株式会社 資本市場研究所きずな
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   →地域金融機関
      ・地域における資本市場機能~地方からの成長戦略の課題(10月23日)
      ・地域における資本市場機能について (8月21日)
      ・リージョナル&クラウド~地方金融機関の資本市場機能について (6月3日)
      ・地域密着型証券ビジネスの在り方について (3月18日)
      ・地域におけるリスクマネーの供給について(11月8日)
      ・地銀投資銀行業務の現状 (7月26日)
      ・地銀の証券ビジネス (7月14日)
      ・地域金融機関と資本市場の接点 (4月6日)
      ・信用金庫と信用組合 (6月12日)
      ・地域からの企業再生の取り組み―そして資本市場は? (4月16日)
      ・地域密着型金融の地元企業への金融サービス-その取り組み (4月2日)

   →債券市場
      ・地域における債券市場構想 (7月6日)

   →地方取引所及び取引機能
      ・地域における資本市場機能と成長資金供給~その現状と期待 (12月2日)
      ・地域に密着したインフラや事業への投資資金供給へ~地方における資本市場機能充実策その3 (9月19日)
      ・株主コミュニティとTOKYO PRO Marketのブリッジについて~地方における資本市場機能充実策その2        (8月15日)
      ・IPO以前の状況について~地方における資本市場機能充実策その1 (8月6日)
      ・地域におけるリスクマネー供給と証券会社の役割(7月23日)
      ・投資としての“ふるさと投資”について(7月17日)
      ・動き始めたクラウドファンディング~期待と少しの不安 (7月1日)
      ・新・非上場株式取引制度について (6月24日)
      ・地域版資本市場モデルとして~ある市民参加型ソーラーファンドの取組み(7月24日)
      ・地域における資本調達を促す仕組みの可能性(6月11日)
      ・地方における資本市場機能の現状 (8月17日)
      ・地方取引所について (6月23日)

   →地域再生
      ・地域再生手法としてのM&A (5月12日)

   →地方債
      ・地方債市場としての問題点 (3月24日)
      ・資本市場からみた地方債概要 (3月23日)
      ・地方債の共同発行について (9月8日)
      ・地方債という金融商品 (8月20日)

   →地域企業
      ・専門家としての中小企業 (6月5日)
      ・事業承継の取組み-大阪の場合(5月26日)

   →海外市場
      ・タイの株式市場 (11月30日)
      ・インドネシアの株式市場 (10月28日)

地域における資本市場機能と成長資金供給~その現状と期待 (12月2日)
 地域の成長に対して資本市場機能がとうか関与しているか、その現状と可能性について見直したいと思います。
先ず一般の個人投資家が参加可能な地域特化型の投資商品として、地域ETFや地域リートがあります。地域ETFの実例としては、「MAXIS S&P東海上場投信」(銘柄コード:1553)があり、東海地方に本社をおく50社の株式を組み入れており、トヨタ・JR東海・デンソーなど輸送機関連銘柄の比率が高いのが特徴になっています。・・・以下にその内容を示します。

☆地域における資本市場機能と成長資金供給~その現状と期待
・地域に特化した個人投資資金の供給について
・地方証券会社における株主コミュニティ制度の現状と可能性
・地域事業ファンドにおける地方証券業務の役割
・地域住民の投資資金が地域の成長に寄与するために
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地域に密着したインフラや事業への投資資金供給へ~地方における資本市場機能充実策その3 (9月19日)
 地域のインフラや事業に対して、その地域の投資資金(リスクマネー)が提供されることは資本市場の機能としてもいくつかの意味があります。この事は、お金の流れ方を指して地域内資金循環ということもありますが、通常は効率性や規模を求める資本市場の在り方と異なった地域貢献といった目的が大きく影響しています。
簡単に言いますと、“地域住民のお金を地域の為に”という事に帰結しますが、そのお金の流れを資本市場の機能やルールを使って行うことが重要です。

 ☆ 地域内資金循環のイメージ
 ☆ 地域におけるリスクマネー供給と証券会社の役割


 本シリーズでは、この地域内資金循環に関して、地域証券会社がどの様に関与していくことが可能かといった視点で基本的なスキームを記載しています。地域において証券関連業務を強化している地域金融機関にとっても、リスクマネーに関する地域内資金循環は同じような課題となっています。

 図に示しました様に、企業応援ファンド(地元関連上場企業対象)やIPO(新規株式公開)など、通常の資本市場機能を使っても地域内資金循環の役割を果たすことは可能ですが、これらはファンドを組成する資産運用会社やIPO審査を行う証券会社にとって高コストです。つまり、高コストを贖う為に相応のビジネス規模が必要で、数十億から百億円以上のリスク資金調達に向いています。

 一方、数億円から数十億円の地元事業や地元企業の資金調達に対しては、低コストで対応できる私募債や私募ファンドが向いており、地域証券会社にとっても地元住民への販売活動が可能な範囲とされています。

 一般的に金融商品を扱う際に、証券会社は発行会社や金融商品内容のデューデリジェンス(精査)を行ったり、投資家に情報提供を行う為の開示内容を監査法人に監査させます。これらのコストが高い為、地域内資金循環の動きも限定されています。しかし、ヘルスケアや再生可能エネルギーなど地域への貢献が明確で、地域住民が目に触れるインフラや事業であれば、これらのデューデリジェンスや開示監査を大幅に省略して投資家にリスク判断を委ねることも可能です。

 地域における証券業務は、今までの金融商品の販売者との位置づけだけではなく、地域内資金循環のアレンジャーとして資本市場機能を利用していくことを地域証券会社及び地域金融機関に期待します。 
 
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株主コミュニティとTOKYO PRO Marketのブリッジについて~地方における資本市場機能充実策その2 (8月15日)
 資本市場の裾野拡大を分かり易く言うと、IPOに至るまでのルートの多様化ですが、郵政3社やLINEの様に相当の事業規模になっているものは別にして、これから成長が望める企業が資本市場の機能を利用しようとした場合、現状ではそのルートは限られています。
前回紹介したような新しい制度の利用は、まだ規模の小さい成長企業が利用するには適していますが、問題は、それぞれの制度の機能を使ってその市場に企業や投資家を誘導する証券会社などの存在です。通常のIPOは、大手証券5社を中心に主幹事業務は実質的な寡占体制となっていますが、残念ながら彼等に新しい制度利用のインセンティブは働かないようです。その最大の理由は、大手証券などの大きな組織や社内インフラを使うのに、新しい制度はそのビジネス規模に達していないとゆうことです。
規模の小さい企業をそれぞれの市場に誘導するには、実際に企業の傍にいて地域社会の中でその事業を見ている地方証券会社や地域金融機関が適していると思います。問題は、それらの地方証券会社等が、その市場及び他の資本市場を使い慣れていないということで、外部の専門家の利用や他の市場機能との連携があれば、新しい制度の利用は進む可能性があります。
その為の一つの市場間の提携事例として、以下のスキームを考えてみましたので、紹介しておきます。


☆ TOKYO PRO Market と株主コミュニティ制度のブリッジ利用例

これは、新規成長企業に対して、IPOまでに至る過程の中で、成長段階に合わせて新しい制度を利用してく試みで、

・証券会社で株主コミュニティを組成
・株主コミュニティ内で、投資ニーズを掘り起こし、成長の為に必要なファイナンスを実施
・プロ向け市場に上場して、社内体制を整えると共に、特定投資家ニーズの発掘と企業価値の顕在化
・IPOに向けての助走期間を、上記のプロセスを経ることで有効に使う

などの利用が進めば、株主コミュニティ制度・プロ向け市場での相乗効果が期待できます。
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IPO以前の状況について~地方における資本市場機能充実策その1 (8月6日)
 資本市場の裾野拡大については、市場関係者なら誰しも否定しませんが、一般的な興味はIPO(新規株式公開)への関心までで、業界内ではそこからその裾野拡大に向けた取組みについて目立った動きには至っていません。しかし、アベノミクスでは、新規・成長企業へのリスクマネー供給として、投資型クラウドファンディングと株主コミュニティ制度が整備され、証券会社(第一種金商業者)やファンド業者(第二種金商業者)がそれぞれの制度を使って企業と投資家を結びつけることは可能です。両制度は、昨年の6月から関係法令や業界内の自主規制が施行されていますが、その概要は次の様なものです。

◇投資型クラウドファンディング=株式を取り扱うもの〈株式型〉は日本証券業協会、ファンドで取り扱うもの〈ファンド型〉は第二種金融商品取引業協会、それぞれの自主規制に従います。
・株式型:取扱い業者 0、取扱い実績 0、(本年7月まで)
・ファンド型:取扱い業者 3社、本年6月末 運用残高 5億円(88ファンド)

◇株主コミュニティ制度=日本証券協会のルールで証券会社は原則未公開株式を扱えませんが、例外としてグリーン市場がありました。この制度が殆ど機能しないので平成30年3月末で廃止されますが、新たに証券会社が個々の銘柄の株主やその銘柄に興味のある投資家のコミュニティを運営する制度が昨年8月から始まっています。(以下、本年7月末時点)
・今村証券:コミュイティ数 11社 参加投資家累計数201
・島大証券:コミュイティ数 5社 参加投資家累計数100
・みらい証券:コミュイティ数 1社 参加投資家累計数0

 一方、平成21年6月にTOKYO AIMとして開設され、2012年7月からTOKYO PRO Marketとして稼働していますプロ投資家(特定投資家)向け市場があります。これは、金商法で定められる特定投資家のみが直接株式売買に参加できる市場で、この債券版としてはTOKYO PRO-BOND Marketがあります。

◇TOKYO PRO Market
・J-Adviser(同市場への上場を支援する会社):大手証券会社5社以外に、フィリップ証券、リーディング証券、そして証券会社ではありませんが同市場への上場支援専門会社としてOKINAWA J-Adviserがあります。(実施的に稼働しているのは、これら大手証券以外の3社に限られています。)
・上場企業数 16社
 投資型クラウドファンディングと株主コミュニティ制度はまだ始まって1年程度、TOKYO PRO Marketは4年ですが、これらが我が国の資本市場の裾野として機能していく為には、各市場で取り扱われる企業数の増加は勿論、それぞれの市場を利用していく証券会社などの取組みが増えていく必要があります。
その為には次の様なことが必要ではないかと考えます。
◎各市場の投資家にとって魅力ある企業の取扱い。
◎企業にとって魅力ある市場機構。
◎各市場利用の活性化として、資金調達やM&Aに有利な利用がされること。
上記は至極当然のことなのですが、問題はこれらの市場の先にIPO(マザーズやJASDAQなどへの新規上場)があり、これらの市場がIPOやそれらに興味を持つ投資家に繋がっていく必要がありますが、その役割はやはり証券会社の役割です。
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地域におけるリスクマネー供給と証券会社の役割(7月23日)
 証券会社の主な機能は、株式や社債などの売買機能の提供や投資信託・外国債券の販売、デリバティブ取引の取次ぎなどですが、一方では企業などへのリスクマネー供給を仲介するという役割もあります。このことは、特に成長戦略でも意識されていて、個人の資金をリスクマネーとして供給する新たな機能も求められています。それが、IPO(新規株式公開)の促進だったり、新規・成長企業に対するファイナンス機能(投資型クラウドファンディング等)やヘルスケアリート解禁であったりしていますが、個人の投資資金をリスクマネーとして仲介していくことでもあります。
 前回は、内閣府が推進する“ふるさと投資”を紹介しましたが、そのことは地域におけるリスクマネー供給を促していくことでもあり、やはりその中心となるのは証券会社若しくは証券会社的機能だと考えます。その現状の概要について以下に纏めてみました。

☆  地域におけるリスクマネー供給と証券会社の役割

基本的には、地域の企業や事業が必要とするリスクマネーを、地域の投資家から調達することですが、具体的に証券会社が関与する場合、以下のリスクマネー供給スキームが使われます。

【地元上場企業応援ファンド】地域に本社や主要な工場がある上場企業の株式へ投資するファンド(公募ファンド)を組成して、地元証券会社などで地域住民に販売します。一時的にはこの種のファンド組成が流行りましたが、公募ファンドの組成ではある程度の投資規模が必要で、その為にファンド組成が出来る地域が限られてもいます。また、ファンドは株式を流通市場より調達しますので、間接的なリスクマネー供給支援となります。

【地元企業IPO】現状では、個人投資家にとってはもっとも分かりやすく、かつ参加しやすいリスクマネー供給スキームです。また地域金融機関などでも、地元企業IPO推進は注力するところでもありますが、実務的IPO審査機能は、大手証券にほゞ集中しており、その為投資家ニーズも主幹事となる大手証券の顧客ニーズに集中しがちで、地元投資家の投資ニーズが十分取り込めるとは言えない状況です。反対に、IPOまで達する企業は地元投資家への依存が小さくなっても良いのかも知れません。

【株主コミュニティ制度】本年6月から始まった制度で、証券会社が対象となる企業の投資家リストを管理(株主コミュニティ)し、そのリスト内での売買やファイナンスを証券会社が仲介することが可能となっています。その地域において利用者や関係者が多い未公開の企業にとって、有効な制度となることが期待されていますが、証券業協会の自主規制ルールで運用されており、情報提供や決済などのインフラ整備が待たれます。

【投資型クラウドファンディング】この制度も、本年6月から始まっていますが、取り扱うためには少額電子募集取扱業者としての登録申請が必要なので、もう少し実現まで時間がかかりそうです。但し、クラウドファンディング全般に関して社会的関心も高く、投資型の利用推進は成長戦略における新規・成長企業へのリスクマネー供給の目玉政策になっている観があります。また、ふるさと投資推進と相まって、地域金融機関や都道府県などが地元でのクラウドファンディング業務取組強化の動きを見せています。

【地元事業ファンド】地元投資家の資金を、地域における事業へのリスクマネーとして証券会社が仲介するスキームとして、最も現実的で利用される可能性が高いもとではないかと思われます。投資対象の事業は、太陽光や風力発電などの再生エネルギー施設、そしてヘルスケア施設などですが、例え数億円と規模が小さくとも私募ファンドの形で組成しやすいことと、インフラファンドやヘルスケアなどの上場リート市場が整備されたで、私募ファンドの出口(買い手)も確保しやすくなりました。

以上のスキームを、その事業・企業に合わせて提供していくことで、地域における証券会社のリスクマネー供給の役割も一層深まっていくと考えます。
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投資としての“ふるさと投資”について(7月17日)
 “投資型”クラウドファンディングは、金融商品取引業の業務として関係法令・自主規制ルール其々5月末から施行されていますが、実際はクラウドファンディング業者として登録(各財務局に)してからとなりますので、実際の業務開始ではまだ数ヵ月かかりそうです。

 一方、“ふるさと投資”という言葉が昨年後半から使われはじめていますが、これは内閣府が進める地方創生プロジェクトの一環として、地方公共団体や地域金融機関などが、地元企業や事業の必要資金をクラウドファンディング的手法を活用して支援していこうとするものです。

 昨年10月に、内閣府地方創生推進室が中心となって、地方公共団体・地域金融機関・支援団体等の関係者が集まり、「ふるさと投資」連絡会議が設立されました。各地域における取組みを紹介したり、クラウドファンディング活用のポイントなどを纏め、また情報共有プラットフォームをつくって関係者間の情報共有活動を行っています。

 これはこれで重要な事なのですが、今後開始される投資型クラウドファンディグへの影響を考えてみました。

○地方公共団体(主に都道府県)が関与することで、クラウドファンディングを活用して資金を集める地元事業者へのコストの一部もしくは全部が補助金として支給されるケースが多く出てくると予想されます。実際に、大阪府や北海道ではこの様なクラウドファンディング活用者への業者に支払うコスト負担を補助金名目で支給した事例があり、今後、地方公共団体に政府より交付されるふるさと創生支援金などが、地方公共団体を通じてクラウドファンディングのコストとして利用される可能性があります。

○地域金融機関が関与することで、その事業の地方での重要性や経営者などの信用力評価などクラウドファンディング業者が行う審査作業の精度が増す可能性があり、より多くの投資家にアピールしていくことも可能になります。

 つまり、“ふるさと投資”を進めることで投資型クラウドファンディングが、金融商品業務(証券業務)として企業のファイナンンスの中に定着していくことが期待されます。但し、その為にも、上記の様に支援される企業側の一方にいる投資家としての利用者に対して、

◇企業や経営者の審査をしっかり行う
◇企業や事業の資金調達後の情報提供を確実に実行する

は、クラウドファンディング業者として最低限の条件です。
加えて

◇投資家側の声(SNSなどを通じて)を、事業者にしっかり伝えていく
◇株式型において、投資家側が少数株主として一方的に不利益を被らない為、仲介者としての最大権の注意をもって企業の経営を監視してく

ことも、金融商品取引業者(クラウドファンディングは、少額電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者)としての責務の中で実行を求められるものと考えます。
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地域における資本市場機能~地方からの成長戦略の課題(10月23日)
  地域における資本市場機能として先ず思い浮かぶのは、地方の証券取引所です。現在は、名古屋・福岡・札幌の三ヵ所になってしまいまたが、嘗ては神戸、広島、新潟、京都があり、大阪の現物株市場は昨年7月に東証に統合されています。勿論、地方取引所は地域の企業が利用するための市場機能を提供していますが、むしろその地域の企業に対して上場する事のメリットなどを広める活動が中心になっているように感じます。

 成長戦略では、“新規・成長企業へのリスクマネー供給を増やす”が謳われ、成長力がある企業が上場しやすいよう開示負担などの軽減が行われましたので、今後地方企業のIPO(新規株式公開)も増加が予想されます。

 このIPOの実務を担うのが引受証券会社ですが、大手5社がほぼIPOの主幹事の地位を占めている現状では、その市場仲介機能を果たす証券会社も限られています。地方の成長企業への投資を、その企業をよく知る地域の投資家が支えるというのが理想ですが、その仲介を行うが地方証券や地域金融機関ではなく、東京の証券会社ということになりなります。

 一方、成長戦略で新しく整備される”新たな非上場株の取引制度”では、地域のインフラを担うような地域密着の地元有力未上場企業の株式の取引などが想定されていますが、これは地元証券会社など企業や地元投資家をよく知る立場の市場仲介者が望まれます。

 また、同じく制度整備が予定される”投資型”クラウドファンディングに関しても、例えインターネットを利用して、広く投資家を募るとしても、企業の選択を効率的に行い、コアの投資家を集めるのは、地域金融機関や地方証券が中心になっていくと思われます。(※クラウドファンディング調査会社によると、
欧米において投資型クラウドファンディングに応じた投資家の6~7割が、対象企業の関係者や同一地域の投資家だったという調査結果もあります。)

☆ 新規・成長企業へのリスクマネー供給の為の制度整備の現状(概要)

 新しく制度整備される”新たな非上場株の取引制度”や”投資型”クラウドファンディングが有効に利用されていく為には、既存の資本市場の基点にあるIPOに上手く繋がる必要があります。
前回もご紹介しましたが、
① 地域の新規・成長企業が”投資型”クラウドファンディングで資金調達(これを実務的に行うのは、“電子募集取扱業務”を行う地方証券会社・地域ファンド業者)
② 企業が成長し、次のリスクマネーが必要な場合、”新たな非上場株の取引制度”を利用して地元投資家に第三者割当。また、株主間の必要な売買にも応じる。(これを実務的に行うのは、同制度の取引者リストを管理する地元証券会社)
③ 成長してIPOへ。対象となる市場は、プロ向け市場、地方の新興市場、東京証券取引所の新興市場(マザーズとジャスダックは、同一証券取引所内にあるので、その役割が整理されいずれ統合へ)
というような成長企業のステップアップ・ストーリーが望まれます。

この様なストーリーが可能となる為には、以下の様なことが課題となります。
① 地方証券会社や地方ファンド業者が利用可能な“電子募集取扱業務”のインフラの構築
(インフラ構築には、地方振興の目的で、政府系金融機関や地方公共団体などの政策支援が望まれます。)
② ”新たな非上場株の取引制度”の為の投資家リスト管理・売買決済の為のインフラの構築
(証券業協会や証券等保管振替機構などによる、地方証券会社が利用可能な共通インフラ構築が望まれます。)
③ 成長した企業がIPOに至った時、それまで支えた①や②でサービスを提供してきた証券会社などがIPO時にメリットを受ける仕組み
(IPOの主幹事機能が実質的にある証券会社と地方証券会社の業務提携強化など)

現在取り組まれている施策などが、資本市場における成長戦略としてリスクマネーの供給増加に繋がる為には、上記のような課題の認識とその取組みが必要だと考えます。
 
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地域における資本市場機能について (8月21日)
アベノミクスによる成長戦略も地方にその重心が移ってくるということですので、地域における資本市場機能について見直してみました。資本市場の裾野拡大の為にも、地域での資本市場機能拡充が重要なのですが、現在の状況と可能性について次の様な状況です。

【地域の成長企業に対するリスクマネー供給について】
 現在はIPO(新規株式公開)に偏っていると言わざるを得ません。取引所に上場して、その際リスクマネーを調達することは分かり易いシナリオで、今後もこのIPOが地方における資本市場機能の中核であることは変わりがないでしょう。むしろ問題は、IPOを仲介する業者(IPO引受証券会社)のキャパの方かも知れません。業者にとってIPOは組織的負荷が重い装置産業で、証券会社でも大手と中堅の一部しか実質的な主幹事対応が出来ません。現在、一部の中堅証券会社ではIPO人員の拡充に動いているようですが、各社の機能拡充には時間がかかりそうです。

 このIPOに替わるリスクマネー供給として、一部の地方ではファンドでの資金調達が行われ始めています。例えば、地元での自然再生エネルギー施設やヘルスケア施設の建設・運営資金調達、地元信用金庫の資本調達など、上場企業でなくとも地元での認識が高い事業や企業のファイナンスでファンド(事業ファンド)が活用されることが増加しそうです。

 またIPOの代替としてプロ向け市場(TOKYO PRO Market)が注目されます。この市場はロンドンの新興市場AIMに模して創られた市場ですが、専業者(J-Adviser)が企業のサポートする仕組みで、企業側がより軽い負担で上場することが出来ます。但し、J-Adviserとしての負担が重かったので、中堅以下の証券会社には敬遠されていましたが、既存の証券会社と組むことを前提にした専業者が沖縄県内で設立され、実績を積み始めているので、より多くの地方証券会社や地域金融機関などが地元企業をこの市場に誘導することが期待されています。

 今後については、成長戦略で制度整備される“投資型”クラウドファンディングと新・非上場株式取引制度があります。今秋にも関連業界において自主規制ルールを整備し、来年4月以降には稼働すると見られていますが、上記其々の資本市場機能と繋がってこそ、資本市場の裾野として上手く機能していくと思われます。

【資本市場に繋がるベンチャー投資について】
 殆どの地域には、地域金融機関や地方公共団体・政府系金融機関などが設立に関与した地域ベンチャーファンドがありますが、これらが資本市場の裾野として機能する為には、ベンチャーファンドが出資した企業が更なる成長資金を調達したり、IPO以外のEXIT(ベンチャーファンドの資金回収)としてM&Aを行い易くする環境整備が必要と考えられています。独立行政法人中小企業基盤整備機構では、このベンチャーファンド間の取引を活性化させようと、ネットワーク構築を試みて2012年2月からベンチャー投資の情報ネットワークとして”ベンチャー投資ナビ”を開設しています。現在、88社のベンチャーキャピタルが参加して563社の企業情報が掲示されていますが、実際の投資やM&Aニーズに応える為の情報共有化(ベンチャーキャピタ間の)は、これからという感じがします。

 率直な感想を述べますと、地方においては既存の資本市場関係者より、ベンチャー投資関係者の方は随分多い様に思います。この各地域間のベンチャー投資関係者間の情報共有が進めば、資本市場の裾野としての地域ベンチャー投資の在り方も見えてくるように思われます。
 

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動き始めたクラウドファンディング~期待と少しの不安 (7月1日)
 6月24日に閣議決定された新成長戦略では、クラウドファンディングを活用した地域資源活用型ベンチャー等の企業支援活用モデルの検討という項目が新たに記載されていますが、実際に地方では地域に密着したクラウドファンディングの取組みが始まっています。
 また、それとは別に“投資型”クラウドファンディングの制度整備が進んでおり、改正金商法が5月末に交付され1年以内に施行されますが、今後、内閣府令や自主ルールの整備が秋口に行われ、来年4月にも金融商品取引業としてのクラウドファンディングが始まります。
 この事は、今は規制されていないクラウドファンディングが純粋な寄付行為以外は規制されていく可能性が強いということでもあります。
 今後、制度整備される“投資型”クラウドファンディングは、不特定多数の個人が未公開のベンチャー企業などに投資すること可能にする仕組みとして期待されていますが、これが投資行為と成り立つ為には旧来の資本市場に何らかの形で繋がっていく必要もあります。例えば、成長すればIPOを目指すとかM&Aで大手企業が資本参加することなどがありますが、その為にも仲介者として証券会社などが数多く関与していくことも重要と考えます。

 取りあえずは、今後の自主ルール制定に向けて業界で議論が進むことに期待しています。

☆ 動き始めたクラウドファンディング~期待と少しの不安
・それぞれの期待
・クラウドファンディング・スキームの現状
・2020年のクラウドファンディング
・証券ビジネスとしての可能性と課題

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新・非上場株式取引制度について (6月24日)
 資本市場の成長戦略の一つに、“新たな非上場株式の取引制度”がありますが、
●未公開株詐欺などの問題
●グリーンシート以外の未公開株が、実質的に証券会社で取扱い難くなっている現状(勧誘行為が伴わなければ証券会社でも取り扱えますが、実際は上場株式がペーパレス化で証券会社から金庫が無くなって、未上場の株券を取り扱う態勢が証券会社内で殆どなくなっています。)
●グリーンシート市場そのものも、取り扱う証券会社数がごく少数に減少していること
などから、現在の市場関係者の関心はそれほど高くはありません。
 しかし、新制度を成長戦略として見直した場合、地域の有力企業(非上場)の資本政策に利用されることも考えられ、その可能性について取り上げてみました。
 
☆  “新たな非上場株式の取引制度”利用の可能性について

 この制度整備は、本来は成長戦略の一環ですから新規・成長企業にも利用が広がる可能性がありますが、証券業協会などの議論をみていますと、特定の地域に株主や顧客が多くいる地域有力企業(非上場)の利用が取りあえず想定されているようです。

例えば、地方交通機関や地域放送局、ゴルフ場、サッカーなどのスポーツクラブなど特定の地域で利用者が多い企業が有望ですが、基本的な仕組みは証券会社が管理する投資家のリスト“投資グループ”内で売買したり、勧誘することが可能です。

その為に必要な企業情報については、既に有価証券報告書を提出している企業(過去に1億円以上の資金調達を一般募集したり、株主が既に500名以上いる場合など)は有価証券報告書、それ以外の企業は会社法に基づく事業報告や計算書類などが想定されています。また、上場株式の様に頻繁に売買されることは想定されておらず中長期の投資が前提となるので、この制度の株式はインサイダー取引の対象外となっています。その為、適時開示は必要ありません。

 この制度を地域の有力企業が利用することについて、それぞれのメリットは次の様なことが考えられます。
【地域の有力企業にとって】
・企業価値を顕在化することで、持株会やストックオプションなどの自社株利用のインセンティブプランを利用しやすくする。
・投資家リスト内の公募ファイナンスが可能となり、自社株取得と合わせて、より柔軟な資本政策をとることが可能となる。
・企業再編や株主構成の変化をスムーズに行うことが出来る。
・株主優待などを通じて、地元顧客の株主化を進めることが容易になる。

【投資家リストに参加する投資家にとって】
・地域企業の事業を資本面で支援することが容易となる。
・株主優待を通じて、企業の事業を一層利用することが出来る。
・株主及び投資家として企業情報を取得することが出来る。

【同制度を提供する証券会社にとって】
・地域の有力企業に対して、資本市場機能利用のソリューションを提供することが出来る。
(※其々の業務は他社と協働することで対応し、自らはフィナンシャル・アドバイザーとして機能することも)

最後の証券会社については、同制度にかかるコストと新たなビジネスメリットのバランスで推進力が決まるのが業界の常ですが、市場の成長戦略が地域から始まっていく知恵も同時に求めらているように思われます。

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リージョナル&クラウド~地方金融機関の資本市場機能について (6月3日)
 10年程前に、地域金融機関が地元中小企業への支援をもっと強めましょうということで、地域活性化策の一環としてリレーションシップバンク構想という金融行政が進められました。新規企業への融資を増加させたり、政府系金融と組んで地域ベンチャーファンドなどを立ち上げる動きが強まりました。また、上場する企業を増やそうと、地元の成長企業をIPO(新規株式公開)へ導く目的で、大手証券などと株式公開業務で提携する市場誘導業務を推進する地方銀行が多くありました。
 そして、昨年6月に公表された政府による成長戦略の影響もあり、昨年度の中小・地域金融機関向け監督方針(平成25事務年度)のポイントとして、地域密着型金融の進化ということが上げられています。

 一方、5月23日に国会で成立した改正金商法では、新規・成長企業へのリスクマネー供給増加を目的として、新たに“投資型”クラウドファンディング制度の創設などが予定されており、これは証券会社などの金融商品取引業者の制度(事業ファンド形式の募集は第2種、株式での募集の場合は第1種)として今後整備されていきます。
 地域密着型金融と金融商品取引業は、教科書通りでは間接金融と直接金融ですが、実は“投資型”クラウドファンディングに最も近いところにいるのは、この地域金融機関(=リージョナル・バンク)ではないかと思われます。
 その最大の理由は、新規・成長企業の最もよく知る立場にいる金融機関は地域金融機関だからです。つまり、対象となる企業の成長力も信用リスクも金融機関として、既にチェックしているということですが、勿論、実際の“投資型”クラウドファンディングを行っていく場合、ライセンスをもったクラウドファンディング業者と組むことになります。

 実際の”投資型”クラウドファンディングにおいては、その業務が主に次の様に分けて進められると考えられています。
① 資金調達する事業が企業を選択する。
② 選択した事業や企業の情報をネット上で提供し、資金集めの為のネット上のプロモーション活動を行う。
③ 実際に集めた資金をファンド若しくは株式の形で管理し、ファイナンス後の事業や企業の定期的情報提供に努める。

 上記の①については、選択した事業や企業の内容を精査する必要がありますが、これは本来資金を提供する一般個人(クラウド)の為に行うものです。②は資金を集める企業の為、③は双方の為と分けられますが、それぞれのプロセスにおいて、ある程度の利益相反があります。これを、公募ファイナンスの様に引受証券会社の機能とチャイニーズ・ウォール構築に任せるには、小さな資金調達を扱うクラウドファンディング業者では荷が重すぎます。
 
 今後整備される”投資型”クラウドファンディングが、新規・成長企業の役に立ち、共感を感じてリスクマネーを提供しれくれる一般個人に報いる為にも、地域金融機関とクラウドファンディング業者のコンソーシアムの様な共同作業で進めることが一つの在り方ではないかと考えます。

 リージョナル&クラウドで、資本市場に繋がるようなクラウドファンディングが試みられることに期待しています。

 
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地域密着型証券ビジネスの在り方について (3月18日)
 アベノミクスの影響で株式市場が上昇トレンドを久々回復しましたが、対面営業中心の中堅や地方証券の業績も復調しています。しかし今後の証券ビジネスの在り方を考えた時、本来の強みである地域社会に密着したリスクマネー供給の仲介機能を果たすという社会的な命題があるように思います。
 この様な取組みを“地域密着型証券ビジネス”と呼んでみましたが、単に株式や投信・債券の販売することだけではなく、リスクマネーを地元の事業や企業に供給する役割を担っていけば、証券ビジネスの幅は大きく広がっていきます。そのような地域密着型の証券ビジネスについて、現状のイメージを纏めてみました。

☆ 地域密着型の証券ビジネスについて
・地域事業へのリスクマネー供給
・地元企業へのリスクマネー供給
・地域密着型M&Aビジネス
・地域密着したIR活動の在り方

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地域におけるリスクマネーの供給について(11月8日)
  現在、金融庁の金融審議会では“新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方”として投資型クラウドファンディングの制度化が議論されていますが、投資ということになりますと上場企業とは全くことなる次元のリスクマネー供給となるわけですから、経営者やその企業の身近にいる人たち(企業や金融機関を含む)の評価ということも重要になります。

 それで、地域におけるリスクマネーの供給ということについて考えてみましが、中核になるのは
・地域企業の成長の為のリスクマネー調達ニーズ
・地元企業や地元で行われる事業に対する投資ニーズ
がマッチングすることではないかと思われます。

その方法として、現状で考えられるものは企業の成長に合わせて次のようなものがあります。

○クラウドファンディング=現在は、法制度整備の為の識者による議論の段階ですが、年末までに制度内容が固まり来年の通常国会での関係法案の成立、そして早ければ来年度内の施行が予想されます。この方法は、ネット上で広くリスクマネーを募るということですが、寄附型やイベント・商品販売型とは異なり投資型は投資成果に対する評価をしなければなりません。また個人の投資家にたいしては、未公開株式としてのリスクを認識してもらう必要があります。

 ただし、地域においての創業支援は地域活性化や地域復興目的で(独)中小企業基盤整備機構が都道府県と組んで地域創業支援ファンドの組成を積極的に進めています。また、地域の大学にはTLO(Technology Licensing Organization(技術移転機関))やベンチャー企業創業支援のファンド組成を積極的に行っているものもあります。これら地域ファンドとの連携を行ってクラウドファンディングを進めるのであれば、地域の個人も参加しやすいものになっていくでしょう。とは言いましても、個人にとってはリスクの大きな未公開株投資でありこと変わりありませんので、できればエンジェル税制の活用を容易にすべきです。

○プロ向け市場の活用=ある程度の規模に成長した地元企業が、次なる成長を目指して成長資金調達の場としてプロ向け市場を活用することを期待します。地元のベンチャーファンドや地元金融機関からの投資、地元の資産家(個人の金融資産3億円以上)による資金支援の場として、プロ市場が活用されることで、企業側の情報開示が進み、それによって他地域のプロ投資家の興味が集まるのが理想ですが、先ずは地元金融機関等からのリスクマネー供給の場としてプロ市場を使いこなすべきです。

○地元事業ファンドの活用=上場会社も含めて、地元企業により地元住民が使ったり恩恵がある事業を行う場合、事業ファンドによって地元住民からリスクマネーを集めるということが行われ始めています。例えば、メガソーラーや風力などの再生可能エネルギー施設とその運営に対する市民ファンド、ヘルスケア施設などの私募ファンド化などがあげられますが、事業ファンドの場合は金融商品に投資するファンドとは異なり500名以下の保有であれば、金融商品取引法上の継続開示義務が免ぜられ資金調達者にとって負担の軽いものとなります。

 以上、地域におけるリスクマネーの供給について簡単に説明しましたが、イメージ図は以下のようなものです。

☆ 地域におけるリスクマネーの供給について
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地域版資本市場モデルとして~ある市民参加型ソーラーファンドの取組み(7月24日)
 考え方として、新興企業などへのリスクマネー供給は、その事業を目で見ることができ、経営者などのも知っている身近な人達が行うという考え方があります。同じ地域に住んでいれば、事業の実態も経営者の能力も解り易いという訳ですが、例えば地方の放送局や新聞社、バス会社やガス会社など地域社会のインフラを担う企業の株式(未公開企業)が、地元の人々の間で売買されることがあります。
以前は、このような地元有力企業の株式を売買について、証券会社が関与(媒介など)して時もありますが、嘗ての店頭取引市場がジャスダックといった取引所取引扱いになったり、グリーンシート制度で自主規制ルールが定められたことにより、それ以外の未公開株が事実上扱いにくくなりました。それ故、今では証券会社において、例え地元企業の株式といえども、未公開株に関与することは殆どありません。

 一方、地域の社会インフラ的な投資に対して、地元住民が投資と言う形を通じて参加する仕組みを、地域証券会社がアレンジするような新しい動きもあります。例えば、以下の様な市民参加型ソーラーファンドの取組みが、最近なされています。

☆地域内資金循環型の環境貢献と市民参加型ソーラーファンド

この市民参加型ソーラーファンドは、地域住民のお金・ソーラー事業行う地元企業・ファンドの組成や販売は地域証券と、関係者全てが地元で完結し、お金の流れも地域内を循環するということになります。加えて、地域のCO2を削減することで環境貢献も進みます。

 但し、このファンドは証券会社が通常取り扱う株式・債券や投信とは異なる事業ファンド(事業に投資する為のSPCなどを設立し投資を行う)で、金融商品取引法上は“みなし有価証券”として取り扱われており、第二種金融取引業の登録が必要になっています。この仕組みを集団投資スキームとして推進する為に、開示規制の掛からない私募の基準は有価証券の基準より緩やかになっており、500名未満が保有しなければ、私募として取り扱われます。その様な仕組みは、地域における中規模のメガソーラーやヘルセケア施設などの地域インフラ的な事業規模に適していますが、現在は地域証券の一部で、その取扱いが始まった段階です。
今後、地域証券会社の地域に密着したビジネスとして、その取扱い拡大が期待されます。

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地域における資本調達を促す仕組みの可能性(6月11日)
 前回は、アベノミクスの成長戦略として“新規・成長産業等へのリスクマネー供給を増加させる”仕組み(法制度の変更)が、現在、金融審議会で議論されていることをお伝えしましたが、その検討の中核になっています“地域における資本調達を促す仕組み”について、少しコメントしたいと思います。
 先ず、この仕組みの構成要素から簡単に見直したいと思います。

【対象】成長企業
【リスクマネー供給方法】株式や新株予約権付社債(CB)、優先株などの資本性の投資による
【投資家】企業の成長段階に応じて、リスクマネーを供給する為の中核となる投資家は異なると見られる。
・起業、立ち上げ時=政府系金融機関や地域金融機関などの“地域活性化ファンド”による投資、地方公共団体による助成金若しくは投資支援
・早期成長時期=地域ベンチャーファンド、年金や生保などのベンチャー投資、個人のエンジェル投資など
・成長持続期=その他ベンチャーファンドなどによる追加投資、IPO(新規株式公開)を期待した取引先や関係者などの投資、その他機関投資家などの投資
【利用が想定される仕組み】
 地域ベンチャー企業投資の推進策、ベンチャーファンド間の情報共有システムの構築、政府系機関によるベンチャー企業の技術評価支援、グリーンシート市場の改良、プロ市場利用促進
【投資の出口】
・IPO(新規株式公開)
・M&A
・グリーンシート市場での公開
・TOKYO PRO Market(プロ市場)への上場
・経営者等による買戻し=経営が軌道にのり内部留保が積み上がった段階での自社株買いなどを想定
【政策支援】
・ベンチャー投資推進=経済産業省
・地域活性化策=総務省、内閣府
・地域金融機関や地方証券会社が参加する地方に重心を置いた資本市場機能作り⇒金融庁

 複数の政策支援が本件に関わってきますので、必然的に関係者も多くなりますが、投資という視点でみますと以下のストーリーに纏まるのではと思われます。

 ベンチャー企業の内容を一番わかっているのは、その取引先であり地元金融機関なので、彼等を何らかの形で地元ベンチャー企業への投資に参加させる。しかし、ベンチャー企業が特殊な技術やビジネスモデルを持つ場合、将来性や企業価値が分かり難いので、その評価を政府系の評価機関がサポートする。
 また、ベンチャーファンド間や機関投資家などで、ベンチャー企業への投資情報が共有されれば、ベンチャー投資も活発化する可能性があるので、このベンチャー企業投資情報フラットフォーム機能は政府系機関の運用もとで充実させいく。
 ただし、ベンチャー投資で最も重要なことは、出口戦略(EXIT)をどう想定していくかという事なので、最終的目標をIPOに置いて、途中段階でのM&Aやグリーンシート市場・プロ市場の活用を容易にする為の制度改正や支援策を検討する。

 言い換えると、地方のベンチャー企業と密接な関係にある地域金融機関や地方証券会社において、M&Aやグリーンシート市場・プロ市場対応やIPO支援などの専門性の高い業務を行っていく為、それぞれの場面において専門家との関係構築(ネットワーク化)が望まれますが、そのインセンティブとして、規制緩和策など支援政策が期待されるのでないでしょうか。

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地方における資本市場機能の現状 (8月17日)
 国家戦略として総合取引所構想があり、資本市場の取引・決済インフラは一極に集中しつつある。その中心となるのは、取引面では来年1月にスタートする東証・大証を統合した日本取引所グループ(仮称)であり、決済面では証券保管振替機構であるが、日本のおける市場機能はこれだけで十分ということではない。地方にも企業活動の現場があり、そしてそれに期待する地元投資家層もいるので、地方における資本市場機能の現状について見直してみたい。

○地方取引所のあり方
 嘗ては京都・広島・新潟にも証券取引所があったが、取引される株券を始めとする有価証券の電子化や取引システムの東証への集約化で閉鎖され、他の地方取引所もその存在意義が問われることもあった。しかし、現在残っている名古屋・福岡・札幌の各取引所は、地元企業や地域の投資家との関係を強化しながら、地域における資本市場機能のあり方を模索している。
例えば、名古屋取引所においては中京地区という強固な産業基盤の中で、地元企業が情報発信の場として取引所からの情報発信を重視する傾向が強く、地元マスコミなども取引所を取材の場として利用することが多い。福岡取引所については、福岡県などとの産業政策と重なって、アジアの企業誘致や地元企業のIPO活性化策を、地元金融機関と協力して推進しようとしている。また、札幌証券取引所では地元企業が上場しやすいよう上場ルールを緩和したり、地元上場企業の取引所利用を推進する施策を行っている。

○地域証券のあり方
 嘗ては証券会社において、売り手・買い手から依頼されて地元企業の売買の媒介を行うということもあった。その意味では、地元未公開株の仲介機能を果たしていたのだが、自主規制において店頭で取り扱って良い株式の要件を定め、グリーンシート市場として流通機能を整備しようとした為、それ以外の未公開株は証券会社の店頭で取り扱わなくなった。肝心のグリーンシート市場の方は、発行市場として資金調達しにくいといった欠陥と、取り扱う証券会社の減少で、機能しているとは言い難い状況だ。
証券会社においては、未公開株は取り扱わないのではなく、取り扱う為のルールを定め直し、地元企業のM&Aや、地元ベンチャー企業へのエンジェル税制投資に、関与してくことが地域証券会社の再生にも繋がることではないのだろうか。

○都道府県の産業政策から
 地元企業を育成してIPO(株式公開)まで可能になるよう成長支援しようという地方レベルの産業政策はいくつかの都道府県で実施されている。福岡県では地元企業以外にも、アジア企業を誘致して地元取引所に上場させようという試みが行われているし、北海道は、食品産業の経済特区を設けIPOを目指させようとし、その為の地元取引所上場ルール緩和が検討されている。また、沖縄ではプロ向け市場である東京プロ市場(旧TOKYO AIM)を金融特区に誘致しようとしている。その為に、プロ向け市場への上場アドバイザー(J-nomad)を沖縄県自らが出資して設立しようとしている。

○地域ベンチャー企業のEXIT
 2000年台前半には多くの地銀などが主体となって地域ベンチャーファンドが設立されたが、ベンチャーキャピタリストの不足やその後の経済・市場環境の悪化で成功しているとは言い難い。先ず、これらのベンチャーファンドそのものの再構築(再生?)が必要だろうが、経済産業省が主導して、ベンチャーファンドの投資案件情報をM&Aなどに活用する為の情報共有プラットフォーム(中小機構が運営するベンチャー投資ナビ)が、今年2月から試験的に開始されている。

○新しいインターネットを活用した動き
 大震災による地域企業の再生や新規創業の為に、インターネットを使って広く個人の資金を集める方法も注目されている。キーワードは、その事業に対する個人の“支援”だ。個人が、インターネットなどによって、その事業の内容を知り、支援したいと思えば、匿名組合への出資金(事業ファンド)や寄附でその事業の必要資金の一部を担う。昨年の大震災後、被災企業や商店の復興資金をこの方法で集めてマスコミなどにも取り上げられた。また、クラウドファンディングといって、小口の事業資金をインターネット上で寄附の形式で集める方法も注目されている。いずれも、お金を出す(出資金も若しくは寄附、あるいは両方の組み合わせ)個人が、対象となる事業に賛同してネットでお金を集める仕組みだ。

以上、地方取引所からクラウドファンディグまで取り上げてみたが、どの方法であっても地域企業にリスクマネーが供給され、それが持続していくことが重要だと考える。それぞれの方法の改革・改善と進化を期待したい。
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タイの株式市場 (11月30日)
QUICK・QBRの調べによると、直近(11月19日時点)1年間で最もパフォーマンスの良い国内投信は、51.6%増加しているタイ投資ファンド(野村アセット)ということだが、日本の投資家も世界の成長センターであるアジア諸国へ、その投資を拡げつつある。とは言え、タイに関してはこの3月から約2か月間続いた反政府派のバンコク商業地区占拠の記憶が残っていて、市場取引の3割を占める海外投資家は3月に大きくタイ株を売り越していた(月間ベースで約20億米ドル)。しかし、5月下旬の騒動の収束とともに今夏以降海外投資家の資金流入が回復している。タイの株式市場は、10月末の米ドルベース時価総額でみると、アジアの主要な16取引所のうち2676億ドルで13番目、ちょうど香港市場の十分の1の規模になる。但し、米ドルベースの時価総額は1年間で62.7%増加していて、東証の4%増加(円ベースでは7.5%の減少)からみると羨ましい限りで、日本の投資家の目がタイに向かうのは自然な流れかもしれない。そのタイ株式市場の概要は次の様になっている。
 タイ取引所(Stock Exchange of Thailand, 通称SET)は1974年に設立され、1998年には中小企業・ベンチャー向けにMarket for Alternative Investment(通称MAI)が開設されていて、上場企業数は10月末時点で539社に達している。上場企業の内訳は社数ベースで、不動産・建設が20%、サービスが16%、工業が13%、金融が12%、食品・飲料が8%、消費製品が8%、テクノロジーが7%、資源が5%、その他11%との構成比率になっていて、取引される株式の種類は次の3つ。
(時価総額ベースでは、国営石油・ガス関連会社が大きなシェアを占めている。)

【ローカル株(普通株)】
現地で流通する普通株式だが、タイ国内の投資家向けである。外国人が保有した場合は、配当やワラントを受け取る権利や議決権が無効となるが。

【フォーリン株】
外国人向けの株式で、総発行株式の49%までを保有出来る。フォーリン株には必ず、銘柄コードに(-F)がついているが、ローカル株に比べ、基本的に割高で取引されることが多い。また流動性が低いため、注文をしてもなかなか取引成立するのが難しい場合もある。なお、基本的にはフォーリン株を現地投資家が保有しても、議決権や配当などの権利が制限されて権利行使できない。

【NVDR= Non-Voting Depository Receipt(議決権なし保護預託証書)】
外国人による投資機会の増大のために2001年に導入され制度で、SET子会社として設立されたNVDR社が発行する預託証券。議決権は行使できないが、配当やワラントを受け取る権利はあり、タイ証券取引法に規定されている有価証券の一種で、SET(タイ証券取引所)に上場されている。外国人投資家によるローカル株投資の場合の権利放棄、フォーリン株投資の場合の外国人保有枠の制限と流動性の低さ、双方の欠点をカバーしていて、ローカル株と同様に流動性は高いとされている。全銘柄の95%が参加していて、外国人の保有規制もない。

取引される株式は全てバーツ建てであるが、他の新興国の様に、有価証券投資に関する資本規制や課税などなく、海外投資家の海外送受金にも特に制限はない。
また、代表的な指数としてSET指数があり、1975年4月30日の株価を100として全上場普通株の時価総額をもとに算出しているが、5月以降の上昇が著しい。(11月10日に1050を超えて史上最高値を更新した。)
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インドネシアの株式市場 (10月28日)
最近は、個人の株式投資もアジア株投資が流行りのようで、ある中堅証券ではリテール部店からの株式発注の半数が海外株だという。その中で中国・インドに次ぐ成長を続けるインドネシアへの投資は、投資家の注目を集めているようだ。特にインドネシア取引所のジャカルタ総合指数は、金融危機以前の高値を更新し続けており、現在(10月27日)も3,624ポイントと高値圏にある。
市場規模をみると、9月末現在でインドネシア取引所の時価総額が、US$ベースで3271億ドルと東証の10分の1程度の規模になる。アジアの主要な16の取引所でみると12番目の規模になるが、ここ1年間の時価総額の増加率(US$ベース)は62.6%と大幅な上昇を記録している。ちなみに、1年間(2009年9月末~2010年9月末)の株式市場時価総額5割以上の増加は、アジア新興国市場の特徴になっているが、コロンボ(スリランカ)の151%、深圳の73%、フィリピンの65%に次ぐものだ。

 インドネシアにおける株式取引はオランダ統治時代からあるものの、取引所の歴史は比較的浅く、1952年に開設されたジャカルタ取引所が実質的に最初のものになる。但し、1960年にオランダ企業の株式取引が全面的に禁止されてからは休眠状態が続き、1977年に24社の外国籍企業を強制的に上場させることで再開されているが、10年ほどは市場の低迷が続いていた。その後、資本市場監督庁による国内企業の上場推進策や海外投資資金の誘導策など資本市場規制の緩和を実施することで株式市場は活発化し始め、1993年の証券決済機関の設立、1995年の資本市場法の制定などで株式市場のインフラが整備され、2007年にはジャカルタ取引所と債券や先物取引中心のスラバヤ取引所が合併して、インドネシア証券取引所が発足している。
 取引所に上場されてきる企業数は、9月末で409社になるが、アストラ・インターナショナル(自動車)やインドネシア・テレコム(通信)など上記10社で時価総額及び売買高の約50%を占めている。また、上場企業を業種別でみると、本年8月時点の時価総額ベースの割合では、金融が27%、インフラや公益事業関連が17%、鉱業が13%、消費財が12%、製造業が10%と続いており、直近の上昇は其々に年初から4割前後上昇している消費財や製造業のセクターが、史上最高値を更新する相場を牽引している。

 取引所の概要については、固定資産が1000億ルピア(約9億円)以上の企業が上場するメイン・ボードと、50億ルピア(0.46億円)以上あればよい新興企業向けデロップメント・ボードに分かれ、取引区分もT(取引日)+3日で決済する通常の取引手法と、午前中だけ取引して当日決済可能とする手法(キャッシュ・マーケット)に分かれる。

 投資家動向に関して言えば、また市場規模が世界的にみて小さい割には海外投資家の関与が大きいことが指摘されていて、少し前になるが2006年世銀の調査では、時価総額ベースで株式保有の74%が海外の機関投資家、21%が国内の機関投資家となってあり、国内の個人投資家の割合は5%程度に留まっている。台湾や韓国・中国など国内個人投資家比率が高い他のアジア市場とは対照的だが、その分、国際的金融情勢の影響も受け易く、金融危機の際には40%以上の大幅な下落と2日間以上の取引停止を経験している。

なお株式市場とは直接関係ないが、インドネシア中央銀行は、為替の乱高下を防ぐ目的で、6月に次の資本規制を実施している。
・中央銀行の発行した短期債券(SBI)を購入した場合、最低1ヵ月の保有義務
・最長6ヵ月だったSBIは、8月から9ヵ月、9月から12ヵ月
・政策金利の日々のオペレーションの上下幅を0.5%から1.0%に拡大
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地銀投資銀行業務の現状 (7月26日)

 どんな大企業も最初は中小企業であり地域企業だったのだから、地域の企業と密接な関係をもつ地域金融機関は、企業社会とそれに連なる資本市場の入口において重要な役割を果たす。成長企業のIPO(株式公開)など、市場誘導業務として資本市場側からも地域金融機関に期待したいことだ。

 地域金融機関にとっても地域密着型金融機関(リレーショナル・シップ・バンク)として、地元企業の成長段階に合わせた金融サービスを提供していくことが金融行政面から求められており、また収益面からは、手数料ビジネスの多様化として、M&Aなど企業を相手にした投資銀行業務に注力している。その現状について、昨年度(平成21年度)の地域密着型金融の取組み状況として7月23日に、金融庁より次の様に公表されている。(投資銀行業務に関係する部分の抜粋、地銀106行、信金272金庫、信用組合159)

・ライフサイクルに応じた取引先企業の支援の一層の強化

①創業・新事業支援
○創業・新事業支援融資:15,004件(前年比8.1%増)、1,703億円((前年比2.4%増)※通常型の融資も含む
●企業育成ファンドへの出資額:51億円(前年実績200億円)
●同ファンドの企業育成支援額:65億円(前年実績90億円)

②経営改善支援
○ビジネスマッチングの成約件数:32,988件(前年比11.7%増)

③事業再生支援
○中小企業再生支援協議会との連携による再生計画策定:479件(前年比45.5%増)、3,817億円(前年比71.0%増)
○独自の支援による再生計画策定:19,083件(前年比30.3%増)、60,186億円(前年比21.7%増)
●整理回収機構の支援決定先:16件(前年比20.0%減)、501億円(前年比7.4%減)
○DDS(通常ローンの劣後ローンへの変更等のデット・デット・スワップ):100件(前年比104.0%増)、298億円(前年比25.2%増)
○DES(ローンの株式化等のデット・エクイティ・スワップ、一部債権放棄を伴う):37件(前年比76.1%増)、158億円(前年比22.2%減)
●企業再生ファンドへの出資額:75億円(前年比2.6%減)
●同ファンドの支援額:121億円(前年比39.5%減)

④事業承継支援
●M&Aによる事業承継支援:142件(前年比9.0%減)
※その他のM&Aは、129件

 一方、地域金融機関の実務者へのアンケート調査結果において、利用者である企業のニーズに応えて居るか否かに関して、経営改善には87%以上が応えているとし、逆に事業承継支援については半数近くが自ら応えていないとしている。

 また利用者側での調査においても、事業再生や事業承継への地域金融機関側の取組みへの評価で、消極的評価が積極的評価を上回っており、この分野(ファンド投資やM&A等の投資銀行関連業務)における専門的人材の不足感が強いようだ。

 地銀等はリレバン対応において、上記の様な投資銀行的取組みにも注力しているが、同分野の専門的人材の育成や外部機関との協力体制の構築が課題となっている。通常、投資銀行業務において案件の事をディールというが、一つ一つは小粒なディールをカバーしていくのは、地域金融機関しかいない。そしてこの機能が働かなければ、投資銀行業務の裾野は拡大していかないし、結果、日本の金融・資本市場の拡大にも繋がっていかない。金融機能の成長戦略の中にも、このこと(地域金融機関の機能充実の為の施策)を望みたい。

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地銀の証券ビジネス (7月14日)

 金融・資本市場と続けて言うように、今では金融機関からみて資本市場との関係は密接になっているが、その資本市場に連なる業務を地銀などが自ら証券ビジネスとして取り込もうとする場合、概ね次の様な形態に分けられる。
①自ら行う=投信窓販・国債や地方債の販売・社債関連ビジネス(自ら発行する劣後債・私募債等)・M&A 関連
②自らは窓口となり、誰か専門組織等に依頼して行う=証券仲介業務・証券子会社等の共同店舗・市場誘導(IPO)業務
③子会社で行う=地域ベンチャーや再生ファンド・証券子会社

地銀における取組みの順番としては、②→①→③という流れになっているが、嘗ては親密な証券会社への紹介、そして投信の窓販等である程度商品販売の実績を積んで、証券ビジネス戦略の強化から証券子会社設立に至るという道筋が多い。その地銀の証券子会社設立若しくは地域証券の子会社化は現在12社になり、今後も有力地銀での設立への動きが予想されるので倍増していく可能性がある。当事者には失礼な物言いで申し訳ないが、古いビジネスモデルの地域証券会社や余剰となっている証券外務員の受け皿にもなっていて、業界全体からみると新規の証券ビジネス参入者・既存の証券会社の再生者として期待されている。

その地銀の証券ビジネスの取組みの中心にはるのは、投信の販売だが、昨年9月末時点の数字では投信の預かり資産額ベースで、地銀108行は10兆5000億円となっていて大手銀行の11兆7000億円に迫る。また個人の預金及び投信残高に占める投信残高の割合は、地銀上位20行では既に5~10%台を占めるようになっており、将に“貯蓄から投資へ”の現場となっている。
ただし、この証券ビジネスの主力である投信販売について、今後証券子会社により販売強化していくか、窓販体制を強化するかについては、上位地銀と中下位行ではその戦略が異なっている。上位行の戦略は明確で、これだけ一般化した投信でもやはり販売現場での専門性が問われるようになっており、また既に販売した投信に関しても、資産管理的ケアが必要なので、メガバングの戦略と同様に証券子会社戦略を取ってくる。地銀の窓口での対応が少し異なるのは、その証券子会社の仲介業者として振舞うのか、銀行自身の投信窓販と並行させて行うのか(例えば、債券系投信は銀行窓販、株式系投信は子会社証券へ誘導)の違いだが、基本的戦略は自行グループ内での金融商品販売と管理だ。一方、中下位の地銀は投信窓販をある程度積み上げていのがベースだろうが、投信のみならず外債などの金融商品の卸元ルートの確保として、大手証券や外証などの仲介業者として証券ビジネスを取り組んでいく可能性が高い。ただし、この場合地銀にとって問題なのは、仲介先に顧客口座を開設するということになるにで、アライアンス戦略が明確でなければ、商品毎の仲介先選択は限界がありそうだ。

一方、ホールセール(法人関連)の証券ビジネスとしても、事業承継や事業再生に絡んだM&AやIPOなど市場誘導機能などが地域密着型金融として地銀に期待されることだが、投資銀行としてのM&A機能やIPO機能が直接ある訳ではないので、これらのビジネスを専門家へ繋ぐ仲介者として機能だ。

以上、地銀の証券ビジネスに関して、強化のポイントは “証券仲介業” というキーワードになるが、その仲介機能を発揮する為の証券業務のネットワーク化、若しくは証券子会社の様な専門的組織の構築が重点課題となり、今後の地銀の証券ビジネスの在り方を左右する。

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地域金融機関と資本市場の接点 (4月6日)
 上記のテーマだと、この業界の人たちは地銀などの市場誘導業務(地元企業のIPOへの協力)などを思い浮かべる。しかし、第一生命の上場があったものの、肝心の新興市場に於けるIPO企業数の回復が望めない現状だと、地域金融機関の市場誘導業務は拡大が難しい。それよりも、ひろい意味での資本市場機能を使って、顧客である地元企業や産業のニーズに応えることが地域金融機関にも求められている。
地元でのニーズ:新事業支援、事業再生、事業承継、地域再生などに対して、求められる機能:ファンド、M&A、ビジネスマッチング、市場型金融への取組みなどが上げられる。これらの取組みは、地銀・信金などの地域金融機関における地域密着型金融として、金融庁から年1回紹介されていて、平成21年度分は、4月2日に「地域密着型金融に関する取組み事例集」として公表されている。全部で130事例もあるが、やはり支援・コンサルティング強化・ビジネスマッチングといった内容が多い。多くの地域金融機関が注力するビジネスマッチングも、顧客への情報提供や営業支援的な内容から、企業間の提携に発展していく可能性もあり、M&Aビジネス強化への導入部として期待されている。また、事業再生ファンドや地元資金を活用してのファンド投資などのファンド機能を活用したものも出始めている。いくつかの資本市場機能に関係した事例を紹介すると、以下のようなものがある。

【地元応援ファンド】
西京銀行の取組みで、①山口県関連上場企業への投資を行う②信託報酬の一部を県内の研究機関に寄付をするという2つの方法での地元応援スキームで、平成18年12月よりファンドを募集。これまで、山口県の産業振興・人材育成に寄与する事業として5つの地元大学等に寄付を行っている。ちなみにファンド募集の手数料は、山口県を応援する目的から不要となっている。(ノーロード)
【金融教育支援】
広島銀行の取組みで、これまで金融に関する情報に接する機会が少なかったと思われる層に金融知識の普及を図り、地域の活性化につなげる目的で以下のセミナーを実施。
・“ライフプランセミナー”(40~60歳台対象)退職後の生活設計に加え、健康・美術などの情報も盛り込んだ。
・“女性の為の金融講座” (30~40歳台女性対象)生活設計に加え、教育や家計のやり繰りなどを盛り込んだ。
・小学生5、6年生対象に、来行するキッズマネースクール、支店長が訪問する正しいお金の使い方教室を実施。
【M&A専門人材育成】
鳥取銀行の取組みで、行員をM&Aの専門仲介業者へ研修派遣し、M&A業務に必要な企業評価手法及び実践的交渉術等を習得、実際の案件に携わりながらM&Aの現場経験を積んだ。研修後、派遣行員による行内のM&A研修会実施や、顧客企業へのM&Aセミナーを通して、M&Aの提案・実績等も増加させた。
【ECO私募債の推進】
西尾信金の取組みで、ISO14001エコアクション21等認証企業が環境配慮型設備投資を行う債の資金として、保証料等を通常よりも優遇したECO私募債を、信金自らが引き受けた。実際に、太陽光パネルを設置した工場建設の資金として使われている。
【ファンドによる事業承継支援】
西日本シティ銀行の取組みとして紹介されているが、地元ホテルの存続の為、九州の中小企業の事業継続支援を目的に設立された“九州事業継続ブリッジファンド”の出資を軸に、地元ファンド・九州の各地銀・政府系金融機関が連携し、買収スキームを成立させた事案。参加した九州の各地銀にはLBOファイナンスのノウハウ習得に役だったと言われている。

 これらの取組みは、通常の資本市場的視点で捉えるべきではないだろう。しかし、資本市場の裾野拡大には必要な取組みとされ、今後はその為に重要な効果を上げていくと期待されている。

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地方債市場としての問題点 (3月24日)
前回に続き、地方債を取り上げるが、社債以上に流通市場が小さく投資家も限られたものを何故取り上げるかというと、市場として今後大きくなると期待されるからだ。それは、地方財政改善計画などで、地方債全体の発行額は抑えられたとしても、国の財政投融資資金や地域金融機関での証書方式(実質的にローンで流動性がない)分の引受減少分を、市場公募債市場で補っていかなければならない。つまり、地方債は、地方債市場≒市場公募債市場として今後も発行増加が見込めるからだ。

しかし、債券市場として地方債市場が発展して行く為には、主に以下の事が必要だされている。
○投資家の多様化
○流通市場整備
○地方債インフラの整備

 まず投資家の多様化だが、簡単に言い切ると、海外投資家と個人投資家(ファンドなどでの間接保有も含めて)の保有分が少ない。この傾向は、日本の債券市場全般にも言えるが、国債の保有に関しては、海外投資家と個人投資家が其々全体の5~6%保有するのに比べても極端に保有割合が見劣りする。特に海外投資家の保有は超長期債に限られていて、それも1000億円程度となっている。
この為、税制面での整備が行われ、平成20年から地方債も国債と同様に利子及び償還差益に対して非課税化し、発行体毎必要だった非課税手続等の事務処理も本年から簡素化される。また、地方債協会や一部発行体は、地方債の海外IRに取組み始めている。海外投資家からの指摘事項で多いのは、決済制度や流通の仕組み、発行体の英文情報、発行ロットの規模への指摘(少なくとも500億円以上の発行規模を要求)などだが、やはり海外投資家への情報発信が少ないということのようだ。
 一方、個人投資家増加への取組みは、資金使途を病院や地元施設の建設等に限定した住民参加型市場公募債もブームを過ぎた様で、平成18年の123地方公共団体3513億円の発行をピークに、最近は発行体・発行額とも減少している。この住民参加型の地方債は、地域に必要な施設をつくる為、住民に建設費用の一部負担に参加してもらうということで平成13年から始まったが、単なる投資とは異なる住民参加という新しい概念を地方債に取り込んだことでは評価される。しかし、通常の市場公募債の投資家として個人を呼び込む取組みも、地方債の投資家拡大の為には必要だ。

 投資家の多様化を考えた時、資本市場の論理としては、その多様な投資家間で売買取引に必要な情報を共有化する事から始まるべきだが、債券の場合、その情報は大きく分けると発行体の信用力に関する情報(クレジット情報)と価格及び流通量に関する情報(流動性情報)に分けられる。
地方債に関するクレジット情報に関して、“暗黙の政府保証”や公会計問題の議論は専門家に委ねるとして、格付け情報や地方債CDS情報なら、クレジット情報として個人まで活用できる可能性がある。
 地方公共団体の格付取得は、近年増加しているとは言え、市場公募債発行団体47団体のうち24団体に留まっている。R&Iは、公表データをベースに勝手格付け(発行体から依頼されない)のop格付けを行っていたが、2008年末をもって取り下げられ、投資家サイドからは惜しまれる。市場公募債は、個人も取得可能なので、何らかの格付取得を義務付けて欲しい。
一方、地方債CDSも価格情報が一般に流れるようになってきている。債券やローンの保有者がリスクヘッジの目的(地方公共団体の場合、米国以外が破綻することはなく、元利払いに遅延・条件変更リスク回避が主な目的になる。)のCDSの購入が、地方債保有の金融機関にも使われ始めているが、最近は、債券・ローン・CDSをセットで、クレジット市場として捉えるのが一般化しているので、CDSの価格情報も有力な投資判断情報になる。

 社債市場でも問題になっている流通価格情報は、東京都債など一部の銘柄を除いて、個人投資家には取得し難い状況が続いている。日本証券業協会の行う公社債店頭売買参考統計では、地方債では1732銘柄が毎日午後5時半には公表されているが、社債の場合と同様、実際の売買に有効な価格情報とされていない。
但し、決済インフラは他の有価証券と同様にペーパレス化され、証券保管決済機構で保管・決済が集約される。この決済の際に、売買代金も一緒に決済するDVP決済が地方債取引の一部で行われていて、この分は価格情報が証券保管決済機構に集まっている。実際の地方債取引の価格情報となるが、この価格情報の活用は、社債の場合と同様期待されている。

決済インフラをもっと有効に活用し、地方債関連情報を個人も含めて共有する仕組みを構築していくのが、目下の命題だと考える。その為には、発行者として市場評価を素直に受け入れる地方公共団体側の対応も必要になるだろう。
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資本市場からみた地方債概要 (3月23日)
地方債に関する議論をする時、関係者によってその言葉の意味する範疇が異なる場合があるので、資本市場(つまり投資家の立場で)的に少し整理してみたい。

 発行残高200兆円を超える地方債は、買い手によって以下の様に区分される。
①政府資金引受分:財政投融資資金 発行形式は譲渡しないので証書借入方式  平成22年度発行計画分 4.3兆円
②地方公共団体金融機構引受分(平成20年に公営企業金融公庫から組織変更)発行形式は証書借入方式 平成22年度発行計画分 2.2兆円
③銀行等引受債:地方公共団体が地元の地銀・信金等地域金融機関に対して発行 発行形式は証書借入方式と譲渡可能な証券発行方式 平成22年度発行計画分 5.1兆円
④市場公募債:個人も含めて投資家なら誰でも購入できる。 発行形式は証券発行方式 平成22年度発行計画分 4.3兆円

資本市場からみて地方債という場合、③の証券発行方式分と④を指す。つまり、投資家によって売買可能な地方債という市場は、直近の在庫で以下の様な規模になっている。(平成22年2月末、証券保管振替機構)
③銀行等引受債のうち証券発行方式分の残高=5682銘柄 22兆4062億円
④市場公募債=2180銘柄 44兆2302億円
③´地方公社債分(銀行等引受債のうち証券発行方式分の残高)=43銘柄 5402億円
④´地方公社債分(市場公募債)=51銘柄 5536億円
つまり、売買可能な地方債は、約8000銘柄、約68兆円分(地方債全体の3分の1)ある。

この分の投資家別保有は、
・地銀、信金、信組及びの農協系などの地域金融機関で、全体の約4分の1
・郵便貯金や簡保などで、全体の約4分の1
・民間生保や共済保険で、全体の約4分の1
・年金基金(民間・公的)で、全体の約6%
・個人は全体の2%程度だし、海外投資家は0,2%未満
となっている。
③の銀行等引受債のうち証券発行方式部分の半数以上は、元々の割り当てられる地域金融機関から保険会社や年金などの投資家に転売されているようだが、この分に関してブローカーとして証券会社が仲介機能を果たすことはなく、当事者間の直接的取引が主になる。

 結局、資本市場からみて狭義の地方債定義とは、地方債全体の22%の市場公募債になる。この分は、証券会社は発行時に引受幹事として投資家に販売することも出来るし、市場仲介者としてその後の売買に関与する。また、地方債全体は、地方財政の改善や借換債発行のピーク(平成15年度)を超え、発行総額が減少し始めているが、市場公募債は以下の様に増加している。
○平成11年度  28都道府県及び市  2兆0867億円
○平成21年度(1月まで発行) 47都道府県及び市  5兆9190円 
(この他に住民参加型市場公募地方債は、73都道府県及び市 2162億円)
また、この市場公募債は投資家のニーズに合わせて銘柄の多様化が進んでいて、10年債・5年債の定番以外に、15年・20年・30年の超長期債、3年の短期債、7年債、外貨建発行、共同発行債、個人向け債券に該当する住民参加型市場公募地方債など、債券としては一通りの投資家ニーズに応える取組みが為されているように見える。

 しかし、この市場もやはり発行市場での対応に追われていて、流通市場整備は未だ取り組む気配さえない。(現在、証券業協会では社債市場の活性化に向けて、流通市場機能整備へのワーキングが行われている。社債市場と市場公募地方債市場を比較すると、残高で7割強、発行で5割強の規模になる。)
 この問題は、発行者の地方債協会で議論すべきなのか、市場仲介者の証券業協会で議論すべきなのか、社債市場改革の取組みの最中に多少気が速いかもしれないが、可能な範囲で少し考えてみたい。
次回に・・・
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地方債の共同発行について (9月8日)
 新政権になっても、地方の自治拡大の流れは変わらないだろうし、地方への財源委譲とともに地方自治体の地銀に頼らない資金調達能力の拡充も求められるだろう。その手段としては、地方債の機能整備が第一に上げられる。そして、何が地方債の機能整備に一番重要かという点については、筆者は流通市場整備だと思うが、まだまだ発行機能についても工夫余地がありとの地方債関係者(主に発行体や関連機関)の考え方も強くあるようだ。その中心になるのが、地方債の共同発行という考え方だ。
 会計検査院より公表される“会計検査研究”9月号に「地方債の共同発行に関する論点整理」が報告されているが、地方債の共同発行に関しては、共同発行市場公募地方債とこの6月に発足した地方公共団体金融機構(元々は公営企業金融公庫)が取り扱われている。このうち地方公共団体金融機構は、政府保証のない債券を独自に発行して、地方自治体の上下水道や交通など15の公営事業と地方道整備に貸し付ける機能なので、間接的に地方自治体の共同発行と言えなくもないが、地方自治が絡んで市場からは分かり難い部分もあるので、本稿では共同発行市場公募地方債について、金融市場的視点で取り上げてみる。
【共同発行市場公募地方債の沿革と実状】
・2003年4月に、27団体でスタート
・2009年度は、33団体参加で総額1兆3900億円(毎月1200億円程度の発行)
・直近の発行は、8月25日発行10年債(満期一括償還)応募者利回り1.54%=第77回共同発行債
[信用補完](地方債に対する“政府の暗黙の保証問題”は別にして)
・各参加団体が連帯債務を負う形で発行
・各自治体の減債基金の積立金の一部を募集受託銀行に預入れるファンド設定
[共同発行のメリット]
・発行ロットの拡大により流動性が確保しやすくなる。(少額発行の地方自治体に有利)
・信用補完により、信用力が向上して調達コストが低下する。
では、実際の流通市場でどうなっているか以下の状況となっている。(9月8日基準値複利利回りベース:地方債協会)
・第77回共同発行債=1.455%
・長期国債301回リオープン=1.324%
・東京都672回債=1.423%
・北海道平成21年6月債=1.571%

【共同発行市場公募地方債に対するコメント】
 金融市場的視点でみると、地方債の共同発行スキームは地方債版CBO(Collateralized Bond Obligation:社債担保証券)と言えなくもない。しかし、CBOの場合は、引受業者が小口の発行ニーズを集約し各引受審査を実施した後に債券を組成するが、共同発行市場公募地方債は、発行体である自治体の共同発行連絡協議会自らがその組成を行う。また、共同発行する自治体の内、三分の一程度は格付を取得していないので、一般からみて格付け比較による利回りスプレッドを比較することが出来ない。
共同発行による地方債発行のメリットは十分に地方自治に活かされるべきと思うが、やはり市場機能を活用しようとするなら、市場基準に沿った対応の方が、投資家層を拡大しやすい。
 共同発行の自治体間においても、自ら格付取得しディスクロージャーに注力するところは、単独発行での調達コストも低いので、共同発行調達コストが上回った場合の判断が問題になるようだ。そのことから、東京都そして2007年以降は福岡県・横浜市・名古屋などが共同発行を取り止めている。
 地方自治体が自らの資金調達能力として地方債機能の活用を考えるなら、市場規律をもって市場に誘導するのは金融機関の勤めだとも思う。市場の自己責任原則が、各自治体の自治機能強化に役立つよう、業界としての努力も必要だろう。
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地方債という金融商品 (8月20日)
政権選択選挙も始まって、10日後には結果が出るのだろうが、選挙戦前の人気知事達の活躍もあって、地方分権(若しくは主権)の動きは強まりそうだ。そうなると財源が注目されるが、税収の国からの移転だけでは当然賄えなく、国債から地方債へ借金の方もシフトしていく動きが多分強まるのだろう。
結果、国債から地方債への金融商品としての重心も移っていく可能性もある。
 そこで、金融商品として地方債を考えてみたいが、実はこのことは少し難しいのが現状と思われる。理由は、地方債の多面性にある。例えば、地方銀行が証書(債券発行でなく)で引き受ける部分も、銀行等引受の証書方式といって地方債にカウントしてしまう。また、一時のブーム様な取り上げられ方はしなくなったが、住民向け公募地方債があって、一般の市場公募債を発行している地方公共団体も、病院や記念館・環境施設建設の為に別途地域住民から募集する。更に、10以上の地方公共団体が共同で地方債を発行したりもする。当然であるが、償還財源は各地方公共団体により、別に国が保証している訳ではない。(暗黙の保証といった考え方は、一部にはあるようだ。)この様な、多面性をもった商品を、標準化や透明性も求める金融商品と同一視してよいのかという議論もある。しかし、道州制などで地方分権が強まれば、やはり地方債を重要な財源=重要な金融商品として考えざる得なく、その投資家として海外投資家や個人に馴染む金融商品化する事が求められる。約62兆円(民間消化分)ある地方債残高であるが、金融機関での消化に頼るのではなく、個人や海外投資家に如何に保有してもらうかというのが、金融商品としての地方債の大きなテーマになっていく。

 地方債における海外投資家への取組みに関して、地方債協会の研究会により、この3月に公表された報告書があるので、内容をいくつかご紹介する。
・2008年3月末時点で、海外投資家保有の地方債は29銘柄で総計1,072億円全体の0.17%
うち20年・30年の超長期債が投資額の94%
・海外投資家の業態=欧州のカバード・ボンド発行銀行、アセットマネージメント、銀行・生損保・年金、ヘッジファンド、中央銀行、政府系ファンド
・クロス・カレンシー・アセット(自国通貨・短期金利ベースに引き直す)後、LIBORベースでの水準で魅力があるなら投資。カバード・ボンド発行銀行の30年債投資は、ほとんどこの投資。
・アセットマネージメント、中央銀行、政府系ファンドは、円ポートフォリオの中で投資を検討。一部日本国債の代替投資を検討
・2007年度には、東京都・福岡県・地方債協会による地方債の海外IRが行われ、投資家への個別訪問も実行している。海外投資家から求められ情報として、以下の3分野が上げられている。
○地方自治法・財政法など信用力・安定性に関する情報=特に暗黙の政府保証が地方債制度を支えていることを説明する論理構造を説明した資料
○発行スケジュールやアスク・ビットなど、金融商品として発行・流通に関する基本的情報
○欧州の金融機関が、内部格付けシステムに必要とする財務指標等に関する情報=自主財源比率・経常収支率・将来負担比率など
 
日本株のみならず、日本の債券の受け皿として海外投資家と個人投資家は非常に重要になってくる。海外投資家に関しては、今は規模が小さく、投資スキームが偏っていても、いずれ金融機関の会計制度改善に合わせたような、投資促進の改革を行っていけば、その保有シェアは飛躍的に拡大するかもしれない。一方、個人投資家向けに金融商品としての機能を整えていくことも、業界関係者として期待したい。そういえば、地方債の住民向け発行が始まった8年程前に、ある取引所が個人向け地方債市場を創設されようと尽力されたことがあった。地方債も電子化され、PTSも多様になってきた今こそ、地方債にも金融市場インフラが必要と、改めて思う。

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地域における債券市場構想 (7月6日)
 今回の金融危機は、米サブプライム・ローンで顕在化し、CDS(クレジットデフォルトスワップ)で一層深刻化したが、いずれも証券化商品であった。この金融機関に溜まった証券化商品が、流通しなければ、金融は安定化しないと関係者は誰しも思っているだろう。官民ファンドの動きが注目されるが、一方、証券化市場回復の為、金融サミットでは年内までと期限を区切った取組みが続く。先月末には、証券監督者国際機構( IOSCO)が、「資産担保証券の公募及び上場のための開示原則( ABS 開示原則)」を公表した。これは、証券化市場回復の為に、開示の基本項目を増やし、共通化し、アレンジャーとなる金融機関にも一部保有を求める考え方だ。
 一方、中小企業の資金繰りの為、地域においてCLOやCBOの債券市場を整備していく目的で、東京都債券市場構想や広域CBOの取組みがある。
 いずれも東京都が主導しているが、東京都債券市場構想の方は、10年間で16,100社に7,100億円の資金を供給している。ここ3年では、大阪市や横浜市・神戸市なども参加しているが、基本的スキームは、CLOやCBO発行を前提に、信用保証協会の保証がついたローンや社債を、地元中小企業に発行させて、それらを集約した上で証券化する。投資家は、主に金融機関や企業であるが、一部を大和証券などが個人投資家にも販売している。
 毎年の発行額は、概ね600~800億円の水準となっていて1000億円を超えた年も2回ほどあったが、今年3月の発行額は、流石に109億円に減少している。
 CLOに関しては、デフォルト率(東京都分について東京都保証協会が代位弁済したもの)も公表されているが、既に償還されている5年分については平均して6%弱となっている。発行額が1,247億円の発行となった2006年3月発行分は、既に13%のデフォルト率に達している。(本年3月末の状況)
 また、広域CBOに関しては、これも東京都が主導して、東京都債券市場構想と同様の考え方で、2006年3月に、東京都を含む7自治体(大阪などの政令都市)が参加、期限3年強で発行総額881億円となった。2回目も、2007年3月に発行されたが、発行総額は164億円にとどまった。(3回目の本年の発行は中止)広域CBOに関しては、東京都が運営する専用のホームページまで容易されている。
この広域CBOの1回目元本割れ償還が、7月3日に報じられた。優先劣後の構造で、4本に分かれたうちの3本841億円分がデフォルト対象となり、発行当初のトリプルA格だったB号が85%の償還率になるとのことだ。

関係者への失礼を承知で率直に申し上げるなら、中小企業を対象にしたCLO・CBOのみならず小口ローンを集約したものは、その債券を構成する個々の案件のデフォルトが必ずある。今回の経済危機の様な状況になれば、元本を毀損することも当然発生する。それを承知で、投資家が納得する発行条件をアレンジするのがアレンジャーの能力であり、資本市場の機能である。

東京都債券市場構想の様な取組みは、資本市場の機能を広く利用してくためにも、間違いなく必要である。
また、証券化商品に個人投資家を参加させていくのも必要なことだ。しかし、その為には、格付けなどの信用情報や価格情報を、個人投資家が入手しやすくする工夫が必要だとも今回の件で感じた。

東京都の努力というより、アレンジャーを中心とした金融機関の努力である


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地方取引所について (6月23日)
 地方証券取引所は、本当に必要なのかという議論をよく耳にする。
結論からいうと、間違いなく必要なのだが、それは存の公開株式を売買する投資家の為ではないようだ。
既存の株式は、電子化されデータとなっているので、どこの誰でも、そのデータにアクセス出来れば、取引は出来る。名古屋、札幌、福岡の各取引所は、その売買システム・情報システムに関して既に東証のシステムに乗っているので、その地方の投資家が、その地方の上場株式を売買する場合であっても、別に地方取引所である必要はない。東証と地方取引所の重複上場のことをいっているのではない。
地方取引所の単独上場銘柄であっても、既に売買・情報インフラは、東証のものを使っているのだから、形だけ、東証の“地方部”として、東証で実質的に売買しても、問題はない。
 また地方の企業に不便かというと、売買も情報も、データ化されて、全国の投資家に伝わるので、取引所がどこにあるかは、彼らの問題ではない。新興企業や地方企業は、取引所によって多少上場基準という入口が違うが、成長する企業株を、売買する前提であれば、これも大きな問題ではない。
取引参加者の多くは、東証や大証の参加者なので、市場仲介者の多くも困らない。
多少の暴論覚悟だが、公開株式は東証か大証に集約してしまっても、実は大した問題ではないのだ。
この基準だけで議論すると、常に地方取引所の不要論がでる。
また、地方取引所の運営についても問題がある。
それは取引所の成り立ちに係るが、取引所とは、そもそも取引参加者による取引の場の提供から始まったので、建前上、その運営は、取引参加者である取引所会員によって為される会員制組織である。株式会社されても、会員である証券会社が株主へ入れ替わっただけなので、ガバナンスは、取引参加者である証券会社が握る。その取引参加者の多くは、東証や大証の取引参加者でもあり、別に地方で取引参加するインセンティブは、その全国ネットの証券会社にはない。つまり、ガバンンスを握る全国展開型証券会社に、地方取引所活性化の差し迫った目標を押し付けるのは、無理がある。また、地方取引所の人員不足により、地域の有力企業や金融機関から、スタッフが出向しているが、そのスタッフ中心に、地方市場活性化議論をしてみても、目新しい施策は出にくい。

それでも、やはり地方取引所は必要なのである。
それは、資本市場の裾野拡大の為である。二つの目標があって、
①中小及び新興企業(上場前の)の資本市場機能利用の場の提供
②地域機関投資家の投資関連情報共有の場の提供
と筆者は考える。
時価総額10億以上の企業しか相手にしない、運用資産10億以上の投資家しか情報が流れない・・・そんな大手投資銀行ビジネスモデルを超えて、中小利用型地域投資銀行モデルをサポートする場の提供にこそ、地方取引所の活路があると考える。
具体的には、
・放置されているグルーンシート市場及びフェニックス市場の再活用
・ベンチャー、地方再生ファンドの流動化支援
・私募債流通市場
・地方債流通市場
・地域ファンド組成とその流通
等あると思うが、地方取引所として議論する相手は、これらの売買に関与することが想定される新しい取引参加者である地域金融機関及び地域ファンド等ではないだろうか。
少なくとも、東証と同じ目線で、新興市場活性化策を議論するのは、地方においては意味がないと筆者は考える。


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信用金庫と信用組合 (6月12日) 
信用金庫と信用組合は、それぞれ会員(組合員)間の相互扶助を目的として設立された協同組織金融機関であるが、当事者の方々(信金281金庫で約11万人、信組164組合で2万人、8万人強の証券界の1.5倍の従業員規模)には申し分けないが、信金と信組は一体なにか違っていて、そして何が問題なのか、少し整理してみたい。
【実態の概略】
○信金・信粗とも協同組織の非営利法人
○出資は、実質的に地域(信組の場合、業種、職域別もある)を制限された会員(組合員)で、個人もしくは、規模を制限された法人。実態は、従業員が50人未満・売上規模5000万未満の企業が95%を占める。
○預金を預かることに関して、信金は制限がないが、信組は組合員以外の預金は20%までに制限。実態は、殆ど地元の個人・中小企業から。
○貸出に関する制限は、地域外(信組によっては、業域・職域制限)への制限がある。また、会員(組合員)外への貸し出しは、信金は総資産の30%、信組は20%に制限される。
となっていて、以下の問題点を考える上では、大きな違いとはいえない。
【問題点】
○預貸率は、両者とも50%台半ばに低迷している。貸出以外の預金は、預け金として信金中央金庫や全信組合連合会の中央機関に預けられるのと、有価証券で運用されるが、有価証券運用の方が多い現状では、昨今の金融危機の影響が懸念されている。
○地元中小企業への貸出が中心なので不良資産比率が、平成19年度では信金6.4%・信組10.3%と、地銀の4.4%に比べて高いが、最近の経済危機で、更に上昇していると見られる。
○会員は約920万人、組合員は360万人と、合わせると全世帯数の4分の1に及び、この状況は20年間変わらない
 以上のような信金・信組の実態を基に、金融審議会のワーキング・グループでは、そのあり方について現在議論されている。
【議論】
・中小企業から資金を集めて、中小企業へ貸し出す相互扶助的組織なのだが、本当に資金を必要とする中小企業に資金が適正に回っているのか。特に新規案件や再生支援など、地元が期待する企業へのコンサルティング機能は、果されているのか。
・金融機関のガバナンス組織の在り方として、総代会制度(株主総会に相当)や理事会制度(取締役会に相当)・監事制度(監査役会に相当)の改革が必要ではないか
・組織の在り方や業務内容(余剰金の運用など)に対して、ディスクロージャーを高めるべきではないか
等であるが、大前提となってるのは、銀行などの金融機関とは異なる相互扶助を目的とした金融機能は、必要だということである。
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専門家としての中小企業 (6月5日)
金融機関からみると、営業店のお客様の富裕層は、中小企業の経営者と重なることが多いので、中小企業向けの事業承継セミナーを開催するのは、今や当たり前の営業活動だろう。内容は、保険商品から節税対策、そして今はM&Aが中心となっている。
 そんな金融機関的な視点を恥じるような中小企業に関するレポートが、常陽地域研究センターの月刊誌JOYO ARC 6月号に公表されたので、紹介したい。
経済混乱期における中小企業
早稲田大学商学学術院の鵜飼教授による。
 指摘されると当然のことのようにも思うが、中小企業は多品種少量生産である。しかし、これらの受注は、直接か間接的かは別にして、大企業に発注元がある。今回のような経済不況の中、大企業の大減産の影響を一番受けやすく思うが、様々な工夫により環境の変化への対応力・付加価値力をつけて生き残りを図る事例が、その背景まで含めて紹介されていて、目を洗われる思いであった。
この大不況の中でも、不要な不安感を持たず淡々と業務を拡大している事例が取り上げられているが、
○取引先と仕事内容を多様化する。
○仲間の工場と専門的な工作機械など生産インフラを融通しあうネットワークを持っている。
○技術力のある会社同士が、より高度な受注を取るために連携を図る。
など、独自の技術を持つ専門家として生き残る為、自発的・自律的に交流を行い、連携を作りだす努力が中小企業生き残りのポイントなのだろう。彼等は独自の技術に特化した専門家集団なのである。
 このような生き残りを図る中小企業に対して、M&Aビジネスとして取り組む金融機関は、大企業へのM&Aサービスとは全く異なる対応が必要なのかも知れない。企業価値向上や企業価値・事業価値判断は、中小企業の経営者自らが行うし、ファンドが求めるような効率性は、現場では通用しない。
 そうなると、公的機関や商工会議所が行っているような支援サービス的なことが、中小企業を想定したM&Aビジネスの中心になるのだろうか。
 実は、金融の中においても、中小企業が生き残るためには、“多品種少量生産”が必要だと筆者は考える。
顧客が出す多様なニーズに、付加価値をもってサービスしていくためには、顧客からみた専門性が重要になってくるし、金融のアンバンドリングの進展で、大手の金融機関でさえ、一部専門的業務を外注するようになっている。高い専門性が求められるM&A業務も、当然この流れに沿って、最近は独立系のM&Aアドバイザーも増加している。
 製造業もM&Aアドバイザーも、生き残るためには、独自の技術(専門性)が必要だが、中小のM&A業者や地域金融機関がM&A業務を推進する為には、M&A関連情報を共有するようなインフラの共有や、適時にお互いが連携できるようなネットワークの構築が必要なことは、生き残っている中小企業を見ても明確である。
 公的に準備されている事業承継ネットワーク基盤を、M&Aビジネスにおいて有効に使う為には、これらM&Aビジネスの中小企業(専門家)を積極的に取り込んでいくことが重要である。
   
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事業承継の取組み-大阪の場合 (5月26日) 
証券の支店や地域金融機関で経営者を相手にしている部門の話を聞くと、その殆どが事業承継といったテーマに集約され、現場でのお客様のニーズも高いのだろう。
 以前は、相続税対策の金融商品販売が、営業上の目的だったが、考えてみれば、これは子息など身内に事業を引き継ぐ場合を、想定している。商工会議所などの調査によると、中小企業の6割程度がこのケースで、残り4割近くは、後継者が未定となり、第三者(従業員も含む)への譲渡若しくは廃業を、想定しなければならない。
最近の営業現場でのセミナーも、事業承継―M&Aの可能性についてなど、他者への譲渡を前提にしたものが増えてきている。
 また、事業承継に対する公的支援制度も年々拡充されてきており、以下の様な支援の枠組みが整備されている。
【税制】
○事業承継に係る相続制・贈与税の納税猶予制度(平成21年度の税制改正で創設予定)
○事業承継に係る相続時精算課税制度
○小規模宅地等の課税特例
【株式の移転】
○後継者への自社株式集中を可能とする民法特例
○分散した自社株・事業用資産の取得資金に係る融資制度
○中小企業投資育成株式会社による株式引受けによる経営安定化
○親族以外の後継者が自社株式・事業用資産を取得する資金に係る融資制度
【第三者との接点】
○開廃業マッチング支援
○事業承継ファンドによる出資・支援
○M&A支援事業
税制以外のこれらの施策は、事業承継の現場である地域で、地方公共団体・政府系金融機関・商工会議所などにより取り組まれるが、製造業の中小企業が集積する大阪において、国会図書館が、現地調査を行っており、これを紹介する。
大阪府における中小企業の事業承継をめぐる動向
報告においては、大阪商工会議所が、率先して取り組んだM&A手法の活用である“M&A市場”(1997年4月)が、紹介されている。これは、M&A仲介者などを、登録アドバイサーとしてネットワーク化したもので、企業の売却ニーズ吸上げに、役立っているようで、東京やその他の地域でも、同様のネットワーク構築を模している。今まで25件のM&A成約案件があるという。
 中小企業の事業承継対策は、官民あげての取り組みであろうが、これだけ制度が整備されてきたのだから、今後は、民の取組み=特に地域金融機関の対応が期待される。特に、中小企業のM&Aに対して、単なるリレーションシップ・バンク対策での、顧客企業への支援サービスではなく、M&A仲介者としてのビジネスの確立(収益性を確保したサービスという意味)が必要ではないか。
 中小企業に一番近い立場にいる地域金融機関が、M&Aビジネスのインセンティブを持ってこそ、中小企業の第三者への事業承継が、促進されると思うのだが。

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地域再生手法としてのM&A (5月12日) 
証券の営業現場では、ここ数年、経営者向けセミナーは、殆どが事業承継・M&Aセミナーの類が殆どである。かつては、この事業承継は、相続対策→その為の節税金融商品の販売が中心だったが、最近はM&Aニーズに繋がるものが増加している。
一方、地域金融機関においても、地元経営者からの後継者問題・事業承継相談から、直接M&Aの話に繋がることが増加していて、事業承継⇒M&Aの図式が、証券・地域金融機関の営業現場で定着しつつある。また、地域の企業にも、M&A=乗っ取りの様なイメージが薄らいできており、地域における事業再生としても、M&A手法の活用が期待されている。
 M&Aの最大のメリットは、売り手は勿論、買い手も、その効果を測定するために、第三者の視点で企業価値(事業戦略を含めた)を測り直すことあると思うが、そのお膳立てをする仲介者機能の充実が必要である。
 内閣府の経済社会総合研究所により、この2月に公表された、M&A研究会報告2009においても、地域活性化の為に、M&A活用を促進していく提言がなされている。

報告書の第IV章地域活性化に向けて
地域のM&A事例(2007年以降の報告から抜粋)

地域におけるM&A案件は、全体の2割程度(2008年は売り手ベースで630件)であるが、その動機は、
(イ)地方の金融機関の再編、
(ロ)民事再生、破産、経営難、債務超過等の要因
(ハ)マネジメント・バイ・アウト (MBO)
(ニ)投資会社やフィナンシャル・バイヤーによる投資
(ホ)小売・流通(事例としては小売の事例が多い)
(ヘ)首都圏及び他地域への進出
(ト)大企業からの営業譲渡や大企業のグループ再編に伴い事業を切り出して移すという動き
(チ)第三セクター関連
となっている。
 報告内容に関しては、地方のM&A活動の現場での、企業や金融機関の息遣いが感じられるような再生事例記載に、興味を覚えた。また、注目したいのは、以下のポイントである。
○地域金融機関のM&Aに対する取組みで、銀行間では大きな相違がある。
マッチングや仲介業務以外に、
・企業価値算定に関するアドバイス業務
・第三者割当増資に関するアドバイス業務
・中期経営計画策定のサポート
・PMI(Post Merger Integration)等
幅広く手掛ける体制を整備し始めた銀行もある一方、まだ多くは、業務のローテーションの中で対応
○M&A情報の流通の円滑化、信頼できる情報のネットワーク化の必要性
 地域金融機関が其々持つ売買ニーズの案件情報を、ビジネスべースでマッチングする為に、ネットワークでつなぐような仕組みが必要
○地域金融機関の支店長の役割が大きくなっている。
M&A関連の相談案件の吸上げ、成約後のフォローアップ
○第三セクターの整理問題における活用
地域再生においては、重要なテーマであり、もっとM&A手法を活用すべきだが、地域における関係者が多すぎて、地域の首長次第か。 
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地域からの企業再生の取り組み―そして資本市場は? (4月16日) 
産業再生機構が、また必要な経済情勢が続きそうであるが、地方において、中小企業再生への取り組みが本格化することが、期待されている。企業も人間と同じように、誕生・成長と衰退のサイクルを繰り返すのだから、事業や人材を承継する為に、合併や事業譲渡などM&A的手法が使えれば良い。しかし、事業承継に悩む多くの中小企業は、その前に、不良資産部分を切り離して、再生へのプロセスに乗せるシステムが必要だった。
 地域という現場で、地域の金融機関が独力で行う再生支援には限界(再生支援者とお金の貸し手としての利益相反等)があるとされ、1999年[産業活力再生特別措置法](現在は改正法)により各都道府県毎に、中小企業再生支援協議会が設置された。
 この活動内容について、日本証券経済研究所レポートで、報告されている。
地域における中小企業再生の取り組み
 簡単に紹介すると、支援プロセスは以下の様になっている。
①一時対応:専門家(会計士等)による相談プロセス、再生計画の策定の必要性を判断
②二次対応:再生計画策定支援プロセス
 ・関係金融機関を含んだ個別支援チームの編成
 ・デューデリジェンス
 ・DES、DDS,事業譲渡等の再生スキームの調整
③再生計画の実施におけるフォローアップ
この様な取り組みを行う協議会が、全国47都道府県に設置されており、地域金融機関出身者を含む平均的には5名程度の再生マネージャーによって、中小企業再生を支援している。
 中小企業庁によると、2008年末までの相談取扱い企業数累計は16,526、再生計画策定完了数は1,971に達している。
 発足当初は、地元商工会議所の相談機能を中心としたものが多かったようだが、2007年に、この47協議会の情報共有や再生計画策定サポートを行うネットワークのハブとして、中小企業再生支援全国本部が、設置された。
 この本部から、地方の現場で不足がちな再生専門家の派遣や、地域金融機関との再生条件の調整なども行うことが、可能となっている。
 地域企業の再生は、地域の現場でといった意識に囚われず、2008年4月には”中小企業再生支援協議会事業実施基本要領”など現場マニュアルを公表しており、再生計画策定を実務的に機能させていく共有システムとしては、評価できるので、今後の本部の活動に期待している。
 地域における企業再生への取組みは喫緊の課題なのだろうが、新しい企業を育てるベンチャー支援対策に関しても、地方現場では専門家の不足が指摘されており、この再生本部の様な共有ネットワークの構築を、”官”に対して強く期待したい。 
 
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地域密着型金融の地元企業への金融サービス-その取り組み (4月2日)
地域金融機関による、リレーショナルシップバンク機能強化を目的とした、地元企業への金融サービス取り組み事例が、3月31日金融庁より公表されている。
 全体はビジネスマッチング的な対応や経営指導的な事例も多いが、資本市場からみても注目する事例もあるので、ここで紹介したい。
地域密着型金融に関する取組み事例集の公表について
概要は以下の様になっている。
Ⅰ.ライフサイクルに応じた取引先企業の支援
【事業再生支援:旅館や水産業の再生支援や、外部専門家のチームアップなど14事例】
【経営改善支援:ビジネスマッチングを中心に29事例】
【創業・新事業支援:ファンド活用や産学官連携など18事例】
事業承継支援:ファンドやM&Aを使った6事例】
Ⅱ.事業価値を見極める融資手法をはじめ中小企業に適した資金供給手法
【目利き機能の向上:スペシャリストの養成など4事例】
【ABLなどの担保・保障:動産担保の拡大や流動化など22事例】
Ⅲ.地域の面的再生・地域活性化につながる多様なサービスの提供
【面的再生:地公体と協働した町おこしなど13事例】
【多様なサービス:環境対応やビジネスマッチングの強化など19事例】

 上記の事例では、外部の専門家の活用や外部組織との連携強化が多くなっているようにも思うが、資本市場からみて注目したいのは、ファンドの活用とM&A業務の強化である。
一つ目のファンドの活用に関しては、地域企業の再生・ベンチャーの創業などへのリスクマネー供給については、中小機構のファンドスキームが整備されていて、地公体拠出部分を加えると、全体の7割を公的資金で担うことが可能となっている。上記の事例からみていくと、このファンドスキームが活用されているが、注目したいのは、このスキーム活用が目立つ地域には、独立系の地域ベンチャーファンドやプライベートエクイティの専門家集団が育っていることである。
また、もう一つのM&A業務に関しては、同一地域の4つの信用金庫が、顧客企業のM&Aニーズに応える為に、M&A情報と取りまとめる共同の委員会を設置してM&Aニーズを集約化しようと試みていることである。個別企業の情報は、勿論守秘義務で守らなければならないが、M&A仲介者の金融機関同士が、ニーズをマッチングさせる機能を持つことは、M&Aビジネスの拡大に直結する。
 この様な仲介者のニーズマッチングの場が整備されていけば、地域金融機関のM&Aビジネスも、実のあるものになると思う。
 

 
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