株式会社 資本市場研究所きずな
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   →引受業務
      ・資本市場におけるリスクマネー供給について~郵政3社IPOを機に考える個人の役割(1月4日)
      ・郵政3社のIPOを機に、公募ファイナンスを考える(2)(11月18日)
      ・郵政3社のIPOを機に、公募ファイナンスを考える(1)(11月11日)
      ・最後の大型民営化案件としての日本郵政グループIPO(10月5日)
      ・クラウドファンディングと電子募集取扱業務について(1月8日)
      ・日本の発行市場の課題~アジアの中心市場として相応しい発行市場機能整備の為に (7月29日)
      ・~公募エクイティ・ファイナンスに対する提案=その2(11月26日)
      ・発行市場を振り返って~ファイナンスも進化するか(7月30日)
      ・ファイナンスの季節に、改めてその役割を考える(7月9日)
      ・クラウドファンディングが資本市場の機能を果たす為に(7月5日)
      ・未公開株式投資・クラウドファンディングの可能性(5月7日)
      ・活発化する発行市場、活性化されるその機能(4月18日)
      ・復活する発行市場(4月2日)
      ・インターネットを使った個人主体のファイナンス:ソーシャルレンディングとクラウドファディング (3月29日)
      ・日本の発行市場に関る問題の概要(1月25日)
      ・増資インサイダー問題、取りあえずの纏め(7月2日)
      ・増資インサーダー取引の背景(6月20日)
      ・強気と弱気、需要と供給で市場は動きますが、ところで市場への供給って何? (3月5日)
      ・日本の発行市場(資本調達)の問題とライツイシューに関する期待と不安 (2月2日)
      ・見直される公募増資の問題点 (11月15日)
      ・新規公開前の増資規制騒動の背景にあるもの (7月6日)
      ・待たれる上場イベント:第一生命 (2月22日)
      ・主幹事という機能 (1月8日)
      ・銀行のファイナンスについて  (12月7日)
      ・ファイナンスのプロセス (11月9日)
      ・再考:アーバンコーポレイション事件 (10月14日)
      ・券会社として襟を正すべきこと (9月9日)
      ・J-Nomadと主幹事 (4月9日)

   →社債
      ・個人投資家にとっての社債~開示、格付け、劣後、私募など (5月2日)
      ・証券会社における私募債の扱いについて~金融商品としての課題 (9月2日)
      ・ハイブリット社債という名の株式について(6月17日)
      ・日本の社債市場と個人の投資について (7月4日)
      ・不足する個人向け社債 (3月13日)
      ・増加する個人向け社債(4月11日)
      ・ものの値段~社債の売買価格の場合 (11月26日)
      ・“社債市場の活性化”は、本当に必要なのか (8月21日)
      ・もう一つの大事な市場機能=最近の社債市場とその論点 (11月24日)
      ・敢えて個人投資家の投資対象として国内債券市場を考える (8月24日)
      ・個人の社債投資が拡大する為には (4月4日)
      ・日本の社債市場問題の解決策を易しく考える (12月7日)
      ・機に乗じて敏に・・・社債市場改革への期待 (10月27日)
      ・社債市場改革問題を再び思う。何が社債のフェアバリューか (9月16日)
      ・社債市場改革が個人投資家にもたらすもの (7月11日)
      ・社債価格情報の共有は、市場活性化に役立つのか。米国事例(6月2日)
      ・市場の透明性とは何なのか=社債市場改革に想う (5月31日)
      ・社債の情報整備について (2月4日)
      ・クレジット市場という考え方 (12月24日)
      ・個人向け社債増加、しかし個人の需要に答えているか? (11月26日)
      ・社債市場改革は何故必要なのか (11月17日)
      ・社債市場改革における個人投資家対応 (10月20日)
      ・社債市場への改革意識 (8月24日)
      ・社債市場に対する問題意識  (7月23日)
      ・社債市場の改革にあたり (7月14日)
      ・個人という債券投資家 (6月8日)

   →新興市場
      ・プレ・IPO(新規株式公開)市場について(2)(8月20日)
      ・プレ・IPO(新規株式公開)市場について(1)(8月17日)
      ・改めて新規株式公開(IPO)を見直す(5月1日)
      ・IPO(新規株式公開)への期待と課題 (10月6日)
      ・IPO初値について(2月6日)
      ・IPO増加を阻害するもの(7月26日)
      ・IPO初値は高ければ良いのか(6月13日)
      ・沸き立つIPO(2月28日)
      ・JOBS Act と日本の新興市場改革 (5月24日)
      ・市場の裾野拡大の為に~グリーンシート市場の場合 (4月18日)
      ・正しい未公開株投資 (2月17日)
      ・期待に応えられない市場:グリーンシートの場合 (7月27日)
      ・新興市場の基本的問題をやさしく考える (7月25日)
      ・投資行動から逆算して考える新興市場問題 (5月16日)
      ・何故市場改革が必要なのか~新興市場の場合 (5月6日)
      ・新興市場の問題とは何なのか (12月16日)
      ・今考える新興市場改善策 (8月24日)
      ・日本のIPO市場再構築を (8月23日)
      ・今年のIPO市場を想う (12月28日)
      ・IPOというビジネス (7月15日)
      ・新興市場について (5月21日)
      ・IPO市場回復の為には (4月27日)

   →エクティ
      ・クラウドファンディングへのそれぞれの期待~新しい投資スタイルは確立するか (4月4日)
      ・フィンテックとクラウドファンディング(2月22日)
      ・新型MSCBについて(10月13日)
      ・トヨタ自動車のAA型種類株式について(6月22日)
      ・種類株式とトヨタ自動車AA型株の概要(5月12日)
      ・正しい上場企業の資金調達の為に~エクイティ・ファイナンスのプリンシプルと問題行為について
       (4月26日)
      ・「投資型」クラウドファンディングへの期待と不安(4月5日)
      ・ファイナンスのイノベーションなのか、特異な手法か(3月11日)
      ・新株予約権制度について~多様な用途と価値(3月5日)
      ・「投資型」クラウドファンディングとは何なのか(2月19日)
      ・オプションプライシング・モデルに関する率直な、そして一般投資家の一般的な疑問(2月7日)
      ・上場企業のエクイティ調達2014年速報(12月26日)
      ・クラウドファンディングと資本市場のファイナンスの違い(12月11日)
      ・ファイナンスに関する2つの取引所ルールについて (9月9日)
      ・試される投資家~2つのファイナンス事例より (8月7日)
      ・ライツ・オファリングの対する規制の動きについて (7月24日)
      ・新しいファイナンス手法なのか?~発行市場にもイノベーションは必要ですが・・・ (7月8日)
      ・MSワラントと特殊なファイナンスについて (6月12日)
      ・投資家にとってのリキャップCBの意味 (6月6日)
      ・公募ファイナンスとしてのライツ・オファリング (5月8日)
      ・市場が好調な時こそ、ファイナンスの在り方を考える (3月11日)
      ・新株予約権について、やさしく考える(12月10日)
      ・最近の上場企業ファイナンス動向について(11月14日)
      ・公募増資は、本当は買い!?(10月29日)
      ・ライツ・オファリングの現状と進化の可能性について(9月24日)
      ・MSCBやMSワラントの現状について(9月6日)
      ・ライツ・オファリングの可能性と問題点 (8月22日)
      ・市場規律について=ファイナンスの場合(5月20日)
      ・ファイナンス・スキームとして定着するか、ライツ・オファリング(5月16日)
      ・株式市場が好調な時に、敢えて発行市場の問題を考える(3月21日)
      ・再び活況となりそうな発行市場(2月26日)
      ・不公平ファイナンスとは何か(2月20日)
      ・注目するファイナンス・スキーム(2月18日)
      ・公募増資は売り材料なのか?(1月21日)
      ・インサイダー取引規制議論を起点に、日本市場の問題点を考える (11月28日)
      ・ライツ・オファリングへの期待 (11月2日)
      ・望まれるライツ・オファリング=その2 (10月9日)
      ・望まれるライツ・オファリング=その1 (10月3日)
      ・公募増資情報は、何故売り材料なのか (9月24日)
      ・日航再上場を機に想う、IPOのあり方 (9月19日)
      ・公募エクイティ・ファイナンスに対する提言 (8月5日)
      ・増資インサイダー問題を、日本市場再生の契機に(8月2日)
      ・CB(転換社債)が復活する為に(7月25日)
      ・発行市場とCBの役割について(7月23日)
      ・ファイナンスの季節を迎えるにあたって(6月25日)
      ・大規模ファイナンスの予兆について (2月24日)
      ・新株予約権(ライツ)の功罪 (1月31日)
      ・株式市場の機能としての発行市場 (1月30日)
      ・市場の需給関係から発行市場を考える (1月23日
      ・市場を救うか---ライツ・イシューの現在の日本に於ける問題点 (11月15日)
      ・日本市場のファイナンス改善策としてのライツ・イシュー(11月14日)
      ・株式市場からの最近の資本調達 (11月2日)
      ・大規模なファイナンス手法として、ライツ・イシュー制度の定着を望む (9月20日)
      ・日本の発行市場について (8月17日)
      ・ファイナンス事例を考える:エルピーダメモリの場合 (8月10日)
      ・ファイナンス銘柄は儲かるのか (8月5日)
      ・ライツ・イシューは証券会社のビジネスも増やす (7月21日)
      ・ライツ・イシューは株主の選択肢を増やす (7月20日)
      ・海外株主=公募増資の日本仕様を怒る (7月19日)
      ・ファイナンスは買いなのか売りなのか=文脈で考える(7月18日)
      ・ファイナンスと自社株取得:資本市場の入りと出るについて(6月28日)
      ・大規模ファイナンスとしてのライツ・イシュー事例:タカラレーベンの場合 (6月23日)
      ・大規模なファイナンスが成功するには (6月22日)
      ・空売りはいけない行為なのか(6月21日)
      ・ファイナンスの季節を迎えるにあたり (6月20日)
      ・図説:ライツ・イシューの現状 (3月25日)
      ・今、改めてライツ・イシュー推進への取組みを (3月24日)
      ・自社株買い+CB発行=リキャップCBを支持する (2月18日
      ・公募増資の仕組みを、やさしく考えてみよう=その2 (1月20日)
      ・公募増資の仕組みを、やさしく考えてみよう=その1 (1月19日)
      ・ライツ・イシューなど今の時代に合ったファイナンスを=再び期待したい金融行政 (1月11日)
      ・”空売り規制問題”:誰の為に何を規制し、何を明らかにするのか (12月6日)
      ・”公募増資問題”:問題の本質を見据えた規制・改革を  (12月3日)
      ・市場に理解されない銀行の公募増資は、ライツ・イシューの利用を (11月5日)
      ・試される市場 (10月12日)
      ・そういえばCBがあった (9月24日)
      ・不適切な第三者割当とは何か (9月17日)
      ・今、上場企業に望む資本政策 (9月8日)
      ・公募というものの問題点 (7月16日)
      ・ライツ・イシューの問題点を考える (7月13日)
      ・懐かしいファイナンス規制 (6月29日)
      ・はじめてのライツ・イシュー=結果は? (6月4日)
      ・また銀行の公募増資なのか (5月11日)
      ・上場会社のファイナンスに係るいくつかの問題 (4月2日)
      ・ライツの初上場に向けて(3月29日)
      ・金庫株の今日的意味 (3月17日)
      ・不公正ファイナンスの仕組みと証券会社の対応 (3月12日)
      ・初めてのライツ・イシュー (3月11日)
      ・ライツ・イシューについて再び考える (2月26日)
      ・問題第三者割当への業界の対応 (2月12日)
      ・ライツ・イシュー=株主割当増資が、資本調達方法として定着する為に (12月25日)
      ・不公正ファイナンスについて (12月15日)
      ・ライツ・イシュー=株主割当増資の背景と仕組みについて (12月9日)
      ・ファイナンス増加に想う (12月1日)
      ・エクイティ・ファイナンスの状況 (11月25日)
      ・提言:大型時価発行は、発行登録制度の利用を (11月18日)
      ・2つのエクイティ・ファイナンス (6月29日)



個人投資家にとっての社債~開示、格付け、劣後、私募など (5月2日)
 個人投資家にとって元本が発行者によって保証されていて、定額の利金が支払われる債券は比較的安全性の高い投資商品として見做されています。
しかし、2016年末の個人金融資産1,800兆円のうち債券投資(日銀資金循環統計では債務投資)は僅か25兆円(1.4%)に過ぎません。更に社債(事業債)の残高は、6.9兆円に留まります。
今後、NISAや個人型DCの拡大によって、個人投資家の裾野が広がる中、投資商品としての期待される社債ではありますが、一方マイナス金利や国の財政政策による国債発行減少の影響も大きいと見られます。

☆ 個人投資家にとっての社債~開示、格付け、劣後、私募など
・個人の債券投資について
・最近の個人向け社債の動向について
・個人投資家にとっての私募社債
・安全性、投資収益、プラスαそれぞれの投資ニーズに応える為に
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クラウドファンディングへのそれぞれの期待~新しい投資スタイルは確立するか (4月4日)
 Web上での情報提供により不特定多数から資金を集めるクラウドファンディング(Crowdfunding)が拡大してます。そもそもクラウドファンディングは群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語ですが、インターネットの利用拡大で個人に情報を拡散しやすくなっていることを利用しており、米国において約20年ほど前からアーティストのレコーディング費用や映画の製作費集めで利用が始まったものが原型とされています。このクラウドファンディングに係る動向や投資との係りといった面から、以下の様に纏めてみました。

☆クラウドファンディングへのそれぞれの期待~新しい投資スタイルは確立するか
・拡大するクラウドファンディング期待
・投資型クラウドファンディングの現状
・投資手段としてみた場合の課題と可能性
・クラウドファンディングは投資の何を変えるのか

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証券会社における私募債の扱いについて~金融商品としての課題 (9月2日)
 私募債とは私募(金融商品取引法での私募要件は50名未満の少人数)で発行する社債ですが、会社法上での組織体であれば株式会社も合同会社も発行することが出来ます。また、銀行保証などを付けて発行する場合もあり、中小企業や小規模(数億円から数十億円)な事業の資金集めにも使われています。
政策的にも中小企業の資金調達手段の多様化を目指した施策の一環として、中小企業などの私募債発行が行政上推進され、一部保証や私募債発行費用の補助金対応など行われてもいます。
また、私募債は証券化商品などの小規模な発行に関しても利用されることが多く、例えば証券化対象の原資産が数十億円規模であっても、社債期日を複数にして毎月継続的に発行していけば、一度の私募債発行が小規模でも、合計すると相当金額の規模になることが可能です。証券会社の扱う私募債は、この方式が多用されています。昨年破綻して問題になったレセプト債(病院などの診療報酬を証券化したもの)も基本的にはこの様な私募債の仕組みを使っています。その私募債に関して、証券会社での取扱いを中心に纏めてみました。

☆ 証券会社における私募債の扱いについて~金融商品としての課題
・私募債とは何か
・個人向け金融商品としての利用
・金融商品としての課題
・私募債に対する期待とその可能性について 

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フィンテックとクラウドファンディング(2月22日)
最近はフィンテック(finance & technology)という言葉も、シリコンバレー流のスタートアップ企業の資金集めの標語とも捉えられがちですが、一方では既存の金融ビジネスの枠を破るイネベーションとしての期待値も高いものがあります。実際、金融庁でも昨年12月14日にFinTechに関する一元的な相談・情報交換窓口としてFinTechサポートデスクが設置されています。
そのフィンテックにおいて、投資に関するものでは最近AI(人口知能)を使った投資運用や助言(ロボアドバイザーなど)のサービスも目立ってきています。しかし、実質的には昨年の6月から制度は始まった投資型クラウドファンディングは、ネット上でのみリスクマネーの調達を行うのですから、その方法が定着していけば、投資の世界におけるイネベーション=フィンテックとなるはずです。
その投資型クラウドファンディングの現状をみてみると、次の様な状態です。
(※各種協会の対外公表文より)

○株式投資型クラウド⇒ 実績 ゼロ
(昨年6月から実質的に始まった株主コミュニティ(特定の証券会社による未公開会社株式の取引者コミュニティ管理)では、2月12日時点で売買愛金が1億4186万円)
○ファンド投資型クラウドファンディング⇒

    2015年5月29日~同年9月30日
・募集開始総額 263,370千円(ファンド数41本)
・事業開始ファンド総額 6,650千円(ファンド数3本)
・四半期末に運営中のファンド総額 6,650千円(ファンド数3本)
・ファンドの償還 0円

    2015年10月1日~同年12月31日
・募集開始総額 316,500千円(ファンド51本)
・事業開始ファンド総額116,670千円(ファンド17本)
・四半期末に運営中のファンド総額116,670千円(ファンド19本)
・ファンドの償還 557千円(元本割れファンド数1本)

ファンド投資型は、既存のクラウドファンディング業者が電子募集業務(クラウドファンディングは少額電子募集取扱業務)を行う登録変更をして対応していますが、株式投資型が未だゼロです。

この株式投資型に関して、未だ実績がないことについては、次のような背景等が影響しているものと見られています。
◇証券会社として個人口座を扱う必要がある(ただし、クラウドファンディング=少額電子募集に特化した業者では、株式を預かることは出来ない。)。
◇募集した株式は、未公開株式なので、証券会社としては、自社で株式を保管しない場合、株主名簿管理人などの協力が必要となる。
◇募集に当たっては、契約締結前交付書面を投資家に提供すると、投資家からの同書面の内容を理解した旨の確認書の徴求が必要となること。(※なお、自主規制ルールの改正により、契約締結前交付書面の交付及び確認書徴求は、2016年2月16日よりネットでの対応が可能となりました。)
◇また、募集後、定期的に対象会社の情報を投資家に提供する必要がある。
◇以上を踏まえて、最低限の顧客管理システムが必要と考えられる。

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資本市場におけるリスクマネー供給について~郵政3社IPOを機に考える個人の役割(1月4日)
 昨年11月に新規上場した日本郵政グループ3社では、63社のリテール証券が新規公開株式を引受け、引受免許がない地方証券会社でも販売委託(引受責任はなく、販売された分だけの取扱い)で参加したので、オール・リテール証券の観がありました。これは、一昨年、3社のIPO検討に際して、財務省や郵政民営化委員会で① 広く国民に販売する。② その為に、可能な範囲で多くの証券会社等に販売させる。といった基本方針が決定されていたためでした。
この様な取組みは、日本の発行市場(資本市場におけるリスクマネー供給)では大型民営化以外では無かったことですが、そもそも発行市場における個人の役割について、改めて見直してみたいと思います。

☆ 資本市場におけるリスクマネー供給について~郵政3社IPOを機に考える個人の役割
・発行市場における個人の役割
・公募ファイナンスの概要と課題
・リスクマネー供給における個人の役割
・いくつかの可能性はイノベーションなのか
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郵政3社のIPOを機に、公募ファイナンスを考える(2)(11月18日)
 郵政3社のIPOでは、出来るだけ多くの個人に株式がいきわたる様な工夫がされたことは前回お伝へしましたが、その他の公募ファイナンスでは公に募集するという名に相応しい現状かというと少し違った現状も示しました。

また引受証券会社は引き受けた公募株式を公平に配分しなければなりませんが、IPOは個人投資家に人気の高いので、新規公開株は個人への配分予定の10%以上を抽選により配分先を決定しなければなりません(配分ルール:日本証券業協会自主ルール)。抽選することで確かに公平性は確保されますが、残りの9割の個人投資家への配分は引受証券会社に任されることになります。
引受リスクを負う証券会社としては、投資ニーズの高いものは自社の営業戦略に沿った得顧客に優先的に配分するのは当然のことですが、配分に際しての公正さは上記に配分ルールに従うことになります。

IPOに比べ、PO(public offering)と呼ばれる上場企業の公募増資は少し様相が違います。IPOでは、個人投資家は新規に上場する企業のビジネスモデルに対して注目することが多いのに対して、上場企業の公募増資は、企業の資金調達の効果を判断するということになります。この場合、証券会社のアナリストが解説することはできないので、個人投資家に対してはリテール部門の営業員が解説することになり、個人への勧誘行為もIPOに比べて積極的に行って投資ニーズを掘り起こします。なお、公募増資も一般的なIPOと同様に引受証券会社数は絞られており、主幹事証券会社が大きな販売シェアを確保していますので、結局個人投資家ニーズを集めることは彼等の対応に頼ることになります。

この様な引受のシステムは、主幹事証券に公募ファイナンスでの投資家配分の権限が集中するので、個人のみならず機関投資家や海外投資家のニーズを取り組んで、効率的に各投資家層の投資ニーズに従って適正に配分していく仕組みとしては機能していくと思われます。しかし、主幹事証券会社に公募増資案件が集中したり、投資ニーズを超えた金額の引受けを行うような場合、既存株主に売却を勧め、増資によって埋めるような仮需要をつくる行為を生む余地が出てきます。このような行為は、直接は不正行為ではありませんが、行き過ぎたり事前の増資情報(インサイダー情報)が漏れると公募増資インサイダー事件の様な不正行為を生むリスクが大きくなります。

公募増資の改善策として、株主に最初に選択権(新株に投資家するかどうか)のあるライツオファリングが有効であることは、海外投資家からも指摘されることなのですが、残念ながら日本においては証券会社(引受機能を持つ証券会社も含めて)での実務対応が定着していません。また、既に実施されたノンコミットコミットメント型では、増資目的が分かりにくかったり、明らかに上場維持(債務超過解消)などに使われたケースもあって、業界内での対応イメージが悪いのも現状です。

しかし、ライツオファリングは既存株主に最も配慮された公募ファイナンス方法であることは否定できませんし、多くの個人投資家もライツを購入することで企業に成長資金を提供する仕組みですので、証券業界として公募ファイナンス方法として定着させる努力が必要なのではないでしょうか。
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政3社のIPOを機に、公募ファイナンスを考える(1)(11月11日)
郵政3社が11月4日に上場し、その後の値動きも堅調に推移しています。久々の大型民営化案件のIPO(新規株式公開)とあって、その株式の販売方法についてはいくつかの工夫がされていました。その前提となっていた販売に関する主な目的は次の様なものです。(実際の検討は、財務省や郵政民営化委員会の関連組織)
① 広く国民に販売する。
② その為に、可能な範囲で多くの証券会社等に販売させる。

 上記の①については、今回の郵政3社IPOの目的に東日本大震災の復興財源確保が上げられていますが、その為に高く販売できるなら、個人や機関投資家でも、海外投資家であっても、需要が大きいところに販売するとならなかったのは良かったと思います。民営化が先行していた欧州などでは、国有企業の民営化に際して、先ず国民に分配し、然る後に機関投資家や海外投資家に販売するという考え方が主流になっており、場合によっては国民へ売出す株価と海外投資家へ販売する株価が異なっている場合もあります。さすがに日本の資本市場の仕組みでは、この様なIPO価格が2段階になった方法は使えません。

 その為、②の方法が取られましたが、通常のIPOや公募増資なら引受シンジケート団に参加しないような中堅・地方証券会社で引受ライセンス(資本金5億円以上、引き受ける為の登録申請が必要)があるところを含めて61社も郵政3社の株式を引受け(引受けの定義は、投資家に売れずに残った分は証券会社自らが引受けること)ています。その他、引受責任を負わないで販売のみを行う地方証券会社なども参加しています。また、三菱東京UFJ銀行・みずほ銀行はグループ内の証券会社より販売株式の割当てを受けて、このIPOの取扱いに証券仲介業者として参加(IPO株式の窓販)しています。これら国内証券会社が取扱う郵政3社の株式は、全体の約88%となっており海外投資家向けには12%弱しか割当てられていません。

 郵政3社は、それぞれの株価ストーリーがあると思いますが、先ず個人投資家が株式の配当利回りや知名度などで投資し、機関投資家などが各社の株価指数への組み入れを見越して買い、海外投資家が事業戦略を評価して更に買い進むというのが理想的なストーリーかも知れません。

 広く国内の個人投資家に販売していくという取組みは、資本市場の拡大の為に必要なことで、今回の販売の在り方は評価されるべきでしょうが、他の公募ファイナンスについてみると様相が違っています。例えば、個人に人気の高いIPOの一般的な引受けシンジケート団は、5社~8社程度のことが多く、主幹事証券が8~9割を販売して、中堅証券や地方証券が参加することは余りありません。なお、今回の郵政3社株式の販売において、野村證券と三菱UFJモルガンスタンレー証券がそれぞれ約25%を占め、中堅・地方証券23社は0.005%で、地方証券などからは個人投資家需要に対応しきれなかった不満があるようです。大証券と中堅・地方証券を比較した場合、営業員の数は大きく違ったとしても、果たして5000倍もの差があるのか。また、今回の取組みでさえ個人投資家の需要を喚起するのに十分な仕組みなのかどうか、まだ改善余地はありそうです。

更に、IPOより個人投資家需要が格段に落ちる公募増資などの在り方について、現状の仕組みの改善余地を次回以降考えてみたいと思います。
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新型MSCBについて(10月13日)
クオール株式会社(東証1部、3034)が、新型のMSCB(行使価格修正条項付新株予約権付社債)を発行することを公表しています。発行額が100億円で、全て野村証券に割り当てる予定です。

 MSCBとは、Moving Strike Convertible Bondの略称ですが、新株予約権の行使価格が下方修正されるのもので、割当てられた証券会社などが株式を借りて市場で株式を売却し、その売却価格より安く修正された新株予約権を行使し借りた株式を返却する仕組みです。簡単に言えば、割当先(証券会社等)の市場での裁定取引(市場で先に売却し、下方に修正された新株予約権を行使して株式を手当て)を前提にした取引ですが、その分割当てられた証券会社は他の投資家や株主に配慮した対応が求められています。

例えば、
◇直前公表価格以下での空売りの禁止(原則)
◇大引け15分前の売付け禁止
◇1日当たり取引量の25%以内の売却
◇発行済株式総数の10%以内の行使前(月間)
といった行為規制が、自主規制(日本証券業協会ルール)で課せられています。

 一般的なMSCBは、行使価格が何処までも下がるわけではなく、一応発行時株価の7~8割を下限としていますが、クオールが今回発行するMSCBは、発行時点の株価を下限行使価格としています。つまり、行使価格に関して言えば、当初の行使価格が下限となり、その後はこの価格からの上方修正のみとなります。従って、記者発表文にも記載されていますが、発行時の株価の110%以上でなければ、行使が起きないことなります。

 また、発行会社は行使できるような株価の状況(発行時の株価の110%以上)の際に、割り当てた野村証券に対して行使する新株予約権数を指定することが出来ます。このことは、発行会社側の選択肢を広げるので、新株予約権の価値を低下させることとなります。

 今回の新しいタイプのMSCB発行に際して、発行会社側は次の点を強調しています。
○株価の上昇に伴って行使価格が上方修正される可能性がありこと。(少なくとも通常のMSCBの様に、行使価格が当初の行使価格から下方修正される可能性はないこと)
○上記の場合、当初予定(発行額100億円)していたより多くの資本調達が可能となること
 ファイナンス・スキームにおけるこの様な工夫は大事な事ではありますが、ただし、当面は潜在株(発行済みの15.51%)として上値を抑える可能が高いこと、また株価が上場した場合でも、今回の新型MSCBを割当てられた野村証券の市場での裁定取引行為が行われることには変わりありません。

 従って、発行会社や証券会社はMSCBの発行及び運用について、既存株主や投資家に十分は配慮した対応が求められてもいます。
 
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最後の大型民営化案件としての日本郵政グループIPO(10月5日)
 日本郵政グループ3社(日本郵政株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険)の東証1部への上場が9月10日に承認されました。政府保有の日本郵政株及び日本郵政が保有するゆうちょ銀行株及びかんぽ生命株が売り出され、最後の大型民営化案件IPOとなります。今後の日程では、10月7日に其々の仮条件が提示され、10月19日に売出し価格が決定し、11月4日に上場される予定です。この売出しは通常のIPOとは大きく異なり、引受免許のある殆どのリテール証券会社(引受団は63社)が参加します。
本稿は、このIPO案件について資本市場の立場から取り上げ、その概要を説明しようとするものです。
従って投資勧誘目的ではないので、IPO参加をご検討の投資家は、其々の目論見書をご確認ください。

☆ 最後の大型民営化案件としての日本郵政グループIPO
・IPOの目的と概要
・3社の成長戦略について
・IPOストーリーにおける留意点について
・それぞれの期待
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プレ・IPO(新規株式公開)市場について(2)(8月20日)
 2つ目は、特定投資家を相手とする次の市場です。

【TOKYO PRO Market】
 個人投資家の方には未だ馴染みがない市場ですが、特定投資家(プロである適格機関投資家に加えて、個人の資産家や証券会社が認める株式会社など)が売買可能な東京証券取引所が運営する市場です。

その沿革は、以下のとおり
・2009年6月
 2008年の改正金融商品取引法により導入された「プロ向け市場制度」に基づき、東京証券取引所とロンドン証券取引所の共同出資により創設された株式会社TOKYO AIM取引所による運営マーケットとして市場開設
・2012年7月 
 ロンドン証券取引所との合弁解消により、TOKYO PRO Market として東京証券取引所が市場運営
・2012年7月
 メビオフォームが、同市場での最初の銘柄として上場(同社は、2013年6月に上場廃止)
・現在(2015年8月中旬時点)
 上場予定も含めて13社


 この市場の特徴は、特定投資家というプロ向けなので、開示情報(投資家に公開する情報)負担は通常の上場銘柄より軽く済みますが、その分上場後も専任アドバイザー(J-Adviser)が情報開示等を支援することが上場維持の前提となっています。 

 このプロ向け市場を、プレ・IPO市場としましたのは、一般市場でIPOの行う銘柄の中で、上場前の1~2年の間にベンチャーファンドなどが出資するケースが多いので、一旦このプロ向け市場に上場して、より多くのプロから資金を集め、成長した後で通常のIPOにトライしていくというプロセスが出来れば、プレ・IPO市場として機能していくと考えたからです。

 しかし、この市場の現状はまだ創成期の域を出ておらず、参加する特定投資家がまだプロ向け市場上場企業関係者に限られています。その為、売買も低調で流通市場の価格発見機能があるとは言い難い状況でもあります。

 今後、成長企業がこの市場を利用してリスクマネーの調達を行い、その資金で企業の成長という結果を出し、通常の市場でのIPOにトライしていく企業事例が増えてくれば、成長企業群及び特定投資家層双方において、この市場の注目度も高まっていくと期待しています。

一部にはその萌芽の様な動きもあり、プロ向け市場上場により金融機関からのシンジケートローンが優位に組成出来たり、ファンドなどからリスクマネーを調達したり、社債発行を行っている企業が出始めています。またこの市場が、プレ・IPO市場として機能していく為には、多くの特定投資家の参加が必須ですが、その為には、特定投資家をターゲットとした資金調達機能が重要になっています。

 現在、このプロ向け市場への上場支援実績があり専門アドバイザーとして東京証券取引所が認定しているのは、2証券会社1専門会社(専門会社は、証券会社と組む必要があります。)の計3社のみですが、
通常のIPOで実績のある大手証券などがプレ・IPO市場して、特定投資家から成長企業の資金調達に利用したり、海外の証券会社と組んだ証券会社等が海外成長企業のリスクマネー調達にこの市場を利用したりすることでプレ・IPOとして飛躍することが、結局は日本市場の裾野拡大に役立ち、アジアのコア市場としての足場を固めていくことにもなると考えます。
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プレ・IPO(新規株式公開)市場について(1)(8月17日)
 株式市場が堅調なことと、アベノミクスによる景況観の好調さもあり、IPO(新規株式公開)は堅調です。9月中旬までの上場予定会社を含めると、本年上場会社数は既に63社と昨年同時期の倍増となり、2015年の上場数は100社を超える可能性も強まっています。
 一方、このIPOの裾野拡大として期待したいプレIPO市場の現状と課題については、次の様な状況です。

【株主コミュニティ制度】(本年6月より制度スタート)
 始まったばかりの制度で、まだ実績はありませんが、簡単に言えば証券会社が特定の未公開株の取引者リストを管理して、その中で売買やファイナンスが行われるといった制度です。イメージで言えば、証券会社が簡易取引所的機能を提供するといったものですが、上場に比べて企業側の開示負担が少なく、投資家側も取引者リストに参加する意思表示を行えば取引参加は容易になります。

 しかし、反対に現状の在り方では証券会社側の管理負担が重くなっており、株主コミュニティを組成する為の企業審査・取引者リストの管理負担・対象株式の決済や保管(株主名簿管理人との情報共有の仕組み)などを考えると、企業側からある程度の手数料収入やファイナンスに伴う収益性が見込めなければ証券会社のビジネスとしては成立しにくいと思われます。

 この制度は、現行のグリーンシート市場の代替としても制度整備されたものですが、グリーンシートは証券会社の負担が重い割に、売買が活発でなくファイナンスも殆ど機能しなくなっていった為、取り扱う証券会社が少なくなって企業側と投資家を仲介する機能が著しく低下しました。新しい制度では、この轍を踏むことなくある程度の収益性のあるビジネスとして証券会社が行う必要があります。

 但し、IPO主幹事機能がある大手証券などがこの取引を行うインセンティブは極めて低く、これらの企業をIPO準備に誘導した方が、収益性も確保しながら将来にIPO準備企業を囲っていくことが出来ます。

 従って、この制度を活用するのは、ある程度の企業規模で上場する予定はないが株主数がある程度いる為に流動性を確保したい地方企業、もしくは社会性や地域性などがあり個人もよく知っている未公開企業などが纏まったリスクマネーの調達を行う場合などに対して、大手証券以外の証券会社(その企業内容をよく知る地元証券会社など)が行っていくケースが多いと想定されます。

 但し、その為に取り扱い証券会社が求められることは、
○企業内容を審査する機能
○企業価値(取引する株価等)を判断する能力
○取引者リスト対象者(株主コミュニティ)への情報提供
などの機能や対応です。これらは、IPOの主幹事証券としては当然の機能ですが、当制度を率先して行うのは地方証券会社などが主体になると見られる為、上記証券会社業務に対する日本証券業協会などの支援体制が必要です。(※株主コミュニティ制度は、日本証券業協会による自主規制によって、各証券会社で運営される仕組みです。)

 言い換えるなら、この新しい制度がプレIPO市場として機能していく為に、地元企業と関係の深い証券会社の当該業務を支援する業界の体制が必要ではないかと考えます。

 
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トヨタ自動車のAA型種類株式について(6月22日)
 6月16日の株主総会で、トヨタ自動車のAA型種類株式の為の定款変更が承認されて発行決議されましたので、その概要と効果について以下に示します。
(※なお、本稿は資本政策としての説明を行うことも目的としており、同社への投資を勧誘するものではありません。個人の方の実際の投資にあたっては、今後決定される発行価格やステップアップする配当などを、それぞれの投資目的に沿ってご判断されるものと思います。)

☆ トヨタ自動車のAA種類株式の概要とその効果

 また、筆者は以下の理由から資本政策としてAA型種類株式の発行への取組みを支持します。
○個人の長期保有を促す工夫がなされ、多様な投資ニーズに応えていくことが試みられている。
○資本政策の透明性が増すことが予想される。
 
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ハイブリット社債という名の株式について(6月17日)
 トヨタ自動車のAA型種類株式が株主総会で承認されて7月下旬に発行されることが話題になっていますが、三菱商事は50%を資本と見做すハイブリット社債を発行しました。発行額は2000億円と社債発行としても大型で、このうち半分が資本として認められるので1000億円の株式を発行したのと同じ効果です。このハイブリット社債の資本性の認定は、格付機関によってなされていますが、このことが三菱商事の株主や投資家にとってどの様な意味があるか、会社の目的と合わせて見ていく必要があるのではと考えます。

 格付機関による劣後債などの資本性の認定は、今までは金融機関などの自己資本比率強化策や借入が多い企業の資本勘定補完的効果を目的としていたと思いますが、三菱商事は今回の発行目的で強くROEを意識しています。このことは、例えば今の資本(自己株式)と負債であるハイブリット社債を入れ替えてみたら最も効果が分かり易くなりますが、同社の今後の資本政策(増資、自社株取得など)にも大きな影響を与えていくことが予想されます。つまり、バイブリット社債は機関投資家の投資対象としてだけではなく、一般の個人株主にも間接的に影響を与える可能性があります。その概要は以下です。

☆ ハイブリット社債という名の株式
 

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種類株式とトヨタ自動車AA型株の概要(5月12日)
 5月の連休直前の4月28日、トヨタ自動車株式会社はAA型種類株式の発行登録を行い、その発行目的と概要に関する発表を行っています。
 主たる目的は、中長期保有の株主をつくることですが、その為に種類株式のいくつかのスキームが工夫されています。このAA型種類株式を発行した分、会社は普通株を取得し消却するとしていますが、ある意味で画期的な上場企業の資本政策とも言えます。
 筆者は、この発行スキームを全面的に支持します。
(※トヨタ自動車株式への投資を推奨したり勧誘している訳ではなく、資本政策の実行策としての支持です。)

その内容と種類株式制度の概要について、現時点の状況を纏めてみました。

☆ 種類株式とトヨタ自動車AA型株の概要
・種類株式とは何か
・種類株式発行の目的
・トヨタ自動車のAA型種類株の概要(2015年5月時点
 
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改めて新規株式公開(IPO)を見直す(5月1日)
最近、取引所などから新規株式公開(IPO)企業に対する証券会社等の審査や監査法人の監査を厳格に行うべきとの意見が出されています。これは、せっかく増加してきたIPOにおいて上場後の業績下方修正や情報開示の問題が顕在化するケースが相次いだことを受けたものですが、企業を上場に導く証券会社のプロとしての専門性が問われています。
 確かにIPOの審査は、証券会社の中でも専門性の高い特殊な業務ですが、必ずしも大手証券の様な重装備の審査機能が必要と言う訳ではありません。今回問題となったIPOでは、大手証券が主幹事でしたが、過去何度もあったIPO問題において、業界では審査項目とプロセスが相当部分マニュアル化されていて、むしろ問題は審査後の最終判断(企業のIPOを後押しする為の審査判断・引受判断)ではないかと思われます。
 この証券会社としての最終判断は、市場の仲介者として証券会社の常識と良識が問われることになります。
 
 今、改めてIPOを見直してみました。
☆ 改めて新規株式公開(IPO)を見直す
・回復するIPOと様々な期待
・課題その1:IPOに係る株価について
・課題その2:より多くの投資家に
・そして誰の為のIPOか
 
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正しい上場企業の資金調達の為に~エクイティ・ファイナンスのプリンシプルと問題行為について(4月26日)
最近、新規株式公開(IPO)での上場直後の大幅な業績下方修正銘柄が相次いだことで、証券会社や取引所のチェックの仕方が問題となっていますが、これは上場する為には業績は堅調で成長していること・また、その為の業務執行が適切に行われていることなどを、証券会社などがチェック(上場審査・引受審査)しているはずなのに、といった個人投資家などの疑問もあると思います。IPOに限らず、上場企業の公募ファイナンスおいては、これらのファイナンス内容をチェックしていく引受審査などが厳格に行われることは証券業界の当然の責務です。

 一方、公募ファイナンスのみならず第三者割当や株主割当増資(ライツ・オファリングを含む)などエクイティ・ファイナンス全般に対して、昨年10月に東京証券取引所は“エクイティ・ファイナンスのプリンシプル”を取り入れ、上場会社がエクイティ・ファイナンスを行う場合の原則論を示しています。
 その概要は、次の4点となります。
1. 企業価値の向上に資する
2. 既存株主の利益を不当に損なわない
3. 市場の公正性・信頼性への疑いを生じさせない
4. 適時・適切な情報開示により透明性を確保する

 上場企業のエクイティ・ファイナンスは、リスクマネーを調達して次の成長に役立つ投資を行う一方で既存株主の希薄化を招きます。このルール導入は、既存株主のみならず日本市場の信頼性向上に為にも役立つと思いますが、同ルール導入の背景となった上場企業のエクイティ・ファイナンスに関する問題行為の概要は、以下の様なものです。
●上場廃止となる債務超過回避の為、第三者割当てや株主割当増資を繰り返す
●会社の支配権争い(経営陣と大株主)が生じている状況下で、経営陣サイドに有利となるよう第三者割当を行う
●会社経理の不正発覚で有価証券報告書の提出延長中にも係らず、監査法人の監査意見が”適正意見”となることを払い込みの条件とした第三者割当を実施しようとしたが、ファイナンスの不確実性を取引所より指摘され、結局中止へ
●第三者による評価がなされていない営業権を現物出資の対価としようとした第三者割当は、特定の株主への実質的利益供与に近いとの取引所の指摘で、結局中止へ
●第三者割当で調達した資金を、創薬ベンチャーへの投資に充てるとしたファイナンスで、投資先の買収価格が異常に高額であったこと、更に第三者割当の割当て先がごく短期で売却したことなど、特定の株主の関係者や特定の投資会社に著しく有利な条件で行い、結果として企業価値を低下させた
●海外ファンドへの第三者割当で長期保有を公表していたが、その後の外国会社への第三者割当で全部売却して株価が急落し、結果新たな増資も中止された
●長期保有を前提に第三者割当を行った先で、会社の合意なく割当先の事業目的で他者に譲渡された
●ノンコミットメント型ライツオファリングにおいて、資金使途を明らかにせずにファイナンスを実施し、その後公表した事業計画も、短期間で変更や中止となった
●ノンコミットメント型ライツオファリングにおいて、当初公表されていた大株主の権利方針が数度変更され、結果、ライツの行使に対しては大半が失権した
●ノンコミットメント型ライツオファリングにおいて、当初公表されていた資金使途と異なる運転資金に流用され、また筆頭株主のグループ会社の資金繰りにも利用されていた

(※以上の詳細は、2014年12月「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル~事例と解説」をご覧ください。)

 上記で問題となったポイントは、資金使途の不明確さ・特定の株主や会社関係者への利益誘導行為・公表された内容と異なる投資行為などの上場会社がエクイティ・ファイナンスの際にとった行動ですが、その為、第三者による上場企業のエクイティ・ファイナンスの内容をチェックする行為が求められています。後半の問題となったノンコミットメント型ライツオファリングは、原則として証券会社の引受審査に準じたチェックを受けることが前提になりました。  



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「投資型」クラウドファンディングへの期待と不安(4月5日)
ネット上で少額資金を集めるクラウドファンディングは、寄付集め(「寄付型」)や商品購入などを目的にしたもの(「購入型」)が既に実績を積んでおり、マスコミなどでも好意的に取り上げられることも多くあります。また政策的にも、新しい新規・成長企業へのリスクマネー供給の仕組みとして「投資型」が5月末を目途に、制度整備される予定です。

 個人のインターネット利用が進む中、Web上での情報提供で個人の共感を呼び込み投資に導く方法は、従来の金融業界からすると画期的でもあります。内閣府では、地方の伝統産業やソーシャルビジネス(再生可能エネルギー施設やヘルスケア施設等)、起業等を支援するクラウドファンディングの仕組みとして、「ふるさと投資」というネーミングで推進会議を主催、ふるさと投資フラットフォームでは情報発信を行っています。
・最近のふるさと投資に関する内閣府地方創生推進室の情報発信(2月24日)
これらのふるさと投資に関する動きでは、地方公共団体や地域金融機関などの関係部署の動きが活発化しており、新しい金融の仕組み(「投資型」クラウドファンディング)を作っていこうという熱意を感じます。

一方、金融面からこの動きを見直しますと、既にお伝えした様にこの「投資型」クラウドファンディングを行う事業者を、少額電子募集取扱業者として関連法令や自主規制の準備が行われているところです。当然ですが、それが投資である以上、事業や経営者に対する共感があったとしても、それを支える為の投資家保護の仕組みは最低限なければなりません。

証券取引等監視委員会が、4月3日に公表しました“平成27 年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画”においても、「自主規制機関とも連携しつつクラウドファンディング業者に対する検査態勢を整備する」としていますが、投資家保護の視点から以下の事がチェックされていくと推測(関係法令や自主規制案より)されます。
●利用するサーバーやネットワークが管理されているか
●対象となる企業に対して、自主規制による審査を行っているか
●募集方法が明示されていることと共に、キャンセルの方法が示されているか
(※法令案では、8日以内のキャンセル可能。なお、電話や店頭での勧誘は併用できない)
●資金を募集した後、企業側からの定期的情報提供を行う態勢になっているか
●投資家一人50万円以下、総額1億円未満となる確認体制が取られているか
●金融商品取引業者としての行為規制は遵守されているか
誠実義務
広告等の規制
契約締結前交付書面の交付義務
契約締結時交付書面の交付義務
禁止行為(虚偽や断定的判断の禁止、不承性勧誘の禁止等)


 なお、現在の「購入型」で元本を償還若しくは返還するものは投資と見做される可能性が高くなりますし、「貸付型」(所謂ソーシャルレンディング)に対しては明確に上記の対応が求められていくと考えられます。

 個人の投資は、NISAや確定拠出年金制度の拡充で益々拡大していくと思われますが、新しい金融の仕組みである「投資型」クラウドファンディング(※寄付やeコマースは投資ではありません)は、個人の共感を基にしているだけに、一層の投資家保護が求められことも必要に思います。

 問題は、上記にクラウドファンディング業者が、如何に低コストで対応していく事ではないかと思われます。(政策的支援や業界動向につきましては、今後随時報告していきます。
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ファイナンスのイノベーションなのか、特異な手法か(3月11日)
前回、新株予約権の多様性について触れましたが、旧商法(現会社法)でこの制度が出来た時、株式を買う権利を会社が発行できることは革新的なことでした。
それまで、企業は株式や債券を発行することは出来ましたが、権利そのものを発行する事で、発行した相手にメリットを与えながら自らの資本充実を図ることが可能となり、企業の事業戦略と資本政策を効果的にリンクすることが出来るようになりました。新株予約権を割当てられたものにとっても、当初の資金負担が小さくて済むことと、その後の選択肢があることもこの制度を様々な用途で利用していくことを促し、企業再生などにも利用されています。

また、ライツオファリングなどのファイナンスにも利用されていますが、これは株主全員に無償で新株予約権を割当てる方式が取られています。

ところで、Oakキャピタル(3113)が3月5日に発行決議しました株主割当増資も、株主全員に無償で新株予約権を割当てことではライツオファリングと同じです。但し、ライツオファリングは新株予約権が上場され、株主は単に新株予約権を行使する以外に、新株予約権(ライツ)を売却することが可能ですが、株主割当増資はライツが上場されないので、新株予約権を割当てられた株主は、増資に応じるか、権利を放棄するしかありません。
(※以下の記載は、同社の投資判断を行ったり支援する為のものではなく、ファイナンス手法の評価の為のもので。)
同社の株主割当増資は、3月末の割当てで実行されますが
・株主保有の1株に対して、0.5株分の新株予約権を割当て
・新株予約権の行使価額は、権利落ち日以前の10営業日の平均値の90%
という概要となっています。

 一般的な見方では、新株予約権を割当てられた株主は、権利落ち後の株価が行使価額より高ければ市場で株式を売却し、権利行使(約2か月後)を行えば利鞘を確保出来るので一時的に株価が権利行使価額に近づくことが予想されます。しかし、企業のファイナンスによる資金使途を投資家が評価すれば、株式に対する需要が高まっていく可能性も一方ではあります。

 なお、今回の同社の資金使途は、「今後見込まれる投資事業(エクイティファイナンスの引受け業務の拡大、M&Aによる事業会社及び事業用不動産等の取得)」としています。また、このファイナンスの実施目的については、株主還元策としています。

 同社の業務内容は、9割以上が投資事業ですが、主に新株予約権を利用して上場企業の再生を支援することで事業を拡大してきています。同社を支持する株主は約13千人いらっしゃいますが、事業会社として新たな投資資金を集める方法として、株主が支持して行使がどの程度進むかが注目されます。
(※一般から投資資金をファンドで集める場合、通常は運用会社が投資目的を示したファンドを組成し(リートなどの投資法人の場合は出資口)、金融商品取引業者が販売・勧誘を行います。今回のファイナンスは事業会社による株式の自社募集の形式となっています。)

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新株予約権制度について~多様な用途と価値(3月5日)
 ストックオプション、ポイズン・ピル、ライツオファリングからMSワラントそして新株予約権付社債と、新株予約権は実に多様な使われ方をしています。
 しかし、これら多様な新株予約権を構成する基本的な要素は同じで、但し、各要素間の組み合わせによって新株予約権の価値が決まってきますが、最大の問題は新株予約権の価値がいくらなのかという事です。

 勿論、市場があれば多様な投資家の中で取引された市場価格がフェアバリュー=公正価格(会計用語)と見做されることが多いのですが、多くの新株予約権はそのような状況にありません。(現在、市場があるのはライツオファリングのライツのみ)

 その為、多くのケースではオプションプライシング・モデルによる価格算定が行われるのですが、各モデルによる算定条件が株主や投資家に示されることは余りなく、多くの場合、第三者の算定機関からの算定結果のみを知らされる場合が多く見られます。またオプションプライシング・モデルはオプション取引に大きく貢献してきました、多くのステークホルダーに示す価値判断に利用される方法として充分なのかどうかまた研究・検討の余地があると考えます。

 できれば学会や金融業界での新株予約権に関する価値の研究を一層進めていただきたのですが、取りあえずは市場の常識で新株予約権の発行価値を測るのも一つの方法ではないかと考えます。いずれにせよ、もう少し市場関係者による議論・研究が進むことに期待しています。

☆ 新株予約権制度について~多様な用途と価値
・新株予約権とは何なのか
・主な用途とそのポイント
・特異な利用方法と類似取引
・いったいくらなの

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「投資型」クラウドファンディングとは何なのか(2月19日)
「投資型」クラウドファンディングとは何なのかについて、出来るだけ簡単に説明したいと思います。

 先ず「投資型」クラウドファンディングは、今世間一般的に言われているクラウドファンディングとは異なります。事業やイベントの寄付を集めたりする「寄付型」、食品や製品・音楽などのコンテンツ制作など一部受け取る「購入型」、そして貸付金などを小口債権化した「貸付型」(一般にはソーシャルレンディング)などが現状のクラウドファンディングですが、これらを金融関連業務(インターネットを使ってお金を集めるので)としてみた場合、根拠法は以下の様になります。

「寄付型」=寄付行為に対して、特に規制するものはありません。

「購入型」=単純に商品を購入するたけではeコマースと変わりありませんが、事業に必要な資金を集め、一部の成果(製品)を資金の出し手である個人に分配するもので「事業ファンド」(会社の株式ではなく、特定の事業に投資し、事業収益の配分を受ける)の形態です。従って、ファンドを組成して自己募集が可能な第二種金融商品取引業の登録が必要になります。なお、これらのファンド募集に関しては上限や件数制限はありませんが、公募であれば金融商品取引法上の継続開示義務をファンド運用者が負いますので、現状のクラウドファンディングではコスト面から私募を選択するケースが殆どです。その為、ファンドの保有者を500名未満であれば私募ファンドの扱いで継続開示義務は負いません。例えば、一つのファンドに対して一口を5万円とし、5万円×499名=2,495万円までインターネット上で募集するという方法であれば、継続開示に伴うコスト(監査証明など)を押さえられますので、数百~数千万円の少額資金を集めるのに利用されてきました。

「貸付型」=所謂ソーシャルレンディングですが、借り手の事業会社等のローン(多くは短期)を不特定多数の個人の貸し手とインターネット上で結びつけるので、ローンの仲介の形を取る為に貸金業の登録と、そのローンを小口化する為にファンド化するので第二種金融商品取引業の登録両方が必要になります。

 さて、「投資型」に関しては上記にある様な現状のクラウドファンディングと何か違うかということですが、直接その企業に投資=株式を持つことが出来ます。つまり、一般の個人が未公開株をインターネット上で買うことが出来るという全く新しい制度となります。この新制度の政策目的は、資金・成長企業へのリスクマネー供給を強化することですが、昨年の改正金商法(平成26年6月成立)でこの「投資型」クラウドファンディングを行う業者を少額電子募集取扱業(株式を取り扱うものは第一種、ファンドは第二種)として規定しています。勿論、少額でない電子募集取扱業務という制度も金融商品取引業者の制度として定められました。

 簡単に言い直しますと、インターネット上で株式やファンドの投資資金を集めるのが電子募集取扱業務、その中で、以下の条件に限定して行うのが少額電子募集取扱業務でその専業者が少額電子募集取扱業者(「投資型」クラウドファンディング専業者)という事になります。
・募集の総額が1億円以内
・1投資家の投資金額が50万円以内

この「投資型」クラウドファンディング業者の参入を促す為に、通常の金融商品取引業者の資本金規制を
以下の様に大きく引下げ、また純資産維持の規定や兼業規制などを負わない緩和策が取られています。
・第一種少額電子募集取扱業者:1,000万円
・第二種少額電子募集取扱業者:500万円

 実際の業務をどう行っていくか、金融商品取引業者としての内閣府で定めまれますが、この案が2月13日に公表されパブリックコメント対応となっており5月には決定されますが、金融商品取引業者としては投資家保護の為の自主規制ルール(投資先のデューデリジェンスや投資家への継続した情報提供など)制定も必要なので、実際の「投資型」クラウドファンディングの開始は今夏以降ではないかと予想されます。

 なお、現在行われている「購入型」「貸付型」のクラウドファンディングも、それが投資目的であれば「投資型」クラウドファンディングとして規制される事が想定されますが、現状との大きな違いは共通の投資家保護ルール(今後整備される協会による自主規制ルール)が適用される事です。

 また、現在の「寄付型」「購入型」は製品や企業などにたいする何らかの共感を利用するものですが、クラウドファンディングである以上、この共感を呼ぶ仕組みを利用して投資と両立させていくということも
「投資型」では注目されています。

※どの様な仕組みになりそうかは、後日内閣府令案を解説いたします。

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オプションプライシング・モデルに関する率直な、そして一般投資家の一般的な疑問(2月7日)
 金融工学の在り方やノーベル賞を取ったモデルに異論を唱えるつもりは全くありません。しかし、そのオプションプライシング・モデルを使って上場企業が行う資本政策は、一般の株主や投資家に影響することも多くあり、その使われ方について感じている事を述べます。

 先ずオプションプライシング・モデルを使って上場企業が行う資本政策とは、新株予約権(コールオプション)の発行で、その利用目的はファイナンス(新株予約権付社債=CB)、ストックオプション、買収防衛策、業務提携や何らかの報酬の対価など実に多様に利用されています。但し、会社法上では株式の発行と同様に有利発行の規程があり、発行される新株予約権が適正な価値なのかどうか問題となります。その為、会計用語でいうところの公正な評価単価の算定が必要になります。企業会計基準委員会が定める「ストックオプション等に関する会計基準」では、この算定の為のオプションプライシング・モデルとして、市場関係者の間で広く利用されているブラック・ショールズ式や二項モデルが上げられています。また、最近では、新株予約権の行使条件にいろいろな制約がつくケースでは、ランダムにシミュレーションを繰り返すモンテカルロシミュレーションを利用した算定も行われています。

 次にオプションプライシング・モデルに関して感じることですが、ボラティリティ(株価変動率)の影響がモデルの価格算定に与える影響が非常に大きいのではないかという事です。言い換えると、このボラティリティのベースとなる株価の変動率を見る期間によって、オプションの価格そのものが大きく変わります。勿論、実際に新株予約権の価値算定を行う会計系コンサル会社などでは、一般的な参考期間というものを示していますが、新株予約権の発行に際してどの様に適切な算定期間を考えたか、その根拠が示されることは、まだ少ない状況です。
 
 更にオプションプライシング・モデルに関する疑問の一つに、オプションを利用する人によってその価値が大きく異なるケースがあるのではないかという事です。例えばコールオプション(買う権利)が付いた社債として新株予約権付社債がありますが、海外の機関投資家が購入する前提の海外発行と国内で個人も買える国内発行とでは、新株予約権の行使価格のアップ率(時価の株価に上乗せする分)が大きく違います。これは、貸株市場を利用できる海外投資家と制限がある国内個人投資家ではコールオプションの利用価値が大きく異なることの証左かもしれません。(発行会社にとっては、アップ率が高い方が希薄化を押さえられると考える場合が多いので、最近の新株予約権付社債の発行は国内が減って海外が増加傾向を強めています。)

 最後に、現在のオプションプライシング・モデルは、参加者の限定された市場においてその利用が広まれば、逆に実際の取引に適さないのはないかといった感想です。その事例として、オプションモデルによりオプションと現物市場の裁定取引を行っていたロングターム・キャピタル・マネジメントの破綻(1998年)、CDSの流動性喪失によるリーマンショック(2008年)などですが、同じルール(オプションプライシング・モデル)を信じる市場参加者が、市場要因の大きな変動が発生した場合、一斉に同じロジックで行動するので流動性が喪失され、モデルのオプション算定機能が働かないのではなかという危惧を感じます。

 勿論、オプションプライシング・モデルを利用することは、新株予約権が適正な発行であることを証する為に必要なことなので、実際の発行や利用方法にあったモデルが改良されていくことに期待しています。
ただし、何の対価か、そして最大利益はいくらなのか、新株予約権を利用するものの立場で考えれば、概ねの利用の適正さは、株主や一般株主にも理解できるの

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クラウドファンディングと電子募集取扱業務について(1月8日)
 クラウドファンディングに関して、世間一般の関心が非常に高いので資本市場関係者として羨ましくもあり、また期待もしたいところです。現在、様々な用途でこのクラウドファンディング的手法が使われ始めていますが、事業や海外活動支援の寄付集めから、都道府県の地元企業支援、お酒や特産物などの実質的販売、小口ローンの仲介などにも広がっています。

 しかし、最も注目したいのはこの手法が投資に利用されようとしていることです。今までのクラウドファンディングは、事業や活動、そして商品などへの個人の共感や興味が前提となっていましたが、投資型クラウドに関しては、投資目的ということが中心になります。勿論、クラウドファンディングの良さを活かす為に、投資する企業への共感を利用することも行われるでしょうが、今後は投資行動として法的には整理されていきます。この投資目的のクラウドファンディングは、昨年の金融商品取引法改正において、電子募集取扱業務として新たに定義され、今後の自主規制ルールなどの制定を経て、新たな制度として始まる予定です(昨年6月のアベノミクス成長戦略にも、新規・成長企業へのリスクマネー供給手段として制度整備されることが謳われています。)。その概要と取組みは次のような状況です。

≪クラウドファンディングにおける基本機能

◇インターネット上でファイナンスの為に企業の情報を伝える
◇インターネット上で投資ニーズを集める
◇インターネット上でファイナンス手続きを完了させる

上記の様な機能は、クラウドファンディングそのものがネット上で完結する為、このサービスを行うものが少人数・低コストでも実行可能なので、小口のファイナンスにも対応することが期待されていますが、電子募集取扱業務の現状は次の様なものです。

 電子募集取扱業務のうち、特に少額(ファイナンス総額1億円、投資家一人当たり50万円以下)を少額電子募集取扱業務とし、これが所謂「投資型」クラウドファンディングと呼ばれています。
 上記の専業者は、少額電子募集取扱業者で資本金規制の緩和等、金融商品取引業者として軽減措置を受け、株式を取り扱う業者は第一種・ファンドは第二種とされています。
 今後、実務に関した府令等の法令と、協会などの自主規制で当該業務は始まりますが、当初は政府の成長戦略に「投資型」クラウドファンディングが入っていたので、今春にも業務開始が見込まれていました。
 しかし、米国での同様の制度であるJOBS Act(2012年4月成立)による株式型クラウドファンディングにおいて、当局(SEC)の実務指針確定が遅れており、米国での同制度開始は、2016年初めまで延びる可能性があります。
 従って、我が国での制度開始も平成27年度後半に延びる可能性があるのが現状です。
また、クラウドファンディングを投資として見直した場合、次の様な対応もサービス提供者には必要です。

≪投資型クラウドファンディングの制度整備に関するポイント≫
◇ファイナンス後も企業や事業の情報を、投資に参加した個人へ伝える仕組み
◇対象とする企業や事業の内容を、投資家目線でチェックする機能
◇共感を呼ぶ仕組みとともに、投資リスクを周知する対応
◇株式やファンドの管理方法の統一化とその内容開示

上記のポイントを実務的に行うためにも、業界による自主規制ルールの制定が待たれているところです。
(なお、貸付型クラウドファンディングと言われているソーシャルレンディングは、貸金業法によるローンの仲介行為で整理されていますが、個人にファンドで売る場合は第二種金融商品取引業なので、上記ポイントに対する共通の自主ルールが、この部分にも及ぶと考えられています。)

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上場企業のエクイティ調達2014年速報(12月26日)
今年も年末となりましたが、日本の株式市場において企業が資本調達を行った本年の総額は、約2.9兆円で昨年比約2割増加ですが、その内訳は以下の通りです。

・公募増資       110社  1兆3,527億円 前年比21.4%増
・第三者割当      173社    2,871億円 前年比22.8%減
・公募新株予約権付社債  57社    9,520億円 前年比44.4%増
・IPO調達       70社    2,480億円 前年比33.6%減

☆ 上場企業のエクイティ調達2014年速報

なお、上場会社のエクイティ調達総額はリーマンショック直後の2009年の約6.6兆円が最高ですが、本年の水準はリーマンショック前の平均値に近い状況です。また、公募増資は昨年・今年と100社を超える状況が続いていますが、リート調達が3~4割なのと上場企業の小型ファイナンスが増加している傾向が続いています。

 
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クラウドファンディングと資本市場のファイナンスの違い(12月11日)
 クラウドファンディングは、今、非常に注目されています。金融の制度として“投資型”が金融商品取引法で整備され、来年4月からの開始を目指して自主規制が準備されるところです。政策的にも、アベノミクスの成長戦略において、新規・成長企業へのリスクマネー供給策として期待されていますし、マスコミなどでも好意的にクラウドファンディング事例が取り上げられることが多いのが現状です。

 これだけ注目される理由の一つに個人のインターネット利用環境が改善され、SNSなどの利用が進んでいることも上げられます。現在のクラウドファンディングの仕組みは、ネット上で事業や企業の情報を公開し、これに共感や賛同した不特定多数の個人が、少額の資金を提供するというのが基本的な形です。
 これから出来る新たらしい制度なので、期待値が先行している面はありますが、インターネットのWeb上(実際は、業者の運営するプラットフォーム)で、不特定多数から資金を集めるのは、IPO(新規株式公開)や公募増資・売出しなど既存の資本市場でのファイナンスからみても画期的で素晴らしいことのように思えます。この共感や賛同を集める仕組みを、企業のファイナンスに利用できないかという思いは、多くの資本市場関係者が持つ思いでもあります。

 しかし、実際の投資に繋がるような投資型クラウドファンディング開始には、これから自主規制ルールや関係法令(金商法は改定されていますが、関係する施行令・内閣府令など)の整備が必要です。ネット上で共感や賛同を呼ぶ仕組みを、企業のファイナンスに利用していく為には、これらを待たなければなりませんが、現状で既存の企業ファイナンスの仕組みと何が違うが基本的な部分を書き出してみました。

(以下、□が資本市場における既存ファイナンス、◇が投資型クラウドファンディング)

【勧誘の方法】
□ネット証券での販売も一部分にはありますが、基本は証券会社の営業員による勧誘です。
◇ネット上での情報提供が基本で、他にメールやSNS、マスコミなどパブリシティの利用もあります。

【販売の仕組み】
□証券会社が引き受けたものを、一般の投資家に販売します。
◇クラウドファンディング業者が投資ニーズを集めた分だけ、ネット上で販売します。(一定の投資ニーズが集まらなければ資金調達を取り止める場合もあります。)

【販売制限】
□公募の場合は、個人投資家に対する割当て株数制限(上限)がありますが、金額的な制約はありません。
◇50万円までの投資上限です。(その理由は、リスクの高い投資なので少額に抑え、個人が負うリスクを抑える目的です。)

【販売時の投資家への情報提供】
□有価証券届出書とその情報を組み込んだ目論見書(事実や決定事項の情報提供に限られます。)
◇現状のクラウドファンディングでは特に決まった情報提供の定めがなく、業者や企業がアピールしたい内容が中心となっています。ただし、現在もファンド形式で募集されるものは、重要事項やリスク情報についての情報提供を求められており、今後整備されるルールでもこれ等の情報提供は義務付けられそうです。
【業者のチェック】
□証券会社による引受審査が行われます。(業界団体の自主規制ルールに沿った内容)
◇現在は業者ごとの企業・事業内容の精査が行われていますが、調達者がそのコストを負担する為、どこまで精査するかはケースバイケースです。

【販売後の情報提供】
□有価証券報告書制度に基づいて継続開示責任を企業が負っています。
◇現在は特に定めがありませんが、少なくとも年1度程度、若しくは事業の進展に伴って情報開示が望まれます。

 投資型クラウドファンディングは全く新しい仕組みなので、新しいルールで良いと考えますが、少なくとも投資家への情報提供の体制整備は業者や利用する企業にも求められことです。しかし、公募ファイナンスの様に厳格化すると、業者や利用企業の負担も増すので、適切なルール作りの議論が待たれます。また、個人の共感や賛同を呼ぶファイナンス手法は、現在の資本市場で行われている企業ファイナンスでも活用されていくことが期待されます。
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IPO(新規株式公開)への期待と課題 (10月6日)
海外では注目のアリババが無事上場され、アベノミクス相場2年目の日本市場も注目の“すかいらーく”や“リクルートホールディングス”の再上場が今月予定されています。昨年は54社がIPOしましたが、関係者によりますと今年は7~80社が上場する可能性があるということです。また、最後の大型民営化IPOと言われる日本郵政の主幹事選定(財務省)で、10月初めに11社の証券会社が主幹事として公表されました。
 IPOの復調は、日本経済の回復の一つの兆候として好ましいことですし、成長戦略に於いても新規株式公開の増加を目的とした規制緩和策などが行われているところです。そのIPOに関して、新規株式公開を望む企業側の期待と、IPOに関係した課題について、簡単に触れたいと思います。

 先ず企業側の期待について、帝国データバンクがIPO意向若しくはベンチャーキャピタル出資が確認されている企業4,000社以上に毎年実施している“新規株式上場企業に関するアンケート調査”(回答率3割程度)では、IPOの目的に関して、企業側は以下の様に回答しています。(数字は、同調査2014年4月公表分、複数回答)
・知名度や信用度の向上・・・74.7%
・人材の確保     ・・・51.4%
・資金調達力の向上  ・・・47.6%
・従業員の士気向上  ・・・37.7%
 以上は企業側の回答なので、ベンチャーキャピタルや大株主からみれば出資の出口戦略や成長価値の顕在化などが挙げられると思います。

また、政策的にはIPOを希望する企業側の負担を軽減する為、新興市場での必要株主数基準を引下げたり、監査証明が必要とする期間を減少させたり、内部統制監査に関する負担を軽減するような緩和策が取られています。

 一方、IPOに関する課題で最も需要なのは公開時株価算定に関するものです。
一応、以前にもご紹介しましたが、IPO時の公開株価の決定方法は次の様になっています。
☆ 新規公開株式の値付けプロセス

 IPOを準備している企業において、筆者の経験から最も多い中止理由は、企業若しくは大株主側が想定する公開株価と、主幹事証券側の主張する株価の隔たりが大きな場合です。勿論、公開株価は景気動向や市況に大きく影響されるので、景況感から企業側が諦めてしまう場合も多いのですが、主幹事が求めるIPOディスカウントを受入れ難いケースもあります。このIPOディスカウントとは、業況や市場での同業の株価から、理論的な株価は○○だけれども、上場時は流動性が少ないので××%ディスカウントすべきですとの主幹事証券のリコメンドです。
 勿論、IPO価格を最終的に決定するのは企業ですが、主幹事証券の企業に対する強みは△△な価格でなければ引き受けて投資に販売出来ないと言うことも出来ますので、実質的な公開株価決定権は主幹事証券側にある場合も多く見受けられます。以上は、価格決定プロセスで言います想定発行(売出し)価格の算定及び仮条件価格帯の決定まですが、ここから公式な株価決定方法である機関投資家によるブックビルディングが実施され、それによって最終的な投資家需要を図る株価が決定されます。

 なお、ブックビルティング方式での公開株価決定について、現在は株価をヒアリングする機関投資家に対してIPO株式の割当てを約束するものではありません。現状のIPO時における投資家への配分比率は、個人投資家が7~8割、機関投資家が2~3割と言われていますが、割当て比率の少ない機関投資家が何処まで真剣にブックビルティングでの価格決定に協力するか指摘される場合もあります。また、個人需要の影響は、公開時の株価決定に大きく影響しているとは言い難い現状でもあります。

 以上を言い換えますと、公開時株価決定について企業・大株主・証券会社・機関投資家・個人投資家それぞれの立場から現状の方式で良いのか、せっかく市場環境が良い今こそ見直してみる必要があるのではないでしょうかというのが本稿の趣旨です。


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ファイナンスに関する2つの取引所ルールについて (9月9日)
 一般の個人投資家が上場企業のファイナンスに直接接することは余り多いとは言えませんが、ファイナンスが株価に与える影響は大きいものがあります。調達した資金で成長が期待できるのではれば、株価は堅調に推移することが多く、そうでなければ希薄化が目立ちます。それが、公募ファイナンスであっても第三者割当でも、そしてライツ・オファリングのような株主割当てでも、基本的には同じです。最も重要なことは、一般の投資家や株主が理解できるように分かり易くファイナンスの目的や内容を伝える事だと思います。

 最近、東京証券取引所がファイナンスに関するルール2つを公表しました。
一つ目は、「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」で、上場企業がファイナンスを実施する場合、上場企業は勿論、関係する証券会社やアドバイザー(弁護士・会計士など)などが遵守する必要がある基本ルールです。求められているファイナンス・ルールは以下の4つです。

① 企業価値の向上に資する
② 既存株主の利益を不当に損なわない
③ 市場の公平性・信頼性への疑いを生じさせない
④ 適時・適切な情報開示により透明性を確保する

 一見、当然のことを言っているようですが、ルールとして定めるには上記の各項目に照らしてこれに反するような事案や事態が起きているという事でもあります。

 先ず①について、ファイナンスの目的が株主構成を変える事だったり、上場維持の為に単に純資産を増加させるだけの目的の場合などが問題です。次に②ですが、極端な希薄化で既存株主の利益を著しく損なうと見られる場合や、市場での流通量(出来高)や株価に配慮されていないファイナンス・スキームが問題となります。③は少し抽象的にも見えますが、特定の者に利益を与えることが目的となっているようなケースで、貸株契約と第三者割当をセットにすることで、明らかに特定のファイナンス割当者に短期的な利益が生じるような場合が考えられます。④もファイナンス内容を株主や投資家に伝えるのは当たり前のことですが、ファイナンス内容や目的が事実と違っていたり、公表するタイミングにファイナンス目的以外の作為を感じる場合などがあります。

 以上の様な問題ファイナンスを排除するためにも、「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」が必要という事ですが、このルールの導入は全面的に支持します。

 2つ目のルールは、ライツ・オファリングに係るもので、現在ライツ・オファリングは他のファイナンスと同様に取締役会決議だけで実施することが出来ますが、東京証券取引所は”新株予約権証券の上場制度”を以下に変えることで、規制しようとしています。
・10月以降のライツ・オファリングは、Ⓐ株主総会決議かⒷ証券会社の引受審査に準じた確認どちらかが必要になります。

 しかし、筆者はこの改定に関して以下の弊害が生じる可能性もあると考えますので、基本的にこの改定には反対です。
○株主割当増資は規制されない(一部マスコミでは規制するとの報道もありましたが、少なくとも現状では規制なし)ので、同ルール改定においてライツ(新株予約権)が上場出来ない企業が新株予約権の株主割当増資を実施する可能性もあります。すると、株主は売却する事のできない新株予約権を付与されることになり、ライツ・オファリングに比べて不利になる可能性があります。
○「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」ルールに任せれば、このルールの必要性が分かりにくくなっています。実務的には、株主総会準備や証券会社の審査対応などで結果として発行会社のコスト高に繋がります。
○問題はむしろ証券会社の関与の仕方で、証券会社がアドバイザーを務める場合、以下を明確にすべきではないでしょうか。
A=単なるライツ・オファリングの実務をサポートするだけの場合
B=既存株主にライツの行使や、投資家にライツの購入&行使などの勧誘行為を行う場合

 Bの場合、明らかにファインアスの勧誘なので、取引所が言うように当然引受審査的対応は必要でしょうし、投資家にはライツの目論見書交付の義務もあるように思います。しかし、Bの場合や他のアドバイザーがサポートする場合には証券会社の審査作業は結局発行会社の負担になります。

 もう少し言いますと、コミットメント型ライツ・オファリングでは当然証券会社の引受行為が発生しますので、引受審査を実施します。しかし、コミットした証券会社が既存株主に対して行使を薦めるのかどうか現状では不明確です。(本来は、引受審査をしたので既存株主にも行使を薦め、投資家にはライツの買付&行使を薦め、それで余った部分はコミットした通り引き受けて株式で販売するべきでしょうが、この間の投資家・株主への関与が現在の情報開示では分かり難い)

 単にノンコミットメント型ライツ・オファリングを規制するのではなく、ライツ・オファリングの定着に向けて、投資家への勧誘という重要な役割を果たす証券会社の実務を、もう少し株主や投資家から見て分かり易い様に検討する事の方が優先されるべきではないでしょうか。

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試される投資家~2つのファイナンス事例より (8月7日)
 株主や投資家が直接対応を問われるようなファイナンス手法としてライツ・オファリングがありますが、株主は先ずライツ(新株予約権)を受け取るかどうか(受け取らない場合は当該株式の売却)決断を求められます。ライツを受け取った場合、そのライツを市場で売るか、行使するか選択しなければなりません。
また、投資家がライツを売買したり行使を検討したりすることで、このファイナンスに直接参加することが出来ます。

 一方、MSCB(Moving Strike Convertible Bond)やMSワラントと呼ばれるファイナンス手法は、時価より1割程度安い行使価格の新株予約権を証券会社などに割当てますが、割当てられた証券会社は市場で当該株式を売却しますので、この手法は証券会社にとってはある種の裁定取引です。この裁定取引を支えるのは、市場での投資家の買いですので、一般の投資家がファイナンスを支持することがこのファイナンス手法の前提となっています。なお、同様の効果があると見なされるファイナンス手法として、大株主からの貸株+時価から1割程度低い価格での第三者割当の複数回実行があります。

 いずれのファイナンス方法も、株主や投資家がその投資行動を直接問われる方法ではないかと思います。

☆ 株主や投資家が問われるファイナンス事例

 なお、最近ライツ・オファリングに対する規制議論が報じられていますが、その背景にはノンコミット型の場合、第三者がチェックしているか分からないので何らかの発行企業に対する制約が必要ではないかとの意見があります。しかし、ライツ・オファリングの原型であります株主割当増資そのものを規制できなければ、ライツ・オファリングを規制しても、株主は上場されないライツ(株主割当増資で株主に付与された新株予約権)を持つことになり、株主にとってはデメリットが大きくなる可能があります。むしろファイナンスが問題というより、問題あるファイナンスを繰り返す企業が上場されていること自体が問題の様に思われます。

☆ 直近のライツ・オファリング事例


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日本の発行市場の課題~アジアの中心市場として相応しい発行市場機能整備の為に (7月29日)
 発行市場は流通市場と両輪で日本の株式市場を構成していますが、毎日取引されたり動きが頻繁にある訳ではないので注目されにくい存在です。しかし、市場に株式を供給するので需給関係には大きな影響を及ぼすとともに、企業の成長や再生に必要な資金を供給しています。

 証券会社の中においても発行市場関係者は少なく、社内や業界においても専門的分野に見られがちですが、流通市場や世の中の変化に合わせ、発行市場自身も変わっていく必要があります。その課題は何かについて、現在の状況を纏めてみました。

☆ 日本の発行市場の課題~アジアの中心市場として相応しい発行市場機能整備の為に

 一つ一つのファイナンスは、個別企業の資本政策として株主や投資家から評価されるべきですが、発行市場において新たに対応すべきことや、守られるべきルールは、流通市場での多様な投資家が参加することを促すものであるべきというのが筆者の考え方です。

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ライツ・オファリングの対する規制の動きについて (7月24日)
 24日付日本経済新聞において、ノンコミット型ライツ・オファリングに対して取引所などで規制する動きがあることが報じられましたが、その背景などについて簡単に述べたいと思います。

先ず、ライツ・オファリングは2010年3月にタカラ・レーベン(8897)が日本で最初にノンコミット型で実施しましたが直近(7月22日発行決議)のアンジェスMG(4563)まで25事例あり、その内3件がコミットメント型(投資家や株主が行使しなかった分の新株を証券会社が引き受けて販売)で、残りはノンコミット型と呼ばれるものです。コミットメント型では、野村が2社、三菱UFJが1社取り扱っていますが、その殆どが株主や投資家に行使されて、実際に引き受けたのは発行予定株数の僅か2~3%でした。ノンコミット型で行使されなかった分を証券会社が引き受けることはありませんが、フィナンシャル・アドバイザーとして証券会社が関与する場合が多く、特にA証券会社(引受機能のない)での対応が10社のこのビジネスでの高いシェアを占めているのが目立っています。
ライツ・オファリングにおいて、必ずしも証券会社が関与する必要はなく、最初のタカラ・レーベンの発行事例では、弁護士の指導の下に上場企業自らが発行実務を進めていますので、発行市場関係者としては敬意を払いたい思いです。また、フィナンシャル・アドバイザーの役割も必ずしも明確ではなく、コンサル会社が勤めた事例もあります。

増加してきたノンコミットメント型において、最近問題視されているのは上場廃止基準にかかるような債務超過の企業が実施したり、短期間に他のファイナンス(第三社割当増資やMSワラントなど)と合わせて複数回の資金調達を行う行為です。

ライツ・オファリングは、制度的には会社法の新株予約権の株主への無償割当てを利用し、その新株予約権を取引所に上場して払込期日直前まで売買させるものですが、実務的に利用しにくかったのを金融商品取引法や取引所規則を改正することで利用を促す取組みが為されてきました。この背景としては、リーマン・ショック後、一時的に急増した金融機関や大企業の大規模(大きく希薄化を招くという意味)な公募増資が海外機関投資家などから批判されていたことが挙げられます。

本来、大規模な公募増資の代替手段としてコミットメント型ライツ・オファリングを想定して制度・規制を緩和していったのですが、想定外だった利用のされかたなど踏まえて、東証の上場制度整備懇談会では以下の様な議論がなされています。(議論は、2月~4月にかけて行われ近々報告書が取りまとまられる予定とのことです。)

●独立した第三者が発行の適切性等をレビューすることが必要(証券会社の引受審査に準じたもの、若しくは第三者委員会など外部チェック)
●若しくは、株主総会の承認を得る方法を取る

上記の規制議論について、基本的に筆者は反対します。理由は、未だライツ・オファリング手法が定着したとは言い難い状況の中で、上場企業のファイナンス手段を狭める可能性があることと、基本的には株主や投資家の判断に任せるべきことと考えます。

 但し、証券会社がフィナンシャル・アドバイザーを行う場合、当該ライツ・オファリングに対して何らかの社内審査行ったかどうかのコメントや、ライツの行使を勧誘するのかしないのかの明確化などを公表するべきと考えます。また、ライツ・オファリング制度は大規模な公募増資の代替として制度整備されてきましたので、公募増資や他のファイナンス手段の問題点と合わせて、上場企業のファイナンスの在り方として包括的に議論されるべきこととも思われます。
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新しいファイナンス手法なのか?~発行市場にもイノベーションは必要ですが・・・ (7月8日)
 ICTの進歩によって株式市場の流通機能は、どんどん進化しています。取引や決済がプログラミングに対応して高速化することでHFTなど超高速の裁定取引が行われ、株式がペーパレスになったことで金融機関同士の株式の貸し借りは概ねリアルタイムで行うことも可能になっています。

 一方、発行市場(上場企業のファイナンス)の方は既に流通市場があることが前提となっているため、その流通市場に悪影響を及ぼさないよう発行ルールを定めています。その為、発行市場の進化とは流通市場の進化に合わせた発行ルールの改定という見方も出来ますが、その発行ルールは関係法令や証券会社の自主規制及び上場企業の発行規律によって成り立っています。新しいファイナンス・スキームを行おうとした場合、この発行ルールに照らして実務的にも問題ないことを確認しながらファイナンスを進めますが、これは証券会社や専門の弁護士などフィナンシャル・アドバイザーの仕事です。

 嘗てのライツ・オファリングやリキャップCB、株式へ転換する数量をコントロールしようとする新株予約権付社債(CB)、そしてMSCBやMSワラントなどもこの発行ルールを一つ一つ実務的に確認しながら行いますので、これら新しい取組みを行ったフィナンシャル・アドバイザーの方々には敬意を払っています。

 最近実行されたリプロセル(4978)のファイナンスでは、改めて日本の発行市場について考えさせられたので、ここに取り上げます。(※あくまでもファイナンス手法に関する評価なので、投資判断には用いないで下さい。)

 先ず6月11日に取締役会決議されたファイナンスは次の様なものです。

【ファイナンス概要】(一般の方に理解しやすく筆者が簡略化しました。詳細は同日の記者発表文を)
・4回に分割した第三者割当増資=1回80万株の株式発行×4回で合計320万株(6月27日、9月4日、9月24日、12月4日に割当先が払い込む。なお、割当日は各日の2週間程度前)
・割当先=ドイツ銀行ロンドン支店 (ドイツ証券(東京)がアレンジ)
・割当する株式の発行価額=割当日の時価の90%(1回目は6月11日に801円で決定)
・借株契約有り=割当株数と同数までの借株契約がドイツ銀行によってなされることがある。
・割当て株数の調整=月間の取引高が一定株数以下の場合、次回の割当株数が減少される。(割当て株数が半数若しくは割り当てられない場合も)

【筆者の考え】
・このファイナンス・スキームは、所謂MSワラントに相当近いと考える。
・初回こそ、80万株の新株が割当てられるが、発行決議前に借株契約があり割当者もしくはその関係者による当該株式の売却が実行されていれば、MSワラントの発行と同様の効果がある。
・次回以降の出来高に対する割当株数の調整は、割当先が裁定取引(借株契約で借りた株を売却し、割当株を引き受けて、株式を返還)を行うことの証左ではないだろうか。
・なお、MSワラントやMSCBは割当者の市場での裁定取引行為が前提で、実質的には流通市場でファイナスしているに等しい。その為、公募ファイナンスに準じた株主や投資家への配慮(ファイナンスや資金使途の内容を分かり易く伝える等)が必要。

【割当者(証券会社等)が留意すべき点】
・割当者が株式を借りて売却することが前提だが、インサイダー情報の管理は重要。
・特に、最初の発行決議前の売却については、ファイナンスそのものがインサイダー情報なので、このスキームの計画段階から売買は出来ない。
・また、当該ファイナス・スキームを検討中に入手した他のインサイダー情報(M&Aや新商品開発など)がある場合、その公表まで売買出来ない。
・つまり証券会社としての情報管理と売買管理が重要になってくる。

 いずれにしても、新しいスキームへのトライは投資銀行として称賛されるべきですが、そのスキームとファイナンス目的を正しく投資家や株主に使えることが重要です。なお、このファイナンス・スキームは、STAPならぬSTEP(Straight-Equity issue Program)と命名されていますが、関係者の洒落にしては少しきつい気もするのは、筆者だけでしょうか。


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日本の社債市場と個人の投資について (7月4日)
 昨年は個人向け社債が2兆円近くも発行され、その内7,000億円がソフトバンクの発行によるものでした。また、発行者の傾向としては、証券会社や金融機関(劣後債など)の発行が増えていますが、自社顧客の債券投資ニーズに応えるものでした。また、ネット証券が自社顧客向けにネット販売(勧誘)を行うことも定着してきました。
 この傾向は今年も続きそうですが、個人が社債の受け皿となることは今後も増加しそうです。但し、個人は2016年から債券投資に関する税制が変わり、譲渡益は課税されるよう変更されたり、株式関連損益との損益通算が可能になります。

☆ 日本の社債市場と個人の投資について

 さて、日本の社債市場そのものはどの様か言いますと、拡大していると言える状況ではありませ。東日本大震災で電力債の発行が減少しましたが、一方ではリーマン・ショック後、社債市場活性化の為の検討が進められてきました。その成果は今後に期待ということかも知れませんが、もう5年近い歳月が経過しています。
 主要な問題点を洗い出し検討が進められてきましたが、流通市場の為の取引価格を共有する仕組みは1部に限って今秋スタートする予定です。(目標としていた米国での同様のシステムに比べ、かなり限定された仕組みでのスタートです。)市場拡大には、発行者・投資家双方の拡大が必要でしょうが、そろそろ大手業者のアジアの中心市場として相応しい本気の議論が待たれます


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MSワラントと特殊なファイナンスについて (6月12日)
 上場企業のファイナンスには、広く投資家を求める公募、特定の者に割り当てる第三者割当、ライツ・オファリングのように取りあえず株主に増資に応じる権利を与える株主割当てと主に3つの手段があります。
 いずれの方法であっても、ファイナンスの対象とする投資家のみならず、上場企業である以上は既存株主や一般の投資家にファイナンスの内容・目的について分かり易く伝える必要があります。
 ファイナンス企業に対して、その手伝いをするのが、公募の場合は引受証券会社、第三者割当などではフィナンシャル・アドバイザーなどでしょうが、標記のファイナンス方法に関しては、少し難しい面があるので取り上げました。

 MSワラントとは、新株予約権を証券会社などの第三者に割当てするのですが、問題はこの新株予約権の行使条件です。当初の行使価格はあまり問題ではなく、発行後、時価の9割近くまで行使価格を低下させることが条件になりますが、この様に行使価格が変動するのでMoving Strike即ちMSワラント(※ワラントとは現在の新株予約権制度が出来る前の同様の権利に対する通称です)と称しています。

 このMSワラントを割当てられた証券会社などが、先ず株式を借りて市場で売却します。その為、市場価格は下落しますが、MSワラントの行使価格も同時にその時価の9割掛けに低下します。MSワラントの保有者は、市場で株式を売却して、MSワラント権利行使で市場価格よりも安く新株を入手し、借りた株式を返済します。結果としては、MSワラントを割当てられたものの市場での裁定取引行為が前提となる手法ですが、これは市場での一般の投資家の買いがなければ成立しません。
 つまり、MSワラントは表面的には第三者割当の形をとりながら、実態は一般の投資家の買いを前提とした公募ファイナンスに近いファンナンス手法とも言えます。

 従って一般の投資家に理解しやすいスキームの説明や増資目的のディスクロージャーが必須ですが、MSワラントの引受証券会社やアドバイザーに求められるのは、可能な限り丁寧な説明を株主や投資家に対して行うこと発行会社に助言することです。

 なお、MSCB(行使価格が下方修正される新株予約権付社債)は企業の資金調達ですがMSワラントは直接の資金調達ではなく割当者の裁定取引を介した間接的資金調達ということりなります。また、MSCBやMSワラントを証券会社が引き受ける場合の自主規制ルールはありますが、他の第三者に割当てられた場合、市場規律上の問題をどう遵守するかは企業そのものの責任になります。

また、MSワラントではありませんが、時価より低い行使価格に設定した新株予約権と主要株主(会社の経営者である場合が多い)からの貸株契約をセットにした新株予約権の第三者割当てが行われる場合がありますが、これは疑似MSワラントとも言えます。

 筆者は、これらのファイナンス手法に関して否定するものではありませんが、スキームや目的の分かり易い説明を公表する義務が発行会社にはあると考えます。特に、新株予約権の割当てが正当かどうか一般の投資家が判断する材料の一つとして新株予約権の価格算定書がありますが、結果だけ述べたものや学術的説明ではなく、普通の投資家が理解可能な算定根拠の記載があるべきと考えます。

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投資家にとってのリキャップCBの意味 (6月6日)
 最近リキャップCBへの関心が再び集まっています。勿論、企業側の注目度の高まりなのですが、一方では、自己株式の取得資金調達を目的にファイナンスすることに関して、企業の財務やIR活動を担当されている方々の中には、多少の違和感を覚える方々も多いようです。株式を買い取る資金を、将来の株式発行する前提である新株予約権付社債(通称はCB=転換社債を今でも使います)で調達することが、何やら資本というものを軽く扱っている様に感じるようです。確かに、昔の商法では資本充実の原則がありましたが、資本を減じる自社株取得が認められ、株主が認めれば資本準備金まで取り崩したり出来るようになり、株式会社の資本政策は随分柔軟になりました。
 ですから、自社株取得資金獲得を目的としたファイナンスがあっても良いわけですが、その前提となることは、現在の株価水準では自社株を取得し、将来の株価上昇局面において新株を発行することを企業側がコミットするという事になります。

☆ 投資家にとってのリキャップCB

リキャップCBのリキャップは、リキャピタライゼーション(負債資本再構成)から取られたものですが、CB発行で調達した資金の全部若しくは一部を自社株取得資金に充てるCBの呼称として使われています。もともとは米国などで利用されていたファイナンス手法でしたが、日本では以下の様な主な発行事例があります。

・ヤマダ電機(2008年2月1500億円 2014年5月1000億円)
・ヤマト運輸(2011年2月300億円)
・KDDI(2011年11月2000億円)
・日本ハム(2014年3月300億円)
・静岡銀行(2013年4月約500億円)や常陽銀行(2014年4月300億円)などの複数の地方銀行  など

 一方、リキャップCB発行は投資家や株主にとっては以下の様な意味があるとも考えられます。
◎発行企業が、発行時の株価で自社株買いを実施することで、自社株が割安な水準にあることを示し、また将来の株価上昇を見込んでリキャップCBを発行することで、将来株価に対する自信を示しています。
◎資本を効率的に利用することをコミットしていると考えられます。

以上が、将来の企業価値向上に向けて積極的な資本政策を企業経営者が取っていくことを、株主や投資家に期待させるので、筆者はリキャップCBの発行を基本的に支持します。

なお、リキャップCBの商品性に関しては、新株の発行を一定量制御しようとするものやスキームの名称が分かり難い(引受証券側のスキームに関する商標である場合も)がありますが、一般投資家が理解しやすい解説やスキームの簡略化が必要だとも感じています。利用拡大に為に。


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公募ファイナンスとしてのライツ・オファリング (5月8日)
ライツ・オファリングの発行事例が随分増えてきましたので、直近までの状況を一覧表にしてみました。

 ライツ・オファリング事例  (2014年5月7日まで、23事例)

 ライツ・オファリングは、従来から利用されていた株主割当増資の一種ですが、明らかな違いは株主に割り当てられてライツ(新株予約権)が取引所に上場され、株主以外の投資家もファイナンスに参加することが出来ることです。その意味では、ライツ・オファリングは公募ファイナンスの一種とも言えます。
 但し、証券会社などが引き受ける公募増資とは明らかに違っているのは、ノン・コミット型のライツ・オファリングでは証券会社による引受審査が実施されません。(コミットメント型では、株主や投資家が行使しなかった分を証券会社が引き受けて販売するので、引受審査は公募増資などと同様に実施されます。)
 
 引受審査があるから良いファイナンスということは一概には言えませんが、それを決めるのは株主や投資家であるのはライツ・オファリングを含めてファイナンス全般に言えることです。ただ、その株主や投資家がファイナンス内容を理解し、調達した資金などの効果を想定できるディスクロージャーは必須です。
 
 ライツ・オファリングを実務的に支援する主な関係者として、アドバイザー若しくはフィナンシャルアドバイザーがいますが、その支援内容は様々です。また、アドバイザーが明記されていないケースでは、弁護士事務所などがサポートしているケースがあります。なお、証券会社がアドバイザーを務める場合が多く見られますが、その支援内容も単に実務上の支援から、ライツの売買や行使の勧誘など個別に関与程度が相当異なっています。また、これらの勧誘行為が出来るのは証券会社だけです。

 ライツ・オファリングが公募ファイナンスの一種であることを考えますと、利用する企業も支援するアドバイザーも、既存株主や一般投資家に配慮した市場規律(発行市場の常識的な考え方)遵守に努めるべきですが、それもまたアドバイザーの大事な仕事です。

 せっかく増加したライツ・オファリングが、公募ファイナンス手法として定着していく為に、ディスクロージャーの充実(多様な投資家が理解できる記載表現の平易化)と短期間にファイナンスや他の資本政策などの重ねない市場規律(市場で一つ一つの施策が消化されていない状況を避ける)を守ることを、企業及びアドバイザーの方々にお願いしたいと思います。

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不足する個人向け社債 (3月13日)
個人向け社債は、全体的には増加傾向にあります。年間で約2兆円の発行があり、個人の債券投資の受け皿として確かに拡大していますが、その内容を見てみますと証券会社や金融機関などの発行が増えており、自社の社債販売ニーズや銀行などの資本充実の為の劣後調達ニーズが主体になっているように思われます。

 日銀の資金循環統計では、ここ3年間個人の債券投資全体が減っています(前年比10%程度)が、これは個人向け国債の償還などが大きく影響しているようです。つまり、償還額から発行額を差し引いた個人向け国債の余剰資金を、地方債や社債などで受け切れていないということになります。勿論、外債や株式・投信などの他のリスク商品に投資されれば良いのですが、債券投資は元本償還が原則なので個人にとってリスクのとり方が異なります。
従って、個人による潜在的社債投資ニーズはまだまだ大きいのではないかと思われますが、例えばネット証券で社債が売れるようになってきた事やソフトバンクの3000億円大型社債発行が消化できることなどがその証左と思われます。

 もっとも証券会社では、個人に発行企業の信用リスクを説明しなければなりませんので、格付けA-格未満の事業会社が発行する社債は販売しにくいという通説がありますが、財務情報が開示されている上場会社なのですから、適切な信用リスク判断を行った上で社債の取扱いを増やしていけば、日本の社債市場はもっと拡大することが期待できます。

 一方、最近ソーシャルレンディングといった資金調達方法が増えてきていますが、ネット上で中小企業向けや不動産投資のローン商品をファンド化したものを募集し、調達金額1億円を超えるものも出はじめてきました。今は社債調達とは大きな差がありますが、この差を埋めるような社債市場の拡大が望まれます。

 ☆ 最近の個人向け社債発行概況

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市場が好調な時こそ、ファイナンスの在り方を考える (3月11日)
 流動性を確保する(売買を行い易い)というのと、リスクマネーを供給する(ファイナンス)ことは市場の最も重要な機能ですが、ファイナンスの方はごく稀にしか行われないので、どうしても限られた関係者での議論に偏りがちです。

 しかし、実際にファイナンスが実行されれば、市場での流通株数は増加し、一株当たりの財務的な価値が低下する希薄化(ダイリューション)が起きるので、既存株主には直接的な影響が大きくなります。一方、ファイナンスによって調達される資金が新たな事業などに投資されて企業価値の向上が期待されますので、一般の投資家の新たな投資ニーズを掘り起こす可能性もあります。つまり、目先の需給関係悪化と将来的な需要増加が、株主・投資家に同時に認識されることとなりますが、当然良いファイナンスとは将来的な企業価値向上と投資ニーズ増加がイメージしやすいこととなります。

 公募のファイナンスでは、証券会社が引受けますので、調達した資金が企業価値向上に役立つことを確認する引受審査が行われた上で、自社顧客に販売されることとなります。

 昨年(2013年)は、この公募ファイナンスのうち公募増資件数が通年に比べ非常に多く、東証の統計資料”上場会社資金調達額“によると、114社1兆1,137億円の調達金額となっています。なお、公募増資が年間100件を超えたのは、バブル直後の1990年(121件)以来となっています。

 一方、特定の誰かに株式を割当てるのが第三者割当増資ですが、一般的には事業提携先・資本提携先に割当てられる場合が多く、その様なケースでは長期保有のイメージから、市場では提携先との事業効果を期待して買い進まれる場合もあります。但し、再生途中の企業などが新株予約権と合わせて投資会社に割当てる場合もあり、この場合は一般投資家の評価が難しいような状況もありますが、例えば増資に絡んで大株主との貸株契約が割当先の投資会社にある場合、株式や新株予約権があたかも割当先の株式返済に使われるような懸念が株主や投資家から持たれるケースです。

 また、直接の調達ではありませんが、新株予約権を割当てて、定期的に時価の10%程度したに行使価格を修正する所謂MSワラントは、割当て先の市場での裁定取引を前提としたリスクマネーの調達方法です。この場合、ワラントを行使するのはMSワラントの割当先ですが、この割当て先は市場で売却した株式の手当てで行使するので、実質的にはこの期間の市場での買い手が払い込んでいることになります。

 最近大規模な調達方法(発行済み株式総数に比べ、新株発行の割合が大きいという意味)として増えてきたライツ・オファリングでは、単純なファイナンスとしての利用から株主構成の変化を狙ったものや企業再生を目的としたものなど様々な目的の発行事例が出てきましたが、引受行為のないノンコミットメント型では株主や投資家自らが調達資金の企業価値向上効果を想定しなければなりません。

 個人も含めて多様な投資家が存在する市場でのファイナンスは、投資家や株主にとってファイナンス・スキームが分かり易いこと(希薄化がイメージしやすいこと)とともに、調達した資金で企業価値が向上するイメージが持ちやすいことが重要で、公募ファイナンス・第三者割当等を含めて、一般の個人が理解できるファイナンス評価が必要になっているのではないでしょうか。
(※アナリストは、ファイナンス期間中は企業評価しにくいのが今の市場の仕組みです。)
 
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IPO初値について(2月6日)
上場初値の好調さが伝えられ、新規公開企業数も増えIPOは活況さが続いています。アベノミクス相場の影響があるにしても、IPO復調は日本の資本市場にとっても何よりなことですが、IPOの初値については次のような議論があります。

 ◇IPOの初値が高いというのは、公開価格と上場日の始値の乖離が大きいことを指しますが、この乖離が大きいことは良いことなのか

 昨年2013年に上場された54銘柄の平均乖離率は、121%。つまり上場新株の割当てを受けた投資家は、いきなり倍以上のなるケースが多かった訳ですので、この投資家にとっては勿論良いことです。
 しかし、株式を売り出した企業の株主や新株を発行した新規上場企業にとっては、そもそも公開価格が適切だったのかという疑問が残る場合もあります。公開価格が果たして適切なものだったのかどうか。

 昨年の事例ですと、公開価格と初値の乖離が-4%(ウィルグループ、12月19日上場)から410%(SNAP、11月19日上場)まで銘柄事に相当の開きがありますが、市場からの大型の調達を実施した銘柄は以下の様に、乖離率が低い傾向となっていました。
・サントリー食品 1%(上場時調達金額231億円7月3日上場)
・足利ホールディングス 7%(上場時調達金額2,883億円12月19日上場)
・オープンハウス 18%(上場時調達金額2,883億円9月20日上場)
など
 これは、IPO時に参加する証券会社が多く、結果としてより多くの投資家が参加したためだと思われます。より多くの投資家が、公開価格を決定するブックビルディングに参加することで、適正価格に近いところで値段が決定されたと見ることが出来ます。

 この公開価格を決定する仕組みは、概ね次のプロセスに依ります。
◇主幹事証券会社が、【想定公開価格】(ある程度の値段の幅があり)に対する考え方や材料などをもってIPO株投資を行う機関投資家の需要のヒアリング(プレマーケッティングと称します)を行います。
◇上記のヒアリングに基づいて【仮条件】(ある程度の値段の幅があり)を主幹事証券が決定し、一般の投資家の需要を確認します。仮条件の幅のある価格毎に、投資家需要を積み上げ最終的な【公開価格】決定していきますが、この過程をブックビルディングと言います。

 ベースになるのは、主幹事証券会社が最初に示す【想定公開価格】ですが、その価格決定については日本証券協会より指針が示されています。ただし適正価格に近付けるのは、主幹事証券のノウハウが大きく影響します。また、仮条件を提示した段階で、いくらその後の一般的な投資家の需要が多くても、仮条件枠を超えて公開価格は設定できないのが日本のIPOの仕組みなので、最初に示す【想定公開価格】は重要です。
以上を纏めますと次のよう公開価格の決定プロセスとなっています。

☆新規公開株式の値付けプロセス
(再掲載、筆者作成)

 なお、理想的にはIPO後の企業の成長に合わせ、株価も上昇し、投資家は企業価値の向上も認識しながら、企業側がリスクマネー調達の場として利用しやすい持続的な推移ですが、IPO銘柄の多くは当初の1、2ヵ月取引が盛り上がって、その後取引が低迷するにしたがって株価も下落するパターンが多いことも指摘されています。

 したがってイベントのようなIPO時の盛り上がりをもたらす公開価格の在り方について、問題視する声も多く、次の様なレポートが、日本証券経済研究所(証研レポート2013年12月号)から示されてもいます。

☆新規公開株の価格形成
(関西学院大学 岡村教授)

成長戦略で好調な株式市場の時期にこそ、より多くの投資家が参加することが可能なIPOの仕組みやIPO価格決定の在り方を見直す時期ではないでしょうか。
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新株予約権について、やさしく考える(12月10日)
 最近はファイナンス・スキームとしても定着してきたライツ・オファリングも、買収防衛策でのポイズンピルも、ストックオプションも、企業が発行する新株予約権を使いますが、様々な使われ方をするこの新株予約権について、少しやさしく、でも本質的なことを考えてみます。

 この制度は、平成13年の商法改正により創設され、現在の会社法に受け継がれていますが、最大のポイントは企業が発行する株式を引き受ける権利だけを発行でき、しかもそれが有償の価値があることです。例えば、1000円で新株を引き受ける権利を、10円で発行することが出来るのですが、この新株予約権を企業が発行する際、次のような事が、重要なポイントになります。

【誰に渡すのか】(誰に対して発行するのか)
基本的には、新株予約権の発行目的ということになりますが、次の対象者が考えられます。
・株主全員(ライツ・オファリングや買収防衛策)
・特定の第三者(業務提携や資本提携相手)
・役社員や特定の取引先(報酬の一部として)

【新株を発行する条件を、どうするか】
公募ファイナンスや特定の誰かに新株を発行する場合、あまり有利な条件だと既存株主の権利に悪影響を及ぼすというとこで、有利発行として差し止め請求することが出来ます。例えば、1000円の時価の時、新株を誰かに100円で発行しようとすると有利発行として差し止められる場合がありますが、新株予約権も同様に有利発行の対象となります。問題は、その新株予約権が既存株主の権利を著しく毀損するような発行条件かということですが、以下の項目が発行条件として主なものです。
① 行使価額(新株を発行する価額)
② 新株予約権の発行価額
③ 新株予約権の行使期間
④ 新株予約権の行使の条件

 上記の中で、①と②はある種の相関関係があります。例えば、1000円の時価の企業の新株予約権を行使価額100円として、新株予約権そのものを900円で発行する場合と、900円の行使価額のものを100円で発行する場合、近しい発行条件に見えます。(※厳密には、新株予約権の価値が異なりますが。)
また、時々その使われ方が問題になるMSワラントは、①の行使価格を定期的に時価の9割などに見直すものです。

③は、1日から10年程度まで可能ですが、新株予約権発行の目的によって異なります。例えば、ファイナンス目的のライツ・オファリングでは、20~40日程度ですが、ストックオプションでは10年近いものもあります。

最後に④の行使の条件ですが、敵対的買収者以外の株主が行使できるのがポイズンピルとして代表的な使われ方ですし、業務提携相手など発行する場合、業務提携関係の継続する期間中の行使に制限することもあります。また、様々な条件を付けることも可能で、新株予約権を発行する企業と付与される対象者の間の契約的なものとして取り扱うこともあります。

 さて、最大の問題は、株主以外に発行する新株予約権の価値がいくらかということですが、①~④までを幾つかのオプション算定モデルで算定するケースが殆どです。新株予約権≒オプションということですが、①から③まではまだしも、多様なあり方となる④は、一般の株主や投資家には非常に分かりにくいものです。その為、発行会社としては、新株予約権発行の目的と、発行条件を設定した考え方を、株主や投資家に丁寧に説明していく必要があります。

【新株予約権に関するその他の問題】
・新株予約権付社債
嘗ての転換社債は、今は新株予約権付社債と呼ばれていますが、名前の通り有償の価値がある新株予約権が付いた社債ということになりますと、社債そのものは割引発行されていると見なされます。例えば、額面100円の新株予約権付社債を100円で発行し、新株予約権部分の価値が10円だとすると、社債そのものは90円で発行したと見なされます。新株予約権部分の10円は資本、社債の90円は負債に分けて計上すべきとの会計上の考え方ですが、IFRSなどの影響でこのような考え方の企業が増え、結果として新株予約権の発行コストは会計上上昇することとなりました。(旧来の転換社債のように、一つの新株予約権付社債として行使が起きるまで一体的に見なすことも会計上可能です。企業側の会計処理上の選択によります。)

・金庫株の利用
名前は新株予約権ですが、投資家や株主から行使を求められた場合、自己株取得していた金庫株を渡すことも可能です。少し進んだ使われ方としては、将来の自己株取得資金を調達目的で、新株予約権付社債を発行することがあります。リキャップ(リ・キャピタル)CBと呼ばれる資本政策ですが、将来の金庫株利用を前提とした、自己株式取得資金の調達を投資家から行う仕組みです。

【新株予約権の価値算定に関する一つの考え方】
 数学者や実務担当者が構築した幾つかのオプション算定モデルを複数利用するというのが一般的な考え方ですが、モデル自体の理解と前提条件などの置き方など、一般の投資家には把握しにくいのも現在の事実です。上記、発行条件などを普通の常識に沿って判断することも、一つの方法だと考えます。
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公募ファイナンスを、より良くするために~公募エクイティ・ファイナンスに対する提案=その2(11月26日)
 増資インサイダー問題を受け、昨年8月に“公募増資を売り材料としないため”の提言をさせていただきましたが、この1年は市況の回復・インサイダー関連法規制の改正・ファイナンスを行う企業の市場に対する配慮などもあって、上場企業の市場からのリスクマネー調達は随分改善してきたと思います。
100社を超す公募増資、30社以上の新株予約権付社債(CB)の公募など、発行市場はその機能を回復しているようにも見えます。関係された方々の努力には敬意を表します。

 しかし、敢えて今の日本における公募増資などの仕組みを見た時、そのあり方が今の日本市場にとって十分かどうか見直す時期に来ているのではないかと考えます。教科書的に言いますと資本市場は、発行市場と流通市場の両輪で成り立っているわけですが、流通市場の方はHFTなど手法や機能がどんどん進化しています。かたや発行市場の方は、関連する法規制と引受証券会社の引受ルールに依るのですが、基本的な仕組みはこの20年近くと殆ど変っていないように思われます。勿論、実務的なルールの改正や変更は行われているのですが、今のルールは、ネット環境は大きく変化したことや、投資家も変わってきたこと、そして時代の進化をどの位取り込んでいるのでしょうか。例えば、成長戦略に見合って企業がリスクマネーを適正に調達しやすく仕組みに改善が試みられているかという事です。
 現在、金融審議会でもかなり技術的な事の議論が行われていますが、一般の投資家や株主、そして企業からみて、本質的な公募エクイティ・ファイナンスの問題は、次のことに纏まるのではないかと思われます。

○ 公募ファイナンスを行う企業への、新たな投資ニーズを集約する

このために、次の3つのことを提言します。
【提言1】
海外投資家や機関投資家の大概な投資ニーズ集約の為、
☆事前にファイナンス情報を投資家に伝えることが可能な発行登録制度を改正し、ファイナンス目的や企業の新たなる投資契約を記載可能とすること

【提言2】
より多くの証券会社の営業部員を、公募の勧誘活動に参加させることで、多くの投資家の投資ニーズを掘り起こす為、
☆引受会社とは別に、公募の勧誘を行う販売証券会社を一定割合に増加し、全員参加型の公募へ

【提言3】
ネット上での公募ファイナンスに対する勧誘活動を可能とする為、
☆公募ファイナンスに対するネット上の勧誘行為について、実質的には企業のネットロードショーなどで行うことが可能なディスクロージャー・ルールの緩和
(※ネット証券が、対面営業のような勧誘活動を行う訳ではないので、公募ファイナンスの取扱ルールの緩和も必要でしょう) 

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最近の上場企業ファイナンス動向について(11月14日)
 IPO(新規株式公開)の増加が伝えられていますが、上場会社のファイナンスも活況となっています。
景況観の回復から、企業の資金調達ニーズも増加している証左でしょうが、この動きが成長戦略の目指すところである長年のデフレ脱却に繋がればと期待したいところです。
とは言いましても、ファイナンスは市場に流通する株式を増加させるので、マーケットでの需給関係に大きな影響を与えます。例えば、バブル絶頂期の1989年には公募増資だけで5兆円の資金を市場から調達し相場反落の要因の一つになりましたし、近くは2009年にも金融機関や大手企業による大型公募(合計5兆円)が相次いだ為、市場全体のリーマンショックからの反発を抑える要因や増資インサイダーの遠因にもなりました。

 さて、今年(2013年11月上旬まで)の上場企業ファイナンス動向は、以下のような概況となっています。

【公募増資】
 今年は、公募増資案件が増加しており、既に100社近くと案件数では例年の2倍の水準ですし、全体の調達金額は約2兆円近くとなっています。ただし、比較的小規模も公募が多いのと、件数では全体の3割を占めるJ-REITが目立っていますが、金額ベースでは約半数の1兆円を調達しています。

【新株予約権付社債(CB)】
 新株予約権付社債の発行も増加しています。今年は既に36社が発行していますが、
・投資会社や証券会社などに第三者割当で発行したもの----11案件
・国内公募----5案件 調達額575億円
・海外公募---20案件 調達額3730億円(米ドル建て3件を含む)
と、海外公募が急増しています。なお、海外公募の新株予約権の行使価格は、概ね25~40%程度発行時の時価から高い水準に設定されています。

【第三者割当増資】
 第三者割当増資の件数が減っているのも今年の特徴です。それでも、10月末までに70案件ありますが、業務提携目的のものは増加しており、ファンドや投資会社に大規模に割り当てるものは減少しています。希薄化率25%超のものは、実質的に制限されているのと、不公正ファイナンスに対する監視が厳しくなっている影響と思われますが、その結果、概ね正常化してきていると感じられます。

【MSワラント(下方修正条項付新株予約権)】
 10月はMSワラントが4件ありました。メリル・UBS・マッコリーと全て外証の引受ですが、マッコリーはMS型以外のワラントでも引受手になっています。ただし、一部の投資会社(マイルストーン等)が行っている事前の大株主からの貸株契約+ワラントの有償発行のスキームは、少し不公正取引の観点からみて微妙なこともあります。

【ライツ・オファリング】
 昨年10月決議のADワークス以降13案件とファイナンス手法としてはすっかり定着した感があるライツ・オファリングですが、様々なものが含まれてきました。この制度整備が行われたのは、大規模な公募増資の代替として期待された手法と見做されていたからですが、大規模な第三者割当の代替と見られる発行事例もありますし、中には行使価格を極端に低くすることでファイナンス目的以外の意図を感じるものもあります。一方、この10月ADワークスは昨年のノンコミットメント型に続いて、今度は証券会社の実質的な引受行為が伴うコミットメント型を実施しました。
やはり、ライツ・オファリングは企業にとって大規模な資金調達をするということなので、このファイナンス手法の定着が、利用する企業の成長とともにあるのが理想です。
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公募増資は、本当は買い!?(10月29日)
今年の発行市場の特徴としては、公募増資や新株予約権付社債発行など公募のファイナンスが増加しています。公募増資だけでも本年は既に100件(内、3割弱がJ-REIT)近く実施されていて、例年は50~60件といった水準からみると件数だけでは通常の倍といったイメージです。これも市場回復やアベノミクスで景況感が変わってきた影響でしょうが、この公募ファイナンスの問題について少し触れたいと思います。(問題点を簡素化する為、以下本稿では公募増資の問題として取り上げます。)

 先ず、公募増資は買いか売りかという問題についてですが、

○公募増資を引き受ける証券会社にとっては、当然買いです。
・企業がリスクマネーを調達して、新たな事業や設備に投資を行い、収益を今以上に上げて企業価値を向上
・上記のことを確認する為、約2ヵ月程度かけて、主幹事証券会社による引受審査が行われます。
・しかし、これらの審査内容は一般的に公開されません。(他の引受証券会社には、公募増資の取締役決議を行う1~2週間に、内容の一部が伝えられる業界慣行があります。また、主幹事証券会社内であっても審査結果だけは社内に伝えられますが、チャイニーズ・ウォールで審査内容は営業部門には分かりません。)

●普通の投資家にとっては、公募増資は希薄化により一時的な売り要因と見做されがちです。
・金融庁が無作為に選んだ本年実施された公募増資15件では、発行決議から値決め日までの平均下落率は▲12.1%。
・同じく金融庁調べでは、希薄化以上に株価が売られているケースが多く、信用での空売りもこの期間急増しているとのことです。
・金融庁の見方(金融審議会資料)では、公募増資が一時的に投機的売りを呼び込んでいる可能性も指摘しています。
・なお、公募増資銘柄でこの期間中に株式を借りて空売りした投資家には、引受証券会社は新株を割当ることが出来ません。
・しかし、既に株式を保有している投資家がこの期間株式を売却し、その後、公募新株の割当てを受けることは出来ます。

正論を言えば、資本市場において企業にリスクマネーの供給を円滑に行う為には、公募増資は買いでなければならないのですが、上記のように分かり難い状況が続いています。

現在、金融審議会において公募増資の仕方を改善しようと、以下のような点が議論されています。
(この議論は、相当引受実務に近い専門的な事ですが、一般に分かり易いように以下は平易化して記載しています。証券・金融のご専門の方は、金融審議会事務局資料(1)~(3)をご参照ください)

○取締役会による発行決議日から日を置かずに新株を募集するようにしてはどうか
○取締役会による発行決議日以前に、投資家に公募内容をある程度しらせる制度として、現在の発行登録制度を使い易いものに改良できないか
○投資家の需要を広く喚起する為、企業が検討している新規投資や事業内容の変化について、勧誘行為とならないように、投資家に知らしめる方法を具体的に検討できないだろうか(プレヒアリング、プレロードーショー、アナリスト対応など含めて)

このように書いてもまだ専門的すぎるかも知れませんが、公募ファイナンスの実務的なことまで金融審議会(関連法制度改正に為の)で議論されることは、公募ファイアンス活性化の為には非常に良い事だと思います。

 しかし、公募増資において本質的な問題は、現行の主幹事証券会社やり方では、投資家需要を広く掘り起こしたり、正確な投資家需要を把握することが難しくなっているということではないでしょうか。このことは、増資インサイダー問題で何故ウォールを超えて、ファイナンス情報が漏れやすいかという事にもつながるように思います。

本当は、より広い範囲の投資家が参加する公募の在り方について、議論するべきと考えますが、具体的な施策については、また別に機会に。

公募増資が、より多くの投資家にとって買いとなる日の為に。 
 
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ライツ・オファリングの現状と進化の可能性について(9月24日)
 9月4日に、札幌証券取引所において行いました上場会社向けライツ・オファリングのセミナー資料を公開いたします。内容は、ここ1年間で利用が拡大していますライツ・オファリングに関してですが、通常の公募ファイナスよりは利用可能な企業の範囲は広くなっています。但し、一般の投資家も応募可能なので、やはり公募ファイナンスとして最低限企業側が対応しなければならないこともあります。

 また、市場仲介者としての証券会社の役割も、通常のファイナンス以上に大きなものがあります。今後、発行事例を証券業界で検証し、企業・株主・投資家にとって分かり易いファイナンス手段としてライツ・オファリングが定着していくことを期待しています。

☆ライツ・オファリングの現状と進化の可能性について
・ライツ・オファリングも公募ファイナンスの一種です
・ファイナンス市場全体の中のライツ・オファリング(とりあえず、○○の代替手段として始まっていますが、・・)
・最近のライツ・オファリング事例(意外と調達率は高めです)
・株価とライツの取引事例(当然ですが、株式の売買高が増加します)
・大株主の対応事例(大株主がどう対応するかはその他株主・投資家の重要関心事ですが、どこまで開示すべきか、・・)
・ライツ・オファリングのポイント(主に企業が検討すべきこと)
・ライツ・オファリングの効果(出来高増加により、株主数も増加する傾向がありますが、・・・)
・ライツ・オファリングの留意点(企業側が配慮してほしい点)
・証券会社の使い方(証券会社をアドバイザーとして使わなくとも実行できますが、誰が勧誘するのでしょうか)
・証券会社の関与の仕方(市場仲介者として、対応すべきこと、もしくは期待されること)

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MSCBやMSワラントの現状について(9月6日)
 MSCBとはMoving Strike Convertible Bondで、転換価格修正条項付転換社債と約しますが、先ず転換社債は現在だと新株予約権付社債と言い直す場合が多いのと、問題となるMSCBはその新株予約権部分の行使価額を、下方に修正するよう定期的に見直すものなので、下方修正条項付新株予約権付社債とも呼称します。やはり、長くて言い難いので、業界ではMSCBといった方が分かりやすくなっています。

☆ MSCB等の現状について

【基本的なスキーム】
・発行時には、一旦その時の時価に近い行使価格を設定しますが、その後定期的(多いケースは発行後、毎月)行使価格を時価に合わせて見直します。
・問題は、行使価額を見直す算式が、直前一定期間(1週間程度)の時価の90%といったように、その時点で取引されている株価より安く設定されることです。
・その為、CBの転換(新株予約権の行使)が進みやすく、資本調達が行いやすいスキームとなっています。

【基本的な問題点】
・MSCBが、業務提携先や資本提携先が保有するなら、一定期間行使されず、行使価格の見直し頻度も目的に沿ったものなので、それ程市流通市場への影響が大きくないかも知れません。
・しかし、実際のMSCBは証券会社や投資会社に割当てられることが多く、また見直しの度に株価が下方方向にバイアスが掛り易くなっています。
・例えば、下方修正の計算期間中に、株式を借りて売却し、行使価格を低く抑えることでより多くの株式を取得しようとする動きも強まりました。行使した株式を借りた株式の返還に充てれば、短期的な裁定取引が可能となり、MSCBの保有者にとってメリットが大きくなります。
・しかし、一般の投資家の立場で言い換えれば、MSCBは市場での裁定取引を前提としたファイナンス手法で、頻繁に行使価額を下修正するスキームは、株主や長期保有の投資家からみると株価下落要因としか捉えようがありませんでした。

【MSCBに関する規制】
・証券会社がMSCBを第三者割当で引き受けるケースは、2007年7月施行の自主規制ルール“会員におけるMSCB等の取扱いに関する規則”で規制されました。
・上記のルールは、“第三者割当増資等の取扱いに関する規則”として2010年2月に変更されています。
・なお、MSCB等の等にはMSワラントも入っていますが、事前の貸株契約と第三者割当増資を組み合わせることでも、同等の経済効果を生じる裁定取引的な対応が可能な為、前段の規則改正で強化されています。このルールは、証券会社が発行企業と別の投資家の間に入ってMSCB等を斡旋する場合もカバーしています。

【最近のMSワラント】
最近、医薬品関連などで再びMSワラントの発行が目立ってきていますが、MSワラントはMSCBと違って発行会社側の直接の資金調達になりません。このことは、市場での裁定取引に全く頼った資金調達スキームなのか、そうではないのか個人の一般投資家にも分かりやすく説明する必要があります。証券会社が裁定取引をして悪いわけではありませんが、一般の個人投資家が売買できる銘柄で行うことは、市場仲介者として、それなりの注意を要します。

 いっそ、プロ向け市場で上場し、プロ投資家間での売買を前提としたMSワラントやMSCBの発行なら問題は少ないかも知れません。
 
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ライツ・オファリングの可能性と問題点 (8月22日)
 8月に発行決議されたレカム(3223)を含め昨年10月以降のライツ・オファリングは11事例となりました。このライツ・オファリングは、明らかに企業のファイナンス手段の選択肢を広げています。例えば、レカムやメガネ・スーパー(3318)は、直前債務超過状態でしたが、再生資金を調達しています。また、比較的小規模の資本調達が多い中にあって、1000億円近い資金を集めたJトラスト(8508)は、投資家などから企業が大きく成長することを期待されています。これらの事例と、その可能性・問題点などを以下に簡単に纏めました。

☆ ライツ・オファリングの可能性と問題点

なお、企業にとってのライツ・オファリングの効果は、次のように考えられます。

【ファインアス手段の多様化】
 近年の増資問題などから、最近の公募増資などの公募ファイナンスは、発行済み株式総数の2割程度まで
 第三者割当も発行済み株式総数の2.5割を超えるものは事実上規制されている
 従って、前項の資金使途以外に大規模なファイナンス手段としてライツ・オファリングが選択されやすくなった

【出来高の増加】
 ライツ・オファリングは、企業規模が小さく出来高等も少ない銘柄の発行事例が多かった
 しかし、ライツ公表後は株式の売買高が急増するケースが多くみられる
 これは、ライツによって市場の注目を集め新しい投資家が参加したのと、大株主などの売買が行われた結果も影響している

【投資家・株主の増加】
 ライツ・オファリングは、企業が大規模に資本調達を行うものが多く、その結果、企業の大きな変化・成長に期待した新たな投資家層を生むことが可能
 投資家の増加から、結果としての株主数増加にも繋がっている。
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発行市場を振り返って~ファイナンスも進化するか(7月30日)
 約1年前に、公募増資インサイダー問題の余韻も残っていた時期でしたが、発行市場に携わるものとして、公募のエクイティ・ファイアンスに対して以下の提言をさせていただきました。

☆公募エクイティ・ファイナンスに対する提言~公募増資を売り材料としない発行市場改革を

簡単に言いますと、公募ファイナスの公募足るや何か、証券会社・発行会社・行政それぞれの立場で今一度見直していただけませんかという事でした。
 それから1年が経ち、公募エクイティ・ファイナンスがどの様な状況かについて、簡単にコメントしておきます。

○公募ファイナス案件が増加しています。
公募増資については、金融危機以降は毎年40~50件程度でしたが、今年の2月以降増加傾向を強め、1月から7月(26日まで)に既に60社が公募増資を行っています。また、その中でJ―REITの公募が18社を占めて、大きく目立っています。

○CB(新株予約権付社債)の発行も増加しています
公募CBは、今年に入って16件発行されていますが、うち11件が海外公募で、海外投資家向けに発行されています。中には、岩手銀行のようにシンガポール市場に上場されるスキームもあります。国内公募については、上場問題や格付け取得が前提としてあり、個人投資家にも上場要件(投資数)の問題から販売しなければなりません。

○ライツ・オファリングが利用されるようになってきました。
昨年10月のADワークス以降、今まで10社のライツ・オファリングが実施され、証券会社における取扱い実務も定着してきました。残った分を証券会社が再販するコミットメント型もIRジャパンが行いました。増資内容については、通常の設備投資目的から、再生型やM&A資金獲得型まで様々な事例があり、概ね9割以上が行使されていますが、ファイナンス手法としての評価はまだ定まっていません。

○希薄化に関しては、配慮されている事例が増えました。
公募ファイナンス(公募増資・CB)の希薄化率を見ますと、概ね10%台に収まるケースが多くなっています。

○証券会社向けMSワラントの発行が目立ち始めています。
公募ファイアンスではありませんが、5月以降バイオ企業などを中心にMSワラント(行使価格を時価の90%程度まで下方に修正するもの)の発行が増え、4月以降12社が発行決議を行っています。MSワラントは、市場取引との裁定を前提にしたファイアンス手法とも言えますが、既存株主などへの配慮は十分に行うべきです。
 
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IPO増加を阻害するもの(7月26日)
 IPO(新規株式公開)が増加しています。本年は既に26社が上場若しくは上場予定が公表されており、昨年の46社を超え60~70社程度のIPO企業数に達するのではと市場関係者の予想が出ています。IPOの数は、経済環境や市況に影響されます。経済環境は新規上場の企業数で市場へのIPO企業供給力、市況は投資家の投資ニーズの需要の大きさ、それぞれに影響を及ぼしますので、ある意味で経済力回復のバロメーターのように捉えられることもあります。
 IPOを通じて、新興企業群に成長のためのリスクマネーを供給する市場機能を考えるなら、当然IPOは多い方が良いということです。しかし、最近はIPOが増加したといっても、2000年代前半のように年間IPO数100~200社という水準には遠く及びません。

IPOの増加を阻害する要因について、以下に整理しておきたいと思います。

【一般的要因】
●経済環境の悪化による企業側の成長力不足
●市況環境悪化によるIPO投資需要の縮小

【政策的要因】
●市場へのIPO供給過多を意識して、金融当局が意識的に取引所・引受証券などの上場審査・引受審査などの厳格化を求める場合
※最近は、金融危機直後の中国市場で一時的に行われましたが、日本の現状は、むしろアベノミクスの成長戦略でIPO数を増加させ、新興企業へのリスクマネー供給を増加させる方向にあります。

以下は、IPOを希望しそれが可能な企業において、IPOを思いとどまさせる要因です
【企業経営者、主要株主側の要因】
●主幹事証券などから示されるIPO時の想定株価が低い場合
●主要な株主が、IPOタイミングに関して反対する場合(時期、価格に不満)

【上場関係者、特に引受証券会社の要因】
●IPOのサポートする監査法人や引受証券会社が不足する場合
※現在、監査法人不足はなく、IPOに関してはむしろ会計事務所系コンサルティングが市場誘導業務(上場までのサポート)を積極的に行っています。最近の問題は、主幹事業務を行う証券会社数が実質的に十数社に減少していることです。嘗ては30社程度あったIPO主幹事機能ですが、金融危機を経て、IPO数も急減し、市況もアベノミクス相場以前は悪かったことから関連部署がリストラの対象になりました。
結果、IPO主幹事に機能を持つ証券会社数が減少したことから、想定される時価総額が小さいものは、IPOサポートが後回しになっている可能性が出始めているように思われます。
なお、主幹業務については、5億円以上の資本金がある証券会社であれば可能となっていますが、専門性が高い業務なので、専門部署(公開審査部など)が必要というのが従来の考え方でした。しかし、会計事務所や外部のコンサルを利用することで、引受証券としての専門性を維持することも、現在は可能ではないかと考えます。

 IPOを増やすために、それを取り扱う主幹事証券会社が増えることも、新興企業へのリスクマネー供給を促す重要な施策ではないでしょうか。 
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ファイナンスの季節に、改めてその役割を考える(7月9日)
 公募ファイナス(公募増資やCB(新株予約権付社債)などで、一般の投資家から資金調達する)は、7月に増加する傾向があります。7月に入って8日までに、公募増資が7社、CBが1社の発行決議をしていますが、特に公募増資は、1000億円以上を調達する大型ファイナンスが、電通・大和ハウス・オリンパスと続いています。何故、7月に公募ファイナスが多いかというと、次の様な実務的な要因があるように思います。

・3月期決算企業は、1~3月に次年度の事業計画を纏めますが、同時に資本政策や資金調達計画が策定されます。
・3月期決算企業は、その後、本決算発表・株主総会と重要なイベントをこなしていきますが、資本政策を株主より授権(会社法上、株主より任されているという意味です)されている取締役会としては、株主総会直後が最も決議しやすい時期となります。
・公募ファイナンスを行う為には、直前の企業情報を投資家に示す必要がありますが、3月期決算企業では6月下旬の株主総会後、前年度の有価証券報告書が提出され、この情報をもとに投資家への開示が行われます。
・また、公募ファイナスを引受ける証券会社の引受審査では、この情報をベースに引受判断が行われます。
以上から、7月は公募ファイナンスが増加する傾向があります。

 公募ファイナンスによる資金調達は、直接は既存株主に希薄化をもたらしますが、調達した資金が新たな事業に投資され企業価値を高めるのであれば、既存株主も当該企業の株式保有を継続し、新たに投資する投資家も増えます。問題は、既存株主・投資家にとって、このファイナンスが企業価値を高めるかどうか判断可能な情報提供がされているかです。目論見書が既存株主やその企業に関心ある全ての投資家に配られる訳ではないので、ファイナンス決議時の記者発表文における記載内容が重要になってきます。

 今年は、公募ファイナスが増加しており、年初から公募増資では53社(うちJ-REITが16社)、CBは16社(7月8日までの発行決議状況)が発行決議していますが、昨年1年間の49社(うち、J-REITは11社:日本証券業協会調べ)を既に超えています。このことは、日本市場が回復して発行市場機能が有効に働いているので、好ましいことです。しかし、供給が過多になれば、どの様な市場でも崩れてしまうでしょう。バブル期の1989年、金融危機直後の2009年、日本市場の公募増資額は、いずれも5兆円を超えました。その結果、損失補填や増資インサイダーなどの問題も表出しました。せっかく増加した企業に資金調達ニーズが、市場に良い効果を及ぼすためにも新たな投資ニーズの拡大が重要で、その為に市場仲介者である証券会社の役割は大きいものです。

普段、一般の投資家が余り気付かない引受証券会社の役割として、次の2例を上げておきます。

 昨年末から、J-REITの公募増資が増えており、不動産投資の活発化の為に好ましいことです。ただ、現状のJ-REITは、一般の上場会社と違って増資情報はインサイダー情報になっていません。先の通常国会で成立した改正金商法では、改めてJ-REITの増資情報をインサイダー情報としますが、これは来年以降の施行です。それでは、増資インサイダーなどのように公募増資に絡んで不公正な取引がされないかどうかですが、J-REITの公募増資を引き受ける証券会社では、株価審査といって関係者の売買や価格形成に問題がなかどうかの確認を行います。

 2つ目の役割は、新しい投資家の発掘です。例えばオリンパスの今回の公募増資の様に、海外で全て募集を行う公募増資であっても、その影響は既存株主や国内の投資家にも及びます。海外募集のみを選択した理由が公表されていなのでの、分からない部分もありますが、海外の投資家のオリンパスに対する投資ニーズが強いことを発行者に薦めた結果です。今回の資金使途に見合って、中長期の投資家を発掘することが海外主幹事証券にも求められます。また、金融商品取引法は国内ルールではありますが、1昨年から導入されている空売りした投資家(日本株貸株市場で株式を調達して、市場で売却する)に対して、公募株が割当てられないルールの遵守なども、主幹事証券の責任において行われることです。 
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クラウドファンディングが資本市場の機能を果たす為に(7月5日)
 最近は、クラウドファンディングの事を聞かれることが増えましたが、今あるクラウドファンディングとアベノミクスの成長戦略で目指すクラウドファンディングは全く異なります。勿論、インターネットを利用して、不特定多数から広く事業資金を集めるということは同じです。しかし、大きく違うのはクラウドファンディングでお金を提供する個人の目的で、現状のものは寄附や支援ですが、成長戦略で期待されるのは投資に繋がるものです。つまり、寄附や支援と、投資の違いを説明することになりますが、寄附や支援の定義はさておき、個人が投資を行う場合には、投資期待と投資リスクの理解が必要になります。

例えば、クラウドファンディング専用サイト(※今はルールを作りところなので、投資の為のクラウドファンディング・サイトは有りません)で紹介されているネット事業を行うA社に10万円投資したのが、将来成長して100万円になるかも知れないと思うのが投資期待で、A社の事業は評価が高いものの競争相手も多く、何割の確率で失敗するかも知れないと考えるが投資リスクになります。

 インターネットを使って情報を流し、広く資金を募るのは現状のクラウドファンディングでも同じなので、第一の命題は、今のクラウドファンディングの情報提供の仕組みでダメなのかということですが、言い換えると、寄附や支援を募る情報の提供とニーズの集め方と、投資を行う為の情報の流し方が違うのかということになります。現状は大きく違います。
投資に関する情報提供については、今は金融商品取引法に定められた開示ルールになりますが、これだと有価証券届出書制度という企業にとって負担の重いディスクロージャーです。IPOを準備するまで成長した企業なら、これらの開示負担に耐え新規上場にトライするでしょうが、それ以前では、監査法人の費用も難しい企業規模です。
現在のクラウドファンディングの情報提供のあり方を、少なくとも個人が投資期待と投資リスクをある程度判断可能な水準まで高めるには、何が最低限求められるべきかという議論が必要です。

 二つ目の命題は、どうやってクラウドファンディグで投資したもののリスク管理を行うがという事です。
通常の株式投資においてもリスクはありますが、クラウドファディングを行う新興企業は、その何倍も破綻したり事業が失敗する可能性が高い訳ですから、個人が担うリスク負担は個人レベルで限定されるべきです。例えば、金融機関に預かっている金融資産の10分の1以下か100万円のどちらか小さい金額を、個人がクラウドファンディングで応じられる限界にして、個人にとってのリスクを制限(個人の金融資産を預かる金融機関などが)すべきというのは米国Jobs法的考え方です。

 三つ目の命題になりますが、投資としての成長ストーリーが必要です。例えば、クラウドファンディングで資金を集めた新興企業が、今度はベンチャーファンドや金融機関から資金を集める。次にもう少し成長して、プロ市場においてファイナンスを実施する。そして、マザーズなどの新興市場においてIPOを行う。この様な新興企業の成長ストーリーを支える為には、クラウドファンディング⇒ベンチャー投資⇒プロ市場上場とファイナンス⇒IPOと繋がる支援を新興企業に行う金融機能が求められています。

現在、クラウドファンディグをはじめ新興企業へのリスクマネー提供推進に関し、金融審議会で議論が始まったところですが、以上の3つの命題で実務が検討されることを願っています。クラウドファンディグを資本市場の機能とする為にも。
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IPO初値は高ければ良いのか(6月13日)
 最近のIPO(新規株式公開)において、上場初値が公開価格の3~4倍の値段がつくケースが出ており、市場全体の大幅調整局面とは相対的にIPOの活況が伝えられています。勿論、株式であっても農水産物でも、初値(初セリ)に高値が付くことは取引が活況な事を示す訳ですから、明るいニュースであります。しかし、資本市場の機能から見てこの好ましい状況なのかについて、少し考えてみたいと思います。

 【メリット・デメリットについて】
・最もメリットを受けるのは、IPO株の割当てを受けた投資家です。IPOで払込んだ資金が、ごく短期間で2倍、3倍になるのですから通常の株式投資とは異なる利益を得る結果となります。しかし、この様な状況が続けば、過去にはリクルート事件など不正な取引に利用されたこともありますし、世間的注目は未公開株詐欺(IPOが近いという)の背景とされることもあります。
・初値が高すぎると、その企業の成長が伴わなければ、短期的な上昇と取引増大、その後の株価下落と取引低迷の長期化となり、結果として投資家の新興企業離れの遠因となることもあります。

 【市場機能として】
・市場の機能の中心は、流動性の付与と価格発見機能ですが、新興企業をデビューさせる公開価格がそもそも正しかったかという疑問が生じます。理想的には、正しい値付け(公開価格)がされて、その後、企業の成長や注目度の向上から株価が長期的上昇トレンドに入ることですが、改めてIPO株がどの様に値付けされているか見直してみたいと思います。

☆新規公開株式の値付けプロセス
(日本証券業協会資料より)

 実は、最近のボラティリティの高い日本株全体の動きが、一時のIPO株の株価推移パターンと少しダブって見えました。一時的な急騰と出来高急増、その後の大幅な株価調整。その後の取引低迷になるかどうかは、日本企業の成長力次第でしょうが、“日本株再IPO”(国内外投資家の再評価という意味ですが)として国内外の投資家の期待が再び高まることを期待しています。
 
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市場規律について=ファイナンスの場合(5月20日)
大辞林によりますと“規律”の意味は、≪社会生活・集団生活において人の行為の規準となるもの≫とありますから、“市場規律”といった場合、≪株主市場に参加するものの行為の規準となるもの≫ということでしょうか。
 勿論、市場参加者が市場でしていけないことは金融商品取引法で定められており、インサイダー取引規制・相場操縦規制・不公正取引規制などがあります。これらに加えて、空売り規制や信用取引規制などは取引ルールに関するものは主に取引所ルール、市場仲介者として証券会社が行ってはいけないことは協会ルールで定められます。

 さて、標題の件ですが、上場企業が市場へ直接参加することに、株式などを新たに供給するファイナンスがあります。この場合の主な規律は、会社法に定められた手続きに従って、金商法上の開示(ディスクロージャー)を行うということですが、以下のことにも発行会社自らの規律を持って対応すべきではないかというのが、本稿の主張です。

【希薄化=既存株主への配慮】
20年以上も前になりますが、日本のバブル期に日本市場のファイナンスもバブルでした。上場企業がどんどんファイナンスして市場からリスクマネーを調達したので、結果として市場需給が大きく歪み、相場長期低迷の遠因となりました。その結果、当時の大蔵省主導で発行市場規制が行われ、例えば新株の発行なら総株数の15%未満、ROE8%以上、発行直後に株主への利益還元増加を約束などのファイナンス・ルールが一時的に強化されました。これらのルールは、1990年代半ばには殆ど撤廃されました。
 リーマンショック後の大型公募増資では、3~4割の希薄化をもたらすファイアンスが相次ぎ、海外の機関投資家から批判を浴び、また増資インサイダーの一因にもなりましたが、最近リートの公募増資が相次ぎ希薄化も5割を超えるものが出始めました。
 上場企業も市場参加者である以上、市場の需給要因に配慮した新株の供給という市場規律を意識して欲しいものですし、既存株主の希薄化ダメージに配慮するならライツ・オファリングの利用も検討すべきです。

【株価への配慮】
 この株価は割安なのか、この株価で買って成長余力はどの位あるのか、そう投資家なら考えるのですが、一般の投資家には少し分かり難い事例も出始めています。例えば、株価が急騰した後の公募ファイナンス実行は、現在のような市場環境では仕方ないのでしょうか。また、資金調達目的であるライツ・オファリングで行使価格を9割以上ディスカウントする事、証券会社などへ割り当てる第三者割当の新株予約権で時価の9割とする行使価格修正を行う事など、個人投資家には発行会社意図が分かり難く、結果として個人の投資を遠ざける可能性もあります。

【情報開示への配慮】
 情報開示に関する問題は、2つあります。一つは資金使途の開示の在り方ですが、希薄化に耐える既存株主・新規に投資を行う投資家にとって、調達資金の生み出す新たな企業価値のイメージがしやすいディスクロージャーが望まれます。もう一つは、大規模なファイナンスを行う場合の大株主等の投資行動等の開示です。ライツ・オファリングの場合の行使や売却の意向、大規模な新株予約権の第三者割当の場合の大株主等の貸し株契約の有無などです。

これらの市場規律に関し、上場企業及びその経営者の理解をサポートするのは証券会社の仕事です。
 
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ファイナンス・スキームとして定着するか、ライツ・オファリング(5月16日)
 Jトラスト(8508)が、7例目となるライツ・オファリングを5月14日に決議しました。調達金額の目標が1,119億円(会社側が公表)と、今までの事例(数億円~40億円程度まで)に比べて格段に巨額なファイナンスとなっていることと、資金使途が今後3年以内に行おうとするM&A資金ということなどから、今後の推移が注目されています。

 本邦におけるライツ・オファリングは、3年前にタカラレーベン(8897)が最初に行いましたが、当時は証券会社などの実務的対応が定着おらず、取り扱う窓口となる証券会社数も限られていました。その後、法令などの関係ルールが改正されたことから、この半年で6事例が決議され、そのうち1例がコミットメント(株主や投資家が行使を行わなかった新株予約権を、証券会社が引き受けて行使し、新株として投資家に販売する)で、残り5例がタカラレーベンと同様のノンコミットメット型です。

 ライツ・オファリングの実例も積み上がってきましたが、また一方では現段階で留意するべき点も明らかになってきました。
大きく分けると2つあります。

 一つ目は、大株主の対応をどの様に考えるかという事です。事例の殆どが、オーナー型企業で、ファイナンスの決議と同時に、自分の持分をどうするか決めた上である程度の内容を公表しなければなりません。
直近事例のJトラストですと、トップの手持ち資金(100億円)に加え、株式や新株予約権を売却した資金で最大限行使する意向を表明しています。

 二つ目は、コミットメント型の問題です。ノンコミット型を選択した企業の理由をみますと、コミットメント型は、証券会社との合意まで時間がかかり、かつ企業側でファイナンス時期を選択しにくいことが挙げられています。これは、証券会社がコミットを行う為に、通常の公募増資などと同様の引受審査を行わなければならないことが大きく影響しています。
株主に選択権が多いライツ・オフリングと、公募増資を同様の扱いにする必要があるのか議論があるところだと思いますが、このコミットメント型の実例が積み上がっていないので、審査ルールをみている協会などでも議論が進まないようです。

 また、コミットする証券会社はある種の矛盾を抱えています。つまり、新株予約権(ライツ)の未行使数が最後の段階まで分からないので、販売リスクを避けるためには、ライツ行使の確約を大株主に求める方向にバイアスがかかりやすいことです。仮に、証券会社としてライツの購入と行使勧誘を積極的に行い、コミットメント部分を可能な限り少なくするという考え方もありますが、証券会社としての収益性の違いに問題もあり、社内で調整的な動きをすること自体が難しいと思われます。

 いずれにせよ、既存株主中心となるファンナンス手法としてライツ・オファリングの定着は必要なことだと思いので、1つ目については開示ルール、2つ目についてはコミットメント後の販売手法など、業界内で議論を進めるべきことと考えます。
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未公開株式投資・クラウドファンディングの可能性(5月7日)
 今の市場を支えているアベノミクスは、3本の矢(大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略)から成り立っていますが、市場の注目は日銀の金融政策から次第に成長戦略に向かっています。
その成長戦略を検討する政府の産業競争力会議において、新規・成長企業へのリスクマネー供給の為に仲介機能を強化し、産業に新たな血が入るように支援して行く為に、以下を検討することが表明されています。
◎クラウドファンディング
◎地域における資本調達を促す仕組み
◎新規上場のための負担軽減

以下、簡単にその現状と動向について纏めてみました。

☆未公開株式投資・クラウドファンディングの可能性
・成長戦略とクラウドファンディング
・未公開企業ファイナンスの現状
・未公開株投資拡大のポイント
・証券ビジネスとしての可能性
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活発化する発行市場、活性化されるその機能(4月18日)
 4月初めに“復活する発行市場”というレポートを公開しましたが、その後2週間の発行市場の動きを見ていますと、将に上場企業のファイナンスにおいて、その資本政策として様々に考えられた発行事例が出ており、標題のようなタイトルを付けました。
(※個別の銘柄にコメットしましたが、あくまでもファイナス手法の評価であり、投資の為の参考には利用しないで下さい。ご参考になるのは、各証券会社等のアナリスト評価をお使い下さい。)

【特徴のある公募増資】
 リートの公募は、4月に入ってからも継続して出てきており、2週間で3件ありますが、最近は好調な市況環境を反映して、希薄化率が3割以上のものもあります。また、特長のある公募増資は、以下の2件です。

・UBIC(2158)は、ADRによるナスダック上場を目論んでおり、上場時公募として約8億円の調達を行います。ナスダック上場への表明は、昨年12月に行っていますが、主幹事証券はMaxim Group とThe Benchmark Companyの現地ブローカーを使っています。

・スミダコーポレーション(6817)は、公募増資で18億円調達しますが、公募株販売直後に銀行団から36億円のローン・コミットメントを獲得しています。このようなハイブリットなファイナンスも、新しい財務戦略として注目されます。

【自社株取得とセットのCB発行】
 調達資金を全て自社株取得に充てるのが、リキャップ(リ・キャピタル=資本の再構築)CB(新株予約権付社債)といいますが、目的は似ていても多少異なるCBが発行されています。

・静岡銀行(8355)と日本セラミックが、それぞれ海外CBの発行を決議しました。それと同時に市場外取引で自社株取得を行いました。調達予定額金額の半数程度の自己株取得ですが、大株主より売却希望が出ていたことが推測されます。

 なお、最近のCBは発行企業側が株式への転換を制御するスキームが出始めており、企業側が希薄化に一層配慮している姿勢が伺えますので、既存株主にとっては好ましいい動向とも言えます。

【ライツ・オファリング2件】
 4月12日に、ライツ・オファリングが2件決議されました。

○アイ・アールジャパン(6051)は、初めてとなるコミットメント型を決議、主な特徴は、以下のようなものです。

 1対0.1の付与比率
 コミットメントしたのは、野村
 コミットメントのスキームは、株主が行使しなかったライツを発行会社が理論価格の7掛けで買取り、野村に9掛けで売るといったものです。
 6割超を保有するCEOは、割り当てられた全てを行使する事と暫く売却しない旨の一筆を入れています。
 ライツの権利行使状況を、期日まで4回公表する事を表明しています。
  
野村が主幹事だけに、米国株主対応やディスクロージャー内容はしっかりしています。しかし、それだけに何故このファイナンスが、ライツ・オファリングでなければならないか分かり難くしており、会社コメントにもあるように日本の資本市場にライツを定着する為、野村が引受証券としてのリスクを最低限に抑えて、行ったファイナンスのようにも見えます。

○フォンツ・ホールディング(3350)のライツ・オファリングも、いささかファイナンスという目的に関しては疑問があります。94%ディスカントすること自体、資金調達ではなく、大株主間の持高調整に利用される可能性も否定できません。本来ならば、支配権が移動する可能性もあるのでTOBではないかとも思えますが、こちらの方がコスト的に安いということかも知れません。当事者の方々には、申し訳ありませんが、あくまでも筆者の個人的見解です。

 ライツ・オファリングがファイナンス手法として定着することは、日本の資本市場にとって非常に重要なことと考えますので、ライツ・オファイリングの可能性と現状の問題に関して別途レポートいたします。
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増加する個人向け社債(4月11日)
 個人向け社債の発行が増加しています。
その発行額(額面が100万円以下のもの)を発行した年別で見ますと、
・2010年---9,125億円
・2011年---1兆7,735億円
・2012年---2兆2,231億円
(2013年は、4月10日までに6,541億円)

☆個人向け社債の発行状況

 一昔前までは、個人向け社債といえば電力会社やメガバンク劣後債が多かったのですが、最近は、発行者として最も多いのは海外金融機関で、これは国内のリテール証券や金融機関で販売することを目的に発行されたものです。

 また、マネックスやSBIなどのネット証券では、持株会社が発行したものを自社のサイトを使って販売しています。年限は1年物ですが、最近は半年のものも発行されています。これは、社債発行企業としての格付けの低さを逆に利用して、短期間でも他の個人向け社債より利回りの高さを強調できる商品に仕立てています。
額面なども、インターネット取引を利用する投資に受け入れやすい10万円や1万円となっていますが、これも社債券面が電子化されていますので社債発行の物理的コストは低減されていることや、ネット取引は投資家自らが資金決済作業を行いますので、販売上のコストを低く抑えたネット証券ならではの戦略と言えます。
 
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復活する発行市場(4月2日)
 日本の再生を意識するような力強さが株式市場に戻りつつあります。確かに、アベノミクスに乗った円安トレンド転換への影響は大きいですが、個人投資家の回帰を軸に日本市場に対する投資家の投資行動が変わり、今までの市場構造が変化するかも知れないという予感もあります。その変化を加速させる流れが、株式などの発行市場にも及ぶことが期待されます。

☆復活する発行市場
・IPOの活発化、POの回復
・問題だったことを振り返る
・変化は起きているのか
・アジアのメインマーケットとしての課題

市況の回復は別にしても、ここ数年、流通市場の方は大きな変化を遂げています。2009年からの株式完全ペーパレスから取引や情報伝達の超高速化、HFTや空売り規制の改革など、株式売買の利便性を向上させ、参加者を多く呼び込みながら取引量を増加させる為の施策が、次々に実行・検討されています。
一方、発行市場の方は主に法規制や引受けに関するルールで成り立っていますが、基本的な構造や仕組みは長らく変わっていないので、制度疲労的に今の時代には合わない部分が出始めているのではと考えています。

今の市場環境や投資家の変化にあった発行市場の見直しが行われることを期待しています
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インターネットを使った個人主体のファイナンス:ソーシャルレンディングとクラウドファディング (3月29日)
 筆者は永年上場企業のファイナンスの仕事に携わっていますが、デット(債券など負債性資金調達)なら債券、エクイティ(資本調達)なら株式や新株予約権で、いずれも証券会社が引受け、機関投資家や個人に販売するものです。勿論、販売にあたっては機関投資家なら法人部、個人なら営業店の営業部員が目論見書を使って勧誘しますが、インターネットを使って販売勧誘を行うことは、殆ど想定されていません。

 しかし、インターネットを使って、広く個人からローンで貸し付ける資金やベンチャー企業などへ資本性資金を集めることが既に行われています。ローンはソーシャルレンディング、事業性資金(エクイティ)はクラウドファンディングですが、その概要は以下の様なものです。
(※以下の記載内容は、ウイキペディアやサービス提供者のHPを参考にしています。)

【ソーシャルレンディング】
・『お金を借りたい個人』(ボロワー)と『お金を貸したい個人』(レンダー)をネット上で結びつける融資仲介サービスから始まった。Person2Person Lending=P2P融資とも呼ばれるが、2005年に英国のZOPAが開始、日本でも2008年からサービスが開始され、Maneo・SBIソーシャルレンディング・AQUSH(アクシュ)が借り手と貸し手のマッチング業務をネット上で行っている。
・このビジネスモデルの基本は、借り手・貸し手の募集、需給のマッチング行為、等の全てのオペレーションをネット上で完結させてしまうこと。
・実際のオペレーションは、先ず借り手の信用力をサービス提供者が審査しランク付け、そのランクに基づいて金利水準が提示され、希望する借入金額・返済期限と共にネット上で貸し手候補に提示される。
・貸し手候補がそのローンに応募し、希望金額に達すれば募集は終了。金額が未達でも貸出が実行されることが多い。
・実際貸し出される金額は、現状では数十万程度が多く、貸しては数万単位を複数に分散して貸し出しているようだ。サービス提供者によれば、現在の貸倒率は1%未満。
・借り手が個人から、一部では事業資金や不動産・有価証券担保に拡大していて、こちらは数百万円から1000万円以上のものも募集されるようになってきた。
・サービス提供者は、貸金業のライセンスを取得

【クラウドファンディング】
・不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。
・一般に製品開発やイベントの開催には多額の資金が必要となるが、インターネットを通じて不特定多数の人々に比較的少額の資金提供を呼びかけ、一定額が集まった時点でプロジェクトを実行することで、資金調達のリスクを低減することが可能となる。現状は、主にゲーム開発事業や音楽イベントなどで利用されている。
・日本でも、大震災後に復興ファンドをこの手法で集めたミューックセキュリティーズがサービス提供者として有名になったが、他にもCAMPFIRE・READYFOR?など多数のサイトが立ち上がっている。
・現状の資金集めは、共感した事業やプロジェクトへの寄附行為に近いが、一部収益が上がった場合の利益配分を約束したものもある。また、出来上がった製品などを出資者に配分することも食品やコンテンツ関連では多い。

 現時点での上記2つのインターネットを使ったファイナンスは、純粋な投資行為や資本市場と結びつくものではありません。しかし、スマートフォン普及でより身近になったインターネット環境を上手く利用したファイナンスが、資本市場で行われるような変化があっても良いと考えます。

昨年4月に米国で成立したJOBS法では、クラウドファンディングを使ったベンチャー企業の資金集めが想定されていますし、日本でも最近の産業競争力会議において、クラウドファンディングを使って新規・成長企業にリスクマネーを供給する事を優先的に検討すべきとの意見が出されています。これを受けて、金融庁が金融証券取引法改正の検討に入ったことも報道されています。
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株式市場が好調な時に、敢えて発行市場の問題を考える(3月21日)
 標記の問題を簡単に言い切りますと、“いくら株式市場が活況でも、需要を上回るような株式が供給されれば、市場は下落に向かわざるを得ない。”ということですが、株式を供給するのは発行市場です。バブル期の1989年、リーマンショック直後の2009年は、いずれも5兆円を超える新株が市場に供給され、その後の株価下落の要因の一つとなりました。

 年明け後、公募増資だけでも既に22件(内、J-REITは8件)が発行決議されていますが、3月にはJTの売出しもあり、これだけで7000億円以上の資金が市場から吸収されています。現在の株式市場が堅調なのは何よりですが、永年発行市場に携わっている経験則からいいますと、3月期決算銘柄の株主総会明けとなる7~8月には、再びファイナンス案件が増加する可能性もあります。

 ここで申し上げたいのは、ファイナンスが増えそうなので、備えて下さいという事ではなく、企業にリスクマネーを供給し、投資家の新たな投資ニーズを掘り起こすような発行市場のあり方とは何なのか、改めて考え直す時ではないでしょうか。

 現在、証券業協会では“増資インサイダー問題”を受けて、以下のようなことを検討しています。
○増資情報を始めとする法人関係情報(上場企業などの重要事実に関係する情報)を、もう少し厳格に管理する為に、情報管理体制に対して定期的にモニタリングを行っていくこと。
○公募増資などにおいて、公表前に情報が公表した場合、引受けを行わない 等

勿論、上記の様に増資情報をキチンと管理して、問題(この場合は、事前の情報漏れ)のあるファイナンスの引受を行わないのは当然のことと思いますが、増資インサイダー問題の背景になったのは、公募増資=売り材料ということが定着してしまったからです。発行市場は、関連法規と証券業界の発行市場関連ルールで成り立っていますが、この公募増資=売り材料の現状を変える為、現在の市場・投資環境にあった取組みもまた必要ではないかと考えます。以下の様なことを、証券業界全体で考えてみては如何でしょうか。

◎現在の投資家を取り巻く環境にあったファインアス勧誘のあり方=ネット化の進展に合わせた公募株などのネット上でのプロモーション活動が解禁されても良いのではと考えます。例えば、インターネット上でのロードショー(投資家への調達資金や成長戦略に対する説明会)解禁など当局に規制ルール緩和等を求めても良いのではないでしょうか。

◎公募増資の公募たるに相応しい販売のあり方=主幹事の中で販売すべき新株を多く抱えて、ファイナンス時に余剰感を醸成していたことも、増資インサーダー問題の遠因ではないかと思います。公募株の取り扱いが、広く対面営業の証券会社で行われれば、多くの証券会社の店頭において多くの販売員からファイナンスの効果が投資家に語られます。その為には、引受実務と販売活動を分離したような公募増資のあり方が検討されても良いのではないでしょうか。

◎大規模な資本調達にあったファンナンス手法の開発とその定着=大規模な調達とは、既存株主にとって大規模な希薄化が伴う訳ですから、ファイナンス手法としてはライツ・オファリングが望ましいと思われます。しかし、昨年2例目がでたものの、この手法がファイナス手法として定着しているとは言える状況ではありません。特に、期待されているコミットメント型は、現状の引受証券会社側の実務においてハードルがいくつかあり、まだ実務的検討課題を詰める必要があるように思われます。(この件は、別途取り上げます) 
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沸き立つIPO(2月28日)
 少し大げさな標題かもしれませんが、実際に年初からのIPO(新規株式公開)株の値動きをみると、久しぶりにIPOブームの到来を予感させるような新興市場の動向となっています。
 上場時の初値の状況ですが、公開価格の倍以上のものが相次いでおり、中には3倍と株価がつくものもあります。ここで、IPOの初値状況を年次別にみてみますと、以下の様になっています。

・2013年(2月まで)  6銘柄 、初値の公開価格からの乖離平均99%
・2012年        50銘柄、 同  45%
・2011年        33銘柄、 同  24%
・2010年        19銘柄、 同  28%

 この初値状況は、個人投資家にとって関心の高いものなので、よくマスコミにも取り上げられます。確かに抽選に当たり、IPO株式を手にした個人投資家にとってはハッピーなことでしょうが、この状況はIPOの関係者全てにとって好ましい状況という訳ではありません。
先ずIPO企業の株式を売り出す大株主等にとって、公開価格が安く設定されたという訳ですから、主幹事証券会社のプライシング(投資家の需要予測する為に、価格帯を提示)能力に不満が残ります。また、上場前の大株主の一部は、ロックアップがかかり上場後一定期間が経過するまで売る事が出来ません。
ですから、企業にとっても株主にとっても初値よりは、半年後・1年後の株価が重要になってきます。

☆新規公開株の株価パターン

IPO株の問題となる株価推移を図に示しましたが、次の様に集約することが出来ます。

●短期上昇、そして長期低迷
これは、以前から新興市場でのIPOの問題点として指摘されていた事ですが、このパターンとなるIPO株にはいくつかの特徴がありました。

・IPO時点が業績面のピークとなるケース
・投資家にビジネスモデルが評価される、関心(投資ニーズ)が薄らいでいくケース
・株価低迷により、ファイナンスなど資金調達が上手くいかず、次の成長戦略に乗れないケース

しかし、上記の問題を解決するため証券会社の引受審査と取引所審査の情報共有推進・新興企業へのアナリストレポート作成支援など、長期株価低迷を起こさない・投資家の関心を喚起するなど市場関係者の努力が行われてきました。

本当にIPOが沸き立つ為には、新規上場後、1年後でも買われ続ける新興企業が増えることだと思いますが、関係者の努力もあって、最近はその兆候も見え始めました。この流れを大事にしてください。
 
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再び活況となりそうな発行市場(2月26日)
 株式市場か回復する過程で、企業のファイナンス案件が増えるのはある意味で当然です。リーマン・ショック後の反発局面でも、金融機関・大手企業中心に大型の公募増資が増え、その中で増資インサイダー問題や大規模な希薄化をもたらすファイナンスに対する海外機関投資家の批判が起きました。

 2011年・2012年は、日本の大震災や欧州債務危機の影響から、株式市況も低迷し、発行市場の方も冷え込んでいましたが、昨年12月あたりから公募増資など再びファイナンスが増加する動きが強まっているようです。公募増資に限っても、2月(25日まで)は、既に12社が発行を決議しています。
(※金融危機以降の公募増資は、年間40~50件程度)

また予想されていましたがJT(2914)株の政府保有株売出しも決定され、約3.3億株の売出し(政府保有株1.18億株をJTが自社株取得予定、その分売出し株数が減少する可能性も)、市場から約9600億円近い資金が吸収されます。

発行市場で供給される新株は、いずれ流通市場での需給関係に影響するのですが、公募増資により調達した資金で新たな投資が行われ、企業が成長すると思えば、新たな投資ニーズも増加するはずです。

単純化すれば、
◎ファイナスで供給される株式<ファイナンス資金による次の成長に期待する投資ニーズ 
であれば、株価の上昇が期待されるというファイナンスになります。

公募増資の概況と動向について簡単に纏めてみました。

☆公募増資の概況と動向
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不公平ファイナンスとは何か(2月20日)
 不公正ファイナスとは、金融証券取引法で定義されている言葉ではありません。しかし、上場企業のファイナスを通じて行われる、インサイダー取引・株価操縦・風説の流布などの不公正取引として、行政(証券取引等監視委員会等)では定義しています。

 上場企業のファイナンスに係る問題に関しては、大枠で捉えると以下の3点あります。
① 公募増資に係る問題
② 大規模な希薄化をもたらす第三者割当
③ 不公正ファイナンスに利用される新株予約権などの第三者割当

 何れも、公募増資・大規模な第三者割当増資・新株予約権の第三者割当というファイナンス・スキームが問題になるという訳ではなく、流通市場での不正な取引などに問題があります。
例えば、①では昨年証券業界を揺るがした増資インサイダーが明らかになり、海外のヘッジファンドも摘発され、インサイダー情報を伝える証券会社側も罰せられるようにインサイダー規制が変わります。②では、既に実質的制限(取引所規則など)が行われており、希薄化率25%を超えるものは、発行企業から独立した第三委員会か株主総会での承認が必要になっています。

 さて、標題にもあります③についてですが、証券取引等監視委員会では不公正ファイナスに利用される上場企業を“箱企業”として以下の様に定義しています。(※同委員会、講演資料より)
 経営不振、資金繰り困難(銀行の融資困難)
 上場廃止基準(債務超過、時価総額基準等)への抵触
 第三者割当増資等ファイナンスの繰返し
 正体不明の者への割当て
 支配権の移動
 不透明な投融資、調達した資金は社外へ流出(投融資実施後焦げ付き、特別損失計上)

 箱企業という呼び名は、既にビジネスモデルが行き詰っていて、かつ増資資金が複数の企業などを迂回して当初の引受者に還流したり、増資が実行されなかったりしたことからきています。

 ここで問題となるのは、約3700社ある上場企業においてビジネスモデルが行き詰って会社は相当数ありますが、当然の事ですがそれらは多くは箱企業ではありません。企業再生の為、他の事業者や投資家に出資を求めたり、ビジネスモデルを大幅に変えることもあります。

 箱企業のファイナンスは、再生の為の資金調達が目的ではなく、流通市場での他の投資家の取引を誘引することですが、再生企業のファイナンスでは、株主や投資家が資金調達目的・スキームを明確に理解できるディスクロージャーが、一層重要になっています。また、投資家と企業の間に立つ市場仲介者としての証券会社は、不公正ファイアンスとは異なる企業再生ファイナンス手段に関して、スキームの開発とともに、流通市場に配慮した対応など、業界をあげた議論が必要ではないでしょうか。 
 
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注目するファイナンス・スキーム(2月18日)
 上場企業にとって、上場していることの最大のメリットは、広く投資家から資金調達を行うファイナス機能だと思います。公募、第三者への割当、株主割当と調達先は3つに分類されますが、いずれの方法であっても、株主や投資家が理解しやすい調達目的と発行スキームが望まれます。
 最近は、J-REITの公募増資が相次いていますが、上場企業の公募とは異なり、公募=売り材料とはならず、公募を材料に買われている銘柄もあります。これは、公募による資金使途が明確で、株主や投資家が将来の投資効果を想定しやすいファイナンスということもあると思います。

 一方、新株予約権の第3者割当で、投資会社などへの割当が行われるもので、事前に経営者など大株主との貸株契約が行われるものがあります。単純な資金調達方法ではありませんが、市場価格の上昇により資本が調達される効果が期待できます。但し、他の株主や投資家がスキームを誤解しないためには、少なくとも以下の配慮が必要だと考えます。

☆大株主の売却ニーズと新株予約権の第三者割当スキーム

◎企業の資本政策全体像とその目的を分かり易くディスクロージャー
◎新株予約権を割り当てる投資会社に、経営者が事前の貸株契約を提携する場合、新株予約権発行決議への関与についての配慮
◎新株予約権を割り当てる投資会社のスキーム全体の役割について、株主や投資家に分かり易くディスクロージャー
◎新株予約権の発行条件等に関して、著しく有利にならないような配慮

発行市場と流通市場は、株式市場の両輪ですが、流通市場に十分配慮してこそ発行市場の機能が活きるのではないでしょうか。
 
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日本の発行市場に関る問題の概要(1月25日)
 株式市場(流通市場)の方は活況で、今まさに金融危機後の高値を超えようとており、リストラ・業務縮小・撤退に苦しんだ証券業界も、久々に明るさを取り戻しています。

 しかし、発行市場の方は、IPOなどでは改善は見られるものの、全体的には制度疲労を起こしている部分も多く、増資インサイダー問題なども、発行市場の歪みが遠因となったと考えます。せっかく市場が良くなった訳ですから、この機会に古くなっている発行市場の仕組みや問題を解決する努力を、証券業界全体で取組むことに期待しています。

 多様な参加者にとって、公正で解り易い市場である為に。

☆日本の発行市場に関る問題の概要

【IPO】
・前回触れましたように、IPOは復活しつつあります。
・但し、新興市場においては市場の選択といった問題があり、本年7月の市場統合後、マザーズとジャスダックをどう再定義していくかといった問題が生じる可能性があります。
・また、地方の取引所では、一層の地域性を強めそうですが、地域の企業・地域の投資家との関係を独自にどう作っていくかといった課題はあると考えます。
・市場の裾野拡大として、プロ市場が本格的に稼働することに期待しています。
・一方、グリーンシート市場は市場を再構築する必要性について、協会など関係者間では合意されていますが、まだ時間がかかりそうです。

【公募ファイナンス】
・端的に言いますと、売り材料にならないような公募増資の仕組み作りが求められています。
・また、大規模な公募ファイナンスの代替として、既存株主に痛みの少ないライツ・オファリングが定着するか注目されます。
・一方、この10年来減少を続ける公募CBですが、私募・海外発行の方は増加しつつあります。格付けなどの問題を改善すれば、個人投資家も参加出来る国内CBの復活に繋がるのですが。

【第三者割当】
・既に、発行済み25%超の第三者割当に対しては、実質的な規制が掛かっていますが、上場企業にとって第三者割当増資はファイナンス・事業提携として必要かつ重要な機能です。
・但し、一部の投資会社などへの割当では、増資が実行されなかったり、新株予約権の行使目途が他の株主や投資家に分かり難いものもあります。
・また、一部の第三者割当新株予約権では、事前に大株主から株式を借りて、その後の割当てを受けているケースもあります。
・発行の目的といったものがより重要になると思いますが、不公正ファイナンスのチェックはなされるべきと考えます。 
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公募増資は売り材料なのか?(1月21日)
 改めて言いますと、資本市場の基本的な機能は、上場する企業の株式への流動性を与えることと、上場企業等へのリスクマネーの供給すること、つまり流通市場と発行市場の役割です。流通市場の方は、リーマンショック後のリスクオフから、最近は日本の政策期待相場へ大きく転換したようですが、発行市場の方はどうでしょうか。

 公募は売りといった投資家の意識が、増資インサイダー問題の背景にあると考えますが、本来は投資家からリスクマネーを調達して次の成長を目指す訳ですから、買い材料でも良いはずです。しかし、調達資金の効果が分かり難かったり、希薄化が大きく既存株主のダメージが大きい場合、取りあえず目先の需給関係を想定して、売り材料とするというのが現在の市場の定説になっています。

 但し、変化の兆しを感じる動きもあり、1月16日に決議された産業ファンド投資法人(J-REIT:3249)では、増資決議後、増資を評価して買われています。
このファイナンスのポイントについて、以下の様に考えます。
・J-REITということもあり、調達した資金が何に使われ、その投資効果がどうなるか、投資家側も想定しやすかった。
・発行済みに対して、増資でどの位新株式が増加するか、希薄化率に関しては11.2%に留まった。

 増資インサイダーの対象は、2009年や2010年の公募増資銘柄ですが、それぞれ50社程度の上場企業が約5兆円、約3.3兆円の公募増資を行いました。その為、銘柄別の希薄化率も3~4割という大規模な希薄化がおき、また業界を代表するような銘柄でしたので、業種及び市場全体の需給関係にも大きく影響しました。
 流石に海外の機関投資家から、日本の公募増資のあり方はおかしいとの指摘が2011年夏にされましたが、その後、公募増資インサイダー問題が顕在化しています。

 昨年2012年の公募増資は、証券業協会の集計によると以下のような概況です。
・公募実施38社、調達資金総額4,615億円(内、海外調達分702億円)
これは、2009年、2010年に比べ大幅な減少となっていますが、2011年の9,124億円(内、海外調達分4,104億円)に比べても半減しています。特に海外調達分の大幅な縮小が目立ちます。
また、希薄化率を見てみますと、増資インサーダー問題が顕在化した昨年4月以降の公募増資では、全日空に39%を除けば、概ね10~20%の範囲に収まっています。

少し硬い言い方ですが、公募増資においても、希薄化でダメージを受ける既存株主への配慮や、新規の投資家需要ニーズを勘案し、発行会社自らが発行規律を意識し始めたのではないかと推察します。


 一方、公募増資は新規投資ニーズを掘り起こす訳ですから、投資家に勧誘行為を行う証券会社の役割も大きく、健全な発行市場を維持し公募増資を売り材料としない為、公募増資に関与する証券会社を可能な限り増やす仕組みも、また業界に求められていることだと考えます。

 新しい投資需要を掘り起こす機能は、証券会社にある重要な機能だと信じています。
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インサイダー取引規制議論を起点に、日本市場の問題点を考える (11月28日)
現在、金融庁の金融審議会においてインサイダー取引規制に関し、その見直しが行われている。昨年に続いて2年目の作業となるが、今年は増資インサイダー問題顕在化があって、
・今まで法律上の罰則がなかった情報伝達者への罰則をどう考えるか
(増資インサイダー取引の事例では、引受証券会社内から、特定の投資家に対してインサイダー情報が漏れた)
・課徴金の計算方法を見直すべきか
(ファンドの運用者がインサイダー取引を行った場合、その経済的利益が対象となる現行ルールでは、売買で得た利益ではなく、運用報酬に対して課徴金額が決定される。その為、少額の課徴金が問題視された。)
・企業の経済活動や投資家の行動に支障のないインサイダー取引規制の見直しをどう考えるか
(現行ルールでは、株式交換など組織再編において支障のある場合も想定される。)
以上の3点を中心に規制の見直しが検討されている。

 誰でもが参加しやすい公正で透明性の高い市場機能を確保する為には、必要な事なので期待したい。但し、誰でもが参加しやすい市場である為には、インサイダー取引規制も解り易くあるべきだ。その意味で、言葉の定義も含めて、ルールの簡素化、ケーススタディーの詳細化などが望まれる。

 一方、インサイダー取引の中核材料となるのは、公募増資と公開買付(TOB)だろう。TOBの方は、企業の支配権を獲得する為、市場価格に数十パーセントもプレミアムがつくので、明らかに買い材料だが、公募増資が売り材料となることに、現在の日本市場の問題があるのではないだろうか。
 何故、公募増資が売り材料なのだろうか。
“企業がリスクマネーを調達することで、思い切った事業戦略が実行され、次の成長に期待できる”
多くの投資家がこう考えれば、公募増資は本来買い材料となっても良いはずだ。しかし、現実にこうならないのは、次の様な問題があるからだろう。

●企業の成長戦略が理解されない
投資家に理解される為には、以下の様なディスクロージャーの充実が必要だ。
・先ず、公募増資で調達した資金が、どの様に事業拡大の効果を上げるか、投資家向けに説明しなければならない。
・日頃のIR活動やディスクロージャーを通じて、事業戦略が株主や投資家に理解されなければならない。
・公募増資後、事業の進展に関して、積極的に情報発信を行うべきだ。

●目先の供給増懸念が先行し、新たな投資家需要が期待されない
投資家需要を掘り起こす(勧誘行為)のは、証券会社の仕事だ。その為、以下の様な改革を行っても良いのではないだろうか。
・現在の少数の引受会社に絞って、公募株を販売する方法を改め、出来るだけ多くの証券会社が販売活動に参加できる公募方式を検討する。

●一般の株主に配慮される方法が取られる事が少ない
短期的な株価下落に耐える株主に対して、増資後のメリットを策定すべきではないだろうか。
・例えば、増配や株主還元など、実質的利益配分の増加も考えられる。
また、株主の希薄化を避ける増資方法として、ライツ・オファリングの定着が望まれるが、
・決まった金額を調達するのに適した公募増資の代替手段として、コミットメント型ライツ・オファリングの証券会社における実務対応の確立が期待される。

以上の結論は、今の公募増資の仕組みが古くなって、現状の市場環境に適していないという事だ。
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ものの値段~社債の売買価格の場合 (11月26日)
 日本の株式市場は、超高速化取引の推進、上場商品面ではETFを中心にした多様な投資対象への対応、そして総合取引所へと取引所機能がどんどん進化しているようです。アジアの中核市場を目指してという事ですが、その為には株式以外で企業の資金調達の場、機関投資家などの資金運用の場として、社債市場の拡大も待たれています。

 しかし、現実の日本の社債市場は、拡大というよりは、流通市場での売買は縮小ぎみですし、発行市場でも低格付け企業の発行は難しい状況が続いています。その為、業界を中心に社債市場の拡大の為に、過去3年近く市場活性化の次の施策が話し合われています。

① 社債の取引価格情報インフラを整備する事
② 社債が他の借入れなどと比べて著しく不利とならないよう、借入れ条件の制約について可能なディスクロージャーを行う事
③ 社債管理会社の役割と機能を充実する事
④ 証券会社の社債引受審査を機動的に行えるようにする事


この中で、取引量や取引参加者の増加の為に最も重要なことは、①の価格情報を共有する仕組みを作ることです。この社債の取引価格情報インフラ整備に関して、業界の取組みがようやく始まります。
社債は取引所で取引される訳ではなく、証券会社を通じた相対取引ですが、決済は証券保管振替機構(ホフリ)で行います。その際、取引価格の照合なども行われることが多いので、これを利用して次の様な社債の取引価格報告制度が来年1月から開始予定です。

・証券会社は、社債の取引価格に関して、日本証券業協会に報告義務を負う
・ホフリを利用して社債の決済照合をする場合、上記の報告を行ったと見做される。
・実際は、社債取引でホフリにて決済照合された取引きは、証券業協会に報告される。

問題は、これらの取引情報がどの様なかたちで公表されるかですが、新規の投資家や取引参加者を増加させる為の工夫も望まれます。

☆社債市場の概況
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ライツ・オファリングへの期待 (11月2日)
ライツ・オファリングへの期待は、高いものはあります。それは、大規模な希薄化を起こす公募増資の代替手段としてのもので、その為、法律や取引所ルールが改正されています。更に、公表から払込完了までの期間が長い為、長く市場リスクにさらされるといった欠点に対して、会社法改正や信託銀行の株主確定期間やライツの発行作業も短縮への要請が出されています。

この様に、行政や取引所関係者などの期待が強いライツ・オファリングは、あくまでも公募増資の替わりを意識したものでした。その為、業界などの同制度整備も、証券会社が行使されなかった分を引き受けて、新株として販売するコミットメント型を想定して為されています。

 しかし、今まで発行された2つの発行事例は、ノンコミットメント型のものです。公募増資の代替とは少し異なったファイナンスということになりますが、それでもやはり公募ファイナンスである事に変りありません。

今後、コミットメント型・ノンコミットメント型含めてライツ・オファリングが日本の発行市場で使われていけば、上場企業は多様なファンナンス方法を選択できるでしょう。

その為、上場企業は勿論、投資家や株主、市場仲介者としての証券会社もライツ・オファリングに慣れていく必要があります。

 増資インサイダーに揺れない市場を作る為にも。

☆ライツ・オファリングへの期待
    1-発行市場の問題点とライツ・オファイリングへの期待 
    2-ライツ・オファリングの仕組みと機能整備
    3-株主にとって、発行会社にとって、そして証券会社にとって
    4-ライツ・オファリングが定着する為に必要な

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望まれるライツ・オファリング=その2 (10月9日)
前回は、大規模な公募増資の代替手段としてのライツ・オファリングについて書きました。
ここで言う大規模なという意味は、発行済み株式に対して新株の比率が高い事を指します。リーマンショック以前は、公募増資と言えばせいぜい発行済み株式に対して15~20%程度の新株発行でしたが、危機後は3~5割を超えるものも目立ちました。この大規模な公募増資の代替手段として、コミットメント型ライツ・ライツオファリングの制度が整備されましたが、このタイプの事例はまだ出ていません。

 一方、企業が新株の発行を株主に引き受けてもらうのが株主割当増資ですが、2年前のタカラ・レーベンや先頃公表されたエー・ディー・ワークスのライツ・オファリングは、この増資方法の代替手段に近いものです。通常、大規模なファイナンスを検討する時、既存の大株主がどの様に協力してくれるか上場企業としては検討しますが、株主割当増資はこの大株主などの協力を前提に、既存株主だけに新株の引受を依頼するものです。

株主割当増資とその代替手段となるノン・コミットメント型ライツ・オファリングについて、簡単に説明しますが、
①株主に対して、無償で新株予約権を割当てます。
②この時の新株の発行価額は、時価の数割~半額まで低いものが一般的です。
③ここまでは、ライツ・オファリングも株主割当増資も同じです。
④株主割当増資は、新株の払込みに株主が応じなければ、その分の新株予約権は失効しますが、ライツ・オファリングは、株主に無償で割当られた新株予約権(ライツ)が、上場され売買が可能となります。
⑤よって、新株の払込みに応じない株主は、ライツの売却代金を受け取り、増資による希薄化の一部を補うことも可能です。
となりますので、ライツ・オファリングの方が株主の選択肢が増えることになります。

ここで一旦まとめますと、
◎大規模な公募増資の代替手段=コミットメント型ライツ・オファリング
◎株主割当増資の代替手段=ノン・コミットメント型ライツ・オファリング
となり、ライツ・オファリングを使う事で、それぞれ既存株主がファイナンスで受ける希薄化のダメージは緩和されることになります。

 但し、公募増資は新株に対する主に投資家の需要を、株主割当増資は新株に対する株主の需要を見込むファイナンス方法になりますが、ライツ・オファリングであればコミットメント型・ノン・コミットメント型のいずれであっても、既存株主及び投資家の両方の需要をどの様に見込むかが重要になります。
 一方、投資家にとっての新株の供給チャネルについて言えば、公募増資であれば引受証券会社だけですが、ライツ・オファリングなら上場されたライツを買い、新株の発行に応じることも出来ます。つまり、資金調達の目的やファイナンスによる成長に期待するなら、投資家はどの証券会社からも対応は可能です。(※現状では、ライツの取り扱い証券会社は限られています。)

 なお、証券会社にとってのライツの取り扱いについて、株主に割り当てられたライツの売買に関する助言、株主のライツの権利行使(新株の払込み)に対する助言、投資家のライツの売買に関する助言、投資家のライツの権利行使に対する助言、と4つの助言活動に分かれますが、例えば、コミットメントした証券会社が、株主にライツの売却を薦めるのは少し違和感があります。取り扱う証券会社での対応は、今一つライツ取扱いの実績の積み上げが必要な様にも思います。
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望まれるライツ・オファリング=その1 (10月3日)
 10月1日、我が国では2例目となるエー・ディー・ワークスのライツ・オファリングが公表されました。2010年3月のタカラ・レーベンに次いでのライツ・オファリングとなります。この資金調達に関する評価は、株主や投資家が行うべきなので控えますが、広く投資家を募る公募ファイナンス方法としてのライツ・オファリングが多く使われるようになる事を期待しています。

 標題の様に、“望まれる”と書いたのは、今の時点で日本におけるライツ・オファリングは望まれるようなかたちになっていないのでは、といった意味を含めました。そもそも、ライツ・オファリングについて、誰がどの様な効果を望んでいたかという事から簡単に説明したいと思います。

 当然の事ですが、ファイナンスである以上、ライツ・オファイリングを望んでいたのは大規模な資金調達を実施したい上場企業でした。通常の大規模な公募増資に対し、主に欧州企業などが大型の資本調達に利用しているライツ・オファリングは、次の2点で優れていると考えたからです。

○既存株主に対して、大規模な資本調達をした際に引き起こる希薄化のダメージを、最少限とすることが出来る。
例えば、発行済み5割にあたる公募増資を実行しようとした場合、既存株主は5割の希薄化による株価下落のダメージを受けるのですが、ライツ・オファリングでは既存株主はライツを売却することで、希薄化に伴う損失分を補うことができます。

○増資インサイダーなどで問題になった公募増資過程で起きる増資情報漏洩を防ぎ易い。
公募増資は、公表前に長期に渡る事前準備期間(少なくとも2~3ヵ月前)が必要ですが、引受証券が事前に海外投資家に行うような需要調査(ソフトヒアリング)などで、増資情報が漏れやすいとの認識は発行会社サイドにもありました。株主が中心となるライツ・オファリングでは、この事前の需要予測を行う必要がないので、情報管理は公募増資より行いやすいのです。

この様な利点があったにも係らず、結局公募増資による資本調達を行ったのは、以下の様な理由からでした。

●必要な額の資本を調達する為には、株主や投資家が行使しなかたライツ(上場されるて売買可能な新株予約権)を証券会社に割り振り直し、新株として一般の投資家に販売するコミットメント型が注目されていたが、制度として整備されていなかった。
大規模な公募増資の代替手段として、コミットメント型ライツ・オファイングが注目されていましたが、コミットメントする証券会社の行為としてライツに関する定義が明確ではありませんでした。

●ライツ・オファリングの実務が煩雑だったり、対応が異なったりすることなど、スキームとして確立していなかった。
例えば、目論見書の問題ですが、株主全員に配った後、投資家にも提供する必要がありました。また、ライツ・オファリングは公表から払込まで期間が3ヵ月近くかかるので、開示事実が発生する度、訂正分を配布する手間とコストが懸念されました。

以上については平成23年度金商法改正で整備され、本年4月からは上記の様な障害は少なくなっています。少なくとも、大規模な公募増資の代替手段として、コミットメント型ライツ・オファリングの法制度を中心とした体制整備は行われたのでした。

但し、“望まれる”部分で、また未達のところ、大規模な公募増資の代替手段ではない使われ方について、次回に触れたいと思います。
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公募増資情報は、何故売り材料なのか (9月24日)
 増資インサイダー問題の背景には、日本の発行市場における構造的な問題があるように思います。それは、公募増資が一般の投資家にとって売り材料になっている事です。
●公募増資による新株が市場に出回れば、市場の需給関係が大きく歪み、供給過多になってしまう。
●上記のイメージを前提に、株主が新株の購入に備える為、一旦保有する株式を売却する可能性が高まる。
何れも、新株の供給過剰を意識した投資家のイメージですが、現状の日本市場において、公募増資はこれら需給悪化材料として捉えられることが多いと感じています。

 しかし、上場企業が大規模に資本を調達するという事は、思い切った投資を行い、その結果将来の企業価値を大きく拡大させる可能性がある訳ですから、公募増資は本来買い材料でなければなりません。
少なくとも、証券会社が公募増資の主幹事を引き受ける場合、これらの調達資金の使われ方やその投資が生み出す効果などを厳密に調査し、先行きの企業業績を分析した上で、企業価値が増加すると判断するので新株の販売を引受ける訳ですから、その引受証券会社にとっては将に公募増資情報は買い材料であるはずです。

 そうなると、現在市場で受け取られる公募増資情報と主幹事証券が把握する発行企業の情報のギャップが大きいということになります。同じ企業の公募増資でも、片や売り材料、一方は買い材料となるのですから、誰かがこの情報格差を埋める作業が必要になります。

○当然ですが、投資家との情報ギャップを埋める第一の当事者は、発行企業です。
公募増資の発表時までは、増資に係る投資計画を明らかにすることは出来ませんが、そこ公表時点で投資家にその内容や効果などが受入れら易いように、日頃からIR活動を通じて将来のビジョンや経営計画を投資家に発信しておくことが望まれます。

○2番目の情報ギャップを埋めるのは、新株の販売活動を行う引受会社です。
投資家が今まで発行会社に対して気付かなかった将来性をアピールし、新たな投資需要を掘り起こすのが引受会社の役割です。しかし、現状では引受判断を行う時に発行会社から入手した情報を販売活動に使うことは出来ません。販売活動に利用できる情報は、目論見書に記載された情報のみなので、既に発行会社が公表している情報を投資家に伝えるしか出来ません。

一方、情報ギャップは埋まったとしても、投資家の新株に対する需要が無限に生じるわけではありませんから、新株に対する需要を予測し新株の発行額を決める必要があります。この事は、引受証券会社の主幹事の大事な機能でしたが、今回の増資インサイダー問題で次の様な実態が明らかになったと思います。

●引受証券として、投資家需要を予測する機能が落ちている可能性が業界全般にある。
主幹事証券が新株の販売を集約して、自社内での販売分を増加させようとした傾向が近年続いていたので、他社の需要を推し量る機能が低下して、その為市場全般の需要掘り起こしとそのニーズ調査に関する能力が落ちて行ったと思われます。

以上の状況を変えて行く為に、
○発行会社が自らの責任で資金使途の効果を説明できるロードショーの様な取組みを可能とする。(投資家との情報ギャップの埋めるため)例えば、投資家自らがアクセスするネット上に限って。
○広く新株が販売可能となる為、新株を取り扱う証券会社数を増加させ、主幹事が可能な限り多くの証券会社を参加させたシンジケート団のコントロールを行う。
といったことが行政・業界で検討されることを望みます。

スマートフォンやSNSの普及で、ICTの進化は目覚ましいものですが、世の中の進化に合わせて日本の発行市場の仕組みも見直される時が来ていることを感じています。
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日航再上場を機に想う、IPOのあり方 (9月19日)
 19日、JALが2年半ぶりに上場された。初値は3810円で、公募価格より20円高く寄り付いてまずまずの出足となっている。先ず、日本の空のインフラを担う企業の再生と再上場を率直に祝したい。
 市場からの資金調達額も約6600億円と、久しぶりの大型IPO案件で、今年はフェースブックの約1.2兆円に次ぐ規模だ。このIPOで、政府は出資資金の早期の回収も出来たし、市場は久しぶりに多くの投資家の注目を集める案件に沸いている。当然、この売出しに参加する証券会社も潤うので、曇りがちな業界のムードも明るくなることが期待されている。

 ところで、個人投資家の株離れが指摘される昨今の株式市場にあって、このIPOをもう少しうまく市場活性化策に利用出来なかったか、少しだけ悔やまれる。

例えは、経営破綻から約2.5年の最短再上場したことは僥倖だろうが、破綻する直前の半年前を思い起こせば、主に航空チケットの優待券目当てで資産株として保有していた約40万人の個人投資家は、僅か数か月の成り行きで破綻カードを突き付けられた。この1件だけで多くの個人投資家の資金が失われた。

今回の再上場IPOでは、次の様な施策も期待したかった。

○旧株主優先的に、再上場されるJAL株を販売する体制を作り、購入を希望する旧株主には優先価格(一般のIPO価格よりも低い株価で)で販売する。
○個人の株式投資活性化を目的に、先ず個人投資家だけに低めの株価設定で販売し、その後、機関投資家及び海外投資家に個人よりは高めの株価設定で販売を行う。(海外の政府系企業の株式売出しでは、この方法が使われることもある)
売り出す政府としては一刻も早い回収を目指すのかも知れないが、せっかくの機会だったので個人投資家活性化策を重ねて欲しかった。

 そもそものIPO市場の現状はどうなのか。結論から言うと、IPO企業数は少ないものの、上場する企業の内容や、上場後の株価パフォーマンスは改善しつつあるようだ。IPO企業数だけみると、金融危機までの2000年代では年間上場企業数が121~204社と、現在の4~5倍もあったが、その後、新興企業の会計不正処理の発覚などから引受審査が厳格化され、金融危機も重なって今のIPO数の水準となっている。

粗製乱造の上場は許されないが、IPO企業数はその国の経済成長力のバロメーターであり、同時にベンチャー企業の成長目標の一つでもあるので、増加が望まれるが、主な上場市場である新興市場の活性化策が検討されるものの、余り効果的に施策に繋がっていない。それでも、次の様な対応が取られている。

○引受主幹事と取引所が、早期の段階から上場予定企業の情報を共有することで、上場審査に係る期間を短縮化すること。
○出来るだけ個人のIPO株が行き渡るように、売り出す(新株発行も含む)株数の10%以上は抽選で割当なければならない(業界ルール)。その為、勧誘行為を行わないネット証券であっても、IPOが割当てられるケースが増えている。

 IPOを行うプロセスは、概ね以下の4段階に分けられる。
①上場検討期間=上場市場を検討し、上場の為の社内制度整備を行う。
②上場準備期間=上場を想定している市場の上場規定沿って上場関係に必要な書類等の作成、その為の態勢整備
③上場審査準備期間=上場取引所から求められる書類等を基に、引受主幹事証券による引受審査が開始され、ある程度整ったところで、取引所に上場申請する。
④上場の為の投資家需要調査期間=取引所による上場申請承認の後、上場予定日が決定するが、その間、アナリスト・レポート作成などで投資家需要を喚起し、価格などの公開条件決定する為の作業が行われる。そして条件決定から、いよいよ上場へ・・・

大手証券なら、①はIPO企業を相手とする営業部門、②は公開のコンサルティングを行う部門、③はIPOを審査する部門、④は投資家ニーズを調査し、販売活動をプロモーションする部門に分けられが、①と②は、企業と親しい金融機関や会計系コンサルでも対応(市場誘導業務)することが出来る。

 IPOを活発化する為には、この其々のプロセスにおいて企業への支援活動量が増加する必要がある。特に①や②で、地域金融機関や会計系コンサルが関与する事は、IPOチャネルの拡大に繋がるが、IPO株の販売まで含めた各プロセスの関係者が増加することと、各プロセス間の連携や協働が円滑にいくように業界内の仕組みを改革していくことも、またIPO増加策として求められることだろう。
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“社債市場の活性化”は、本当に必要なのか (8月21日)
 社債市場の活性化は、アジアのコア・マーケットを目指す日本にとって勿論必要だ。だから、市場関係者・発行企業・学会などの有識者が集まって3年以上も議論を続けている。そして、この7月に市場活性化の為に、どの様な具体策を取るべきか報告書が纏められた。先ず、関係者の方々の多大な尽力に敬意を表したい。

ただ、この報告書を読んだ感想として、思わずコーポレートガバナンスの時の“会社は誰の為のものか”といった議論を思いだした。今から10年以上前になるが、コーポレートガバナンスの勉強会ということで上場企業の数社に呼ばれて、資本市場からみた在り方や論点を説明したが、先ず経営陣が株主や従業員・取引先・地域社会などのステーク・ホルダーにどの様に関わっていくかというところから説明を始めた。

社債市場活性化議論も、このステーク・ホルダーに関する配慮が行き届いている。つまり、投資家は勿論、発行企業・引受業者・社債の管理者と、社債市場に現在関係する人々が感じている不満や不足を洗い出し、改善を試みようとしているので、日本の社債市場の現状の姿が報告書から浮かび上がってくる。
だから、金融関係者や社債市場をこれから学ぼうとする方々には、良質の解説書として役立つだろう。

主要なポイントは、以下の4点だが、簡略化して纏めておく。(※順番は、社債市場活性化の為に重要度ではない。証券業協会の報告書の順)

①証券会社が社債を引き受ける場合の引受審査の見直し
この見直しの要点を簡単に言い切ると、証券会社が社債を引き受ける際の引受審査のスピーディー化だ。証券会社が、社債を引き受ける為には、企業の財務内容に問題ないか開示された資料をもとに判断するが、四半期開示が行われている現状では、一時的に審査確認作業の為、社債を発行出来ない時期が出来てしまう。社債の発行企業としては、良い市場環境の時にタイミング良く発行したいので、証券会社が監査法人と行う確認作業も含めて、審査手順をパターン化してスピーディー化を目指す。

②発行企業が、社債が他の債務に対してどの位劣後しているかの情報を、どの様に開示するか
社債の内容は、社債要項に定められるが、例えば自己資本がここまで減少したら、借り入れがここまで増えたら、社債の返済能力に支障が出る可能性があるので、社債を償還しますということがある。問題はこうした約束が、社債券者とではなく銀行などの他の債務者(銀行ローン借り入れなどによる)となされ、結果として社債券者の知らないところで、資産が劣化する可能性が生じることもある。
投資家としては、これら社債以外の債務に関する約束を公表して欲しいとのニーズが強いが、報告書では、発行企業が公表する内容をパターン化して、発行企業に公表を依頼するところから始めるという。

③社債を投資家の為に管理する社債管理会社の機能の明確化と充実
現状はA格付け以上の機関投資家向け債券(券面1億円以上)であれば、元利払いの実務を行う財務代理人のみで社債は発行できるが、一定以上の社債券者の意向を反映したり、低格付け債(BBB格未満)の発行を促す為、社債管理会社の機能を明確化して、その利用を進めようというのが報告書の要旨だ。この社債管理会社は金融機関が務めるが、発行企業へのローンなど社債券者と利益相反をどの様に遮断していくか重要になってくるので、今後も議論が続くと予想される。

④社債の取引価格情報を市場参加者間で、どの様に共有するか
投資家にとって最も重要なことは、市場情報の共有である。欧米の様に、取引された価格情報が投資家も含めて共有される事を期待していたが、取りあえず以下の様に試験的に試みられるようだ。
・(当分の間)、発行総額500億円以上で、A格以上、過去に一定量以上の取引があった銘柄
・取引価格は、証券会社から日本証券業協会へ当日中に報告、これを公表する
・実施時期は、ほふり(取引決済で価格情報の確認が可能)の新決済システムで対応が整う平成26年1月以降
行わないよりは良いが、一般の事業会社の発行が100~200億円の発行規模であることを考えると、随分限定的に行い、しかも相当実施が後ずれしている。

ここで標題に戻りたいが、この社債市場の活性化は、誰にとって本当に必要だったのだろうか。

社債を買った切りで償還まで保有する日本の機関投資家なのか、銀行の劣後債を粛々と購入する個人投資家なのか、BBB格未満で現状では発行出来ない中堅上場企業なのか、
今一度、誰の為の社債市場の活性化なのか目的を明確化された方が、実施される施策の優先順位と目標達成時期が見えてくるのではないだろうか。
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公募エクイティ・ファイナンスに対する提言 (8月5日)
 前回取り上げました公募増資を市場の売り材料としないための発行市場改革について、以下のように提言として取りまとめました。
ご参考までに。

☆公募エクイティ・ファイナンスに対する提言
 
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増資インサイダー問題を、日本市場再生の契機に(8月2日)
 増資インサーダー問題について何度か取り上げましたが、この問題の背景にある日本市場(特に発行市場)の歪みが、今後是正され力強い日本市場を取り戻す契機になればと思います。
勿論、プロの引受業者として発行会社の重要情報である公募増資情報を漏洩した野村は、その情報管理面で行政処分や企業からのペナルティを受けるのは当然でしょうが、何らかの情報漏洩は他の案件での主幹事証券(外国証券も含む)でもあるというのが業界内での一般的な見方です。この情報漏洩が起きる要因を業界全体で検討し、今の発行市場の仕組みを改革していけば、流通市場の高速化に偏りがちな今の日本市場全体の再生に繋がると期待します。

 本来、上場企業の公募ファイナンスは、市場からリスクマネーを調達して次の成長戦略を実行する訳ですから、投資家にとっては買い材料であるはずです。しかし、市場での新株受入れの許容度(投資家需要)を超えていれば、目先の株式の需給関係悪化懸念が先に立ちます。公募増資情報が売り材料になるのは、最近の公募増資においては希薄化が大きいものが多く、公募増資=売り材料として市場のイメージがすっかり定着してしまった為ではないでしょうか。これを解消する方法として、次の3つの状況を改善する施策が取られるべきと考えます。

①主幹事証券会社に投資家需要把握の為の仕組みが機能していない可能性がある。
②発行会社における自社株価への認識が不足している。
③投資家における増資効果の情報が不足している。

【投資家需要把握の仕組み】
 今は流石に行われなくなっていますが、大型の公募増資(調達金額が数百億円以上)では発行決議日前に海外投資家にどの位販売できるか調査する目的で、海外部分の主幹事証券会社が海外機関投資家に対象となる銘柄の需要を聞くソフトヒアリングという慣行が行われていました。
本来、販売力のある会社が主幹事証券会社として公募増資を引受ける訳で、自社の販売力を超える分の増資金額は発行会社に金額の削減を求めるべきか、他の証券会社の販売力を利用すべきです。今、主幹事証券に求められる能力は以下のような機能の充実と考えます。
○社内の投資家需要を把握する仕組みを充実させる。
○他の証券会社の販売力を把握し、引受けのシンジケート団を組成する能力を向上させる。
特に2番目のシンジケート団組成能力の向上は重要ですが、今までの主幹事の行動はどちらかと言えば他社のシンジケート団参加を絞り、出来るだけ多くの公募株販売枠を獲得するパターンでした。結果、自社内で公募株が余剰となり、公募株を割り当てる為に当該銘柄を保有する株主に売却させたり、ヘッジファンドに空売りさせて公募株を買わせたりという行動に繋がりました。また、公募を取り扱う証券会社数が少なくなり、投資家への公募株販売窓口が一部の大手証券に限られ、投資家全体の需要掘り起こしを難しいものにしていました。

【自社株価への認識】
 発行会社にも責任はあるのではないでようか。どんな株価でも公募増資を決行するというのは、企業の資本政策として好ましいものではありません。適正な公募増資価格を想定し、そこから大きく乖離して株価が下落した場合、発行を中止するという経営者の勇気も必要な要因だと考えます。確かに、公募増資には引受証券会社との間で、何か月もの作業や協議を行いますが、一定以下の株価水準では発行を取り止める判断が必要です。経営者に、自社株価に対する考えがあれば、直近の公募価格以下で再び増資を行うという判断にも歯止めがかかると思われます。

【投資家の情報不足】
 公募増資への投資家の期待が小さいのは、増資の資金使途により期待できる効果や企業の変化に対する情報が不足しているからではないでしょうか。現在は、公募増資を含めて金融商品の販売活動では証券会社の販売員は目論見書しかその勧誘活動に利用できません。その目論見書は、予想などは記載することが出来ない有価証券届出書がベースです。つまり、証券会社の勧誘活動で企業側の予想(増資の効果や事業戦略)を伝えることが出来ないのが現状です。この開示制度の改善は公募増資株を取り扱う証券会社の拡大の為に必要です。また、ネット時代に相応しく、Web上で個人投資家向けロードショーを行うことが可能になれば、インターネット専業証券での公募増資株の販売もより効果的になると考えます。
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CB(転換社債)が復活する為に(7月25日)
前回はCB(転換社債)の現状を見ていただきましたが、現在、利用する上場会社数が30社程度で、1日平均の売買高が10億円(国内公募CB)にも満たないこの金融商品はもう時代的な役割を終えた過去の公募ファイナンス手段なのでしょうか。
 少なくとも既存株主にとっては、時価以下で新株が発行される公募増資よりは、時価以上で転換価格が高く設定されるCBの方が、同じ公募ファイナンスでは好ましく思えます。また投資家にとっては、元本が確保されない株式投資よりは、元本での償還を約束したCBの方がリスクは低くなるはずです。発行者にとっても社債に株式への転換権を付与するCBは、本来は資金調達コストを抑えるよい方法でした。それで、前世紀には国内転換社債市場は、利用する上場企業数は400社を超え、発行残高も10兆円を超える市場でした。

 CB発行市場の変化は、丁度名称が転換社債から新株予約権付社債と名称が変更された前後から起こり始めているように思います。それまで転換権という漠然とした概念から、新株予約権という考え方に、CBの転換権も、ワラント債のワラント部分も、ストックオプションも、買収防衛の為のポイズンピルも、全て統一されました。このことは、今の会社法の前の改正商法で新株予約権制度として導入されましたが、日本の資本市場は、この新株予約権制度を十分に使いこなせておらず、すこし新株予約権そのものに振り回されているように思えてなりません。CBの新株予約権も然りです。

一つには、会計制度での扱いですが、CBが普通の社債より金利を安く発行出来るのは転換権=新株予約権が付いている為なので、その部分を社債から割り引いて発行されていると見做して、仮の費用として計上すべきではないかとの考え方です。この会計上の考え方は、現在のIFRSなどで主流ですが、時価会計を旨とするIFRSなどでは、さらにこの新株予約権部分を毎年時価で見直し費用計上の修正を加えるべきではないかとの考え方も示されています。(なお現在の日本の基準では、昔の通りCBの金利部分だけを費用として計上する方法もまだ認められています。)重ねるように複雑に書いてしまいましたが、簡単に言い切ると、CBの発行は企業にとっては現状では経理上の資金調達コストが増加する可能性のある調達方法だということです。

2つ目は、現行の国内CB上場制度です。BBB格以上の格付け取得が必要ということと、20億円以上の発行が必要な為に、規模の小さな上場企業では利用できないような仕組みになっています。また、発行残高がある限り、格付け期間のレビューを受けなければなりませんが、これも企業の負担を増しています。

3つ目は、CBはその転換権=新株予約権の内容を自由に設計できるはずですが、この商品設計の多様性の方は、制度的に一部の投資家の裁定取引に悪用されたMSCB以降、余り目立って新しい取組みななされていないように思われます。

以上3つは、CB市場の復活を阻害している要因や現象ですので、これらの緩和・解消がCB市場復活には必要です。すなわち、
○国内企業の有力な資金調達手段として、経理上も実務的にも発行コストが安い調達手段であること。
(企業の資金調達目的に合わせた、会計処理論点の再整理)
○比較的小規模でも、公募CBの発行が可能となる制度緩和がされること。
(新しいCB上場制度の検討)
○多様な商品供給の為、業界からのCBの新しい商品性の例示やプロ市場・少人数私募の利用促進
(例えば、リキャップCBの発行推進などは実施しやすいのでは。・・)
などが考えられます。

 
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発行市場とCBの役割について(7月23日)
増資インサイダー問題に大きく揺れている日本の発行市場ですが、この10年間だけ見ても発行市場の1つのブームの様なものが、流通市場を巻き込んで市場全体に影響を及ぼすことが多かったと思います。
今の増資インサイダーは、2009年・2010年のバブル期以来の水準の公募増資が影響しています。僅か40社程度の大企業が5兆円・3.3兆円と市場から調達するのですから、販売する方の証券会社が投資家需要を集めるのに苦労するのも無理からぬ事だったのではないでしょうか。
また、大規模な第三者割当にともなって、一部の投資家の不公正取引的行為が問題となり、2010年には希薄化25%以上の第三者割当は、第三者委員会の賛同か株主総会の合意が必要となっています。
2000年台前半に新興企業の資金調達方法としてブームになったMSCB(moving strike convertible bondあるいは下方修正条項付転換社債型新株予約権付社債)では、2006年に引き受ける証券会社側の引受姿勢を厳格化することで、実質的に発行を規制しています。
 さて、表題のCBですが日本での最盛期は、バブル期でしたが、流通市場も発行も大きく縮小しています。
現在、日本の発行市場が抱えるダイリューションや流通市場へのマイナスインパクトを小さくするファイナンス手法として期待したいのですが、現状は以下の様な状況です。何故、この様な市場収縮が起きているか考える前に、先ずは今の姿をご覧ください。

☆日本の発行市場の状況とCB
 

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増資インサイダー問題、取りあえずの纏め(7月2日)
この3月以来増資インサイダー問題の揺れた大手証券会社ですが、週末に野村の同問題に対する社外弁護士の報告書が公表され、また海外大手ヘッジファンドの日本板硝子公募増資に絡んだインサイダー取引で、大和からの増資情報の漏えいが報道されました。これで、増資インサイダー問題に関して大手3社と米証券1社の合わせて主幹事証券4社による公表前公募増資情報の顧客への伝達が確認されています。

 公表された野村の報告書を読むと、ファンド・マネジャーなどを顧客とする営業部隊によるファイナンス情報を集める生々しさが伝わってきます。また、営業部隊への情報漏洩のルートになったシンジケート部(引き受けた公募株の販売上の責任部署)での情報管理の問題も顕わになっています。今後、野村は業界のトップ企業として、この増資インサイダー取引撲滅のために、インサイダー情報管理を徹底してくるようですが、この増資インサイダー問題の本質的なことは、もう少し別のところにあるように思います。

 先ず、かねてより噂のあった海外ヘッジファンドによる日本株公募増資銘柄の空売りが、今回2件(東京電力と日本板硝子)明らかになった訳ですが、日本でのエージェントを使ってその情報収集を行っていたというのは、組織的な方針と言わざるを得ません。インサイダー取引は、市場への背信行為であるとともに先進国では犯罪行為ですが、ヘッジファンドの行動特性として何らかの矛盾や歪みを是正しようとする方向に圧力をかけることを思い起こせば、日本の公募増資が制度的に問題あったのではないかというところに至ります。

 例えば、大規模なファイナンスについては大きな既存株主の希薄化をもたらしますので、第三者割当増資の場合、既に実質的に規制されて発行済み株式総数の25%以上を発行するような時は、外部の第三者委員会による判断か株主総会での合意が必要です。しかし、公募増資に関しては4割でも7割でも希薄化が進むようなファイナンスが、取締役会決議だけで実施出来ます。その為、発行企業側の自社株の希薄化や株価水準に対する対策、既存株主への利益還元などのファイナンスに関する資本政策は重要で、少なくとも公募増資が売り材料とならない工夫が必要です。

 次に、引き受ける証券会社側の問題ですが、本来は販売出来るだけ引き受けるべきです。また市場が受け入れ可能な金額をどう判断するか重要で、今回野村で情報ルートとして問題となったシンジケート部は、自社内や他社の投資家を含めた市場の需要を判断する機能がある部署でした。現状は、野村に限らずこの機能が低下しているのではないかと思われます。理由としては、公募増資などは大型化しているものの件数が少なく、その為主幹事1社で出来るだけ多く販売しようとするバイアスがかかりがちです。その為、他社の需要を取り纏めるシンジケーション機能が劣化しているといった問題があります。
(この事例としては、最近のフェースブック上場における主幹事モルガンスタンレーの例があります。)

以上を簡単に纏めますと、発行者側が公募増資に対する発行者としての規律、引受主幹事証券は公募増資の引受に関する規律、其々が緩んでいたところを海外ヘッジファンドなどにファイナンスの欠点として突かれていたとも言えます。もう一度、公募増資のあり方を見直す時ではないでしょうか。

(何も公募増資でなくとも大規模なファイナンスは可能ですが、ライツ・オファリングやCBなどの代替手段や、情報管理面では発行登録を利用したエクイティファイナスなどが考えられます。ただ、基本的には発行会社のファイナンスによる企業価値向上が投資家に理解されることなので、資金使途などのディスクロージャーの充実が大切です。)  
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ファイナンスの季節を迎えるにあたって(6月25日)
3月期決算会社の株主総会開催がピークを迎えつつあるが、総会終了後に前年度の有価証券報告書が提出され、それを元に公募増資や売出し、IPOなどのファイナンス準備に入るというパターンがある。その為、取締役会決議が7~8月に集中(もう一つのピークは、12月~1月)しがちで、ファイナンスの季節到来となる。

リーマンショック後の市場回復期にあっては、公募増資だけで2009年に年間約5兆円、今増資インサイダーで問題になっている2010年には約3.3兆円の新株が市場に供給されたが、震災のあった昨年は流石に0.9兆円と大きく減少した。

今年も、その季節を迎えつつあるが、日経平均が8000円台で低迷している現状では、ファイナンスよりは自己株取得の方を期待する投資家が多い。しかし現在市場で観測されている大型のファイナンス案件としては、震災復興財源確保の為の政府保有JT株の売出しで約5,000億円(別途JTによる自社株取得分で2,500億円)、日航の再上場で企業再生機構が売り出す分が約5,000億円程度、2社で既に1兆円を超えそうで、これにイオンなどの大型REIT上場案件が加われば、再び市場の需給悪化が懸念される。勿論、市場の資金調達機能は重要なのだが、個人を含め多くの投資家のポートフォリオが痛んでいるような状況では、新規のリスクマネーを呼び込む為に新しい取組みがなされても良いように思う。
 
例えば、日航の再上場についてだが、2010年1月の法的整理から僅か2年半での再上場となり、これはこれで喜ばしことなのだが、経営破たん時の株主は38万人もいた。その株主の多くは個人投資家で、優待券目当ての保有も多かったはずだが、株式は100%減資で紙屑となった。日航の破綻に対して、株主責任をとった訳だが、短期間での再上場に何か割り切れぬ想いともつ個人投資家も多いことだろう。

今度の再上場に当たり、この旧株主の個人投資家が優先的に新株を取得できる仕組みを検討されては如何だろうか。

会社法上の権利とか、金融商品取引法上及び公募株の販売ルールとか、余り難しく考えなくとも、新株を販売する引受証券会社サイドでの対応と、旧株主や投資家への周知で、実質的に旧株主中心に新株の募集を行うことは不可能ではない。旧株主優先募入とでもいうのだろうか。但し、引受証券サイドの窓口での事務作業は増えそうなので、その分は発行者や売出し人からしっかりコストを徴求すれば良い。

 少し細かい話になるが、新株を募集する際の手数料についても、もう少し投資家や株主サイドのたった工夫がされても良いだろう。今の新株販売の仕組みは、実質的に投資家が新株を販売する証券会社に対して手数料を支払っている。例えば以下になっている。
・募集価格400円(投資家が証券会社に新株の代金として払い込む金額)
・発行価額380円(この分が、証券会社から発行会社若しくは売出人に払い込まれる)
つまり2つの金額の差額が、証券会社に手数料分として残ることになるが、新株の販売手数料を投資家自らが支払っていることになる。新株の販売に対する報酬として考えるなら、本来は発行会社が支払うべきだろうが、新興企業などで新株発行の費用(販売の為の手数料もこの中に入る)計上を押える手法として用いられるようになった。

JTも日航も大企業なのだから、この費用は投資家が負担するのではなく、企業や売出人(国や企業再生機構)が負担するようにされては如何だろうか。市況環境が悪い中でのファイナンスには、株主や投資家に対してそれなりの配慮をした工夫をすべきと考える。
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増資インサーダー取引の背景(6月20日)
 インサーダー取引は、未公開の重要な情報をもとに株式を売買する犯罪ですが、増資インサーダー取引に関しては、別の問題もあります。

それは、公募増資の主幹事証券から、本来は厳格に管理されているはずの増資情報が、投資家のごく一部に流れたという事実です。この情報の漏えいが、直接の犯罪行為かというと、増資を依頼している企業に対する背信的な行為ではありますが、現状の金商法のインサイダー取引規定には違反していません。
勿論、証券会社であろうが弁護士や会計事務所であろうが、インサイダー情報は厳格に管理されるべきですが、増資情報を投資家に流したのでその情報を使って売買するだろうから、証券会社が情報を流す行為そのものを違反対象として新たに加えるべきという議論も、少し乱暴なように思います。
法律論の方は、識者の方々にお任せするとして、若し主幹事証券からの増資情報漏洩に何らかのペナルティを与えるとしたら、それは業界内のルールに依るべきというこが筆者の考えです。その根拠は、公募増資などを引き受けるルールは、そもそも業界内で決めているので、その中で増資情報管理の厳格さも決していくべきです。

 さて、この主幹事証券による増資情報漏洩の背景を考えていった時、引受証券会社に対するひとつの大きな疑念を抱かざるを得ません。それは、主幹事証券が本当に投資家の需要を把握しているか、若しくは把握する為の取組みに努力を払っているかということです。

話題になっている野村も日興もJPモルガンも、公表前の増資情報を本来は知るはずのない営業部門の人間が知っていたということは、情報を管理する引受部門から、どの位公募株の販売が可能か社内的な打診が行われる過程の中で起きたことと見るのが普通です。詳細の説明は避けますが、この販売打診の為の情報が、営業責任者に留まっているうちは問題ないというこが業界内の考え方です。

しかし、ここ数年の公募増資では公募増資金額が大きくまた大規模な希薄化を伴うものが目立ちました。
その為、海外でも公募株を販売する前提で、一部の海外機関投資家に対象株の需要を聞くこと(業界用語でソフトヒアリング)が、増資公表の1ヵ月から数週間前に行われていたのは事実です。流石にこのソフトヒアリングは、2011年7月にアジア・コーポレート・ガバナンス協会(Asian Corporate Governance Association)が日本企業ファイナンスに関する要望書の中で、インサイダー取引の疑念ありと指摘したことで、現在は自粛されているようです。

最近米国で起きたフェースブック上場に関する問題では、主幹事証券のモルガンスタンレーについて以下の問題があることが報じられています。
・株式公開直前に、コールドマンなど他の幹事会社の影響を排除し、自らの販売分を多く獲得した。
・株式公開の価格を、投資家の需要が多いといって大幅に引き上げた。(他の幹事会社は反対)
・公開直前のロードショー(会社内容の説明会)で、一部の機関投資家のみに業績予想の下方修正を伝えていた。
ここまで外部からみて一貫性の無い行動をとるのは珍しいのですが、主幹事として本当に投資家需要が分かっていたのかという疑問は当然おきます。

日本の主幹事証券はこれほどグリードでなくとも、大規模なファイナンスの時、本当に投資家需要を測るような努力をし、若し需要に満たないと判断した時、発行会社に減額を申し入れる決断が必要です。また大規模なファイナンスの場合は、自社需要だけではなく、他社需要も取組むシンジケーションをちゃんと行うべきです。モルガンスタンレーほどではないですが、最近の日本の主幹事証券も、主幹事への権限・販売額の集中化・集約化が進んでいました。
もう一度基本に戻り、市場全体の需要予測と他社の協力を仰ぐシンジケーションをちゃんと行うことろからやり直す必要があるのではないでしょうか。

また、時代に合わせた投資家へのプロモーション活動も検討すべきで、大規模なファイナンスの際行われる海外機関投資家向けロードショーなども、インターネット上で日本の個人投資家向けに可能となるようなルール改正を証券会社として求めても良いはないでしょうか。
(※現在は、日本国内での販売活動は目論見書利用のみ可能)
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OBS Act と日本の新興市場改革 (5月24日)
本稿では米国の“JOBS Act”に関して、月初にクラウドファンディングの件で一度取り上げましたが、この法案の米国資本市場における意味について、東証の斉藤社長が定例記者会見で取り上げておられるので、日本の新興市場の問題と比較してその効果(今後の事ですが)を考えてみたいと思います。

 この法案は、仕事のjobやアップルの故スディーブン・ジョブス氏のお名前を意識してネーミングされたという事ですが、確かにJOBS=Jumpstart Our Business Startupsとは法律名らしからぬプロジェクト名のような印象を受けます。しかしこの法案は、米国の資本市場を大きく変えるような、もしくは米経済のダイナミズムを加速させる可能性を持っているのでは、といった思いが斉藤社長のコメントから伺えます。

 米国の資本市場関係の法案は、日本の資本市場ルールにも大きな影響を与えますが、過去を振り返ればエンロンやワールドコムの企業不祥事から米SOX法が定められ、日本でも上場企業に対する内部統制ルールが強化されました。また、金融危機によって欧米大手金融機関の投資行動が問題になりましたが、これを規制するようなボルカールールを含む米金融規制改革法が成立しています。SOX法は対上場企業への開示(ディスクロージャー)強化、金融規制改革法は大手金融機関の行動規制など、ここ10年来の米国の資本市場関連法案はどちらかというと規制強化の方向でしたが、“JOBS Act”は新興企業(含むベンチャー企業)の資金調達に関して大きく緩和しています。

 米国と言えば非常に厳格に開示ルールが運用されていて、例えばそれが米国で株式を公開していなくとも一定数以上米国の株主がいれば、日本企業のTOB(公開買付)や資本政策に影響が及ぶこともあります。しかし、この“JOBS Act”により、新興企業(売上げが10億ドル以下)であれば、IPO(株式新規公開)時やIPO後の一定期間、SOX法を含む開示ルールの一部が免除されるということです。これにより、新興企業の上場コストや手間が削減でき、よりIPOへむかう企業の増加が予想されます。

また、同法で注目されているのはクラウドファンディング条項ですが、現在も行われているクラウドファンディングは、あくまでも個人の寄附行為です。しかし、同法によれば創業段階や設立後日の浅いベンチャー企業であっても、クラウドファンディングによって資本を集めることが可能となります。
この“JOBS Act”は、米国の新興企業全体の資金調達に大きな変化をもたらす規制緩和だと思いますが、翻って日本の新興市場は如何でしょうか。

 現在、業界をあげて“新興市場等の信頼性回復・活性化”という取組みを、もう2年近く行っています。これは、虚偽記載など相次いだ新興企業の内容をちゃんと確認するとともに、減少傾向が続く新興市場そのものを活性化する為の検討を、証券業界等の関係者で行っています。関係者の方々には申し訳なく思いますが、新興市場の活性化策に関しては、IPO増加の為に実効性を感じる施策は殆どありませんし、また議論もされていないようです。

 そもそも、資本市場はいくつもの法規制や取引ルールで成り立っていますが、市場の活性化策とはこの法規制・ルールの緩和に他なりません。ですから、新興市場の活性化策とは、新興市場のルールの緩和策ということになり、その為には法規制の緩和など政策的な支援が必要なのではないでしょうか。例えば、米国の様に。ですから、新興市場活性化策の業界での議論は、新興企業がIPOを行い易くする為、どのルールの緩和が必要なのかといった視点が必要です。
また新興企業のIPOを支援したりする業務が、IPOビジネス(市場誘導ビジネス)として活性化していくことも重要だと考えますが、その為にはこの分野の参入障壁を低くする施策にも期待しています。

≪再掲≫
☆クラウドファンディング、マイクロファイナンスとその応用の概略図
≪参考文献≫
東証の斉藤社長のJOBS Actに対するコメント
JOBS Actによる米国証券法等の改正(増島弁護士ブログ)
Jumpstart Our Business Startups Act(英文)
新興市場等の信頼性回復・活性化に向けた工程表
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市場の裾野拡大の為に~グリーンシート市場の場合 (4月18日)
 グリーンシート市場は一般の投資家に馴染みがない。1997年に制度が開始された時は、成長期待のある未公開株や地方企業の株式を証券会社の店頭でも売買できる仕組みとして期待されていた。しかし、一般の投資家が知らないのは、取り扱う証券会社が少ないためだ。

 この制度は、日本証券業協会が定める自主ルールによるが、現在協会においてこの見直しの議論が行われている。何故、証券会社が取扱わないかは、経済的メリットが少ないことに加え、取り扱う為の手間がかかるからだ。その為、通常の株式市場のような流通の場とは明らかに異なるし、取り扱う証券会社数が少ないということは、取引に参加する投資家が少ないということであり、この市場に参加した企業の資金調達にも余り役立っていない。
 ただし、協会規則では一般の投資家に流通することを前提としているので、有価証券報告書の記載内容に準じたものを発行会社が作成しなければならない。その為、参加する企業は公認会計士の監査を受ける必要があり相応のコストが掛かっている。

以上の様な問題点が協会での議論で指摘されているが、簡単に言い切るならこの市場は手間とコストが掛かる割に、企業も証券会社もメリットが少ないということになり、制度としては失敗だったのではないかというのが結論のようだ。

ではグリーンシート市場の様な未公開株の流通市場が不要かというと、次の様なケースでは日本の資本市場全体の裾野拡大に役立つだろうという事も関係者間で認識されている。

①ベンチャー企業が新興市場に上場(IPO)を目指す前に、リスクマネーを調達したり、当該株式を売買したりする市場はあった方が良い。
②未公開の地方有力企業(例えば、地方鉄道やバズ会社、地域の放送局など)の株式を売買したいとのニーズには証券会社として対応すべきではないか。

現在のグリーンシートの制度は、証券会社が参加銘柄を勧誘しても良いことを前提とし、開示制度や売買ルールが決められているが、一部の企業のファイナンス時を除き、殆ど証券会社が売買を勧誘することはないようだ。であるなら、ディスクロージャーも簡素化し、売買ルールも①と②の様なケースで投資対象者を分けて整備しなおした方が良いのではないだろうか。

①については、プロ向け市場との関係も整理した方が良いと考えるが、個人投資家がベンチャー企業投資を積極化する必要が本当にあるのだろうか。例えば、通商産業省がエンジェル税制対象企業リストを公開しているが、これらの企業に個人が投資する場合を想定してインフラを整備した方が、個人のリスクマネーを新興企業のファンナンスに繋げるということ目的に沿っている。この場合の証券会社の取扱いルールを簡素化するべきだ。

②については、個人株主の売却ニーズや交通機関なの株主優待券狙いの購入ニーズがあるようだが、証券会社が関与する場合の役割を明確にして、その役割に沿った取扱いルールで良いのではないだろうか。例えば、単純に売買の決済を行うだけの場合と、買い手・売り手を探す場合などでは証券会社の負担(逆に言えば収益)が異なるのでルールは違っても良いだろう。なお、取り扱う企業は地元における一定規模以上の企業なのだから、財務データの開示は当然として、過去の取引価格や株価算定情報は必要だと考える。

いずれにしても、証券会社が未公開株式をちゃんと取り扱うということが必要だと思う。その事が、結果として未公開株詐欺などを防いでいくことにも繋がっていく。

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強気と弱気、需要と供給で市場は動きますが、ところで市場への供給って何? (3月5日)
市場は様々なルールで成り立っています。法律(金融商品取引法)・取引所規則・業者間ルール(協会ルール)、そして市場参加者(証券会社や金融機関、投資家、企業)それぞれのルール。毎日、売買する流通市場の方は、常にそのルールを使っているので取引参加者の間には浸透していますが、市場に株式や債券を供給する発行市場の方は、たまにしか使わないし、また使う人たちも限られているので、多くの市場参加者にとって、普段は余りそのルールや仕組みを意識することがありません。加えて、発行市場のルールは専門的でかつ複雑です。つまり、分かり難いということですが、何故そうなっているかというと、この発行市場では関係者の利益が相反しやすいからです。

 標題は、市場を動かす仕組みとして、流通市場への供給を行う発行市場は大切だけれども、株式や債券の発行はたまにしかないイベントなので、普段は余り意識されていないことを言いたくて書きました。

 そのルールの固まりのような発行市場ですが、現状の様々な市場に関わる問題を見てみますと、少しルールそのものが古くなっているか、根詰まりをおこしているような感じを持ちます。
大事な発行市場の機能。少し考えてみませんか。

☆発行市場の現状と問題点、そして今後の可能性を考える
・発行市場に対する投資家のイメージとその機能
・エクイティ発行市場の現状と問題点
・社債市場の現状と問題点
・みんなの発行市場である為に
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大規模ファイナンスの予兆について (2月24日)
 株式市場の重要な機能には、株式の流通の場の提供とともに、企業へのリスクマネーの供給があります。簡単に言いますと、日頃投資家が接している流通市場がちゃんとしていないと、企業はリスクマネーが調達できませんし、やみくもに企業の公募などのファイナンス(市場への株式の供給)が行われると流通市場が大きなダメージを受けます。

ファイナンスを行う企業と投資家・株主との間には以下の様な暗黙の合意があるというのでなければ、継続した市場として成り立ちません。
○ファイナンス資金は、企業の成長に利用される。【資金使途】
○ファイナンス後、企業は大きな成長を遂げる。【業績の向上】
○ファイナンスによって、株主もメリットを受ける。【ファイナンス後の株価上昇、配当等の増加、成長による資本持分の増加】

これらは、企業が決定していくことではありますが、そのお手伝いをするのが引受の主幹事証券会社ということになります。公募のファイナンスは、経営者が思い立ったら直ぐ実行できるという訳ではありませんので、その準備には少なくとも3カ月、普通は半年程度の準備・事前作業期間があります。この間、企業と主幹事を務める証券会社の関係者(ファイナンスはインサイダー情報なので少数に限られます)にとっては、上記3つのポイントについて相当負担の重い確認作業となります。
また、上記に加えてどの様なファイナンスの形態で行うのが、流通市場や株主にとって最適かアドバイスするは主幹事証券の重要な機能です。

本稿の目的は、個別企業を評価することではありませんが、株主や投資家の視点から問題が多いファイナンス事例として、昨年公募増資を実行したA社を上げたいと思います。

A社は、昨年8月月初払込で公募増資(新株の約29%)と新株予約権付社債(潜在株として約17%新株増加)のファイナンスを実行しました。合わせて希薄化率(既存株主の資本持分が薄まる)46%というのも既存株主にとっては問題ですが、ファイナンスの払込1週間後に行われた第一四半期(昨年4月から6月)で、業務の先行きの成長性に対して見通し(売上げ・利益などの予想はもともと公表していません)を引き下げたのは少し悲しいサプライズでした。これでは、新株に払い込んだ投資家は勿論、急激な株価下落に耐えた株主の立つ瀬がありません。

標題を上げたのは、最近の株価上昇で、2009年や2010年の様な大規模(発行済み株式総数の3割以上)な公募増資が、再び増加していく可能性を杞憂したからです。勿論、市場機能として企業がリスクマネーを調達するのは正常な行為ですが、株主にとって負担が大きい(株価下落リスク)大規模な公募増資は、相当の検討と覚悟をもって実行して欲しいと思います。可能なことなら、株主の負担が軽く選択肢が多くなるライツ・オファーリングは4月以降制度整備されて使いやすくなりますので、筆者としては大規模なファイナンスは、こちらを薦めます。

予兆と書きましたので、最近公表されたB社の大規模公募増資について、ファイナンス期間中ではありますが少し触れておきます。

B社の公募増資は、株式を約68%増加させる大規模な公募増資であります。また、このファイナンスの発表に先立ち、新しい中期経営計画は示され、調達する資金が何に使われどの様な効果を生むか、株主や投資家が考えやすいように配慮されています。それでも、ファイナンス関係者として筆者は以下の様な疑問を感じています。
・何故、今の時期なのか (今期の業績が確定した来期以降ではいけないのか)
・何故、公募増資でなくてはいけないのか (新株予約権付社債や第三者割当増資という手法もあるが
・・・)
・何故、劣後ローンの公表が一緒なのか (早急な資本の増強が必要なのか、若しくは格付けとの関係があるのか)
勿論、これらを判断するのは投資家であり株主ですが、せっかく世界に誇る技術がある企業なのですから、市場対応の方も頑張っていただくことを期待しています。

(※本稿はA社、B社の投資判断に資するものはありませんし、その目的をもったものではありません。)
 
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正しい未公開株投資 (2月17日)
 今、証券会社の店頭やホームページには、未公開株詐欺に関する注意を呼びかけるポスターや注意喚起文が並ぶ。証券会社名や金融商品仲介業者名を名乗っての高齢者などを狙った詐欺行為が増加していることもあり、行政・業界あげて個人に注意を呼び掛けている。
不正行為や詐欺行為を市場や業界から排除する為に、多くの関係者の方々が尽力されていると思う。
ただ、個人の未公開株についての関心がそれ程高いのであれば、正しい未公開株投資の情報が、もっと体系的に、かつ分かり易く提供されても良いのではないだろうか。証券会社(含む金融商品仲介業者)が個人投資家に対して取扱い可能な未公開株投資は、以下の方法がある。

○グリーンシート市場銘柄(現在、46銘柄。成長力が期待されるエマージング銘柄は15銘柄)
制度としては、個人投資家に一番距離が近いはずだが、取り扱いが特定の証券会社に限られているので、この市場に関する情報が個人レベルまでなかなか行きわたらない。有価証券報告書に準じて作成される会社内容説明書で、上場する企業の内容を知ることが出来るし、決算情報なども決算短信など適時開示に準じて公表されている。企業側は、それなりのディスクロージャー負担を負う訳だが、それに対して市場機能を使ったファイナンスなどは殆ど出来ていない。つまり、上場企業にとって負担が大きい割に、現実的なメリットが少ない。
何か一番問題なのかは、おそらくこの市場では価格発見機能が充分機能していない、もしくはそう見做されていることだろう。当初、グリーンシート市場の上場するときの株価算定の信頼性や、流通価格に関する情報がもっと個人の目に触れる仕組みが必要なのではないだろうか。エマージング銘柄に関しては、エンジェル税制も利用できるのだが、これらは一般には余り知られていなのが惜しい。

○プロ向け市場(但し、個人投資家の参加は金融資産3億円以上で、証券会社での口座開設が1年以上)
個人などの特定投資家(所謂プロ投資家)の基準が下がっている。相応の資産家で自ら望むなら個人もプロとして一般の個人投資家が投資しにくいような金融商品も利用できる。未公開株投資に関して、プロ投資家ならTOKYO-AIMで売買することが出来るが、現在1銘柄の上場に留まる。正確に言えば、この市場は、英国のプロ向け市場であるAIMを真似て、東証とロンドン取引所が共同で運営する取引所なので、未公開株とは厳密には言えない。但し、この市場に上場する企業が、成長していけば将来東証などの取引所に上場を目指すのだろうから、個人にとっては上場予備群の未公開企業に投資するに等しい。
この市場の仕組みは良いのだけれども、上場企業をサポートするJ-Nomad(TOKYO-AIMが指定するアドバイザー)の基準が高く、組織的な負荷も重い。そのコストは上場企業が負担することになる。よって、相当の企業規模でなければ上場しにくいし、この市場での資金調達の目途が無ければ、直接の取引所上場を目指した方が良い。現状では、企業・プロ投資家・それらを仲介する証券会社がそれぞれこの市場に慣れていないように思われ、本格的な稼働までには時間や新たな仕組み(緩和策)が必要なのではないだろうか。

○ベンチャーファンドでの投資
個人もベンチャーファンド組成に参加することは可能だろうが、これも一般の個人にまでよく情報が行きわたっていない。現在、大証に2銘柄ファンドが上場されているが、売買量も少なく純資産価値の四分の一程度まで低下している。個別の未公開株に投資するのではないが、投資先リストも公開されていて一般の個人が未公開株投資する方法としては、比較的手軽なはずだ。

以上、3つ並べて書いてみたが、現状ではこの3つの関連は殆どない。但し、関連ないことが問題ではないだろうかと指摘したい。IPOに至る前の未公開株の個人が売買できる仕組みは、今それぞれあるはずなのだが、それがIPOも含めて各々繋がっていなので、有機的に機能せずに全体としてのIPOへ至る道を狭め、個人投資家が参加しにくくしている。
今一度、其々の制度を見直すことも必要かも知れないが、個人に対して、以上の3つとIPOに至るプロセスの情報を体系的に提供していくことから始めてはどうだろうか。正しい未公開株投資として。
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日本の発行市場(資本調達)の問題とライツイシューに関する期待と不安 (2月2日)
流通市場の売買システムや手法は、金融イノベーションにより進化していますが、日本の発行市場は制度疲労に陥っている可能性があります。
ライツイシューの様な新しいファイナンス手法が定着することで、今の投資家や企業のニーズに沿った発行市場に変化する契機となることを願っています。

金融危機後の発行市場について
市場機能の問題点について  
上場企業にとっての問題  
ライツイシューの概要と事例  
行政上の配慮
ライツイシューそれぞれのメリットと留意点
投資家からみた資金調達のポイント

☆日本の発行市場(資本調達)の問題とライツイシューに関する期待と不安 

(本資料は、127日に開催しました札幌証券取引所でのセミナー資料に若干内容を加えたものです。セミナー開催にあたり、関係者の皆様には多大なご負担をおかけしましたが、ここに深く感謝するとともに、より多くの上場企業が発行市場機能を十分に利用できるように願っております。)
 

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新株予約権(ライツ)の功罪 (1月31日)
会社法で定める資本調達方法である新株予約権に、そもそも罪などあろうはずはないが、株主や投資家からみると、その使われ方が多岐に渡り、それぞれの評価が分かれることがある。例えば、ライツ・イシュー(最近はライツ・オファーリングと呼ぶ場合が多い)では、既存株主のファイナンスによる希薄化を軽減するのに使われるが、買収防衛策では特定の株主(買収者)の持分を希薄化する為のポイズンピルとして使われる。どちらも、同じ新株予約権を使う。

また、従業員にストック・オプションとして付与されることもあれば、役員に退職金代わりに支払われることもある。同じ新株予約権を利用するにしても、新株を得るために支払う金額=行使価格の考え方は全く異なる。

この新株予約権は、旧商法で平成13年の改正により制度導入されているが、“新株を引き受ける権利”としてその権利部分だけが単独で発行できるようになった意味は大きい。それ以前にも、新株引受権(ワラント)付社債はあったが、ワラント単独の発行は出来なかった。

平成18年から施行された会社法では、この新株予約権(ライツ)に対して若干のバーションアップがなされており、権利を発行企業が消却する場合の対価を金銭以外にも認めたのと、M&Aや組織再編に対応する為、権利期間途中の買取請求制度を創設した。また、株主に強制的に保有させることが可能な無償割当も認められた。

さて、株主にとっての功罪を考える前に、この新株予約権の制度上の主要なポイントを見てみたい。

○新株予約権の行使価格=新株にいくら払い込むのか
この行使価格の幅は、新株予約権単独で発行される場合は、1円から時価まで、社債つまりCB(新株予約権付社債)の場合は、普通は時価~時価×130%程度までとなっている行使価格が大きく異なるは、その利用目的が違うからだ。
例えば、役員に退職金見合いで支払われる新株予約権は、行使価格が1円となっている場合があるが、在任中の頑張りで業績を向上させれば株価も上がり退任後の手取りが増加するという仕組みになっている。従業員のストック・オプションとして使われる場合、時価若しくは数%時価に上乗せした行使価格にするのが一般的で、付与された後の株価上昇がボーナスとなるインセンティブ設計だ。

社債についている場合の行使価格は、元々社債で元本を発行会社が保証しているので、時価より上で設定されるのが普通だが、一時、通常の公募ファイナンスを行い難い新興企業などが、発行後数か月後から定期的に行使価格をその時の市場価格の90%とするような下方修正条項付新株予約権付社債(CB)を発行して問題となった。この方法によるCBの発行は、企業はファイナンス出来るものの、このCBを保有するのが市場との裁定取引目的のファンドや証券業者となり、結果として発行後大きく株価下落する場合が多く、既存株主に大きなダメージを与えた。また、極端な場合は、下方修正条項の新株予約権のみを発行する苦し紛れのようなファイナンスもあり、この割り当て者による相場操縦的行為が問題となるケースもあった。

○権利行使の期間=いつまで行使する権利があるのか
 権利を行使できる期間は、2カ月程度から10年ぐらいまでと幅があるが、これも目的によって大きく異なる。ファイナンス目的のライツ・イシューであれば、新株の払込までの期間は短い方が良いと考えられているが、現在は2ヵ月程度、付与されてから行使期日までの間は取引所で新株予約権(ライツ)の売買が可能となっているが、将来的にはこの期間は1ヵ月程度まで短縮される可能性もある。一方、長い方が良いのは、役社員にインセンティブ目的で付与されるストック・オプションとしての使われ方と、業務提携などで長期間の資本提携を視野にいれば場合の相手企業への付与がある。

○権利行使の条件 =どのような時に行使できるのか
 新株予約権は、その権利行使にあたり条件をつけておくことが出来る。例えば、役社員のストック・オプションならその企業に在籍することを条件とすることが一般的だろうし、ポイズンピルの買収防衛策なら敵対的買収者として認定し、権利行使に替えて現金を渡す様な設計も可能となっている。

以上の様に、新株予約権は株式や債券などと異なり多様な設計をすることが出来る。この制度が日本の資本市場に導入されて、早10年以上経つが、そろそろ株主がメリットを受ける使われ方が広まっても良い時期にきている。その意味で、ライツ・イシューや株主への無償割当などの使われ方に期待している。
(昨年、ライツ・イシューに関して金融商品取引法の改正がされているが、本年4月以降施行となっている)

 
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株式市場の機能としての発行市場 (1月30日)
 株式市場の主役は、株式を上場する企業とその株式を売買する投資家ですが、機能としては大きく流通市場と発行市場に分けるのが業界の一般的な考え方です。株式市場は流通市場と発行市場が両輪で成り立っていというのが教科書的な書き方ですが、毎日株価が変化する流通市場に比べ、発行市場では時々IPO(新規株式公開)や公募増資が話題になるぐらいで、普段投資家からみて余り意識されることがありません。しかし、上場会社にとってリスクマネーを調達する発行市場の機能は重要です。

 流通市場の方は、毎日株式を売買しているので、取引の超高速化や上場企業のディスクロージャー(情報開示)の充実など、その時代の投資家のニーズに合わせて変化していきますが、発行市場の方の変化は、そのあり様が異なります。その理由は、発行市場の機能の中心になっているのが発行に係るルールだからです。このルールは、取引所などの上場規則と証券会社の引受ルールが中心となりますが、制度の継続性の観点から、これらのルールが大きく変更される時は、発行市場に何か大きな問題があった時となるのが普通でした。
 ルール中心の発行市場。そのルールを、今、大きく変える程の問題があるのかというのが本稿のテーマになります。誤解なきよう言いますが、問題があるのでルールを厳しくするという事だけが解決策ではありません。また、ルールである以上、それを決めるのは取引所や証券会社が中心になり、上場企業が遵守を求められるという関係になります。

 現在ある発行市場に係る問題については、以下の様なことが上げられます。

○IPO数が少ない。
過去の新興企業に関する不正会計処理や引受証券の不祥事から、上場予定企業に対する審査を厳格化する方向にありましたが、取引所と主幹事及び監査法人間の関連情報のやり取りを円滑化し、上場までの審査プロセスを明確化しようとしています。また、上場後に小規模な新興企業を支援していく策としては、アナリストレポート作成を支援したり、一部ディスクロージャー負担の軽減なども行われています。
一方、IPO企業の裾野拡大の為の取組みは、ベンチャーキャピタルの投資先のリスト化や、グリーンシート市場の活性化など上げられていますが、関係者が限られて個別の議論となり、IPO裾野拡大の可能性まではまだ距離がありそうです。

○大規模な公募増資などに関して規制がない。
海外の機関投資家などからは、既存株主の了承もなく発行済みの2割を超える公募増資が、取締役会だけで発行されるのは、おかしいのではないかとの指摘があります。しかし、新株の発行も既存株の消却も資本政策に関しては基本的に取締役会に授権されているのが日本の会社法です。発行したいというのは証券会社に止められませんが、ただし、どの数量まで引受けるのかは証券会社の判断ですので、引受ルールにより発行数量を制限することは可能です。

○国内の転換社債市場が縮小している。
国内発行の転換社債(新株予約権付社債)のマーケットは、IFRS(国際会計基準)の影響で新株予約権部分の時価会計処理が必要と考える企業が増えたことや、国内での上場・個人への販売には格付作業が必要なことから、その発行数量が減少しています。つまり、上場企業にとって公募増資よりも負担が重いファイナンス方法となっていますが、反対に既存株主から見て希薄化の負荷は公募よりも軽いと考えられています。また、海外での転換社債発行は格付け不要な場合が多いのですが、株主からみて販売先の投資家層が分かり難く、裁定取引への懸念が払しょく出来ていません。

○小規模な企業の公募ファイナンスが行い難い。
大規模な企業の発行済みの2割の超えるような大規模の公募増資が、市場での問題になる一方、時価総額の小規模な上場企業にとって、現状の公募ファイナンスは行い難いものです。これは、小規模な為に現在国内の転換社債発行に必要な格付けが事実上取得できないことと、小規模な金額の公募増資を引き受ける証券会社数が限られることによります。例えば、時価総額10億円の企業が、2億円の公募増資を行いたいと考えた場合、引受機能が完備された大手証券の全国の販売網でこれを扱うのは難しいと考える大手証券が多いのが現状ではないでしょうか。反対に、中堅以下の証券会社では引受機能が限定されていて、引き受けてとして対応できていないのも現実です。
(主幹事として元引受が可能な証券会社は、資本金30億円以上との金融商品取引法上の規制があります。)

そろそろ、発行市場全体の機能を見直した上で、グランドデザインを行うような抜本的な発行ルールの見直しが必要なのではないでしょうか。
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市場の需給関係から発行市場を考える (1月23日)
株式市場の先行きがどうなるかはマーケットアナリストにお任せして、市場への株式の供給と吸収と言う面から発行市場の機能を考えてみたい。
少し単純化して考えたいので、市場への新株の供給を公募増資、市場からの吸収を自社株取得としたいが、金融危機後の金額ベースの需給は以下の様になっている。

2009年  公募増資 49,668億円(実際は追加発行による売出しもあるので5.3兆円程度)
       自社株取得 8,376億円
       差引き  41,292億円 の供給過剰

2010年  公募増資 33,097億円
       自社株取得 9,099億円 
       差引き  23,998億円 の供給過剰

2011年  公募増資  9,124億円
       自社株取得17,054億円 
       差引き   7,930億円 の吸収超過

この数字からみると、昨年はやれやれと言う感じで、大震災もあり欧州危機の深刻化もあり、市況が低迷した影響で、単純な株式の需給関係は改善している。海外投資家は買い越さなくとも、個人が貯蓄から投資へ資金を替えなくとも、この部分で今年の市場のムードが改善されればと期待したい。
ところで、足元の株式市場は欧州債務危機懸念の一服感からリスク・オンの流れが出来始めているが、これで市況が大きく回復すれば、再び大量の公募増資が始まるのだろうか。

 2009年の公募増資による市場への新株の供給規模は、バブル最盛期に匹敵すると以前指摘したが、1989年の公募増資金額は、58,302億円。実数で2009年より5千億円程度多いが、良く考えればその時の株価水準は、現在の4倍もしていた。バブル直後は、公募増資による市場への新株供給過剰を改善する為に、ファイナンス・ルールが導入されたが、以下の様な概要だった。

○発行数量に関する規制=公募増資なら、発行済み株式総数の15%まで、CB(現在の新株予約権付社債)なら潜在株数相当で20%
○収益性に関する規則=公募増資なら、ROE8%以上か、発行直後にこの数字の達成見込みがあること
(増益基調を引受証券会社が確認することは、現在のエクイティ・ファイナンスでも同じだが、このことを確認した証券会社が、当時の大蔵省や証券業協会に説明しなければならなかった)
○利益の配分に関する規則=全てのエクイティ・ファイナンスに対して、発行後の増配など株主に対して実質的な利益の配分を増加することを約束し、これを公表すること。

これらのファイナンス・ルールは、1996年4月までに全て撤廃され。
今更、ファイナンス・ルールを導入すべきと主張する考えは全くない。しかし、既存株主からみて無節操な大型の公募増資が復活することがないよう、発行市場の規律を守るべきは大手証券会社の責任ではないだろうか。上記のファイナンス・ルール:発行数量、収益の拡大、株主への利益配分の考え方は、市場規律として重要なことだし、そのことは、リスクマネー調達の場としての日本の市場機能を守ることに繋がる。

取引所など流通市場の機能強化も大事なことだが、一方に発行市場機能という大切な仕組みが連動して日本の資本市場が成り立っていることを思い出して欲しい。
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もう一つの大事な市場機能=最近の社債市場とその論点 (11月24日)
世界的なリスク・オフ志向の強まりで、市場はすっかり萎縮しているが、そんな中で東証・大証統合が公表された。取引所統合は、日本の市場機能のインフラの問題なのだが、オリンパス・大王製紙問題もあって、日本の株式市場機能をもう一度考え直そうとする契機になればと、市場関係者ならずとも期待したい。

 もう一つの市場機能とは、国債を含めた債券市場のことだが、こちらは金融機関や一部の金融機関の売買が中心になるので、余りマスコミに大きく取り上げられることもない。しかし、リスク・オフの流れで、日本国債が強含んでいる内に、以前から指摘されている社債市場の機能を、欧米並みに引き上げる事が必要だ。少なくとも、市場関係者自らが日本の社債市場のことを、アジアのローカルマーケットと言っている現状を打開する為には。

 社債市場改革の議論は、もう金融危機後に始まっていて約2年以上経過しているが、今年の社債市場は大震災による原発事故の影響を大きく受けてしまっている。それは、社債(事業会社の債券)の発行残高約62兆円のうち、約四分の一の15兆円以上発行している電力会社が、本年度上期、原発を持たない沖縄電力以外、事実上社債の発行することが出来なかった。

東電以外の他電力への原発事故補償問題の波及、保有する原発の検査後の再稼働問題、国のエネルギー政策の行方など、上半期の政治判断や情勢が大きく影響していたからだが、市場関係者の間では改めて電力債の発行の仕組みや投資の安全性を見直す契機にもなった。

つまり、電力債は一般企業の社債のように無担保で発行するのではなく、一般担保付社債として発行されるので安全な債券だったはずだ。民法上の先取特権(清算などの為の共益費用や雇用関係費用など)を除いて、ローンや通常の損害賠償に優先して弁済されるのが電力債だったが、原子力損害賠償法が成立したので、福島原発の被害者の保険金支払いが電力債よりも優先することになった。

電力債も金融商品である以上、政治的なリスクは完全に排除できないことが明らかになったが、では政治的なリスク以外のことでも、一般担保はちゃんと保全されるのか、若しくは電力債を管理する金融機関(社債管理会社)がちゃんとそのことを主張するのかといった疑問も投資家に生じた。

電力債は、一般担保がちゃんと機能するかどうかといったことだったが、無担保で発行される一般企業の社債は、一体他のローンなどの債務に比べ、どの程度返済順位や条件が不利になっているか分かり難いので、ローンなどの純資産や利益維持など財務上の条項を社債権者などに開示すべきとの意見は投資家に根強くある。
ただし、リスク・オフで国債や高格付債の需要が強いこともあって、東電以外に高格付けを維持している電力債は、流通価格も夏以降回復し利回りが低下、下期には新規の発行も再開されている。

なお、原発の事後処理と保証問題に揺れる東京電力は、約5兆円の社債発行を行っているが、株式ほどではないが大きく売り込まれ5年債の利回りは10%を超えおり、すっかり海外ハイ・イールド債並になっていて、海外格付機関の格付けもBB+(国内格付機関は投資適格のA格を維持)とハイ・イールド債格付けになっている。

一方、社債市場を拡大して行く為には周辺部分の機能充実は必要だと言われているが、社債のデリバティウブとも言うべきCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、日本においてもある程度取引が拡大しているようで、個人投資家の売買も出始めたようだ。ただ、肝心の社債取引の方が閑散としているようで、CDSの取引に比し現物社債の流通が少ない銘柄が多いとの指摘もあり、裁定取引など現物・ディリバティブ相乗効果が出難いとされている。その改善の為には、社債のレポ市場(貸債券市場)の整備が必要なようだ。
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市場を救うか---ライツ・イシューの現在の日本に於ける問題点 (11月15日)
標題は、ライツ・イシュー制度の整備によって、発行市場機能が整備され、大型のファイナンスを売り材料とするような既存株主にとって辛いマーケットから、日本市場が脱却することを願ってつけた。
現時点でのライツ・イシューに係る問題点を、本質的な問題と技術的な問題に分け、なるべく簡単に書いてみたい。

【ライツ・イシューに係る本質的な問題】

○大型のファイナンスが企業の生き残りの為に必要な時があるのは分かるが、といって持分が3割も4割も突然希薄化するのは既存株主にとって避けたいことだ。第三者割当増資でも公募増資でも既存株主には希薄化といったダメージを与えるが、第三者割当に関しては25%以上を行う場合、第三者委員会か株主総会の承認が必要なように取引所ルールなどで実質的に規制している。では、大規模な公募増資なら自由に行って良いのか。この問題点は、海外の機関投資家からも再三指摘されている。

○ライツ・イシューとは新株予約権を使った株主割当増資である。しかし、昔からある株主割当増資と少し違うのは、新株を払い込まない株主は、その権利を新株予約権として他の投資家に売却することが出来る。既存株主は自分の持分の希薄化を完全に防ぐことは出来ないが、かなりの部分のカバーは出来る。少なくとも、ライツ・イシューと聞いて、公募増資の時の様に慌てて売る必要はない。

○ライツ・イシューは昨年3月にタカラレーベンが日本で最初に行ったとされるが、リテール証券(ネット証券を含む)で取扱い可能だったのは三分の一にも満たない。つまり、ライツ・イシューを取り扱うべき証券会社の実務が確立していない。本来は実務の問題は技術的な問題なはずだが、株主や投資家にちゃんとライツ・イシューのことが説明できなければ、業界の本質的問題と言わざるを得ない。

【ライツ・イシューに係る技術的な問題】

●ライツ・イシューは、株主全員に新株予約権を割り当て、それを新株に払い込むか権利として売却するか判断させる必要がある。その為、目論見書を株主及び新株予約権を市場から買った投資家に配布しなければならない。また、新株予約権の割り当てから新株の払込みまで二ヵ月近くあり、その間、もし投資判断に影響がありそうな事象が発生すれば、訂正の目論見書も配布しなければならない。株主が多ければ大変なコストとなる。
これを改善する為、Webの画面で目論見書が確認できるようにしておけば、実際の目論見書配布を免除するように法規制を変えた。

●ライツ・イシューは、株主や投資家の払込みに頼るので、公募増資の様に最初に予定した金額が全て払い込まれるという訳ではない。つまり売れ残り(払込み残り)がでるのだが、売れ残りをそのままにしてファイナンスを終了するのも無理のない考え方だ。
但し、どうしても必要資金を調達したい場合、売れ残ったものを証券会社に販売してもらう。この場合は、事前に株主や投資家に公表しておく必要がある。コミットメント型ライツ・イシューと言われる方法だが、この事が少し技術的問題を複雑にしている。つまり、この証券会社の行為を引受けと定義付けたり、大量のライツ(新株予約権)を再販する時に、5%ルールやTOB規制に掛からないよう法制度を整備しなければならなかった。

●証券会社が、株主や投資家に対してライツ(新株予約権)を行使することに対しアドバイスすることは、法律上の定義が無かったが、これを勧誘行為として行為規制の対象し、投資家の保護を図る制度整備が行われた。ただし、ライツの行使勧誘に対して、証券会社の報酬対価の実務がまだ整備されていない。例えば、新株予約権の払込みを取り扱った証券会社に対し、数%の手数料を支払うというような実務慣行がライツ・イシューの定着の為には必要だと考える。

なお、以上の3つの法制度整備は、金融商品取引法に係る内閣府令などで来年4月1日より施行される予定となっている。

●米国人株主が10%以上いる場合は、少し厄介だ。日本企業であっても、米国人がライツを行使しようとすると米国での開示をしなければならない。ライツ・イシューの盛んな欧州企業は、これを避ける為に、米国人株主の部分はライツを売却して、その代金を米国人株主に配布し直接ライツを行使する判断をさせない。日本企業のライツ・イシューもこれと同様に、米国人株主対策を行えば良いと思うが、実務慣行が確立していない為、会社法で言うところの株主平等原則に抵触しないかとの意見もあった。この意見に対して、ブルドックソースの買収防衛で使われた買収者の新株予約権行使を制限した事例での最高裁判決が、株主間で異なる新株予約権の行使対応の事例として上げられている。法学者の中には、異なる意見もあるかも知れないが、ファイナンスの遂行という目的が正しければ、問題とはならないという考え方も金融庁主催の研究会で示されている。この問題は、かなり技術的問題だと思うが、実務慣行が成立していない為の議論の為の議論の様にも思える。

どの様な問題であっても、本質的なことの解決の為、技術的な問題の整理と解消が行われて行かなければならないが、ライツ・イシューに係る議論もそうあって欲しいと願っている。
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日本市場のファイナンス改善策としてのライツ・イシュー(11月14日)
ファイナンスは資本市場の大事な機能だが、企業が大規模なファイナンスを行う場合、それが公募増資でも第三者割当でも、既存株主の持分が希薄化する。ファイナンスで調達した資金が、企業価値を上げることに使われたとしても、その効果が出るには時間が掛かるのが普通で、現状の市場では大規模なファイナンスは残念ながら売り材料にしかなっていない。
 
とはいっても、企業が生き残りをかけて大規模にファイナンスすることはあるので、出来るだけ既存株主が有利となる方法が望ましい。例えば、今話題のギリシャやイタリアの国債を大量に保有する欧州の銀行は、これら保有する国債の下落に備えて自己資本の増強が必要だが、日本企業の様な大規模な公募増資を行うのではなく、先ず株主に増資に応じる権利を与え、払込みに応じても良いし、この権利を他の投資家に売っても良いというファイナンス方法を取る。これだと、既存株主の選択肢は広がり、ファイナンスと聞いて慌てて売ることもない。所謂ライツ・イシュー(最近の日本国内の議論は、ライツ・オファリングという事が多くなっている)だ。また、米国などでは、大規模な公募増資は、株主総会で判断だれることが多い。いずれも、日本の株主の様に突然大規模な希薄化を突き付けられことなどない。

 少し昔の話になるが、バブル崩壊後日本市場のファイナンスに対しては、これを引き受ける証券会社サイドに一定のルールがあった。例えば、公募増資なら発行済株式総数の15%までとか、CB(現在の新株予約権付社債)なら20%までとかいったもので、ファイナンスした後の増配や株式分割などで株主への利益還元の増加を求めていた時がある。これらのルールは1990年代半ばに撤廃してしまったが、リーマンショック後の2009年2010年と少数の企業による大規模な公募増資が市場需給を悪化させたのは事実だと思う。

先ず、現在の日本の発行市場と、その改善策として期待されるライツ・イシューの概要などをご覧いただきたい。

☆ライツ・イシューについて(平成23年11月版)

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株式市場からの最近の資本調達 (11月2日)
 欧州問題での緊張が未だに緊張の続く株式市場ですが、市場の機能としては企業の資本調達の場という役割り(発行市場機能)もあります。市場での時価を参考に、新たに株式を供給して資金を調達しますが、そのファイナンス方法としては、公募増資・第三者割当・株主割当増資・新株予約権・新株予約権付社債(CB)・優先株式などが上げられます。
この内、ファイナンス直後から市場に新たな株式が供給されるのは公募増資・第三者割当・株主割当増資ですが、既存の株主の希薄化(資本の持分の低下=つまり株価下落の可能性の高まり)があるのは、公募増資・第三者割当に限られます。第三者割当は、本来は業務提携に伴う資本提携(つまり相手に株式を保有してもらう)が中心でしたが、最近は公募増資の際に主幹事証券に販売のバッファーとして割り当てるケースもあるので、市場にインパクトの大きい公募と併せてみる必要があります。
この上半期(4月~9月)は、金融危機後の2年間に比べて市場からの資本調達が大きく減少しました。

☆株式市場からの最近の資本調達

現在の株価水準や市況環境からは、下期も市場からの資本調達が増加することは予想し難い状況で、反対に自社株買いは増加傾向にあるので、市場の需給バランスの好転が期待されます。

但し、発行市場の機能低下は好ましい事でもないので、金融危機後の2年間、バブル期に迫るような調達額となった公募増資や大規模な第三者割当に対して、株主や投資家サイドから問題視されたことを、この発行市場の閑散期に改めて見直し、対応策を講じてこそ、アジアのメイン・マーケットと誇れる市場になるのではないでしょうか。ちなみに、以下の様なことを発行会社が明確にディスクロージャー対応することも、筆者は重要と考えます。
○公募増資=資金使途の明確化
○第三者割当=割当先とその効果

また、一般論としてファイナンス後のディスクロージャー対応の良い企業は、資本調達として成功する場合が多いようにも思います。
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大規模なファイナンス手法として、ライツ・イシュー制度の定着を望む (9月20日)
現在の市場は、ギリシャ危機を発端とする欧州債務危機に揺れて金融危機第二幕の様相だが、南欧諸国の国債等を多く保有する欧州の金融機関は、いずれ大幅な資本増強策を取る事が予想される。今の日本では、ファイナンスと言うと売り材料だが、これは今の日本のファイナンス手法(公募増資や第三者割当)が、既存株主のもっているべき価値を毀損する可能性を示している。この株主価値を下げない、少なくとも持分を希薄化させないファイナンス手法として、欧州やアジアの一部などでの金融機関の大規模なファイナンスに、ライツ・イシュー(最近の公的な議論では、ライツ・オファリングと言う事が多い)を使うことが多い。日本でも昨年初めには、大手銀行のライツ・イシューの可能性が噂されていた。
その後、昨年3月にタカラレーベン(8897)が日本で最初のライツ・イシューを実施し、そのライツ(新株予約権)が2ヵ月弱の間、東証で売買され、そして約94%のライツが行使されてファイナンスは成功した。しかし、その後のファイナンスで、この方法は使われていない。その理由は、株主構成や実務的な手続きにおいて、現状では少し使い難いとされた点があり、この部分の制度改正が現在金融庁主導で進められている。
 今でもライツ・イシューは可能だが、タカラレーベンの様に8000名弱の株主ではなく、株主数が数十万人に及び海外株主などが3割前後もいる金融機関が、ライツ・イシューを使う場合の障害となりそうな事を、現在行政中心に一つ一つ潰しているような感がある。

○米国株主対策
この問題は、正確には米国証取法対策と呼んだ方が良いかもしれない。ライツ・イシューは株主全員に新株を引き受ける権利を与えるが、その中の10%以上が米国株主の場合、日本企業であっても米国での新株募集の為の開示手続きが必要になる。M&A業務におけるTOBの場合も、これと同じ様なことがあるので、通常は米国での開示作業を避ける為、米国株主は応募できない。同様にライツ・イシューの場合、ライツを米国株主にも割当てるが、行使できない前提なので売却するしかない。
実際、欧州企業などのライツ・イシューでは、米国株主にはライツの売却代金を支払って終わるが、日本企業が行った場合、米国の株主はライツを売るしか出来ないが、米国以外の株主はライツを行使(新株に払い込む)するか売るかの選択が出来る。この事が、会社法の定める株主平等の原則上問題ないかどうか、今月初めまで金融庁開示制度ワーキンググループ法制専門研究会で議論されていた。
結論は、問題ないので取引所ルールや証券業協会規則で制度整備するように、とのことだ。

○目論見書のネット交付
ライツ・イシューもファイナンスである以上、株主・投資家に目論見書を交付しなければならない。しかし株主数が膨大であり、かつライツを株主に交付してから払込みの間に重要事実が発生すれば、適時訂正の目論見書の交付も必要になる。株主が数十万人に及ぶなら、これらの目論見書配布作業は膨大な作業となる。その為、発行会社などの負担増が懸念されていたが、本年の金融商品取引法の改正で、これらの目論見書類をネット開示で済むように簡素化している。

○株主や投資家がライツを失権してしまった場合の処置
ライツは新株の払込日直前まで取引所で売買されるが、権利行使されずに失権してしまった場合の方法として、
①失権したライツをそのままにしておく=株主・投資家が行使した分だけのファイナンス
②失権したライツを、一旦証券会社が買い取り、証券会社がその分を一般投資家に販売する=コミットメント型ライツ・イシュー
がある。筆者は、別に無理をせずにライツが行使されたものだけのファイナンスで良いのではと考えるが、企業にとって決められた資本額を調達したいと考えた時、②の方法を使うことが想定される。しかし、今の日本で②の方法を使おうとした場合、もしそれが発行済みの5%以上を超えていた時にTOB規制や大量保有報告義務に証券会社が抵触しないことの確認が必要だった。結論は、簡単に言えばそれは証券会社の引受行為なので、ルールには抵触しないでしょうということになっている。

この様に行政上の確認を重ねていくことも必要かもしれないが、ライツ・イシューで今最も求められていることは、証券会社の実務的態勢整備なのではないだろうか。
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敢えて個人投資家の投資対象として国内債券市場を考える (8月24日)
日本の国債が、ムーディーズによってAa2(AA)からAa3(AA-)に格下げされた。米国債格下げの時の様な影響が市場に出るか分からないが、取りあえず円は売られていなようだ。直接には国債の格下げなのだから、円よりはJGBと呼ばれる日本国債が売られても良いように思うが、こちらは株式市場と異なりシッカリした値動きだ。そもそも、個人投資家が日本国債を始め、低金利の日本の債券を投資対象とする為には、何が必要なのだろうか。敢えて、夏休みの宿題の如くに考えてみたい。

○投資ニーズに合った品揃え=債券なのだから、価格・期間・利回り・信用力(格付けなど)・ネーム(個人投資家の受ける発行体のイメージ)などの情報が整理されて、個人投資家に提供されていなければならない。つまり、流通市場の状況などが、FX取引における為替レートの様に、個人投資家レベルでも容易に入手できる必要がある。但し、日本の国債が今いくらか聞かれると、指標となる10年物の利回りとその先物の価格を答える事が出来るが、トヨタの社債が今いくらか同様に問われると、多くの金融商品業者は答えにくいかもしれない。その為に、個人投資家の投資に適した日本債券の指数整備が別途必要かも知れない。

○デリバティブ=個人投資家の取引量が増加する為には、個人も参加可能な先物・オプション取引などのデリバティブが必要だが、日本の債券市場は現段階で流通市場整備が課題なので、デリバティブを論じるのは少し早いかもしれない。ちなみに、国債に関しては東証において先物とそのオプションが上場されているが、個人投資家の取引は殆どない。社債ではないが、発行企業の信用力に関してデリバティブとしてCDS(クレジット・ディフォルト・スワップ)がある。しかし、このCDSは主要金融機関同士の相対デリバティブ取引なので、個人は利用できない。敢えて、個人利用可能な債券関係のデリバティブを上げれば、CFD取引があるが、現状では日本の国債先物指数に関するものだけが取引可能だ。

○レバレッジ取引=債券取引は、通常額面1億円単位と言われるが、外国為替市場におけるFX取引の様に、もし個人が債券市場に容易に参加しようとするなら、少額の証拠金で取引参加出来るので、CFDの様なレバレッジ取引(債券のレバレッジ限度は、証拠金の50倍以内のレバレッジまで可能)が、現実的な個人の取引手法かかもしれない。しかし、この債券関係のCFD取引を扱う金融商品取引業者は未だ数社に限られている。

○売買インフラ=日本国内の債券も完全にペーパレスになったのだから、業者間の取引単位や決済日の従来の取引慣行に従う必要はない。最低額面での取引や、即時の決済も可能となるので、例えば購入した債券を担保(代用有価証券)にFX取引やCFD取引の証拠金取引・株式信用取引の保証金とすることも可能だ。むしろ問題は、債券のリアルタイムな価格情報の入手が、現状の為替や株式に比べて困難な点にある。国債・社債に係らず日本の代表的な債券銘柄・指数の価格情報のインフラ整備が待たれるが、日本証券業協会のワーキングにおいて、諸外国の制度を参考に社債の売買価格情報を投資家も利用可能とするシステムの検討が2年近く行われている。

 個人投資家を抱える証券会社の多くは、何も日本の債券を個人に売買させなくとも外債を販売すれば良いといわれるだろうが、例えば、日本国債の売買をFX取引に様に多様な個人投資家が取引参加することで、国債の背後に財政問題・信用力問題・金融機関の運用の問題など、国民レベルの議論が拡がることも期待できるのではないだろうか。
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日本の発行市場について (8月17日)
一般論として、日本企業の公募増資が儲からないものになって随分久しい。本当なら、企業が思い切って設備投資やM&Aなど行う為に、既存株主の希薄化も顧みずに行うのだから、もっと成長期待が先行しても良い。しかし、今だと増資発表は売り材料となることの方が多い。
また、国内の個人投資家には多めに配分しなければならないと言った慣行やルールが有ったりする。これなどは、公募が儲かった時代の名残りなのだろうが、今のルールとして現在の日本市場に合わないように思われる。

 何故、発行市場のルールが昔のままなのだろうか。日本の流通市場の方は、海外投資家の売買比率増加や高速化取引で、その取引の有り方が変わりつつある事が日々市場の参加者に実感されるが、こと発行市場の事になると、投資家はごく稀にあるファイナンスの時にしか接しない。それと同じ様に、流通市場に関係する証券会社は300社近くあるが、発行市場に於ける実質的な引受活動を行う証券会社は外資も含めて10社に満たない。つまり、発行市場の事を考えるべき市場関係者は流通市場に比べ著しく限定されている。

 しかし、そろそろ日本の市場全体の機能から見て、発行市場の機能改善を議論する時期に差し掛かっているのではないだろうか。

☆日本の発行市場の問題
 
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ファイナンス事例を考える:エルピーダメモリの場合 (8月10日)
資本市場の機能をやさしく言うと、透明で公平な株式などの流通の場の確保と、上場企業の資本調達の機能を守ることだ。教科書的には、資本市場は流通市場と発行市場から成り立っているということだが、流通市場の方はマスコミでも常に取り上げられるものの、発行市場の方は企業がしょっちゅうファイナンスをする訳でもないので、注目されることも少ない。そして、発行市場の関係者も少なく、実質的には取引所と一部証券会社に限られている。しかし、公募増資などのファイナンスの影響は、その銘柄には大きな影響を及ぼすので、株主や投資家の判断を大きく変えることもある。一般には余り注目されない発行市場の仕組みだが、今は少し古くなっているのかも知れない。少なくとも、ファイナンスが買い材料とならない今の発行市場のあり方には問題が多い。直近のファイナンス事例として、8月月初に払い込みが行われたエルピーダメモリ(6665)のファイナンス事例から、その問題点を考えてみたい。(※以下は、個別銘柄の投資判断には利用しないで下さい。)

【希薄化の問題】
・公募株式による増加分
A:国内募集分1827万株、B:国内主幹事証券への第三者割当分273万株
C:海外募集分3392万株、D:海外主幹事への追加割当分508万株
以上の合計で、6000万株になり、その時点の発行済株式総数2億1451万株に対して、28%
・新株予約権付社債(CB)による増加分
発行額275億円に対して、転換価格962円なので2858万株の潜在株なので、13.3%
以上の総合計で、希薄化は41.3%

【株価の下落問題】
・公募公表前日株価(7/8)901円
・公募公表1ヵ月前株価(6/10)1000円=▼10.9%下落
・公募公表1ヵ月前株価(5/10)1283円=▼42.3%下落
・公募公表後値決日までの株価=7/11(終値:787円)→7/25(終値:770円) この間の株価下落率 ▼2.2%

【新株の発行価格の問題】
資本に組み入れられる価格715.2円だが、投資家が新たに払い込むのは746円、この差額は新しい株主が引受証券会社に約4.3%の手数料を自ら払ったことになる。また、値決日の終値とこの746円の差額約3.2%分は、市場での流通価格より有利にして新株の募集をし易くするものだ。結果として、旧来の株主からみると、合計で7.5%も市場価格からディスカントされて新株が払い込まれたことになる。

【空売りの問題】
 個人か行う空売りは信用取引によるが、同銘柄の直近の売残高は僅か14万株(8/9時点、買残高は1876万株)に過ぎない。これに対し、金融危機後始まった空売り報告(発行済株式総数の0.25%以上、誰かから株を借りて空売りした場合の報告義務)による最近(8/5日東証公表分)では、329万株分ある。ちなみに、空売り株数の推移は以下のようになっている。
・値決日に近い日=7/29報告分 321万株
・公募公表日に近い日=7/8報告分 513万株
・公募公表の一ヵ月前程度=6/10報告分 124万株
・公募公表の二ヵ月前程度=5/13報告分 141万株
ちなみに、公募公表後の空売りに対しては公募株を割り当てないよう法規制の改正予定となっているが、欧米機関投資家からは、公表前のファンド等による空売りの可能性(もしあれば、インサイダー取引)を指摘されている。

【ディスクロージャーの問題】
発行企業による公募公表前の情報管理、公表後の情報提供が非常に重要になっている。
・5/12 決算発表時 主力商品のDRAMの価格変動が激しい為、通期の業績予想はないが、4~6月期予想として出荷ベースで2~3割アップ予想
・7/11 公募公表時 資金使途は広島工場の設備投資、 なお4~6月期の出荷ベース増加を2~3割から1~2割へ下方修正
・8/8  第1四半期の決算発表 4~6月期の出荷ベースは15%増加、7~9月期は約10%の増加を予想

 以上の問題全般に言えることだが、一般の投資家や株主にも分かり易い言葉、実態にあった言葉の定義、使わられる言葉の統一性など、発行市場は関係者の言葉使いの改革から実行すべきと思う。

 
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ファイナンス銘柄は儲かるのか (8月5日)
今だと、ファイナンス(公募、公募CB)の発表を聞いて、取りあえず空売りし、値決め日以降に買い戻すとある程度の収益が期待できると思う投資家は多いだろう。株主なら、この間の短期的下落に耐えるか、単価を下げるために一旦売って公募株取得等で買い戻すオペレーションをするかの選択になる。しかし、大規模なファイナンスは、既存の株主には大幅な希薄化を起こす弊害があるものの、その企業が新たなる事業計画に沿って大規模な設備投資や大型のM&Aを行う為に行うはずなので、将来の企業価値(つまり株価)増大に期待できるはずだ。少なくとも企業が示している資金使途の効果が期待できるものなら、公募株などは儲かるという期待も大きくなる。バブル期も大量のファイナンスが行われたたが、公募株は発行直後からの上昇期待が強かったので、個人投資家相手の営業店においては、公募株は得意客へ率先して渡す様な扱いだった。

この為に、日本証券業協会の自主規制ルール“有価証券の引受け等に関する規則”においては、「個人投資家等への広く公平な消化を促進し、公正を旨とした配分を行う」(第31条:公正な配分)とあり、公募増資などは、国内の個人投資家への配分を6~7割と厚くする慣行が引受証券会社で行われていた。

 しかし、これは公募株なら必ず儲かると言われていたバブル時代(断定的表現はその当時の業界評価)の規則の名残りで、もう20年以上も経っている。その間、日本の発行市場で何が起きたか辿ってみると下記の様な主な動きがある。

・1989年:公募増資のピークで年間発行金額が、5.8兆円(227社)。

・1990年4月:公募増資が事実上停止(大蔵省の行政指導)

・1994年4月:公募増資再開。但し、発行企業はROE10%以上とする発行企業のガイドラインと、引受証券会社が、発行企業に対して引き受ける公募株を発行済株式総数の15%まで制限したり、配当性向を30%以上とすることを要請する利益配分ルールがあった。

・1996年4月:上記のガイドラインやルールは撤廃され、完全自由化された。

・1990年代後半から、大型の公募増資(100億円以上の調達)では、国内・海外同時募集が行われるようになったが、公募増資公表前から海外機関投資家のニーズを探るソフト・ヒアリングという慣行が一般化した。これは事前に海外投資家のニーズを知ることで、海外販売分の数量的目途をたてる為とされていたが、昨年欧州などの機関投資家から、この慣行で事前にファイナンス情報がヘッジファンドなどに漏れ、公募公表前から空売りされている可能性があると指摘されている。

・各取引所に新興市場が整備されたことから、2000年代前半を中心にIPO(新規公開)ブームが起きる。この時、人気の高かったIPO株などが個人投資家に広く行きわたるように、引受証券会社は原則として10%以上を抽選して配分するルールを証券業協会が定める。(ルール制定は1997年)

・2009年、バブル期に匹敵する金額5兆円以上が公募増資され、2010年も3兆円以上と高水準の大型公募が続いている。本年は、減少が見込まれるものの、復興需要により、来年以降再びファイナンスニーズが増加する可能性がある。

 長々と日本の発行市場の沿革を書いたが、今、このファイナンスに関する個人投資家への重点配分を計った“公正な配分”のルールを見直すと言う。日本証券業協会が関係者の議論を経て、年内に見直し、国内機関投資家への配分も柔軟に行えるようにする目的のようだ。

20年来のルールを見直すというのは良い事だが、それで公募株の魅力が増したり、海外投資家に指摘されるような日本の悪しき発行慣行が是正されるのだろうか。そして、個人投資家から見て、公募株は買いという機運が高まるのだろうか。

日本の発行市場は、制度疲労を起こしかけているのかも知れない。
 
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期待に応えられない市場:グリーンシートの場合 (7月27日)
 新興市場の活性化の議論の時、必ず出てくるものにグリーンシートがあるが、一般の投資家には余り馴染みがないので、少し説明しておきたい。

 グリーンシート制度は、未公開株の売買で唯一証券会社が投資家に勧誘することが出来る制度である
(※勧誘できないものは、証券会社は実質的に取り扱わない)。別に未公開株でも売買することは可能だが、証券会社が勧誘できる根拠は、日本証券業協会の“グリーンシート銘柄及びフェニックス銘柄に関する規則”による。この制度は,1997年7月から始まっているが、一定のディスクロージャーが行える企業で、かつ証券会社が売買の気配値を継続的に出すことで、一般の投資家も売買することが出来る制度となっている。現在、56銘柄が取り扱われているが、新興市場議論の際には、新興市場への株式公開(IPO)銘柄予備軍として期待されている。実際、過去には11銘柄が新興市場への上場を果たしていて、新興市場でのIPO増加の裾野拡大の為、このグリーンシートを活用できないだろうかというのが、金融庁のアクションプラン(2010年12月)にも載っている。

 しかし、グリーンシートそのものには、現在多くの問題がある。

●制度に参加する証券会社が極端に少ない。
 どんな金融商品を取り扱うかは証券会社の自由だが、多くの証券会社が新興市場株を含めた上場企業の株式を取り扱っているのに対して、このグリーンシート銘柄を取り扱う証券会社数は、僅か9社に限られている。その証券会社も、全てのグリーンシート銘柄を取り扱える訳ではなく、銘柄毎に取扱い可能な証券会社が限られる。なお、ネット証券及びネット取引で対応可能な証券会社は、現在のところ無い。

●企業の株価水準が分かり難い。
 投資家にとって最も重要なのが価格情報だが、いくらが適正な株価か、非常に分かり難い。銘柄をカバーするアナリストがいないのはしょうがない事かもしれないが、全体的には売買が成立するのは稀で、市場の実勢価格が分からない。制度としては、取り扱う証券会社が気配値を提示しているが、売りか買いどちらか一方の値段なので、その気配値の背景や根拠などが、一般の投資家に分かり難い。

●売買のインフラが不十分である。
 前日の気配値は協会のホームページ知ることが出来るが、今日現在の値段を知るインフラが無い。(昨年5月まで専用のPTS=取引システムがあったが、現在は稼働していない)。また、上場株式と異なり株券が電子化されていないので、現物での決済となるが、このことが取り扱う証券会社の負担を重くしており、投資家のコスト増にも影響している。

●制度に参加する企業のファイナンスには余り役立たない。
 取り扱う証券会社の募集能力にもよるのだろうが、“拡大縁故募集”といって制度に参加する企業自らが増資の引受先を探し、新株の払込をお願いしながら公開されるケースが多かった。その為、グリーンシートに参加した後の公募増資が出来ない場合もあり、参加企業の最大の不満は、資本市場として企業の資本調達に余り役立っていないことだった。

●ディスクロージャーの仕組みはあるものの、企業には負担が重く、投資家には不十分となっている。
 一般の未公開会社は、株主数が500名以上とならなければ、法律上の開示義務(有価証券報告書などの提出義務)を負わない。しかし、グリーンシート制度参加企業は、有価証券報告書の様式に準じて作成される会社内容説明書を作成しなければならない。この作成は年1度なので、企業活動に変化があった場合の情報開示は、企業の自主的な取組みに委ねられる。一応、TDnet(取引所の情報開示システム)は使えるが、取引所の適時開示ルールが適用される訳ではないので、企業自らの情報開示に株主や投資家は頼ることになる。

以上のような問題も含めて、グリーンシートの抜本的見直しは、来年3月を目途に行われる。こちらの方は、期待して良いのかも知れない。
 
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新興市場の基本的問題をやさしく考える (7月25日)
私達は大震災と福島原発事故を経験して、断片的に情報が出されること、情報の基準が一定しないこと、そしてその情報に誰が責任を持つかはっきりしないこと、それらが聞く人を不安にさせるという事を経験しています。

ここ何年間も業界内で議論されている新興市場の問題も、多くのことは、この情報が投資家に対して持続的に提供されない事、情報の基準が不安定なこと、情報提供の責任が曖昧なことにあります。勿論、この情報の中心にいるのは新興企業そのもののディスクロージャー(情報開示)ですが、情報の中には価格に関するものもあります。

 現在、昨年12月に金融庁から示されたアクション・プランでは、新興市場等の信頼性回復・活性化策の内容の具体化に向け、6月下旬工程表が公表されており、以下の様な新興市場の情報に関する問題が指摘されています。

①新興企業の発信する情報は、十分でかつ信頼できるものなのか。
新興企業に限らず、有報など開示書類の虚偽記載が問題となりましたが、本来開示資料をちゃんとチェックすべき監査人(公認会計士)に関して、上場会社の監査人としての専門性強化を求めています(上場会社監査事務所制度)。また、監査人が主幹事証券や取引所との情報共有を促す仕組みも、9月までに検討を始めるとしています。
 新興企業自身が発信する情報も、もっと充実させるべきとして、取引所が新興企業のリスク情報の類型化に必要な基礎データの整理を行い、公表することで、企業からの情報発信量を増やすべきとしています。

②もし、新興企業が発信する情報が、投資家にとって十分でない場合、サポート体制は整っているのか。
 新興企業が自社の情報開示を積極的に行うのが最も好ましいのですが、市場ルールに慣れていない為、情報開示が充分でない場合、どの様にサポートしていくかが問題です。IPO(新規上場)の際の主幹事証券会社が一定期間支援するべきとしていますが、IR活動を通して開示することを徹底して指導すべきとの事のようです。また、アナリスト・レポート作成・公表活動を取引所が支援していく策も検討されています。

③新興企業上場数拡大の為には、何が必要なのか
 概ね3つに分けられます。一つはIPOの裾野拡大、二つめは現在の新規上場時の障害の撤廃、三つ目は新規上場後のメリットの明確化です。
 一つ目の裾野拡大については、グリーンシート市場の活用促進と、ベンチャーキャピタルなどが出資しているリストの共有化が検討されていますが、正直に言って、アクション・プランやその工程表では、この部分が最も心もとなく思えます。二つめについては、上場時の審査プロセスが企業側にも分かり難いので、これを分かり易くするということのようです。
 3つ目は、アクション・プランにはありませんが、新興企業が資本市場の機能を使う最大の目的は資本調達ですから、上場時及び上場後のファイナンスということになります。この問題に関しては、特に公開時の価格設定が重要な問題となってきます。
 
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ライツ・イシューは証券会社のビジネスも増やす (7月21日)
☆ライツ・イシューのメリット

 資本市場は、流通市場と発行市場が両輪です。といっても、一般の投資家は頭では理解していても、実感として余り感じないかもしれない。いや、一部を除き多くの証券会社も、実は同様かもしれない。
 それは、発行市場=上場企業のファイナンスが一部の大手証券と外国証券に機能集約されていて、その他多くの証券会社がファイナンスには殆ど関与しないからだ。本来、流通市場と発行市場を両輪として、市場の利用者である投資家と企業に、その市場機能を提供していくべき実行者の証券会社そのものが偏っている。その事が、日本の市場全体の歪みとなっているかも知れない。ファイナンスと聞けば空売りを仕掛けたり、市場の流通量を考えない公募増資が強行されたり、ファイナンスの情報管理が甘かったり、証券会社そのものが、どちらかの機能に著しく偏っている弊害が出始めているようにも思う。
 もっとファイナンス業務に携わる証券会社が増えるべきだと考えるが、ライツ・イシューはそのファイナンス・ビジネスそのものの増加を証券会社にもたらす。
 但し、現時点では残念ながら証券会社のライツ・イシューへの取組みや態勢整備は、余り整っていない。

 
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ライツ・イシューは株主の選択肢を増やす (7月20日)
 大震災からの復興の為、前向きなファイナンスが今後増加すると思われるが、大規模な公募増資やCB(新株予約権付社債)の発行は、既存株主にとっては短期的にはダメージである。ファイナンス公表後の株価下落に耐えなければならない事を指すが、その背景には、企業の増資の目的が、投資家や株主に理解され積極的に評価されるのに時間が掛かる場合が多いこと、また企業によるファイナンス公表時の資金使途の説明が、充分でないことも理由として上げられる。

 勿論、既存株主であっても一旦株式を売却して、安くなった公募株を購入するという選択も可能だ。公募株は市場の時価より数%デスカウントして発行されるので、この方法を使えば株主は保有単価を引き下げる事が出来るかもしれない。事実、銀行株の公募増資ではこの様な既存株主によるオペレーションが相当数行われていた。しかし、これは何かおかしい。(実際はないが)もし全ての株主がこの様な行動をとったと仮定したら、既存株主の持分は増えず、市場では既存株主が売却した株式が潜在的な余剰株式として長期の売り圧力になってしまう。また、必ずしも公募株を株主が、売った分だけ公募株を入手できるか保証されていない。

 よって多くの既存株主は、公募で調達された資金が事業拡大や再構築に使われて、将来企業価値が増大することを期待しつつ、短期的な株価下落に耐えるという選択肢をとる。(選択肢というより、我慢かもしれない)

以上を簡単にまとめると、公募増資などの際、株主が取り得る行動は、
A=そのまま保有し続ける。
B=売却する。
C=公募株取得する。
以上の3つの単独か、若しくは組み合わせとなる。

 一方、ライツ・イシュー(ライツ・オファリング=新株予約権の株主割当)は、上記の3つの選択が次の様に変わる。
A”=そのまま保有し続けで、ライツ(新株予約権)を受け取る。
B”‐1=ライツを受け取る前に売却する。
B”‐2=ライツを受け取るとった後、ライツのみ売却する。
B”‐3=ライツを受け取るとった後、ライツと株式を売却する。
C”‐1=受け取ったライツを行使して、新株を取得する。
C”‐2=市場から買ったライツを行使して、新株を取得する。
以上の6つの単独か、組み合わせの対応となり、公募増資等に比べ格段に選択肢が増加する。

2割以上新株や潜在株式が増加して既存株主の希薄化が問題となる公募増資でも、ライツ・イシューでも、新株を市場に流通させるということでは同じ行為だが、ライツ・イシューの場合、既存株主は少なくとも自らの選択で、保有する株数相当分の新株を手に入れることが出来る。公募増資の場合は、自ら選択ではなく、引受証券会社の新株配分の裁量に頼らなければならない。

 また引受業務の集約化が進んだ結果、現在、公募増資等企業の大型のファイナンスを実務的に取り扱えるのは、大手5社と主要な外国証券に限られていて、300社弱ある証券会社の殆どが企業のファイナンスにタッチしない。しかし、日本株を取り扱う証券会社であれば、上記にライツの対応に関して既存株主のみならず投資家に助言することも可能で、ライツ・イシューの普及が、ファイナンスに関する証券会社のビジネスの幅を拡げる可能性もある。この事にも期待している。
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海外株主=公募増資の日本仕様を怒る (7月19日)
 公募増資の発表を聞いて、直ぐその銘柄を売る。と言うのが、今の市場のトレンドで、この事に良い悪いはない。その売りが、保有する株式の売却であっても、誰かから借りて売る売却でも(許されている空売り)、公募増資の報を一つの売り材料として売却するのは、其々の投資家による投資判断の結果に過ぎない。デイトレーダーでも、裁定取引を行うヘッジファンドでも、投資家としてのこの行動は守られなければならない。一方、大量の公募増資を行う企業も、それが自社を大きく変える事業目的に沿う資金調達なら、株主から授権されている株主の範囲でファイナンスを行うことが取締役会に任されている。

 流通市場では、どの様な投資家であっても同じルールで扱わなければならないし、発行市場でのリスクマネーの調達機能も阻害してはならないが、問題はこの流通市場と発行市場を繋ぐ部分が、何らかの制度疲労を起こしているのでは思われることだ。勿論、その中心に引受証券会社がいる。

 先月25日、グローバルな投資家の業界団体であるアジア・コーポレート・ガバナンス協会(ACGA;Asian Corporate Governance Association)は、金融庁に対して、日本の上場企業の増資の在り方について要望をおこなった。その中で、ここ数年の日本企業の増資の在り方は、グローバルに長期投資を行う投資家にとって問題があり、増資に絡んだインサーダー取引の排除と既存株主の希薄化対策が、日本の資本市場でも必要だとしている。

 金融庁や取引所の、大規模な第三者割当(希薄化率が25%以上となる)を実質的に規制する対応策や、ライツ・イシュー(ライツ・オファリング)に対する推進策は、一定の評価をしながら、日本での公募増資の在り方については、特に引受証券会社に対して厳しい目を向けている。引受証券の行うソフトヒアリングという海外投資家への事前需要調査を通じて、大型の公募増資に関する情報が、増資の公表前に一部の裁定取引を行うファンドマネージャーに流れて、インサイダー取引を引き起こしている可能性があることや、引受証券にとって大事な顧客である一部の投資家に公募株が重点的に配分され、既存株主が希望する株数を取得できない事などが指摘されているが、その改善策として次のような事が提言されている。

○引受証券会社は、公募株を割当てたリストを増資企業に提出すべき。これによって、企業の目的に沿わない投資家(短期売買を行うファンドなど)への大量配分は制御される。また、このルールは法改正を伴わない証券業協会の自主規制で変えられるとしている。

○発行済株式総数の10~20%を超える公募増資は、株主総会での株主の承認を必要とし、既存株主の権利を守るべき。

○公募の期間を現在の7日~15日から、多くても5営業日以内に短縮して、投機的なファンドが空売りを仕掛けて機会を減少させるべき。

○空売りをした投資家に対して、シートカバーの為の公募株割当を禁じるべき。(この部分は、現在法改正に向けパブリックコメント期間中だが、対象の空売りは公募発表から値決め日までに限られるのが金融庁案)

そういえば、20年以上前になるバブル期にも大量の公募増資やCB発行が問題になり、旧大蔵省による発行規制・協会による引受判断の規制が行われたが、1990年代半ばには全て撤廃された。このような需給調節を目的とする規制は二度と望まないが、せめてグローバルな長期投資に合う発行市場ルールを考え直す時にきているのは事実だろう。怒っている時は、まだ期待している時でもある。
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ァイナンスは買いなのか売りなのか=文脈で考える(7月18日)
 先ず、なでしこジャパンが勝てて本当に良かったと思います。なでしこの皆さん、たくさんの感動をありがとうございます。多くの日本国民が受けた感動は、金メダルという結果だけからではありません。試合中は、米国の猛攻に耐えて、そして粘って、先行されても2度追いついたこと。運命のPKで、それぞれが素晴らし仕事をされたこと。監督が、この小さい娘たちががんばったとコメントしていたこと。そして、なでしこの皆さんの笑顔。これらがみんな繋がって、大きな勇気を日本国民に与えてくれました。
 野に咲ける、やまとなでしこ、わが誇らしさ

 日本の企業も、金融危機後、そして大震災後、生き残りをかけて必死に頑張っていますが、その為に必要なリスクマネーをファイナンンスで市場から調達すると言うのは、株主や投資家にとってとても重要な事です。つまり、このファイナンスでこの銘柄は買いなのか、売りなのかの判断を迫られる訳です。

例えば、救済型や事業戦略強化の為のファイナンスは、通常第三者割当増資で行われますが、大規模な増資であれば、既存株主の大幅な希薄化を招きます。しかし、救済や事業戦略によって大きく企業価値の上昇が期待できるのであれば、結果的には自分が保有する分の価値は上昇すると考え、株主や投資家は買い材料と判断します。この判断の背景には、第三割当増資を受ける新たな株主は、事業戦略強化が目的なので、直ぐには株式を売却するはずがないといった株主・投資家の考えがあります。

 一方、公募増資に関する現在の市場の反応は、先ず売り材料として捉えるというのが一般的です。これは公募増資によって株主の希薄化が生じること以上に、公募直後の市場の需給関係が悪化すると投資家が読むからです。公募増資による資金調達で事業戦略が強化されれば、企業価値は向上するかもしれませんが、この将来への期待より、目先の需給関係悪化を売り材料視する背景として、次の様なことが考えられます。

・金融危機後、大規模な(発行済みに対して大きな割合)公募増資が多くあり、その殆どは公募増資前後大きく値を下げる傾向が続いています。つまり、公募増資=売りのトレンドが定着しているということです。
・公募増資が前向きな投資であっても、公募時に記者発表文において、僅か数行で株主や投資家に企業価値向上を説明することに無理があります。企業側が、事前にIRや、事後の企業説明会で、公募増資で調達した資金の利用目的や状況を説明してこそ、企業価値が向上する文脈が理解できるでしょう。

筆者は、市場関係者なので、ファイナンスは企業価値を向上させる買い材料と考えますが、それを投資家や株主が理解できるよう、企業はファイナンスの文脈(=ストーリー)を示す必要があり、またその支援をしていくのが、引受証券会社ではないでしょうか。
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ファイナンスと自社株取得:資本市場の入りと出るについて(6月28日)
資本市場の機能は、
【流通市場】株式や債券などの売買の場を広く投資家に提供すること=有価証券の流動性の確保
【発行市場】企業の資本(資金)調達を可能とする場の提供
に分けられるが、今回の金融危機以降、出来高の細る流通市場に比べて、発行市場の方は調達金額ベースでは高水準だった。特に株式の公募増資は、バブル期以来の水準となっているが、企業数は少なく、結果として業界を代表するような企業の大型のファイナンスが相次ぎ、短期的には市場の需給関係に大きな影響を与えた。今後も、震災需要対応などで、高水準のファイナンスが予想される。
 一方、上場企業の自社株取得は、金融危機以降大きく縮小していたが、上場企業の手元資金は増大しているので、今後の増加が期待される。
 この市場全体の入りと出、即ちファイナンスで供給される新株式と自社株で吸収される株式それぞれの動向が注視される。

☆ファイナンスと自社株取得の状況
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大規模ファイナンスとしてのライツ・イシュー事例:タカラレーベンの場合 (6月23日)
最近、日本語の定義が曖昧になっていて、“新体制”というのは、普通ならトップを替えて新しい体制を作る事を言うが、トップ以外を替えて行うことも含むようだ。普通の個人の感覚からすると、トップが替わらなければ、体制は新しいと言えないと思うが、この様な曖昧さは子供の教育に良くない。

 大規模ファイナンスの“大規模”についてはもう少し質の良い曖昧さだろう。この大規模ファイナンスとは、大企業の何千億円を超す公募増資を指すだけではなく、大規模なダイリューション(既存株主の持分の希薄化)を引き起こす公募増資や第三者割当増資を指す。日立やメガバンクが数千億円調達することを指すだけではなく、時価総額90億円程度の会社が50億円程調達(希薄化率約36%)するような場合も含む。この後の方の資本調達を公募増資で行えば、普通の大規模ファイナンスだったが、タカラレーベンの場合、大規模なダイリューションを起こさないで、大規模な割合で発行株数を増加させるような大規模ファイナンスを昨年3月~5月に実行した。所謂、日本最初のライツ・イシューである。
(更に日本語を曖昧に使い、読まれている方々には申し訳ありません)

このタカラレーベンのライツ・イシュー事例を、今一度見直してみたい。

☆ライツ・イシュー事例:タカラレーベン
 
・昨年3月5日、株価559円の時に、株主全員に1株につき1ライツ(1株300円で新株を購入する権利=新株予約権)を付与した。
・そのライツは東証に上場し、昨年4月1日から5月23日まで33日間売買された。
・同年5月末までに、95.7%のライツが行使され47.5億円が調達された。
・失権(未行使)となったライツは71万ライツで、全体の4.3%。
事実としてはこれだけで、初めてのライツ・イシューは大規模ファイナンスとしては成功したと言えるが、株主にとっては希薄化を起こさずに選択肢が広がった意義が大きかった。

【通常の大規模な公募増資の場合の株主の選択】
A:保有株式を一旦売却(値決めにかけて下落する場合が多いので)
B:そのまま保有し続ける
A´:Aの後、値決め後、買い戻す。(若しくは公募株を購入。但し、公募が人気化した場合には購入できないリスクもある。また、新株を販売している証券会社に口座がなければ、申込みが間に合わない場合も。)
※A、A´、Bの何れの場合も、大規模な希薄化は起きる。

【ライツ・イシューの場合の株主の選択】
A、A´(ライツ・イシューの場合、値決めがないので権利落ち後の買戻し)、Bの各選択は可能だが、加えて、
C:割当られたライツを、時期を見て、市場で売却
D:ライツを保有し、権利を行使して新株を購入
※希薄化は原則的には起きない。


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大規模なファイナンスが成功するには (6月22日)
日本の企業は会社法(2005年:商法→)によって成り立っているが、この会社法では企業の資本政策に関して、定款にある程度のことを記載しておくと、取締役会でかなりの事が出来るようになっている。例えば、発行済み株式総数の4倍まで可能な授権株数の範囲であれば、新株を発行することや、反対に自社株取得枠の設定を任せること、種類株の概要を定めておけば具体的な発行が決定できることなど、取締役会に授権された資本政策上の権限は大きい。だから企業が大規模なファイナンスを行うことは、法制度的には何の問題もないのが現状だが、さすがに株主の権限や価値を大きく損なうようなものは、実務的に制限すべき(禁止するということではない)という考え方が主流になっている。
例えば、大規模な第三者割当で支配株主が変わるようなものは、本当に株主の了解が無くて良いのかとの問題から、取引所ルールにおいて一昨年の8月から、25%以上希薄化する場合は、独立した機関の意見書か株主総会決議が必要としている。一方、同じ大規模なファイナンスでも公募増資はどうかというと、これを実務的にも規制するものはなく、全てを市場の評価に委ねるということのようだ。

 この事自体は正しいと思うが、既存株主が持分の希薄化と共に、株式の下落(株主としては、一時的であって欲しいが)を受け入れなければならない。この株主が受けるデメリット対して、企業がどの様なメッセージを発信していくかが非常に重要な事だ。その結果が、大規模な公募増資の成功か否かのキーになっている。

○日立製作所(6501)は、2009年12月に希薄化率34%以上となる大規模なファイナンス(公募増資と新株予約権付社債(CB)の発行を実施。公募価格(230円)
【資金調達の目的】(記者発表文より)
・社会イノベーション事業の中心となる情報通信システム事業および社会インフラ事業ならびにこれらを支える高機能材料事業等において、様々な施策を実施することにより、収益を安定的に増加させていきます。
・撤退・売却を含めた事業の再編を通じて安定的な高収益構造の確立を図っています。
・グループ会社間の連携を強化するとともに、より緊密な資本関係を構築し、事業戦略およびその他の方針の速やかな実施を可能にすることで競争力および収益性の向上を図ります。具体的には、現在、社会イノベーション事業の中核となる上場子会社5社を完全子会社とすべく必要な手続を進めています。
以上が、ファイナンス時点での資金使途に関するディスクロージャーだが、その後の日立の株主や投資家に対するディスクロージャーは徹底されており、大震災の影響は大きいものの業績予想などにも対応している。

●野村ホールディングス(8604)は、2009年に以下の2回の大規模な公募増資を実施。
・3月公募:38%の希薄化、公募価格417円【資金調達の目的】(記者発表文より)
日本を含むアジア及び欧州におけるビジネス基盤の強化のため、全額をそれぞれの地域における当社の連結子会社への出資及び貸付けに充当
・10月公募:28%の希薄化、公募価格568円【資金調達の目的】(記者発表文より)
従来から強化を進めている日本を含むアジア及び欧州に加え、米国におけるビジネス基盤の強化のため、全額をそれぞれの地域における当社の連結子会社への出資及び貸付に充当
その後、野村のディスクロージャーに関して内容・頻度とも低下していて、慣行とは言え業績予想も開示されていない。

大規模な公募増資の事例を2つ上げたのは、大規模なファイナンスを実施する企業は、先ず資金使途をちゃんと株主に説明する必要があるし、その後の情報発信も重要となることを指摘しておきたかった。
ディスクロージャーを充実していく事を、企業に、特に大規模なファイナンスを実行する企業に対して、お願いしたい。

 
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空売りはいけない行為なのか(6月21日)
株式を保有しないで売却する“空売り”は、するべきではない行為なのか。もし、“空売り”がするべき行為でないとすると、買い付ける資金もないのに行う“空買い”は問題ある行為なのか。どちらも、仮需用を創出し、市場に流動性を与えるが、ルールは如何にあるのか。

 結論は、金融商品取引法第162条第一項には、有価証券を有しない場合や借り入れて売り行為を“空売り”として、この行為を禁止しているが、内閣府令(有価証券の取引等の規制に関する内閣府令)ではこの条項を適用しない取引を定めてあって、結果的には普通の投資家が利用できるようなものは、殆どこの禁止規定を適用しない。つまり、空売りは原則禁止なのだが、市場の流動性向上に為に必要だと思われる範囲で行うことが可能となっているという、普通の投資家には解り難い論理構成となっている。
 空売り禁止の適用除外となるのは、信用取引や貸借取引、有価証券先物取引や債券関係取引など内閣府令第九条の3には、全部で36項目も定められている。
 一方、“空買い”に関する規制は何もなく、空買いを実行する投資家は、証券会社か銀行が購入相当資金を貸してくれる範囲で買い付けることが可能だ。

しかし、“空売り”にしろ“空買い”にしろ、“空”の部分は株式か資金を誰かから借りてきて、決済日には株式と資金の受け渡しを実行しなければならない。この“空”取引に関する法規制も、分かり易く言い切ってしまえば、ちゃんと受渡し決済できるなら、市場の取引が増加したり、流動性が向上するはずなので、行ってよいという事になる。ここまで読んでいた方々には、“空売り”の言葉遊びの様な説明で申し訳なく思うが、問題としたい“空売り”は次の様な場合だ。

①発行済み株式総数の2~3割以上となる大規模な公募増資を公表前に知り、対象となる企業の株式を空売りする。
②同様に大規模な公表後に知り、対象となる企業の株式を空売りする。

どちらも同じ空売りだが、①は当然公募増資という重要事実を事前に知って行うインサイダー取引になるので犯罪行為だが、②は決済できる方法で行うなら、適用除外で認められた“空売り”ということになる。

 しかし、日経によると金融庁は②の方の一部決済方法について規制を今秋から導入する方針だという。その規制内容は、公募増資公表後に空売りした投資家に公募株を与えてはいけないというルールだ。正直に書きたいが、このルールの目的が良く分からない。
若し、②の空売りそのものが問題なら、これを禁止すべきだが、この行為はOKで、但し空売りした投資家には公募株を割り当ててはならないという。②で空売りした投資家は買い戻す以外にないということを言いたいのかも知れないが、逆に公募を割り当てない理由は何なのだろうか。②の行為が正当な取引行為とした場合、その理由が見当たらない。

 唯一、理由として想定できることは、企業の公募増資の値段を引き下げる圧力を少しでも取り除きたいということかも知れないが、増資の規模や目的で売りも買うのも投資判断なので、認められた空売りの方法を一時的に停止することは、むしろ市場取引ルールの一貫性から問題だ。本当に問題なのは、投資家や株主に評価されないような公募増資を行う企業側かも知れない。これらは、市場取引の中で判断されるべきではないだろうか。

 昨年夏以降、欧米の機関投資家が問題としたのは、むしろ①に対する疑義で、その背景となったのは大規模なファイナンスを行う際に、欧米の一部投資家にその株の需要を公募増資公表前にヒアリングする引受慣行(ソフトヒアリング)の方で、こちらの方を証券検査等で厳格に行うべきことが市場を守るということだろう。

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ファイナンスの季節を迎えるにあたり (6月20日)
もうすぐ6月も終わると、公募増資などファイナンスの集中しやすい7月を迎える。これは、3月期決算会社の株主総会が終わり、新年度の資本政策を実行しやすくなる時期ということだが、引き受ける証券会社の方でも、前期決算が確定後その内容を確認する引受審査を2ヵ月程度は実施する必要があるので、7月は新年度でのファイナンス公表が集中しやすい。

 このファイナンス機能は、上場会社が市場からリスクマネーを調達する重要な機能だが、株主にとっては多少の痛み(時としては大きな痛み)を伴うのが最近の日本市場の特徴になっている。まだ日本全体が成長期にあったバブル期以前なら、企業の積極的な事業戦略を支える公募増資など資金調達手段は、それ自体が市場から好材料視されたが、今は殆どその様な事もなくなった。一旦の売り材料若しくは空売り材料というのが、今の一般の日本企業ファイナンスに対する投資家の評価だろう。

 少し最近のファイナンス(公募増資+第三者割当)の状況を見てみると、以下の様になっている。
【金融危機後の公募増資の状況】
・2009年度:55社 5兆7296億円 (1社平均:1041億円)
・2010年度:49社 2兆7756億円 (1社平均:566億円)
※日本証券業協会資料より

ちなみに、過去最高額は東証要覧によるとバブル期の1989年227社5兆8302億円(1社平均:256億円)となっている。しかし、この時は株価平均が現在の4倍であること、1社平均の調達額が最近の半額から4分の1程度だったことを考えれば、今の株主が負う希薄化や株価下落リスクの数分の1程度だった。

今回の金融危機以降、日本の発行市場では大型の公募増資が増え、企業が戦略的に変わろうとする時に必要とするリスクマネーを、大量に一部大企業に供給している。これ自体は日本の資本市場にとって重要なことで、その機能を果たしていると言える。しかし、それを受けるとめる流通市場の方が数分の一に縮小していて、結局既存株主の犠牲の上に増資するケースも見られるし、大型の公募増資なので、一時的には同業他社の株価にも影響を与える。
だから公募増資するという情報に対して、今だと殆どの投資家が売り材料として扱う様になっている。昨年夏、欧州の機関投資家が問題としたのは、この公募増資の情報が企業の公表前に流れる様な日本のファイナンスの仕組みに、問題があるということだった。

誤解無き様に言いたいが、大量に公募増資する企業が問題だとか、公募の情報を聞いて空売りする投資家が問題という訳ではない。企業が生き残りを掛けたファイナンスであれば市場は其れに応えるべきだし、公募増資を空売り材料とする投資判断は、投資家自身のもので市場はこのニーズにも機能を提供するべきだ。問題なのは、発行規模のニーズと流通市場の機能のバランスの悪さで、流通市場のキャパシティを超えて公募株の流通を試みたり、空売りの為に公募増資の材料を探したりすることで、この責任は企業や投資家にあるのではなく、大きな意味の市場運営(発行市場と流通市場及びそのリンク)の問題だと考える。

では、具体的にどの様な対応が可能かは次回以降に。

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投資行動から逆算して考える新興市場問題 (5月16日)
金融危機や大震災がなくとも日本の資本市場は、構造的な問題を抱えていた。日本の投資家の日本株離れと言う問題だ。別に、海外投資家が東証での株式売買金額の7割を占めても良いのだが、日本の個人投資家や機関投資家にとって、投資というリスクを伴う行動に駆り立てるものが日本の市場に残っていると思われているのだろうか。その象徴的な問題が、日本の新興市場問題ではないだろうか。その事について、投資家的視点から単純化して考えてみると、以下の様な問題がある。

①新興市場の企業に、魅力はあるのか。
②財務的なデータは信頼できるのか。
③変化しているビジネス環境や企業の内容は、ちゃんと伝えられているのか。
④普通の上場企業への投資より、投資リスクが大きいのであれば、それに対する政策的支援策が取られているのか。

先ず、当然の事だが投資家にとって最も需要なことは、新興市場のあり方よりは新興企業に魅力があるかどうかであって、新興市場=IPO(株式公開)ではない筈だ。日本の新興市場問題に関して、市場関係者の議論も、一部の個人投資家の興味も、そして新興企業の関心も、余りにもIPOまでの事に集中しすぎて、IPO後には力尽きているのではないかとの懸念がある。確かにIPOは大変な作業を伴うが、投資家にとっては、新興企業のデビューでしかなく、その後の成長に期待できるかどうかで投資判断される普通の仕組みが必要だ。結論を言うと、現在のIPOの仕組みに問題があるという事になる。

・IPOを新興企業・市場関係者にとって最大のイベントとしない仕組みが必要だが、新興企業にとっての最大のIPOメリットは確保されるべきだろう。つまり、IPO時における新興企業のリスクマネー調達を中心に考え、大株主や経営者のIPO時の売出しは新興市場では極力制限すべきだろう。
・機関投資家が積極的に新興市場に参加する為には、新興企業のIPO以前の情報が纏まってあれば有効かも知れない。現在、日本証券業協会では“新興市場等の信頼性回復・活性化策”が議論されているが、経済産業省から出されている案では、新興企業に対して早い段階からリスクマネーを提供するベンチャーキャピタルの投資動向データベース構築事業案が示されている。その内容は、①企業情報②ファンドのパフォーマンス③投資先企業情報等をデータベース化して、VC投資のベンチマークとしてオープンにすることで、機関投資家・海外投資家等からの出資拡大、VCの出口としてのM&Aの拡大、ベンチャーキャピタル業界の競争環境を整備するというものだ。

 二つめの問題については、よく新興市場の信頼性回復と言われるが、このことが架空売上計上など有報等の虚偽記載を指すのであれば、これは新興市場のみならず上場会社全体の問題になり、監査制度の問題ではないかと思う。少なくとも、アジアの新興市場よりは日本の監査制度に対する信頼性は高いはずだが、投資家が信頼できないというのであれば、更なる改善を求めるべきで、内部統制報告やIFRS対応という会計技術的問題とは違うし、上場審査問題とも本質的に異なる。なお、東証はマザーズ改革として、新年度より新興企業上場時の監査は、上場企業を取り扱った経験と知見を持つ会計事務所での監査対応を求めている。

 三つ目の問題は、新興企業自身が適時的確に市場に対して情報発信することが重要で、その為に取引所の適時開示ルールは最低限厳守する態勢整備が必要だ。勿論、会社説明会などのIR活動も重要だが、上場時の主幹事証券が義務としてディスクロージャーの指導をある一定期間行うことが望ましい。この仕組みとして、プロ向け市場で上場会社をサポートする専任アドバイザー(TOKYO AIMにおけるJ-Nomad)の様な仕組みが、新興市場にも必要かも知れない。証券会社の情報発信として、アナリスト・カバーの問題があるが、先ずは新興企業自らの情報発信力を高めることが大事なのではないだろうか。

 四つ目の問題については、新興市場の銘柄投資に関するキャピタル・ゲインの軽減措置があっても良いのではないだろうか。

 以上の問題を考える時、新興市場を改めて定義し直す必要もあり、退出(上場廃止基準)も厳格化されるのは当然と考える。なお、上記の4つの問題は新興市場の問題であるとともに、現在の日本の株式市場の問題であること思い出した。
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何故市場改革が必要なのか~新興市場の場合 (5月6日)
先ず最初に言っておきたいことは、市場改革は常に必要だ。時代や環境の変化に対応し、投資家のニーズに応えて行く為に、市場改革議論は常に行われるべきだ。しかし、日本での最近の市場改革議論は、ここ数年毎年同じテーマを繰り返しているようにも思う。社債市場然り、また新興市場改革議論も既に3年以上市場関係者による改革議論が行われている。勿論、真摯な議論をされている改革検討メンバーには敬意を払いたいが、3年以上も同じ問題を議論していること自体、本質的な問題が解消されていないことを証明している。専門家による改革議論が何故進まないか。その事を考えるために、そもそもの新興市場問題について投資家や利用者である企業の視点からやさしく考えてみたい。

【新興市場の本質的問題とそれぞれの背景】
前回取り上げた2006年のライブドア事件以降、新興市場における虚偽決算問題が顕在化してきた。虚偽決算は何も新興企業のみに限ったことではないが、ソフトウェア業界の循環取引やバイオベンチャーの売上げ計上など、新興企業独特のビジネスモデルから発生するような虚偽計上を、監査法人も含めて市場関係者がチェックできる態勢になっていたかが問われた。この問題は、証券会社や取引所の上場審査、公認会計士の新興企業に対する監査能力などの改善努力に向かう。言い方を変えると、“新興市場の信頼性回復”に向けた取組みということになる。

次に問題となったのは、新興上場企業の市場での上場後の取り扱われ方だった。新興上場企業の大半は上場後2~3ヵ月は売買されるが、その後急速に売買取引量が減少し、多くは公開時の株価を大きく割り込んだまま低迷してしまう。企業自身の業績や成長戦略の失敗なら当然の結果だろうが、これが新興企業や市場仲介者である証券会社からの情報発信不足なら問題の解消方法はある。“新興市場での取引活性化”に向けた取組みだが、取引所などによる新興企業のIRやアナリスト・カバーへの支援となる。この問題の本質的なことは、新規公開後の新興企業を、市場仲介者である証券会社が如何に取り上げていくかにあるように思う。特に、新興企業の幹事証券と名乗っている証券会社の責任は重い。

上記の2つの問題が顕在化し、新規公開の新興企業数がピーク時の10分の1程度まで大きく減少したことが3つ目の問題になる。“新規上場の活性化”に向けた取組みが必要とされたのは、日本のIPO市場が低迷しているのとは対照的に、中国で新興市場が創設されたり、他のアジア新興市場のIPO誘致強化の取組みが日本でも目立ち始めたことも影響している。資本市場の入り口となるIPO数の減少は、新興企業へのリスクマネー供給の低下に繋がるのだから、この問題の対応策は、日本の資本市場にとって緊急性を要するはずだった。

【付属する問題とポイント】
 新興市場の事に関して議論するのだから、当然如何あるべきか詳細で専門的な検討が必要だろう。しかし、その前に形式的なことも考えるべきで、5+1の新興市場が日本にあることさえ、実は一般には余り知られていない。5は、マザーズ・新ジャスダック・セントレックス・Qボード・アンビシャスだが、+1はグリーンシートという店頭市場になっているものの、全ての新興市場に注文を取り次げる証券会社は、実質的に無いといえる。先ず、この5+1の新興市場を、利用者である投資家と新興企業に分かり易く整理して、説明する必要があるだろう。特に、グリーンシートは300近くある証券会社の中で9社(それも一部の銘柄のみ)しか扱っておらず、プレIPOマーケットとしての機能していない。

少なくとも、主な証券会社であれば必ず取扱いが出来る新興市場及びプレ新興市場という考え方から整理を始めて欲しい。

これらの新興市場議論を顧みて、常に想う事だが、同じメンバーで同じ議論を繰り返しても、本質的な問題の解決策は出ない。議論も市場仲介業務も、新しい参加者を促す仕組みが必要なのではないだろうか。
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個人の社債投資が拡大する為には (4月4日)
金融危機後の2009年5月、孫さんのソフトバンクは格付けBBB期間2年で600億円の個人向け社債を発行した。社債の発行環境がまだ悪かったこともあって、利率が5.1%という高水準で話題になったが、この年は社債発行における個人向けの割合が1割(募集額で1兆円以上)を超えていた。しかし、日本の社債の保有比率で個人が占める割合は、未だ2%に満たない。また、流通市場でも個人の売買は全体の0.03%未満(2月公社債売買高)で、投資家としての存在感はない。であるのに何故標題をつけたかというと、社債市場にとっても、個人の資産運用にとっても、社債投資は今後重要なテーマになってくる可能性がある。

個人が預金とは異なる確定利回り商品を求めていると仮定すると、その為に社債は最も適切な金融商品なのだが、いくつかの乗り越えなければならない壁もある。

【流通の壁】
一つ目の壁は、証券や金融機関の販売現場にある。社債も含めて債券投資は、元々1億円券面が主流で、個人向けに限って100万円券面とするが、発行時の募集も、既発行債の販売も、販売現場での取扱いは10年来変わらないように思われる。社債も2008年よりペーパレスになっているのだから、もっと細分化した販売や、ITC技術の利用で商品部や販売員に負担をかけない販売方法が待たれる。

【情報の壁】
二つ目の壁は、社債に関する情報の壁だが、これは次の3つほどある。

・その社債の利率と価格は適正なのか=価格情報だが、米国などのように個人も利用可能な流通価格情報を共有する仕組みが待たれる。現在、日本証券業協会において社債市場の活性化に関する懇談会第4部会“社債の価格情報インフラの整備等”として検討が進められているが、実現の為に価格情報を共有する仕組みのコスト負担を誰がどのように行うか議論することが必要と思われる。

・その社債はどの様に安全か=社債は発行会社が元本を保証するもだが、その発行会社がどの様な状況になった時、期間前に償還されたりするか社債要項に記載されている。投資家の債権者としてのリスクを守るための投資家と発行会社の契約だが、この内容を判断するための会社の財務情報がちゃんと公表されているかどうか。また、投資家の為に社債を管理しているものは誰で、投資家と利益相反がないかどうかなども問題となっている。つまり、本来は投資家の為に発行会社を注意深く見守っている立場の社債管理人が、その会社に融資をしている銀行なら、発行会社の財務内容が悪化した時、本当に投資家の為に社債の権利を守る行動がとれるかどうかという問題だが、このことは前記と同様に協会の第2部会(コベナンツの付与及び情報開示等)・第3部会(社債管理のあり方等)において在るべき姿が議論されている。

・その社債の信用リスクはどうなのか=信用リスクを個人が判断するツールとして格付けは分かり易い。しかし、以前から格付けについては格下げ時(つまり信用リスク増大→価格下落)の遅行性が問題になっていた。企業の信用リスクの変化を個人レベルで判断することが出来ないので、この問題は民間企業である格付機関に頼るしかないが、金商法の改正により格付機関も信用格付業者として登録制へ移行し、また格付けの定期的ウォッチやその公表を求められている。また個別企業の信用リスクのデリバティブとしてCDSがあるが、こちらの方の価格情報は東京金融取引所が取引業者からの報告もとに参考値を公表している。この活用が日本でも拡がっていくことに期待している。

【供給の壁】
現在、社債の供給に関しては発行市場に偏っていて、個人に提供する金融機関も限られている。つまり供給サイドの壁が有る。もし、将来日本の個人資産の1割でも社債で運用されるようになれば、米国並みに個人が社債を保有(米国は直接保有14%、社債ファンドでの保有11%)することが期待されるが、その為には、個人投資家が望む運用期間の社債を、望む時に、望む量だけ提供できることが必要で、その為にも社債の流通市場の整備が待たれる。
 
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図説:ライツ・イシューの現状 (3月25日)
昨日に引き続きライツ・イシューの現状を図説するが、その内容は下記。

ライツ・イシューの現状

また、次の様なことを補足しておきたい。
【企業が目標する資金を調達する為に】
ライツ=新株予約権を株主や投資家が権利行使しなければ、その分企業が予定していた調達額に達しない。その為、株主や投資家が権利放棄した分を一旦証券会社が買い取って、その分を売り出すコミットメント型ライツ・イシューがある。このことが主要な証券会社等で議論され、これを円滑に執り行う為、金商法の改正が予定されている。この事自体は、ライツ・イシューを促進する為に良い事だろうが、私見として、あまりコミットメント型ライツ・イシューに拘る必要もないと考える。その理由は、以下。
○権利行使を促進する為、行使勧誘を証券会社が行うインセンティブ=手数料を設けて、株主に権利行使を促すことも考えられる。
○100%行使することに拘らない方が良い。そもそも、市場に押し込もうとする金額に無理があると考え、不足なら時期を見てまたライツ・イシューを実行すればよい。今までの公募増資の様に、企業が決めた金額をキッチリ調達しなければならないというような既成概念を捨て、市場や投資家に合わせた柔軟なファイナンスと考える方が、ライツ・イシューの拡大に繋がるように思う。
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今、改めてライツ・イシュー推進への取組みを (3月24日)
 大震災による企業の被害状況が確認され、復興にむけた取組みが今後活発化することを1市場関係者として祈っております。その為、資本市場は多くの上場企業に対して、リスクマネーを提供することが肝要だと考えますが、同時に既存株主に配慮したファイナンス手法の確立が一刻も早く求められています。上場企業が、大規模にリスクマネーを調達しやすい仕組みとして、ライツ・イシューの対応が早期に準備される必要があります。

 昨年12月24日に金融庁より公表された“金融資本市場及び金融産業の活性化等の為のアクションプラン”では、機動的な資金供給の促進する為の施策として「ライツ・オファリング(本稿ではライツ・イシュー)が円滑に行われるための開示制度等の整備」があげられているが、ライツ・イシューの現状について簡単にまとめてみたい。

【必要とされる現状】
●大規模(発行済株式総数の2割程度を超えるもの)な第三者割当増資や公募増資によって、当該銘柄が大きく下落。昨年夏以降、海外投資家からの批判も高まった。
●公募増資を行おうとした場合、引受ける証券会社の審査を受ける必要があるが、資金調達後の企業価値か増加すること(早期の増益や業容拡大)を示す必要がある。簡単に言うと、株価が上がる見込みのないものは証券会社が引受けられないということだが、この引受審査対応が2ヵ月以上かかる。
●大規模な第三者割当増資では、一部に引き受けるファンド側によるインサイダー取引等の違反行為や裁定行為もみられ企業価値をかえって損なう場合があったため、発行済みの25%以上を割り当てる場合の法制度上の対応が厳格になっている。

【ライツ・イシューの概要】(※事例説明を簡略化)
・例えば、時価総額100億円の企業が、ライツ・イシューで30億円調達したいケース
・1株を保有している株主に対し、0.3株分の新株を買うことが出来る新株予約権(ライツ)を割り当てる。
・この新株予約権は、東証に上場されるため、新株予約権を不要とする株主(つまり新株を買わない)は取引所でその新株予約権を売却することが出来る。
・新株を買う株主は払込日に新株の代金を払い込むが、株主でないもので新株を新たに買おうとするものは、取引所で売買されている新株予約権を買付け、払込日に払い込む。新株予約権が割当てられてから新株の払込日までは、現状では2ヵ月程度。

【現在の課題】
・企業が望んだ資金額がちゃんと調達できるか=つまり株主や投資家が払込日に新株へ資金を払い込んでくれるか⇒昨年実施されたライツ・イシュー第1号のタカラレーベン(8897)は新株予約権の行使率95.7%
・一旦新株予約権を株主に割り当てた後、払込日まで届出書提出や株主への目論見書発送など時間的制約があり、現状では2ヵ月程度時間がかかる。その間、市場の変動リスクにさらされるので、極力この期間を短縮すべきとの多数意見がある。
・投資家が口座をもつ証券会社の事務作業がライツ・イシューに慣れておらず、またオペレーションが確立していない為、取り扱わない証券会社が多数ある。昨年のタカラレーベンの案件では、ネット証券や大手証券の一部しか取り扱っていなかった。

【規制の緩和等】
○〈東証の新株予約権上場ルールの緩和:2009年12月〉ライツ=新株予約権を株主へ付与しやすくする為、それまでは新株予約権1つについて1株以上のものしかライツとして上場できなかったが、この規制を撤廃した。つまり1新株予約権に対して0.3株のように、企業が必要とする資金に合わせて株式付与割合を設定できるようになった。
○〈開示府令の改正による期間短縮:2010年4月施行〉株主割当増資として、新株予約権を割り当てる基準日の25日前まで有価証券届出書の提出が必要だったが、これを15日前に事前手続きが短縮されている。
○〈金融商品取引法改正予定による利便性の向上:2011年度中目途〉目論見書の交付を不要とすることがメインだが、その為の条件として有価証券届出書をEDINET(金融庁の開示システム)に掲載し、アドレスを新聞で告知することで代替できるようにする。これにより、目論見書の事務・コスト負担がなくなり、資金調達の期間も1─2週間程度短縮できる。その他には、株主が権利放棄した分の新株予約権を証券会社が買い取って売り出すコミットメン型ライツ・イシューへの対策や、米国株主への対応が整備される予定である。

【証券ビジネスとしての期待と課題】
○大型の公募増資は、大手証券か投資銀行のほぼ独占になっていたが、ライツ・イシューだとコミットメント型であっても引受リスクは限られるので、中堅証券以下の取扱い拡大が期待される。少なくとも、公募増資よりは、多くの証券会社がライツを取扱い、企業のファイナンス活動に参加することが出来る。
●ライツとしての新株予約権の売買に対応していなかったり、権利行使の実務が確立していない証券会社が未だ相当数あるように思うが、日本株を扱う証券会社であれば、早急にライツ・イシューの態勢整備を行うべきだろう。

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自社株買い+CB発行=リキャップCBを支持する (2月18日)
CB(転換社債)を資本調達手段として見れば、CBを発行して、その調達資金を自社株取得に充てるというのは、何か資本を右から左へ出し入れする様で違和感があるかも知れない。しかし、自社株買いから先に考えれば、企業は自社の株価を割安ということを表明している事になり投資家にとって歓迎出来るし、将来株価が上昇すれば、
・自社株取得⇒金庫株⇒CBの株式への転換時に放出
・自社株の取得価格と転換価格の差額は、資本準備金として資本を厚くする
といった効果もある。
もし、株価が転換価格まで上昇しなくとも、CB発行により低利で調達した資金で自社株取得することで、ROEやEPSなどの資本効率を上げ、株主にとってはメリットがある。
何より評価できるのは、リキャップCBを発行することで、発行を決議する企業経営者の自社株の適正水準を表明するに近い効果はあるということだ。

 2月17日、ヤマトホールディングス(9064)は300億円(2400万株)のリキャップCB発行と共に、300億円の自社株取得を公表したが、実際の自社株買いは18日に自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)で50億円(400万株)、残りは1年内に取得されるという。発行を予定されるリキャップCBの概要が次のようなものだ。
○CBは5年債で、利率なしのゼロクーポン⇒財務的負担が少ない
○CBの転換価格は、1850円で直前時価に対して40%アップ。
○CBを株式へ転換する際の条件として、株式の時価が転換価格の120%以上をある一定日数以上上回らなければ転換出来ない条項が付いている。⇒現在の株価推移からみれば、転換されにくい。
また評価されるべきは同社の開示スタンスだが、最初に【CB発行の背景としての同社の経営戦略】があって、次に【同CBの資金使途】が明確に記載され、そして【CB発行と自社株取得の狙い】で同社の資本政策が明示されているので、株主や投資家にとって同社の資本政策が理解しやすい。
但し、リキャップCBのスキームが上記の様な120%転換制限条項が付されているので、オプションを活用しなければ同CBの投資効果は分かり難く、個人投資家向けではない。その為に、同CBは欧州のファンド等に販売される。

 少しもったいないような気もしている。リキャップCBの様な資本政策が日本の資本市場でも根付く為には、発行会社・株主・CBの投資家の3者にメリットがあること理解される必要がある。その為、日本の同CB投資家を開拓すべきだが、その為には次の様な方法がある。
◇個人投資家にもスキームメリットが理解できるよう、株式への転換条件を単純化する。そうすると希薄化が起きやすくなるが、同CBを既存株主が優先的に応募できる方法(株主優先募入)で行えば、既存株主の経済的デメリットは小さいものになる。
◇スキームはそのままとし、代わりにオプション利用に慣れた国内機関投資家のみに販売する。そうすることで、国内個別株オプション市場が拡大するし、オプション利用の機関投資家の増加にも繋がる。

 同CB発行に関しては、発行する会社の開示の在り方や既存株主への配慮は申し分ないと思うが、同CBの発行を国内でも行えるような市場仲介者の努力が日本市場でも待たれる。
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公募増資の仕組みを、やさしく考えてみよう=その2 (1月20日)
 前回に続き、公募増資の問題につき、仕組みを見直しながら考えてみるが、件数は少ないとは言え大規模なダイリューション(希薄化)を伴う公募が行える市場は、先進国では日本だけではないかと欧米の機関投資家からの指摘もある。企業にとって資本市場の最も重要な機能は、リスクマネーの調達(資本調達)なのだから、この機能は大切に使って欲しい。その意味で、金融庁が行おうとしているライツ・イシュー(株主割当増資、最近はライツ・オファリングとも言う)の実務環境整備には期待している。
※[説明に使う事例は前回同様にりそなHGを使うが、当該銘柄は現在値決め前なので、投資判断は以下の説明を参考にせず、開示された資料をよく読まれてご判断いただきたい。]

○どこでいくら売るべきか
 大型の公募増資は、日本だけの募集ではなく欧州市場など海外(米国市場は開示手順が重いので、普通は避ける)で売りことも想定している。東証の売買高の6割以上を海外投資家が占めているので、海外でも公募株を売りたいというのは分かるが、実際銘柄によりどのくらい海外で募集できるか分からないので、主幹事を予定している証券会社は、海外の主要な投資家に事前に投資ニーズを聞いてみる。これが問題視されたソフトヒアリングだが、証券会社のこの行為によって、大型公募増資の情報が事前に漏れ、海外投機筋などの増資銘柄に対する増資公表前の空売りを誘っているのではとの疑念を持たれている。これらを避ける為には、事前に公募増資することを公表してから、ソフトヒアリングすれば良い。りそなHGは、11月に発行登録を使って公募増資の概要を公表し、その後、海外投資家にソフトヒアリングしたと思われるが、その結果、公募増資12億37百万株のうち、国内募集分6億52百万株(約52.7%)、海外募集分5億85百万株(47.3%:但し、このうち1億6百万株分は、実際の募集活動が始まってから証券会社が引き受けるかどうか判断できる分)とした。

○値段はいくらで売るべきか
 当然のことだろうが、市場価格より安くなければ、一般の投資家を相手に公募株を売ることは難しい。それで、公募株の需要を投資家に聞くときに何%ディスカウントなら買うかを聞き、投資需要が企業の望む株数に達したなら、公募株の販売価格を決めて募集に入る。今回のりそなHGの様に、大量の投資需要を必要とする場合など、企業価値を高める今後のビションを十分に投資家に理解させる必要があるが、公募公表から値決めまでの間、ロードショウという投資家向け説明会を海外で実施することもある。金融商品取引法の問題もあるだろうが、りそなHGの様な大規模なダイリューションを起こす公募増資については、株主や投資家に発行会社が自ら説明する機会としてロードショウの様なことをした方が良いように思う。
一方、実際の公募増資の発行価格は、投資家が望むディスカウント以上に更に4~5%程度下げられるが、この部分は引受証券会社の公募株販売の為の手数料になる。つまり、投資家が公募株に払い込むお金と、企業が受け取る公募株のお金が違うのだが、この方法だと企業は公募株募集のコストを払っていない。但し、その分は投資家及び株主が負担していることになる。大型ファイナンスにおける既存株主のダメージを思えば、公募コストに困る新興企業以外は、そろそろこの方法を止め、企業が負担する方法に変えるべきではないだろうか。

○補講:販売をスムーズに進める仕組み
 相場操縦は禁止行為だが、ただ一つ行って良い場合がある。公募増資などのファイナンスをする場合、募集期間中に募集する価格より企業の株価が下落した場合、募集活動を容易にするため、一定のルールに基づいて引受証券会社が市場から買っても良い。この行為を安定操作取引と言うが、安定操作を行うかどうかは引受証券自らの判断に委ねられる。
 もう一つ別のスキームがあって、公募増資におけるオーバーアロットメントという方法だ。この方法は、一般には非常に解り難いので、りそなHGの事例で説明する。
・国内募集分は6億52百万株だが、募集価格が決まれば、野村証券を始めとする引受証券会社はそれより6千3百万株多い7億Ⅰ5百万を販売してしまう。
・募集後、りそなHGの株価推移も順調であれば、野村は6千3百万株ショートしてしまっているが、実際はこの分りそなHG株を借りている。
・この借りた株を返済する為、野村はりそなHGに対して公募株と同じ値段で第三者割当方式の新株を発行することを要請する。
・今回のりそなHGの公募の場合、上記の要請は2月17日までに行われ、2月18日に第三者割当で野村に公募株と同じ新株が割当てられる。
・野村は借りた株を返済することが出来る。勿論、野村は6千3百万株全部ではなく、一部の権利を行使しても良い。
・引受証券による公募株の募集が芳しくない時や、公募株の募集後、第三者割当の要請期限まで募集価格以下で株価が推移した時など、これ等の第三者割当が全く実施されない時もある。

 以上、公募の現在の仕組みをやさしく説明しようと試みたが、余り易しくなかったかもしれない。やはり、一般投資家や株主に分かり易い増資方法として、ライツ・イシュー(ライツ・オファリング)の実務態勢整備が待たれる。
 
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公募増資の仕組みを、やさしく考えてみよう=その1 (1月19日)
 公募増資というものを、株主や投資家の視点からやさしく考えてみたい。個人投資家にとっては、公募株など取り扱っている証券会社も限られているし、購入も面倒そう(ワンクリックで出来ない)と感じるか、公表から値決めまで株価が下落することが多いので、最近の流行(?)として、短期で空売りする対象としてみるか。だいたい年間4~50件程度で、余り気にすることもないとおっしゃる投資家が多いかもしれない。しかし、ここ2年は公募増資の資金調達ベースでは、バブル期並みの年間4~5兆円調達するので、1件当たりの公募増資は、大型化しているし、既存株主の希薄化の問題も大きくなっている。
大型公募増資は、数千億円単位で市場から投資資金を吸収するので、その銘柄の需給関係だけではなく、業種全体へも影響を与える可能性もある。そんな中で、証券会社が引受けて販売するのは何故かというと、リスクマネーを調達した企業が、新たな投資を行うことで成長が加速し企業価値を高めることを期待するからだ。昔の話になるが、バブル期までは公募増資と言えば買い材料だったのは、投資家の企業に対する成長期待が強かった為だ。その公募増資は現在どんな仕組みで行われているのか。最近の大型公募であるりそなホールディングス(8308)を事例に考えてみたい。(※本稿は大型公募の仕組みを解説する目的で、以下を記述するので、投資を勧誘したり売却を薦めるものではない。)

○投資家・株主にいつ知らせるか
 取引所の適時開示ルールでは、決まったらすぐ開示してくださいということだが、公募増資は準備期間が必要なので、それほど明確に対応できない。つまり、企業が公募を決めてから、2ヵ月程度の引受証券の審査期間などを経て公表され、この間、関係者はインサイダー情報を保有していることになる。この様な状況を避ける為に、先に公募増資をすること宣言して、その後、実際の増資の詳細を決めてから改めて公表する方法が取られることがある。りそなHGの場合、昨年11月5日に発行登録をすることで、公募増資の大まかな内容を市場に伝え、増資の内容が固まった1月7日に、その詳細を公表している。昨年夏ごろから欧州投資家などが大型公募増資に関する情報管理問題を指摘しているが、りそなHGの様に、準備段階で発行登録を使って概要を株主・投資家に伝えるのは、いい方法だと筆者は考える。但し、発行登録する前にも情報管理は厳格であるべきで、増資情報は企業内に留めるべきだろう。

○いくら資金を調達すべきか
 企業が調達したいだけ行うべきだが、実際には市場での流動性や市況環境などを考慮して決められる。当然だが、希薄化の影響を受ける既存株主にも配慮すべきだが、定款に定められる授権株数内であれば会社法・金商法上調達を制限する規則はない。りそなHGの場合、既発行の普通株数を超える公募株が募集されるので、既存株主は増資後持分が半分以下になる。この既存株主の理解を求める為にも、調達した資金の使い方を丁寧に説明していくことは必要だ。既存株主にとっては、希薄化に耐えて株主で居続ける理由が必要で、増資企業は企業価値が向上する可能性があることを示すべきだ。公募増資の資金はいったい何に使われて、どの様な効果を生むのか。りそなHGの場合、全額が公的資金の返済に使われるが、実務的には、公的資金が保有する優先株の買戻しに使われる。公募増資詳細の公表時資料では、優先株には高配当が必要で、将来には今回の公募株数を上回る普通株式に転換される可能性があることが記載されているが、今回の公募で資本コスト面が改善されるのは分かる。今後、りそなHGは、公的資金がなくなれば経営の自由度が増し、更に企業価値が向上していくストーリーを株主や投資家に示す必要がある。


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ライツ・イシューなど今の時代に合ったファイナンスを=再び期待したい金融行政 (1月11日)
企業が市場からリスク資金を調達して、事業の拡大や再構築を図る。資本市場の機能としては当たり前のファイナンス機能だが、日本市場のこの機能は少し揺れているように思われる。先の問題になったのは、第三者割当増資だが、一部にはファインスを使った相場操縦やインサイダー取引など不公正ファイナンスと呼ばれる行為が行われ、新興市場にダメージを与えた。次に問題になったのは、大型公募増資の際の、海外における情報漏れの可能性で、大幅なダイリューションを起こすのに加え、増資公表前の海外でのソフトヒアリングという主幹事が機関投資家に需要を聞く慣行が、不当な売込みを誘因しているのではないかとの疑念が、海外投資家から指摘された。そもそも、日本の公募増資は、大手証券による引受の寡占行為が進み、ファイナンス企業数は少ないながら、調達額は2009年5兆円・2010年4兆円と20年来の水準が続いて、市場から多額の投資資金を吸収している。
 上場企業の主な資本調達方法としては、公募増資・第三者割当増資そして株主割当増資などがあるが、この増資の際に、何が問題になるか、もう一度整理しておく。

●既存株主のとってのダイリューション(持分の希薄化)=現在の会社法では、授権株数の範囲なら取締役会決議で発行することが出来るが、第三者割当に関しては、既発行の25%以上の株数を発行する場合、開示や取引所ルールでの実質的規制が始まっている。公募増資に関しては、今のところダイリューションの限度に関する規制はない。

○調達する資本の、資金使途=企業がリスクを取り、新たな収益機会が望めるなら、既存株主もダイリューションの痛みに耐える。しかし、資本を調達した後に、その資金が何に使われているが、明確化するルールは現在無く、発行企業のIRに頼っている。(メガバンクの増資などで、大量に調達された資本が、結果として国債購入に向かっているなら、株主をこれほど落胆させるものはない。)

●増資情報の管理=今の日本の市場では、大規模な(発行済み株数に対して)公募増資は売りという認識が市場に定着している。その為、大規模な公募増資情報の取扱いは、厳格化する必要がある。但し、今回のりそなホールディングスが行ったように、計画段階で事前に発行登録制度を使って増資規模や目的を公表しておけば、増資情報は周知されるので情報管理リスクは低減されるが、発行登録前の情報管理の重要性は変わらない。

●増資の割当て先=安定株主となりそうな先が、既存株主にとっては一番望ましい。次に株主割当増資だが、既存株主が新株を引受ける権利を放棄した場合、代わりの投資家が参加できる仕組みが好ましく、その為ライツ・イシューが期待されている。公募増資は、公に募集するイメージだが、限られた引受証券の顧客が、それも良い銘柄の増資ほど抽選で割当てになることを思えば、公募増資での新株を配分する仕方も再考する必要があるのではないだろうか。公募銘柄を、増資公表後空売りした投資家に対して、新株を割り当てる事を禁止することは、余り既存の株主にとって意味が無いように思われる。そもそも空売りがあるから公募株が安くなるのではないし、この規制が若し行われても、単に主幹事証券の販売活動を優位にするだけだ。

○増資後の情報発信=希薄化することは事実なのだから、その後の既存株主への配慮は、十分な企業の情報発信を持って報いるべきだ。

○株主への利益還元策=無理に増配しろと言うわけではない。但し、調達した資本の有効活用で利益増を狙うのは当然なのだから、その際の株主への利益配分の方法(配当及び配当性向の増加・将来の自社株取得枠拡大など)は明確にしていくべきだ。

 結論から言うと、既存株主に十分配慮したファイナンス方法を検討し直す時期に来ていると考えられるが、その意味でライツ・イシューの環境整備が、大いに期待される。報道されるような開示での便宜を図る規制緩和も歓迎すべきことだが、昨年あった日本最初のライツ・イシューでは、多くの証券会社がその取扱いを見送っていた。その意味でも、2月から再開されるという金融審議会で、証券会社を含めた市場関係者が堂々と議論し、方向が決すれば、現場で対応するように証券会社に求める。そんな金融行政を、金融審議会の再開に合わせて、再び期待している。
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新興市場の問題とは何なのか (12月16日)
 大塚ホールディングスが東証1部に15日上場され、東証の時価総額が1.1兆円増加した。今年四月の第一生命に次ぐ大型IPOで、市場では期待とともに祝福ムードでスタートしている。IPOというと新興市場を思い出すが、大塚ホールディングスも第一生命も新興企業ではないし、新興市場に上場もしていない。何を今更と思われるかもしれないが、直接一部に上場するような企業のIPOも、マザーズやジャスダックに上場する新興企業のIPOも、同じ仕組みで上場される。

 最低でも2年近い上場準備期間があり、IPOの主幹事を担当する証券会社が、開示資料作成、取引所への上場審査準備対応を指導し、それから取引所へ上場申請を行い、そして概ね3ヵ月~半年後に上場する。証券会社の組織でいうと、IPO銘柄を発掘する営業部隊があって、上場のコンサルティングを行う部署が1~2年程度面倒みて、上場審査に対応する部署が上場申請をサポートする。結構な重装備(コストがかかる)で、証券会社のビジネスからみると装置産業的な部分がある。だから証券からみると、同じことをするなら当然大型のIPOに集中しがちで、規模の小さい新興企業のIPOは後回しになりがちだった。例えば、取引所の形式基準をクリアしていても、時価総額10億円以上見込めなければ上場申請のサポートも受けられない事例もあった。

 また中堅証券が取り扱ったIPO銘柄の値付けで、企業の経営