでは、平成21年32件←平成20年20件←平成19年11件と増加している。平成21年の内訳は、公開買付けに関したものが10件(前年は3件)、会社更生・民事再生に関したものが8件となっており、前年10件あった業務提携に関したものは無くなっている。また、インサイダー取引の主体者別でみると、第一次情報受領者(会社関係者から直接情報の伝達を受けた者)は15名と約半数となっており、その企業の役社員が14名と続いている。

 企業の情報管理の甘さから大量のインサイダー取引者を出したケースもある。これは、オリエンタル白石が会社更生法申請をする前日に、事前に準備していた現場での留意事項を周知するメールを、社員数百名に誤送信してしまい、結果社内外で7名のインサイダー取引が起きた。

 M&AやTOBに係る情報は最も注目される情報だが、これらは時間も長期間に及び社外の関係者も増える。加えて、企業側の情報管理態勢整備に関しては、企業経営者の認識も含めてまだ不十分のようにも思われる。ただ未公開情報を厳格に管理すれば良いのではなく、情報の公表態勢や、役社員の株式売買状況の把握(業務上関係する企業の株式の売買は、個人情報の扱いではない)も含めてインサイダー情報の管理が、企業側にも求められている。
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企業側から見たディスクロージャー制度の問題 (3月30日)
 常に上場企業のディスクロージャー制度改革が言われるのは何故だろう。
時々顕わになる上場企業の問題行為を牽制するという目的ではない。粉飾決算が行われようが、内部で何らかの偽装行為があろうが、社長が突然変わろうが、その原因や影響が、株主や投資家にきちんと伝わればディスクロージャー制度は成り立つ。では、常に制度改革が議論されているのは、きちんと伝わっていないという関係者の認識があるのだろうか。

最近、個人も含めて日本の投資家の日本株離れが言われるが、市場取引で一番問題になることは、参加者間の情報の非対称性だ。例えば、ローンの出し手の銀行が大株主になっていたり、企業間で株式を持ち合っていたり、経営者や親会社は半数以上の株式を保有していても良いが、同じ株主(将来株主の投資家も含め)として、投資判断に必要な情報は共有すべきだ。それは、上場会社のディスクロージャーの基本になる。
では、どこまでの情報を共有する必要があるのかとうのがディスクロージャー制度議論になる。
上場会社は平成20年4月以降の事業年度から、四半期報告書と内部統制報告書の提出が金商法の開示制度上で義務付けられているが、企業側は新たな財務・監査対応が求められ、相当のコスト負担になっている。
また、この4月から取引所の適時開示制度において、独立役員(社外取締役&社外監査役)の設置状況といない場合の理由の開示が求められている。

 これらの一連のディスクロージャー強化の動きに対して、企業側から投資家にとって本当に有効に使われているか、そもそもの取引参加者間の情報の非対称性解消に役立っているのかという疑問が強まっている。
日本取締役協会から、ディスクロージャーの改善に関する提言“副題:投資家にとっての有意義な企業情報の充実に向けて”が、3月29日に公表されている。提言内容は以下の概要となっている。(カッコ内は筆者の注記)

①四半期開示の簡素化
企業が作成に係る手間の割には、投資家に利用されていないのではないか。もう少し内容を簡略化してはどうか。(新興企業にとって四半期開示及び内部統制報告書は負担が重いものになっている。新興市場改革においては、これらの開示負担を軽減してはどうかという市場関係者の意見もある。)
②適時開示(決算短信)の簡略化
金商法で義務化されている制度開示との重複を避け、変化する事象に重きをおいて開示し、それ以外は制度開示に委ねるべき。また、無理な業績予想よりも、業績予想に必要な情報をIR活動を通じて提供すべき。(筆者の私見として、この意見は投資家側から見て無理がある。何故なら、企業のIR活動は企業が自主的に行うものなので、取引所開示における企業の業績予想は必要。投資家は別に業績予想の制度を求めているのではなく、業績の先行きに関する企業の考えとその変化を知りたがっている。)
③IR情報の充実
ホームページの活用によるIR情報の充実。長期的な業績目標や市場環境分析などを通して、投資判断に資する情報を提供していく。(情報の充実には異論がないが、IR活動は企業の自主的行為なのでディスクロージャー議論とは分けるべきではないだろうか)
④証券アナリスト機能の充実
短期的な視点のアナリスト分析が多く、現在の証券アナリストの役割に疑問。個人投資家向けアナリスト機能を充実させるべき。
(確かにアナリストカバーの企業数は500社にも満たない。特に個人に提供されるアナリスト情報の分析の質は同業からみても疑問がある。指摘を真摯に受け止めて、業界としての改善を考えるべきだろう。)
⑤証券取引所の情報提供機能の強化
個人投資家を対象として、インターネットを利用した情報提供機能(時系列的な業績情報やアナリスト予想情報等)を充実させるべき。
(情報ベンダーと重なりそうだが、個人向け投資家情報の提供整備はコストが掛かるとしても業界で取り組むべきと考える。)
 
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大量保有報告書から見えるもの-その2 (2月25日)
 このテーマの2回目になるが、大量保有報告制度の基本的な仕組みを復習しておきたい。
○株式等保有割合を5%超保有した場合、報告義務が発生する。
○報告書提出後、1%以上の増減、重要な記載事項について変更がある場合、変更報告書の提出義務。
○約定から5営業日以内に、報告書は提出。
これだけだが、実務的には以下のポイントを押さえる必要がある。

・議決権行使の5%超を行う保有者を公表させることが目的だが、議決権行使の可能性まで押さえようとすると普通株式だけではなく種類株・新株予約権等も合算して把握する必要がある。また契約により、株式を保有していなくとも議決権を行使できる若しくはその可能性がある場合も、その契約を公表しておくことが求められる(5%超の保有)。
・一人であってもグループであっても、同一の目的で議決権を行使されれば、その効果は他の株主にとって同じことである。よって、以下の仕組みで、報告を求められる保有者が捕捉(保有比率が合算)される。
≪実質共同保有者≫議決権その他の権利の行使について合意している者、書面だけでなく口頭での合意も
含む。[株主間契約、株券等の共有、民法上の組合保有、みなし共同保有に該当しない親族・グループ会社等の保有など]
≪みなし共同保有者≫共同保有の蓋然性が高いと見做されるもの。[夫婦、支配・被支配の関係にある企業、組合と業務決定機関の支配者など]
※なお、単独で0.1%以下を保有する者は、みなし共同保有者から除外される。
・その1で取り上げた村上ファンド等で問題になったファンド特例(3ヵ月に一度の報告)は、2006年12月の証取法改正で、2週間に1度に変更されている。
・重要な記載事項としては、保有目的・重要提案行為・貸借契約や担保契約などの重要な契約・取得資金などがあるが、これ等が変更した場合も、変更報告書の提出が必要になる。

 以上を踏まえて、再び金融庁のQ&A案から問題の背景を取り上げてみたい。

【第三者割当における一定期間譲渡しない旨の合意】
報告書に記載する必要があるとされている。経営救済型の割当増資なら一定期間売却しないのは当然と思うが、ファンド等の短期投資と明確に判別するには、記載を義務付けけることは有効かもしれない。

【投資銀行業務に係るもの】
ファンドや機関投資家相手に大量の株式の売買を行う投資銀行業務関係では、
レバレッジ取引や貸株サービス・決済保管サービスなど行うプライム・ブローカレッジ業務で、顧客から預かっている株式に関する報告義務の設問に対し、何らかの契約により、その株式の処分する権限が投資銀行側にある場合は、報告義務があるとしている。また、エクイティ・デリバティブ取引に関して、デリバティブ取引とダイレクト・マーケット・アクセス取引(投資家が取引所へ直接発注:主にアルゴリズム取引)を組み合わせた事例が示されていて、デリバティブ取引におけるロングポジションの保有者は、ショートポジションの保有者がヘッジで実際に取得する株券の実質的保有者として見做され、保有者としての報告義務があるとされている。

【組合での保有】
業務執行組合員等以外の組合員は、自己の持分に相当する部分を、株券等保有割合に算入する必要はないとされている。

【共同保有者の問題】
口頭での合意であっても、当然共同保有者とされる。また、株主提案を共同して行うという明確な行動でなくとも、株主総会での議決権行使について話しあった場合においても、合意した時点で共同保有者に該当すると回答されている。

 大量保有報告書は、単に保有者の持分の移動を表すだけではなく、その時の資本市場に起きている取引手法やファイナンスの影響も、示すものになってきている。

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大量保有報告書から見えるもの-その1 (2月24日)
 誰が公開企業の支配権に影響する程、株式を大量(5%超)に保有しているかという情報は、投資家・株主にとって、その投資判断に影響を与える重要な情報なのだろう。その保有の目的が、純投資であっても、M&Aに関係するものでも、敵対的買収に伴うものであっても、投資家は、その大量保有の目的を適時・的確に読みとろうとするし、今後の展開を推測しようとする。その為、大量保有報告書の記載内容は、投資家の注目度の高い情報になっている。証券会社は、この情報を解説付きで顧客に提供しようとするし、ネット上でも、金融庁のEDINETで適時公表されているにも関わらず、多くの速報や集計をするサイトが目立つ。

そう言えば、大量保有報告に絡んで、過去に事件と呼ばれるようなことがあった様に思う。
・テラメント事件(2008.1)=僅か資本金1000円の会社が、トヨタやソニーなど日本の主要企業5社の51%の株式(20兆円相当)を取得したとして、大量報告書が提出された事件。虚偽報告の目的は不明。
・西武鉄道株主偽装事件(2004.10)=大株主であるコクドが保有する西武鉄道の株を1000人以上の個人名義にしていたことが明るみに。コクドは上場廃止(株主上位保有80%以上で東証上場廃止、コクドグループ保有だけで、実質88%だった)を避ける手段として、40年以上にわたり、株主数を偽装した(有価証券報告書の虚偽記載)。
・村上ファンドによる株式大量取得問題=ニッポン放送株の取得(2003)同株の売却(2004)、TBS株の取得と売却(2005)、阪神電鉄株の取得(2005)などで、ファンド特例(通常は売買約定の5営業日以内の報告が義務付けられているが、ファンドの場合、特例措置で3ヶ月に1度の報告でよかった)を利用した売買が問題視された。
などなど。

 この大量報告書制度に対して、制度の目的に沿った、実質的な対応や判断がされるべきと筆者も思うが、金融庁は、想定される事例への指針としてQ&A案を公表している。(報告制度に抵触するかどうかという判断は、個々の事案によるが、一般論として提示されている。)
このQ&A案は、金融庁に寄せられた数多くの実務的な問い合わせが設問のベースになっていると思われるが、その設問から株式の保有若しくは大量の売買に係る現状の問題が浮かび上がる。

【意図しない保有比率の変更とその後の売買】
5%超保有した時に報告書を提出し、その後1%以上の保有比率が変動した時か、5%以下になった時に変更を届け出るのが基本だが、保有者が売買しなくても保有比率が変化する以下の場合がある。
・公募でも第3者割当増資であっても、保有者以外に新株が大量の割当てられる場合(所謂大量のエクイティファイナンスのケース)
・相当数を自己株式として取得・保有していたものを企業が消却した場合
・相互保有規定で、他の大株主の議決権がなくなった場合
・企業再編によるもの
この問いは、よくあるものだが、保有者が能動的に動かずに保有比率が変更した場合、直ぐには報告義務は発生せず、その後自ら1%以上売買した場合(売買回数に関係なく通算される)は報告義務を負うとされるのが一般論だ。
又、保有比率には新株予約権も含まれるが、新株予約権の行使期間が終了したような場合、その変動部分が1%以上になれば、変更報告の対象となる。新株予約権及び新株予約権付社債の潜在株比率が高い会社は、その行使期限前後で大きく株主保有比率が変化する可能性もある。

※以下、その2は次号へ
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再び、業界のインサイダー取引について (2月10日)
 有利な情報は誰しも欲する。時には、その情報がビジネスの起点ともなるので、仕事をする人にとって有利な情報の入手には労力を尽くす。しかし、それがインサイダー情報で、かつ自らの有価証券売買(株だけではなく、最近は債券やデリバティブも含めて)を実行しようとすると、インサイダー取引という犯罪になる。
こんなことは、業界のプロと言われる人々なら十分承知しているはずだと思われるが、インサイダー情報に最も近い分、インサイダー取引のリスクは最も大きい。業界のインサイダー取引の問題は、拙稿2月8日分でも取り上げたが、証券会社としての問題を、少し捕捉してみたい。

 本日10日の日経記事に、BNPバリバに対する東証などの取引所・日本証券業協会の過怠金1.8億円の記事が掲載されていたが、日本証券業協会が不当利得の還元を求めたことを受けて、1月18日には、BNPパリバは、12億円を「証券市場基盤整備基金」などへの寄付を前提に「社会還元措置」に投じると発表した。この原因は、アーバンコーポレイションの増資引き受け問題など一連のインサイダー取引及び相場操縦行為に対するものだ。特にアーバン事件は、BNPパリバが自らインサーダー情報を作り、その情報を操作し、その情報に基づくインサイダー取引を行ったと判断されても否定しがたい。(事件の詳細は、拙稿“再考:アーバンコーポレイション事件 (10月14日)”をご参照ください)事件の内容は、資本市場関係者としておおよそ信じられない行為だが、第三者割当のファイナンス・それに絡んだデリバティブ(契約形式)・そして情報操作とインサイダー取引と大仕掛けで、とても個人の犯罪行為とは思えないのが業界での感想だろう。欧州の名門投資銀行であるBNPパリバの組織的関与がないことを信じたいが、そのことは日本の資本市場における自らの行動で示していくことかも知れない。

 一方、証券会社等を監視する立場の証券取引等監視委員会(SESC)は、以下の3つを最近の重点課題として上げている。
【不公正ファイナンス】
証券会社が引受業務等を通じて関与するケースは多くはないが、アレンジャーとして業界関係者が関与するケースが少なくなく、ファイナンスに係るインサイダー取引や相場操縦行為で、特定の証券会社が利用されることもあるという。ちなみに、SESCから課徴金納付勧告や告発を受けたインサイダー事件の件数は、平成19年事務年度(7月から翌年6月まで)23件、平成20年事務年度25件、そして直近の平成21年7月から12月までは、半年間で24件と倍のペースになっている。
【業務の多様化に伴う証券検査の実効性の向上】
投資銀行や一部の証券会社の業務は、従来のブローキング業務から自己資本を使い収益を求める業務に変化しているので、信用リスク・市場リスク・流動性リスク等財務の健全性に関するリスクが高くなってきている。一方、私募ファンドなどの集団投資スキームの業者の一部に、詐欺に近いような行為も見られる。
【新たな商品、取引、市場等に関する強化】
CDSなどの店頭デリバティブ取引、DMA(Direct Market Access=ファンドなどの機関投資家が、証券会社のシステムを通じて、直接取引所システムに発注できる)やアルゴリズム取引などの取引手法、ダーク・プール(証券会社単独若しくは複数で行う顧客注文の付け合わせシステム等)等新たな市場におけるインサイダー取引などの不正取引の監視。その為のITシステムの高度化対応。
 
 証券会社内においても、M&Aやファイナンスに係るインサイダー情報は、法人関連情報として管理されているが、適時に情報の入力と管理がされているか、情報入手後の情報にタッチした者の記録はされているか、利益相反行為のチェックは適時実行されているかなど、今後益々投資銀行としてのインサイダー情報管理(法人顧客の未公開情報)をシステム的に強化して行うことが求められている。コストが掛かるとしても、それが日本の投資銀行の質を高めていくことに繋がると信じたい。
 
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ディスクロージャーを考える:ファイナンスの場合 (2月2日)
企業からのディスクロージャー(情報開示)は、資本市場にとって最も重要な情報になる。当たり前のことかも知れないが、この情報発信は、株主や投資家に向かってのものでもある。制度としては3つ程あるが、会社法での株主への事業報告・金融商品取引法での投資家への開示制度・そして取引所ルールでの適時開示制度があり、この適時開示制度はタイムリーディスクロージャーと呼ばれ、株主や投資家、そして市場に対して最も多くの情報を提供している。適時開示制度は、大きく分けると子会社の分も含めて、決定事項と発生事項、それに決算や業績・配当予想などに分けられるが、企業の戦略決定に関する事は、決定事項として決定したら速やかに開示しなければならない。M&Aやファインナンスも、当然決定事項としてその対象になるが、適時開示としてタイムリーであるとともに、一般株主や投資家が対象の開示なので、簡潔かつ明瞭に会社側の戦略決定を伝えなければならない。しかし、最近の適時開示資料(所謂記者発表分)をみると、これでは一般株主や投資家には分かり難いであろうと思われる。M&A特にMBOなどは、法律専門家による文案作成とみられ、文章量が多く内容把握まで相当の努力を要する割に、実質的情報量が少ない。法的リスクを考慮しての文案と思われるが、ハッキリ言って、一般的には悪文の典型例のようなものも見受けられていた。一方、ファインアスに関しても、取引所の適時開示ルールの雛型にそって記載されている記者発表文ではあるが、専門用語の使用も多く、また現状では何か意味があるのか分からない部分もあり、これも普通の投資家や株主には、正確な理解が難しいと思われる箇所も目につく。ディスクロージャーは、本来は株主や投資家の為のものなのだから、彼らが理解可能な平易さが求められるが、何も公表する企業側の責任だけでもないように思われるので、敢えて事例を使って考えてみたい。

企業にとっても、ディスクロージャーは難しい問題で、自らの戦略(決定事項・発生事項)を平易に語ることはまだしも、数年、場合によっては数十年に一度しか行わない、M&Aやファインナンスについて、取引所が示す開示の雛型や、弁護士や投資銀行の助言をもとに、専門用語を多用した文案を使わざるえない現状もある。

ある金融機関のファイナンスに関する記者発表文から考えてみると、以下の部分が、実態は何か・目的はどうか・状況はどうかといった目線からは、記載方法に工夫が必要に思われる。

・募集する株数について:冒頭の募集株式の種類及び数は、実は募集する株数の全体ではなく、多くの場合、別途、オーバーアロットメットによる第三者割当で発行される新株も加わる。オーバーアロットメントは、引受幹事に割当られるが、引受幹事は、募集新株と一緒に募集活動を行うのだから、投資家にとっては合算した数字が見やすく示される方が意味もある。そもそも、オーバーアロットメントを説明する記載においても、ほぼ同様の記載内容で、投資家には募集と売出しが同時に行なわれる意味が分かり難い。(募集活動を円滑に行う手段だが、そもそも募集出来ないものを、どうして引受けて売り出すか、理解が難しいかもしれない。)

・資金使途:株主にダイリューションの負荷を負わせるエクイティ・ファイナンスで、株主が最も注目するのは、そのリスクマネーをどう戦略的に使うかということだが、持株会社である上場会社の公募増資が、子会社銀行の払込みに使われるのは当然として、その銀行が何に資金を使って戦略投資を行うことで企業価値を高めていくかということが注目されている。その株主や投資家の期待に沿った、資金使途記載があるべきではないだろうか。

・利益配分:株主への利益配分が、増資前と変更なければ、そう記載すれば良い。昔話で恐縮だが、利益配分ルールといって、エクイティ・ファイナンスをした企業が、株主に対する早期の利益還元(配当等)増加を約束した時代と同様の開示パターンの雛型で、記者発表文にはこの記載する箇所があるが、実質何も変更がなければ、無理な記載を求めなくとも良いのではないだろうか。その方が、会社の資本政策に関する理解を、株主がしやすい。

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銀行の国債等保有について (1月14日)
 堅調な米国株式市場からは、ハイテクとともに銀行の収益回復予想が伝えられているが、債券投資を始めとする運用部門が好調のようで、早くも銀行の高額ボーナス回復を想定して、それを牽制する様な政治的動きも目立ってきている。かたや日本の銀行に関する話題では、引き続く大型公募増資・持合株解消・IFRS(国際財務報告基準)への対応・新BIS基準のコア自己資本問題など、どちらかと言えば資本市場にとっての懸念材料となるものが多い。その中で、銀行の国債保有は、リーマンショック後も増加し続けているが、このことの現状について見てみたい。
 先ず、金融機関の国債保有の状況であるが、日銀の資金循環統計によると、昨年9月末時点で565兆円(国債・財融債・国庫短期証券の合計)に達していて、リーマンショック時の1年前と比較すると12.3%の増加となっている。
同じく、資金循環統計による銀行(預金取扱銀行)の資産に占める債券(社債を含む)の割合は、31%(昨年9月末時点)となっていて、貸出の43%に次いでいる(株式・出資金は、3.4%)。この割合は米国の銀行の18.5%に比べてかなり高い。つまり、これだけみると日本の銀行の収益は、米国銀行よりも債券運用の影響を受け易く見える。ちなみに保有する債券の9割以上が、上記統計の国債等になっているので、国債運用が銀行収益に与える影響が米銀などよりも相当大きいとも言える。

一 方、IFRSにおいて金融商品会計が見直され、原則的に金融商品は“公正価値”という名の時価で評価しなければならない。ただし、単純な貸付金に見られる特徴を有し、契約上の利回りに基づいて管理されている金融商品は、“償却原価”と名称で時価評価をしなくても良い(減損処理は行う)。昨夏、話題になったのは、日本の銀行が大量に保有する国債は、この“公正価値”という時価評価なのか、それを免れる“償却原価”なのかということだったが、日本の銀行の主張を簡略化していうなら、保有する国債は、低金利の預金見合いで保有しているので、契約上の利回りに基づいて管理されている金融商品に保有する国債も該当し、時価評価を免れるというものだ。この主張が概ね通り、預金見合いで保有する国債は、“償却原価”で評価することになり、時価評価が適用されない予定である。

ここから少し分かり難い話になる。
一昨年秋のリーマンショック時に、金融機関間の取引の手控えにより、証券化商品の流通値段がなくなったり、国債などの流動性の高い債券も大きな変動をした。この為、主要国金融当局の要望により、主に金融機関が保有する債券を、保有区分の変更をすることで、時価評価を免れる会計処理の時限措置を、日米欧とも認めた。日本では、実務対応報告第26号「債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い」であるが、これにより、売買目的有価証券(時価評価)を満期保有目的の債券(償却原価)へ、その他有価証券(時価評価若しくは償却原価)を満期保有目的の債券(償却原価)へ、それぞれ保有区分変更することが可能になった。この措置は、本年3月末までで打切られる方向のようであるが、現在までに利用した企業は12社であり、うち9社が銀行となっている。利用した対象証券で、最も多かったのが変動利付国債で7社、以下は外国証券3社、ユーロ円建債2社、証券化商品3社となっている。所有区分変更は、全て、その他有価証券から満期保有目的の債券への変更であり、変動利付国債では、簿価ベースで1300~1400億円台の区分振替が3社、ほぼ同金額で行われている。

一般には、やはり銀行の金融商品保有は、株式・社債とともに、国債についても少し分かり難い。
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“100%減資”への代替案(私案) (1月13日)
昨日の本欄において、JALの“100%減資”案について触れ、結局は反対する様な記載になってしまった。では、何か良い考えがあるのかというと、資本市場的視点からは、以下の様な方法もあるのではないかということを、示しておきたい。
 先ず、JALの現在の株主に関する論点を整理しておくと、第一に株主責任の問題がある。銀行団は債権を相当部分放棄するし、退職者も含めて従業員の年金も大幅に減額する。加えて、大幅な債務超過なので、株主責任として、既存株主は退場すべきだという考えで、これは資本市場の論理として尤もなことだ。
 次に、債務超過に陥ったJALを再生する為には、企業として存続させる為に新しい資本が必要で、再生支援を行う支援者(支援機構や政策投資銀行、メガバンク等)が、新株式を払い込むが、再建計画が遅滞なく進むためには、少数の新株主=再生支援者による株主総会運営が好ましい。つまり、40万もの株主を残しておくと、再建計画の遂行における株主総会運営に支障をきかす可能性がでてくる。
 結局100%減資案で、既存株主に退場していただくのが正解ではないかというと、そうとも言い切れない。それは、JALは、主に乗客という個人を相手にしたビジネスモデルで、これは再建計画においても変わらない。その視点で見た場合、40万の個人株主(単元株主数)は、顧客資産にも見え、再生途上で、彼らを切り離すことは、“もったいなく”思える。
 では、株主責任を取り、再建計画遂行にも支障が生じず、40万人の個人株主層を再生にも活用できるような案(資本政策)はあるのかというと、以下の様な方法もあるのではないだろうか。

①無議決権株式を発行出来るように定款を変更
(既存株主の株式を、全て無議決権株にする為に)
②発行済株式を全て無議決権株式に変更する旨の決議と同時に、1単元株に1円の資本が残るように減資を実行。
(実質は債務超過だが、現在ある資本金2510億円の内、単元株数27億株分の27億円を残して減資。99%減資案に近いが、計算上は93%減資案になる。)
③支援者への新株式(通常の議決権を有する普通株)を割当てる。
(既存株主の株主責任を明確にする為、新たに払い込まれた資本金での持分について、既存株主を劣後させる必要がある。その為、既存株主の無議決権株は、残余財産分配権を新たに払い込まれる普通株より劣後させる設計が必要。)
④既存株主を顧客資源として活用する為に、40万人の無議決権株主に対して、再建計画に見合った何らかの株主優待策を継続する。
⑤この無議決権株は、再建計画にそったスキームとする為に、再建計画の年限の沿った期限付の設計とすることが望ましい。
(無議決権スキームは、再生スキームとして、企業再生後は、その機能が普通株に吸収されるべきと考える。又、JAL再生後は、普通株が再上場されるだろうが、無議決権株の株主(つまる現在の既存株主)は、再上場時に普通株式を優先取得できる権利を期限付き(例えば5年以内)で付与することも検討すべきだろう。このイメージは、40万人の既存株主が、JAL再生後に再び株主となるかどうかの選択権を残しておくという意味である。)
⑥株主責任を、日本国民に対して一層明確にする為に、取引所は上場廃止とする。但し、40万株主が、上記スキームの様に無議決権株主になったとしても、その流通の場を確保することは重要となる。その為に、既存JAL株式の流通市場として、フェニックス市場の機能を整備しなおして、これを活用する。
(つまり、上場廃止にはなるが、既存株主がJAL再生を待つ間の流通市場は確保する。)

 以上の様なことは、資本市場が今まで対応してきた再生スキームではない。つまり、業界関係者も対応したことがなく、実務的な反論や法的確認事項もあるだろうが、仕組みそのものは、既存の制度やスキームを組み合わせたものなので、実現することは可能と考える。
国民的再生案件には、資本市場の新しい取組み(といっても使うのは、今ある道具なのだが)も、試されている様に思う、業界関係者としての試案である。
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100%減資という企業再生手法 (1月12日)
JAL再建策の決定の渦中ではあるが、単なる航空会社としてではなく様々な文化も日本国民にもたらしてくれた会社として、個人的には“沈まぬ太陽”であって欲しいと思う。
 しかし、マスコミ報道の再建案では、実質的経営破綻の株主責任ということで、“100%減資”方式により、資本市場からの一旦の退場を余議なくされる可能性が強まっているという。この“100%減資”について、資本市場的視点から考えてみたい。

 先ず、“100%減資”の実質的意味は、経営破綻した企業の株主が、その株主責任を取るということで、その企業の再生過程で、株主でなくなる。その方法は、今までの株式を、企業が強制的に無償で買取る株式に換え、企業が既存株主から株式を取得、同時に支援者が新株の払込みを行い、この支援者が100%の支配権を保有することで、旧株主は再生企業の株主構成から除かれる。
 この方法による通常の手続きは、以下の様になる。
①全部取得条項付種類株(企業が株主より強制的に株式を取得出来る株式)を発行できる旨の定款変更を、株主総会で特別決議
②発行済株式を全部取得条項付種類株に変更する為の、株主総会特別決議
③全部取得条項付種類株の全部を、無償で○月○日に株主より取得する旨の株主総会特別決議
④100%減資する旨の株主総会特別決議(債権者保護の為に、一ヶ月以上の異議申述期間)
⑤支援者に対して、第三者割当てで新株式を○月○日に発行する株主総会特別決議
⑥○月○日に、新株主による臨時株主総会開催で、取締役選任等の決議。
⑦新取締役会において、企業が取得した旧株式を消却する旨の決議を行い、これで旧株式は完全に消滅する。
旧株主の保護手続きとしては、定款変更決議時の買取請求・無償と旧株式の買取価格を決議した場合の裁判所に対する価格決定の申立てがあるが、債務超過会社の場合は、買取価格を無償と考えるのが法曹界の主な見解となっている。
 以上で、再生企業における旧株主の株主責任として、企業への株主としての権利は消滅する。

一方、取引所ではどうなるかというと、上場廃止基準では、破産手続き、再生手続き又は更生手続きを必要とするに至った場合、又はこれに準ずる状態となった場合は上場廃止となるが、再建計画の開示を行った場合は、時価総額が10億円以上あれば、上場を維持することが出来る。
 債務超過の企業において、減資の経済的意味は余りなく、“100%減資”スキームは、再生企業から旧株主を排除する為に使われるが、取引所においては、ある一定規模以上あれば、再生企業の上場を維持し、既存株主に売買の場を提供することが出来る。

JALの場合、どうなるかは筆者の推し測るところではない。
しかし、JALには昨年9月末で401,807名の株主がいる。そして、報道される再建策では、マイレージ制度は維持されるというが、“100%減資“案では、株主優待制度は維持できない。
勿論、この株主優待制(航空券・ツアー旅行・ホテル優待)が再建策に支障となるなら、旧株主ごと切り離すべきだろうが、40万人を得意顧客群として見直す柔軟性が再建策とその舵をきる政策にあっても良いのではと思うのは、筆者だけであろうか。
 
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四半期開示に対する利用者側の視点 (11月10日)
ディスクロージャーは、公開企業と投資家の会話なのだから、それはスムーズになされるのが望ましいし、市場機能としての開示制度は、本来その仲介をするのが目的であるはずだ。
最近のディスクロージャーは、開示制度もIR活動によるものも随分充実してきているようにも思うが、情報を発信する企業側の負担は、相当に重くなってきている。四半期開示制度や、内部統制報告書制度が導入され、公開会社の開示制度の負担に見合う、投資家側の活用は、有効にされているのだろうか。
 特に四半期開示については、企業側の負担感に見合う、投資家側の有効活用について、一部に疑問視する考えもあり、東証の上場制度整備の実行計画2009においても、四半期開示のあり方に関して、別途専門部会を設けて検討されている。
 そもそも四半期開示制度は、金商法上の四半期報告書と、取引所ルールの四半期決算短信によるが、制度としては昨年度から始まっている。その開始2年目の制度に関して、その有効性や更なる充実を見直すこと自体、非常に良い事だと思う。東証では、情報を開示する側の上場会社に対する調査とともに、提供された情報の利用者側調査として、機関投資家14社31名のアナリストにヒアリングを実施。その結果を、10月21日に公表しているが、その概要から、四半期開示に対する論点を以下に整理してみた。
【四半期開示の有効性に関して】
・制度としての四半期開示は、日本と米国だけだが、欧州の有力企業も自主的に四半期開示を行っているので、グルーバルな投資家を想定する場合には有効。
・業種毎に財務情報に関しては特性があり、小売りは1ヵ月ごと自主的に売上高を開示する場合も増えてきている。建設やソフトなどは、1年単位で業績を見る必要がある。つまり、業種によって四半期開示は、それ程有効でない場合もある。
・投資家側の短期的な利益指向を助長している面がある。
・実際に四半期開示情報を分析する対象銘柄は限られている。
【四半期開示の時期に関して】
・注目する大企業に関しては、足元の業績動向を迅速に伝えて欲しいので、正確さより早い方がいい。出来れば、欧米企業並みの2~3週間後を目途にしてほしい。
・アナリスト・カバーしていない銘柄の迅速性は求めない。(セルサイドの証券会社のアナリスト・カバーは、公開会社の半数以下と言われている)
【四半期開示の内容に関して】
・四半期決算短信の簡略化には反対する。開示時期の早期化よりは、セグメント情報(現在任意)等の充実を求める。
・サマリー、定性的情報も一部では定型化しているものの、会社側の考えを知る上では有効。また、現在連結情報の開示において、単体情報も欲しい。
・カバーしている銘柄に関しては、決算補足説明資料の公表や、説明会開催など、市場との対話の必要性を求めるが、取引所ルール化ではなく、取引所の推奨・要請によるべきとの意見が多い。
【現四半期開示の問題点に関して】
・四半期決算短信(取引所開示)については、軽微な訂正を不要として、正確な数値は四半期報告書(金商法開示)に委ねれば、企業側の負担が軽減されるのではないか。
・四半期決算短信に対する公認会計士のレビューに関して、米国並みの簡素化を検討して、企業側負担の軽減を試みては如何か。
・四半期決算短信と四半期決算報告書の役割が、投資家にとって明確でない。現状では、四半期決算報告書は殆ど使われないし、反対に四半期決算報告書の提出が早くなれば、四半期決算短信は不要と考える。

以上がアナリスト意見の概要であるが、ディスクロージャーは基本的に公開企業と投資家の対話であるので、双方の負担が大きいものに関しては、両者の選択に任せるべきではないだろうか。
 四半期開示についても、この利用状況から考えれれば、公開企業側の選択に任されても良い様に思う。
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業界に於ける取引関連情報の取扱いに関して (10月23日)
 額面100円の仕組み債で、8円も抜いた(仕入れ価格と販売価格の差)と営業マンに聞いた時は、そんなことを機関投資家相手にして良いのかと一瞬思った。しかし、話を聞いてみると、20年債の○○リンク債なので、例えば想定利回り8%の物を、7.6%でも顧客に納得いただいて、購入していただいたものだと理解し直した(話を単純化している)。この様に、取引に関する情報は、伝え方や取扱いの仕方によって、投資家の信頼を得る事もあれば、逆に失ってしまう事もある。
現在、業界内に於いて実際に議論され始めていたり、また何らかの問題が発生していたり、あるいはその可能性があると思われる業界内の取引関連情報について、少し考えてみたい。

【株式関係】
米国で問題になったフラッシュ・オーダーの様な仕組みは、日本にはないので、取引情報に関しては、リアル・タイムで個人投資家でも入手することは容易で、何の問題もない。しかし、株式を貸し借りする情報に関して、改善の余地があるように思う。現在は、制度信用の貸借銘柄情報・信用取引全般を集計した信用銘柄情報があるが、この部分は、全体の日本株の貸し借りの5~6分の1程度に過ぎないと見られている。銘柄を大量に保有する機関投資家が、現金や流動性のある債券を担保にとり、外証などを通して、海外のヘッジ・ファンド等に株式を貸し出すレポ取引がある。日本株の貸し借りの相当部分を占めるレポ取引の情報に関しては、個人は知る事は出来ない。
一方、昨年10月から始まっている空売り規制において、発行済みの0.25%以上の空売りポジションを保有した者に対して、日々の報告義務を課しているが、この情報は取引所で公表される。しかし、開示されている報告書様式が、証券会社毎まちまちで、全体像を把握するのは難しい。せめて、銘柄毎集計を公表するのであれば、投資家によって有意義な情報となるかも知れない。

【債券関係】
 債券取引は、殆どが相対取引なので、国債以外の取引情報の共有が難しいと思われていた。社債市場改革の為のワーキングにおいても、社債市場発展の為には、この取引情報の共有問題が取り上げられている。
 現在、社債の情報に関しては、20社の証券会社へのヒアリングベースで、日本証券業協会が集計する公社債店頭売買参考統計値(個人向け社債は、10社ヒアリングの個人向け社債等の店頭気配情報)があり、日々公表されている。集計の労を取られている協会には敬意を表したいが、これらのデータは証券会社や債券投資家にとって、取引の為の情報として、有効と見られていない(筆者は、格付けマトリックス別の集計された利回り情報など参考になると思うが)。それは、何故か考えてみたが、2点ある様に思う。一つはこの情報が、あくまでもヒアリングベースであって実際に取引された債券価格でないこと。二つ目は、毎日の集計ではあるが、取引時に必要なリアルな情報ではないこと。この2点に、債券取引情報の改善の余地がある様に思うが、改革のヒントになるような動きもある。
この10月から、CPに関しては期間や格付けに分類した実際の取引データを、証券保管振替機構が公表する様になった。CPに関しては、既に100%電子化され、取引者も限定されていて、かつ証券保管振替機構において、DVPで物とお金が同時に決済される。この決済データを、取引データとして使用した訳だ。社債についても、物は100%証券保管振替機構において決済され、資金取引も同時に行われるDVPは、全体の取引の3~4割だと言われているが、この決済データを、取引データとして活用すれば、逆にDVP部分も増加する可能性もある。(ただしコストがかかるので、誰がコスト負担するかという問題がある。)

 勿論、顧客個々の取引情報に関しては、例え海外ファンド等であっても守られるべきだが、取引された結果の情報は、取引参加者間で共有する仕組みを有してこそ、取引参加者も増加し、取引も拡大する。仕組み作りのコスト負担は、業界が共同で行うことではないだろうか。
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投資家目線の開示制度 (10月6日)
実は、最近心待ちにしている月例の記者会見がある。東証の斉藤社長の月例会見だが、仕事柄、取引所動向をチェックしておく目的以外に、その会見内容そのものに興味を覚える。多分斉藤社長のお人柄なのだろう、少し込み入った様な事柄も、方向性を明確にされ、分かり易く説明されておられる。そんな対応に期待してだろう、記者も時々脱線しているような質問を投げるが、これにも、ちゃんとボールを返している。東証トップ=取引所の方向性が、明快にかつ平易に示されていることが、大事なのだ。
 その東証の先月末の社長会見で、上場制度整備の実行計画2009が示された事は、既にお伝えしたが、その中に、開示制度の見直しがあり、四半期開示と内部統制の実務の在り方に関して、検討するとある。
 両制度とも、ここ1~2年で導入された開示制度であるが、四半期開示は取引所の適時開示=タイムリー・ディスクロージャーの推進で導入された。(内部統制は、コーポレート・ガバナンス向上を目的に、会社法・金商法の内部統制報告制度で導入されたもの)両制度の導入により、確かに会社情報は、より最近の物が手に入るし、会社の状況も分かり易くなったが、組織の小さな新興企業には相当の負担となっている。東証社長は、この四半期開示を見直すことを以下の様にコメントしている。
・四半期開示は、日本と米国だけ
・海外年金基金などが、本当に四半期開示を必要としているか疑問
・短期利益追求の弊害もある
勿論、適時開示の目的上、四半期開示上あった方が良いに決まっているが、上場会社が負う負担と投資家が受けるメリットを比較すれば、企業規模や業種によって、開示の軽減措置があっても良い。せっかく企業が苦労して作成したデータも、一部アナリストしか使わないのでは、市場機能として適時開示の有効性にも、疑問譜が付く。導入して間もない四半期開示ではあるが、その制度を見直すという姿勢は、とても好ましく思える。
 取引所は、投資家にとって、取引を提供する場であるが、その取引の為に、取引される有価証券の情報を、タイムリーに投資家に提供する場でもある。その意味で、東証の適時開示制度は有効に機能していて、投資家は、情報ベンダーに頼らなくても、適時開示閲覧システムとして、TDnetを活用することが出来る。少し要望を加えるなら、適時開示に関して、以下の点の改善をお願いしたい。
・TDnet活用に関しては、広く投資家の利用が拡がるよう、投資家への啓蒙活動をすること。
・TDnet利用情報に関して、過去2年適度まで利用可能とすること。
・適時開示情報に関して、同一期間内の銘柄毎比較が可能な情報検索を可能とすること。(例えば、M&A、業績修正、増配、株式分割等)
・適時開示情報のXBRL化で、投資家が利用可能なソフトや機能を、分かりやすく提供されること。

取引所があるから、投資家は、上場されている株や債券などの情報を、容易に入手することが出来るが、投信や外債などは、情報入手を証券や銀行などの市場仲介者に、依頼するしかないのだろうか。
 そんなことはなく、国内で募集される投信や外債の金融商品は、金融商品取引法上の開示制度でディスクロージャーを求められる。届出書を出さなければならないし、何か変更したら訂正も求められる。同様の内容は、投資家に目論見書として、募集活動を仲介者が行う時に、仲介者から渡さなければならない。
内容は、EDNETで閲覧することも可能だ。しかし、可能だが大よそ投資家仕様になっていなく、投資家の視点から、求める投信や外債の内容が分かるところまで辿りつくのは、EDNETに精通していなければ難しい。目論見書があるではないかとの意見もあろうが、実はその目論見書を入手する為には、取扱証券若しくは金融機関に、口座を開設しなければならないのが現状である。投信の目論見書に関しては、内容をもっと平易で分かり易くとの議論もされているが、投資の検討段階で、容易に入手できることが重要に思う。そもそも、目論見書の電子交付が可能になっている。投信の目論見書は、よくリスクを説明しなければ渡せないと思っておられる金融機関は、金商法の行為規制を、曲解しておられるように思う。
投信には、取引所の様に、情報を集約して、適時に流す所がないのが、問題なのだろうか。

以上、現在の開示制度に関する雑感である。  
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証券会社の風景 (10月2日)
  10月4日“投資の日”を前に、その投資への大きな窓口である証券会社の近景を、眺めてみたい。
先ず象徴的な事として、10月2日日経一面広告には投信の一面広告が、銀行・証券共同販売の形で掲載されていることに気付く。商品内容は別にして、新規で設定される投資信託を、銀行と証券会社双方の窓口で大々的に販売するのは、初めてのことだろう。このことは、三井住友ファイナンシャルグループが10月1日より日興コーディアルを完全子会社化したことによるが、ここ一年の金融危機の影響もあり、証券業の業界地図の位置や色彩も随分変わってきているように思う。証券業界の再編に関する動向を、少し整理してみたい。
 証券業は銀行業と異なり、基本的には登録業なので、新規参入が容易(登録要件はあるが)である。加えて、“貯蓄から投資”政策の推進もあって、株・ディリバティブ以外の金融商品は、これも基本的に金融機関でも取り扱える。6月からは、ファイアーウォール規制(銀行・証券の情報共有等)も緩和されている。つまり、参入も自由で、銀行との競合部分も増えているので、再編圧力のかかりやすい業界構造になっている。本年に入ってからの、業界再編には、以下の3つのパターンがある。
・銀行と証券の業務融合戦略に関するもの(メガバンクグループ、大手証券及び外銀・外証の問題)
・上記の影響を受けた中堅証券・地域金融機関の動向に関するもの
・競争が厳しくなってきているオンライン取引・FX取引などの事業譲渡に関するもの
更に内容を見てみる。
【銀・証の融合・連携強化に関する動き】
金融ビックバン後の銀証融合の動向だけではなく、ここ一年は、金融危機による米国金融機関の再編(主に投資銀行)や整理に関わる影響を受けている。
・三菱UFJファイナンシャルグループは、三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券日本法人を来年3月まで統合し、総合証券としての機能を強化することを公表(3月)。新証券の出資比率は、MUFG側が60%、米モルガン・スタンレーが40%の合弁会社となる予定。
・みずほ証券(ホールセール)と新光証券(リテール主体)の合併(5月)により、“新”みずほ証券として、みずほファイナンシャルグループの総合証券を目指す。
・三井住友ファイナンシャルグループは、シティより日興コーディアル証券(リテール主体)を取得。10月からグループ参加の証券会社としてスタートさせた。なお、証券のホールセール業務部門に関しては、証券引受などの業務を日興シティグループ証券から譲渡され、日興シティグループの債券・株式などの商品部門とは業務提携をして連携してホールセールビジネスを進める。
・上記の影響なのか、三井住友ファイナンシャルグループは、大和証券グループとの合弁事業である大和SMBC(ホールセール)への出資を引き揚げる事を公表している(9月)。両グループの協力関係はそのままとされ、自己投資部門(大和プリンシパル・インベストメント)への出資関係は変わらない。
今後の大和証券グループの動向が注目されるが、米国における金融機関の公的資金返済に関わる動向も、グローバルな証券業務へ影響する場合もあり、注意を要する。
【中堅証券の動向、事業譲渡に関するもの】
・CSKグループは、事業再編により、2004年に子会社化・昨年100%保有の完全子会社化したコスモ証券の売却方針へ。(年内売却を目指す方針の模様)
・西日本シティ銀行と東海東京ファイナンシャルグループは、合弁での証券会社設立に関して基本合意を公表(8月)。2010年上半期営業スタートを目標とし、西日本シティ銀行が議決権の過半数を取得予定。
・トヨタファイナンシャルサービス(トヨタFS)傘下のトヨタFS証券と東海東京証券会社が来年4月目途に合併へ。トヨタFSは、東海東京ファイナンシャルグループへ5%出資。(9月)
・野村は、参加のオンライン専業のジョインベスト証券を、11月23日より証券本体に統合。
・かざか証券は、オンライン事業をオリックス証券へ譲渡(事業部門の会社分割)。(9月)
・カドヤ証券(鳥取)は、無償で大山日ノ丸証券に事業譲渡。(5月)
・ばんせい山丸証券は、取引所FX取引事業をインバンスト証券へ事業譲渡(4月)
などがあるが、大手の銀・証連携強化の影響による地域金融機関と中堅証券の動向、競争が厳しくなっているオンライン・FX取引での業務集約への動き、共同事業化を名目にした統合など、今後も続く事が予想される。
 
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投資銀行について (9月11日)
投資銀行という言葉は、この一年多少使いにくかった。ベアー・スターンズやリーマンなど米国型投資銀行が金融危機の元凶とされ、高い報酬を求める貪欲さとともに、意外にもリスク管理の甘さが同居する矛盾を顕わにした。但し、欧米ではと断っておく。それ以前は、投資銀行という言葉の持つイメージは、金融機関にとっては、収益性の高い企業や投資家相手のビジネス、金融マンを目指す学生などからは、金融知識水準や報酬も高い憧れの仕事であった。
 そもそも投資銀行とは何か。企業や機関投資家を相手にするビジネスであることは間違いないので、証券会社的区分であれば、リテール業務に対してホールセール業務という大雑把な分け方ができる。しかし、業務内容に関しては明確な定義がないので、以下の業界で使われている定義だと、
A:【伝統的投資銀行業務】債券や株式の引受、債券や株式など金融商品のトレーディング、M&Aアドバイスなど
B:【拡大した投資銀行業務】証券化ビジネス、自己投資、ファンド関連ビジネスなど
となり、現在だとAとBを総称したものを投資銀行業務と呼ぶのが一般的になっている。
 Aの部分は、証券会社内ではホールセール部門として、企業や機関投資家との良好な関係を基に、ここ数十年ビジネスをしてきているが、Bの部分は、この10年で急拡大した部門であり、自己投資部門は他の部門との利益相反リスクもあるので、組織的には分離している場合が多い。
 今回の金融危機で問題となったのは、欧米投資銀行のB部分の業務でのレバレッジが高くなりすぎ、証券化商品が流動性を失った瞬間に、一気に破綻まで追い込まれた。また、この部門のマネージャー・クラスの報酬が、一般の感覚では異常に思える程に高かったこともあって、金融機関の報酬規制の動きが欧米行政サイドで強まった。金融機関特に投資銀行の貪欲さを非難する動きは、グローバルに広まっている。この様な動向を受けて、嘗ての投資銀行業界内(欧米において)では、Aの伝統的投資銀行に戻ろうという考えも出て、A業務のアドバイスを中心とするブティック型投資銀行を目指す動きもあるようだ。しかし、間違いなく言えることは、Bの証券化もファンドも、現在の金融機能の中で重要な役割を果たしており、重要でかつ必要な投資銀行業務であるということだ。又、レバレッジを掛けることが問題ではなく、レバレッジが管理されていなかったことが問題で、これは経営と監督の問題に集約される。
以上は、欧米でのことである。
 リーマンショック後一年たったが、日本ではその投資銀行に関する銀行と証券の考え方の違いから合弁解消の動きが明らかになった。三井住友FGは大和SMBCへの出資(4割)を引き揚げる。
 発表によると、当初三井住友FGは大和に対して銀・証一体化で投資銀行業務を強化する為、合弁の大和SMBCへ出資を増やすことを大和に提案した。確かに、投資銀行業務において引受でもM&Aでもメガバンクと組むメリットは大きい。また証券化や自己投資においても、後ろに金融資産や金融機能が控えている強みもある。欧米の投資銀行が再編と業務縮小を余議なくされている今こそ、周回遅れと言われていた投資銀行業務について、追いつくチャンスと考えるなら日本の金融グループの戦略としては当然の戦略だろう。
 一方、大和は金融危機の影響から、グローバルな金融行政は銀・証分離の方向に向かっているとして、自らの投資銀行業務に銀行の影響力が強まることを拒否した。投資銀行業務において、銀行の金融機能と組む場合、Bの証券化や自己投資のメリットの方が大きいが、このB部分のメリットが大きくなりすぎるとA部分への弊害も出始める。投資銀行内における利益相反の問題である。投資銀行にとって、顧客である企業や機関投資家のメリットを第一に考えていくなら、Bの部分が過大になることを避けねばならない。
これはこれで正しい。
 双方の投資銀行戦略が異なった結果の合弁解消だが、一方はここ10年来の欧米型投資銀行モデルを、一方は金融危機によって修正された投資銀行モデルを、其々目指すとし、相反した状況であり、今後の展開が注目される。
 
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金融教育の3つの流れについて (8月21日)
  “貯蓄から投資へ”の流れを促進する為には、学校教育の段階から金融・資本市場に関する教育が必要である、いや引退された方など高齢者にも理解してもらうべきだ、大学のゼミでの専門的研究を助けるべきだなど、どれも必要な金融教育について、前回の金融危機(日本の)以降もう10年近く取り組まれているが、業界としてもコストの掛かる話しなので、最近は証券会社などのCSRなどの一環で取り組まれることも多い。厳しい業界環境を反映して、金融教育に関する熱気は多少下火になっている。
 この金融教育に関して、3つの視点=流れで考えてみたい。

【上流の金融教育】
この部分は、最近なかなか厳しい状況かもしれない。ここでいう上流というのは、金融の専門家達と見做されている層のことである。例えば、買収防衛策に関する法律解釈、企業統合に係る米国法基準対応(米国株主の為の)、複雑な金融商品に関する会計処理方法、複雑になった開示制度への対応とその対策などについて、専門家である投資銀行・専門分野の弁護士・専門処理する会計士は、どの位、企業側の複雑なニーズに対応し、投資家側の透明性の確保要請に応えられているだろうか。
 そんな背景もあって、金融業のなかでも、さらに金融の専門家“金融士”制度をつくろうという動きが金融専門人材に関する研究会(金融研究研修センター)で検討されている。内容は、金融法務・財務会計・ファイナンス理論(リスク管理を含む)に関して専門性を問う試験を行い“金融士”(仮称)の資格を与える。金融の業務に携わる弁護士や会計士も、この資格を求められるようだか、金融の専門性を業とする金融機関の経営層などのマネージメント部門も、何らかの資格条件が求められていく可能性がある。
 業界としては、グローバルに競争する上で、欧米の金融機関と競合できる金融の専門性を求められていくので、良いことなのだろう。逆にいうと、現在の日本の金融専門家の専門性について、企業側も投資家側も不満があるということなのだろうから、業界としては良く議論してもらって、結果を謙虚に受け止めるべきだろう。

【中流の金融教育】
この部分は、段々厳しくなっている。ここでいう中流とは、金融サービスを使う企業のことである。例えば、企業が金融・資本市場の機能を使って、金融機関からそのサービスを受けようとした場合、その前提となるディスクロージャー制度負担は年々重くなっている。加えて、金融サービスを使おうとした場合、その影響の測定も、会計基準や内部統制上求められそうなのが、最近の考え方になりつつある。
 つまり、企業の経営者は、投資銀行や弁護士・会計士の専門家任せでは、企業に大きな影響を及ぼす金融サービスは使えず、コーポレート・ガバナンス上の責任や、国際会計基準上で求められる企業としての判断基準に対応する為に、金融サービスに対する専門知識が、企業の経営者にも求められそうだ。
 前述の、金融のプロ“金融士”資格を、CFOなど企業の財務部門に拡大して、その資格基準を義務付けては如何かとの議論もあるようだ。しかし、業界としてはプロの専門性が求められているので、専門的な情報提供を、企業側に容易に理解出来るよう提供することも、プロの仕事と考えるなら、余り金融サービスを使う側の負担を、これ以上負荷すべきでないと私見では思う。

【下流の金融教育】
上中下の下の意味ではなく、ここでは拡大する裾野の意味である。金融知識の裾野拡大の為には、学校教育は当然必要だろうし、業界としても持続的な教育支援を行っていくことは誰しも否定しない。しかし、現在協会やNPOで行われている学校への金融教育が、本当に実になるよう、金融教育の成果が生きるようなビジョンも必要だと思う。“必要”こそ教育の基本なのだから、学校教育で行う金融知識が広く必要となるシステム構築にも尽力する必要がある。平成21年度税制改革で、創設が決定した日本版ISA(少額非課税投資制度)でも良いし、証券業協会が提案するチャイルド・ファンド構想でも良い。日本版401Kの参加者拡大や制度充実でも良い。業界として、これらの少額投資スキームを、個人投資家拡大のビジョンとして注力することこそ、金融教育が活きる金融ビジネスの裾野拡大になると信じたい。

 
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少し分からない事・ディスクロージャーの方向性 (8月13日)
 毎年の様に企業のディスクロージャー負担は重くなるように思うが、それは会社と株主、あるいは株主間(将来株主の投資家を含める)の情報の非対称性を、可能な限り減じるという目的だと思っている。つまり、“貯蓄から投資へ”のような政策目標があるのなら、個人の株主や投資家の視線に合わせたディスクロージャー制度が構築されるべきである。
・内容は、分かりやすく
・タイムリーディスクロージャーというか、情報の公表は迅速に
・公表される情報の入手手段は、一般個人にも負担なく
以上のようなディスクロージャーの方向性は概ね守れていると信じるが、時々少し分からなくなる様なことに遭遇することがある。
 内容の分かりやすさに関しては、企業のディスクロージャーはIRなどの経験も踏まえて随分進歩して、有価証券報告書や決算短信等の記載は、一般的に平易なものになっていると思う。しかし、時として難解なディスクロージャーに出会うものの代表は、MBOなどのM&A関連についての会社の意見表明である。
 買付け側の買収目的も悪文の典型のようなものが目に付くが、株主からの訴訟リスクに備え、法的リスクを避ける目的で弁護士が作成したものなので仕方ないかもしれない。しかし、会社側経営者は、その賛否に関しての理由を、株主に明確に伝える義務がある。
 また、投信の目論見書(有価証券届出書)記載が、個人投資家には分かり難いと言われ、予定される開示制度改革では簡素化・標準化の動きがあるようだ。証券などの販売現場では、目論見書交付義務があるので、投資家には配布するが、実際は販売員も投資家も販売用資料(目論見書内容に沿った)で対応しているのから、不便を感じないのかもしれない。しかし、販売用資料は販売時しか入手できないので、その後、投資家が内容を知る手段は、EDINETで提供される目論見書内容だけになる。よって、目論見書改革は、個人投資家の立場からは期待されている。
 一方、株主や投資家に対する業界からの情報提供も、一種の業界ディスクロージャーだと思うが、業界の統計資料などは、過去何十年も同じ手法で集計しているような物を公開していたのでは、投資家のニーズに応えられない。例えば、証券化商品は一括の集計になっているが、証券化されているものの内容を知りたいし、空売り規制で各証券からの報告一覧表を見たいのではなく、銘柄毎の集計が知りたいが、その集計表はない。株主や投資家ニーズを意識した情報の集計や公開は、業界の責任であると思うが、情報ベンダー頼りでは、少し情けない。
 情報入手手段については、殆どの投資家が何らかの形でネットにアクセス可能なので、EDINETやTDNETにより、投資家間の情報入手の非対称性は随分と解消された。しかし、この情報入手(企業側からの情報発信)体制についても、多少疑問を感じることがある。それはEDINETやTDNETでの、情報提供側に対応が義務付けられたXBRLであるが、導入目的は、投資家の企業間の財務データ比較等を容易にし、海外投資家への英文表示にも対応できるとされている。このこと自体は、海外・機関投資家の売買を促し、国際間のM&Aへの利便性も強化されるという事なので、非常に重要なことである。しかし、現段階では投資家サイドがこのXBRL開示を利用しようとすれば、何十万、何百万とする専用ソフトが必要である。現段階では、この情報入手手段において、投資家間の非対称性があると言わざる得ない。
 確かに、XBRL処理はお金の掛かることだろうが、それなら業界が負担し、個人投資家利用も可能とするべきではないだろうか

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企業のIR活動に対して、業界は(8月10日)
 公開企業のディスクロージャーに関する負担は相当に重い。会社法での株主通知の早期発送や総会での議決権行使状況の開示要望、金融商品取引法開示での四半期開示や内部統制報告書、取引所上場規則での適時開示要請やコーポレート・ガバナンス報告書作成義務など、とても財務・経理部だけでは対応できそうにない状況になっている。更に、少し先とはいえ連結決算内容が大きく変わる国際財務報告基準(IFRS)対応が控えている。
 加えて、株主や投資家とのコミュニケーションの充実要望から、IR活動は当然の様に求められる。
その状況に関して、東証によるコーポレート・ガバナンス白書2009(今年1月公表)から取り上げてみると以下の様になっている。
【個人向け定期的説明会実施】
東証上場会社の全体の26.9%が実施(前年比+4.8%)。実施会社の83.3%が代表者による説明。
※一部特定投資家に対して優先的に企業業況等の情報開示を実施するセレクティブ・ディスクロージャーをポリシーとして行わない会社も。
【アナリスト・機関投資家向け定期的説明会実施】
東証上場会社の全体の70.9%が実施(前年比-0.5%)。実施会社の98.4%が代表者による説明。
開催方法として、遠隔地からのネットや電話を使ったミーティング開催もある。
※限定された投資家のみを対象とする問題点を認識して。その内容を自らのホームページで配信する取組みも。
【海外投資家向け説明会実施】
東証上場会社の全体の16.3%が実施(前年比+0.7%)。実施会社の90.0%が代表者による説明。
年一回、説明会や個別ミーティングを開催する方法が一般的で、欧米だけではなく、最近は東南アジアへも。英文によるネット説明会や、アニュアルレポートの充実も施策に。
【IR資料のホームページ掲載】
何ならかのIR資料を自社のホームページ上で掲載しているのは、東証上場会社の全体の87.5%が実施(前年比-5.1%)。IRの補足説明資料として掲載されているもので、「決算情報」24.0%、「有価証券報告書」36.9%、「株主総会招集通知」8.3%。
【IR専任部署(担当者設置)】
東証上場会社の全体の80.7%がIR専任部署を設置している。
 これらの公開企業のIR活動に対して、日本アナリスト協会では、証券アナリストによるディスクロージャー優良企業の選定(平成20年度は、13業種215社対象)を行っていたり、東証もディスクロージャー表彰制度を実施して毎年5~7社程度を表彰している。また、IRコンサルティング会社などが、企業のホームページをIRの視点から評価する表彰制度もある。
 公開企業のディスクロージャー制度の負担は相当に重くなっているので、企業によりIRの深度が異なっても仕方がないようにも思うが、表彰制度等で、企業に一層の投資家・株主向け情報発信を促すのは、これも市場仲介者として当然の行為だろう。しかし、同一企業情報にあっての、個人と機関投資家、外人と日本の投資家の情報の非対称性があってはいけない。
 表彰して、IR意欲を引き出すことも良いが、企業が発信する株主・投資家向け情報を、集約するインフラがあった方良い。例えば、同業他社の決算説明会比較が出来るサイトの提供などは、協会などが率先して行うことの様に思う。企業がコストを払うIRコンサルティング会社のサイトに頼るのではなく、市場仲介者がコストを負担してIR情報を集約化し、投資家・株主にIR情報を提供するインフラ整備は、業界としての当然のコスト負担だと思うのだが。
 
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ディスクロージャー制度-投信の場合 (8月6日)
 公開企業にとって、ディスクロージャーの負担は相当に重くなっている。
会社法による事業報告等の株主関係書類、金融商品取引法の開示制度による有価証券報告書・内部統制報告書など、そして適時開示を求める取引所開示、加えて会社説明会などIR活動。
これらディスクロージャーの充実は、投資家にとって情報の非対称性をなくし、投資判断を容易にする目的で実施されている。
 片や、これだけ一般に広く販売されるようになった投資信託の開示制度は、金商法による有価証券届出書をベースにした目論見書に殆ど頼っている。企業なら、当然製品を作ったりサービスを提供したり企業活動を行っているので、投資家は開示制度によるディスクロージャー以外でも、投資判断する情報を持つが、投資信託は投資活動のみなので、その内容は目論見書を読まなければ分からない。
しかし、多くの投資家は、投信の目論見書を分かりに難いとして、投資家の約6割があまり読んでいないという調査もある。読まない理由は、
①分量が非常に多い。
②全般的に専門用語が多く、表現が分かりづらい
③全体の構成が複雑で、どこに何か書かれているか分からない
④重複も多い
などである。実際の販売現場でも、この目論見書は交付されるものの、販売活動では余り使わず目論見書内容を要約したり図式化した販売用資料(社内のコンプライアンスのチェックを受けた)を使っている。
 投資家の立場からすると、株式への投資は、有価証券報告書内容を比較したり、取引所等の開示情報を使って比較検討できるが、投信の場合は、目論見書(=有価証券届出書)を比較検討する気にはなかなかならない。といって、各金融機関から自分が求める投資ニーズに沿った投信の販売用資料を取り寄せる手間もなかなか大変である。
 現状のA投信が提出している有価証券報告書の構成を見てみる。
【交付目論見書相当部分】(必ず投資家に渡さなければならない)
“第一部証券情報”として投信の名称や発行総額・発行価格や手数料などが記載されていて、その他欄の受益権に関する取り扱い以外は、平易な記載になっていて、3Pの分量。
“第二部ファンドの情報”で、投資判断には重要になるファンドの目的や仕組み・投資方針・投資対象証券や運用体制・運用実績などが32P分記載されている。
【請求目論見書相当部分】(投資家からの請求に応じて投資家に渡される)
“ファンド(投資法人)の詳細情報”として、ファンドの沿革から始まって、各仕組みの定義や手続の詳細、管理内容や財務内容の定義と詳細記載がなされていて、一応マザーファンドの財務の付属明細表として有価証券明細表があるので、現状何に投資しているか分かる。この部分が20P分の記載。
 これらの投資信託の目論見書が、簡略化され標準化されることによって、投資家が比較検討しやすくなるのは大変いい事だと思う。しかし、投信の目論見書改革は本当にそれだけで良いのだろうか。
以下の問題を、筆者は一投資家として感じる。
・例えば、日本のこの成長分野に投資したファンドを探したいと思ったとき、現状の目論見書さえネット上で比較されるように公開されていない。(EDINETで有価証券届出書は閲覧できるが、内容の比較する為の検索は現状出来ないので、投信のネーミングから投資家が探すことになり、事実上の投信間の比較は困難)
・投資方針が変更された時、投資家に対して適時開示されているか疑問(公開会社であれば、重要な資産売却や購入は開示対象である)、つまり発行募集された後の、何らかのファンド内容の変更に関する適時開示がなされていない。(いちいち銘柄の入れ替えを報告することを言っているのではなく、エコファンドといって募集されたものが、エコと定義しにくい投資比重が高まった場合などの開示)
・公募された投信の目論見書が、ネット上で自由に引き出させ様、協会や販売会社・運用会社で工夫して欲しい。(投信比較サイトはあるが、正確な内容や、内容の変更などの情報が提供されていない。)
 郵便局の窓口でも、投信が買える様に一般化した金融商品なのだから、情報の集約やその提供に関係者は努力すべきと考える。
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虚偽記載事例について (7月10日)
 資本市場を利用しようとする企業にとって、投資家との接点はディスクロージャーによるが、そのデスクロージャーの中核になっている開示制度(法定開示)において、虚偽記載は株主や投資家に大きな損失を負わせ、かつ資本市場に大きな負担を残した。企業側に対しても、コーポレート・ガバナンス強化議論では、外部のチェック機能として独立取締役導入議論を呼び、内部統制報告の負荷を負わせることになった。
 その虚偽記載に関して、先月証券取引等監視委員会(SESC)から課徴金事例集が公表されており、23件の事例が公表されている。事例の概要は以下。
・架空売上計上で、純損益が約5.4億円過大計上→課徴金約223万円
・工事進捗率による売上げの過大計上及び原価の過少計上・損失引当金の過少計上により純利益額が約204億円過大計上→課徴金約16億円
・2期に渡り、工事関係の売上げの過大計上及び売上げ原価の過少計上で、純利益を約7億円・約9億円過大計上→課徴金約2500万円
・3期に渡り、不動産に係る売上げの過大計上、貸倒引当金繰入額の過少計上で、純利益を約17億円・約23億円・約23億円過大計上→課徴金約1200万円
・2期に渡り、システム開発プロジェクトでの売上げ及び棚卸資産・前渡金等の過大計上で、純利益を約1億円・約2億円過大計上→課徴金約2000万円
・4期に渡り、自動車販売に係る売上げの過大計上・貸倒引当金の過少計上等で、経常損益を約9億円・約24億円・約6億円・約2億円過大計上→課徴金約2億円
・工事に係る売上げ原価の付け替え・繰り延べで、経常利益を約3億円過大計上→課徴金約1.3億円
・システム開発に係る損失の繰り延べで、純利益を約6億円過大計上→課徴金約2000万円
・3期に渡り、循環取引やスルー取引でソフトウェアの架空売上げ等により、純資産額を約9億円・約1億円・約1億円過大計上→課徴金約3000万円
・子会社が100%支配する孫会社を連結に含めなかった・EB(交換社債)発行に係る日程の虚偽による評価益の計上で、連結経常利益を188億過大計上→課徴金5億円
・工事に係る売上げの前倒し経常により、連結の純資産額を約10億円過大計上→課徴金165万円
・建物の引き渡しに係る売上げの前倒し計上で、純損益約3億円過大計上→課徴金約200万円
・受注の扱いで、売上げの前倒し計上により、純損益約3億円過大計上→課徴金300万円
・コンサルティングなどの売上げ前倒し計上により、純損益約4億円過大計上→課徴金300万円
・機械出荷に係る売上げ前倒し計上等により、純損益約1億円過大計上→課徴金300万円
・2期に渡り、ソフトの売上げ・のれん・売上債権の過大計上等で、純資産額約40億円・約26億円の過大計上→課徴金600万円
・2期に渡り、アウトレットに係る売上げ原価の過少計上により、純損益約4億円・約8億円の過大計上→課徴金500万円
・3期に渡り、棚卸資産の過大計上で、純資産額約5億円・約4億円・約5億円の過大計上→課徴金750万円
・2期に渡り、売上げ原価の過少計上で、純損益約6億円・約9億円の過大計上→課徴金600万円
・2期に渡り、リース収益及びリース資産の架空計上等で、純資産額約10億円・約10億円の過大計上→課徴金約350万円
・退職給付引当金の過少計上で、経常利益6億円の過大計上→課徴金200万円
・自治体プロジェクトに係る架空売上げ及び架空仕入れの計上で、純利益や約4億円過大計上→課徴金300万円
・関係会社株式の過大計上・関係会社損失の過少計上で、純資産額が522億円過大計上→課徴金830万円

 なにか、うっかりミスの様なものまで含まれているようにも思うが、監査されている以上、投資家には言い訳できない。また、内部統制上、経営者が知らなかったということも出来ない。


  
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期待される取引所:東証 (7月1日) 
 最近、色々な問題の対応が、東証に求められていると思う。
○上場会社のコーポレート・ガバナンス向上
○株式市場の先行き見通し
○商品取引所もグループ下に置く、総合取引所構想
○最近、金融機関や上場企業で目立つインサイダー取引への教育
○取引システムの強化
以上は、先月24日、東証の斉藤社長の定例記者会見での記者からの質問項目である。
・コーポレート・ガバナンスについては、金融審議会のスタディグループと経済産業省の企業統治研究会で其々議論されていたが、先月中旬には議論を取りまとめた報告書が公表された。注目されていた上場会社の独立性のより強い社外取締役の法制度上の義務化は、実質見送られた。しかし、東証がコーポレート・ガバナンスモデルを示し、企業がモデルを選択した理由を開示したり、何らの上場ルールで社外取締役の導入を促するような提言になっており、ゲタは東証に預けられた格好である。
これを受けた東証は、上場制度整備懇談会を中心に、年内までに議論を取りまとめる意向だ。
 何度か繰り返して恐縮だが、上場企業のコーポレート・ガバナンス向上の背景には、2000年以降の旧商法改正で、M&Aやファイナンス・自己株取得の資本政策に関して取締役会に授権拡大されたことが多かった。その結果、M&Aに係る粉飾や、第三者割当での問題のあるファイナンスなどが目立ち株主・投資家が被害を受けた。
 問題のない一般の上場企業には、一律規則で義務化されるのには違和感があるのだろう。しかし、外部のチェックが入る仕組みの方が、海外及び機関投資家の投資資金を集めやすく、上場企業としても資本市場を使いやすくなるという企業への教育こそ、東証に求められていることかも知れない。
・市況見通しに関しては、つい記者が聞きたくなるかもしれないが、あまり意味が無い。東証の社長は、日本の資本市場インフラの機能の中核をなす取引所運営のトップであって、取引のプロでもないので、何らかの投資活動に影響を及ぼすとは考えない方がベターだろう。
・よく東証トップが聞かれる総合取引所構想については、先月中旬に金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れを可能とする改正金融商品取引法が成立した。また、グローバルな取引所間連携の中には、証券取引所グループが商品取引所を傘下に収めるケースも目につく。しかし、その前に、商品取引所側は、清算機関の強化及び取引システムの拡充とその為の資本強化という宿題がある。(つまるところ、お金がかかる。)
この資金は、取引参加者から集めるしかないが、システムや清算機関が強化されなければ、その取引参加者も呼び込めない。東証グループの支援が必要だといったら言い過ぎだろうか。
・インサイダー取引に関しては、本来は個人の問題なのだが、東証が出来ることは、上場会社や金融機関の役社員への教育だけだろう。平成19年11月東証の自主規制部門は、自主規制法人として発足しているが、東証COMLECでの上場会社及び取引参加者へのコンプライアンス研修を強化する。
・資本市場インフラとして、取引システムの強化は非常に重要なことである。新オプション取引システム(Tdex+)がこの秋にも導入され、また2010年1月にはarrowhead(次世代売買システムが稼働する。
 以上の期待に応えていく東証グループは、資本金115億円従業員数約800名の株式会社であり、118社の取引参加者でもある証券会社を株主に持つ。また、取引所と自主規制組織を持つ認可業種でもある。
 最近は、上海などアジアの取引所と比較する記事も目立つが、資本市場のインフラとして期待されることは多い。多少加えると、新興市場問題もアローズの一人勝ちではなく、インフラ機能として見直していただきたい。
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市場仲介者としての証券会社の取組み (6月19日) 
 16日、日本証券業協会より証券業界として取り組むべき施策・政策要望について取り纏められた報告書が公表された。
 証券業界を先導して協会が推進していく施策と思うが、内容は以下の4つに纏められている。
【1】金融リテラシーの普及推進について
【2】市場仲介者に求められる役割について
【3】投資家との対話を重視したコーポレート・ガバンンスの推進について
【4】投資環境の整備について
となっているが、【1】は今までの学校における金融教育中心の取り組みで、多少目新しいのは上場会社の役職員に対するインサイダー取引規制・確定拠出年金制度や日本版ESOP知識普及である。また【3】については、経済産業省の研究会や金融審議会、取引所で相次いで公表されているので内容は省略する。
 問題は、市場仲介者の証券会社の協会であるのだから、【2】で市場仲介者として証券会社に何を行わせるか、若しくは協会として何を行うかの具体策である。
①顧客満足度の向上に向けた取組みの強化
※CS調査を実施する証券会社が、全体の6割ということに不満らしい。
②証券会社のディスクロージャーの強化
※FX業者も含めて最近色々な形の証券会社(第一種金融商品取引業者)が増えてきたが、300以上ある証券会社のうち上場会社は18社のみ。業法で店頭備置が定められる業務報告書でさえ協会で閲覧できるのが50社にも満たないのが現状。一般投資家向けに、協会として真剣に取り組んで欲しいと筆者は考える。
③証券会社のCSRの取組み等の強化
※証券会社の取組みが62%と銀行87%・保険79%に比べて低いとのこと。
④証券会社のコンピューターシステム安全基準作りへの関与強化
※金融情報システムセンターで行っている安全基準づくりへの参加が17社(参加金融機関は669社)のみ
⑤反社会的勢力に関する情報収集の強化と照会業務の拡充
※取引・ファイナンス・IPOなどの“反社会的”のチェックは厳しくなっているが、確認するためのデータベース整備は協会として早急に行うことが証券会社から望まれていた。
⑥横断的かつ包括的な裁判外の苦情・紛争化解決サービスの提供
⑦証券市場における不適切行為等の早期発見及び対応に向けた
※上記2つは協会そのものの問題のように感じるのは筆者だけだろうか。
以上は、其々が証券会社として大事な事案だろうが、市場仲介者としての投資家に望まれる重要な取組みは以下の【4】で取り上げられたことかもしれない。
①資産運用手段の拡大
・確定拠出年金制度(日本版401K)の拡充=拠出額の拡大や主婦や公務員の参加が望まれる。
・投資家ニーズに合わせた商品・サービスの多様化=取り合えず投信商品の多様化。
・社債市場の活性化=個人も利用できるような市場環境の整備。個人の社債投資も増えているので、本気で早急に整備する努力をして欲しい。
②投資を促進するための税制の構築
・少額の上場株式等の非課税措置(日本版ISA)の適正な実施
・金融所得課税の一本化の推進
・納税者番号制の積極的な検討
・配当の二重課税の撤廃
・子供を対象とした税制優遇投資スキーム(日本版 Child Trust Fund)の創設に向けた検討
③金融・資本市場統計情報等の整備・充実
※協会の市場関連データは、業者へのヒアリングベースが多くて、使い難いというのは筆者の個人的感想。
税制改正要望に力点があるようにも思うが、投資家にとっては重要なことなので、オバマ流に、数値を定め、期限を決め、優先順位をつけて取り組んでいただきたい。
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経済界の要望―金融関連 (6月17日)  
 16日、日経連より2009年度日本経団連規制改革要望が公表され、金融関連でも10の規制緩和要望が出されている。その内訳は、企業のディスクロージャーに係るものが2つ、銀行業務に係るものが6つ(うち信託が1つ)、保険業務に係るものが2つとなっていて、証券業務に関する要望がないのは、少し寂しい。
 この内容に関して、資本市場的視点で、以下に取り上げてみたい。
(証券業界としての問題は、日本証券業協会が同日の16日に、“金融・資本市場に関する政策懇談会”報告書を公表しているが、上記の件と直接繋がらないので、後日取り上げる。)

【企業のディスクロージャーに係るもの】
①物的分割時のおける有価証券届出書の廃止
-分割時に新会社の株式を割当てることから、自動的に有価証券届出書提出義務を負い、その後の5年間の継続開示を義務付けられる。その事が分割した会社の負担となる。その為、新会社の株主50名未満なら、そもそもの有価証券届出書提出義務を負わないことを要望。かなりテクニカルな事象ではあるが、開示制度の目的を考えれば、筆者もその通りと考える。
②四半期報告書制度の簡素化
-45日以内に監査証明を受けて公表する内容が多くて負担・四半期決算短信と整理統合を要望。東証の開示制度である決算短信との整理要望は分かるが、ディスクロージャーは資本市場の基本なので、企業側の努力は必要。まして内部統制を進めたはず。ただし、新興企業への開示負担に関しては、軽減策検討の余地があると考える。

【銀行業務に係るもの】
③不動産デリバティブ取引等の差金決済型デリバティブ取引の解禁
-銀行でも排出権や商品のデリバティブが出来るのだから、不動産や船舶運賃のデリバティブも銀行及び証券子会社で認めて欲しいとの要望。取引参加者が増えることは良い事だが、筆者の不明でこの様な要望が銀行にあるのは知らなかった。
④銀行の株式保有ルールである5%ルール・15%ルールの運用対象から信託資産を除外すること
-銀行も信託業務を行う現状では、信託との同様の措置(信託は既に除外)が望ましいと考える。
⑤業務報告書等の見直し
-開示制度・取引所開示で重複する部分も多いので、銀行や保険持株会社の業務報告書は簡素化若しくは廃止を要望。これについて、筆者は少し違和感がある。そもそも業法で定められた業務報告書は、証券会社も提出・備置義務があるが、一般へのディスクロは義務化されていない。未上場会社が多くなった証券などは、むしろ積極的な業務報告書の公表が求められる。
⑥銀行代理業の許可要件に関する規制緩和
-届出期限・内容の簡素化、銀行の子会社の兼業承認基準対象外へ。
⑦信託契約代理業に係る規制の適正化
-信託契約の内容によって、信託契約代理業なのか金融商品取引業なのか、その定義を整理して欲しいと要望。(現状=自益信託→金融商品取引法、他益信託→信託業法)
⑧コミットメントライン契約の借主の対象範囲拡大
-中小企業(資本金3億円以下)や地方公共団体、学校法人、医療法人、相互会社、海外債務者、また証券化のための合同会社、有限責任中間法人を対象範囲に新たに加えること。また証券化の適格借入人に、PFIや船舶ファイナンスに係るSPCを加えることなどを要望。

【保険業務に係るもの】
⑨特別勘定に関する現物資産による保険料受入、移受管
-年金制度に現物拠出する場合、コストや市場への影響を避ける目的で、株、債券等の現物資産による保険料受入、移受管を可能にする要望。
⑩保険会社における会社分割等の単位の見直し
-責任準備金の問題点の整理
 
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インサーダー取引=業界の対応 (5月27日) 
金融・資本市場関係者から、インサーダー取引関連の問題が明らかになると、またかという思いに捉われる。別に業界だから、金融商品取引法上問題になりそうな行為に対して、厳格に対応し、範をたれろと言うつもりではない。
 5月21日、M&Aに関連したTOB5件の情報を使った公認会計士のインサイダー取引で、野村証券のM&A部門の社員から情報が伝えられたことが明らかになった。証券会社社員からの内部情報でのインサイダー取引摘発は、初めてで、学校時代の後輩・先輩の関係での内部情報漏洩らしい。
 昨年も、同証券のM&A部門の社員によるインサイダー取引が、摘発されている。
M&Aは、当然であるが、何らかのかたちで株式を集めようとする為、公開会社が対象の場合、TOBを実施しなければならず、その為、市場価格以上のプレミアムを乗せて、TOB価格を、決定する。
M&Aがこれほど一般的になり、かつ増加もした現状では、この情報の事前取得でのインサイダー取引増加は、容易に想像されることでもあった。
昨年は、NHKの報道関係の社員・TOB公開資料などを扱う宝印刷の社員・そしてデューデリジャンスに参加する新日本監査法人の公認会計士など、M&A業務に深く係る人達のインサイダー取引事件が相次いだ。
これらのことを、少し冷静に考えたい。
勿論、違法行為を行う本人たちが一番悪いのだが、M&A情報など、法人の非公開情報に係る専門家達は、それぞれ厳しい社内ルールを設けている。前述の問題を起こした企業や組織も、
・株式の売買の事前申請
・株式取引に関する短期売買の禁止
・仕事で担当する銘柄の売買禁止
など、厳しく規制している。
NHKに至っては、事件後、役職員の株式売買を全面禁止にした。
再発防止策として、社員の株式取引ルールの厳格化で、今まで対応する事が多かったが、本当にこれらが有効なのだろうか。
社員に、行動規範の徹底を行い、社内ルールを厳しくしても、インサイダー情報を日常扱う、証券会社や会計事務所における、問題解決にはならないのではないか。
証券会社の社員であろうが公認会計士だろうが報道スタッフであろうが、普通の人たちがするようなミスは、普通にする。つまり、意図的な違反取引はしなくとも、うっかり誰かに言ってしまう、偶然インサイダー情報に触れてしまうようなことはあるだろう。今回の証券会社社員から公認会計士に情報が伝わったのは、この様なケースかも知れない。
問題の本質は、このM&A関連情報の管理にあるのではないか。
 M&A業務で、インサイダー関連情報が発生するのは、必須なのだから、その現場での情報管理の徹底こそ、業界で早急に求められていることで、対象となる未公開の法人関連情報をシステム的に管理する必要がある。例えば、その情報に誰が何時アクセスしたが記録が残るようなタグを、その情報そのものに付けて、管理することなどあるのではないか。
 少なくとも、社員の株取引を禁止することは、業界内では、問題の解決にならないと考える。

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タンス株の行方 (5月25日) 
株券電子化という世紀の(?)イベントが年初に行われ、上場株式・公募投信・公募社債(つまり個人が制限されずに売買できる有価証券)に関しては、物理的な証券は無くなり、完全にデータ化されたペーパレスの仕組みになった。
 この有価証券のデータは、全て証券保管振替機構(ほふり)に集約され、管理される。
 もちろん(ほふり)に、個人が直接アクセス出来ないので、これら有価証券を株主や投資家から預かる証券・信託銀行などの金融機関が(ほふり)に直接アクセスできる口座をもち、株主や投資家の有価証券データを管理する。これら有価証券の売買・貸借・担保提供する場合には、データを動かすため(ほふり)に指示する必要があるので、結局証券・信託銀行に、有価証券データを管理する口座を作らなければならない。
 しかし、売買も貸借もするつもりなく、資産として(長年タンスの中で?)保有してきた株券は、多数あって、このような株券を“タンス株”と呼び、そのままでは将来の売買等に支障がでるということで、証券会社等が“タンス株”を自社で口座開設してもらって預かりましょうというキャンペーンを、昨年は大々的に行い、株券電子化移行をイベント化していた。
 で、このタンス株はどうなった。
 証券や信託銀行に預けられたタンス株は、(ほふり)の証券・信託が管理する口座にデータとして加わったのだが、残ったタンス株は、これもデータとしてちゃんと纏められ発行会社が管理する“特別口座”に入れられた。
実際は、この“特別口座”の管理は、発行会社が名義書換代理人の信託銀行等に依頼しているので、この費用は、発行会社の負担になっている。
つまり、そのままにしておいたタンス株は、自動的に発行会社の特別口座でデータが管理される仕組みに切り替わって、タンスの中の株券は無効になってしまった。このタンス株主は、特別口座の管理費用はかからないが、将来売買等する為には、証券・信託に口座を作り、この特別口座からデータを出さなければならず、この間の口座費用は発行会社が負う。
 こんな特別口座が、この3月末で、まだ1000万口座もあるらしい。
大半が資産として保有されて、当面の売買・相続などの予定がない方が保有するものだろうが、金融機関からみると、有価証券として活用されていないので、非常に“もったいない”思いがする。
 この新タンス株=特別口座で管理する株式データは、発行会社から見てもコスト削減から減少させたいだろうが、このタンス株の中には、本当にタンスの隅に残ってしまった所在不明株主の保有する分もある。
 5月22日、富士通がこの新タンス株の中にある所在不明株主の株式買取を実行した。
 この制度は、旧商法の時に導入され会社法に受け継がれたが、
【所在不明株主】株主名簿に記載された住所あてに発した通知または催告が5年以上継続して到達せず、かつ5年間配当金を受領していない株主
○所在不明株主の株式買取を、取締役会で決議することができる。
○所在不明株主には、公告及び催告を行い、3か月以上を経て実施できる。
○株式の売却代金は、会社が供託し、株主からの申し出で支払う。債務消滅の時効まで10年と考えられている。
という制度になっている。
 この制度は、2006年8月に新日鉄が最初に行い、約2万名の所在不明株主の株式を売却した。
 今回の富士通は、昨年7月末に取締役会決議し、この22日に約2000名分を2億円で自社で買い取ったものである。
 所在不明株主への対応に関しては、歴史が長く株主数が多い企業ほど頭を悩ませていたが、株券電子化で新タンス株化した分は、その処理が促進されていくのだろう。
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株主総会へ向けて (5月18日) 
3月決算期の6月株主総会シーズンまでひと月余りとなったが、企業側は、そろそろ株主招集通知の発送時期に入る。個別に注目される総会もあるだろうが、全体としては主要な法制度改正に係る部分が終わっているので、そもそも論に関したものが、注目されるのではないか。
 つまり、会社運営の仕組みを問うコーポレート・ガバナンスに関するもので、これを強化しなければならないという方向性は、一致しているものの、その方法については、公開会社の3%未満の委員会設置会社が良いのか、4割程度が導入している社外取締役制度の強化が良いのか、最近提言され始めた社外監査役が半数以上必要な監査役会制度の改革がいいのか、別れる現状がある。
 これらの議論は、6月までに金融審議会のスタディグループや、経済産業省の企業統治研究会で、報告書として纏められるようだが、金商法にせよ、取引所ルールでの運用にせよ、会社・会社経営者から独立した外部のチャック機能強化を、上場企業が、求められる方向は、変わらない。
 よって、今株主総会での取締役・監査役選任案について、社外の方の独立性が注目されるケースも、多くなるのではないだろうか。
 このことは、投資家の反対が強い買収防衛策(昨年度は500社以上が導入)への賛否行動にも影響するであろう。
海外のアクティビストのみならず、日本の機関投資家も、上場企業の社外役員(監査役を含む)選任に当たっては、以下の様な独立性基準を持つものが増えている。
・メインバンクの関係者でないこと
・一定株式を保有する実質的親会社の関係者でないこと
・経営者の親族でないこと
・会社と取引関係にある弁護士・会計士・税理士等でないこと
・一定期間以上長期にわたり社外役員として在任していないこと
・社外役員を相互に派遣していないこと
など
 一方、これだけの経済環境悪化の時期でもあるので、企業の戦略に係るものにも、注目は集まる。
総会議案の中には、当然事業戦略に関するものは含まれるわけではないが、資本政策戦略に係るような定款変更や自己株取得・償却、剰余金処分に関する議案は、通常以上に、関心が高まるだろう。
 折しも、金融機関や大手企業の大型の資本調達が、相次いで公表されている時期でもある。
一例として挙げると、野村ホールディングス(8604)が、5月15日以下の定款変更案を公表している。
定款の一部変更に関するお知らせ

 この中で、BIS対策の資本基盤強化として、4種類合計8億株の優先株式の発行を可能とする定款変更案が示されている。この半数には、優先配当額を抑える為、普通株へ転換が可能な条項が含まれている。
同社は、この3月に3000億円発行済み株数を3割以上も増加させるファイナンスを行ったばかりでもある。再び、潜在株数を大量に発生させるファイナンスに対して、その資本が、企業価値を増加させる事業戦略に沿ったものであることも、株主には、明確にしていくのだろう。 
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発行登録制度の利用促進を (4月21日)  
野村ホールディングスに続き、三井住友ファイナンシャルグループによる大型の公募増資が公表されている。最大8000億円という募集額は、多分今年最大の公募増資になる可能性があり、相次ぐ金融機関の増資と、今年の市況を占う意味でも、注目されている。
 この増資は、発行登録制度を使って行われているが、通常の届出書制度に比べて、企業が機動的にファイナンスを行うことが出来る為、社債の発行において利用されることが多かった。
発行登録制度は、
 ○発行する有価証券の種類ごとに登録しておけば、1年ないし2年の期間中、発行条件さえ決定すれば、最善と思える時期に直ぐ募集できる。
 ○価格等の条件が決まる前、発行登録目論見書で、実質的に事前の勧誘活動が出来る。
 ○需要状況を勘案して、一部の発行も、問題ない。
などの利点が利用されていたが、株絡みについては、発行登録金額が大きければ、市場からダイリューションを懸念したネガティブな反応が懸念され為、企業の利用は慎重だった。
 しかし、本当に必要な資本なら、その使用目的を明確にし、リスクを明示して、市場や株主に需要を問うのも、資本市場の大事な機能だと考える。極論かもしれないが、需要が無ければ、ファイナンスは実行しなければ良い。それらを推し量る道具として、発行登録制度はエクイティ・ファイナンスでも多様されるべきと考える。
 多少テクニカルな面に触れると、野村Hや三井住友FGのファイナンスの様に国内・海外同時募集のグローバルオファーリングの場合、国内・海外其々の投資家需要の変化に合わせて、国内募集分と海外募集分の調整が直前までしやすい事も、発行者のメリットとしてある。
 一方、この発行登録制度の利便性を向上させる為の開示制度改革が、新年度に予定されている。
1.利用適格要件の見直し
周知性の要件を見直し
  ・格付け要件の廃止
  ・例えば5年間で100億円など、過去の有価証券発行実績を新たな条件に
2.SPCによる発行登録制度の導入
資産流動化法上あるいは外国のSPCも利用可能に
  ・資産流動化法上の特定社債券
  ・優先出資証券
  ・新優先出資引受権及び海外SPCの発行する同類の有価証券
3.プログラム・アマウント方式の採用
機動性のあるファイナンス機能を
  ・期間中に償還された額を、発行上限額に追加
など、制度も改善される。
 2000年以降の改正商法と会社法制定で、会社の資本政策に関しては、随分取締役会に授権された。その為、機動的な資本政策は企業にとって必要であり、資本調達における発行登録制度の利用促進を期待している。勿論、不必要な資本に関しては、自己株買いとその消却で対応する機動性も求められるが、その結果判断をするのは、株主である。

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 新年度のディスクロージャー (4月3日)

ようやく東京でも桜も満開になった新年度であるが、公開会社のディスクロージャーに関しては、一連の不祥事や法改正・経済環境の激変もあって、企業側でご担当されている方々は、なかなか大変な思いをされているのではないかと思う。

 そのポイントに関しては、金融庁より3月31日、

 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項について(平成21年3月期版)             

という形で、公表されているが、なんといっても大変なのは、この6月から提出が始まる“内部統制報告書”ではないか。
 これは、米国でのSOX法施行や、会社法での内部統制の義務化を受けて、金融商品取引法が定める開示制度においても、有価証券報告書とは別に提出義務が課されたものである。
平成20年4月から始まる事業年度について、企業は対応をしなければならない。4月2日に、これも金融庁から公表された“内部統制報告書制度に関するQ&A”には、107のQ&Aが載せられてはいるが、内容を拝見すると、やはり企業側の負担感は、相当なものだとも感じた。(この内容については別途、取り上げたい。)
 この制度は平成19年の金証法施行時には決まっていたので、準備期間は長かったが、今後はむしろこの報告書を使う側、投資家や金融機関がどう使いこなしていくのか注目される。

 他には、前年度の有価証券報告書に対する重点審査(3月決算期)での不備の指摘が21%の提出企業に対してあり、特に、定款の定めにより役員等の任務懈怠責任の一部を取締役会決議により免除できるとしていることにつき、その旨と理由の記載不備が409社であると指摘している。

 有価証券報告書に対する新たな記載としては、“継続企業の前提に関する注記”として、

(1) 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容

(2) 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策

(3) 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由

(4) 当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否か

が求められてもいる。

それ以外の概要は、

○関連当事者の開示については、会社や組合に準ずる事業体や親会社の役員等が追加など

○リース取引について、ファイナンス・リース取引を通常の売買取引に準じた会計処理へ

○棚卸資産の評価について、トレーディング目的のものは、通常の販売目的のものと区分、等

○稀の場合において満期保有目的の債券へ変更が可能になったが注記事項等について

○市場価格が無かったり、オファーとビットの乖離が大きい金融資産に対するプライイシングモデル関連の記載等

○監査報酬に関する開示内容の明確化等

 いずれの項目も、使いこなさなければならないのは投資家であり、その投資家が使いこなす為の支援は、市場仲介者の責務でもある。

 

 
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フッターイメージ

資本市場研究所 きずな