株式会社 資本市場研究所きずな
Fainancial Markets R&D KIZUNA
 
HOME 直近レポート 当社の考え 紹介資料 会社概要 お問合せ
 
 


▶法規制
▶法規制
▶法規制
▶法規制
▶法規制
▶法規制
▶法規制
▶法規制




















―資本市場関連行政
―金融商品取引法
―証券業
―証券関連税制
―会計制度
―商品先物法制
―デリバティブ規制
―格付機関
―グローバル金融規制
―銀行の証券業務
―公開企業M&A
―中小企業M&A
―M&A一般
―銀行のM&A業務
―ファンド全般
―ヘッジファンド
―投資信託
―不動産ファンド
―ベンチャーファンド
―ディスクロージャー制度
―取引所・業界ディスクロ
―企業のディスクロ対応
―ディスクロージャー全般
―企業再生
―引受業務
―社債
―新興市場(IPO)
―エクイティ・ファイナンス
―Cガバナンス法規制
―Cガバナンス企業の対応
―企業への投資家の期待
―取引所上場制度
―地域金融機関
―債券市場
―地方取引所
―地域再生
―地方債
―地域企業
―投資教育
―CDS
―FX取引
―証券業界の変化
―PTS
―排出量取引
―CFD取引
―少額継続投資
―保険・不動産
―取引所機能整備
―決済システム




 

   →法律・規則
      ・コーポレートガバナンス・コードについて(6月13日)
      ・コーポレート・ガバナンス強化への取組み~その目的は何か (5月27日)
      ・会社法改正~コーポレートガバナンス強化の概要(7月31日)
      ・会社法はどう変わるか~コーポレートガバナンス強化の部分(7月27日)
      ・コーポレートガバナンス強化の仕組みとしての社外取締役 (3月7日)
      ・コーポレート・ガバナンス議論をやさしく考える (2月11日)
      ・誰が株主なのか?エンプティ・ボーディングの問題 (2010年8月18日)
      ・コーポレート・ガバナンスは今何が問題か (2010年5月24日)
      ・コーポレート・ガバナンス開示強化に関する投資家・企業の考え(2010年3月18日)
      ・コーポレートガバナンスは、どうやって強化されるのか (2009年12月22日)
      ・期待される東証上場制度整備 (2009年10月1日)
      ・誰が為の公開会社法 (2009年9月14日)
      ・コーポレート・ガバナンス改革-その全体像 (2009年6月11日)
      ・コーポレート・ガバナンス-監査役の機能強化 (2009年5月1日

   →企業の対応
      ・新株予約権の多様性と難しさ(9月17日)
      ・株主総会シーズンを控え、先ず見るべきことは・・・(6月11日)
      ・コーポレートガバナンスの概要 (2011年11月18日)
      ・再び注目されるコーポレートガバナンス (2011年10月29日)
      ・期待したい自社株取得の概要 (2011年10月18日)
      ・自社株取得の出口戦略 (2011年10月14日)
      ・今こそ期待したい自社株買い増加 (2011年10月12日)
      ・上場会社には、何故社外取締役が必要なのか (2011年4月13日)
      ・上場会社も日本の資本市場機能強化に協力を (2011年1月13日)
      ・上場企業の不正事例を内部統制報告書にみる (2010年11月29日)
      ・米金融規制と金融機関のコーポレート・ガバナンス (2010年9月10日)
      ・しっかり投票しよう議決権 (2010年5月13日)
      ・企業が考えるコーポレート・ガバナンス (2009年8月19日)
      ・コーポレート・ガバナンス向上の目的は (2009年6月18日)

   →投資家の期待
      ・日本版スチュワードシップ・コードが始まる (6月10日)
      ・期待される企業の余剰資金 (2010年10月18日)
      ・証券は何を期待されているのか:個人編 (2010年8月17日)
      ・投資家の求めるコーポレート・ガバナンスとは何か(2009年8月7日)
      ・ガバナンス強化は投資要因か (2009年6月3日)
      ・投資家にとっての独立取締役 (2009年4月8日)

   →取引所上場制度
      ・取引所と投資家の対話=その2 (2010年11月24日)
      ・取引所と投資家の対話=その1 (2010年11月18日)
      ・独立役員とは何か (2010年4月7日)
      ・上場制度の整備について (2009年5月20日)
      ・東証―上場制度改革の方向性 (2009年5月7日)




コーポレートガバナンス・コードについて(6月13日)
  日本市場がより多様な投資家を引き付け、国際的に競争力のある市場になる為、2つのコードが注目されています。一つは、昨年導入されたスチュワードシップ・コードで、個人など多くの人々から資金を集め運用する機関投資家と対象とした「責任ある機関投資家の諸原則」といわれるものです。もうひとつは上場企業のコーポレートガバナンス・コードで、この6月1日から取引所ルールとして導入されています。

 このコーポレートガバナンス・コード導入は、直接には日本市場の上場企業に対する内外投資家の信頼性を高めることを目的としていますが、ここ10年来議論されてきたコーポレートガバナンス強化も目論んだものです。その為、コード内容については、多少抽象的な記載もありますが、対応事例を挙げることで、企業側の実効性ある対応を促すものでもあります。

 このコード導入によって何か劇的に上場企業が変わる訳ではありませんが、コードによって原則を適用しない理由を説明して、これをディスクロジャーすることが求められており、例えば中期経営計画、より具体的な資本政策、持合い株式の効果、買収防衛策などの会社の方針に関する情報が、今以上に分かり易く株主や投資家に伝えられこととなると予想されます


☆ コーポレートガバナンス・コードについて
・コーポレートガバナンス・コードの適用
・コーポレートガバナンス・コードの効果
・コーポレートガバナンス・コードの概要






日本版スチュワードシップ・コードが始まる (6月10日)
 最近、海外プライベートファンドの方と日本の資本市場の仕組みについてお話する機会があり、その中で日本版スチュワードシップ・コートに対して非常に期待している旨の発言がありましたが、少し意外に感じました。
それまでの筆者の日本版スチュワードシップ・コードに対する認識は、改正される会社法(来年4月施行の可能性)で、社外取締役設置の義務化が出来なかったので、機関投資家側からのコーポレート・ガバナンス強化策として、議決権行使などをルール化するものといったイメージでした。機関投資家としての行動基準を定めて、企業との会話を進めることを目的にしていますので、率直にいって機関投資家側の負担が増すだろうといった感想を持っていました。
一方、海外ファンドの方が期待していたのは、この行動基準によって日本企業の投資家との対話が進み、結果として日本企業の企業価値向上に向けた動きか強まる。その為、企業側・投資家側双方が影響を受けて、日本市場が構造的に変化していく可能性もあるとのことでした。

 そもそものスチュワードシップ・コードは、2010年に英国で制定されたものですが、その背景には2008年の金融危機がありました。銀行が過大なレバレッジを掛けた原因が取締役会のコーポレート・ガバナンス機能が十分でなかったという問題認識もあり、機関投資家が投資先の企業との会話をより積極的に行うことで、これを補おうとするものです。
 この名称のスチュワードとは、中世において領主の財産を預かっていた家令や執事のことを指すようですが、日本版スチュワードシップ・コードは “責任ある機関投資家の諸原則”とされています。
 
 日本版スチュワードシップ・コードは、昨年末にその内容が示され広く関係者や有識者から意見を求めるパブリック・コメントが実施されていますが、原案が英訳されて公表されたことで、海外からのパブコメも寄せられ、その内容が公表されています。海外の機関投資家にもこの取組みを理解して欲しいとのことでしょうが、英文パブコメの公表も、また新しい取組みです。
その内容は、責任ある機関投資家(あくまでも中長期の投資を目指すもので、短期的利益を目指すファンドやヘッジファンドは想定されていません)として企業との対話の在り方や議決権行使に関して基本行動ルールを公表するなど7つの原則が中心になっています。このそれぞれの原則にそって、より具体的な内容を示す指針も示されています。例えば、保有する株式を貸株している場合、貸株取引に関する基本方針を示すべきとか、議決権行使で助言サービス会社を利用している場合は、その活用内容を公表すべきといったものもあります。

 金融庁は、日本の生命保険会社や運用会社などを想定し、5月末まで日本版スチュワードシップ・コードを受け入れるかどうか表明を求めていましたが、120社以上が同基準を受け入れるといった報道がマスコミでなされています。なお、同基準を受け入れる機関投資家は、自社のホームページで自らの行動基準を公表する必要があります。既に、最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や複数の生命保険会社や運用会社などが受け入れを表明しており、今後機関投資家との会話が進むことで、日本企業の投資環境が構造的に変化することに、大いに期待したいと思います。

ページトップへ

コーポレート・ガバナンス強化への取組み~その目的は何か (5月27日)
 コーポレート・ガバナンス強化の背景には、上場企業に係る一連の不祥事がありました。不正会計問題や不法な取引、最近では反社会勢力との取引問題など、日常の業務遂行上起きうる可能性がある問題について、本来監視機能のある取締役などの関与の仕方が課題でしたが、主に取締役に社外の人間を入れること、監査役の機能を強化することなどがその議論の中心になっていました。

 しかし、株主・投資家から見て最も重要なことは、コーポレート・ガバナンス強化の動きがそれぞれの上場企業の企業価値そのものを高めることです。企業内の現預金などを有効に使って新たな投資やM&Aを進めることや、増配・自社株取得などが検討されることなど、最近の決算発表時の市場での反応から、株主や投資家などがコーポレート・ガバナンス強化の何に期待しているか窺い知ること出来ます。

 その上場企業のコーポレート・ガバナンス強化の取組みについて、現状を簡単に纏めますと、次の様な状況となっています。
【会社法の改正】(現国会で審議中)
・実質的な監査機能を強化するため、監査役の代わりに3人以上の取締役(過半数は社外取締役)で構成する監査等委員会を設置する「監査等委員会設置会社」制度を創設する。
(これに伴い、現在の「委員会設置会社」は、「指名委員会等設置会社」に名称変更)
・取締役や監査役の社外要件を厳格化する
・社外取締役を置いていない場合の理由を株主総会などで開示すること。
(※詳細は弊社作成資料=会社法はどう変わるのか(2012年8月作成)

なお、民主党は参議院において以下の対案を提出しています。
・資本金5億円以上若しくは負債が200億円以上の上場会社に対して、1人以上の社外取締役設置を義務化

【取引所ルール強化】(2014年2月10日より)
・上場会社は、取締役である独立役員(会社法の社外取締役の基準より、企業からの独立性をより強く求められている。)を少なくとも1 名以上確保するよう努めなければならない。

なお、本年1月より算出している新株価指数”JPX日経インデックス400”では、銘柄選定の際のスコアリングにおいて、独立した社外取締役が2名以上いる場合、加点されることとなっています。

一方、上場企業の株式を大量に保有する機関投資家の立場から、上場企業のコーポレート・ガバナンス強化への取組みとして、次の様な原則が本年2月に金融庁より示されています。
【日本版スチュワードシップ・コードの策定】(機関投資家としての、上場企業コーポレート・ガバナンスへの関与)
1. 明確な方針を策定して、公表
2. 監理すべき利益相反(スチュワードシップ責任との)について、明確な方針を策定して、公表
3. スチュワードシップ責任を果たすために、企業の状況を的確に把握する
4. 「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図り、問題の改善に努める
5. 議決権の行使と結果の公表に明確な方針を持ち、企業の持続的成長に資する工夫をする
6. 議決権行使及びスチュワードシップ責任に関して、顧客・受益者に定期的報告を行う
7. 投資先企業との対話やスチュワードコードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備える
ページトップへ

新株予約権の多様性と難しさ(9月17日)
 新株予約権は、会社法では“株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。”(法第2条第21号)というように、比較的簡潔に定められています。もっと簡単に言いますと、会社が発行する“株式を収得する権利”です。
ただし、誰に、何の目的で、いくらで、どの位の期間有効か、などを考えると、実に多様な使われ方をしていますので、以下にその利用方法を纏めてみました。しかし、どの様な使われ方をしていても、最終的に株式の発行を目指した資本政策であることに変りありません。

☆ 新株予約権の多様性と問題点

 つまり、新株式の発行価格(新株予約権の行使価額)が1円であっても時価の2倍でも、他の株主の資本持分に影響する訳ですから、その新株予約権の価値がどの位のものか、投資家に伝える必要があります。

特に、市場での引受者による裁定取引を前提としたMSワラント、新株予約権と貸株契約の複合スキームなどをファイナンスとして利用する場合、他の一般的な個人投資家まで売買取引に参加させることが前提な訳ですから、新株予約権の価値や貸株契約内容に関して、個人レベルまで解り易い明確かディスクロージャーが求められるべきと考えます。
 
ページトップへ

会社法改正~コーポレートガバナンス強化の概要(7月31日)
  前回は、会社法改正案のコーポレートガバナンス強化の部分について取り上げましたが、7月18日の法制審議会会社法部会で示された”会社法制の見直しに関する要綱案(第1次)”を基に、その概要図を作成しましたので、ご参考下さい。

☆会社法はどう変わるのか~(平成24年7月末時点) コーポレートガバナンス強化の概要
ページトップへ

会社法はどう変わるか~コーポレートガバナンス強化の部分(7月27日)
会社法の改正に関しては、2010年4月から法務省の法制審議会において審議が進められ、2011年12月に中間試案が公表されていた。同試案に対する各界の意見も出揃い、審議が重ねられこの7月には要綱案のかたちで会社法改正の概要が取り纏められている。今後の予定では、法制審議会は8月1日に正式に要綱案を決定し、9月に法相に答申を行い、その後の臨時国会に会社法改正案として提出される予定だ。
この要綱案は、主にコーポレートガバナンスの強化に関する部分と、企業結合法制度についての不都合の解消を目指した部分に分かれているが、今回はコーポレートガバナンス部分をなるべく平易に取り上げてみたい。
 最大の注目は、今でも上場会社の半数程度しか導入していない社外取締役の選任を義務付けできるかどうかだったが、中間試案では併記されていた義務付けは経済界の強い反対で見送られた。その代わり、以下の対応が企業に求められる。
○上場会社であり大会社のうち監査役会設置会社は、社外取締役が存在しない場合、その理由を事業報告に記載しなければばらない。
(社外取締役の選任が必須の委員会設置会社は、上場会社でも少数)
(要項案の補足説明としては、東証の上場規則で社外取締役を一人以上確保するよう努める旨の規律を設けるとある。ただし、現在の取引所規則では取締役か監査役どちらかに独立性の高い方を選任する独立役員制度が既に導入されている。)
○社外取締役や社外監査役の“社外”要件に次を加える。
・親会社の役社員ではない。
・兄弟会社(同一の親会社がある)の役社員ではない。
・取締役や重要な使用人等の配偶者又は2親等内の親族でない。
・その会社に10年間は役社員として在籍していない。

 また、監査役会設置会社や委員会設置会社とは異なる新しい会社の組織として「監査・監査委員会設置会社(仮称)」を新設する。
○監査役を置かない代わりに、監査・監査委員となる取締役をそれ以外の取締役と区分して株主総会で選任する。
○株主総会に監査・監査委員となる取締役を選任する議案を提出する際、監査・監査委員会の同意が必要となる。
○監査・監査委員となる取締役の任期は原則2年で、その報酬は他の取締役と区分して総会で決議する。
○監査・監査委員会は、3人以上で組織し、その過半数は社外取締役でなければならない。また、会社や子会社の役社員は兼ねることは出来ない。
○監査・監査委員会の権限については、委員会設置会社の監査委員会と同様

大規模な第三者割当増資に関して、支配関係は入れ替わるような増資を取締役会決議だけで実施することは、現行法では可能だが、要項案では以下の制約を設ける。
○第三者割当後、過半数の議決権を保有する新たな株主が出現する場合には、他の株主に2週間以上前に通知(公告で可)する必要
○上記の場合、議決権の10分の1以上を有する株主は、当該増資に反対する旨の通知をした場合、株主総会で当該増資の承認を受ける必要がある。

また、増資の仮装払込みに対しては、次の様に定められる。
○現金でも現物出資でも、新株を引き受けるものは払込みを仮装した全額を払い込む必要がある。
○また、仮装払込みに関与した取締役は、全額を払込む義務を負う。

ページトップへ

株主総会シーズンを控え、先ず見るべきことは・・・(6月11日)
鬱陶しい梅雨空と、2度目のギリシャ選挙待ちの市場の重苦しい雰囲気の中で、今年もまた株主総会(3月決算期で、上場会社の約75%、社数で約2600社)シーズンがやってきます。昨年からのオリンパスや大王製紙の問題もあり、コーポレートガバナンス強化が各処で言われていますが、投資家として株主総会で見るべき視点ということを考えた時、上場会社の約半数しか採用していない社外取締役制度の是非や、社外取締役・社外監査役の独立性を問う事は、喫緊の株主総会テーマではないように思われます。
勿論、世界中の投資家から安心して投資してもらう為には、コーポレートガバナンス強化は必須で、米国に負けない世界最高水準のコーポレートガバナンスを目指すべきだとは思います。しかし、これらは会社法の問題や取引所ルールで対応すべきと考えますので、個別企業の基本的な施策が明確になる株主総会テーマとしては、重要度は落ちるのではないでしょうか。

同じように、役員報酬(1億円以上)の個別開示問題も、一時のマスコミの話題にはなりますが、元々報酬水準が欧米の経営者の5~10分の1と言われる中で、投資家・株主としてみるべき優先度は高いとは思えません。

 投資家という視点で、株主総会における各上場会社の議案を見るなら、当然利益配当の還元ということが最重要視されるべきでしょうが、(社)生命保険協会が毎年実施している機関投資家向けアンケート調査(平成23年度は153社対象)では、53.2%の投資家が配当性向を重視しています。この比率は、前年に比べ2割以上増加していますが、これに自己株式取得金額を加えた総還元性向(分母は当期利益)を重視する投資家も35.4%と増加傾向を強めています。

 現在、上場企業の手元流動性資金は60兆円超えて史上最高額に達していると言われていますが、平成23年度に実施された上場企業の自社株取得は約1.5兆円に留まります。この数値は、平成22年度(9,951億円)に比べると5割以上増加していますが、平成19年(年間ベース)の約4.4兆円、平成20年の約4兆円に遠く及びません。
株主総会に向け、株主や投資家から先ず注目されるべきは、この自社株取得枠の設定や増加でしょうし、出来れば配当と自社株取得を合わせて利益の何割を還元していくといった目標の設定(総還元性向)が望まれます。

 一方、利益還元策以外に投資家が株主総会において望むものは企業の成長戦略ですが、これは主に中期経営計画などによる説明が求められています。先ずは中期経営計画などで、経営ビジョンと計画を投資家に示して欲しいというニーズは、先の生保協会の調査では機関投資家の9割以上がもっていますが、実際の公表は72%(前年度66%)に留まります。
また、少なくとも企業価値を減じる施策は排除されるべきですが、株主にとって判断が難しいのは買収防衛策です。現在も、約500社が導入していますが、個々の企業によって株主構成も成長戦略も異なるので、その判断は各社の株主が、企業価値を守ったり向上させたりする効果があるか判断することに委ねられています。但し、安定株主もおらず、成長産業でもなく、経営計画も公表していないというのでは、株主はその判断に窮します。
 
株主総会を控え、株主にとって先ず重要なことは、大きな意味での利益還元策、さらにそれを含んだ資本政策がどういった方向性を持っていくかという事なので、企業にはこの資本政策が分かり易いディククロージャーを行うことに期待しています。 
ページトップへ

コーポレートガバナンス強化の仕組みとしての社外取締役 (3月7日)
オリンパスや大王製紙の件で、再び日本の上場企業のコーポレートガバナンスが問われている。上場企業の経営者の独断専行が行われないよう、外部の牽制機能として社外取締役の機能が期待されているが、これは、あくまでも株主や投資家の立場からなので、実際の“社外”の意味は少し異なる。

会社法で定める処の“社外”取締役の要件は、会社に所属していないことは勿論、その会社と子会社に過去5年間役社員として在籍していなければOKだ。親会社からは勿論、主要な取引先、コンサルティングの依頼先など、経営陣と利害関係があっても “社外”取締役となることが出来る。会社法は、全ての株式会社を前提としているので、ある意味では当然だったかもしれない。しかし、株主や市場が求める“社外”とは、経営陣への牽制機能であり、その為には経営陣から経済的には独立した存在でなければならない。

よって、取引所では上場会社に対して、経営陣からの独立性の高い独立役員の設置を上場企業に求めている。これは、社外取締役においても約半数の上場企業しかの導入していない実績を踏まえ、東証が定める独立性の基準を満たす社外取締役か社外監査役(殆どの上場企業で半数以上が社外監査役である必要がある)であれば良しとした。

取引所が定める独立役員の要件は、唯1点で“一般株主と利益相反が生じるおそれのない”ということだが、ただしその独立役員が、直接及び間接的(近親者が該当)にも上場企業と経済的関係が強い場合は開示するという牽制機能がついている。

この制度は2010年に導入されたが、オリンパスも大王製紙もこの制度では、社外監査役のみを独立役員としていた。よって、オリンパスの独立役員は、代表取締役解任の決議に参加する権限を持っていなかったし、大王製紙ではファミリー企業の私物化が起こりやすいような企業グループの形成に異議を唱える権限もなかったということになる。また、独立役員とはならない社外役員でも、会社との取引や役員相互就任、あるいはこれらの会社からの寄付と受けている場合もあった。

本来なら、独立性の高い社外取締役導入を上場会社に義務付けるというのが、コーポレートガバナンス強化の目的に沿っているように思うが、これが上場会社の実態が遠いのと、現在法制審議会で会社法の見直しが為されているので、こちらの法改正を待たなければならない。

但し、取引所は独立役員及び社外役員の開示を強化することで、株主や投資家がガバナンスを判断しやすくするよう上場制度を見直す。会社との間での取引関係、社外役員を相互に就任させる関係、会社から寄付金等々を受ける関係に関する情報開示を徹底し、この3月期決算会社に対応できるよう5月を目途に実施する。

一方、法制審議会では既に会社法改正に対して中間試案が公表されているが、社外取締役の選任の義務付けについては、以下の3案併記となっている。
A案=公開会社でかつ大会社である場合に、義務付け
B案=有価証券届出書の提出を行う会社に、義務付け
C案=現行法を見直さない
取引所や投資関連諸団体は、マザース上場企業など、会社法上の大会社に該当しない場合があるので、B案を支持している。また社外取締役の要件として、親会社の役社員を除く案多く支持されている。

ただし、コーポレートガバナンスの仕組みをチェックして投資家に伝えるのは、やはり取引所を含めた市場の基本的な機能だろう。

ページトップへ

コーポレートガバナンスの概要 (11月18日)
 ここ10年来、上場企業の不祥事がある度に、コーポレートガバナンス機能の強化が話題になります。
現在も、法務省の法制審議会で会社法改正の議論が行われていますが、本来の改正議論は、M&Aなどを進めるのに、技術的な障害を除きながら、一方でコーポレートガバナンス強化の仕組みを、企業が過度の負担を負わないように検討していこうという趣旨だったと思います。
難しい議論は、法学者の先生方にお任せしますが、企業も人で構成されている以上、約3800以上ある上場企業にも、確率論的に何か予期しない事が起きるというのが投資家の前提ではないでしょうか。
どの様な制度に変更しても、人が絡む以上、不祥事の発生を100%抑えることは不可能です。故に、不祥事を抑止する仕組みも大事ですが、早期発見が重要で、米SOX法に影響されて導入されたのが内部統制報告制度だったはずです。
 また、早期発見の為の仕組みも大事ではありますが、永年上場企業対して資本市場のアドバイザーとして接してきた経験から言いますと、問題のある企業は、ディスクロージャーの姿勢が急速に悪化することが多かったと思います。
 株主や投資家への影響がある何か起きたら、すぐにディスクロージャーを実施する。この事が、社内的にも、対外的にも不祥事に対する牽制になって、企業も株主も、そして日本の市場も守られると考えます。
 ちなみに、日本企業のコーポレートガバナンス格付けは、GMI(Governance Metrics International)が公表する2010年のランキングでは39カ国中36位だそうです。

☆コーポレートガバナンス問題の概要
 
ページトップへ

再び注目されるコーポレートガバナンス (10月29日)
 大王製紙やオリンパスの件で、再びコーポレートガナバンスの在り方が注目されている。両社とも事件と呼ぶような事態になりそうだが、詳細な解明とその説明が待たれる。
誰が、株主や投資家、そして取引先や従業員などのステークホルダーに説明していくかというと、当然両社の経営者=取締役ということになるが、今回の件に関して両社の取締役会の監督機能や監査役会のチェック機能が正常に働いていたのか検証される必要があるだろう。自ら検証できなければ、外部の識者による第三者委員会の調査ということになるのは、過去の上場会社の不祥事で辿ったことだ。
 コーポレートガバナンス改革はもう十年来のことだが、個人も企業も完全に不祥事がなくなるということはなく、企業においては、どうチェックしていくかという態勢整備に注力されていて、その情報公開が内部統制報告書(金商法)やコーポレートガバナンス報告書(取引所)となっている。
ちなみに、両社のガバナンス強化の上場は次のようなものだ。

【大王製紙】
・オーナー型企業と言われるが、支配株主はいない。
・取締役会は13名の取締役で構成あれているが、社外取締役はいない。
・監査役会は5名で構成され、うち3名が社外監査役だが、このうち2名は会社と顧問契約や何らかの利害関係がある弁護士であり、当社が規定する独立役員に準じるものは1名のみとなっている。

【オリンパス】
・支配株主はいなく、筆頭株主は日本生命の8.2%保有。
・取締役会は15名で構成されており、うち3名が社外取締役。
・その3名は、医学博士や日経グループの経営者・投資コンサルタントで、いずれも会社との利害関係があるので独立役員ではない。
・監査役会は4名で構成され、うち2名が社外監査役。そのうち1名が独立役員となっている。
・社外取締役や社外監査役へのサポート体制は、取締役会の事前の資料配布および説明としている。

上場会社においては、その経営は業務執行の権限と監督責任が形式的には分離されるようになってきているが、特に監督機能を有する取締役会には外部の視点でチェックが必要とされ、その為、企業活動や経営陣とは直接利害関係を持たない独立性の強い社外取締役が望まれている。現在の会社法に定める社外取締役や社外監査役の規定では、社外という名称のイメージに反して企業との利害関係がある場合が多く、外部チェックという機能を果たしているかどうかが疑問視されていた。
これに対して東証が上場規則(企業行動規範)で、独立役員(取締役でも監査役でも可)を1名以上採用すべきとして2年近く経過したが、本年7月末時点では東証上場の2271社中で、独立役員未採用会社は3社のみで、99.9%の採用率となっている。但し、その内7割は監査役のみで、取締役での独立役員の採用は3割に過ぎない。

独立性の高い取締役を採用しない主な俗説としては、会社の業務が分かっていないとか適切な人材不足を上げるケースが多いが、むしろ自社の内部統制システムなどの利用で、外部からのチェックに対する支援が必要なのではないだろうか。日本の株式市場再生の為にも、今回の2社の事件を機に、再びコーポレートガバナンス強化への取組みが行われることを期待したい。
ページトップへ

待したい自社株取得の概要 (10月18日)
最後の買い手として期待したい自社株取得の概要について、図式化してまとめてみました。

・最近の自社株取得概要
・自社株取得方法と売り手
・自社株の出口戦略
・自社株取得目的CBの発行事例

どうそ、ご参考までに。

☆期待したい自社株取得の概要
ページトップへ

自社株取得の出口戦略 (10月14日)
投資家なら、誰しも安く買って高く売る事を前提に売買を行おうとする。アナリストのレポートを読んだり、チャート分析に頼ってみたりするのだが、なかなか儘ならぬ結果となる事が多いのは当然の事だろう。しかし、安く買って高く売るのに最も近い立場にいるのが上場企業だろう。昔の商法では、資本充実の原則から、一旦株主や投資家から集めた資本を減少させるような自社株取得は出来なかったが、バブル崩壊後の金融機関の持ち合い解消に対応することと、資本そのものを欧米企業のように経営戦略として出し入れが出来る資本政策の柔軟化などから、自社株を上場企業自ら買い戻すことが可能になって10年以上が経過した。
誤解ないよう言いたいが、上場企業も自らの株式を安く買って高く売って良いのだ。そして、自らの業績は自らがもっとも良く知っているのだからアナリスト要らずで、チャートなどに頼る必要もない。
但し、投資家とは異なる売買ルールがある。それは、買うときも売る時も株主や投資家に公表してから売買を行う。前回は、買う方法について触れたので、今回は売り方についてコメントしてみたい。

 実際、上場会社が自社株を市場の立会時間内の取引で売ることは、持株会の参加者が脱会する以外には用いられることはない。しかし、自社株取得で買い取った株=金庫株を以下の方法で他者に売り渡すことが出来る。少しくどくて申し訳ないが、自社株取得の時のように市場(立会時間内)で自由に売却することは出来ないが、自社株を高く売っても良い。但し、この場合は利益には計上できず、儲かった(?)部分は資本準備金に別途計上される。(仮に自社株を取得価格以下で売却した場合は、この資本準備金のこの勘定科目にマイナスがたつ)

主な金庫株の処分方法は、以下のようなものがある。

①金庫株の売出し
自社株取得した金庫株は、資本勘定から差し引かれる(マイナス要因として計上)が、取得した株を売り出すときはこの資本勘定のマイナスが解消され資本が復活することになる。この金庫株の売出しは、結果としては増資するのと同じことになる。手続きは他の株主が売り出す時と同じだが、当然自らが抱えるインサイダー情報には配慮する必要があるので、インサイダー情報公表後に行わなければならない。

②M&Aの対価として利用
つまりお金の代わりに、相手に企業の株主に対して金庫株を交付する。この方法は、商法から会社法に変わった時、対価の柔軟化で認められた方法だ。安く自社株を買っておいて、株価が回復した時にM&Aの買収対価として利用すれば、結果として資本準備金も厚くなり、株主にもメリットが生じることになる。
但し、この方法は現在①の方法と同様にインサイダー情報に配慮しなければならない。もし対象となるM&Aが株価に影響を及ぼす様なM&Aであれば、公表までいくらの金庫株を渡すか決定できないことになる。その為、この方法は使い難いとされていて、現在金融審議会ではM&Aで金庫株を渡す場合に、インサイダー取引の対象となる売買の定義から除外する検討がされている。

③自社株を消却する
将来の資本調達とは別にして、一旦自社株を消却してしまうことは、株主にとって一株当たりの利益を高めるので、機関投資家などから好ましい処置と考えられている。企業財務の原則論としては、その通りかもしれないが、企業側に選択肢を多く与えることで自社株取得と促進させるべきと筆者は考える為、あまり消却に拘る必要もないと思う。

④金庫株としてそのまま保有する
①から③までを選択するまでのあいだ、取りあえずそのまま保有するケースが多いが、別途次の様な使い道の為に、保有し続けておく場合もある。
・新株予約権を株主や投資家に付与した場合、その行使に備える。
・役社員等に付与したストックオプションの行使に備える。
・発行した新株予約権付社債(CB=転換社債)の株式への転換に備える。
要は何らかの形で発行した新株予約権の行使に備えるという事だ。

最後のCB利用の特別なスキームとして、次の様なものがある。
自社株取得の資金調達を目的にCBを発行し、その資金で自社株を取得、その後の株価上昇でCBの転換が進めば、買い付けた自社株(金庫株)を転換の際に渡す、文字どうり安く買って高く売り仕組みを、リキャップCBと呼んでいる。例え手元資金が無くとも、自社株取得は可能なのだ。

ページトップへ

今こそ期待したい自社株買い増加 (10月12日)
世界経済の先行きも不透明なので、手元資金を手厚くしておきたい。個人として気持ちは分からないでもないが、上場企業の財務戦略としては如何なものだろか。

日経によると、この3月期末時点で上場会社の手元資金(現預金+短期の有価証券)は過去最高額となったようで、連続比較ができる1076社(金融、新興市場企業は除く)を対象に集計した手元資金は、51兆7474億円と前年度末より4%増えている。

一方、2011年度上半期(4月~9月)の自社株取得は、6725億円と前年同期比8割増加したようだが、この水準でも金融危機前の自社株取得の3分の1にも満たない。ちなみに、2008年の上場会社の自社株取得額は4兆302億円、その前の年は4兆4942億円と今とは全く水準が違う。
潤沢な手元資金、前年より増えているとは言えまだ低水準の自社株取得。せめて、手元資金の1割でも自社株買いが行われば、欧州不安や世界経済の減速にもっと抵抗力のある日本市場になるのではと淡く期待してしまう。BPR(株価純資産倍率)が1倍を大きく割り込んでいる企業の経営者は、真っ先に自社株買いという投資案件を優先していただきたい。

 その自社株買いの具体的な方法と処理について、簡単に触れておきたい。
先ず上場企業の自社株取得についていうと、3つの方法がある。ただし、自らの株式を売買する上場企業であっても市場の1参加者として取引ルールに従わなければならない。

①TOB(公開買付)による自社株取得
これは、主に大株主などから纏まった買い取り要請がある時に利用される。自社株を一度に大量に取得しようとする時に適していると言われるが、20営業日以上の期間に同一価格で取得することになるし、株主への周知も必要なことから、手間やコストが他の方法よりもかかる。それでも、売却を予定している大株主以外の他の株主へもTOB応募の参加機会を与えているので、株主平等原則から優れた方法と言われている。なお、MOBの場合のように買取価格に大幅なプレミアムがつくことはなく、あっても数%である。主に発行済み株式数の5~10%以上を自社株取得しようとする場合に使われる。
(※自社株といえども、市場外取引で株式を5%以上取得する場合は、TOBによらなければならない。以下の2つの方法は、一応市場(取引所)取引なので、このTOB規制はかからない。)

②取引所での立会時間外取引による自社株取得
金融機関からの買取りや持合い解消など場合に利用される。方法としては、前日の取引時間終了後に、翌日の実施を公表、買取価格は前日の終値で行う。周知としては1日しかないので、売り手との合意が事前に必要になるが、東証のToSTNeT-3や大証のJ-NeTを使うことで、立会時間外だけれども市場取引となる。以前は、注文時間優先だったが、本来自社株として取得すべき上場企業に先んじて業者などの鞘取り行為もあったために、委託注文の案分方式に変更されている。主に、売り手が決まっている場合の発行済み数%までの自社株取得に利用されている。

③市場(立会時間内)からの買付けによる自社株取得
この方法が、株主や投資家から最も期待されているのは当然だ。しかし、自社株取得においても上場企業は市場の1参加者なので、市場取引ルールは守らなければならない。例えば、企業は自らのインサイダー情報をもっているが、当然公表後でなければ自社株であっても取得することはできない。だから上場企業が市場から自社株を取得できる時期は限られているが、一般的には、総会のある上期より、上期決算発表後の下期の方が可能な期間が長くなる。
もう一つ注意しなければならない市場取引ルールは、不正取引としての相場操縦行為だが、これに配慮して上場企業の自社株取得に対するルールがあった。1日の出来高の25%以下しか買付けないとか、引け前の30分間の買付けを行わないといったものだが、この部分については金融危機後の空売り規制とともに停止され、現在は100%企業の自社株買いであっても良いし、引け間際に自社株を取得することも出来る。

 上場企業が、自らの潤沢な手元資金、市況環境、取得規制の緩和を上手に使うことを期待し、日本市場が強さを回復することを祈りたい。
ページトップへ

上場会社には、何故社外取締役が必要なのか (4月13日)
 投資家にとって、上場企業のコーポレート・ガバナンス強化は、ディスクロージャーの徹底とともに最低限求めたいことだ。安心して投資する為には、会社から発信される情報に信頼性があり、かつ株主としての権利が守られている。そう信じなければ投資のリスクは取ることが出来ない。希薄化を招く大規模な第三者割当や公募増資、MBO、合併や企業統合。それ自体は、企業が生き残りをかけて取る戦略の為に必要なことで、結果としては企業価値を高める目的で行われる。しかし、支配権を持たない一般の株主(少数株主)にとって、一時的であっても株価下落に晒されるリスクや、上場廃止で半ば強制的に株主としての退場を求められることもあり、その際に上場企業側や支配株主(親会社や大株主など、実質的に会社を支配しているもの)とは、利益相反することになる。この普通の株主としての立場を誰が守るか。その仕組みが、明確に市場に向かって示されていなければ、上場会社としては成り立たない。

 上場会社の意思決定機関である取締役会や、監査機能をもつ監査役会において、外部(社外)のチェックをどう入れるか。東証は、独立性の高い社外取締役や社外監査役を独立役員と定義して、上場会社に対してその導入を昨年4月以降、求めている。一方、法制審議会による会社法見直しでは、社外取締役の機能について、次のように整理されている。

① 経営効率の向上のための助言を行う機能(助言機能)
② 経営全般の監督機能
(a) 取締役会における重要事項の決定に関して議決権を行使することなどを通じて経営全般を監督する機能
(b) 経営全般の評価に基づき,取締役会における経営者の選定・解職の決定に関して議決権を行使することなどを通じて経営者を監督する機能(経営評価機能)
③ 利益相反の監督機能
(a) 会社と経営者との間の利益相反を監督する機能
(b) 会社と経営者以外の利害関係者との間の利益相反を監督する機能

 この社外取締役について、東証上場会社2294社の48.7%(2010年)が導入していて若干の増加傾向にあるものの、半数以上が導入を見送っている。その主な理由は次のようなものだ。

【社外取締役を選任しない理由】
・社外監査役を中心とした監査役(会)や取締役相互の牽制が働いている
・執行役員制度の導入による監督と執行の分離をおこなっている
・アドバイザリー・ボード等による助言機能が十分に機能している
・取締役の任期を1年に短縮したことで株主によるチェックが機能する考え方
・任期が4年である監査役のほうが短期的視点に左右されない大局的な観点からの助言・問題提起が有効
など
一方、社外取締役を導入している企業についてその属性が次の様になっている。
・他の会社の出身者---68.1%
・弁護士---11.1%
・学者---8.4%
・公認会計士・税理士---8.4%

問題となるのは、他の会社の出身者だが、この内の3分の1以上が親会社や関係会社若しくは大株主となっており、少数株主の為に利益相反などのチェックが出来る立場にあるかどうかだ。この部分に関して東証が求めたのは、企業からの独立性の保てる社外取締役だが、同様の独立性の社外監査役でも良い(両方を総称して独立役員)としたことで、企業の最高意思決定機関である取締役会に外部の目が入るべきという本来の社外取締役制度の目的が薄れているようにも思われる。上場ルールで、企業の在り方を縛ろうとすることに限界があるのかも知れないが、現在法制審議会では社外という言葉の定義や、社外取締役を義務付けるかどうかの議論が行われている。日本企業の復興の為には、上場企業のコーポレート・ガバナンス強化の取組みも、国内外の投資家や株主から期待されることである。

ページトップへ

コーポレート・ガバナンス議論をやさしく考える (2月11日)
 もうこの議論は10年以上もしている。だからと言って、議論に飽いたとかいう事ではなく、資本市場を構成している基本要素の会社(上場企業)というものが、どう運営されていくべきか、そして会社は誰のものかと言った議論に会社自らがどう答えていくか、コーポレート・ガバナンス向上の為の取組みは、日本の資本市場の品質向上の為の必要最低条件だ。ここで対照的な2つの事象を上げておきたい。

 中国などの新興国の企業にとって、日本の衰退産業と言われる分野の上場企業は、割安かどうかは別にして、コーポレート・ガバナンスが良いのが魅力的だと伝えられている。

 一方、欧米の機関投資家中心に、上場企業に対するガバナンス改善要望が常に示されていて、ファイナンスや配当政策など資本政策に関するもの、役員選任や報酬などの透明性、それらを外部からチェックする機能として社外取締役の充実など求めている。

 現在、法制審議会において会社法の見直しが行われており、詳しい法律議論はそちらに委ねるとして、上記の新興国企業の視点は、日本企業のコーポレート・ガバナンスを上から見た企業支配のものだろうし、海外の機関投資家の視点は、それを横から見た少数株主(支配権を持たないという意味)のものだろう。ただし、資本市場にその企業が居続ける限り、投資家という名の少数株主の要望にどう応えていくかが、このコーポレート・ガバナンス議論の行く先だろう。

なお、現在のコーポレート・ガバナンス議論は、“会社の経営形態がどうあるべきか”というものが中心になっているが、昔からある監査役会設置会社(取締役会と監査役会)が良いのか、社外取締役を多く取り入れた委員会設置会社(社外取締役の参加が必要な指名・報酬・監査の2つ委員会)が良いのか、委員会設置会社から監査委員会を取り出した監査委員会設置会社(経済産業省や経団連などが提案)が良いのか、そして社外取締役や社外監査役の社外と言う定義は、大株主や主要取引先などでも良いのか。

 どの様な形や定義にしろ、会社の不測のアクシデントや一部経営者の誤った判断から守る仕組みが求められていて、会社から独立した何らかの経営へのチェック機能が必要というところに纏まる。方や、投資家の方も、特に機関投資家は少数株主の代表として、コーポレート・ガバナンス向上への具体的行動を求められている様に思われる。

以下、ご参考までに、会社法見直しを受けて、現在金融庁主催で行われているコーポレート・ガバナンス連絡会議において、昨年の株主総会の特徴として説明されたもの(議事録より)。なお文末の注記は筆者。

<総論>
○6月の株主総会について、6月総会開催日の特定日への集中率は減少し、株主総会招集通知の発送が早期化。株主総会の場では、会社による丁寧な説明が行われる傾向が続く。来場株主数は引き続き増加傾向で、発言株主も増加傾向。
○株主提案の件数は増加傾向が続いており、提案にはコーポレート・ガバナンス論の核心に触れる内容のものがみられた。
○独立性の基準について機関投資家の間からは企業との考え方の相違を指摘する声もある(特に金融機関出身者を対象)。
<国内機関投資家の動向>
○企業年金連合会は取締役の独立性判断を厳格化。その他国内投資家も社外取締役の有無、独立性などコーポレート・ガバナンス体制に注目している。社外者への報酬等には厳しい見方をとり、その考え方は海外投資家に似ている。
○公的年金などスポンサーによる自発的な議決権行使は限定的。ヒアリング等を通じ、運用委託先の議決権行使に影響力を行使する傾向は変わらず。
○海外投資家は、取締役会の機能をモニタリング機能・アドバイザリー機能と考えており、業績については執行者が責任を負うべきものと考えているため、取締役会に対してはその責任を問わない。他方で、国内投資家は、取締役会を業務執行機関と見ているため、業績や資本効率性についても取締役会が責任を負うべきものとして介入してくるという特徴がある。また、企業不祥事をリストアップ、個々の取締役・監査役の役割にも注目する傾向が強まっている。
<海外機関投資家の動向について>
○大半はISS(注1)等外部の議決権行使助言会社の考え方に沿っている。社外取締役が少ないことが議決権行使の争点となっている。社外取締役がいない会社に対し社長・代表取締役等へ反対票を投ずる傾向が顕著になった。
○社外監査役や委員会設置会社における社外取締役のように、義務化された制度における社外役員の独立性に注目している。しかし、監査役設置会社の社外取締役の独立性には甘い。これは、監査役設置会社については一人でも良いから社外取締役をおいて欲しいという意思表示の表れ。
○配当性向に注目。海外の企業がそれを目標として公表するようになったためと思われる。
<海外の株主総会における特徴>
○アメリカの株主総会において、選任につき機関投資家の反対が多かった取締役の特徴としては、独立性、特定取引に関する情報開示が不十分、過剰兼務等が挙げられる。
○欧州では「Comply or Explain」原則(注2)を遵守する会社における議案支持率は高水準。また、役員報酬に関する議案も関心を引いている。
<国内外の株主総会が示すコーポレート・ガバナンスの方向性>
○「Comply or Explain」規範を持つ国では、安定株主比率が低くとも議案支持率は高い。機関投資家がこの規範を支持するため、会社による遵守宣言がある場合には賛成票の増加につながりやすい。規範のないアメリカでは株主提案が多発し、これが相当の支持を得ていることから、コーポレート・ガバナンスへの取り組みが拡散し、企業も個別の対応に追われる傾向がある。
○「Comply or Explain」規範は企業を対象とする行動規範であるため、企業みずからが現状を踏まえて制定することが望ましく、これを株主・機関投資家が評価・支持し、さらに遵守状況についての説明を開示義務とすることで実効性が高まる。あわせて、機関投資家も規範のメリットを享受するとともに、自らも受託者責任を認識した行使およびその開示に努めることが求められる。

注1:ISS=Institutional Shareholder Services大手議決権行使助言サービス機関
注2:「Comply or Explain」規範=欧州においては、企業と機関投資家などが協議して、コーポレート・ガバナンスに関する統合的な規範を作成(行政も関与)。遵守するか、そうでない場合は年次報告書等で説明をする。

ページトップへ

上場会社も日本の資本市場機能強化に協力を (1月13日)
 昨日は経済界が期待する日本の資本市場のあり方を取り上げたが、経済界というより上場企業に対して、それ程のコストがかかる訳ではないので、出来れば協力要請を、出来ない分は期限を決めて、上場規則化すべきだと考える点が二つある。

 一つめは、議決権電子交付プラットフォームへの参加だ。先ずこれは何かという説明をしたいが、株式の直接の名義人にならない国内・海外の機関投資家が、自らの議決権を行使しやすくする仕組みで議決権の電子投票にも対応している。東証の言葉を借りると、ICT を駆使して株主総会実務に関わるすべての関係者(議決権行使指図権を有する実質的な株主を含む。)をネットワークでつなぐことにより、株主総会の議案情報の伝達、議決権の行使及び議決権行使結果の集計をストレート・スルー・プロセッシングで行う証券市場のインフラということだが、その効果は、
①招集通知の発送から総会開催までの総会期間中、議決権行使結果を毎日確認すること
②総会期間中、議決権行使結果を踏まえて投資家に対して効果的に追加情報を発信すること
③投資家の実質的な議案検討期間の十分な確保により株主サービスを充実させること
④電子投票の高い利用率を実現することが可能
とされている。上場企業にとっては、議決権の行使率が上がるとともに、内外の機関投資家の投票行動をサポートすることで、ガバナンスの向上及び機関投資家の投資行動を容易にする効果も期待できる。
しかし、このプラットフォームへの参加は、現在372社(1月13日時点)に過ぎず上場企業に1割にも満たない。この制度は実質的に2006年から始まっているが、低加入率は何故か考え直す時期にきているのではないだろうか。現状だと、新たにプラットフォームに参加する企業は、総務担当者の多少の手間が増えることと、このプラットフォームのコストを負担しなければならない。このコスト負担を誰が負うかよく議論した上で、強制加入も求めるべき時と考える。上場企業にとっても上記のメリットとされること以外で、昨年から始まっている議決権投票結果の公表にも役立つことをアピールすべきだ。

 二つめは、J-IRISS(ジェイ・アイリス:Japan-Insider Registration & Identification Support System)への参加だ。このシステムは、上場企業の役員情報を上場企業自らが登録することでデータベース化し、証券会社が定期的に自社の顧客情報と当該データベースを照合確認することで、不公正取引の未然防止等に活用する。運営は日本証券業協会が行うが、システム構築の数十億円の費用は所謂ジェイコム基金の一部で賄われた。この様なシステムは、海外市場にはないようだが、その分欧米のインサイダー取引に対する罰則は懲役刑や懲罰的罰金刑まで含めた厳罰主義で、日本市場はインサーダー規制が甘いと指摘されている。
現在、同システムへの加入社数は1786社で上場企業の半数に満たない。このシステムへの参加も強制的に行うべきだと考えるが、上記のプラットフォームと異なり、上場企業の費用負担はない。では、何故加入が頭打ちなのかという理由として、個人情報を盾にとり社外・外人取締役の理解が得られないとか、役員の株式取引を禁止しているから大丈夫という理屈があるようだが、全くナンセンスだと思われる。
TOBやM&Aの増加で、企業はインサイダー情報管理に益々労力を割かなければならないが、若し同システムへの不参加の理由が、提供した個人情報の証券業協会での管理に問題があると感じる企業があるなら、業界をあげて未参加上場企業に対して理解を求めるべきである。その為には、証券会社の従業員情報は当然として、弁護士・公認会計士・印刷会社・報道機関などインサーダー情報に接する人々の同システムへの登録も義務付けるべきである。
 上場企業の役社員も、証券を始めとする資本市場に携わる人々も、株式の取引を避けるのではなく、正当に株式取引を行う為にも、同システムを有効活用して日本市場の信頼獲得の取組みとして制度化すべきことと考える。少なくとも、資本市場に関係する者が、株式取引を避けざる得ない市場は、不幸な市場だし、アジアのメイン・マーケットにもなれない。 

ページトップへ

上場企業の不正事例を内部統制報告書にみる (11月29日)
 千に三つというのは、ある種の職業を褒めたり貶したりする以外に、確率論的に不正や犯罪行為に巻き込まれる比率に近いらしい。上場企業においても、不正行為や不正経理は必ず起こるという前提にたって、コンプライアンス強化や内部統制の態勢整備が求められ、昨年の6月をより上場企業は有価証券報告書とともに内部統制報告書の提出が義務付けられている。内部統制報告書は、“財務報告に係る内部統制の経営者による評価”を報告することになるが、最近提出されたその訂正報告書より、下記の様な上場企業の不正行為が明らかになっている。≪内部統制報告書の訂正理由:本年7月~9月分≫

【事例1】
子会社の過年度決算において、売上の前倒し計上等の不適切な会計処理が行われていたことが判明し、平成22年4月30日付で子会社が過年度決算を訂正したため。

【事例2】
○○事業部において、過年度から製品の未記帳出荷、売上計上期の操作などの不適切な会計処理や、架空販売、架空製造、これらを組み合わせた循環取引などの不正行為が継続して行なわれていたことが明らかになった。また、当該不正行為を隠蔽するため、内部統制証跡の偽装や偽装在庫品による在庫数量偽装などが行なわれていたことが明らかになった。

【事例3】
本年度第1四半期の決算作業中、金融機関の残高通知書中に経理部が認識していない銀行口座を発見したことをきっかけとして、総務部長(当時)の職にあった元社員による不正行為が判明したため。

【事例4】
業容拡大の必要性に迫られる中、主要事業であるミドルウェアの開発販売とは全く異なる未経験の異種事業、すなわち広告及びEC事業に、当社グループ内に専門的知識を有する者がいないまま顧問的立場での援助を要請した外部者の主導の下に進出した結果、契約実体の存在が疑わしい取引が行われ、当社のライセンス販売事業も含めて、外部者によって資金が循環するような不適切な取引が行われたことが当該連結会計年度末日後に発覚したため。

【事例5】
当社の連結子会社において、平成22年7月に取引先に対する決裁権限を超えた金融支援や滞留債権の入金消込の操作などによる不適切な経理処理が行われていたことが判明した。また、これは同社元社長及び前社長の独断により行われ、当社にこれらの実態や回収可能性に対する報告義務を怠るだけでなく、事実を隠蔽するため意図的に滞留債権の発生を遅延させるべく不適切な経理処理が行われていたため。

【事例6】
平成22年2月期の特別損失の計上に関して、連結子会社の支店の土地の減損分のうち240百万円が過大に計上されていたことが判明した。これは、平成19年2月期の中間決算において、平成18年6月20日付で連結子会社を当社の持分法適用会社から連結子会社に変更し、当社の連結の範囲に含める際に、土地を簿価から不動産鑑定評価額まで評価減する経理処理を行っていたことを、当社の平成22年2月期の減損処理時に見落としたため。

 なお、上記の事例は、現在企業会計審議会内部統制部会において行われている内部統制報告制度の見直しでの参考資料によるが、2年目に入った同制度では主に次の様な改正が検討されている。
○企業において可能となる評価範囲の明確化・評価方法の簡素化など
○“重大な欠陥”の判断基準等の明確化
○中堅・中小上場企業に対する評価方法・手続等の簡素化・明確化
つまり簡素化・明確化ということで、上場企業の内部統制報告に対する負担感を軽減していこうとしている。それだけ、現状の内部統制報告制度の負担が重いということだが、それでも千に三つは起きる。

 
ページトップへ

取引所と投資家の対話=その2 (11月24日)
前回に引き続き、ここ1年余りで実施された東証のコーポレート・ガバナンス強化の為の上場制度変更に関して、寄せられた投資家(主に海外投資家)の意見から、東証の施策以外に対する主なものを取り上げてみる。これらは、東証に対する要望というより、日本の上場会社全体に対する海外投資家の要望と見るべきだろう。(意見等は要約)

【コーポレート・ガバナンス全般について】
・コーポレート・ガバナンスはその国の歴史や事業等の内容によって、唯一正しい形があるわけではない。
しかし、上場会社は海外からの投資家を惹きつける必要もあるのだから、一定水準以上のコーポレート・ガバナンスが要求される。世界各国に投資している投資家は、以下のことは基本的が原則として考える。
○独立取締役の設置
○Poll Voding (議決権行使の明確な開示)
○役員報酬の開示
○少数株主の保護

[解説と私見]
 海外投資家が基本原則と考える上記の4点は、この1年内に日本国内で何らかの対応策は取られている。しかし、海外投資家が主張したいのは、その対応策のコーポレート・ガバナンス強化への実効性が解り難いので、もっとルールを徹底し簡素化してもらえないかとの主張だ。
例えば、本年から上場企業は独立役員を導入しなければならないが、これは企業から独立性に高い社外取締役でも社外監査役でも良い事になっている。取締役と監査役は機能が違うという指摘に対して、監査役の機能権限を強化してしっかりチェックしていくので、上場会社の半数以上が採用していない社外取締役制度を採り入れなくても良いのではという経済界の要望がある。つまり上場会社には、社外取締役が過半数を占める委員会設置会社、社外取締役のいる監査役会設置会社、社外取締役のいない監査役会設置会社の3パターンがあることになる。これに対して、海外投資家は独立性の高い社外取締役=独立取締役を共通項として置いて欲しいと言っている。
次のPoll Vodingについては、議決権行使の可否を委任状ベースで判断し、その結果しか公表しない上場企業が多かったが、開示省令の改正で、この6月総会分から臨時報告書での公表することが義務づけられた。ただし、総会当日の集計が出来なければ、その理由を書けば良い。本年6月総会の議決権行使率は76%との集計もあるが、未だ同日の集計結果を加算しない企業も多いし、インター―ネットでの投票が可能な企業も4割程度に留まる。議決権を投票しやすいようインターネット対応し、その投票結果も公表する取組みは、多少の費用が掛かっても実行すべきだ。
役員報酬の開示は、1億円以上の報酬(総報酬)が有る場合に限り始まったが、金額やガバナンス強化の効果として色々意見が分かれるようだ。しかし、取締役の責任賠償額に定款で上限を設けている会社は、金額の大小に係らず開示すべきではないだろうか。

【子会社上場いついて】
・子会社上場の全面禁止には反対であるが、子会社上場の前提として少数株主の利益が保護されることが必要である。

[解説と私見]
 IFRSが適用されれば、安易な子会社上場は控えられるかもしれない。子会社・関連会社の株式も時価(公正価値)評価されるからで、売却するか保有を続けるか明確化を求められる。言葉は悪いが、ちょっと子会社を上場して利益を出し、上場子会社の株価が低迷したら、買い戻して上場廃止にするのでは、というような投資家の懸念は少なくなる。しかし、親会社の戦略変更で大きく企業価値が変わることに変わりない。海外投資家から見て、上場企業の子会社上場は異質かも知れないが、現実には相当数上場されているし、今後とも上場される可能性があるので、いっそ市場部を分けて、東証1部・2部に対して子会社上場部としてはどうかというのが筆者の私見である。

 いずれも本質的な問題は、法制審議会で議論され会社法の改正となるが、コーポレート・ガバナンスの強化の為に上場(公開)会社法などない方が良いと思うのは、筆者だけだろうか。
ページトップへ

取引所と投資家の対話=その1 (11月18日)
当たり前の標題に思う方も多いかもしれないが、実は取引所と投資家が対話することは殆ど無い。投資家にとって、取引所は投資情報収集の場かもしれないが、規則と権威の高い壁を感じることが多く、対話するイメージは持たれなかったろう。大阪証券取引所の様に株式が公開され、IRの場が出来れば、必然的に投資家に直接訴えることもあるだろうが、取引所の在り方は、行政の方針と直接の参加者である証券会社の合意で決まっていた。その取引所の在り方の中核となる上場制度に関して、東京証券取引所が意見を募集して投資家との会話を試みようとしている。この取組みを全面的に支持したい。
この背景は、東証が昨年から取り組んでいる“上場制度整備の実行計画2009”により、上場会社のコーポレート・ガバナンス強化の為に継続的に改革されている上場制度に対して、投資家側の評価を求めていた。その意見概要が11月18日に東証より公表されている。
 東証が投資家意見を求めた上場制度の改正点は、この1年間に実施された以下の4点になるが、海外の機関投資家中心に27件から意見が寄せられている。

①第三者割当に関する対応(2009年8月制度導入)
・希薄化が25%以上となる第三者割当の場合、株主総会での株主の意思確認か第三者委員会など外部意見の入手を義務付け
・第三者割当で支配株主(50%超保有)が異動するとき、その支配株主との取引について定期的に報告を求め、取引所がその健全性を確認する。
・希薄化率が300%を超える第三者割当を実施した場合、取引所が認める場合を除いて上場廃止。
・発行価格の算定根拠やその内容、有利発行等に関する充分な開示を義務付ける。
【投資家の主な意見】
○株主割当以外は希薄化率が高いファイナンスは同様の問題があるので、株主総会で希薄化の上限を定めるべきではないか。
【筆者の私見】
第三者割当でも公募増資でも、大規模なファイナンスに対する希薄化は同じ。本稿で何度か取り上げたが、ライツ・イシューの実務対応整備(証券会社側の対応:取引所の上場制度は既に整備)を早めるか、公募であっても株主優先募入の方法を業界で考えるべき。また大規模なファイナンスに対して、現行の法制度内であっても、株主総会で増資の発行登録を承認してもらうという方法もある。

②独立役員制度の導入(2009年12月制度導入)
・上場会社に対して、1名以上の独立役員(独立性の高い社外取締役か社外監査役)を確保することをもとめる。
【投資家の主な意見】
○制度の導入は歓迎するが、人数や対象(監査役でも良いとした部分)などガバナンンス強化の仕組みとしては不十分ではないか。
○独立性の基準が不十分。買収防衛策や低いTOB価格への賛同などが、独立役員がいても行われるケースがあり、少数株主に配慮した判断がされているか疑問。
【筆者の私見】
現在、法制審議会で会社法見直しが行われていて、現在の社外取締役より独立性の高い制度の導入がされると予想されるが、時間がかかるので、せっかく導入した取引所の独立役員制度の独立性を徹底すべきと考える。現在の会社法は、一般事業会社を前提としている制度側面が強いが、それを2階建するような公開会社法には基本的に反対したい。

③支配株主による権限濫用を防止する為の施策の整備(2010年6月制度導入)
・支配株主との重要な取引を行う場合、利害関係の無い者からの意見の入手を求める。
【投資家の主な意見】
○一定の基準(利益や金額)以上の取引は、その支配株主を除いた株主総会決議によるべき。
○意見書より、詳細な開示を求めるべきではないか。その方が、何か問題があった時に役員の背任等の責任を追及できる。
【筆者の私見は特にない】

④議決権行使の促進に関する施策(2009年8月導入)
・株主総会の招集通知等の東証ホームページでの掲載を始める。
【投資家の主な意見】
○施策を支持する。招集通知の電子ファイル化で2~3日早く受領でき役立っている。
○議決権行使プラットフォームの導入を支持するが、導入企業が少ないのが残念。
【筆者の私見】
議決権行使プラットフォームに関して、全く同意見。現在370社程度しか参加していないが、東証1部だけみても、まだ2割程度の参加率。コストのこともあるだろうが、投資家の立場からは、上場会社の同プラットフォームへの参加は上場制度で義務化すべきではないだろうか。

以上の東証のコーポレート・ガバナンス強化への取組みは、全面的に支持したい。ただし、上場制度だけでの限界もあるので、業界も、持続的な支持を行って欲しい。

ページトップへ

期待される企業の余剰資金 (10月18日)
リーマンショックからもう2年が経過するが、その後の業績の急回復やファイナンスなどで企業の手元資金は相当に厚くなっているようだ。今週号の日経ヴェリタスに特集記事にもなっており、この3月末で日本企業(金融を除く)の現預金は200兆円を超えたことが報じられているが、9月末では更に増加する見通しだ。この傾向はグローバルなもののようで、米国でもS&P500採用企業の総資産に占める現金比率は6月末で10.6%とこちらも過去最高水準となっている。金融危機後の信用収縮に備え、かつその後の景気先行きの2番底懸念から設備投資などの支出を抑えた結果だが、そろそろ、この企業内に蓄積された現預金に期待しても良い時期になっているのではないだろうか。米国だと上場企業が大量の余剰資金を抱えていることに対して、増配や自社株買いに対する株主の要求が厳しいが、日本においても企業内の余剰資金に資本市場的に期待したい。

 一つ目の期待は、この余剰資金がM&Aに向かうことだ。割安な国内企業の見直しに繋がるようなM&Aの増加が望ましいのだが、ロイターによると日本企業の今年上半期(4月~9月)のM&A動向は、約1200件で前期比12%減、取引金額は約5.9兆円で2%増となっている。但し、日本企業による海外企業のM&A件数は251件(58%増)になり、半期ベースではデータの最高を記録しているので、これらの企業は円高メリットを活用している。円高というよりはドル安なのだが、この環境を事業戦略に活用する日本企業の逞しさに対する期待だ。

 二つめの期待は、この余剰資金を使って自社株買いを積極化して欲しい。金融危機への市場対応策として、現在、空売り規制とともに自社株買いに対する規制は緩和されていて、市場関与率100%(通常は1日平均出来高の25%)買付時間の制限もない(通常は、大引け前30分の買付禁止)。しかし、現状の自社株取得状況は危機前に遠く及ばない。東証の集計によると、上場会社の自社株取得は次の様な現状だ。
・2007年  4兆4942億円
・2008年  4兆 315億円
・2009年    8376億円
・2010年    4889億円(1月~8月まで)
本年の自社株取得状況は今までのところ昨年よりの縮小気味なので、今後の自社株取得増加が期待できるかも知れない。なんといっても株価が安いおかげで、上場企業の配当利回りは2%を超えているが、日銀の追加緩和策のお蔭で超低金利が続いているので、高格付けの企業の社債調達金利は10年債でも1%を切りそうだ。つまり上場企業は社債を発行して、自社株取得を行えば、自らキャッシュ・フローの改善を行うことが出来る時代になっている。例えば米国では368億ドルの現預金(短期有価証券を含む)を保有するマイクロソフトは、最近47.5億ドルの社債を発行しており、この資金で増配と自社株取得を行うと公表している。高水準の現預金を有する日本の上場企業にも自ずと自社株取得の期待が高まる。

 反対に余り期待したくないことは、去年・今年と大規模な公募増資を行った企業が、現預金や国債など債券の保有を増加させている姿だ。もうすぐ9月中間決算が公表されるが、発行済みの3割を超える公募増資で、証券会社に払う手数料と募集の為のディスカウンント率合わせて1割近く払ってせっかく調達した資金が、0.8%利回りの国債で運用されているバランスシートは見たくない。
ページトップへ

米金融規制と金融機関のコーポレート・ガバナンス (9月10日)
 10日の振興銀行破綻は、日本での規制緩和と金融改革の一つの挫折かもしれない。最近は別にしても、前回の日本の金融危機後、閉塞感のあった金融界においてイノベーションを標榜することに、業界の賛同者が集まった時期もあった。それが銀行という器を得たあたりから、何かおかしい方向に行き始めたのだろうか。銀行経営の巧拙は別にしても、伝えられるようなら、少なくともその銀行にコーポレート・ガバナンスの機能は働かなかった。

コーポレート・ガバナンスが働かなかったのは何も振興銀行だけではなく、金融危機の発火元になった米金融機関についても指摘されている。この7月の成立した米金融改革法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act=ドット・フランク法)の中で、報酬規制を行うことでガバナンス機能を強化しようという部分がある。これは、そもそも金融危機の原因の一つとして、金融機関の行き過ぎた業績連動報酬が挙げられていることによる。CEOより高額の報酬を得ているトレーダーの一か八か的投資行為を非難する向きもあるが、これは少々違うように思う。結局、トレーダーでもCDOの証券化チームでも、それを管理する役員がいて、報酬に関するルールがあるので、この管理と報酬決定ルールが悪かったということになるべきだ。米金融規制改革法のガバナンス強化部分は次の様になっている。

【経営陣の報酬に対す株主投票=セイ・オン・ペイ条項】拘束力はないが、経営陣の報酬およびゴールデンパラシュートに係る賛否を示す(定時または臨時株主総会での)投票権を株主に付与する。
【報酬委員会の独立性】構成員を全て独立取締役にする。
【報酬の取戻し=クローバック条項】会計基準に反する不正確な財務報告に基づき支払われた報酬の払い戻しを義務化。
【当局による監督強化】当局は所属金融機関に関する報酬ルールの制定を義務付ける。
【新しい開示要求】過去の役員報酬と株価の関係、CEOと全従業員平均報酬の比率、保有自社株のヘッジ利益など

 なお、最近公表されている金融規制関係の資料では、“国際的な金融規制改革の動向”(みずほ総合研究所9月7日)が要領よくまとまっているので、参考にさせていただいた。同資料による米金融規制での金融・資本市場関連の主な部分は以下のようになっている。(抜粋)

【ボルカー・ルール】
○銀行グループに対し、自己勘定トレーディングとヘッジファンド・PEファンドへの出資を原則禁止(ヘッジ目的や顧客以来取引などの例外あり)
○但しファンドへの出資について、Tier1の3%以下なら、当該ファンドの受入出資金3%までの金額に限り許可。
○金融機関全体の負債総額の10%を超えるような大規模合併の禁止
【デリバティブ規制】
○デリバティブ取引の中央清算機関での清算を原則義務化
○デリバティブ取引の取引内容の情報蓄積機関への登録を義務化
○清算機関で清算されないデリバティブ取引に対して、資本要件の加重と証拠金を義務化
○金利為替スワップやヘッジ目的の取引以外で、銀行本体がデリバティブ取引をすることを実質禁止
【証券化商品規制】
○売り手に対して、商品信用リスクの5%以上を自ら保有するよう義務付け
○情報開示義務の充実
【信用格付機関規制】
○米SEC内に担当局を新設し、認定格付機関を検査
○格付手法や過去の格付記録等の開示を義務化
○米SECに格付機関の登録抹消権限を付与 
等 
ページトップへ

誰が株主なのか?エンプティ・ボーディングの問題 (8月18日)
 
技術が進めば、新しく生み出されるメリットと共に、それまで考えられなかったような障害が起きる。エンプティ・ボーディング(経済的持分なしに議決権を行使する空議決権行使や、経済的持分を持ちながら議決権のない持分の隠蔽状態であること)はまさに金融イノベーションの進展の中で発生した障害になり得る問題かもしれない。
 そのエンプティ・ボーディングの原因になる経済的持分と議決権の分離とはどの様な状況を指すかというと、主に次の様なエクイティ・ディリバティブを実行していく過程の中で起きる。

○手法=トータル・リターン・スワップ
 X金融機関とYファンドなどの間で、A株式100万株に関する以下のようなスワップ契約を結ぶ。
・期間半年で、A株式の配当金相当分と期間中のA株式の値上がり分は、X金融機関からYファンドに支払われる。
・反対に、A株式100万株分の資産価値の金利相当分と手数料、もし期間中にA株か下落した場合のその下落相当分の金額は、YファンドからX金融機関に支払われる。
 ここまでは、スワップ契約(資産をベースにしたキャッシュ・フローの交換)を使ったエクイティ・ディリバティブだが、問題は通常X金融機関がリスクヘッジの為、A株式を手当てすることで起きる。この場合、X金融機関が議決権(共益権)、Yファンドが経済的利益(含む実質的自益権)を分離して持つことになる。この分離が何故問題かというと、議決権を行使するX金融機関にとって、A株式が下落した方が経済的メリットを受けるが、A株式の企業価値を上げるような議案へ賛成していくインセンティブがないことだ。つまりX金融機関は普通の株主と利益相反することになる。

 このことはコーポレート・ガバナンスの観点から好ましくないとされ、現在法制審議会で行われている会社法制の見直しにおいて、金融庁から問題ある論点として示されている。

 一方、このエンプティ・ボーディングは、会社法的問題だけではなく、資本市場のルールである金融商品取引法上の規制を逸脱してしまう可能性があることも指摘されている。上記のトータル・リターン・スワップの場合、Yファンドが、A株式の損益を清算せずに、X金融機関が保有するA株式の持分を現引いてしまう場合がある。通常のスワップ契約には、この様な現引く条項は含まれていないが、Yファンドの依頼によりX金融機関が保有するA株式を引き渡す事例があるといわれている。このことが、実質的議決権の隠蔽問題になる。
大量保有報告書規制や公開買付(TOB)規制を逃れる目的で、これらの手法が使われる可能性もあり、もし敵対的な買収行為にこの手法が使われるなら、企業及び他の株主が不利益を被る可能性もある。事例としては米国になるが、Jパワー株の買い増しで話題となった英ヘッジファンドTCIがこの手法を使い米鉄道大手CSXに経営参加を求めた。この間、大量保有報告が提出されていなかったので、CSX側は「TCIがデリバティブを使って実質的な株式持ち高を隠した」と提訴した(2008年8月)。欧州では、この実質的議決権の隠蔽になるような大量保有報告書規制や公開買付規制の実質的違反に対して、議決権の行使を制限する規制があるようだが、日本においては会社法制見直しの論点の一つになっている。

 いずれにせよ、実質的株主の認定がデリバティブの発達によって複雑化している現実があるが、議決権の行使若しくは行使への影響力を持つものを株主若しくは実質的株主としてルールを見直す必要がありそうだ。
ページトップへ

コーポレート・ガバナンスは今何が問題か (5月24日)
 コーポレート・ガバナンスは、会社は誰のものかといった議論から始まり、その目的が企業価値向上を目指すということで纏まっていると思うが、そのガバナンス強化を具体的にどう行っていくべきか、議論は続いている。折しもこの4月以降、東証の独立役員制度(独立性の強い社外取締役若しくは社外監査役の1名以上の任命)は始まっているし、役員の報酬開示強化や株主総会での議決権行使状況の開示制度もスタートする。一方、この4月下旬より法制審議会で、“会社が社会的,経済的に重要な役割を果たしていることに照らして会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から,企業統治の在り方や親子会社に関する規律等を見直す必要がある”として会社法の見直しに関して、公開会社法制定を視野に入れながらの検討が始まっている。
 この動きを受けて、金融庁でも関係者間の意見交換を目的に「コーポレート・ガバナンス連絡会議」が開催され、コーポレート・ガバナンスを巡る問題について議論されている。幅広い関係者の意見表明の場になっているので、その主な内容を筆者の判断で項目別に仕分けさせていただいた。

【コーポレート・ガバナンス強化の必要性】
・大規模や第三者割当・MBO・買収防衛策など既存株主と利益相反を起こす可能性のある経営判断への監視機能強化
・国際的基準からみて、日本のガバナンス強化への遅れが、日本企業の企業価値向上への障害要因となっている可能性
・企業と株式市場のパフォーマンスを向上させるためには、企業と市場のガバナンス改革が不可欠。

【コーポレート・ガバナンス強化の法規制】
・内部統制や四半期開示など、開示制度の整備が短期間に進展していて、企業規模によっては相当企業側の負担が重い。
・会社法改正はミニマム・スタンダードの要請に止め、取引所ルールの様なソフトローの充実で対応すべき。
・第三者割当やMBOなど外部の識者による特別委員会の判断を参考にする事例が増えているが、法制化すべき。

【独立取締役】
・監査役機能の強化という考えもあるようだが、海外からみて分かり難い。
・独立した取締役による経営監視機能は国際的にも求められている。
・独立取締役の任期が1年だと、安定性が確保されず、その機能の実効性を担保するため任期を長くすべき。

【従業員代表の経営参加】
・制度化しているドイツにおいては当初の目的からかけ離れてきているとの指摘もある。現状をよく検証すべき。

【受託者責任と利益相反】
・年金基金の議決権行使に係る責任について明確化する必要がある。
・機関投資家は、議決権行使について受託者責任を果たす必要があるが、自らのビジネスとの利益相反問題もある。保険会社の保険商品販売の重視、メインバンクの貸し手としての立場、投資運用会社の親金融機関への配慮など、受益者としての利益相反問題に対して、金融庁が適切に対応していく必要がある。

 以上、会議の議事要旨からコーポレート・ガバナンス強化に関係があると思われる部分を抜粋したが、会議参加者の中には、コーポレート・ガバナンス強化は韓国の方が積極的に取組んでいるので、日本としてはガバナンス面でもアジアのリーダーを目指すべきという意見もあった。

 市場の立場でいうと、直接企業行動を制限することは出来ないので、開示=ディスクロージャー充実で企業にガバナンス強化を求めていくのだが、企業側からは開示負担が年々重くなっている負担感とともに、投資家が求める業績予想開示への疑義も示されていた。この事に市場関係者は留意するとともに、機関投資家側の利益相反問題への対応を示すことが必要ではないかと感じた。
ページトップへ

しっかり投票しよう議決権 (5月13日)
上場企業の総務部は、今6月下旬の株主総会準備に向けて大わらわ時期だが、この3月期決算会社からディスクロージャー・ルール(企業内容の開示に関する内閣府令)改正により、株主総会での議決権行使結果の開示を、上場会社は行わなければならない。
 この議決権行使結果の開示は、欧米でも進められており、米国では昨年末のSEC規則改正により、株主総会終了の4日営業日以内の報告が求められ、英国やEUでも賛成・反対・棄権の票数まで含めてインターネット上で開示することが法制化されている。

 日本での議決権行使結果の開示は、臨時報告書の提出によって行われるが、決議事項ごとに賛成・反対・棄権の数を議案の可決要件とともに開示するか、若しくは株主総会出席者の議決権を参入しなかった場合は、その理由を開示する必要があるという構成になっている。実際の集計作業は、株主総会前日までの議決権行使結果は株主名簿管理人が行い、株主総会当日の集計に関しては、厳密な投票の集計を行っていない会社が殆どとみられ、この6月総会より株主総会会場での投票集計対応が求められる。企業の総務担当者にとっては相当の負担増になりそうだが、敢えてこの票数の開示まで求める背景は、昨年6月に公表された金融審議会スタティグループ報告“上場企業等のコーポレート・ガナバンスの強化に向けて”にある。この報告によると、“株主に対する説明責任を果たすという観点から、上場会社等においては、各議案の議決結果について、単に可決か否決かだけでなく、賛否の票数まで公表するのが適当であり、法定開示及び取引所ルールにより、ルール化が進められるべきである”とされている。

 コーポレート・ガバナンス強化も、本年導入される独立役員(東証ルール)、この議決権行使結果の開示と進んできたが、このグローバルな潮流の発端は、米国のエンロン事件だったことを思い出す。米国では、金融危機後の今、再びエンロン事件を見直す動きがあり、ブロードウェイでも取り上げられていることが伝えられている。米国でのコーポレート・ガバナンス強化については、有名なSOX法(サーベンス・オクスリー法)の制定、取締役の独立性要件の強化、監査委員会の機能強化、内部統制の強化と行われてきたが、ミューチアル・ファンドや投資顧問業者に対する議決権行使方針及び行使結果の開示を求めるところまで進んでいる。

 日本においても、投資信託協会は会員の投資信託委託会社に対して議決権行使結果の開示義務付けを求めているが、これは投資家からの受託者責任を果たし、投資対象の上場会社の行動を適切に規律づけることを狙いとしている。また、投信委託会社が金融グループの系列で、企業への営業上の配慮などで白紙委任を行うような行為を防ぐ。ちなみに、昨年度の議決権行使で投信委託会社の反対投票が多かったものは以下のようになっている。(数字は、反対等使比率)
・退職慰労金支給  24%
・新株予約権発行  22%
・監査役選任    20%
・資本政策に係るその他の会社提案  17%

これら機関投資家の議決権行使を促進するものとして、2006年より東証や証券業協会の合弁会社で運営される機関投資家向議決権行使プラットフォームが開始されているが、企業のコスト負担が必要な為、未だ参加企業数は371社と、上場企業の1割にしか過ぎない。一方、企業の電子投票制度は3月末で612社と、これも上場企業の16%に過ぎないことが報じられている。
東証は6月から株主総会の招集通知をネット上で公開するが、議決権行使促進に向けたインフラ整備は整いつつあるように思う。現在の問題は、それに伴う企業側のコスト負担(機関投資家向議決権行使プラットフォーム、電子投票システム)とされているが、今後企業側が株主総会で集計する手間やコストを考えるなら、本当のコスト面での選択肢は決まっている。

 投資家が、企業価値向上の為のコーポレート・ガナバンス強化に協力していくのは、しっかり投票することだ。
 
ページトップへ
 
独立役員とは何か (4月7日)
独立役員とは取引所規則上での言葉である。その定義するところは、一般株主と利益相反が生じる恐れのない社外取締役又は社外監査役をいう、と取引所規則に記載されていて、本年3月期決算会社から1名以上確保しなければならない。この独立役員の届出を3月まで行なった対象上場会社は2094社あるが、この内187社が未確保になっている。
 一般の投資家には、この事が何を意味しているか、分かり難いと思われるので、この制度とは少し距離を置いて見直してみたい。

 そもそも独立役員が社外監査役でも良いのなら、会社法上の監査役会設置会社は、監査役の半数以上を社外監査役にしなければならないので、社外監査役数では問題ない。しかし、敢えて取引所規則で独立役員とするのは、現状の社外監査役・社外取締役の社外という規定では不十分と取引所が考えるからだ。
何が不十分かというと、“一般株主と利益相反が生じる恐れのない”ということが、現在の会社法上の社外取締役や社外監査役の規定では問題あるということのようだ。
会社法上の社外取締役・社外監査役の定義は、会社法第2条15号と16号に記されていて、現在もしくは過去において会社や子会社で働いていないものとなっているが、親会社・主要な取引先・主要なローンの出し手、またはグループ内の関連会社などからは制限していない。
一方、東証の独立役員定義は、親会社や主要取引先など企業との関係が深いは独立役員として望ましくないが、敢えて指名する場合は、その理由をコーポレート・ガバナンス報告書で公表するということになっている。ちなみに3月まで、東証に独立役員(75%が社外監査役、25%が社外取締役)の届出を行った3595名のうち、主要な取引先関係者は114名となっている。

 何故、上場企業では、通常の会社の業務や取引とは関係が深くなく、経営者から独立した立場の役員が求められるのだろうか。それは、上場企業の経営者と一般株主との間の利害の相違が顕在化する局面が、近年目立ってきたことから、コーポレート・ガバナンス強化の一環として、独立取締役の導入についての検討が経済産業省の研究会でも、金融庁の金融審議会スタディグループにおいても、なされており、取引所ルールでの導入検討という方向性が、出されていた。
事例としてよく上げられるのは以下の3つである。
・MBOの意思決定プロセスにおける経営者の恣意性の排除の為の工夫
・買収防衛策での内部取締役の保身行為の監視
・第三者割当増資で、25%以上の希薄化や支配権の移動する場合の増資の必要性・妥当性判断
これらの決定の際、一般株主の利益に配慮した公平で公正な決定がなされる仕組みとして、企業経営者からの独立性の高い取締役=独立取締役(独立役員ではない)の導入議論がされていた。

 今回の東証での独立役員制度導入に当たり、東証上場制度整備懇談会では、3月31日“独立役員に期待される役割”を公表している。独立役員は、一般株主の利益保護を踏まえた行動をとることが期待されているが、ポイントとしては以下の事を上げている。
○上場会社の業務執行に係る決定等が、その会社の事業目的の遂行及び企業価値の向上という視点からみて合理的であるか。特に一般株主の利益に対する配慮が十分に行われているか。
○業務執行に係る決定等を独立役員として適切に評価するために必要な情報は、あらかじめ十分に提供されているか。
○業務執行に係る決定等の目的、内容及び企業価値に与える影響が、正確、適切の開示されるよう工夫されているか。
以上の独立役員制度の取引所での導入に当たり、投資家からみて実効性のある取組みを取引所には期待したい。これが取引所ルールなら、開示により企業行動を促すだけではなく、対応しない場合のペナルティも必要だろう。また、上記の機能を社外取締役も若しくは社外監査役どちらかが果たせというのは、制度としては無理があるのではないだろうか。(上場会社の精神規定に終わりかねない)

 やはり、出来れば独立役員ではなく、独立取締役導入規定を、取引所ルールで整備すべきではないだろうか。でなければ公開会社法を待つことになるが、組合出身の役員が独立役員でないことは、投資家は知っているし、市場はその様な議論を望んでもいない。
ページトップへ

コーポレート・ガバナンス開示強化に関する投資家・企業の考え(3月18日)
本年3月末決算分から、公開企業のコーポレート・ガバナンス充実のために、開示が強化される。この事は既に拙稿“コーポレート・ガバナンス強化の為、開示強化へ (2月15日”で開示省令改正の内容をお伝えしたが、日本アナリスト協会と全国銀行協会から其々意見書が金融庁に提出されている。前者を投資家代表、後者を企業代表として、それぞれの意見を見ていきたい。
(勿論、開示内容が強化されることは、結果としてはコーポレート・ガバナンスの充実に役立つのだが、開示が強化されれば、その分だけ企業側の負担が増える。問題は、企業側が増加した負担分以上に、投資家側が感じる効果が増しているかだが、最近では四半期開示や内部統制報告のあり方について、投資家側からもその効果を一部疑問視する声がある。)≪カッコ内は、筆者注≫

○コーポレート・ガバナンス体制について
【投資家側】
企業統治体制の概要及び当該体制を採用する理由の具体的記載を義務付けたことで、今後はコーポレート・ガバナンス体制の全体像について記載が増えるので、例えば社外取締役に対する各企業の考え方などが把握し易くなる。
【企業側】
東証の取引所開示と平仄を合わせた記載で良いかとか(負担軽減目的)、開示省令文言の確認など。
≪かなり技術的な確認≫
○役員報酬関係
【投資家側】
役員の役職ごとの報酬等の種類別の額と、その算定方法に係る決定方法や方針の義務付けで、各企業の考え方が把握し易くなる。反面、1億円以上の個別役員名開示は、その効果を疑問視。
【企業側】
個別役員名の開示は義務付けるべきではない。個人情報として、プライバシーの問題もあるので、説得的な制度改正理由を示して欲しい。また“主要行等向けの総合監督指針”改正案でも役員報酬に関する積極的な開示が望まれているが、それとの関係を確認したい。
○株式の保有状況
【投資家側】
以下の開示で、株式の持ち合い状況が明らかになり、投資成果、株価変動による財務リスク、現金への感金可能性など分析に有用な情報が増える。
① 投資目的以外の目的で保有する株式で、イ)又はロ)のいずれかに該当するものの銘柄、株式数、保有目的、貸借対照表計上額
イ)当期又は前期の貸借対照表計上額が資本金の1%を超える場合
ロ)貸借対照表計上額の上位30銘柄に該当する場合
②提出会社が持株会社である場合における主要な連結子会社(提出会社と連結子会社のうち投資株式計上額が最も大きい連結子会社)で一定の要件を満たすものの株式について①と同様の事項
③純投資目的で保有する株式の上場・非上場別の当期・前期の貸借対照表計上額の合計額 等
【企業側】
金融機関の保有銘柄開示は、企業の信用力に与える悪影響も懸念されるため、極めて慎重に判断願いたい。政策保有目的の開示は、その確認の為に企業の同意(開示に対する)が必要な場合もあって、実務的に困難な場合もある。また、改正後の初回の開示について、1%基準は対象外とすべき。(前年度はこの開示を前提に事業活動を行っていない為)
開示対象に、非上場株式も含まれているが、これは企業の信用力への悪影響も懸念されるので、上場株式に限定すべき。≪アナリストが非公開株の保有情報をどう評価するか分からないが、また銀行が株式を保有することで信用力に悪影響がでるメカニズムも良く分からない。≫
○議決権行使結果
【投資家側】
特に意見なし。≪議決権行使結果を現在公表しているのは30社余り。公表することで株主の議決権行使を促進すると考えるのでプラスではないだろうか。一部には、議決権行使助言会社の仕事が増えるだけとの意見もあるが、結果、個人も含めて議決権行使が進むことがガバナンス強化へ繋がると考える。≫
【企業側】
開示は、賛否が拮抗して総会当日にならないと可否が決定しない場合に限定すべき。当日行使分を含めた開示は実務的に困難。≪内部統制上の社内手続きとしているが、数日作業にかかるという理由のようだ≫
また役員選任議案の個別名ごとの開示は、投資家にとって有用かどうかわからないので、開示方法などは会社の判断に委ねるべき。

 資本市場は、有効な情報が必要であり、確かに開示内容は多ければ良いというものではない。コーポレート・ガバナンスの開示の充実も必要だが、有効でない情報の簡素化も行うべきではないだろうか。例えば、4月から投信目論見書は簡素化されるが、開示情報も“事業仕分け”が必要な部分もあるのではないだろうか。なお、企業のディスクロージャー問題は、次にIFRS対応という大きな問題を控えている。

 
ページトップへ

コーポレートガバナンスは、どうやって強化されるのか (12月22日)
最近の大企業による大型ファイナンスを見ていると、公表から値決めまで株価が3割以上下落しても増資を実行する、更に値決めは時価から3~4%のデスカウントで、このコストは既存株主が支払う、引受証券に支払う4~5%の手数料は、公募増資に応じる新規の株主が支払う、と株主の負担が非常に重いものになっている。この増資による資金で、戦略的投資がなされ企業価値が拡大することを期待して、既存株主は耐えるのだが、将来の増配など利益配分増加の約束は、殆どされない。
この増資判断は、取締役決議でされるが、ファイナンスの最終条件等は、代表取締役に一任されるケースが多い。この様な既存株主に負担が大きいファイナンスや、利益相反行為が隔離されるべきMBOなどの決定において、コーポレートガバナンスは、どの様に働くのだろうか。

 企業の外部からのチェック機能を、働かせ易いと言われる委員会設置会社は、上場会社の2.3%に過ぎなく、残りの監査役会設置会社のうち56%は、社外取締役を専任していない。株主としては、重要な決定をする企業の経営トップを信じたいが、同時に適切な監視機能が働くことも重要視するのが、投資の世界では常識だ。その為に、コーポレートガバナンス強化として、企業からの独立性の高い取締役選任について、経済産業省の企業統治委員会や金融審議会のスタティ・グループで導入すべき方向性が示されていた。この独立取締役導入に関して、法制度での義務化は経団連の反対で見送られ、米国の様に取引所ルールでの導入に、ゲタを預けられたかたちになっている。

 経団連の独立取締役制度化に反対する理由の概要は、以下の様なものだ。
・形式的な独立性の基準は、意味がなく、またその判断は、取締役に関する開示情報をもって、株主が判断すべき(独立性の基準がある米国においても、大企業の不祥事はあった。)
・既に上場会社の44%が社外取締役を選任していて、コーポレートガバナンス報告書による開示も行っている。(企業統治の形は、多様性があったほうが良く、その判断は企業に任せるべき。)
・監査役会では、半数が社外監査役であり、現行制度でも十分に監査機能は発揮されている。(監査役による会計監査人の選任や報酬決定に関する権限は必要ない。)
と、なかなか議論がかみ合わない。

 もともと最近のコーポレートガバナンス議論は、企業不祥事が続いて発生したり、MBOや大規模な第三者割当増資が、既存株主を無視する様な方法で行われたことで、企業統治のあり方を、改めて問うものであった。

 東証は、以上を踏まえ、上場する会社に対して、1名以上の独立役員の確保を、2010年度以降義務付ける。筆者の感想では、かなり経団連の主張に配慮されたものになっているが、概要は以下のとおり。
・独立役員は、経営者から独立性の高いと思われる社外取締役若しくは社外監査役のことを指す。
(※社外監査役は、取締役会で検討される事案につき、意見を述べることはできるが、決議には参加できない。)
・独立役員は、その独立性について形式基準を設けないが、企業と利益を共有するような場合、その指定理由をコーポレートガバナンス報告書に記載する。(独立性に判断は企業及び開示文書を読んだ株主・投資家が行うことが基本。一般株主と利益相反の恐れのある企業と関係が深い者を、独立役員に指名する場合は、取引所への事前相談を、要請。)

 これで、本当に無謀なM&Aやファイナンスに対する牽制機能が果たせるのだろか。株主や投資家が、売却という選択を取らない為には、一部民主党議員が主張する公開会社法の制定を待たなければならないのだろうか。(※筆者は、会社法に加えて公開会社法の制定は、屋上屋を重ねる策だと思うので、可能な限り、上場ルールで、コーポレートガバナンス強化策を強制するのが望ましいと考える。)


ページトップへ

期待される東証上場制度整備 (10月1日)
 本年度上半期も終了したが、株売買は4年ぶりの低水準で、東証出来高も上海取引所を下回る状況が続いている。2007年12月に、市場競争力プランが策定され、確かに上場ETFなどが充実してきてはいるが、資本市場の基盤となる売買高の減少=投資資金の縮小は問題だ。確かに、新政権への戸惑いが投資家サイドにあるのかもしれないが、本来、“変化”は市場の好むところなので、市場活性化への業界全体の即効性の取組みが望まれる。そんな中で、東証は9月29日に上場制度整備の実行計画2009を公表している。
 テーマは二つあって、“上場会社のコーポレート・ガバナンス向上”と“ディスクロージャー”である。
【東証のコーポレート・ガバナンスへの取組み】
 新政権になって、公開会社法も取りざたされる昨今であるが、既に上場会社のコーポレート・ガバナンス改革に向けた取組みの方向性は、金融審議会(金融庁)のスタディグループ及び企業統治研究会(経済産業省)それぞれの報告書(6月公表)に於いて示されている。その両報告書とも、新法制度というよりは、上場規則改正により、上場企業のガバナンス向上を目指す内容になっており、東証の動向が注目されていた。東証が公表したコーポレート・ガバナンス改革への対応は以下の様になっている。
〈2010年度3月期決算会社からの対応も目指す事項〉
・ガバナンス体制(委員会設置会社・監査役会設置会社、社外取締役制度の導入など)の内容と、その選択の理由を、ガバナンス報告書で開示。
・監査役機能の強化として、監査役監査への支援強化策や知見を有する社外監査役採用などの具体化策を、ガバナンス報告書で開示。
・社外取締役・監査役の独立性に対する会社の考えを開示。
・一般株主保護の為、一般株主と利益相反がないと企業は判断する“独立役員”を求める。
(具体的内容については、来春までに検討)
・株主総会議案の議決結果について、票数までの公表を要請。(法制度の動向を踏まえながら、ルール化を来春まで検討)
・議決権電子行使プラットホーム(機関間投資家や海外投資家の議決権行使を促進する目的の)参加の偽務化は、来春までに検討。
・子会社上場の在り方については、来春までに検討。
・株式持合いに関しては、一定の持合い状況の開示の制度化に向けて、来春までに検討。
以上が、ガバナンス改革への取引所の対応であるが、なにやら開示=ディスロージャー強化ばかりのようにも見える。しかし、直接企業行動を制することは、取引所は出来ないので、基本的に取引所のこの取り組みを支持したい。開示義務違反の最大のペナルティーは、上場廃止でもあるので、ルール策定後の実効性のあるルール運用を期待したい。
【ディスクロージャー充実への取組み】
この内容も更に2つあって、適時開示への一層の取組みとIFRS(国際財務報告基準)対応である。
適時開示への一層の取組みに関しては、その目的は明確なのだが、はっきり言ってどうも具体化手段がはっきりしない。投資家としては、勿論、予見性のある情報を適時に公平にディクロ願いたいのだが、どうも四半期報告書・内部統制報告書導入による混乱の余波があるようにも思う。確かに、組織基盤の弱い新興企業にとっては、相当の負担感かもしれないので、マザーズ銘柄でに特例開示対応があっても良いのかもしれない。しかし、上場会社は大人の企業であるので、開示の原則はあったとしても、余り様式等の形式に囚われた開示ルール作りは避けた方が良いのではないか。行政や会計制度もルールベースからプリンシプル(原則)ベースへ移っているので、開示ルールも原則明示に留めるべきだと考える。ディスクロージャーに関しては、適時開示徹底と、その情報を投資家が利用しやすいことが重要に思うので、投資家による適時開示情報利用の視点を、取引所は持ってもらいたい。
 なお、IFRSへの対応は、取引所及び上場企業の国際競争力上必須なので、その導入をサポートする態勢整備は、大賛成である。
ページトップへ

誰が為の公開会社法 (9月14日)
 会社は誰のものか、といったコーポレート・ガバナンス上の議論をする時、それは会社という組織内において権力を有する経営陣を牽制したり、短期的利益の追求から、組織にとって時に横暴と思える要求をする株主の行為を制限しようという意図が含まれる場合が多い。
 勿論、会社は株主を含むステークホルダーのもの(社会全体の)であろうが、公開会社の場合は、市場の機能を使って資金調達もするのだから、投資家という将来株主もこのステークホルダーに含める必要がある。
民主党の新政権になって新しい政策が注目されるが、マニフェストにはなかったものの政策INDEX2009には公開会社に適用される特別法として公開会社法の検討がある。目的は、公開会社の情報開示や会計監査などを強化し、健全なガバナンス(企業統治)を担保する為である。民主党には、公開会社法プロジェクトチームもあり、7月に纏められた素案が9月14日の日経では特集記事となっている。
 この素案は、日本取締役協会や経済財政諮問会議のワーキンググループで検討され2年前に纏められた“公開会社法要綱案(第11版)”がベースになっているようだが、元々の要綱案には、従業員代表が監査役会に参加する案はなかった。
ここで、目的としているコーポレートガバンンス強化の一連の動きについて整理しておきたい。
そのそも、エンロンやワールドコムの不正に限らず、日本でも、虚偽記載や偽装問題など明らかなる不法行為以外にも、大量の第三者割当増資や大幅な株式分割・併合など少数株主にダメージを与える資本政策などがあった。経営者の行き過ぎた行為を誰がチャックするのか、経営者が知らなかったという会社の歪みをどう修正するのか。
このコーポレートガバンンス強化に関しては、2つの流れがあったが、一つは開示の徹底、もう一つは経営や業務に関する監視機能の強化である。
【開示の徹底】
会社法上では、内部統制システム構築の基本方針の明文化義務付け(大会社)とその事業報告での開示。
金融商品取引法では、四半期開示・内部統制報告書の提出。
取引所開示では、適時開示(タイムリーディスクロージャー)の更なる徹底、コーポレート・ガバナンス報告書の充実。
これらの結果として、公開企業の開示負担は、ここ数年相当に重くなってきている。
【監視機能の強化】
・J-SOX法対応ということで、内部統制システムの構築を公開企業はここ数年求められてきた。
・M&AやMBOなどで、経営者と株主の利益相反が懸念されるような場合、最近は第三者委員会を設置して、外部意見書を公表するケースが増えている。
・社外取締役の独立性に関しては、機関投資家や海外投資家などから独立性強化を求める動きが強く、これを受けて上場規則改正の動きがある。
・監査役の監査機能強化については、大会社は半数以上の社外監査役が必要で、その監査機能強化の為にも、監査役選任への監査役会参加や監査スタッフの充実をするための上場規則改正の動きがある。
つまり、コーポレート・ガバナンスの強化に関する開示対応は、現在相当行われているし、監視機能の強化については、取引所の上場規則で対応しようとする動きがある。
 会社法・金融商品取引法・上場規則と確かに3つにわかれている事を、公開会社法として一つに取りまとめることは一見効率的にも思えるが、ことコーポレート・ガバナンス強化を目指すのであれば、今は最近取り組まれた諸々の施策の実効性を見極める事と、この6月まで議論されてきたガバナンス強化策を早急に取引所規則に取り込み実効性を上げる時期ではないだろうか。
 公開会社は、コーポレート・ガバナンス強化は勿論必要だが、企業として成長しなければならない。また、次のテーマとしてIFRS(国際財務報告基準)への対応も控えている。
公開企業のあり方について、常に議論していくことは必要だろうが、統合議論による混乱は、ステークホルダーが避けて欲しいと思うことでもある。
ページトップへ

企業が考えるコーポレート・ガバナンス (8月19日)
会社は誰のものかという時に、会社は株主のものでもあるが、そこで働く人や、取引先などステークホルダーのものでもある。ここ数年、コーポレート・ガバナンス向上に向けた取組みは、経済産業省の研究会・金融庁の金融審議会・そして東証などで議論されてきたが、どちらかというと株主若しくは将来株主である投資家寄りであったかもしれない。企業側の立場では、この4月に、経団連が、コーポレート・ガバナンスについての主要論点の中間整理として提言を行っているので、その概要を紹介しておく。
―監査役会設置会社(東証上場企業の約97%)におけるガバナンス強化について
【論点1:社外取締役の設置義務について】
東証上場会社においても、半数以上は社外取締役を設置していない。しかし、取締役会を補完する目的で社外有識者によるアドバイザリー・ボードを設置している企業もある。米国の様に取引所規則で社外取締役設置を義務付けても、不祥事が起きる場合も目につくので、形式論での議論は無意味。各企業の自主的選択が認められるべき。また、企業は投資家との会話を増やす努力をIR活動などで強化していて、取締役が適正な監督を行う見識や能力があるか、株主は投票行動で判断できる。投資家から社外取締役を求める声があるなら、各企業がIR活動を通じて丁寧に説明していかなければならないこと。
【論点2:社外性要件の独立性要件への見直しについて】
 機関投資家や海外から、親会社や取引先等の社外取締役に対する批判がある。経営陣からの独立性に関しては議論されなければならないが、逆にステークホルダーの一員として外部の立場で企業価値の向上に役立っている面もある。その社外性については、取引所開示などで充実してきているので、多様性を認め、最終的には、選任する株主が判断する現行の仕組みが望ましい。
【論点3:監査役の役割と権限の強化について】(社外取締役設置や社外性の独立性強化などが難しければ、監査役の権限を強化してはとの考えがかることについて)
 現在の会社法上、既に、監査役には取締役とともに業務執行に対する監査権限が与えられている。この権限を十分機能させる為、各企業は監査役業務をサポートする事務局体制の充実や内部統制部門との連携整備など各企業が努力していくべき。
【論点4:会計監査人を選任したり、報酬を決定する権限を、取締役から監査役に移すべきとの議論について】
 会計監査人選任・報酬決定に関しては、既に監査役には影響を行使する権限がある。監査役に、会計監査人の選任議案や報酬を決定するという業務執行権限を与えることになれば、監査役は経営陣からの独立の存在としての監督機能を果たすという制度趣旨に反し、業務執行と意思決定の二元化をもたらしかねない。(筆者注:この部分は分かり難いので、主要論点の中間整理(概要)の記載そのまま)
【論点5:総会における議決権行使結果の公表】
 最近は多少増加したとはいえ、それでも総会議案の投票結果公表は30社弱程度。株主とのコミュニケーションを一層充実させる観点から評価できるが、実務的に株主総会当日出席の賛否の詳細集計を省略している場合がある。また投票結果を広く公表することで、株主総会の外からの影響力が増大する心配もあり、個々の企業の判断に委ねるべき。
【論点6:大規模第三者割当について】
 有利発行でない限り、授権株式の範囲で取締役会に授権された権限ではあるが、株主が予想しない支配権の移動や、権利の希薄化は問題。発行会社としてのアカウンタビリティを充実させ、既存株主の権利が不当に毀損されないよう、取引所での割当先に対する実質審査や開示は充実されるべき。

 上場企業の開示負担は、四半期開示・内部統制報告書など相当に重くなっているし、IRコストも増加している(日本IR協議会調べでは、2008年のIRコストは1社当たり2,210万円と大幅に増加している)。また、上記のようなことを、コーポレート・ガバナンス強化目的で、全て上場規則化してしまうのも、途中でルールを変更する競技のようで、競技参加者としての企業は負担に感じるのだろうか。
 しかし、企業としてコストも余り掛からない経営判断によることなら、投資家・株主との会話促進や総会運営の透明性確保努力など、合理的な物差しで対応していただきたい。
ページトップへ

証券は何を期待されているのか:個人編 (8月17日)
証券業も金融サービス業なのだから、サービスを受ける側の投資家が、何を望んだり何を不満に思っているのか、個人の場合について少し考えてみたい。
 金融庁が定期的に公表している“「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等”の4月~6月分では、個人から同相談室に毎日200件以上の金融サービスに関する質問・相談・意見等が寄せられているようだが、その内約30%3,815件は投資商品・証券市場制度等の金融商品取引法関連所謂証券関連業務分である。
 主要な証券業務別に、その相談等の事例内容をみてみると、
【金融商品の販売に関して】
・株式、債券、投資信託等の金融商品を購入しようする際、財産の状況を詳しく聞かれたり、長時間の説明を聞かなくてはいけないかとの問い。
=金融商品取引法により、契約締結前の書面交付義務があったり、金融商品の販売時に、適合性の原則の確認等の行為規制がある為、初めての顧客に関しては長時間の説明・確認行為が行なわれているようだ。
しかし、顧客が不快に感じない時間内での対応が出来るよう、確認作業の効率化やネット活用などは、サービス業として取り組む課題なのだろう。
【投信の販売に関して】
・銀行で投資信託を購入する際の注意に関する問い。
=銀行・郵便局でも投信の購入が可能となるのは良い事で、何処でその投信を販売しようが金融商品取引法上は、前述のような義務と行為規制に対応しなければならない。もし、銀行で売っているものは元本が保証されると錯覚する投資家がいるのであれば、金融教育の問題のような気もするが、投資家としての自立も求められるのではないだろうか。
【未公開株式について】(今回は未公開株関連の相談が大幅に増えている)
・金融庁等との関係を騙って、未公開株を勧誘したり、買い増しを薦めたりする業者に関する相談
・既に購入している未公開株式に関して、買い増しや買取りに関する詐欺的行為に関する相談
・業者から、値上がり確実等の勧誘をうけた相談
・購入した未公開株の名義書換えに応じない業者に対する相談
・事業会社からの未公開株勧誘にかんする相談
=IPO市場が低調なのに、上場等を前提にした未公開株勧誘に関する相談が増加しているのは皮相な想いもする。中には、取り込め詐欺的な事例もあるようだが、反面、成長期待のある未公開株投資に関して、個人投資家側の強い期待もあるのだろ。しかし、業界としてこの成長企業投資ニーズに応える努力が不足しているのも、事実ではないだろうか。IPO企業が少ないのは、審査ルールの厳格化に業界が上手く対応していない結果(決して経済や市況環境だけではない)だし、未公開株で唯一勧誘が認められているというグリーンシート市場銘柄は、実際に取り扱わない証券会社が多く、情報も一般の投資家から遠い。
ベンチャー投資に関しては、上場ベンチャーファンドや所得控除が1000万円近くまで拡大されたエンジェル税制などの施策があるが、業界の営業現場では殆ど取り扱われない。相談事例の様な業者を排除する為には、業界として未公開株投資ニーズに応える取組みが必要だし、それが成長企業へのリスクマネー供給にも繋がる。新興市場・グリーンシート・ベンチャーファンド・ベンチャー投資への取組みは、業界の頼る資本市場の基盤作りとして考える時期かもしれない。  
ページトップへ

投資家の求めるコーポレート・ガバナンスとは何か(8月7日)
企業は株主のものでないと担当大臣にコメントされるのも寂しいが、間違いなく企業は株主のものでもある。そして、コーポレート・ガバナンスは、ステイクホルダーに配慮されたものであるが、株主特に少数株主の立場を守るという原則が貫かれていると信じたい。経済産業省の企業統治研究会より6月に公表された報告書においても、経営に直接関与することのない一般株主(機関投資家を含む)にとって、経営者に近いところで、企業価値の向上についてモニタリングする仕組みとして、社外取締役・社外監査役に期待する意見が強いとされている。大量の第三者割当や、MBO、買収防衛策の導入などが、独立性の高い社外の目で、企業価値を向上させるかどうかとの視点でチェックして欲しいのである。
 しかし、東証上場企業においても社外取締役は、監査役設置会社の55.9%が導入していない。(数字は、東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2009で、2008年の各社コーポレート・ガバナンス報告書をベースに集計。以後の数字も同様)また、社外取締役がいても、親会社・関係会社・大株主・親族など経営者との関係が近い者が41.8%では、その独立性が問題にもなる。 独立性の高い社外取締役が東証上場規則で義務付けられるか、今夏以降の上場ルール改正で注目されるところである。
一方の議論として、監査役会設置会社(マザーズの18社を除く)は、その半数が社外監査役であることが義務付けられているので、監査役会機能の充実する考え方もあるようだが、社外監査役の20.4%は親会社・関係会社・大株主・親族など経営者との関係が近い者であるという現状もある。
投資家としては、企業価値向上の為の判断が出来る機能で、ある程経営者に牽制機能が働く独立性が大事なので、独立取締役導入の上場ルール化が難しいのなら、企業価値向上のコーポレート・ガバナンス格付けの様なものを取引所が公表し、投資家に投資判断材料として提供する仕組みを作ってはいかがだろうか。
その分が取引コストとして負荷されても、投資家側のクレームにはならない。
次にコーポレート・ガバナンス報告書が開示を求めるものとして、取締役へのインセンティブ・報酬関係があるが、ストックオプショが33.6%、業績連動報酬が17.3%の企業が導入している。業績連動報酬制度としては、ストックオプションは好ましく思えるが、投資家としては、社外取締役や社外監査役に付与する必要があるか、付与対象はどのマネージメントの範囲までなのか、権利行使の条件が業績と連動しているか、又、役員の退職慰労金制度と代替としては、付与条件・行使条件が適切かなど、実はストックオプションの中身について開示及び評価がされなければならない。報酬額の個別開示に関しては、コーポレート・ガバナンス機能上それほど問題ではないが、株主代表訴訟に備えた責任限定規定が定款に定められている場合は、実質的な総報酬として開示されるべきだろう。
株主にとって起業に対する具体的行動を起こす場である株主総会関連の運営に関する事は、実務的に重要な部分であるが、最近の注目度は低いようにも思う。
・株主通知の早期発送:法定期日よりも3営業日以上以前に発送した企業は、全体の33.0%
・総会集中日の回避:3月決算期のうち集中日を回避した会社は。38.4%
・電磁的方法による議決権行使:ネットによる議決権の行使など、電磁的方法により議決権を行使できる会社は全体に20.4%と未だに低い。また東証が提供する機関投資家向け議決権行使プラットホームへの参加者数が338社に留まっているのは、この問題に対する企業側の基本姿勢を疑う。プラットホーム参加のコストが問題であれば、いっそ協会等が負担しては如何か。
最後にディスクロージャーの問題になるが、個人向け説明会の定期的開催企業は全体の26.9%、アナリスト・機関投資家向け説明会開催は70.9%、海外投資家向け説明会開催は16.3%となっている。
個別企業のIRに対するスタンスが異なるのは構わないと思うが、株主間や投資家間で、会社情報に関する情報の非対称性が発生することは、コーポレート・ガバナンス上も問題がある。その様な配慮として、説明会内容のホームページ上での開示は、必須と理解していただくよう取引所や協会は、企業に働きかけるべきである。コーポレート・ガバナンスの基盤作りの為に。
ページトップへ

コーポレート・ガバナンス向上の目的は (6月18日)
 上場会社のコーポレート・ガバナンスについて、永年議論されてきた。金融庁の金融審議会での“我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ”において2年半、経済産業省では研究会の名称が変わっていったが、ここ5年以上は議論されていた。
 そもそも、このコーポレート・ガバナンス向上は、何の為だったのだろうか思い出してみたい。前商法の改正・会社法制定により、委員会設置会社など会社形態の選択肢は随分広がった。また取締役会の権限も強化され、企業統治のあり方もコーポレート・ガバナンスとして議論された。しかし、日本の企業の企業統治のあり方とは別に、これは上場会社のコーポレート・ガバナンス強化なのだ。
 10年以上前の前回金融危機で、金融機関の保有する株式の受け皿として、外人か個人しかいない中、国際的な投資基準として、海外に通用するコーポレート・ガバナンスの強化が求められていたはずだった。
 その間、買収防衛策議論や不正会計処理、MBOやM&Aでの取締役会と株主の利益相反問題などが顕在化した。米SOX法などの影響もあり、内部統制も強化されたが、日本の上場会社のコーポレート・ガバナンスは、国際的な投資基準からみて改善されたのだろうか。
 17日、金融審議会のスタティグループ・経済産業省の企業統治研究会それぞれがコーポレート・ガバナンス向上にむけた報告書を公表した。金融審議会の方は、既に拙稿(6月11日)で取り上げているので、ここでは企業統治研究会報告書の提言概要について紹介したい。
提言内容を纏めると、
上場会社の企業統治の形として、以下の3つの形態がある前提で、
A:委員会設置会社(東証上場企業の2.3%)
B:監査役会設置会社で取締役会に社外取締役がいる(同43.7%)
C:監査役会設置会社で取締役会に社外取締役がいなく、監査役会の社外監査役のみ(同55%)
カッコ内の実情を踏まえて、
【社外役員(取締役・監査役)の独立性】
・当該会社及びその子会社のCEO等でない事に加えて、親会社・重要な取引先の親族も含めてCEO等でないことを独立性の要件に。(3ないし5年年限が経過していれば要件を満たすとの考えもあり)
【社外取締役】
・一定数の社外又は独立取締役の導入をルール化。
・導入が困難な場合は説明を求める。
【法規制】
・会社法改正と上場規則等の制定を組み合わせる前提。
以上のような内容となっているが、昨今の経済危機を意識して、欧米型ガバナンス強化への信頼の揺らぎがあるのだろうか、独立性の確保に関しては少しトーンダウンしている感がある。
 しかし、この上場会社のコーポレート・ガバナンス強化について、別に欧米の年金基金向けだけではなく、新興国の機関投資家など、国際的な投資判断基準に耐え、かつ先端を走って海外投資家の信認を得ていかなければ、資金は東京市場に集まらないとの認識が、市場関係者にはあったはずだ。
 この基本に帰って、東証ルールでの規則整備を関係者には望みたい。  
ページトップへ

コーポレート・ガバナンス改革-その全体像 (6月11日)
 上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する強化案が、6月10日金融審議会の“我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ”で、報告書案として明らかになった。
このスタディグループでの議論は、過去何度か取り上げたが、報告書案も出たところであり、その全体像を紹介して、今後の展開を推測してきたい。
 報告書案によると、コーポレート・ガバナンスの問題は、企業と投資家双方の問題としているが、まず資本市場における企業の問題行動を、規制する事項として、以下が挙げられている。
1.新株式の発行等
(ア)第三者割当増資一般についての対応
―資金使途の詳細・割当予定先との資本関係・事業上の契約や取決め・割当先の保有状況や保有方針の詳細・増資資金の手当ての確認などの開示を、法定開示及び取引所ルールで。
有利発行かどうか明確でない場合、発行価額について監査役の意見表明及びその公表の義務化。
(イ)希薄化や支配権の移動を伴うような大規模な第三者割当増資等への対応
―第三者からの意見表明若しくは株主総会決議へ。取引所でのチャックの強化。
(ウ)MSCB等の発行に対する対応
―既にルールは整備されているが、MSCBに類似した取引も対象へ。発行条件の合理性や行使状況を開示。
(エ)当局や取引所等における執行面の充実・連携強化等
―金証法157条(不正行為の禁止)違反も、課徴金の対象へ。
2.キャッシュアウト
―現金を対価として行う少数株主の締め出しに関して、第三者割当後の予定がある場合は、開示を義務化。
3.グループ化
―子会社の経営上の重要な行為や経営状況が、重要な影響を与える場合の、当該子会社経営陣の見解の開示。
4.子会社上場
―取引所ルールで、親会社から独立性の高い社外取締役及び監査役の選任を求める等、少数株主の利益に配慮。
5.株式の持合い
―持合い状況の開示へ。銀行保有株については、銀行等保有株式収得機構の活用等で解消することを望む。
次に、会社の機能であるガバナンス機構に関しては、
1.取締役会のあり方
―取引所がコーポレート・ガバナンスのモデルを提示、上場会社はガバナンス体制の内容とそれを選択した理由を開示。
2.監査役の機能強化
―監査役監査を支える人材・体制の確保、独立性の高い社外監査役の選任、財務・会計に知見を有する監査役の選任。
3.社外取締役・監査役の独立性
―独立性に関する会社の考え方の開示
4.監査人の選任議案・報酬の決定権
―監査人の選任議案・報酬の決定権を、監査役の権限とする。
5.役員報酬の開示
―役員報酬の決定方法及び報酬の種類別内訳の開示。
また、投資家による議決権行使等もめぐる問題については、特に機関投資家の議決権行使について、
①受託者責任に基づく適切な議決権行使の徹底
②議決権行使に関するガイドラインの作成及び公表
③議決権行使結果の公表
が、機関投資家それぞれに求められており、上場会社はこれに対して、
①上場会社等による株主総会議案の議決結果の公表
②議決権行使に係る環境整備(総会日の分散、招集通知の早期発送、ホームページへの掲載等)
③議決権電子行使プラットホームの利用促進(現状1割程度)
④有価証券報告書・内部統制報告書の株主総会提出
となっている。

いろいろ議論もあったようだが、これらは主に上場規則などの取引所ルールや、開示省令の改正によって今後進められそうである。

ページトップへ

ガバナンス強化は投資要因か (6月3日) 
上場企業のガバナンス強化に関して、金融審議会の“我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ”において、現在議論されているが、委員会設置会社であれ監査役会設置会社であれ、社外取締役・社外監査役の独立性が問題になっている。
 中小企業まで含めた会社法が定義するところの、社外取締役・社外監査役の独立性は、上場会社としてガバナンスに関与する監督機能の中で、本当に社外のチャック機能が働くのか。親会社や、大手取引先で会社の業務に近い者が、外部の目で業務執行を監督出来るのか、社外取締役・社外監査役の独立性について、特に海外投資家・機関投資家から問題視する声が強い。
 コーポレート・ガバナンス強化に関する具体的な要望としては、「東証上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する投資家向け意見募集に対して寄せられた意見の概要について」(2008年8月)によると、以下の要望が寄せられている。
◇大幅な稀釈化を伴う新株発行および不透明な割当先に対する第三者割当の制限
◇株式持合いに関する情報開示
◇株主権を奪う株式併合の制限
◇買収防衛策の導入および発動条件の強化
◇社外取締役の導入促進と独立性強化
◇社外監査役の独立性強化
◇議決権行使時の制約緩和と行使結果の開示
 また、海外の有力機関投資家の団体であるエイシアン・コーポレート・ガバナンス・アソシエーション(ACGA)は、日本企業に最低3人の独立取締役の導入を求めている。
 確かに、昨年までは買収防衛策をブームの様に導入する企業が増えていたし、大幅な第三者割当や株式併合など資本政策で、一部新興企業の問題ある行動が目立った。
 コーポレート・ガバナンスが強化され、経営の透明性が高まった方が、確かに投資し易いだろうが、では、日本の株は、本当にコーポレート・ガバナンスに問題があるので買われないのだろうか。
 昨年、外人は3.7兆円日本株を売り越したが、これは金融危機を契機とするヘッジファンド等の売りが主体だったとする向きがいる。しかし、金融ビックバン以降順調に増加してきた外人持ち株比率も、ここ数年で頭打ちとなっていて、海外機関投資家が、日本株を買い進んでいるとは言えないことも事実である。
 では、コーポレート・ガバナンスが強化され、今議論しているような独立取締役制度が導入されれば、外人や機関投資家は、日本株を買うのであろうか。

 ニッセイ基礎研究所が、独立性の高い社外取締役を有する企業と、それ以外の企業の外人持株比率を比較したレポートを公表している。
ガバナンスは、海外投資家の銘柄選択要因となるのか
当レポートによると、
○独立性の高い社外取締役のいる会社の外人持株比率は、平均で17.4%と、社外取締役のいない会社の平均12.6%を大きく上回っている。(独立性の低い社外取締役しかいない会社の平均は、12.7%)
○過去11年間の外人持株比率の増加をみても、独立性の高い社外取締役のいる会社は、9%増加しているが、社外取締役のいない会社は、6.8%増加に留まっている。(独立性の低い社外取締役しかいない会社は、5.8%増)
 独立性の高い社外取締役の導入が、海外投資家の銘柄選別に影響を及ぼした可能性は、高いと言えるのではないだろうか。
 
ページトップへ

上場制度の整備について (5月20日) 
表題の様なことを書くと、一昔前なら大半が新規上場の為の基準やルール改訂に係るものであったが、商法(会社法)での資本取引の原則自由化や会社組織の柔軟化など、上場会社が取り得る資本政策が多様化して、株主及び投資家に判断に大きく影響することも随分多くなった。
 例えば、
○極端な株式分割や株式併合
○現物市場と裁定のし易いMSCB・優先株式の発行
○企業価値を毀損する可能性のある買収防衛策
○大量で支配株主が変わるような第三者割当
○開示される財務上の数字の虚偽記載
 これらの事に対して、今までは個別に対処したり、企業行動規範ということで、上場企業が順守すべき事項として定め、公表措置に原則ペナルティが限られていた。(適時開示等の規則違反に関しては、改善報告書を求め、上場廃止まで至る事案かどうかは個別に審査していた。)
 極論して申し訳ないが、上場という入り口では、その基準は明確だったが、上場維持の為のルール、若しくは上場廃止に至るルール違反の基準が、資本市場の変化に追いついていなかった。
 この事に関して、5月19日東証より、今までの企業行動規範を上場ルール化するような制度整備が好評されている。
 つまり、今までの企業行動規範の遵守すべき事項に違反した場合、今までの公表措置に加えて、上場契約違約金という金銭的ペナルティーを課すことをルール化する。加えて、改善報告書の提出を求め、一定期間は特設注意市場銘柄として指定する。
 また、適時開示等の規則違反についても、今までの改善報告書を求めることに加え、公表措置を明文化し、上場契約違約金を課す。これも、一定期間は特設注意市場銘柄として指定する。
(今までの、注意勧告制度は廃止する。)
 大枠は以上の様に、(上場維持の為の)ルール化を明確にするもので、個別に整備されることでは以下の対応がある。
〈第三者割当で、大量の株式が発行される場合〉
・希薄化率が300%を超える場合は、上場廃止。
・支配株主が異動した場合、支配株主との取引について年一回以上報告義務。3年以内に健全性が著しく毀損し、他の株主の利益侵害するおそれが大きいと認められる場合、上場廃止。
・希薄化率が25%以上の場合は、独立性の強い外部の意見書若しくは株主総会での決議(緊急性の高い場合は除く)
〈第三者割当〉
・割当先の資金手当ての確認
・発行価額の算定根拠及び具体的説明
・割当先が反社会的勢力と関係ない旨の確認書 等 を必要とする。
〈株式併合〉
・株主が不当に議決権を失うような場合は、上場廃止。
〈MBO〉
・MBOを行う場合、必要十分な適時開示を行うことを、企業行動規範の遵守すべき事項として定める。

 以上のような、上場規則の明確化は、資本市場では好ましいことであるが、今回の企業行動規範整備にあたって、東証への事前相談要請も、明文化されている。
 制度浸透の為には必要なことかもしれないが、事前相談が、行き過ぎた窓口規制にならぬよう、企業との対応現場で、規則整備の目的の徹底を、東証にも、お願いしたい。

ページトップへ

東証―上場制度改革の方向性 (5月7日) 
上場会社のコーポレート・ガバナンス強化について、上場規則により、定めようという金融審議会等の動向は、お伝えしているが、先月23日、東証の上場制度整備懇談会より、上場会社のコーポレート・ガバナンス強化の一環として、「投資者が安心して投資できる環境の整備」と「株主と上場会社の対話促進のための環境整備」を目的に、以下の提言が公表されている。
安心して投資できる市場環境等の整備に向けて

提言のポイントは、
○第三者割当について
 ・既発行株数の300%を超えるものは、取引所の上場に関する審査の対象
 ・既発行の25%から300%は、株主総会若しくは独立機関からの意見確認
 ・割当先が支配権の移動のある場合、その株主との間の取引について確認
 ・10%を超すディスカウントの場合、監査役の意見を公表(CB、新株予約権は必須)
 ・割当先の資金手当ての確認、公表
○株式併合について
 ・株主併合の結果、多くの株主が、支配権のない単元未満株主へ移行を余儀なくさせられるようなケースは、取引所による実質審査のプロセスを設ける。
 ・株主の利益にできる限り配慮して、反対する株主の株主買取請求権が確保されるような代替手段がある場合には、これを求める。
○議決権行使を容易にするための環境整備について
 ・集中日開催日の回避(最終日の一日前に9割以上が集中した状況は、2008年度48%と改善されているが、最終週への集中は、まだ85%)
 ・招集通知の早期発送(発送から総会まで、法定期限の2週間に対し、平均18日となっている)
 ・招集通知等の電磁的提供(HPでの開示は、全体の35%のみ)
 ・招集通知等の英訳(全体の15%が対応)
 ・電子投票の導入(全体の21.9%が導入)
○議決権行使の開示について
 ・欧州では、インターネットによる開示が義務付への方向性が決定している。

 会社法制定までに、旧商法では保守的に解されてきた会社の資本政策について、金庫株解禁・新株予約権制度・種類株の整理・株式分割と併合・資本準備金の扱い等、順次定められて、取締役会が取り得る資本政策の自由度は、ここ10年で随分と増した。
 勿論、既存株主に悪影響を与えるような資本政策は、ごく一部の企業に過ぎないのだが、上場会社である以上、不特定多数の株主及び投資家に対応する義務は、全ての上場会社が負うものである。
 最近の開示制度の改革や、内部統制対応で、企業の負担は相当増加していると思うが、先ずは比較的コストがかからない、HPでの情報開示の強化・電子投票の導入などは、早々に対応してほしい。
 また、機関投資家・海外投資家の議決権行使を促進する議決権行使プラットホームの参加が、まだ339社と東証上場会社の15%未満なのは、問題である。この制度などは、本来は企業側のメリットが大きいはずだが、コスト負担を嫌う企業側の意向があれば、いっそ取引所のインフラとして、取引所自らがコストを負担し、企業の利用を強制させては如何だろうか。

ページトップへ

コーポレート・ガバナンス-監査役の機能強化 (5月1日) 
3月期決算発表も、たけなわになってきたが、企業によっては6月の株主総会への準備に追われる時期でもある。会社法という企業活動を支える法律が、2006年5月1日に施行されてから、ちょうど3年が経つが、その間、企業の不祥事もあったし、資本市場でも、大量第三者割当やMSCB、買収防衛策問題などがあった。
別に、海外投資家を意識しなくとも、公開企業のコーポレート・ガバナンス強化は、資本市場における最優先課題である。
 ガバナンス=監督機能であるから、企業の日常の行動を監督するのは、取締役会の機能の基礎。と教科書的であるが、前段の問題に対応する為、取締役会に、外部の独立性の強い機能を、取り入れようというのが、金融審議会等での、議論の中心になっている。
 企業のガナナンス=監督機能の形は、以下の3つある。
1.委員会設置会社:(指名・報酬・監査3つの委員会からなり、各委員会の半数は社外取締役)
  東証上場の2351社中、56社で、全体の2.3%
2.社外取締役:(現在の議論は、この社外取締役の独立性を強めた”独立取締役”制度導入を、上場会社に義務付ける案が中心か)
  東証上場の2351社中、監査役会設置会社2295社であるが、その中で、現在の基準の社外取締役がいる企業数は、1003社で、全体の43.7%
3.社外監査役:監査役会の半数が、社外監査役でなければならない。
  東証上場の2351社中、社外取締役のいない取締役会での監査役会設置会社が、1292社で全体の55%
 改定が予想される東証上場規則で、独立取締役の導入が義務付けられるか分からないが、3.の様な会社が過半数を占めるのだから、先ずは監査役の機能を強化してはどうかという流れもあるようだ。

 以下、金融審議会資料から、その案の内容を抜粋すると、

○社外監査役(社外取締役も)の社外性を、独立性の観点から厳格化する法改正
○監査役会議長は、社外監査役。社外監査役の役割強化
○買収防衛策に対しては、社外監査役(社外取締役)を構成員とする特別委員会で判断
○大規模第三者割当増資・親子上場について、監査役会による意見を開示
○株主提案については、その是非について監査役も判断するよう法改正
○監査人の選任・監査報酬に関して、現在の同意権から、提案権を新たに付与
○監査人による内部統制監査報告書の株主総会提出、併せて株主総会提出の事業報告及び監査役会監査報告に内部統制の運用結果等に関する評価を記載するよう法改正

 会社法によって、企業は多様な運用形態で運営されることが可能となったが、公開会社としての責任は、その運営の透明性を高める=つまり業務がどの様に管理され、また誰がどの部分に関して、責任があるのか、明確にすることだと思う。
ページトップへ

投資家にとっての独立取締役 (4月8日)   
上場会社等のコーポレート・ガバナンスは、何故強化されなければならないか。
 法制度議論は別にしても、資本市場的見方をすれば、安心して投資してもらう企業の在り方が注目されているのだろう。 
 現在、経済産業省の主催する「企業価値研究会」や金融庁の金融制度改革の為の「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(金融審議会)で議論がされ、ガバナンス強化への取り組みの主要テーマになっているものとして独立取締役の導入がある。
 この独立取締役に関しては、海外の機関投資家なども強く求めているものではあるが、では会社法に定める社外取締役では不足なのか。会社法施行時にも、この社外取締役の独立性は問題になったが、会社法は上場会社だけのものではないので、社外=独立性の問題は、結局それぞれの立場で判断するということになった。
 しかし、上場子会社での社外取締役が親会社や主要取引先からでは、いったこの社外の意味は何であろうかと、投資家でなくとも思う。
 また、日本の主要な機関投資である厚生年金基金連合会(現企業年金連合会)では、平成16年に”株主議決権行使基準における社外取締役の独立性に関する判断基準”として以下の独立性のない要件を上げている。
①企業又はその子会社の業務執行取締役又は社員として勤務経験を有する者。(5年以上経過した場合は除く)
②企業の大株主又は主要な取引先企業の業務執行取締役又は社員。
※大株主とは、総議決権の3分の1以上の株式を保有する者をいう。
※主要取引先とは、当該企業への売り上げが上位10社に入るような会社をいう。
③企業から取締役報酬以外(コンサル料等)に報酬を受けている。
④企業の取締役と親族関係にある。
⑤当該企業との間で取締役を相互に派遣している。
⑥その他、当該企業との間に利害関係を有し、社外取締役としての職務を遂行するのにふさわしくないと認められる場合。

 では、独立取締役導入で上場企業の経営者にとって、負担やリスク以上のメリットはあるのか。
海外機関投資家が言うように、独立取締役を3人まで増やしたら、企業を支持する投資家は増えるのか。結論は、制度導入後の実証研究がないと言い切れないが、以下のコラムで独立性の高い社外取締役を選任している企業と、そうでない企業の外人持ち株比率を比較されている。
RIETIコラム
独立取締役の導入は、海外投資家の市場参加を促すのか

結果は3割以上保有比率が違うそうだ。
 独立取締役が機関投資家の投資を促進する要因かどうかは正確には分からないが、M&Aや企業再編などの重要な決定をする場合、推進力に対する制御システムは、上場会社の中にあった方が良い。ただし、会社法や金商法、若しくは公開会社法という法律で定めるのではなく、取引所ルールのようなソフトローでの方が、資本市場関係者としては好ましく思う。
 
 ページトップへ 
 
フッターイメージ