株式会社 資本市場研究所きずな
Fainancial Markets R&D KIZUNA
 
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―金融商品取引法
―証券業
―証券関連税制
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   →投資教育
      ・金融教育から投資教育へ (7月15日)
      ・働く人の為の投資教育と実践の場について(7月26日)
      ・金融教育から投資教育への行程 (4月18日)
      ・ギャップを埋める投資教育を (5月26日)
      ・金融教育≒投資教育の目的について、業界目線で考える (2月9日)
      ・国家戦略としての金融教育:英国の場合から (12月30日)
      ・金融教育の体系について (12月29日)
      ・投資教育について (10月13日)

   →CDS
      ・CDS清算機関への取組み (8月3日)
      ・2つのCDS (4月15日)
      ・信用情報としてのCDS (12月16日)
      ・CDS清算機関は何故必要か (11月13日)
      ・金融危機の主因としてのCDS取引 (11月12日)
      ・CDSの現状について (8月11日)
      ・CDS取引システムの早期の強化を (4月15日)

   →FX取引
      ・アベノミクスでFX取引はどう変わるのか(5月22日)
      ・FX取引の現状 (11月6日)
      ・最近のFX取引動向について (5月28日)
      ・個人の外貨取引について (4月24日)
      ・最近のFX取引動向 (3月21日)
      ・個人投資家とFX取引 (1月18日)
      ・FX取引の成立ちを易しく考える=その2(6月30日)
      ・FX取引の成立ちを易しく考える=その1(6月29日)
      ・投資情報としての為替の見方は、何を投資家に伝えるか (1月24日)
      ・第二のFX取引を探せ (8月4日)
      ・FX規制は誰の為か (7月30日)
      ・FX取引について (8月28日)

   →証券業界の変化
      ・ESG投資について(8月13日)
      ・投資関連のフィンテックについて (7月6日)
      ・個人の金融資産の概況について (6月24日)
      ・10年後のリテール証券業務について~個人投資家の変化と拡大(4月4日)
      ・証券業の変化と進化について(1月28日)
      ・個人の金融資産の概況について(1月17日)
      ・資本市場とは何か~日本市場の全体像の捉え方 (12月9日)
      ・フィンテックと投資の関係(9月30日)
      ・個人の金融資産の概況について(9月24日)
      ・利用拡大そして恒久化が期待されるNISA(8月30日)
      ・個人投資家と日本株(8月9日)
      ・証券会社のスマートフォン対応は、個人の投資にどの様な影響を及ぼすか(8月4日)
      ・日本市場の先行き~2万円相場を支える要因とその変化(7月6日)
      ・個人の金融資産の概況について(7月1日)
      ・日本市場の株主動向(6月25日)
      ・リテール証券2014年度決算の動向~分かれる事業戦略(6月2日)
      ・不正会計問題と監査法人(5月29日)
      ・リテール証券会社決算速報(5月16日)
      ・個人の金融資産概況について(3月19日)
      ・個人のデリバティブ取引概況(1月20日)
      ・リテール証券会社の営業員(1月5日)
      ・個人の金融資産概況について(12月22日)
      ・2014年の世界の株式市場推移~ドルベース(12月16日)
      ・日本の資本市場の課題(12月6日)
      ・ネット証券と個人投資家のネット利用(12月1日)
      ・強まる資産管理型営業への取組み(11月28日)
      ・個人の投資動向(概況)(11月17日)
      ・リテール証券の決算動向(概要)(11月6日)
      ・個人投資家の実像(10月29日)
      ・個人の金融資産と外貨投資について (9月20日)
      ・アベノミクスの中の個人投資家~その投資動向について (9月2日)
      ・クラウドファンディングのマーケティング手法 (8月19日)
      ・世界の中の日本市場(8月14日)
      ・クラウドファンディングが越えなければならない壁 (8月12日)
      ・ソーシャルレンディングは何の代替か (7月17日)
      ・プロ投資家とは何なのか (5月15日)
      ・個人投資家の実像を考える為に (5月13日)
      ・個人投資家にとってのデリバティブ取引 (5月1日)
      ・空売りの課題~海外投資家の場合、個人の場合 (4月10日)
      ・最近の個人の金融資産と海外投資の概要 (3月28日)
      ・証券会社は何故高い職業倫理を求められるのか (3月21日)
      ・HFTと個人投資家 (3月8日)
      ・証券会社のSNS利用 (2月27日)
      ・日本市場の投資家動向について (2月25日)
      ・株式取引に係る課題について (2月14日)
      ・リテール証券業~~2020年に向けて、その進化の可能性(2月4日)
      ・FX取引の動向と個人の海外証券投資(1月30日)
      ・個人の投資動向は?(1月29日)
      ・証券業界の2013年を振り返って~業界環境概要図(12月30日)
      ・個人の金融資産と海外投資の概要(12月24日)
      ・高齢者投資家の実像について(11月28日)
      ・最近の個人投資家の海外投資動向について(11月19日)
      ・2020年の個人投資家(11月1日)
      ・アナリスト問題を思い出す(10月22日)
      ・アンケート調査などから個人投資家像を改めて考える②(10月15日)
      ・アンケート調査などから個人投資家像を改めて考える①(10月10日)
      ・証券会社のSNS利用(10月3日)
      ・個人の金融資産と海外投資の概要(9月19日)
      ・個人の海外投資動向について (8月15日)
      ・未公開株投資の実像と増加策 (8月13日)
      ・リスクオン相場で個人の海外投資はどう変わるか(7月2日)
      ・個人の金融資産と海外投資の概要(6月21日)
      ・リテール証券2012年度決算の動向~アベノミクスで証券業は変われるか(5月30日)
      ・2013年3月期リテール証券決算概要について(5月24日)
      ・アベノミクスで証券ビシネスはどう変わるのか(5月2日)
      ・個人投資家の海外投資動向について(4月25日)
      ・次の1手、資本市場の成長戦略は?(4月4日)
      ・個人投資家の実像(3月27日)
      ・個人の金融資産と海外投資の概要(3月25日)
      ・個人投資家の最近の売買動向について(2月22日)
      ・デイトレーダーと環境変化(2月13日)
      ・2013年の日本市場を瞰る(1月31日)
      ・個人の金融資産と海外投資動向 (12月25日)
      ・クラウドファンディングと投資の間に (10月23日)
      ・未公開株の正しい買い方 (10月19日)
      ・ところで、今いくら? (10月17日)
      ・個人投資家にとってのデリバティブ取引とインターネット利用 (10月2日)
      ・投資を取り巻く環境はどう変わるか (9月28日)
      ・個人投資家にとってのヘッジ3様 (9月7日)
      ・アナリストについて改めて考える (8月24日)
      ・拡大が期待される個人海外投資のあり方 (8月7日)
      ・日本の投資銀行はまだまだ出来る事が多くある(7月20日)
      ・信用取引制度の現状(7月18日)
      ・証券業界を取り巻く環境の変化について(7月7日)
      ・クラウドファンディング、マイクロファイナンスとその応用の概略図 (5月7日)
      ・資本市場からみたクラウドファンディング (5月3日)
      ・投資銀行のイメージ図 (5月1日)
      ・投資銀行ビジネスモデルは何処へいくのか (4月26日)
      ・大震災後の1年間、投資からみた風景 (4月9日)
      ・信用取引の基本的な問題とその代替策について (3月23日)
      ・大震災後、個人投資家は何か変わったか (2月27日)
      ・投資家は何を望んでいるか(2月22日)
      ・トレーディング手法としてのロスカット取引 (1月11日)
      ・個人投資家の実像について (12月28日)
      ・個人投資家調査3様(12月13日)
      ・証券仲介業の現状 (11月30日)
      ・証券会社によるSNS利用の現状 (11月25日)
      ・スマートフォンは、証券ビジネスを変える (11月17日)
      ・信用取引の状況と問題点・改善への動き (11月7日)
      ・証券業界の概況について、やさしく見てみる (10月7日)
      ・最近の外債販売動向と為替 (9月30日)
      ・証券会社のSNS活用の現状 (9月28日)
      ・大震災後半年、変わりつつある個人の投資行動 (9月27日)
      ・個人の海外投資=その2 (9月22日
      ・個人の海外投資=その1 (9月21日)
      ・個人投資家のニーズを知る努力 (9月14日)
      ・デイトレードについて=その2 (9月1日)
      ・デイトレードについて=その1 (8月30日)
      ・デイトレーダーについて (8月29日)
      ・ETN登場の背景と現状 (8月26日)
      ・改めて日本の市場を考える (8月16日)
      ・世界的株安連鎖に想う=金融危機後市場の仕組みは何が変わったのか (8月9日)
      ・個人投資家とは=それぞれの立場の定義(6月14日)
      ・個人にとっての債券投資:個人向け国債から債券投資へ (4月1日)
      ・個人投資家は、今、何に注目するか (3月8日)
      ・個人投資家の情報共有=掲示板から株SNSへ (2月22日)
      ・今年日本の資本市場に起きた事を振り返り、来年の注目ポイントを考える  (12月1日)
      ・敢えて見直す必要はあるのでは?日本の信用取引制度 (10月13日)
      ・証券業界は市場の声にもっと耳を傾けよう (9月22日)
      ・投資家向け金融商品情報提供について (9月6日)
      ・ネット証券の点景=その2 (8月12日)
      ・ネット証券の点景=その1 (8月11日)
      ・インターネット取引模様 (5月27日)
      ・面白みはないが、圧倒的なリテール力 (5月21日)
      ・証券リテールの現場で (5月10日)
      ・ニーズの偏在と融合 (5月7日)
      ・知られざるブローカー=短資会社 (4月22日)
      ・社債価格情報の共有に係る問題について (3月8日)
      ・市場に於ける情報の共有問題について (3月5日)
      ・証券業の業務内容の多様化 (12月17日)
      ・最近のリテール戦略:大手2社の場合 (12月11日)
      ・インターネット取引に関する調査(証券業協会)から (12月2日)
      ・中国の資本市場 (11月27日)
      ・ファイナンシャル・プランナーというビジネス・モデル (11月19日)
      ・資本市場に於ける情報の共有について (11月11日)
      ・個人のシステム取引 (10月22日)
      ・新政権への業界の期待 (8月31日)
      ・小よく大を制すか、個人投資 (8月5日)
      ・所謂ラップ口座について (7月29日)
      ・リーマン・ショック後の株式市場 (7月2日)
      ・大と小―資本市場の場合 (4月24日

   →PTS
      ・私設取引システム(PTS)の代替機能について(3月27日)
      ・拡大が期待されるPTS(6月27日)
      ・PTSの機能を今一度考える (2月29日)
      ・個人投資家にとってのPTS (10月5日)
      ・市場の流動性向上にPTSは役立つか (8月16日)
      ・取引所外取引とPTS (8月27日)

   →排出量取引
      ・日本の排出量取引の現状 (3月1日)
      ・市場としての排出量取引市場整備を (10月16日)
      ・金融商品としての排出量取引 (9月17日)

   →CFD取引・デリバティブ
      ・改めてバイナリーオプションとは何か (4月3日)
      ・復活するFX取引、低迷するCFD取引(5月14日)
      ・CFD取引、期待ほど伸びず (11月4日)
      ・モノの値段=国際商品指数への投資について(7月29日)
      ・CFD取引の現状=その2 (4月20日)
      ・CFD取引の現状=その1 (4月19日)
      ・信用取引とCFDによる個別株取引をやさしく比較してみる (3月9日)
      ・祝:取引所CFDスタート (11月22日)
      ・CFD取引の現状 (3月16日)
      ・CFD取引と信用取引 (1月27日)
      ・CFD取引規制:ロスカット・ルール等 (1月19日)
      ・CFD取引規制議論 (10月5日)
      ・金融商品としてのCFD (4月14日)

   →少額継続投資
      ・普及拡大が期待される確定拠出年金制度と課題(1月16日)
      ・貯蓄”の為の“投資”となるか~少額継続投資について (4月15日)
      ・こうあって欲しい日本版ISA(4月30日)
      ・日本版ISAは、個人の投資に何をもたらすか(2月7日)
      ・投資からみた確定拠出年金制度(日本版401K)の問題 (12月10日)
      ・DC(確定拠出年金制度)の悩み (5月25日)
      ・少額投資というビジネスモデルについて (2月18日)
      ・長期投資システムとしての401K  (8月3日)

   →保険・不動産
      ・保険という金融商品 (6月22日)
      ・金融からみた不動産 (6月4日)

   →取引所機能 
      ・投資に関するブロックチェーン動向について(6月18日)
      ・取引所の事業戦略~資本市場機能と株式会社の狭間で (7月27日)
      ・ブロックチェーンと証券決済について(4月13日)
      ・取引所が求められているものと、事業戦略(2月11日)
      ・“空売り”と貸株市場について(4月22日)
      ・再びHFT(高頻度取引)について考える(4月15日)
      ・取引所の取組みと課題について(1月31日)
      ・上場企業のエクイティ・ファイナンスに対するルールの導入とライツ・オファリング対する規制について
       (10月26日)

      ・株価呼値の適正化について~取引価格の細分化 (7月22日)
      ・HFTは何がメリットで何が課題なのか (5月6日)
      ・投資情報ポータルサイトとしての東証(11月21日)
      ・あって欲しい市場情報について(11月12日)
      ・株式市場の次なる進化への取組み(9月3日)
      ・HFT(超高頻度取引)の功罪 (8月6日)
      ・株式市場の進化について(7月17日)
      ・本年前半の世界の株式市場~海外からみたアベノミクスの影響は(7月15日)
      ・改めてプロ市場の機能を考える(6月5日)
      ・進化する株式売買環境(4月9日)
      ・復活するIPO市場、望まれる新興市場裾野拡大(1月23日)
      ・投資の日に個人投資家は何を考えるか (10月5日)
      ・株式の値段の決め方について (9月5日)
      ・取引所が求めるもの、求められるもの (9月4日)
      ・総合取引所とCFD取引 (8月9日)
      ・株式取引超高速化のメリットを享受する為に (5月20日)
      ・東証と東京都 (4月20日)
      ・取引所のIPO活性化策について (3月16日)
      ・アルゴリズム取引と相場操縦 (1月25日)
      ・進む取引高速化と個人投資家メリット (1月10日)
      ・東証グループと大証の経営統合の要点 (1月6日)
      ・アルゴリズム取引とHFT (10月4日)
      ・株式取引での仮需要の認識 (9月9日)
      ・投資家視点からの総合取引所議論 (9月6日)
      ・取引超高速化のメリットとは何なのか (8月12日)
      ・市場のラビリンス(7月7日)
      ・アルゴリズム取引への期待と不安について (5月25日)
      ・日本の株式市場を分断化させない為に (5月18日)
      ・少し期待外れの“かぶオプ”スタートと、顕在化した問題 (5月11日)
      ・東証住宅価格指数について (5月10日)
      ・情報について学んだこと・・・株式市場の仮需給について (4月11日)
      ・投資家にとって、取引所の統合で何が変わるか (3月10日)
      ・取引所のデリバティブ戦略と個人投資家=大証編 (2月1日)
      ・取引所のデリバティブ戦略と個人投資家=東証編 (1月31日)
      ・新興市場:マザーズはどう変わるのか (12月27日)
      ・日本の市場を何とかしよう:東証の施策 (11月26日)
      ・株式取引高速化=日本の現状と米国の問題 (10月15日)
      ・取引時間延長問題から見える取引所のガバナンス (9月29日)
      ・取引所が関与する投資家への情報発信2題 (8月30日)
      ・東証の現状と取引時間延長の論点 (7月27日)
      ・新システムから半年経過、超高速化の利用状況 (7月8日)
      ・先行する総合取引所戦略:シンガポール (6月30日)
      ・東証の更なる高速化:指数高速配信と東証Prox (6月28日)
      ・フラッシュ・クラッシュ (6月15日)
      ・日本の資本市場の問題:東証社長の講演録より (6月7日)
      ・総合取引所構想への期待と問題 (5月18日)
      ・再考:総合取引所構想=現状 (5月17日)
      ・再考:総合取引所構想=背景 (5月14日)
      ・日本の資本市場:大証の取組み (5月6日)
      ・ルック・コリア、株式市場の場合は (4月30日)
      ・日本の資本市場;東証の姿 (4月27日)
      ・期待されるDMAだが、米国で新規制 (4月13日)
      ・配当指数について (3月25日)
      ・東証新売買システム稼働一ヶ月 (2月1日)
      ・みんなが取引所に求めるもの=その2 (1月29日)
      ・みんなが取引所に求めるもの=その1 (1月28日)
      ・あえて考える清算機関議論 (1月26日)
      ・分断されている資本市場:グリーン・シート&フェニックス (12月18日)
      ・株式の取引情報について (12月14日)
      ・再考:ジェイコム誤発注事件  (12月3日)
      ・東証次世代売買システムへの期待 (11月30日)
      ・東証の取引高速化対応 (11月20日)
      ・東証の制度整備に関する期待と若干の不満 (11月2日)
      ・大証という市場機能 (10月29日)
      ・フラッシュ・オーダーという問題 (10月15日)
      ・引き続き、取引所という機能-そして欧州の場合 (6月10日)
      ・取引所という機能 (6月9日)
      ・祝・新取引所 (6月1日)
      ・3つの取引所 (4月7日)

   →決済システムその他
      ・日本の決済制度をやさしく考える
      ・もう一つの市場~貸株(日本株レンディング)市場について (7月11日)
      ・”ほふり”の可能性について=たまにはバックヤードの覗いてみよう (5月17日)
      ・“ほふり”の機能を見直そう (9月21日)
      ・今、改めて考える金融システム改革としてのペーパレス (9月18日)


ESG投資について(8月13日)
ESG投資が注目されています。

7月3日に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG指数の選定を公表しました。GPIFは、環境(E、Environment)・社会(S、Social)・ガバナンス(G、Governance)の要素に配慮した投資は、長期のリターンを改善する効果が期待できるとして、総合型ESG指数のFTSE Blossom Japan Index(組入銘柄数151、6月時点、以下同じ基準) とMSCI ジャパン ESGセレクト・リーダーズ指数(組入銘柄数251)、社会分野指数のMSCI 日本株女性活躍指数(愛称は WIN)(組入銘柄数212)を選んでおり、これらの指数に基づき、パッシブ運用の枠で約1兆円(国内株投資の3%程度)の運用を開始しました。GPIFのESG指数の選定にあたっては、①ESG評価の高い銘柄を選別する「ポジティブ・スクリーニング」②公開情報をもとに企業のESGを評価し、その評価手法や評価結果も開示③ESG評価会社及び指数会社のガバナンス体制・利益相反管理――の3点を重視しています。

 このGPIFの動きは、2015年9月に国連が支持する責任投資原則(PRI、Principles for Responsible Investment)に署名したことが大きく影響していますが、PRIそのものは2006年に国連が定めたもので、機関投資家に対しESGを投資プロセスに組み入れる6つの原則からなりたっており、「環境上の問題、社会の問題及び企業統治の問題が運用ポートフォリオのパフォーマンスに影響を及ぼす」としています。リーマン・ショック後に資本市場で短期的な利益追求に対する批判が高まったこともPRIの署名機関増加につながり、2017年4月時点で1700を超える年金基金や運用会社などがPRIに署名しており、その運用資産残高は17兆ドル(約1800兆円)近くに達しています。

 ESG投資が拡大している背景として、運用会社などは次の様な要因があると見ています。

・企業と取り巻く外部環境の変化=気候変動リスクの認識が一般化しており、変動を抑制する方法として、パリ協定や、持続可能な投資ポートフォリオの構築のような民間主導の取り組み、気候関連の金融リスクの一層の開示などが求められている。また気候変動以外でも、エネルギー市場においては、需給要因が原油価格の変動に対して、石炭よりも安価な天然ガス、再生可能エネルギーの発電量拡大と価格低下など資源間の価格差などが大きく変動している。また、水資源や、生物多様化などの環境問題に関する意識も高まっている。

・社会自体の変化=先進国において平均寿命が伸びるなかで、所得格差、ヘルスケア、脆弱なガバナンスなどの問題は、退職後の資金状況に直接影響するため、サステナビリティ(持続可能な社会)の問題としての認識が世界的に高まっている。 その中で、女性の活躍や従業員の健康への配慮を企業に求める動きも強まっている。

・コーポレートカバナンス重要性増加とグルーバル化の進展=コーポレートガバナンスの改善は、規制当局のみならず債券投資家、株式投資家にとっても一段と重要な目標になっている。また、大企業のバリューチェーンのグローバル化は一段と進んでおり、児童労働問題や人権問題などにも配慮することが企業側にも求められている。

・政策や規制等によるESG投資推進=5月に日本版スチワードシップ・コード(改定版)において機関投資家が投資先企業の状況を把握する内容としてESGに関する文言が追加された。先行して2010年に英国でスチワードシップ・コートが制定されているが、この影響もあってヨーロッパにおける全運用資産に占めるESG投資の割合が5割を超えていると言われ、日本は3%程度に留まっているが、今後のESG投資拡大が期待されている。

 なお、GPIFはESG投資の拡大で、次の様な効果を期待しています。

・ESG投資の運用資金の拡大は、企業のESG評価向上のインセンティブになり、ESG対応が強化されれば、長期的な企業価値向上につながる。

・日本企業のESG評価向上がESG評価を重視する海外資金の流入につながれば、日本株のパフォーマンス向上が期待される。

結果として、ESG投資を行うGPIF(年金受給者)が投資最適化の恩恵を最大限享受できるとしています。
 


投資に関するブロックチェーン動向について(6月18日)
 ブロックチェーン(分散型台帳技術=Distributed Ledger Technology:以下、DLT)に関する動きが拡がっています。金融・投資分野においても大手金融機関のみならず、最近は地域金融機関における取組みも始まっています。
DLTの利用は、ビットコインなどの仮想通貨においては新たな決済手段としての利用も進んでおり、地方公共団体が発行する地域通貨や企業が発行するポイントの流通などの実証実験を、地域金融機関が地元フィンテックベンチャー企業と取り組む動きも目立っています。また、金融商品取引においては、取引の迅速化を図る為に取引者間の決済通貨として利用することも考えられています。

 一方、海外市場におけるDLTの利用に関しては、米ナスダックとシティグループの提携が5月に公表されていますが、これはナスダックが持つ未公開企業の株式売買などに使われてきたブロックチェーンのネットワークと、シティの法人決済システムの「シティコネクト」を連携させることを試みるもので、関係者によるとその目的についてはブロックチェーン技術と金融システムの効果的な統合は業務の透明化と簡易化を実現できるとしています。

 経済産業省(商務情報政策局)の「ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査」(平成28年4月)によると、DLTは仮想通貨であるビットコインを実現させる為に生まれた技術で、いくつかの暗号技術がベースとなっており、 P2Pネットワークを利⽤してブロックチェーンデータを共有し、中央管理者を必要と せずにシステムを維持することを実現しているとしています。
このDLTの特徴は以下の様に纏められています。
・スクリプト(機械語への変換作業を. 省略して簡単に実行できるようにした簡易プログラム)によりアプリケーションを実⾏可能
・真正性の保証された取引が可能 (⼆重⽀払の防⽌)
・データのトレーサビリティが可能で、 透明性の⾼い取引が可能(改ざんが困難)
・サーバコスト(構築/運⽤)の低廉化
・安定したシステムの構築・運⽤が可能 (ゼロ・ダウンシステム)
・中央管理者が不在でも、悪意を持つユーザが いてもエコシステムが安定維持される

一方、課題としては以下の事項が指摘されています。
・データ処理の確定に数秒〜10分程度かかるので、即時性が必要なアプリケーションには不向き
・規定されているブロックに格納できるデータ量の上限と、1秒間に処理できる トランザクション件数が既存決済システムと⽐べて劣っている
・実ビジネスでの運⽤⼿法等が確⽴されていない

 上記を簡単に纏めますと、システム負担やコストが低く抑えながら取引することが出来るが、現時点でのプロックにいれることが出来る情報量が限られていることと、情報処理スピードが遅いということ、実際の市場取引に利用した場合のルールが定まっていないということです。
現時点において投資分野での利用が想定されるのは、米ナスダックの様な未公開株取引や社債取引などで利用される可能性があります。

 日本取引所グループにおいても証券取引を想定した実証実験が昨年から始まっていますが、実際の証券取引を行った場合の課題として、仮想通貨として単純な商品性のビットコインとは異なり、配当や増資などコーポレートアクションがあること、取引するものが限らていること、取引内容は非公開を前提とする為に中立的な第三者による証明が必要なこと、などが上げられています。
今後、日本での未公開株取引での利用を考えるのであれば、証券会社による株主コミュニティ制度での利用検討が業界内にあっても良いように思われます。
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取引所の事業戦略~資本市場機能と株式会社の狭間で (7月27日)
 証券取引所は資本市場の要ですが、一方では現物の東京証券取引所やデリバティブの大阪取引所などは日本取引所グループという3万名の株主を擁する上場企業でもあり、利益を追求する企業としての事業計画をもっています。この公的機能と上場企業としての在り方の中で、取引所として何を目指しているのか改めて考えてみました。

☆取引所の事業戦略~資本市場機能と株式会社の狭間で
・取引所とは何か
・日本取引所グループの事業戦略
・海外及び国内から見た取引所機能
・個人からみた取引所への期待と事業戦略の課題
 

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投資関連のフィンテックについて (7月6日)
 フィンテックに関する金融機関や投資家の動きが活発化しています。フィンテック・ベンチャー企業と提携したり、ファンドを組成するだけではなく、自らファンテック技術に取組む動きも目立ち始めています。
また、金融行政においても米国でのフィンテック・ベンチャー企業の隆盛を意識して、企業が創業・成長しやすい環境を整備していくこと(FinTechエコシステム)を目的にした有識者会議が5月から金融審議会で始まっています。その現状をまとめてみました。

☆ 投資関連のフィンテックについて
・注目される投資関連フィンテック
・投資フィンテックは何を代替し、何を進化させるか
・法規制とフィンテックの関係
・投資フィンテックの可能性

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個人の金融資産の概況について (6月24日)
 今年3月末の個人金融資産の概況が、日銀から6月17日に公表されました。集計は3月末時点ですが、その他、個人の投資に関する統計資料(5月末)と合わせ、個人の投資の状況は以下の通りです。

☆ 個人の金融資産の概況について

 個人の金融資産全体は、今年に入ってから株式市場などの調整局面入りの影響で、株式・投資信託とも減少しています。投資信託について資金流入は続いているものの株価下落の影響を補えなかったようです。なお、マイナス金利の影響で個人向け国債が見直されたこともあって、債券が増加に転じています。

 一方、個人の直接の海外証券投資については、取引全体の増加傾向が終わり頭打ちの様相ですが、見極め難い世界経済動向や外国為替動向などが影響したようです。
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ブロックチェーンと証券決済について(4月13日)
国内の金融機関などによる証券決済を想定したブロックチェーンの実証実験が相次いでいます。現時点(4月初め)では、次の様な動きとなっています。
・ 日本取引所グループと野村総合研究所は、、株式を売買した際の株主名義や株式数といった情報変更に関わる実証実験を開始すると発表(4月7日)
・みずほ銀行、富士通、富士通研究所は、国境を越えて証券を取引する「証券クロスボーダー取引」にブロックチェーン技術を適用することで、証券取引の決済にかかる時間を短縮する実証実験を行った(3月8日)
・バークレイズ銀行やシティグループなど世界的大手金融機関が42行が参画(日本の金融機関では、メガバンク3行と、野村、SBI)しているR3のコンソーシアムで、ブロックチェーン上で債券取引の実験行ったと公表(3月3日)
・オリックス、オリックス銀行、静岡銀行、NTTデータ、NTTドコモ・ベンチャーズの5社は、ブロックチェーン技術を金融サービスに応用する共同研究を始めることで合意(2月22日)
・日本取引所グループと日本IBMは、ブロックチェーン技術の実証実験を3月から共同で始めると発表。未公開株など低トランザクション市場を想定した場合の、技術的な限界や可能性について評価を行う予定(2月14日)

☆ ブロックチェーンと証券決済について

 ブロックチェーンに関するフィンテックとしての関心の高さは、既に株式市場で材料として大きく取り上げられるようになっていますが、証券決済での利用に関しては、今までの中央集約的な大型で高コストの決済システムに代わる技術として期待されています。
 このブロックチェーンは、ビットコインなど仮想通貨にも使われており、インターネット上で複数の端末(利用者のサーバーを想定)間で通信を行うpeer to peer技術(peerは端末の意味、P2Pと略記)が利用されています。
この技術の特徴としては、特定の端末に負荷が集中しにくく、通常の決済系システムに比べシステム構築(サーバーやネットワーク利用)のコストが削減することが可能だが、利用するデータの参加者間相互認証がポイントとなります。
また、その用途として期待されているのは、
【金融】送金サービス、銀行の実証実験、デリバティブ取引システム、
【アセット管理や決済】プリペイドカード、ポイントカード、ポイント交換、独自コイン、マイレージ、オンラインゲーム通貨、社内通貨、
【取引システム】クラウドファンディング、受発注システム、収納代行、Eコマース、在庫管理、請求管理
【その他】不動産契約の登記、契約の管理、社員記録、勤怠管理
などが多岐に及んでいます。
なお、ブロックチェーンの欠点としては、全ての端末においてその間の通信速度がその中で最も遅いものにさや寄せされる可能性が高く、高速を必要とする通信には向かないことです。
 証券決済におけるブロックチェーンの利用については、昨年10月、米Nasdaqが運営する未公開株式取引市場「Nasdaq Private Market」(株式を公開していない企業の従業員などが、報酬として与えられた未公開株式を売買できるという場)において新たに取引・株主管理システムとして導入していますが、前述したように日本においても同様の未公開株取引を想定しての実証実験が始まっています。
その基本的な仕組みは次の様なものです。
・未公開株の取引において、銘柄名・売り手・買い手・価格・数量といった情報をブロックチェーン上に配信
・この取引記録の束をブロックに入れて、セキュリティに必要な関数処理をすることで、改ざんを不可能にする。
・上記の情報を他の取引参加メンバーが認証する。
 また、海外証券などの決済に利用する実証実験においても、ブロックチェーン利用の基本的な考え方は同様のものですが、国内外の取引者の確認作業や、外国株式や外国債券などの各国における清算機関とのシステムのリンクも求められる為、実証作業はより複雑になります。但し、現状の取引から決済までの日数が現在3日から、即日決済まで短縮することも可能で、取引の効率化や拡大に繋がることが期待されています。
なお、証券決済においてブロックチェーン利用の技術やルール・規格が固まる段階まで、まだ多くの実証が必要なようです。
 
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10年後のリテール証券業務について~個人投資家の変化と拡大(4月4日)
今後の10年、個人投資家に対する証券業務はどの様に変化するだろうか。
 個人投資家の変化と拡大を踏まえて、現状からみた可能性を考えてみました。

☆ 10年後のリテール証券業務について
・過去10年間の変化について
・政策と税制の向かう先
・10年後に、個人の投資環境はどう変わるか
・リテール証券業のトレンドと新たな方向性 
 
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取引所が求められているものと、事業戦略(2月11日)
取引所が求められるものと、その事業戦略の概要について纏めてみました。
☆ 取引所が求められているものと、事業戦略

取引所は、資本市場インフラの中核をなすもので、売買の場を提供する大事な役割を担っています。この取引所に関して、投資家が求めていることは、以下の4点に纏めることが出来ます。
① 流動性の確保
対象とする金融商品の売買が、投資家のイメージするように円滑に売買できることが投資家にとって最も重要なことです。取引所での売買を投資家より委託されるのは、取引所で直接の取引参加者となって証券会社の役割ですが、投資家のために最善を尽くすことを“最良執行義務”と言い、この方針を証券会社ごとに公表する必要があります。
また、実際の売買執行においては、証券会社から取引所の売買システムに売買注文を発注しますが、取引所の売買システムは近年高速化しています。更に発注スピードを短縮化する為、取引所の売買システムの近くの証券会社のサーバーから投資家が注文を直接発注するコロケーション・サービスも始まり、HFT(High Frequency Trade高頻度取引)という小口の売買を高速で大量に繰り返す取引も可能になっています。このような売買システムの高速化も、取引所における流動性の向上に役立っていると言われています。
② 多様な商品の上場
 取引所に上場されている商品は、株式公開している企業の株式のみならず社債や新株予約権付社債(転換社債)、上場投信(ETF)、不動産投信(J-REIT)などのほか、株価指数先物や個別株オプションなどのデリバティブもあり、多様な金融商品が上場されています。なお、上場されている金融商品であれば、機関投資家などのプロ投資家も、一般の個人投資家の同じ取引条件や取引環境の中で取引を行うことが可能です。
 最近は、ETFの上場数が増加しており、これは他の国の取引所でも同様の傾向ですが、ETFは投資家の投資ニーズに合わせてファンドを組成しやすいのが特徴です。
③ 直接海外に投資する機能の代替
 海外市場に上場されている株式や外国債券投資などに対する個人の海外投資は増加していますが、その為には、個人投資家は海外の金融機関などに口座を開設したり、国内で海外株式や外国債券を取り扱っている証券会社で、外国証券取引口座を開設しなければなりません。
 この様な海外投資の代替として、取引所に上場されている海外指数のETFに投資を行う方法がありますが,上場株式と同様の取引システムで取引が可能なので、証券会社で普通の取引口座を開設していれば、取引することが可能です。
④ 上場商品・取引に関する情報提供
 投資家にとって投資判断を行うために、上場商品そのものの情報は最も重要ですが、デスクロージャー制度で公開された情報以外にアナリストの分析・企業のIRなどもその理解を深めるために有効です。このため、取引所としてこのような上場商品の情報提供強化を行う取り組みが行われる一方、実際に取引された情報も有料で提供しており、①で取り上げたHFTでも高速で売買するシステムのため、取引情報を高速で提供することも行われています。
 
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証券業の変化と進化について(1月28日)
 過去10年間で、証券関連業務に関して起きた変化と、今後10年後にどの様に変化するかについて、簡略図を作成しましたので、ご参考までに公開します。

☆ 証券業の変化と進化について

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個人の金融資産の概況について(1月17日)
 昨年12月17日に日銀から公表された個人金融資産(資金循環統計)と、各種協会から公表されている統計資料を基に、個人の投資の概況をまとめてみました。

☆  個人の金融資産の概況について

 個人の金融資産全体(昨年9月末)は、8月から始まったリスクオフの市況の影響を大きく受けて1年半ぶりに減少しました。株式などのリスク資産は約27兆円の減少となり全体は1,684兆円でした。また、外貨資産も減少していますが、外国株式への投資は増加していました。

 一方、個人の直接の海外証券投資(昨年12月末まで)については、10月に一旦回復しましたが、年末もかけて減少傾向が強まったようです。これは、米国利上げにむけた市場の様子見気分が影響したようです。が変化点だったようです。また、国内の投信を通じた海外投資は、米国株式や米国REITへの投資は増加していましたが、ブラジルなどの新興国投資は減少したようです。
 
 FX取引に関しては、為替相場の動きが比較的小さい為減少傾向となっており、円売りポジションも再び2.4兆円に減少しています。 
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日本の決済制度をやさしく考える
 日本市場における金融商品(株式・債券・ファンド等の国内で発行されたもの)の決済制度についてやさしく考えたいと思います。

☆  日本の決済制度をやさしく考える。

先ず、株券や債券は何処にあるかという事を見ていきます。
 実際に売買される株式や債券は、データ化されたものとして(株)証券保管振替機構で管理されています。これは有価証券のペーパーレス化と言われていますが、以下の様な経緯で進められました。
・2003年3月からのCP(短期社債)=〔2015年3月末の状況〕銘柄数3,717、取扱残高14.2兆円
・2006年1月からの社債(一般債)=〔同、〕銘柄数54,294、取扱残高251.7兆円
・2007年1月からの投資信託=〔同、〕銘柄数8,956、取扱残高135.3兆円
・2009年1月からの上場株式や上場新株予約権付社債・上場外国株式等=株式や新株予約権付社債〔同、〕銘柄数3,884、取扱残高595.7兆円、外国株式は銘柄数39、取扱残高0.1兆円
ペーパーレス化は、2009年1月の株券電子化をもって完了しましたが、おおよそ日本の中で個人なども売買できる有価証券は、完全にデータ化され、証券保管振替機能において一元的に管理されています。なお、この有価証券のペーパーレス化は金融システムのインフラ整備として必須でしたが、それまでの紙に印刷された株券や債券から、有価証券が電子データになったことで、保管の物理的な問題から取引を仲介する証券会社や金融機関などが解放され、売買の実行の為の決済についても電子データを処理すれば良くなったので、取引から決済までの日数を短縮したりすることも可能となっています。
(1) 実際の売買において、電子データになった株式などがどの様に決済されるかを簡単に説明しますと、次の様な流れとなります。(以下、取引所での株式の売買についてのイメージ)
(2) 取引所で○○銘柄の売買が成立。取引所での決済照合を行う日本証券クリアリングから、売り手A証券会社、買い手B証券会社であることが確認される。
(3) 取引された○○銘柄のデータが、証券保管振替機構にあるA証券会社の口座から、同じく証券保管振替機構内のB証券会社の口座に振り替えられる。
(4) B証券会社に振り替えられて○○銘柄のデータは、同銘柄の買い注文を委託した投資家Xの口座(証券保管振替機構内にあるB証券会社内の口座内に分離して管理されている)に移行される。
(5) A証券会社口座の○○銘柄のデータは引き落とされるが、同銘柄の売り注文を委託した投資家Yの口座(証券保管振替機構内にあるA証券会社内の口座内に分離して管理されている)から引き落とされることとなる。
(6) 結果として、証券保管振替口座内にある投資家Yの口座から投資家Xへの口座へ、○○銘柄のデータが移行されることとなる。

 次に、この証券保管振替機構における決済データや保管データが、利用次第ではフィンテックに繋がる可能性をみていきます。
○決済データが電子化されているので、決済までの日程を短縮することが可能
○同様に、リアルタイムの決済も可能
○売買や移動の状況を、より迅速に把握することが出来る
○投資家毎に、国内発行の金融商品なら集約することが出来る
○証券会社や金融機関毎に、投資家から預かっている金融商品を集約することも出来る

以上の様に、利用余地は大きいのですが、利用するための目的や利用ルールなどの整備も必要となります。
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資本市場とは何か~日本市場の全体像の捉え方 (12月9日)
 金融関係の仕事をされておられる方々なら、“資本市場”という言葉をよく使いますが、これは一体何を指しているのか、改めて考えてみます。
 ウイキペディアの定義ですと、資本市場とは「金融市場の一つであり、企業の設備資金や長期運転資金などといった企業資本の売買が行われている市場。 これは主に株式や社債の証券市場を指して用いられていることが多いが、長期貸出金市場も含められている。」となっています。

また、現在の日本における資本市場の概要を、分かり易く簡略化して1枚のイメージ図に纏めますと以下のようになります。

☆ 資本市場とは何か~日本市場の全体像の捉え方

改めて資本市場を見直した時、上場市場ではETFの様に投資信託の受益証券やJ-REITの様な投資法人の出資口も取引所に上場されるようになっていますし、プロ投資家(特定投資家)に取引を限定したプロ向け市場も株式や債券で創設されています。

また、新規・成長企業へのリスクマネー供給の仕組みとして、「投資型」クラウドファンディング(少額電子募集取扱業務)や「株主コミュニティ制度」が制度整備されてもいます。

これらの各種市場や発行(調達方式)は、それぞれの目的で使い分けられますが、投資家の投資ニーズと企業側の調達ニーズを結びつける仲介役としては、証券会社やファンド業者(第二種金融商品取扱業)の役割が大きくなっています。言い換えますと、これら仲介役の機能が十分で取扱量がある程度以上ないと制度としての効果が期待できないというのも、一面の真実ではあります。

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フィンテックと投資の関係(9月30日)
 フィンテック(FinTech)とは、金融(Finance)とIT技術(Technology)を組み合わせた造語ですが、スマホなどの普及で個人のインターネット環境が進化していることに伴って、個人が利用する金融分野において、その存在感が増しています。

 代表的なものは決済機能サービスですが、スマホやタブレット端末がカード決済の端末として機能することが既に行われています。現在の日本では、カードリーダーをスマホなど取り付ける方式が主流ですが、米国おいては複数のカード情報そのものをiPhone6の中に取り込んでしまう「アップルペイ」が昨秋より始まっており、これですとカードを持ち歩く必要がなくなります。また、決済の次には個人の支出・収入管理(家計簿機能)、更に資産管理などへ利用者のニーズは拡がっています。これらのサービスを提供する為に、スマホなどのアプリ開発が基点となっていますが、この分野のITベンチャー企業に対する投資も、米国では活発化しています。
米ネット競売大手イーベイから分離した決済大手ペイパルも、今年7月米ナスダック市場に13年ぶりに再上場しましたが、上場目的は親会社以外にも取引を広げスマホ決済事業を一段と強化すると表明しています。暗号技術などの進展で、スマホやタブレットを用いて商品の代金を支払ったり、お金を受け取ったりする需要が米国外でも急成長すると予想されています。

 一方、日本においても上記の様な動きは強まっていくでしょうが、現在金融審議会において、決済分野におけるイノベーションの重要性と決済を巡る法体系のあり方が議論されており、以下の様な問題認識がされています。

○ 世界的に「FinTech」と呼ばれる金融とITを融合させる動きが加速している。また、欧米の銀行では、 「変化のためのIT投資」やITベンチャー企業との連携・協働を強化する動きがある。
○我が国においても、銀行のみならず多様なプレーヤーが参加する中で、競争的 に決済サービスのイノベーションが進められるようにすることが求められる。(※注目のビットコインなども、この視点から整理へ)
○ 銀行サイドにおいても、オープン・イノベーション(外部連携による革新)を重視した体制とビジ ネス・モデルを構築し、戦略的に先進的ITを取り込むことが重要な課題となる。

 つまり、決済を中心とした金融サービス分野で金融行政としてどの様に新しいサービスを認めていくかということと、銀行規制を緩和していくことで新しい決済事業を銀行グループ認めていこうとする動きが具体化します。

この様に、金融の決済分野を中心にフィンテックが進んでいますが、個人の投資に関する分野でも、次の様な動きがあります。

◇所謂ソーシャルレンディングで、インターネットを使って小口融資の仲介を行うサービスが増えている。
◇インターネット上で、ETFに特化して投資一任運用を行う新しいサービスが生まれている。
◇人口知能などを利用して、独自の投資戦略(アルゴリズム)を提供するサービスが増えている。

 金融分野は各国とも行政の管理が厳格に行われていますが、比較的規制緩和傾向が強い米国でフィンテックが話題となっていることは、規制緩和とイノベーションの相関の証左かも知れません。また、決済という伝統的な金融機能においてもフィンテックが進んでいることで、既存の金融機関などの決済サービスの一部代替となっていくことが予想されますが、投資の世界におけるフィンテックの進展も、既存ビジネスを代替したり、進化させていくものと期待されています。

 投資の分野では、新規・成長企業へのリスクマネー供給強化で、クラウドファンディング(少額電子募集取扱業務)に関して規制緩和が行われて今年6月から制度が始まっていますが、この制度の大枠である電子募集取扱業務において、今後新たな動きが出てくることも考えらます。つまり、既存の金融商品の募集においてスマホ等を利用した電子募集が既存の募集活動の代替として行われるようになれば、フィンテックが投資においても大きな影響を及ぼす段階に入っていくことでしょう。 
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個人の金融資産の概況について(9月24日)
 今年6月末の個人金融資産の概況が日銀から9月17日に公表されました。集計は6月末時点ですが、その他、個人の投資に関する統計資料(8月末)と合わせ、個人の投資の状況は以下の通りです。

☆ 個人の金融資産の概況について

 個人の金融資産全体は、順調に増加していますが、個人の債券投資は個人向け国債の償還による減少をカバーできずに6月末は3月末比1兆円減少で26兆円となっています。また、株式についても相場上昇要因より売却が大きく同期間3兆円の減少となっています。一方、外貨資産の増加傾向にも歯止めがかかっているようで、特に外貨建て投信の減少が目立ちます。

 一方、個人の直接の海外証券投資については、8月が変化点だったようです。財務省国際収支統計投資家部門別対外証券投資の金融商品取引業者扱い分ですが、8月の外国株式投資は売買とも大きく水準を低下させています。また、外国債券(中・長期債)については2009年3月以来の月間売り越しとなっています。国内の投信を通じた海外投資も、同じような傾向が読み取れ、特にブラジルなどの新興国などの投資は直近の三ヵ月間で1割以上の減少と目立って投資資金が減っています。
 
 FX取引に関しては、為替相場の動きが比較的小さい割に取引量は高水準ですし、円売りポジションも再び3兆円を超えた水準に増加しています。
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利用拡大そして恒久化が期待されるNISA(8月30日)
 昨年から開始されたNISA(少額投資非課税制度)制度の利用が拡大しています。
金融庁が証券・金融機関に対して行った調査によると、今年3月末時点で開設された口座数は879万口座に達し、既に4兆4,109億円の買付が実施されています。利用者の年代別でみると、やはり60歳以上が47.7%と約半数を占めていますが、一昨年末をもって終了した金融商品の譲渡益課税軽減措置に代わる非課税投資制度でしたので、当初は既存の投資家層の利用が中心となっていました。しかし、最近は若年層の利用が増えていて、昨年末から今年3月末までの間でNISA口座数は6.5%増加している中、20歳代の増加率は14.1%、30歳代は11.8%となっています。

 一方、日本証券業協会が大手証券5社とネット証券5社に対して行っているNISA口座開設・利用状況調査においても、国民のNISA利用が進んでいることが分かります。7月末で、NISA口座で投資を行った比率は51.2%に上昇しており、また若年層が中心となって利用しているNISA口座での積立買付契約も確実に増加しています。
 NISA制度は投資による国民資産形成に役立つものとして期待されていますが、その為には同制度の早期恒久化が望まれています。恒久化の条件としては、同制度が広く国民に利用されていることや、実際の資産形成(資産運用ではなく)に役立っていることが示される必要がありますが、若年層や新規に投資を開始する個人のNISA利用がポイントになりそうです。

 今後のNISAに関する動向は、現状では次の様になっています。

・2015年より、NISA口座の金融機関の変更・再開設が可能になっている。
・2016年より、NISAにおける年間非課税投資枠が100万円から120万円に拡大。
・2016年1月より、ジュニアNISAの口座開設受付が始まる。
・2016年4月より、ジュニアNISA口座での買付開始。
・2019年より、制度初年度の2014年に開設したNISA口座の継続手続き開始(口座内の金融商品を前年末の時価で評価し、年間非課税枠を再利用。非課税枠を超えた部分は、特定口座か一般口座へ)
・2023年で、現行のNISA及びジュニアNISA制度での非課税投資枠による新規口座開設が終了予定。

 なお、来年から開始されるジュニアNISAの概要(主にNISAと異なる点)は次の様になっています。
○年間非課税投資枠は80万円で、5年間非課税投資可能なので最大投資額は総額400万円。
○口座管理は、親や祖父母など親権者等が行う。
○売却しても18歳になるまで引き出し出来ないが、非課税投資分を売却して課税投資を行うことは可能。その為、口座開設機関の変更は出来ない。
○NISA制度が終了しても、本人が20歳になるまでは“継続管理勘定”として非課税投資枠が確保される予定。

 貯蓄から投資への流れを強める制度として業界におけるNISAへの期待は強く、平成27年度の税制改正要望では、以下の要望事項を上げていました。(日本証券業協会、投資信託協会、全国取引所)
① 非課税期間及び口座開設期間の恒久化
② 「ジュニアNISA制度」を創設
③ NISA口座における年間の投資可能上限金額(100万円)を引き上げ
④ マイナンバー活用による口座開設手続きの簡素化・迅速化

この内、②・③は既に実施が決定しているが、①・④は銀行業界も平成28年度税制改正要望で再び取り上げており、同制度を利用する国民の立場からも、早期の制度恒久化が望まれています。 
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個人投資家と日本株(8月9日)
 米国や中国など主要な海外市場が軟調な中、日本市場は相対的にしっかりしており、みたび戻り高値を狙いそうですが、この2年以上の上昇トレンドにおいて個人投資家は日本株式を大きく売り越しています。
ここ最近こそ個人の買い越しが伝えられていますが、今年1月から7月までの売り越し額は既に3.5兆円を超えています。昨年も約3.6兆円以上、一昨年は譲渡益課税の最終年だったこともありますが8.7兆円と大幅の売り越しが続いています。

 この売却資金は、次の投資の待機資金としてMRF(マネー・リザーブ・ファンド)に残留したリ、外国株式や外国債券などの海外投資に向かっていますが、再び日本株投資に戻る為の要因は何か考えてみました。

○割安感=現在は大きな上昇トレンドを2年半以上続けているわけですが、少し大きな下落があるよう局面の方が一時的な割安感が出やすいと思われます。また、海外市場が堅調であれば、日本市場の相対的割安観も強まります。
○政策支援=成長戦略の具体化(例えは、機関投資家に向けた日本版スチュワードシップ・コードや企業のコーポレートガバナンス・コードなどへの取組み、分野や地域に特化した成長戦略)追加緩和策(金融政策)などが期待されています。
○海外投資からの還流=個人が円安トレンドの終了を感じたり、大型IPOや大手企業の変化によって日本企業の再評価が進む中で、海外投資に向かっていた資金が日本株に還流ことも想定されます。
○企業の成長力回復と資本政策の明確化=コーポレートガバナンス・コードの影響で、企業が余剰資金の使い方を明確にし、自社株取得や投資家還元とM&Aや設備投資の資金ニーズの関係を投資家に示していけば、個人の長期投資資金が戻ってくることも考えられます。
○新しいETFの設定=日本株に係るそれぞれの投資テーマに沿ったETFが設定されていけば、個人にとって日本株投資はより分かり易いものになると予想されます。

☆ 日本株と個人投資家
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証券会社のスマートフォン対応は、個人の投資にどの様な影響を及ぼすか(8月4日)
 スマートフォンの普及は、間違いなく個人をインターネットに近付けでいます。投資においても個人のインターネット活用に弾みがつくと思いますが、その事は現状のネット証券を有利にするということとイコールではありません。
 例えば、スマートフォンの利用では、今までのパソコンの画面を前提にした情報の提供そのままだと、多くの利用者に視覚的ストレスを与え、個人投資家利便性が向上するとは言い難いと思います。
また、インターネット経由で提供する情報を、個人がそれぞれのニーズに合って効率的に利用する為には、投資家の特性(ニーズ)にあったアプリの開発も重要となってきます。

このアプリの開発は、今までの証券会社の基幹システム開発コンセプトとは大きく異なる視点が必要ですし、掛かる費用も全く異なります。ネット専業証券のシステム概念とも全く違うものです。
例えば、対面営業の証券会社であってもネット化対応のシステム構築を行うことなく、自社独特の情報提供をインターネット上で提供するアプリ開発が、今までのシステム構築費用に比べ少額で対応することが可能になっています。

しかし、世の中のスマートフォン対応の進展に比べ、証券業界が余り進んでいないことも一方の事実です。その現状と可能性について、以下に纏めてみました。

☆ 証券会社のスマートフォン対応は、個人の投資にどの様な影響を及ぼすか
・証券会社におけるスマートフォン対応の現状
・期待される効果と課題
・個人投資への影響 
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日本市場の先行き~2万円相場を支える要因とその変化(7月6日)
 株式市場を予想することは、筆者の仕事ではありませんが、現在の日本市場を支えている要因と、今後その要因が変化していく可能性、及び個人投資家の投資行動について以下に纏めてみました。
 なお、5月末時点の市場・経済情勢をもとに作成していますので、データなど少し古い部分もありますが、7月初めの現時点においても、市場を構成する基本的要因の変化はないと考えます。

☆ 日本市場の先行き~2万円相場を支える要因とその変化
・2万円相場を支える要因
・状況証拠
・要因の変化予想
・そして個人投資家はどう動くのか
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個人の金融資産の概況について(7月1日)
 アベノミクス相場の好影響で、個人の金融資産も順調に増加しています。今年3月末の個人金融資産の概況が日銀から6月29日に公表され、その概要は以下のとおりです。(資金循環統計速報より)

☆ 個人の金融資産の概況について

 個人の金融資産全体は、初の1700兆円台に増え、中でもリスク資産の株式などが年初から3月までの三ヵ月間で23兆円と14%も増加しています。日本株に関しては、年初からの個人投資家の売り越しが伝えられていますが、値上がり益の効果の方が大きいようです。

 また、海外投資については外国株式や外国債券の統計方法が変わって数値は前回公表より減少して過去分も修正されていますが、過去1年間は順調に増加しているようです。併せて財務省国際収支統計の対外証券投資をみると、個人の海外投資の増加が鮮明になっており、外国株式は今年に入って5月までに3,805億円、外国債券は3兆2,287億円の買い越しとなっています。
 
 FX取引に関しては、為替相場の動きが全体的に小さくなった影響で少し減っていますが、それでも5月の取引金額は424兆円と高水準です。ただ、5月は急速に円売りポジションが縮小しており、対ドルでは円買いに転じています。
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本市場の株主動向(6月25日)
 日本株のアベノミクス相場を支える外人買い。この構造が伝えられて久しくですが、実際にどうなっていたのか、東証などの統計データで見てみると以下の様な状況となっています。

☆ 日本市場の株主動向と投資家別売買動向の概要
・日本市場の株主動向
・投資家別売買動向と個人株主数
・保有比率と売買動向

今後の注目点としては、以下の様なことが考えられるます。
・海外投資家の買い越しが続くのか(成長戦略に対する直接・間接の評価、政権への信頼感など)
・個人投資家は、いつ買い越しに転じるのか(個人の逆張り投資戦略は、下落・調整直面で買い出動となるのか)
・コーポレートガバナンス・コードの影響で、上場企業間の持ち合い株式の一部は解消に向かうと見られる。
・一方、ROE目標や株主還元策強化の流れから、再び自社株取得は増加することが予想される。
・日銀のETF買いは既に5.3兆円に達しているが、来年以降の買付予定額や出口戦略のタイミングなどが注目される。   
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リテール証券2014年度決算の動向~分かれる事業戦略(6月2日)
 好調な日本市場を背景に、個人の投資は拡大していますが、リテール証券の2014年度決算から今後の個人投資家の方向性を考えたく思います。決算動向を以下に纏めました。

☆ リテール証券2014年度決算の動向~分かれる事業戦略
・2014年度決算の特徴
・リテール営業を取り巻く環境
・それぞれの取組み
 ー資産管理型営業への取組み
 -個人の海外投資増加への対応
 - 個人トレーダー層の獲得競争
 -各社の提携戦略等
・今年、そして2020年に向けてリテール証券はどう変わるのか
 - 代替投資機能の利用
 -個人資産形成への取組み
 - 個人投資家のとのコミュニケーションの変化
 -仕組債からファンド・スキームの活用へ  

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不正会計問題と監査法人(5月29日)
 新規株式公開(IPO)においては、最近上場直後の大幅な業績下方修正が問題になっており、IPO主幹事証券の引受審査の一層の品質向上が求められていますが、一方、東芝などの不正会計問題(電力やインフラ部門における工事進行基準の計上の仕方等)においては、財務監査を行う立場の監査法人の在り方も改めて注目されています。古くは、米SOX法(上場企業会計改革および投資家保護法=通称サーベンス・オクスリー法)導入の契機となったエンロンやワールドコムの不正会計問題において、会計監査が正常に機能しなかったことも思い起こされますが、監査法人が市場のゲートキーパーとして機能するよう、行政の対応も一層厳格化しています。

 問題のある監査法人に対して、昨年から4件の行政処分(業務改善命令や一時的業務停止命令)が実施されていますが、以下の様な問題点が指摘(行政処分勧告を行う公認会計士・監査委員会より)されています。(記載は簡略化していますで、詳細は個々の処分勧告をご確認下さい。)
●(監査業務についての)品質管理システムの不備=監査法人内や公認会計士間の相互牽制など
●特別な検証を必要とするリスクに対して監査手続きを十分に実施していないこと
●監査業務に係る法人内の審査に関して、批判的な観点の欠如な十分な審査が行われていないことや審査の為の人員が不足していること
●公認会計士・監査審査会(金融庁)や公認会計士協会から重大な指摘事項にたいして、改善活動に取り組んでいないこと

 以上の様に、一般的感覚で言えば非常に厳しい対応が行政から求められています。
これは、監査業務を行う監査法人の報酬が、監査対象の企業より支払われるものの、監査された企業の財務諸表は投資家の投資行動に大きな影響を与える為、公認会計士協会の自主規制や行政の指導によって、監査規律や監査の専門性の維持することが必要な為です。その仕組みとしては次の2つです。

・日本公認会計士協会による監査法人に対する品質管理レビュー
・公認会計士・監査審査会による監査法人に対するモニタリング

 なお協会は、社会的に影響の大きい上場企業を監査する監査法人の品質管理態勢を強化し、資本市場における財務諸表監査の信頼性を確保するために、2007年4月から【上場会社監査事務所登録制度】を導入しています。 同制度による登録を行った監査法人は、投資家を始め市場関係者に品質管理の状況を明らかにする目的で、次の情報開示が求められています。

・登録された監査事務所の概要
・その監査の品質管理のシステムの概要
・品質管理レビューの実施状況

この【上場会社監査事務所登録制度】に登録されているのは、現在148監査法人となっています。

監査法人は市場のゲートキーパーの中では、最も専門性の高い業務を行っており、投資家を始めとする市場の参加者は、彼らが監査した財務諸表を基に投資判断を下しているので、厳しい職業倫理規定とともに専門性を維持する努力も制度的に求められているということになります。

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リテール証券会社決算速報(5月16日)
 リテール証券会社の平成27年3月期決算につきまして、速報数値を以下に示します。
(各社の決算説明資料等より作成。野村・大和・みずほは、各社のリテール部分を抜粋)

☆ リテール証券会社決算速報
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“空売り”と貸株市場について(4月22日)
最近、中国市場での貸株取引解禁で空売りが可能となった為に相場が大きく動きましたが、リーマン・ショック時においては、各国では空売り規制強化がされていました。空売りは、それほど市場に与える影響が大きいのですが、リーマン・ショック時の反省として、空売りの実態把握の為、空売りやその基となる貸株取引に関して、当局が実態を把握しようとする動きが強まっています。
 一方、永年業界から撤廃が求められていた空売りでの売り下がり禁止(アップティックルール)は、2013年11月より緩和され、1割以上株価が下落した場合の限定的な適用になっています。

 以下、日本市場における“空売り”と貸株市場の実態について、その概要を纏めてみました。

☆ “空売り”と貸株市場について
・日本市場の空売り制度の概要
・“空売り”に関するネット証券の工夫
・“空売り”の課題
・空売り動向
・貸株(日本株レンディング)市場のイメージ

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再びHFT(高頻度取引)について考える(4月15日)
 市場関係者においては、再びHFT(High Frequency Trade=高頻度取引)への関心が高まっています。昨年その勝率(過去1,485日のうち損失を出した日が1日)が話題になったHFT業者バーチュ・ファイナンシャルのが、一旦延期していた株式公開をナスダック(米)に上場申請し今月16日にも上場する予定です。 また、3月末にはHFTに関するワーキング・ペーパーが日本取引所から相次いで公表(マーケットメーク・価格形成・呼値細分化の其々への影響の3つのレポート)されてもいます。
 この注目度の高いHFTですが、米国では既に取引の5割程度を占めており、東京証券取引所においても売買注文の発注件数ベースで全体の約6割、約定件数ベースで約4割を占めるようになっています。(※HFTは注文が小口・細分化して発注される為、約定金額ベースでは、全体の約3割弱)

 ここでHFTについて改めて見直してみたいと思いますが、先ずその定義は簡略化すると次の様になります。
・アルゴリズムを使ったプログラムで細分化した取引を、超高速(現状ではミリ秒単位、次世代ではマイクロ秒単位までスピード向上)かつ高頻度(小口の売買注文の大量発注及び注文取消しを繰り返す)で行うこと。

 実際にHFTを行う為、売買注文を発注するスピート・市場の売買注文状況に関する情報を取得するスピートが重要になってきます。その為、これらHFTのプログラムを取引所のサーバーの近くで動かす必要があり、取引所が行うコロケーション・サービスはこのニーズに対応したものです。また、取引所のシステムの高速化も、HFTのニーズに対応したものです。

 このHFTを行うものは、取引所の取引参加者である証券会社のDMA(Direct Market Access)サービスを利用し、上記コロケーション・サービスで確保した証券会社のサーバーにHFTの為のアルゴリズム・プログラムを組込み、売買注文の発注・取消しを自動的に行います。このHFT取引を行うものは、大口の売買を行おうとする機関投資家、証券会社の自己売買部門、そしてプロップ・ハウスと呼ばれる裁定取引業者などですが、特に短期的(数秒から長くても1日以内)な裁定取引を行うものをHFT業者とも言います。冒頭のバーチュはこのHFT業者ですが、最近のHFTはこの短期的裁定取引が殆どを占めていると言われています。

 一方、HFTを行わないものから、時としてHFTに対する懐疑的な見方が出されることがあります。例えば、HFTニーズに応じる為に取引所が一段の超高速化を進めていますが、HFTを利用しない取引参加者(証券会社)にとって、取引所システム強化に伴うシステム関連費用のみ増加し、HFTメリットが享受できていないことの不満があります。また、HFTを利用しない投資家にとっても以下の様な市場取引の公正さについての疑念が払しょく出来ていない現状があります。
●フロントランニング的行為(本来は、売買注文取次業者が顧客注文に先んじて、売買執行してしまうことを指しますが、この場合はHFT業者が同様のことを行うケースを指します)がシステム的に行われていないかの疑義
●売買注文を高頻度で発注・取消しすることで、相場操縦的行為を行っていないかの疑義

但し、次のHFTの市場への好影響も一般的に認識されているところです。
◎市場の流動性向上には好影響を与えている。(従って、市場の価格発見機能強化には資している)

また、取引が細分化され高頻度では発注されることで市場のボラティリティは低下し、取引参加者には安定的な取引が出来るメリットがあるというのが多数派の意見ですが、一部にはアルゴリズム取引のリスクを指摘する向きもあり、相場急変時には却ってボラティリティを増幅させる(フラッシュ・クラッシュ2010年5月米国市場で発生)リスクを指摘する向きもあります。

 金融当局によるHFTへの対応は、まだ固まっていないようにもの見えますが、欧州が多少先行(金融商品市場指令:Markets in Financial Instrument Directive (MiFID)Ⅱ)しているようにも見えます。
そのポイントは以下の様なものです。
 HFT業者のシステム・リスク管理を義務付け
 HFT戦略(アルゴリズム)の当局への届出と当局の検査
 HFT業者にDMAサービスを提供する市場参加者の取引監視や法令遵守確認を義務化 など

 いずれにせよ取引の超高速化とHFTは、市場の進化なのですから、正しく使う為にも、HFTを利用しない他の投資家にとって分かり易いHFTの情報を提供していくことも、取引所の取組みにおいてなされるべきことと考えます。

【参考文献】
・高頻度注文板データによる2014年東証ティックサイズ変更の国内株式市場への影響分析(日本取引所グループ 2015年3月末)
・人工市場シミュレーションを用いた取引システムの高速化が価格形成に与える影響の分析(日本取引所グループ 2015年3月末)
・保有資産を考慮したマーケットメイク戦略が市場間競争に与える影響:人工市場アプローチによる分析(日本取引所グループ 2015年3月末)
・米国市場の複雑性とHFTを巡る議論(日本取引所グループ 2014年7月)
・HFTを巡る議論の動向(大和総研 2014年5月)
・HFT、PTS、ダークプールの諸外国における動向~欧米での証券市場間の競争や技術革新に関する考察~(金融庁金融研究センター 2013年5月)
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私設取引システム(PTS)の代替機能について(3月27日)
 私設取引システム(PTS)拡大のスピードが若干鈍ってきています。
これは、PTSの代替市場(取引所の)としての優位性である
 ・呼値の細分化
 ・夜間取引などの取引時間
のうち、東京証券取引所においてTOPIX100構成銘柄の呼値を昨年2度(1月、7月)にわたって実施した影響があるようです。日本では、現在2つのPTSが稼働していますが、直近2月の上場銘柄に関するシェアは4.37%(取引金額ベース)で、一時の6%程度から若干低下しています。
 PTS側も、取引の発注方法で機関投資家ニーズに応える工夫をしたり、PTSに参加する証券会社数を増加させたりしていますので、取引所取引よりコストが安いPTSは、何れシェア拡大に向かうと予想されます。欧米ではPTSでの取引が3割程度を占めていますので、日本においては未だ伸びしろが大きいと見られています。
 PTSが存在していることで、取引所に対して投資家ニーズに沿った改善を促しますし、投資家にとっても、取引所と2つのPTSが利用できれば、注文を取り次ぐ証券会社の最良執行も実効性のあるものとなってメリットを受けることが出来ます。

☆  私設取引システム(PTS)の現状

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個人の金融資産概況について(3月19日)
 18日に日銀の資金循環統計速報(昨年12月末)が公表され、個人の金融資産は1,694兆円と昨年9月末より40兆円と大幅に増加していることが明らかになりました。現預金の20兆円増加は、景気回復などによるボーナスなどの増加でしょうか、リスク資産も投信は6兆円、株式が6兆円の増加し全体の16.7%に拡大しました。このリスク資産は、米国や欧州とはまだ大きな差がありますが、最近はどちらも債券保有比率が低下しており、結果リスク資産比率が低下しているので日本との差は縮まる傾向となっています。

 一方、投資信託を通じた海外投資に関しては、米国株式への増加が目立ちますが債券への投資は減少傾向です。国別には、ブラジルへの投資縮小が目立っています。

 また、個人の外国株・外国債券投資も本年は増加傾向が続いており、個人の海外投資増加も継続しています。個人の外国株投資は、昨年約1兆円買い越し、外国債券投資も8兆円の買い越しとなっています。

 個人の代表的デリバティブ取引であるFX取引では、1月には月間取引金額661兆円(店頭FX取引)を記録しましたが、2月はさすがに減少し455兆円となっており、それでも高水準の取引金額が続いています。保有ポジションに関しては、2月に利食い等で縮小しているようで、円売りポジションは約2兆円と前月に比べて半減しました。

☆  個人の金融資産概況について

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取引所の取組みと課題について(1月31日)
資本市場の中心にある取引所が、何を目指していて今後どの様に変わっていくかは我が国の資本市場の在り方を考える上で重要なことだと思います。
 現在は、過去2年間のアベノミクスの影響もあって、市場での取引は増加し概ね市場は順調に成長しているように思えますが、現在の取組みを見直してみることで、取引所が抱える課題や問題について改めて考えてみることも、市場参加者として時には必要なことです。

☆ 取引所の取組みと課題について
・取引所のグランドデザイン
・アジアの中の日本市場
・取引所の課題


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個人のデリバティブ取引概況(1月20日)
個人のデリバティブ取引の中心は、やはりFX取引ですが、先月12月には640兆円(店頭FX取引金額)と月間の最高額を記録しています。今月の大きく動いているので引き続き取引は多そうです。
 その他の個人が利用するデリバティブ取引についても12月の概況をみてみました。

☆ 個人のデリバティブ取引概況

基本的には大きな変化は、現状では起きていませんが、注目すべきはETF・ETNの個人シェアが上昇しています。これは、ETFをデリバティブの代替に利用し、レバレッジ取引や海外投資を行って部分が増加している為と見られています。



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普及拡大が期待される確定拠出年金制度と課題(1月16日)
1月14日閣議決定されました平成27年度税制改正で、個人の投資に関する部分としてNISAと共に大きな制度改正となりました確定拠出年金制度ですが、改正点は以下の様なものです。

・個人型DC(確定拠出年金制度)の加入可能範囲が拡大され、専業主婦や公務員も参加することが可能になります。
・企業年金の実施が困難な従業員100人以下の小規模企業で、個人型DCの拠出金を従業員にかわって出す小規模事業主掛金納付制度が創設されました。
・個人が就労先を変更した場合に、年金資産を新しく就労した企業年金制度へ持ち運ぶし易くする為に、ポータビリティの拡充を行います。
・今まで拠出限度額は月単位でしたが、限度額の使い残しをなくする目的で賞与時などに纏めて拠出することを可能とする年単位での管理へ変更します。

これらは、時期通常国会での確定拠出年金法の成立が前提となっており、平成28年にも実施される可能性がありますが、確定拠出年金制度の概要と主な課題について、下記に纏めてみました。

☆  確定拠出年金制度(DC)の概要と拡充及び課題について


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リテール証券会社の営業員(1月5日)
NISAの拡充や確定拠出年金制度の対象者拡大など昨年末の与党税調による平成27年度税制改正大綱では、個人の投資拡大に向けての新たな税制措置が決定しました。一方、リテール証券においては資産管理型営業への注力が最近のトレンドともなっています。
 この様な環境の中、個人投資家と市場の間で直接顧客に接するリテール証券会社の営業員について改めてその現状と機能について見直してみました。

 なお、ネット証券についてもコールセンターでは対応者が営業員として接していますし、自社ウェッブ上での情報発信を効率的に行う為にも、対面営業の営業員が行う顧客とのコミュニケ―ションを模しての多面的な情報発信が試みられています。つまり、対面であってもネットであっても個人投資家が市場仲介者に求めるコミュニケーションは、基本的に同じということではないでしょうか。

☆リテール証券会社の営業員
・営業員の状況と営業環境
・個人投資家が求めるものと営業員の育成
・新規顧客開拓への取組み
・金融機関との競争と協働


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人の金融資産概況について(12月22日)
 18日に日銀の資金循環統計速報(9月末)が公表され、個人の金融資産は1,654兆円と6月末より9兆円増加していることが明らかになりました。投信は4兆円、株式が6兆円の増加に対し、債券は1兆円の減少です。投信は資金流入と値上がり、株式は売り越したものの値上がりが主な増加要因ですが、債券は売り越しとなっています。個人の保有する外貨資産に関しては、株式・投信とも拡大し、全体で43.1兆円と過去最高額となっています。
 一方、投資信託を通じた海外投資に関しては、最近は米国や英国への投資増加傾向が強まっており、株式・債券・REITとも順調に増加していますが、ブラジルについては資金流出となっています。
 また、個人の外国株・外国債券投資も本年は増加傾向が続いており、個人の海外投資が本格化していることも明らかになっています。
 FX取引においても、10月末の日銀による緩和強化策を受け、11月の取引金額(店頭FXベース)は、575兆円と過去最高を記録していますが、円安傾向が明白な割には11月末の円売りポジションが1.3兆円と、過去の円安時に比べてそれほど積み上がっているという水準ではないようです。

☆ 個人の金融資産概況について


 
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2014年の世界の株式市場推移~ドルベース(12月16日)
 2014年も押し迫りましたので、世界の株式市場推移をドルベースで見直してみました。
(※世界取引所連盟の月次ベース統計市場を利用し作成)

☆2014年の世界の株式市場推移~ドルベース
・主要な市場の月末時点時価総額推移(2013年末を100%として)
・アジア・オセアニア市場の月末時点時価総額推移(同上)
・主要な市場の11月末時点ドルベース時価総額

何かのご参考まで

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日本の資本市場の課題(12月6日)
 そろそろ2014年の年末を向えますが、日本の資本市場で今年取り組まれたことに関して、その全体像を俯瞰してみてはと思い、主要なテーマとその取組み・課題について一覧してみました。

主要なテーマは次のようなものです。
・新規・成長企業へのリクスマネー供給機能の拡大
・取引機能の充実
・取引制度の整備
・日本株投資の質・量の向上に向けた取り組み

☆ 日本の資本市場の課題(2014年12月時点)

なお、注目度は証券業界内や市場関係者などを対象とし、取組みは行政・協会などの業界・取引所など、充実・拡大の可能性については現時点での筆者の予想を、それぞれの軽重で◎○△×とし、本来の課題の方向性と異なる可能性がある場合やこれからの対応については□としました。
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ネット証券と個人投資家のネット利用(12月1日)
 スマートフォンの普及によって個人のインターネット利用は一層進むのは明らかですが、それでは投資の世界で既存のネット証券が益々その存在感を増して成長していくかというと、必ずしもそう言い切ることが出来ません。
 日本のビックバンから15年以上経ち、証券業界において大手ネット証券はその勝者となったことに違いはありませんが、今後のインターネット利用拡大を利用して、次なる成長戦略がネット証券では描けているのか、各社の最近の動向と個人に利用ニーズなどを検討し、今後の新たなネット投資サービスを占ってみました。

☆ネット証券と個人投資家のネット利用
・大手ネット証券の現状と基本戦略
・証券会社のインターネット利用とネット証券の課題
・個人投資家のインターネット利用とその可能性
・新しいビジネスモデルは生まれるか


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強まる資産管理型営業への取組み(11月28日)
顧客志向の資産管理型営業の強化が今再び証券業界で唱えられています。投資信託や外国債券などの短期乗換えに対する批判が強まったり、個人投資家のライフサイクルに応じた投資サービスの提供が政策的にも求められてきたことなどを背景に、大手証券などが顧客の資産純増を目指す個人営業の強化に取り組んでいます。この資産管理型営業の中核になるのが、ラップやSMA(Separately Managed Account )など投資一任口座への資金導入ですが、今期に入ってからこの運用資産が大きく増加しています。ラップ口座でみると、本年9月末で大手3社と三井住友信託の残高が2.1兆円を超え、3月末から約6割増えています。また、野村證券では7~9月期に投資一任口座への資金導入が、純増で2,426億円と前四半期の倍以上の増加となっています。

 資産管理型営業は、20年以上前から米国証券会社の対面営業でのビジネス・モデルとして取り組まれていました。ネット証券の台頭もあって、株式や投資信託などの金融商品の販売に伴う手数料に頼ることから脱却し、顧客からの預り資産に応じた手数料体系に変えることで、顧客の利益と証券会社の収入を同じベクトルの上で考えようとする動きでした。この中には、顧客が運用で利益を上げた際、一定比率の報酬を受け取る成功報酬手数料なども含まれています。(例えば、基本手数料を顧客資産の2%とし、成功報酬部分は20%の手数料率などが一つの基準)
これらは米国においてフィー型マネジメントアカウントと言われていますが、個人投資家の口座に占める割合が最近10数年で倍増(リーマンショック後も順調に増加)し、約3割強に達したといわれています(NRIアメリカ調べ)。

 米国における資産管理型営業の基本プロセスは次の様なものです。(実際の営業プロセス詳細は各社によって異なるが、骨子となるは以下の事項)

① 資産運用のための目標の設定
② 上記の目標を達成するための運用方針・資金計画などの具体化シナリオの策定
③ ラップやSMAを利用した投資の実行手段の提案と投資残高連動手数料などの契約と投資の実行
④ 定期的なレビュー(目標の進捗確認、目標の追加や修正、リバランス)

 主要なリテール証券であるAmeripriseやCharles Schwabなどでは、この顧客資産に連動する管理手数料や助言手数料など資産管理型営業に伴うマネジメントアカウント関連の収益が全体の3割超を占めています。営業現場ではアドバイザー達にとって、このマネジメントアカウント業務のインセンティブが大きく、資産管理型への顧客誘導も一般的です。また、上記の資産管理型営業プロセスでの多くの時間が目標の設定やその修正などに費やされています。それだけリテール営業における顧客への助言的要素が強く、アドバイザーには顧客の目標設定の為のコミュニケーション能力が求められています。

 一方、日本の証券会社における資産管理型営業も、既に金融ビックバンの株式委託手数料自由化後に取り入れられていますが、主に2つの流れがありました。一つ目は、投資信託の預り残高を増やすことでファンドの信託報酬の運用会社からのキックバック分の増加を目指すものでしたが、これは証券会社にとっての安定収益の確保といった面もありました。もう一つは、ラップ口座などの投資一任契約の獲得を目指すもので、一任する条件などある程度契約の自由度が高いものがSMA 、投資対象商品などを限定したものをラップ口座と呼んでいます。これらの投資一任契約は、当初は富裕層向けのサービスでしたが、最近は投資対象を投資信託に限定したファンドラップ口座の開発で、口座開設時の資産基準を引き下げており、退職層などの準富裕層ビジネスとしての取り組む証券会社も増えています。なお、これらの投資一任契約の取扱いにあたっては、証券会社として投資助言・代理業の登録が必要ですが、第一種金融商品取引業279社のうち、この登録を行っているのは64社と全体の2割強に過ぎません(本年9月末)。

 今後、対面営業の証券会社が米国の様に資産管理型営業への取組みを強めていく可能性が高いとおもわれますが、そうなると店頭での顧客との一層のコミュニケーションが重要となってきます。

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個人の投資動向(概況)(11月17日)
個人の投資家は昨年9兆円近くの日本株を売却しました。その内、約5兆円近くが滞留資金としてMRFに滞留していましたが、本年1月には月間で約1兆円以上が日本株買いに向かったようです。しかし、その後の個人の日本株投資は概ね売りで推移しており、個人投資家の日本株買いが活発化している形跡はまだありません。
 一方、投資信託への資金流入は高水準が続いており、10月までに既に7兆円以上の資金が株式投信に流れています。ただし、その投信が日本株に向かっているかと言えばそうではなく、本年も10月までに5千億円以上の売り越しとなっています。
 また、海外投資に関してみてみると、外国株・外国債券への投資はともに増え、売買も活発化しているようです。
 最後に個人デリバティブ取引の代表的な存在であるFX取引は再び取引が急増し、昨年6月に次いで月間取引金額が500兆円(店頭FX)を超えています。ただし、円売りポジションはそれほど膨らんでおらず短期的な売買に注力する個人投資家像が覗えます。

☆ 個人の投資動向(概況)


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リテール証券の決算動向(概要)(11月6日)
 市場が大きく変動していますので、証券会社の決算も2015年3月期下期は大きく変動するかもしれません。取りあえず、主要な証券会社の上期決算が出揃いましたで、各社公表資料の範囲でその概要を示します。

☆ 主要リテール証券20社の上期決算概要
(増減比率は、前年同期比。預り資産は本年3月比)
 基本的には野村の強さが目立ちますが、市況にも関わらず投信残高報酬が1割伸びたのは、資産管理型営業への注力の影響かもしれません。但し、外債販売は大きく落ち込んでいます。他社も概ね投信残高(株式投信)を増加させていますが、三菱UFJモルスタと東海東京は投信残高が減少した模様です。
また外債販売では岡三の伸びが目立っています。
 一応、実質的な収益順位に従って表に証券会社名を記載しましたが、中堅以下では多少の順位変動もありました。

以上は、株式を上場している公開会社なのですから、業績の見通しとか事業戦略をもう少し詳細に記載して、株主や投資家への情報提供を充実していただきたと思う証券会社もありました。少し厳しい言い方ですが、投資家に日本株式を薦める為にも、自らのディスクロージャーを範とすべきと考えます。


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個人投資家の実像(10月29日)
・年齢58.5歳
 ・金融商品保有額は、約2000万円
 日本証券業協会の「個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書平成26年10月」より、敢えて平均的な個人投資家像をだしてみました。

☆  個人投資家の実像

 勿論、個人投資家は多様であり、一括りで議論するのはあまり意味がないかも知れません。しかし、個人の投資を増やす為の政策や、業界の取組みを語る場合、現状の個人投資家像をどう捉えておくかということでは意味はあるように思います。
 例えば、今投資を行っていない人が投資を行おうとすると、個人投資家の年齢は若くなり、投資金額は小さくなり、投資年数は長くなると思いますが、金融商品やサービスを提供する側は、それに応じてどう変化する必要があるのか、といったような事を検討する際の基準点を知ることには役立ちそうです。

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上場企業のエクイティ・ファイナンスに対するルールの導入とライツ・オファリング対する規制について(10月26日)
9月3日に東京証券取引所は、上場企業がエクイティ・ファイナンスを行う場合の基本的なルール案(エクイティ・ファイナンスのプリンシプル(案))を公表し、ライツ・オファリングについては新株予約権証券(ライツ)の上場制度を見直し、実質的に株主総会決議か証券会社のファイナンス審査を行う規制を示しました。

 この2つのルール改定に伴いパブリックコメントの手続きが取られましたので、当社も意見を述べております。(取引所より、パブコメの回答が示されていますが、弊社の意見の文脈をみていただく為、意見書を公表します。)

☆ エクイティ・ファイナンスの基本ルール導入とライツ・オファリング規制に関する意見

なお、エクイティ・ファイナンスのプリンシプル(案)の制定には賛同しておりますが、ライツ・オファリングの規制案には、基本的に賛同できません。

 その最も大きな理由は、ライツを取扱う証券会社及びライツ・オファリングの発行を支援する際の証券会社の実務がまだ定着しておらず、現段階でライツ・オファリングに対する規制を行えば、他のファイナンス手段を取る可能性が高まるからです。(コミットメント型、ノンコミットメント型を問わず)

 ライツ・オファリングを政策的(取引所規則・開示府令等)にも推進してきた理由は、株主に不利益を及ぼす大規模なファンナンス(公募・第三者割当・優先株・CBなどを問わず希薄化が大きなファイナンス)の代替手段としてだったと思います。

 確かに、ライツ発行を証券会社として支援(アドバイザー)する以上、株主にも分かるようなチェックが必要だと思いますが、単に引受審査の様なことを求めるだけではなく、ライツ・オファリングの実務定着に向けた取組みこそ、証券会社には求められることだと考えます。

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個人の金融資産と外貨投資について (9月20日)
18日に、日銀の資金循環統計による個人金融資産(2014年6月末)の概要が発表されました。
それによると個人の金融資産は、1,645兆円で3月末より21兆円程増加していますが、現金の増加と市況の堅調さによる株式などの値上がり・投信などへの資金流入がその主な要因です。株式については、アベノミクス相場が始まってから個人の売り越しが続いていますが、株価の値上がりで金融資産としては増加しています。また債券については、個人向け国債の大量償還が影響しており、前年比1割程度の減少が続いています。
 一方、外貨資産への投資ですが特に外国株式や外国債券への投資が大きく伸びています。

☆ 個人の金融資産と外貨投資

 この外貨投資が拡大していることは、財務省が公表している国際収支統計(投資家部門別対外証券投資=金融商品取引業者経由部分)の8月までのデータでも確認出来ます。
 外国株式への投資は本年に入ってから拡大しており、月間で1000億円近い金額が買い越されていますし、外債も6000億円前後の買い越しが続いています。
(7、8月の数字が大きくなっているのは、銀行や信託銀行(投信売買分)以外の機関投資家の外債資産の入れ替えがあったためではないかと推測されます。)

 また、投資信託を通じた海外投資でも米国への投資(株、債券、REITとも)拡大が続いていますが、景気回復が著しい英国への投資も増加し、豪州への投資も復調しています。

 一方、FX取引は8月までのドル・円の値動きの小ささで減少傾向でしたが、8月には取引量は底打ちしたようです。なお、8月末のドル買持ちポジションは約4年ぶりの低水準でした。
 
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アベノミクスの中の個人投資家~その投資動向について (9月2日)
 アベノミクスの成長戦略の中で、個人投資家はどう動いているか見直してみました。
昨年、9兆円近く売り越した個人投資家の資金は、どの様に動いているのか。個人向け国債の大量償還が続いているが、その資金は何処へ向かうのか。
 この様な個人投資家の動きに対して証券会社などではどの様なサービス強化に動いているのか注目されるところでもありますが、同時にリテール証券会社が次の成長を試みる時に何か課題になっているのかも気になるところです。

☆ アベノミクスの中の個人投資家~その投資動向について
・2014年前半、どう動いたか~全体編
・2014年前半、どう動いたか~株式投信・債券編
・それぞれの投資サービス強化の動き
・投資環境の変化要因と証券会社の課題 

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クラウドファンディングのマーケティング手法 (8月19日)
 インターネットを使って容易に事業資金などが集まるかもしれない夢のマイクロファイナンス手法とのイメージが先行していますが、寄付や商品購入の優先するeコマース的なものなら現状でも良いでしょう。
その現状のクラウドファンディングのマーケティング手法(投資でいうところの投資ニーズの集め方)を簡単に示しました。

☆  クラウドファンディングのマーケティング手法

 しかし、投資であるならeコマースと異なり将来の投資成果を期待している個人に対応する必要があり、上場企業の様に企業情報が十分開示される代わりに、ウリとする製品・サービスや経営者などに関する持続的な情報提供が求められます。またSNSを活用する為、経営者などの個人情報に関する露出が多くなることが予想されます。
 現在、投資を目的としたクラウドファンディングの制度整備が行われ、来年度には“投資型”クラウドファンディングが開始される予定ですが、eコマース的マーケッティング手法の良いところを活かしながら、不特定多数の個人への持続的情報提供やリスク情報の伝え方が、クラウドファンディング業者(改正金融商品取引法では、少額電子募集取扱業者=株式での募集は第一種、ファンドでの募集が第二種)の課題となっています。

 なお、貸付型クラウドファンディングとされるソーシャルレンディングでは、利用している個人は明らかに投資目的です。その個人が負うのは、主に貸し手の信用リスクですが、これを判断しているのは各業者で、現在まちまちの信用リスク判断について、個人の理解し易い一層の情報提供が求められます。
現状ではソーシャルレンディング業者は、貸金業者がファンドを組んで細分化した投資口をネット上で販売するという業法上の構成になっていますが、業界団体において共通の情報公開の為の自主規制が必要ではないかと考えます。

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世界の中の日本市場 (8月14日)
 時には少し離して日本市場を眺めてみては如何でしょうか。

☆  世界の中の日本市場

 アベノミクス以降、日本市場の注目度が上がっているのは事実で、世界市場の中での時価総額シェアは7%台ですが、売買シェアは10%(米ドルベース)を超えています。現在、政策的にも日本株の魅力を高めようと、コーポレート・ガバナンス改革を様々な面から行っていますが、一層日本株の売買が盛んになることに期待したいところです。

なお、少し発行市場にも思いを馳せてみましたが、米国や中国に比べてIPO数が少ないのは、やはり経済成長力の差でしょうか。その割にニューヨーク取引所の上場数が少ないのは、M&Aや上場廃止などで市場の新陳代謝が活発だということで、その様な活力は日本市場にも必要です。
単にIPO増加だけではなく、上場企業のM&A活発化、IPOに至るまでの裾野拡大(プロ向け市場やファンド上場の活発化)、そして上場廃止基準の厳格化もあってこそ、市場の活力が醸成されるのではないでしょうか。


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クラウドファンディングが越えなければならない壁 (8月12日)
 インターネットで事業資金を集めるクラウドファンディングは、それぞれの立場で夢の方法の様に思える時があります。筆者も、長く証券会社で企業ファイナスを支援する仕事をしてきましたが、この様な方法が仕えたならと今更ながら思いますし、今年度中に整備される“投資型”クラウドファンディングに対して大きな期待をもって見ています。また、世間一般の関心も高いので時々マスコミに取り上げられ、少しだけのブームを起こすこともあります。最近では、飛騨地方の地ビール会社が、地元信金の勧めでクラウドファンディングを行い、醸造タンク資金を調達したことが、ウォールストリート・ジャーナルの記事で取り上げられています。

 しかし、企業のリスクマネーを集める以上、“投資型”クラウドファンディングが越えなければならない壁があります。一つ目は資本市場の壁です。

 日本の資本市場は、金融商品取引法を基盤として投資家保護が図られていますが、例え50万円以下の少額であっても“投資型”クラウドファンディングにおいても一層の投資家保護が図られなければなりません。関係法令の国会での審議以前でしたが、消費者委員会(内閣府)より“ クラウドファンディングに係る制度整備に関する意見”(2月25日)では、クラウドファンディングを仲介する業者に対して次の様な対策が講じられるべきとの意見が纏められています。(筆者が簡略記載:詳細は消費者委員会のHPをご覧ください。)
●クラウドファンディングの仲介を行う業者が、デューデリジェンス(企業内容の詳細調査)をどう行うか明確にする必要があり、一個人の投資上限50万円の実質的しり抜け行為な無いようにする。
●ネットを通じて、適切にデューデリジェンスや企業内容に関する情報提供が行われるようにする。
●投資者が非上場株式やファンドへ投資することの意義・特質、そして流動性リスクやデフォルトリスクを十分に理解した上で投資判断しているかを仲介者が確認する。
●クラウドファンディング専業者については、電話や訪問などの勧誘行使を禁じるべき。
●海外業者の行う詐欺的行為を防止する措置をとるべき。

 クラウドファンディングの日本での現状は、累積投資額80億円程度と未だ創成期段階で、寄付型・購入型が殆どと言われていますが、一部の事業者では投資に近いものも扱い始めているようです。普通のIPO銘柄でも、数年でビジネスモデルが上手く行かないものもありますが、話題先行のクラウドファンディングで問題が顕在化してくるのはこれからの様です。
 
二つ目の壁は個人情報の壁ですが、これは企業の経営者のものと投資家のものの2つの側面があります。
クラウドファンディングを利用する企業は、普通の公開企業に比べ著しく情報が少ないのですが、それを補う為に経営者情報を投資家に継続的に与える必要があります。現在のクラウドファンディングは、単に業者のプラットフォームにファイナンス情報を晒しておくだけではなく、メールやSNSを使っての個人に対するマーケティングも行われていますが、企業・製品情報だけではなく経営者情報もこのルートで流されるようになります。結果、経営者のプライバシーがクラウド(一般)にも流される可能性も想定しておく必要があります。一方、投資家の個人情報に関して、クラウドファンディング業者の個人情報保護義務は当然ですが、個人への製品発送を行う企業側にもこのルール順守の徹底が必要です。
 つまり、経営者情報は壁を越えて投資家に流れるよう、投資家情報は壁を越えないような仕組みを作っていく努力がクラウドファンディング業者に求められます。

 これから出来る“投資型”クライドファンディングが日本にしっかり根付いていく為に、この2つの壁を超える努力がクラウドファンディング業者に求められています。


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株価呼値の適正化について~取引価格の細分化 (7月22日)
 7月22日から東証では現物株取引において、TOPIX100構成銘柄の呼値を引下げます。
株価1,000円以下は1円刻みから0.1円へ、5,000円から1,000円超の株価銘柄では0.5円に其々引下げかれますが、全銘柄に対しては今年12月まで、どうするか検討されます。
この株価呼値を引き下げるのは、投資家の売買コストを引き下げ、流動性を向上させる為と、東証はコメントしていますが、一部のリテール証券ではHFT取引などを行う大手投資家や海外金融機関などの優遇策ではないかとの懸念を表明しています。また、流動性が元々無い銘柄は、更に取引成立しにくくなるのではとか、個人トレーダー層が重視する板情報が取りにくくなるのではとの意見も出されました。今後、他の銘柄への対応は年内中に東証において検討されますが、取引に関しては他に夜間取引や売買単位の統一への取組みがあります。

 今回の呼値引下げを含めて、“呼値適正化”と“株式取引制度改革”の概要について以下に纏めました。

☆ “呼値適正化”と“株式取引制度改革”の概要について

 ICTの進歩は、株式市場取引においても十分活かされるべきでしょうか、一方では多様な投資家の参加を促す為の取組みも必要です。その為に、参加者間の取引情報共有の在り方や、不公正取引監視など市場機能維持についても、分かり易い議論をしていくことが常に求められているように思います。
(更なる高速化と取引管理能力を向上させた株式取引システムarrowheadのリニューアルは、2015年9月24日に予定されています。)

  
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ソーシャルレンディングは何の代替か (7月17日)
  ソーシャルレンディングは、P2P融資(Person2Person Lending)と言われ2005年頃から英国や米国で始まっていますが、2013年には全世界で20億ドル(前年比約倍増)を超える金額が利用されたと推測されています。ソーシャルレンディングは、ネット上で不特定多数の個人からお金を集める方法なので、広義のクラウドファンディングの一種です。しかし、現状のクラウドファンディングは、事業や製品などへの共感がお金を出す前提となっているのに対し、ソーシャルレンディングは他の貯蓄性の金融商品より高めの利息を得るといったことが目的になっていますので、通常はこの2つを区分しています。
(※クラウドファンディグに関する調査などでは、ソーシャルレンディングは貸付型クラウドファンディングとされることもあります。)

 日本においては、2008年にManeoはP2Pレンディングのマッチングサイトをオープンして、このビジネスが始まりましたが、現在の最大手はSBIソーシャルレンディングで、ManeoやAQUSHを加えた3社がその大半を占めます。但し、この3社においては其々レンディングの在り方が違いますので、簡単に紹介しておきます。(※金利は、7月時点での各社のHPより投資家側の年率ベース金利)

・SBIソーシャルレンディング=現在の主力商品は証券担保ローン(期間1年で2%程度)と不動産担保(期間約14ヵ月で3.0~4.3%)。証券担保ローンは、借り手のSBI証券顧客預かり資産とリンクする。また、建築資金の融資(コーポラティブハウスローン=期間3~6ヵ月、金利4~6%)や中小企業への融資(ビジネスローン=期間3ヵ月、金利6%)を行う商品もある。

・Maneo=中小企業向けローンで、以前は6ヵ月から1年程度の小口資金(500万円~3000万円程度)を扱っていたが、最近が3年程度のものも募集されている。なお、最小単位は募集合計人数が500名未満の私募事業ファンド規定に沿うよう調整されており、1万~5万円程度。

・AQUSH=元々は、個人のローンを自社で格付けし、投資家側で信用リスクのイメージを持ちやすくして希望する金利でローンを入札(実際は、投資家側が格付けと金利のマトリックスを選択)する方法(金利4~15%)だったが、最近は保証会社の保証付不動産担保ローン(期間3年、金利2.5%)を始めており、また米国最大手のソーシャルレンディング・プラットフォームのLendingClubの案件に投資するファンド(期間3年、金利6.5%但し別途営業者報酬が控除される)の募集も始めた。

 ソーシャルレンディングも、個人の少額のお金をインターネットを使って効率的に集めるマイクロファイナンスの流れの中で拡大してきました。ネットで投資の申し込み及び決済が済んでしまうので、ビジネスとしては効率的で、少人数の組織でもプラットフォームの運営が可能です。その為、投資の世界(既存の証券会社や金融機関など)から見ると、商品説明や投資リスクに関する情報提供など実務的に少し粗いように感じます。今後の拡大を期待する金融機関の関係者は多いと思いますが、現在は少し距離を置いて動向を見ている方が多いというのが筆者の実感です。
 なお、標題の何の代替になり得るかと言いますと、以下の様に考えます。
【借り手から見て】
・カードローン
・中小企業の事業資金(主に短期のつなぎ資金)
・不動産担保ローン
・証券担保ローン(但し、既存の証券会社との連携が必要)

【投資家からみて】
・預金
・債券投資(国債や社債)

ソーシャルレンディングのビジネスは、創成期から成長期に入ったところでしょうが、既存の金融ビジネスの隙間を埋めたり、金融機関の代替機能を果たしていく為には、ソーシャルレンディング・プラットフォーム側の一層の体制整備(Webでの情報の出し方や、投資家への情報の伝え方など)が必要だと思われます。  

 
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金融教育から投資教育へ (7月15日)
 金融教育は随分深耕してきていると感じました。6月16日に、金融経済教育推進会議(事務局:日銀情報サービス局)より“金融経済教育推進会議の取組み成果について”が公表されましたが、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の項目別・年齢層別スタンダードということで、今回“金融リテラシー・マップ”が示されました。
以前は金融教育というと学校で実践するようなイメージが強かったのですが、今回の報告は、大学生・若年社会人・一般社会人・高齢者それぞれの階層に必要な金融リテラシーを其々の項目で明確にし、個々が理解すべき点が明らかにされています。
少し驚いたのは、試験的ではありますがFP(ファイナンシャルプランナー)を「金融コンシェルジュ」として病院に派遣し、主に高齢者を対象とした患者とその家族の金融関連の相談を無料で受けるパイロット・プランが実行されたことです。この報告も公開されています。
 教育とは一生必要なことでしょうが、報告書を一読して日本人としてどう生きるのかといった事にまで及びそうな内容に少し圧倒されたのも事実です。この金融教育への取組みから、“投資教育”がどう派生してくるか証券・金融業界にとっても重要なことです。
金融庁が5月に実施したNISA(少額投資非課税制度)に関する調査で約1万名の証券会社や金融機関の営業部員をヒアリングした結果では、46.3%が若年層にNISA利用拡大を促す為に最も必要なことは、投資教育(投資の方法等)としています。

 さて、実際の投資教育がどう行われるか考える時、前述した病院に入院されておられる高齢者の方々には投資教育はおそらく関係ないように思いますが、現在最もニーズが高い方々がおられます。それは約500万人に達した確定拠出年金制度(日本版401K)の加入者の方々です。この制度は約94%が勤めておられる会社を通じて制度加入していますが、その為自分で運用している意識が無い方が多く、現状では約三分の二が貯蓄性商品にされており、ほぼ商品の変更なくこの制度を利用されています。勿論、ご自分の判断でされておられるのならコメントの必要もありませんが、企業側でこの制度を担当されている方の意見としては、せっかくこの制度に加入されていても利用者が投資商品や投資タイミングなどの判断が分からないケースが多いとのことです。

 一方、投資教育はプロと呼ばれる銀行や証券会社の営業部員にも必要ではないでしょうか。もちらは、投資教育の教育者としての立場でという意味ですが、自分の顧客の特性に合わせ、顧客個別の投資リスクをどう判断し、どの様にリスクを負うか個人をサポートするのがコンサルティング営業です。そのコンサルティングを効果的に行う為には、投資教育的ノウハウが求められます。
 また、ネット証券においては最近投資教育を意識した情報提供が自社WebやSNS利用で増えていますが、現状は多くの情報を流す段階で、個々の個人自らが必要な情報を取捨選択する必要があります。その為の新たなサービスがネット証券(若しくはネットでの証券ビジネス)に求められる可能性があります。

 投資教育を必要としている方は、これから投資を行う若しくは行うべき個人ですが、同時に仲介者としてその個人に接する証券会社も、よき助言者である為には自らの投資教育も必要ではないでしょうか。
 
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もう一つの市場~貸株(日本株レンディング)市場について (7月11日)
日本の株式市場は、教科書的には流通市場と発行市場といった機能別の分け方がされますが、もう一つの市場として貸株市場(日本株レンディング市場)を考慮すべきではないかと思います。
 勿論、株式を借りる目的は売却で、何れは市場から買って(一部は、新株予約権の行使や特約付き貸株契約など個別デリバティブ契約の実行)返すので、空売りとして取り扱われています。その空売り集計(東証が全体の比率を毎日公表)は、比率が7月10日現在で32.8%と相当高い水準にあります。

 この貸株市場の直接の参加者は、証券会社や国内外の金融機関・ファンドなどですが、基本的には大株主や長期保有者(年金ファンドや保険会社など)から株式の貸し手となり、借り手は短期的に裁定取引やトレーディングを行うファンドや証券会社で、個人の場合は信用取引を通じて証券会社から借ります。

 非常に重要な市場なのですが、国内で取引されるのは想定で3~4割程度で、海外でヘッジファンドや海外金融機関などが大口で取引するケースが多く、個人投資家にとって全体像は把握しにくい状況です。
 
一応、個別株の貸株に関するデータは以下のものがあります。

【銘柄別信用取引週末残高】=東証が前週末の信用取引銘柄別残高を、翌週火曜に公表
例えば、ソフトバンクの7月4日の信用取引で借りられている株数は、191万株(制度信用分=173万株、一般信用分=18万株)
(制度信用分に関して、自社内でのマッチング分を差し引いた分につき証券会社は日本証券金融から借りますが、これは貸株残高として日々公表)

【銘柄別株券等貸借週末残高報告】日本証券業協会が証券会社経由の貸借取引を週末ベースで集計し、翌週木曜に公表
例えば、ソフトバンク株式の7月4日貸借残高は、2,893万株(有担保が2,256万株、無担保が637万株

【その他、海外の大口取引】海外の投資銀行業務を行う金融機関及び大手ファンドや年金基金などが相対で取引を行う場合が多く、上記の統計には貸株状況が反映されない場合もある。但し、大手金融機関・投資家向け情報サービスを手掛けるマークイット(旧Data Explorers社)では、貸株在庫情報や貸株フィーなどの貸株関連情報を証券会社などに提供している。

 以上の様に、個人投資家が貸株市場の状況を正確に把握することは難しい状況ですが、最近はネット証券において自社顧客から動きの激しいモメンタム株を借り、制度信用では空売り出来ない銘柄も空売り可能とするケースが増えています。貸株取引も、ネット証券の自社顧客内でマッチングさせる取組みが増えており、個人のトレーディングをサポートしています。

☆ 貸株市場のイメージと空売り動向について

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プロ投資家とは何なのか (5月15日)
一般的に“プロ”とはその道で収入を得て生活できる人のことを指すと思いますが、自称“プロ”であっても他人が認める限り、その方はプロと言えるのかもしれません。

 投資の世界でプロと言いますと、他人からお金を預かって運用するような者は明らかにプロですが、これは旧証券取引法の時代から適格機関投資家として法律で定められており、金融当局に届け出て業者名が公表されています。5月1日時点、全部で2,304業者あり、その内訳は次のようになっています。
・ファンド業者など、金融当局に届け出をおこなったもの(含む個人)・・・・933業者
・資産運用を行う農協など、金融当局から指定されたもの     ・・・・164業者
・銀行や保険会社、証券会社など金融機関で業法において「既に登録されているもの ・・1,207業者

 以上を、プロ投資家の中核としますと、その他に一定規模で自分が運用を行ったり、知り合いでグループ化して投資を行うものも、金融商品取引法(2007年9月施行)では特定投資家としてプロと認めようという考え方が示されています。その特定投資家の定義は主に以下の様なものです。
・上記の適格機関投資家
・その他、金融当局が認めた業者
・外国法人
・資本金の額が5億円以上であると見込まれる株式会社
・3億円以上のファンドに参加する個人
・一般の個人では次の条件を全て満たすもの
  ㇾ純資産の合計額が3億円以上と見込まれること。
  ㇾ投資性のある金融資産の合計額が3億円以上と見込まれること。
  ㇾ証券会社などとの取引が1年を経過していること。

なお、最近プロ向けファンド(適格機関投資家特例業務者が組成する金融商品に投資するファンド)で、プロ以外で49名以下の一般投資家(アマ)に販売することが可能ですが、この部分が一部の悪徳ファンド業者などの問題行為(高齢者などに強引、若しくは詐欺的勧誘行為など)を引き起こしているとの指摘(証券取引等監視委員会など)があります。その為、この49名以下の一般投資家部分についても、プロ投資家に近い人たちに限ろうと関係法令が改正される予定です。(本年8月1日が施行予定)
その基準は、
・資本金が5千万円を超える株式会社
・投資性金融資産を1億円以上保有かつ証券口座開設後1年経過した個人
・ファンドの運用者の役員・使用人・親会社 など
とされています。

以上が、現状でのプロ投資家の定義となりますが、もともとはプロ投資家が定義されてきた背景には、ファンド(集団投資スキーム)などを通じて、企業や事業などにリスクマネーを供給する機能が期待されていました。
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個人投資家の実像を考える為に (5月13日)
 “NISAで私も個人投資家”と剛力彩芽さんが言っておられるCMは、投資というものを身近に感じさせるのにとても役立っていると思います。金融・証券業界挙げてのNISA推進で、新たに投資を始められる方々が増え、個人投資家層が拡大することが望まれますが、この個人投資家の実像を考える時に必要なポイントと、その参考となる調査・統計資料を参考までに上げておきます。
【個人投資家数について】
株主分布状況調査(毎年:全国取引所)
 平成24年度版では、個人株主数は4,596万人とされていますが、これは全上場企業3,540社分の延べ数で、当然複数銘柄の保有者もいます。また、個人の保有比率は金額ベースで全体の20.2%、株数ベースでは26.2%ですが、総株主数に占める個人の割合は97.3%です。
証券保管振替機構 業務状況グラフ(毎月)
 有価証券のペーパレス化が進み、金融商品は殆ど証券保管決済機構で決済・管理されますが、同資料内の“株主等通知用データ”数が各金融機関からの投資家名を名寄せしているので、投資家の実数に最も近いデータです。直近、4月末では1,758万人が投資家として存在します。
 
 以上から、直近の個人投資家数は1,758万人×97.3%=1,710万人程度と推計することも出来ます。

【個人投資家の投資内容について】
個人投資家の証券投資に関する意識調査(毎年:日本証券業協会)
個人の投資内容を調査するものですが、直近で調査において何に投資しているかについては、株式が72.7%、投資信託が50.8%、公社債(含む外債)が28.6%でしたが、公社債への投資が低下傾向以外は余り変化がありません。

資金循環統計図表(四半期:日本銀行)
同資料の家計の金融資産などから個人全体の投資動向が把握できます。3月下旬の公表された昨年末の統計では、個人資産全体では1,645兆円で、その内預金の占める割合が53.1%、保険・年金準備金が26.7%ですが、投資商品の方は株式が9.4%、投資信託が4.8%、債券が1.8%にとどまっています。

投資信託に関するアンケート調査報告書(毎年:投信協会)
 同調査によると個人1 人あたりの投信信託購入額合計は平均で473.4万円です。なお、同調査は投資信託の購入実態や動機・販売チャネルへの評価などその内容は詳細項目に及んでいます。

店頭FX月次速報(毎月:金融先物取引業協会)
 個人が取引の中心となっているFX取引の状況に関して、金融先物取引業協会が毎月FX業者からの速報値を集計していますが、取引額以外にも月末の通貨別ポジションが分かります。なお、昨年12月からは、バイナリーオプションの取引状況も月次で公表されています。

インターネット取引に関する調査(半年毎:日本証券業協会)
 昨年9月末で、証券会社におけるインターネット取引口座数は1,896万口座(半年前の調査から4.4%増)です。また、信用取引口座数は99万口座となり半年間で7万口座(7.7%)増加しています。なおデイトレーダーの売買も活発化しているようで、同調査による月間100回以上売買する顧客の取引が全体の62.6%(取引金額ベース)と、一年前(2012年9月末比)の48%に比べ大きく増加しています。

 以上の統計を見直して、個人投資家も多様化しているのではと改めて感じましたが、その実像を把握する為にも、個人トレーダー層・資産運用層・資産形成層程度の投資目的別に分類する必要がありそうです。

 なお、個人投資家の投資動向そのものへの調査は証券や情報ベンダー・調査機関などで行われていますが、これらは別の機会に取り上げます。

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HFTは何がメリットで何が課題なのか (5月6日)
HFT(高頻度取引)に関する議論が再び盛んになりつつあります(嘗ては、2010年5月の米国での株式市場急落の主犯説)。フラッシュ・クラッシュ4月に欧州議会ではHFT規制案が承認され、米国でも規制を前提にした金融当局などによるHFTの調査が実施されています。また、HFTを扱った小説“フラッシュ・ボーイス”も話題になっており、全体としては反HFTムードが高まっているようにも思えますがが、日経も4月9日付けの社説“超高速株取引を直視し市場の質高めよ”で取り上げています。

日本でもHFTの市場における存在感が増しており、取引金額ベースでは全体の4割(3月は46%)に達したようです。

ここで専門的なこと(システムやアルゴリズム内容)は別にして、HFTのメリットと課題について簡単に触れておきたいと思います。

先ずメリットは、以下の様なものだと市場関係者間では認識されています。
① 取引の流動性を高める(全ての市場参加者にメリット)
② 大量に売買する場合の取引コストを低減することが出来る(主に機関投資家などにメリット)
③ 他の取引との裁定取引を迅速に執行することが可能になり、双方の取引を増加させる(プロップ・ハウスなどの裁定取引業者にメリット)
④ 裁定取引を効率的に行うことが出来る(証券会社の自己売買部門やプロップ・ハウスなど)

 勿論、上記は全て①に帰すると考えられています。

一方、反HFTに対する意見の背景にはミリ秒(最近は、マイクロ秒)のスピード対する反感があると思われます。
HFTを利用できるのは、一部の機関投資家や金融機関、それにHFT専業者など限られており、個人を含めその他多くの投資家にとってミリ秒のスピードは利用できないので、不公平(不公正ではない)ではないかといったものです。このHFTを利用するためには幾つかの前提がありますが、主なものは以下です。
・取引所が提供するコロケーション・サービスを利用する。(取引所の取引システムに物理的に近いサーバーから売買の指示を出すので、他の取引指示より早い)
・コロケーション・サービス内で、売買の指示を出すアルゴリズムを仕組む。(このアルゴリズムは、注文板などの情報を読んで、自動的に売買発注や取消し指示を取引所システムに直接出す)

また、個人トレーダーなどがHFTに対して疑念を持つのは次のような事が代表的なものです。

◇HFTの行われているような主力株の取引で、個人トレーダーが注文板を見て発注するが、その注文がすぐ取り消されることが多く、結果として高く買たり、安く売らされる。

上記の様な個人トレーダーの懸念が現実に起きる為には、簡略化すると以下の様なことが前提となります。
【個人投資家が、希望する売買の反対側に注文があることを確認して注文発注した場合】
A:個人投資家の売買注文が注文板に乗る。
B:売買の反対側の注文に合わせて売買執行される。
◇HFTでは、Aの注文を確認した後で、AとBの時間差の間に該当する反対の注文が取り消されたり個人のAの注文に先んじて売買執行することが可能であれば、個人トレーダーの懸念が現実となる可能もありますが、この時間差利用が取引所で生じるものか、個人トレーダーの注文を取り次ぐ証券会社で生じているかが問題のように思われます。

 これらは課題の一つですが、スピードが問題なのではなく、むしろ情報の流れを管理する取引所や証券会社サイドのHFT対策ではないかというのが筆者の感想です。また、海外の金融当局などのHFT規制案の中心になっているのは、実際に売買指示を出すアルゴリズムの内容を証券会社などがチェック強化し、不公正(不公平ではなく)な取引指示を出していないこと義務化するものです。

 ICTの進化で取引手法が変わっていくこと時代の流れですが、出来るだけ多くの投資家が直接・間接にメリットを享受できるよう、多様な投資家に理解できる分かり易いHFT議論が待たれます。
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個人投資家にとってのデリバティブ取引 (5月1日)
 最近発表された日本取引所グループ(JPX)の決算発表では、今年度の株式取引はアベノミクス相場で沸いた昨年度に比べ3割弱減少すると予想されていますが、デリバティブ取引に関しては昨年度より若干の増加を見込んでいます。つまり、株式取引が減少したとしても、その派生取引である先物・オプションなどのデリバティブ取引は日本市場において未だ拡大途中との見立てです。
 しかし、個人にとってデリバティブ利用はFX取引や日経平均先物などの僅か一部商品に限られています。それは何故かという事とともに、今後利用が拡大する可能性があるのかといった視点で個人のデリバティブ利用を見直してみました。

☆ 個人のデリバティブ利用は進むのか
・個人のデリバティブ取引の現状
・そもそもデリバティブ取引とは何か
・取引拡大、取引縮小それぞれの理由は
・それぞれの期待

個人投資家といっても一律でなく、デイトレーダーから長期投資家・NISAで初めて株式を買う方までおられます。彼ら各自が、それぞれの目的に沿ってデリバティブ取引の2つの特徴であるリスクヘッジとレバレッジ投資を利用することは可能だと筆者は考えています。(勿論、その多様な目的に合わせてデリバティブ取引を仲介するのは、証券会社(金融商品取引業者)の大切な機能です。)

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貯蓄”の為の“投資”となるか~少額継続投資について (4月15日)
“貯蓄”から“投資”へという言葉は良く聞きますが、この政策によって郵便局でもファンドが買え、銀行の窓口でも投資の相談を受けることが可能となった訳です。証券会社などの金融機関の立場で言いますと、銀行などでの低金利の貯蓄から、少しリスクを負っていただき将来に備えた投資を行って下さいといった個人へのアピールにも使われました。この政策は、一定の成果を上げていると思いますが、しかし個人の金融資産の内訳をみてみれば、株式や投信・債券などのリスク資産が16%(日銀の資金循環統計:昨年12月末推計)で、欧州の半分・米国の三分の一弱の水準に滞っています。

 一方、個人の立場で言いますと、何の為にリスクを負って投資しなければならないかですが、その目的は大きく分けて2つあると思います。一つは個人の金融資産の運用と、もう一つは金融資産を作る為の投資つまり“貯蓄=蓄財”する為の“投資”です。証券会社などでは、営業活動の効率性を考えて、資産運用への対応に偏りがちですが、本年からのNISA(少額非課税投資制度)開始を機に、貯めるための投資=少額継続投資の見直しが始まっています。その“貯蓄”の為の“投資”に関しては次の様な動きがあります。

◎決まった金額を毎月同じ株式などに投資する累積投資⇒株式への累積投資は、嘗ては最小単位1万円からでしたが、証券会社に於ける作業コストなどからこの投資サービス提供から撤退する業者が目立っていました。しかし、NISAを契機に最小投資単位を1000円まで下げたり、再び株式の累積投資サービスを始める動きが目立っています。

◎投資信託を利用したインターネット利用による毎月定額投資⇒投資信託に関しては、嘗ては分厚い目論見書といったイメージが強く、専門用語の多用で一般の個人には内容が分かり難いとも言われていました。しかし、目論見書の簡略化やファンド比較サイトの充実・商品情報の整理なので、インターネットを利用しての投資信託購入が行いやすくなっています。加えて、累積投資に適した投資家コストが安いファンドも運用会社から提供されるようになってきました。また、毎月10万円までなら銀行口座に残高がない場合でも、投資信託購入資金を貸し付ける制度も定着してきました。これは、銀行や銀行系証券の専売サービスではなく、地方の証券会社も地域の金融機関などと組むことで顧客のサービス利用が可能となっています。

◎日本版401K(確定拠出年金制度)の利用拡大の動き⇒退職後の資金は企業年金の形で会社が面倒を見てくれるといった制度から、従業員自らが運用に責任をもつ制度への移行が進んでいます。日本版401Kへの大企業の制度移行は、昨年から再び大手メーカーや通信などで広がっており、同制度利用者は本年500万人以上となりそうです。但し、同制度利用者で“投資”を利用して老後資金を“貯蓄”しているのは、まだ全体の2~3割程度といったところで投資信託の利用も3兆円程度ですが、長期の投資といった性格から投資の“根雪”のような役割が期待されています。

上記の様な少額継続投資が今後増えていくと予想されていますが、その為にはインターネットを利用した効率的な商品と投資サービスの提供、個人の目的に沿った分かり易い投資情報の提供、企業や団体を通じた個人への効率的なアプローチ(証券会社用語では職域営業)などが証券会社に求められることです。
(一社で行う場合、金融グループで行う場合、地域金融機関などと連携しながら行う場合、それぞれのチャネルでの拡大が期待されています。)

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空売りの課題~海外投資家の場合、個人の場合 (4月10日)
 一般の投資家にとって“空売り”のイメージは余り良いものではありません。その理由の一つは、一般投資家が余り利用しない投資手法であることです。また、相場の押し下げ要因としてマスコミなどでもネガティブな行為として取り上げられることが多いからかも知れません。しかし、市場関係者のコメントでは、空売りしてもいずれ買い戻すので市場の流動性が増すことや、市場の動きが一方的になった場合(ITバブルなど)に適正な水準に戻す抑えになるといった機能的擁護論も聞かれます。

 空売りが良いか悪いかという議論は置いておいて、日本市場においては現状どうなっているかを簡単に触れます。

 先ず海外のヘッジファンドやプロップハウスなどが行う空売りは、リーマンショック以降売ろうと思っている株式を事前に貸株市場(金融機関などの店頭市場)から借りて売ります。(※株式を借りないで売り、後で決済日までに借りて決済することは、ネーキイド・ショート・セリングといって禁止されています。=日米欧の市場とも)また、このような株式を事前に借りているかどうかのチェックは、海外投資家の注文を日本市場に取り次ぐ証券会社が確認しますが、金融当局による証券会社検査項目の重要ポイントとしてこの確認行為が上げられています。

 一方個人の空売りは信用取引に限られます。この信用取引による空売りは昨年大きく変わりました。一つは、昨年1月より信用取引に係る保証金利用が日に何度もできるようになり、同一銘柄で同一の保証金を使って日に何度も売買することが可能となりました。二つ目は、昨年11月から売り下がりを禁じたアップティック・ルールが原則廃止になり、個人が空売りを行いやすくなりました。その結果、個人の中でも短期的な売買を繰り返す個人トレーダー層にとって、空売りが利用しやすくなっていますが、一方では空売りに必要な株式の手当て問題が残っています。つまり、個人であっても空売りする場合、証券金融会社で利用する“制度信用”を利用するか、証券会社自らが空売りする株式を調達する“一般信用”を利用するかの二通りに限られますが、制度信用は空売り出来る株式が限られていること、一般信用の方は証券会社によって空売りに必要な株式の調達力が大きく違うことが問題としてあります。

 一般信用で証券会社が空売りに利用する株式を調達する方法は、主に次の2つです。
・自社顧客若しくは自己投資分から株式を借りて、顧客の信用取引売りに貸し出す。
・貸株市場などを通して他の金融機関・発行会社の主要株主などから借りてくる。
何れの方法も証券会社によって調達能力が大きく異なってきます。

 個人トレーダー層を主要顧客とするネット大手の松井証券では、3月下旬から個人トレーダーの空売りに的を絞ったサービスを提供しています。
・制度信用や他社の一般信用では空売り出来ない銘柄で個人の売買が多い銘柄のうち、松井が株式を調達した銘柄をリスト化して、1日限りの信用取引で空売り出来るようにしています。
・但し、1銘柄20単元まで、かつ松井に当該銘柄の在庫がなくなった場合は貸出が終了(新たに空売りできない)します。
・この制度を利用する個人トレーダーは、通常の手数料に貸株料・金利(ここまでは通常の信用取引と同じ)、更にこの制度の利用料(プレミアム空売り料)を加えたものを松井に支払します。
・この制度を利用した場合、日中に買い戻す必要があり、もし翌日に信用売りのポジションを持ち越した場合は、松井によって任意に反対売買されます。

 個人トレーダー層の為に工夫されたサービスですが、デイトレーダー向けなので一般の個人投資家が利用する場合、相応の注意を要します。また、同サービスを提供する松井は、デイトレードでの空売りに応じる為、リアルタイムでの貸株状況把握と、そのポジション管理が必要ですが、ネット証券各社においてデイトレーダー向けの手数料・信用取引金利(例え日中の決済であっても、金利の両端計算で1日分の金利負担が生じる)引下げ競争が激しくなっている現状では、ネット証券のデイトレーダー顧客取り込み戦術として評価される事かも知れません。

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改めてバイナリーオプションとは何か (4月3日)
元来はある程度の規模の金融資産をリスクヘッジする目的で始まったオプション取引の原型は、”契約”そのものです。但し、取引を効率的に行う為に、その内容を定型化・小口化してより多くの投資家の参加を目指したり、取引所に上場することも行われています。例えば、個別株のオプション取引は、有価証券オプションですが個人向けには“かぶオプ”という愛称が付けられて、個人投資家への浸透が図られています。

 しかし、個人投資家にとってオプションは扱い難いものでもあります。それは、取引までの至る選択肢が非常に多いことと、個人のデリバティブ取引ルールであるロスカット・ルールの対象になることです。

 バイナリーオプションは、個人にとっての極端に簡素化したオプション取引で、その名称の通り利用する個人は買か売りのどちらかを選択すれば良い仕組みとなっています。但し、取引開始してからその終了までの時間が極端に短く、場合によっては10分程度といったものまでありました。その為、次の様な批判が出ていました。

(以下は、日本証券業協会ワーキング資料より)
●次の様な商品性から、顧客に過度の投機的取引が行われる恐れがあること
 ・二者択一の予想
 ・短時間で結果が出ること(5分、10分もあった)
 ・中には権利行使価格が決定していない商品があった
 ・途中で反対売買できない商品もあった
●複雑な理論根拠に基づく商品であるにもかかわらず、一見単純な商品であると誤解を招きやすい

 この為、次の様な自主規制ルールが昨年12月より施行されています。
○取引期間は、2時間以上
○取引終了時間まで、顧客の反対売買に応じること
○オプションの売値・買値を同時に顧客へ提示、また全ての顧客が損失を被る可能性があるような条件を付けてはならない
○権利行使価格は、取引開始まで提示しなければならない  等

また、取引開始に当たっては次のことが証券会社に求められています。
(※実際の自主規制は複雑なので、個人投資家に求められとことの視点で筆者が纏め直しました。)
○取引に関する説明書が交付され、個人から商品内容とリスクを理解した旨の確認書が徴求されますが、もともと個人のデリバティブは不招請勧誘でネット取引主体なので、実際に取引を申し込むと、バイナリーオプションの商品性とリスクを確認するための20問ほどのテストが実施されます。
(※筆者も試みましたが、専門用語が多く相当高度な知識を求められるように感じました。金融先物取引業協会では、事前に模擬テストが用意されており、各社が事前にこれを試みることを薦めているようです。)
○事前に、取引者個人の損失可能額を証券会社へ申告する必要があること

現在、このバイナリーオプションを扱う証券会社は6社で、外国為替の取引が主体ですが中の1社は株価指数での取引も行っています。その概況は、各社ごとに毎月公表することが自主ルールで決められていますが、2月の概況は次の様になっています。
・売買されたオプションの総金額420億円(口座数264,984、稼働口座数11,892)
・同取引は、顧客の売買に対して証券会社サイドが受けるという形をとるオプション取引の一種ですが、売買する顧客と受け手の証券会社の損益比率は顧客損益率で表わせられます。この比率は各社によって違いますが、90~105%の範囲です。(100%を超えた場合、顧客全体の損益が証券会社に買ったということ。100%未満は顧客の負け)
・実際の損失を出した顧客の比率は損失顧客率ですが、これは69~83%の範囲に各社の数値が収まっています。

昔、オプション取引が金融機関などに解禁される時にも、賭博禁止規定に関する法整備上の解釈議論がありましたが、個人の短期的なオプション取引は何をもたらすか、個人のトレーディング的行為は、オプション取引しいては原資産の取引にどのような影響を及ぼすのか、賛否のバイナリーではなく、市場発展を目的とした深みのある議論を期待したい思いです。

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最近の個人の金融資産と海外投資の概要 (3月28日)
 最近、世界最大の運用組織としてのGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用資産比率再配分がよく話題になります。 昨年末での運用資産は128兆5,790億円で、その内55.2%が国債などの国内債券で運用されていますが、有識者会議では成長戦略を目指すなら金利が上昇するはずなので、この比率を欧米並みに大きく引き下げるべきとの指摘がされています。

 一方、個人の金融資産の方は昨年末で再び1600兆円を超えています。(3月25日公表、日銀資金循環統計速報版(12月末時点))
目立ったところでは、昨年9月末に比べて現預金が18兆円、株式が20兆円の増加となっていますが、株式の増加は値上がり益で、実際はこの期間、年明けからの譲渡益課税の軽減措置撤廃を受け個人は株式を大きく売り越していました。また、債券については個人向け国債の償還が本格化していて、その為2008年9月以降から保有減少が続いています。投資信託については、昨年は資金流入と値上がり益が重なっての増加でした。

以上を合わせた個人のリスク資産(株式+債券+投信)比率は16%で、3ヵ月間で1%の上昇でしたが、欧米の比率と比べると大きな差(米国53.3%、ユーロ29.9%)があります。1月から個人の少額非課税制度NISAが始まったばかりですが、個人の“貯蓄から投資”への政策はまだまだ追加が必要と見られてもいます。

 また、同統計によると個人の外貨建て資産は38.7兆円でアベノミクスが始まってから4兆円近く増加していますが、その間の円安進行を考えれば、もっと大きな拡大があって良いように思われます。

なお、投信協会の統計資料で公表されている直近(2月末)の投資信託を通じた海外投資は、米国株や欧州諸国への債券への投資が増加していますが、反面ブラジルや香港への投資は3ヵ月間で1割以上減少しており、これは通貨下落分が大きく影響しているようです。

☆ 個人の金融資産と海外投資動向

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証券会社は何故高い職業倫理を求められるのか (3月21日)
どの職業であっても、プロとしての職業倫理を持つのは当然のことでしょうが、業界として職業倫理の向上に取り組むことは“投資家”という顧客に広く接している証券会社にあっては大切なことです。

 法規制で全て縛ろうとすると、顧客に接する範囲は限定され、また顧客に対する営業活動を管理するためのコストは非常に高いものになりますが、業務に係る原則を認識し、高い職業倫理のもとに営業現場で対応していくなら、大手証券であっても、地方密着型の証券であっても、ネット証券においても、あるいは法人相手の特殊な業務を行う証券会社でも、それぞれの立場で市場仲介者としての役割を果たしていけるはずです。

 日本証券業協会は、3月に「会員における倫理観向上に向けた取組み事例集」を公表しましたが、これは昨年6月に纏められた「信頼性向上のための施策の推進ワーキング・グループ」報告書において検討された以下の施策の一環です。
① 倫理観向上の取組みを紹介した事例集の作成
② 倫理コードの実効性確保のための社内体制の整備状況の開示する
③ ディスクロージャー誌に、会員の業務内容等をわかりやすく掲載する。
④ 主要株主(20%以上保有者)及び大株主(上位10 位)を協会ウェブサイトに一覧表として開示する。
⑤ 財務諸表及び分別管理の外部監査の受検状況等を協会ウェブサイトに一覧表として開示する。

 これは、顧客資産の流用やAIJ年金運用問題、増資インザイダーなどへの関与などから証券会社の信頼性が問われたことに対するものですが、倫理観向上の取組みとしては各社各様であるものの、次のように大概に纏められます。
・コンプライアンス・マニュアルの作成と、役社員への周知、事例研修、誓約書徴求など
・コンプライアンス・倫理面での人事評価、違反行為の周知、社内通報制度など
・社会貢献活動への参加支援など

 上記の事例集を一読して感じたことが2つあります。

 先ず、高い倫理観は、何の為にあるかという事をシンプルに考えると、顧客を第一に考えることに集約されるという至極当たり前の事です。これは他の職業でも同じでしょうが、法令を順守するのもこの顧客第一の前提があってのことです。しかし、実際の営業現場においては、自分やチームの予算や収益、他の部門の顧客ニーズなど、自分の顧客と利益相反する可能性があることに向き合うもとも多いのが実情です。

 次に、社内の倫理観を高めていくには、社内のコミュニケーションが重要で、単なる投資・商品情報にとどまらず倫理観向上の為の情報共有を進めることが重要です。この社内コミュニケーションの強化が、結果として顧客とのコミュニケーションを強め、自社の営業基盤を強固にしていくのだと思います。
(時代の進化であるSNSなども、利用を制限するのではなく、この社内・顧客とのコミュニケーション・ツールとして活用すべきと筆者は考えます。)


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HFTと個人投資家 (3月8日)
HFT(High Frequency Trading=高頻度取引)を個人投資家の視点で見ると、おおよそ2つあると思われます。

 ひとつは、売買注文を大量に発注するのでHFTの対象となる銘柄は流動性を増すということ。これは、個人投資家にとってもメリットで、比較的自分のイメージに近い売買することが可能になります。

 ふたつ目は、超高速で売買を繰り返すことで急激な株価の変動を起こすのではないかとの恐れです。2010年に米国で起きた突発的な株価急落(フラッシュ・クラッシュ)では、HFTが主因でないにしてもその影響が大きかったのではと指摘する関係者が多くいます。普通に考えると、同じような売買注文が重なっていけば、株価は一方向に大きく動きますが、若しHFTで同じようなアルゴリズムが発動した場合、同じような売買注文が高速で執行される可能性があります。急激に下落した後、急速に反発ということも起こりうるでしょう。

 ただし、証券会社の自己売買部門や裁定取引業者(特定のファンドやプロップハウス)と違って、必ずしも売買しなくても良い個人投資家であれば、相場のアヤのように一過性の動きとして見過ごすこともできますので、HFTの影響を深慮する必要もないかも知れません。

 一方、個人投資家の中にも日々若しくはそれより短期間で株価の値ざやを取ることを目的として売買を行う個人トレーダー(デイトレーダー)層がいますが、彼らの売買も市場の流動性を高めることには寄与するはずです。HFTで行う裁定取引も個人トレーダー層の短期売買も、市場においては一定の役割を果たすということでしょうが、短期的な値ざやの確保は他者より優先して行う必要があり、HFTの裁定業者間・個人トレーダー間そしてHFTと個人トレーダー間での裁定取引競争が行われることとなります。その裁定取引競争により一層市場の流動性向上が図れるのなら、それは日本市場にとってはプラスでしょう。

 但し、裁定取引間の健全な競争とは何か、市場取引全体からみた議論もまた必要に思います。例えば、HFTの裁定取引間の競争は、HFTに用いるアルゴリズムの開発(他社のアルゴリズム分析や発注方法の改善)でしょうし、個人トレーダーとHFTの競争は個人トレーダーの経験と分析力がキーになるかも知れません。また、アルゴリズム間の競争では、他者のアルゴリズムより早く発注するスピードを競うような競争も行われるでしょうが、取引所が提供するコロケーションサービスを利用すれば、同一のサーバーから自動的に発注されるので、HFT間の競争では同じようなスピードに近づいていくはずです。

 なお、HFTでの取引にはイベント(経済情勢の変化や企業の発表)などを材料に売買を行うものがありますが、企業の重要事実の公表が電子的ネットワークで行われる現在、瞬時に情報を入手しミリ秒単位で発注することも可能となっています。この様な対応はHFTでは出来ても、個人トレーダー層を含む個人投資家層には対応することが不可能です。

 市場の進化は必要なことでしょうが、HFTや個人投資家を含めて多様な投資家が参加し、それが維持される市場のルールも重要なので、個人も理解できるようにHFTやそれに伴う取引ルールの在り方を議論していくこともまた市場の発展には大切なことだと考えます。 

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証券会社のSNS利用 (2月27日)
 投資型クラウドファンディングの法案整備が伝えられ、来年4月から同法案が施行されることで成長企業などのインターネットを使ったリスクマネー集めが容易になると見られていますが、“寄付型”“購入型”などの現状をみてもSNSが活用されることが想定されます。

 一方、普通の投資に関するものでは金融商品や金融サービスを提供する証券会社のSNS利用が注目されます。本年から開始されたNISA口座などで、若い方々が新たな投資家として参加する時、SNSによる情報提供は証券会社にとって他のメディアなどより安価にかつ容易に利用できるでしょうが、現状ではそれほど利用が進んでいません。例えば、証券各社の主要なSNS利用は次のような状況です。

◇facebook=2月時点の主な“いいね”の状況では、野村約1.5万人、SBI約6千人、楽天約4.5千人などですが、利用方法は市況解説からセミナーやキャンペーンの案内、会社としてのCSR活動などの紹介、支店や新しいサービスに関した情報提供などでイメージアップを図る情報提供となっています。なお、大和やSMBC日興などでは、新卒者採用用の情報提供に限っています。

◇ツイッター=2月時点の主な“フォロワー”の状況:野村約2万人、大和約2万人、SBI約2万人、楽天約9千人、松井約6千人などとなっていますが、リアルタイムの市況状況などを簡単コメントするものが主流で、同自社ホームページへの誘導を試みるものが多く見られます。

◇YouTube=セミナーの簡易版の様に3分~10分程度で投資に関係する情報を提供したり、サービスやCSR活動の案内を行っていますが、テレビCMの代替もしくはCMそのものを活用するケースもあります。

全体として証券会社のSNS利用は余り進んでいませんが、その理由は2つほどあると思われます。
一つ目は、不特定多数の個人を相手とする為、SNSから発信する情報を、投資助言や金融商品勧誘に利用する際の社内ルールや自主規制の整備が必要ですが、一部の証券を除いて未だ対応されていないこと。例えば、社員が第三者を装って“いいね”や好意的にツイートする行為は実質的に勧誘行為となりますが、勧誘行為に伴う行為規制などの対応が整備されていない場合が殆どです。従って、自社SNSへの社員参加を禁止したり、勧誘行為を行わない旨を表明するのが現状となっています。
二つ目は、自社SNSに寄せられるコメント等について、問題ないかどうかチェックするSNS監視体制が必要となることです。

現状では企業イメージの向上以外で明確な効果が分かり難いと考える証券会社が多いので、SNS利用の態勢整備のコスト負担まで進むことが少ないようですが、一部にはSNSの利用を限定することで有効な活用方法を模索する動きもあります。
情報の発信範囲を、社内や一部の顧客に限定して行う“社内SNS”では、メリットである情報の双方向性を確保しながらSNSの管理・監視も行い易いので、今後の活用が期待されています。また、別の取組みとして、SNS内にある企業に関する情報をビックデータとして利用し、株価騰落の可能性を推測しやすいようにしようといった試みもなされています。

何れであっても、SNSの本業(証券会社にとっては勧誘行為)での活用を検討する時ではないでしょうか。  

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日本市場の投資家動向について (2月25日)
 今やミリ秒単位で変化する株式市場ですが、少し長いスパーンで考えて、株主構成の変化と売買動向といった2つの視点から、時には見直してみては如何でしょうか。

☆ 日本市場の投資家動向について

 過去20年間、事業会社や金融機関の株式持合い解消の受け皿になったのは、海外投資家であることは間違いありません。図表にしました数字は、昨年3月末の数字ですが、昨年の海外投資家の買い越しが15兆円を超えていましたので、この比率は本年3月末では更に上昇していると見られます。今後、海外投資家の買いが続くかどうか分かりませんが、買い手としてはやはり個人・投資信託・年金基金ではないでしょうか。
 個人は昨年大きく売り越していますし、NISAも始まったので年初からは海外投資家の売りの受け皿となっているようです。また、期待される投資信託の日本株買いは、投資信託に流入している資金を考えると、もう少し金額が増加しても良いように思います。また、年金基金(GPIFなど)の日本株への投資配分増加が時々話題となりますが、過去10年間では保有比率が半減しています。
また、市場仲介者である証券会社の自己売買は、過去10年間で半減しており、市場に流動性を与える裁定取引などは、一部海外ヘッジファンドなどが代替するように変わってきました。

 その時代の進化・変化によって投資家の主役は変わるかも知れませんが、市場に参加する投資家が多様であることが市場の健全性を保ち発展していくキーになることは、いつでも変わりないように思います。

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株式取引に係る課題について (2月14日)
 最近は、夜間取引などの議論が本格化し、日本の株式市場もアジアの中核市場として一層の市場機能整備を求められているようですが、その現状の課題について、全体像を俯瞰してみました。

☆  株式取引に係る課題

 先ず、取引機能についてですが、今後も超高速化が進むのは避けられないようです。例えば、世界各地の取引所において、同様の指数に連動したETFなどが上場される傾向が強まっていますが、これらの取引所間競争を勝ち抜く為にも、一層の取引速度向上がヘッジファンドなどHFT取引を多用する海外投資家などから求められています。
 この取引システムの高度化に伴って、取引監視の方の高度化も求められるようになって来ており、例えばHFTを行うアルゴリズムが、他の参加者の取引の公正さを担保するために問題ないかどうか取引所やサーバーを貸し出す証券会社側も確認する必要があります。また、HFTの他の取引への影響は未だ明確になっていない部分もありますが、他の参加者特に個人投資家などにどうHFT取引の状況を知らせるか課題となっています。この分野では、やはり米国の方が一歩進んでおり、HFTのモニタリング(銘柄毎)とその状況を米SECが把握するシステムが昨年稼働しており、個人でもSECのホームページからHFTの取引情報を把握することが可能となっているようです。(参考:米国HFTの実情〈日本証券経済研究所 吉川氏〉

 一方、取引ルールでは昨年の信用取引保証金制度の改革やアップティック・ルールの原則廃止で、個人トレーダー層にとっては影響が大きな制度改正が進みました。一日に何度も同一の保証金利用が可能となったり、信用取引での空売りが行いやすくなったのですが、空売りのためには株式を借りなければならず、直接貸株市場(主に内外の金融機関による店頭取引)に参加できる内外の機関投資家と個人では、その株式の調達力に大きな差があるのも、一方の現実です。
 これら投資家自身の機能差はしょうがありませんが、全体的な投資家間の情報格差縮小の視点から、貸株市場の情報や大口空売り報告などの情報が、個人レベルに対しても分かり易く適時に伝えていく必要があるように思います。

 現在議論が始まった夜間取引は、取引所の利便性向上の視点からのテーマかもしれませんが、日本の株式市場全体から見て、投資家の多様性を守ることで、健全性の維持された取引拡大を目指して欲しいと考えます。 


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株式取引に係る課題について (2月14日)
 最近は、夜間取引などの議論が本格化し、日本の株式市場もアジアの中核市場として一層の市場機能整備を求められているようですが、その現状の課題について、全体像を俯瞰してみました。

☆  株式取引に係る課題

 先ず、取引機能についてですが、今後も超高速化が進むのは避けられないようです。例えば、世界各地の取引所において、同様の指数に連動したETFなどが上場される傾向が強まっていますが、これらの取引所間競争を勝ち抜く為にも、一層の取引速度向上がヘッジファンドなどHFT取引を多用する海外投資家などから求められています。
 この取引システムの高度化に伴って、取引監視の方の高度化も求められるようになって来ており、例えばHFTを行うアルゴリズムが、他の参加者の取引の公正さを担保するために問題ないかどうか取引所やサーバーを貸し出す証券会社側も確認する必要があります。また、HFTの他の取引への影響は未だ明確になっていない部分もありますが、他の参加者特に個人投資家などにどうHFT取引の状況を知らせるか課題となっています。この分野では、やはり米国の方が一歩進んでおり、HFTのモニタリング(銘柄毎)とその状況を米SECが把握するシステムが昨年稼働しており、個人でもSECのホームページからHFTの取引情報を把握することが可能となっているようです。(参考:米国HFTの実情〈日本証券経済研究所 吉川氏〉

 一方、取引ルールでは昨年の信用取引保証金制度の改革やアップティック・ルールの原則廃止で、個人トレーダー層にとっては影響が大きな制度改正が進みました。一日に何度も同一の保証金利用が可能となったり、信用取引での空売りが行いやすくなったのですが、空売りのためには株式を借りなければならず、直接貸株市場(主に内外の金融機関による店頭取引)に参加できる内外の機関投資家と個人では、その株式の調達力に大きな差があるのも、一方の現実です。
 これら投資家自身の機能差はしょうがありませんが、全体的な投資家間の情報格差縮小の視点から、貸株市場の情報や大口空売り報告などの情報が、個人レベルに対しても分かり易く適時に伝えていく必要があるように思います。

 現在議論が始まった夜間取引は、取引所の利便性向上の視点からのテーマかもしれませんが、日本の株式市場全体から見て、投資家の多様性を守ることで、健全性の維持された取引拡大を目指して欲しいと考えます。
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リテール証券業~~2020年に向けて、その進化の可能性(2月4日)
 株式市場はすっかり調整モードに入ってしまいましたが、それとは対照的に昨年4月~12月期の上場証券会社の好調な決算発表が続いています。アベノミクス相場の恩恵を受けた訳ですが、この業界が相変わらず市況産業的なあり方で居続けるのか、それとも2020年に向けて新たな成長戦略をそれぞれ模索し始めるのか、上場証券各社のIR資料等や業界環境の変化をもとに、以下に纏めてみました。

☆ リテール証券業~~2020年に向けて、その進化の可能性
・最近の大手ネット証券動向
・大手証券のリテール戦略強化プランとその背景
・個人投資家が求めるもの、求められるもの
・代替機能と他社との協働、そして課題

必ずしも大手ネット証券や大手証券が強いというわけではなく、多様化する個人投資家とその多様化する投資ニーズに応えていくためのコミュニケーション強化が次の変化と成長への鍵となるように思います。
(※なお、上場証券会社は20社以上ありますが、推奨している訳ではありませんので、投資判断にはご利用にならないようお願いいたします。)

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FX取引の動向と個人の海外証券投資(1月30日)
前回に続きまして、各種統計資料より個人の投資動向についてですが、今回はFX取引と外国株式・外国債券投資の概況についてです。
 ドル円でみるとほぼ一貫して円安が進行しましたが、個人投資家が利用するFX取引に限っては、前半はほぼ相場展開と同様の動きでした。しかし、年末にかけての円安局面では逆に円安ポジションが縮小しています。また、ユーロ円に関しては、年半ば以降のユーロ高とは逆に、ユーロ売りポジションが拡大し、豪ドル円についても4月以降の豪ドル安に上手く対応できていないよう推測されます。ドイツを中心のした欧州景気の回復・中国経済停滞の影響を受けた豪州など資源国経済の低迷といったところが、FXョンが拡大し、豪ドル円についても4月以降の豪ドル安に上手く対応できていないよう推測されます。ドイツを中心のした欧州景気の回復・中国経済停滞の影響を受けた豪州など資源国経済の低迷といったところが、FX取引の材料として上手く消化できなかったかもしれません。
 一方、外国株式や外国債券なども譲渡益課税の軽減措置の対象となっていましたが、外国株式が12月に多少売り越し額が多めだったものの、外国債券では個人等はほぼ毎月4~5000億円程度買い越している状況が続いています。また外国株式・外国債券とも取引量が増加する傾向が続いています。

☆ FX取引の動向と個人の海外証券投資の概況

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個人の投資動向は?(1月29日)
 個人投資家の方がどう動かれるかというのは、常に証券会社にとっての命題ですが、各社では新年度の営業・商品戦略を今まさに策定中だと思います。
今年の個人投資家どう動くのか?NISAも始まりましたし、昨年末までの譲渡益課税の軽減措置は終了しています。個人株主の益出しも一巡して、MRFなど投資の為の待機資金も高水準でありことが伝えられています。また、個人向け国債の大量償還も続きます。さて、時には統計資料を斜め上から見てみてはいかがでしょうか。

☆ 個人の投資動向について
・個人の株式売買動向
・公募投信への資金流出入
・個人向け国債の償還

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証券業界の2013年を振り返って~業界環境概要図(12月30日)
いよいよ2013年も最終日となりましたが、今年1年拙稿にお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。
今年最後は、(あくまでも主役は、投資家と上場企業ですが)資本市場の担い手である証券会社について、個人の投資をサポートしているリテール証券の現状を以下の様に至極簡単にまとめました。それぞれのお立場で、今後証券会社がどの様に変わっていくか期待するところは異なると思いますが、ご参考ください。

☆ リテール証券会社の業界環境

最近では、賃上げの話がでるほど業界環境は好転しましたが、アベノミクスと世界的な超緩和策推進による株式市場上昇の影響が大きく、やはりこの業界は市況産業との想いを感じる一年でした。ただし、制度上の変化もあり、
・1月からの信用取引における保証金制度の改革で、1日に何度も同一資金を利用することが可能となり
・11月からは、信用取引での売り下がりを禁じたアップティック・ルールが原則廃止され
個人トレーダー層の取引が大きく拡大しています。

また、1月から始まるNISAは、その口座開設が10月から行われていますが、本当に久しぶりに業界全体が新規顧客活動で盛り上がりました。だだし、業界が多少釘をさされた形になったのは、NISA開始を前にして12月から自主規制のかたちで始まった高齢者勧誘規制でした。これは行政主導で行われていたようにも思えますが、金融商品取引法に定められた証券会社の行為規制である”適合性の原則”の徹底として考えるべきかも知れません。
NISA制度の充実を始めとして、確定拠出年金制度の拡充や、日本版IRAの検討など、”貯蓄から投資”への具体的政策が今後実施され、投資経験の少ない個人層まで投資リスクテイクが広がっていく中では、必要なことなのでしょう。

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個人の金融資産と海外投資の概要(12月24日)
 久し振りに大幅な上昇となった2013年の株式市場ですが、個人投資家は単にアベノミクス相場の乗っていたというより、5月の調整や7月の参議院選、そして譲渡益課税の軽減措置終了などに比較的冷静に対応していたようです。また、来年といっても来週に迫ったNISA口座の開始は、長年言われてきた“貯蓄から投資へ”を推進する制度として、金融業界から大きな期待をされています。

 12月19日に公表された日銀資金循環統計速報版(9月末時点)によりますと、個人の金融資産は1,598兆円と1年間で約90兆円近く増加しており、その増加要因の殆どが株式や投資信託などのリスク資産です。これに債券を加えたリスク資産が個人金融資産に占める割合は、15.0%とアベノミクス相場が始まってから約3%程度上昇しています。とは言いましても、米国の52.7%、ユーロ圏の29.3%とは相当の距離があります。

過去1年間のリスク資産の増減の内容を見てみますと、
・株式や出資金=43.8%の増加ですが、その増加要因は株式相場上昇によるもので、売買に関しては売り越しが続いています。
・債券=8.7%の減少となっており、リーマンショック後の売却(償還も含む)超過が続いています。
・投資信託=33.0%の増加で、リーマンショック後も資金流入は続いていますが、この1年は株式市場上昇要因も加わり、増加率が拡大していました。
 また、個人金融資産に占める外貨建資産は、37.3兆円となり1年間で11.3%の増加ですが、その増加分の殆どが外貨建投資によるものです。

 なお、最近の投資信託を通じた海外投資では、欧州に対する投資が増加していますが、嘗ての高金利通貨豪ドル下落の影響で、円安にも関わらず豪州への投資は減少しています。

☆ 個人の金融資産と海外投資動向

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高齢者投資家の実像について(11月28日)
12月16日から高齢者顧客への勧誘活動に関して、業界では自主ルールは強化されます。既に11月初めに規制内容はお伝えしていますが、その対象となる高齢の個人投資家の実像について、簡単に示しておきます。

☆ 高齢者投資家の実像

・勧誘規制の対象となる75歳以上の個人投資家の平均証券保有額は、最近の日本証券業協会による調査では、864.8万円と全体平均の491.6万円の1.75倍です。
・特に、男性高齢者の証券保有比率は高く、株式・公社債(国内)・外貨建証券は個人全体の平均値の2倍近い保有比率となっています。
・流石にデリバティブ商品の保有比率は、男性高齢者でも全体平均の半分程度、女性高齢者は殆ど利用していない数値となっています。
・また、女性高齢者は投信以外について全体の平均値より保有比率が低くなっており、投資に関しては保守的傾向が覗えます。

 なお、今回の勧誘規制強化の対象から、インターネット取引は原則(ネット上での勧誘活動をしない限り)除かれますが、高齢者のネット利用は進んでおり、残高のあるインターネット取引口座ベースでみても、70歳以上の口座は全体の17.4%まで占めるようになっています。

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投資情報ポータルサイトとしての東証(11月21日)
日本市場に関して、最も情報が集まるところは取引所です。従って投資に関する情報が集まるところも取引所ということになりますが、最近は上場企業に関する情報提供が充実してきており、投資情報ポータルサイトとして個人投資家が利用することも多くなっているようです。

 勿論、今までも情報は取引所に集約されていたのですが、取引所は個人でも調べやすいように“東証上場会社情報サービス”という上場企業に関する情報の検索機能を提供し始めています。これまでも、上場企業が取引所から求められる適時開示に関して、過去30日間の情報が無料で閲覧できましたが、企業ごとに情報をまとめ、その他の基本情報や株価推移などと合わせて見ることが出来るようになりました。例えば、コーポレートガバナンス報告書からは、役員の報酬額を調べるといったことも容易です。これら、情報サービスにより、取引所サイトでの個人を含めた投資家の利用が増加すれば、また投資家が求める投資関連情報のビックデータの蓄積にもなり、取引所からの新たな投資関連の情報提供サービスが期待できます。

 今までは、個別の企業情報に関して、日経やロイター・ブルンバーグといった情報ベンダー系のサイトの利用が一般的だったと思いますが、全ての市場情報が集約・集積される取引所に、投資家の情報利用のデータが蓄積されることは、取引所の情報発信をより投資家のニーズに合わせていく為に必要なことだと思われます。

 一方、取引所の収益構造(日本取引所グループの)を見ますと、その収益の2割弱が情報関連収益となっています。これは、主に取引に関するデータなどを証券会社や金融機関などに販売すること得ているものですが、即時性のあるデータが中核になっているようです。これらの情報ビジネスと、投資家を引き付ける為の情報発信のバランスをとりながら、投資情報ポータルサイトとしての役割を果たしていくことに期待しています。

 取引所による現在の上場企業に関する情報発信充実の取組みを支持しますが、また、出来れば以下のようなことも、一般投資家が閲覧可能な方法で重ねて期待したいところです。
○有価証券報告書や大量保有報告書などが、上記の情報サービスサイト内で見ることが出来る。
○企業ごとにファイナンスで増えた株数、自社株で減った株数などが月次ベースで確認出来る。
○空売り規制で、大量の空売りとして公表される数値を一覧出来る。
(※東証は、11月5日より一覧表化していますが、報告日付けにバラつきがあり、当該銘柄にどの位の大量な空売りが入っているか、一般の投資家が想定しにくいので改善を期待します。)
○個別銘柄に対して、HFT(高頻度取引)での取引比率
(毎日が煩雑であるなら、週間ベースを期待します。)

 取引所は、ある種の情報産業的なところもありますが、その為には取引参加者間での情報格差を小さくする努力も必要だと考えます。
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最近の個人投資家の海外投資動向について(11月19日)
アベノミクスで日本が再び成長軌道に乗るとしても、個人金融資産(6月末で1,590兆円)の2.3%(数値は日銀資金循環統計)しか外貨建て資産がないのもの日本国民全体のリスクの様に思われます。
まして、現状はリスク・オフの市場環境でもないのですから、もう少し海外投資が活発化しても良いと思うのですが、個人の海外投資に関する動向は次のようなものです。

☆ 個人の海外投資動向(2013年10月末の状況)

【FX取引】(金融商品先物業協会の統計データより)
○月間の店頭FX取引金額ベースでみますと、5月の531兆円から10月は265兆円と大きく減少しています。しかし、この水準でもアベノミクス相場以前の月間取引平均金額157兆円(リーマンショック後、昨年の11月までの月間平均)からは高い水準です。
○円売りポジションに関しては、10月も2.2兆円あり、これもアベノミクス相場以前の倍近い状況です。
○通貨別では、豪ドルの買いポジションが減少していますが、それでも円売りポジション全体の4分の1程度はあります。
○ユーロ売りのポジションが減少しましたが、直近対ドルでショートする傾向が出始めています。

【投資信託を通じた海外投資】
○米国経済の回復に合わせ、米国投資が大きく増加しています。
(昨年の11月から本年10月にかけ、株式40%・債券32%・リートなど35%、対円資産ベースで増加しています。)
○ユーロやその他先進国への投資資産が増加しています。
○オーストラリア債券・ブラジルや中国株が売られています。
○5月以降は、新興国投資が滞っています。

【外国株・外債投資】
○夏以降、外国株式投資の買い越し金額が増加し、10月は719億円と月間ベースでは2005年8月以来の金額となっています。
○個人投資家による外国債券の売買が活発化しているようで、取得・処分とも今年に入っては通常の倍以上の水準が続いています。また、10月の買い越し額が6,413億円と、昨年の4月以来の水準となっています。

以上の一言コメントです。
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あって欲しい市場情報について(11月12日)
市場において、より多くの投資家に参加してもらうように(多様な投資家の確保)、ベースが既にあるデータで次の様な市場関連情報を、一般向けに公表してもらえないかと取り上げてみました。

【市場の需給に関する情報】
○ファイナンスによる新株の増加と、自社株取得による市場流通株式の減少(金額ベース)
 この情報は、全体的な数値と銘柄別の情報が其々必要です。
年次や月次ベースの数値は、市場全体の株式需給の変化を表しますし、個別銘柄の数値は、その企業が行った資本政策の実践ということになりますので、投資家が先ず市場全体の需給を考え、個別企業の資本政策を見直す上で重要な情報となります。

【取引に関する情報】
○銘柄毎にHFT(高頻度取引)が占める比率
 HFTに関しては、いろいろ批判もあり欧米においても一部で規制するような動きがあります。しかし、このHFTは、間違いなく金融イノベーションの一つで、大量に売買しようとする機関投資家の取引単価平準化や流動性に向上には役立っています。また、取引所にとっても、コロケーション・サービスでHFTに対応することは、取引所間の競争や取引量増加の為には必要なことです。東証においても、既に取引量の4割以上を占めると言われていますが、HFTを利用できる投資家が限られていることも事実です。それで、HFTに関する最低限の情報を投資家間で共有する必要があるのではと考えます。

○集約された空売りに関する情報
 11月5日より、空売り規制緩和とともに発行済みの0.5%の空売り報告(投資家毎)が毎日公表されますが、東証が一覧表にして公衆縦覧しています。今までの個別報告書の縦覧から一歩進んだように思いますが、投資家にとってより有意義な情報は、個別銘柄に個人・外人問わずどの位の空売りが入っているかの情報だと思われます。制度信用などの週一度の公表では、今の取引の変化が激しい時代にあっていませんし、信用取引での売りは空売り全体の一部に過ぎません。
現状では、空売りは株式を借りなければ取引出来ないということになっているので、貸株市場での個別銘柄ごとの取引残高が近い数値と思われますが、貸株市場は店頭取引なので、出来れば証券会社経由の貸株状況を毎日公表することが望ましいと考えます。

○社債の取引状況に関する情報
 社債市場を拡大する為に、欧米のような社債取引(主に金融機関間の店頭取引)情報を共有しようという改革案が4年以上前から業界内で示されています。しかし、一向に実現する気配がないように思われます。何故かといいますと、現在の限られた投資家と業者でも日銀の緩和策の影響で、そこそこの社債発行があり、現在の社債市場関係者が余り問題を感じないからです。しかし、より多くの企業の社債発行を可能とし、個人を含めたより多くの投資家が参加可能な社債市場とする為には、先ず情報共有を行うことという市場拡大の鉄則は社債市場においても変わりません。

【ディスクロージャーの信頼度に関する情報】
○ディスクロージャー信頼度指数
 申し訳ありませんが、現在上記のようなものはありません。しかし、ディスクロージャー情報を日頃分析されているアナリスト協会などで、是非開発して欲しいものです。例えば、公募ファイナスやIPO直後の業績の修正などは、本来引受証券が責められるべきことでありますが、長年上場企業のディスクロージャーを見ていて、企業によっては癖のようなものがあるとも感じています。ファイナンスやM&Aなどのイベントと、個別企業のディスクロージャー姿勢との関係が、個人投資家にも解り易い信頼指数化が望まれます。
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2020年の個人投資家(11月1日)
い将来ではないけれど、想像可能な未来、7年先の東京オリンピックイヤーとなる2020年はそのような時間軸と感じる方が多いのではないでしょうか。以下、2020年の個人の投資はどうなっているのかを敢えて予想してみました。

☆  2020年の個人投資家
・個人と投資環境の変化
・2020年までの日本経済変化
・2020年の個人投資家像
・2020年に投資家をサポートするもの
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アナリスト問題を思い出す(10月22日)
投資家が上場企業の内容を知ろうとするには、企業側のディスクロージャー(金商法で定められた法定開示、取引所ルールの適時開示、それ以外のIR活動による企業の情報発信など)に頼りますが、それ以外に投資家の投資判断に大きな影響を及ぼすものとしてアナリスト・レポートがあります。
これは、証券会社などに所属するアナリスト(所謂、セルサイド・アナリスト)により作成される企業分析のレポートで、元来は機関投資家向けに作成されていたものですが、個人用に要約されたものを個人投資家(顧客)にもネット上で閲覧可能としている証券会社も増えています。

市場の方でも、レポートでの目標株価や格付けなどの変更には比較的よく反応する場合が多くなっており、アナリストは個人投資家にも身近になっています。

また、アナリストに関する最近の話題としては、楽天の会長が、自社担当のアナリストを名指しで批判するというような珍しい現象(今年7月)も起きています。(企業側のディスクロージャーが問題か、アナリストの分析が問題かは、個々の投資家が判断する問題でしょうが、・・・)

 そもそも、アナリスト(本稿では、レポートを作成するセルサイド・アナリストを指す)に関する問題は、正確で分かり易いレポートを作成するという本源的な機能以外で、次のようなものがあります。
(世界的なアナリスト問題は、エンロン・ワールドコム事件(2001年、2002年)後に顕在化していますが、簡単に言いますとあれだけの粉飾決算に対して、アナリストはちゃんと分析して見ていたのかという疑問です。正確な分析を阻害する要因として、以下のようなことが考えられました。)

●アナリストの利益相反問題
 アナリストの報酬は、当然証券会社が支払いますが、その評価や原資が何かということが問題となりました。例えば、
・担当する企業がファイナンスやM&Aなどに為に良い評価をアナリストに求めることがあります。
・大口の手数料を支払う特定の大手機関投資家に対して、担当営業部門から分析レポート公表前の内容や特別の未公開情報をもとにした分析を伝えるニーズが強まるもともあります。
 これらのニーズは、企業や大手機関投資家のビジネスを担当する投資銀行部門からなのですが、アナリストの評価は投資銀行部門からの評価やビジネスの影響を受けないといった体制を整備することが、アナリスト部門に求められています。

 簡単に書きましたが、これ等は証券会社内のアナリスト部門と投資銀行部門のチャイニーズウォールだけで守られるのか、現在でも少しばかり疑問を感じます。個別のアナリスト評価が、アナリスト部門内の査定とアナリストランキングだけで、アナリストに高給を提供できるのかといったなといったものです。

●アナリストの個人的利益相反問題
 これは、前記に比べて比較的簡単で、アナリスト個人の取引に関して、担当する企業の現物は勿論、デリバティブを取引しないということで、投資家に提供するレポートと自分の取引の利益相反は避けられます。ただし、担当する業種のETFやETNは如何かということでは、多少配慮の余地があると思います。

●アナリストの未公開情報への関与
 優秀なアナリストほど、企業経営者との接点が多いものですが、その関係で未公開の重要事実(株価に影響のあるもの)に接する場合もあります。一応、自主規制では、未公開の重要事実を使っての分析は行わず、他者に伝えないとなっています。

●アナリスト・レポートの不足への対応(取引所)
 現在、証券会社のアナリストがレポートを作成する対象の企業数は8~900社程度と言われていますが、取引所は証券会社がアナリスト・カバーしないような新興企業や中小規模の上場銘柄の取引活性化を目論んで、以下の様にアナリスト・レポートの投資家への提供を試みています。(数字は、10月22日現在)
・社団法人証券リサーチセンター:東証1部、2部44銘柄。マザーズ56銘柄。ジャスダック2銘柄
(レポート作成費用は、有志の資金(現状は、各取引所、大手証券、大手監査法人などの協賛金が原資))
・アナリストレポート・プラットフォーム:44銘柄。
(レポート作成費用は、基本的に上場企業が負担し、作成は独立系リサーチ)

 アナリストは、投資家にとって企業の分析レポート提供という非常に重要な役割を果たしていますが、その立ち位置を考えた時、10年前に顕在化したアナリストの利益相反問題について、今一度見直してみる必要もあると考えます。
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アンケート調査などから個人投資家像を改めて考える②(10月15日)
 一昔前の証券業界では、個人投資家を保有する金融資産別に富裕層・準富裕層(退職金などで一時的に金融資産が膨らむ個人も含む)・一般投資家層などと分けていました。これは、概ね自社の営業戦略に依るところが大きく、富裕層ならブラベートバンクや投資コンサルタント、準富裕層ならファイナンシャル・アドバイザー、一般はコールセンターやネットへの誘導が中心などといった大雑把な分類でした。また、前回紹介した業界団体による調査では、年齢層別の投資家属性が中心になっています。
 以下、最近は個人投資家のどの様に考えているか、各種調査などから分類実例を上げてみました。

○株式投資家の投資方針による分類←ノムラ個人投資家サーベイ(2013年10月10日公表分)
・概ね長期保有(個人投資家全体の49.2%)
・短期間の値上がり益を重視(同、15.2%)
・配当や株主優待を重視(同、19.3%)
・特に決めていない(同、16.3%)

○投資家クラスターモデルによる分類←日経リサーチ“個人投資家向けIR調査”
・ベテラン短期投資家(全体の25.5%)
・分析投資家(同、21.2%)
・チャート重視投資家(同、8.7%)
・愛着投資家(同、26.2%)
・素人投資家(同、18.5%)

○ネット投資家の売買頻度による分類←MANEX個人投資家サーベイ(2013年10月公表分)
・デイトレーダー(全体の5.5%)
・週に数回(同、14.4%)
・月に数回(同、35.6%)
・数ヵ月に1度(同、27.2%)
・以上より少ない(同、19.3%)
(※デイトレーダーについては、業界内では全体で20~30万人程度と見られているので、個人株主の1.2~1.8%というのが通説)

株式投資に限っても、以上のようにいろいろな分類がありますが、証券会社や金融機関にとっての個人投資家は、自社の営業活動で取り込むべき顧客な訳ですから、次のように投資目的に合わせて分類し、人やシステムなどのインフラ投資をされるべきではないかというのが、コンサルとしての意見です。

○資産形成層
・資産形成目的で投資を行う個人層。
・持株会、継続的な累積投資、日本版401K、そしてNISAなども含まれる。
・特徴としては、一度の投資金額は少額だが、長期投資を目的としている。
・この投資家層に業者として対応する為には、効率的な継続投資のインフラが必要。但し、会社単位で纏めて多人数を顧客化するメリットがある。

○資産運用層
・一般的に個人投資家層と言われる部分で、投資信託なども数百万円単位以上で購入する。
・投資目的は、あくまで資産を増加させることが中心になる。
・資産分散から海外投資ニーズは高いと思われるが、現在の海外投資は投信に偏っているので、外国株・外国債券投資の余地は多きいと見られる。

○資産管理層
・一定期間内にある程度の資金を利用することを前提に投資を行う個人層。
・例えば、高齢者による毎月分配型投信への投資や、教育資金贈与信託など。
・また、今後投資資産全体のリスクを管理するという目的で、デリバティブ利用などが進む可能性もある。
・但し、証券会社や金融機関による資産管理ビジネスに対する体制整備が現状では不十分と見られるので、運用会社任せになり勝ち。

○個人トレーダー層
・売買の目的がトレーディングの個人層。
・売買対象は、個別株からFX取引・指数デリバティブへ拡大。また、上場ETF・ETNの利用も。
・証券会社としては、売買回転数の増加が好ましいので、デイトレーダー層の獲得の為の業者間競争が激化
・ヘッジファンドなどの売買手法や提供されていたサービスの一部が、デイトレーダー層でも利用可能に。

○特殊な投資目的による投資家層
・自社や特定の愛着がある企業への投資
・特定の社会的目的による投資
・知り合いや地域振興の為の投資
・以上は、上場企業以外にも、地域のインフラファンドや事業ファンド・未公開株投資において、今後増加していく可能性があるが、現在の証券業者では明確な戦略は、ほゞない。
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アンケート調査などから個人投資家像を改めて考える①(10月10日)
個人投資家はどうなのと顧客企業から問われることがありますが、この業界で仕事をされている方々も、何らかの目的や理由で“個人投資家はどうか”ということを考えることが多いのではないかと思います。
これらは知る為に次のようなアンケート調査を参考にしていますので紹介します。

個人投資家の証券投資に関する意識調査(結果概要)(日本証券業協会:2013年9月17日)
この調査から個人投資家の全体像を推計することが出来ます。例えば、次のようなこと
◇個人投資家はどの位いるのか=2,302万人←(9月末の実質株主数1,723万人[証券保管振替機能の統計データ]×株主数内個人比率97.3%[株主分布状況調査]÷個人投資家の内、株式を保有するものの割合72.8%[調査①]
現在、証券業界はNISAで新規顧客獲得キャンペーンを行っていますが、この数値では何等かの金融商品を保有する個人投資家は、意外といるなというイメージです。ちなみに、以下の数値も推計しておきます。
◇株式投信の保有者は=701万人←(個人投資家数2,302万人×投信の保有比率50.8%[調査①]×その内の株式投信保有比率60.0%[調査①])
◇個人向け国債の保有者は=357万人←(個人投資家数2,302万人×公社債の保有比率28.6%[調査①]×その内の個人向け国債保有比率54.3%[調査①])
◇外国債券の保有者は=86万人←(個人投資家数2,302万人×公社債の保有比率28.6%[調査①]×その内の外国債券保有比率13.2[調査①])ちなみに、社債保有者は111万人、地方債保有者は80万人と推計され、意外と少ないという感想です。
個人の投信に関しては、別途、投信協会が毎年行っている次のような調査があります。

投資信託に関するアンケート調査報告書平成24年度(投信協会:2013年1月)
前記①と同様毎年行っている調査で、保有状況・購入動機・問題認識などかなり詳細な項目を調査しています。例えば、次のようなことも推計ができます。
◇投信の積立投資を行っている人は=221万人←(個人投資家数2,302万人×投信の保有比率50.8%[調査①]×投信の保有者のうち積立投資の利用者比率18.9%[調査②])
この内、約7割が証券会社・銀行・投信運用会社直販での毎月積み立てですが、残り3割は確定拠出年金(日本版401K)や財形貯蓄によるものです。後の方の数値はすこし少ないように思いますが、毎月給与天引き分の個人の認識率は落ちるのかもしれません。
◇インターネットを使っての投資利用者数は=※←(20歳以上の人口10,483万人[政府推計2013年9月]×金融取引におけるインターネット利用率31.3%[調査②]×各種金融取引経験者比率[調査②])
※株式もしくは債券投資でのネット利用経験者数は=2,070万人(ネットでの金融利用者全体の63.1%)
※投信でのネット利用者数が=485万人(ネットでの金融利用者全体の14.8%)
※FX取引でのネット利用者数が=249万人(ネットでの金融利用者全体の7.6%)
すこし一般的なイメージより多いような気もしますが、以上が個人投資家の全体像になります。

ただし、証券会社や金融機関が知りたいのは個人投資家の投資ニーズであります。上記のような業界団体の調査は毎年行っているので、各ヒアリング項目でどの様に変化しているか見ることで、個人投資家の課題が推測されるかも知れません。年齢・性別・保有金融資産額・ネット利用などでヒアリングする個人の属性でも大まかなことは分かりますが、個人の投資行動を推し量るのであれば、投資目的に分けた調査も必要ではないでしょうか。その事は、また次回に。
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証券会社のSNS利用(10月3日)
 標題からお読みいただいた方には申し訳ありませが、結論から申して“あまり進んでいない”ということです。それでも書いたのは、世の中のSNS(ソーシャルメディア)に対する期待値が高いからです。例えば、総務省の“情報通信白書(平成25年版)”ではスマートディバイスでSNSの利用は増え、ビックデータやクラウドコンピューティング、4K・8K(次世代放送サービス)とともにスマートICTが日本の成長を加速する鍵となると唱っています。

 しかしSNSへの参加は個人が行うなら未だしも、企業や従業員として行う場合、規制業種の証券業(他の金融関連業務も同様に)は制約を受けます。例えば、
・A証券がフェースブックである金融商品の情報を流したとします。
・Bさんが“いいね”をクリックしました。
・Bさんは、A証券の従業員でした。Bさんのフェースブックの友達は、BさんがA証券の従業員と知っている人もいれば、知らない友人もいます。

 証券会社の従業員が金融商品を薦める時、その行為を規制するルール(行為規制)があります。例えば、その人のリスク負担にあった金融商品を販売することを求める“適合性の原則”、ちゃんと説明しなければならない“説明義務”、実際に契約する前と後に決められた書類を交付する義務などですが、Bさんが例えSNS上であっても特定の誰かに金融商品を勧誘する時、これらの義務を負う事になります。
しかし、“いいね”をクリックしただけでは勧誘とは言えないと思うのが一般の感覚ですが、クリックした後、誰かとSNS上で遣り取りした場合は、どこで勧誘行為としての線を引くか難しいところもあります。
対面営業の従業員はいないネット証券では、これらのことウェブ上で投資家に伝えなければならないので、実質的な行為規制は、広告規制として相当部分が取り込まれています。

 さて、現状の証券会社のSNS利用はメディアの一つとして顧客向けの情報発信に徹しているおり、従業員が自社のSNSで発言することは殆どが社内ルールで禁じています。つまり、勧誘行為にならないよう注意深く使っているということです。また、顧客サービス(例えば富裕層向け)の為に投資や金融商品と全く関係ない情報を、SNSで流すといったことも行われています。(この目的は、富裕層など特定顧客とのコミュニケーションの頻度を上げ、顧客個人のイベントに絡んでいくことです。)

 時代の進化の産物であるSNSを、証券会社の本業である金融商品の勧誘に使ってはいけないのでしょうか。IT企業の方やコンサルチング・ファームの方々は、新たなマーケティング・ツールとしてSNSを使いこなす提案を金融機関に行いますが、現実の証券会社では、今それを避けているように思います。

なお、米国の金融自主規制団体(FINRA=Financial Industry Regulatory Authority)によるSNS利用の自主規制ガイドラインは、次の様なものです。(野村総研資料より、筆者が簡略化。ベースはRegulatory Notice 10-06)
・ソーシャルメディアでの会話内容を記録・保存する。
・ソーシャルメディアで推奨する場合も、相手の負えるリスクや投資目的を確認する。
・ブログの更新は広告とみなされ、会社としての事前のチェックが必要。
・インタナクティブなコミュニケーションは、会社として監督する必要がある。

 なかなか日本で実行するは大変な様に思えますが、証券会社サイドでのSNS情報管理を容易にするクラウドコンピューティング・ツールがIT企業より提供されるでしょうし、SNS利用ニーズも高まれば証券会社の負担が少ない自主規制ルールも準備されると信じています。


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個人の金融資産と海外投資の概要(9月19日)
現在は、証券会社によるNISA口座獲得競争が激しく、久しぶりに業界を挙げての新規顧客開拓が行われています。長い間の課題になっていた“貯蓄から投資”を進める為に、NISAが普及することで大きな効果が期待されています。

 さて、足元の個人の投資家活動はどうなっているかですが、9月19日に公表された日銀資金循環統計速報版では、再び現預金が増加しています。6月末の状況は、本年3月末より12兆円の増加ですが、リスク資産の方は、全体の14.5%で3月末と余り変化はありません。なお、株式は3か月間で5兆円増加し129兆円となっています。これは、1年前に比べ31.4%の増加で株式市場の回復が影響しています。
個人の外貨建資産の方ですが、こちらは3月末に比べ1.1兆円の減少で、特に外貨建投資信託と外債などの利食い売りが出たようです。円安の進行が一服した影響のように思われますが、1年前に比べて大きく円安が進んでいる割には、外貨資産が増加していないのは気になるところです。

一方、投資信託による海外投資の動向について最近の投信協会の統計データから見てみますと、8月末の状況は、3ヵ月前(5月末)に比べて米国株式や米国リート・豪州債券・ブラジル債券などに利食いが入り、それぞれ1割以上の減少となっています。

NISAは、投資による国民資産形成を目指している面もありますので、今後は日本株式のみならず債券・投信のリスク資産が増加し、現在は個人金融資産全体の2.4%しかない外貨建資産も、大きく伸びることが期待されます。

☆個人の金融資産と海外投資動向
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株式市場の次なる進化への取組み(9月3日)
 株式市場だって、時代の変化に合わせて進化します。
そのことの現状を、ざっと俯瞰していただきたく、以下に纏めました。

☆株式市場の次なる進化への取組み
・インフラ進化とその背景
・取引ルールの変化
・取引所上場の概況
・市場の裾野拡大について

最近の市場進化の特徴としては、HFTなどの超高速取引がありますが、一部の投資家しか利用できない超高速取引を、市場の進化として捉えるためには、HFTを利用しない投資家がその機能と実態を理解する必要があります。また、その為に取引ルールが変わるということもあるでしょう。
一方、新興企業や外国企業の上場増加への取組み以外に、様々な投資対象をETF・ETNで上場させるというのが、取引所の世界的なトレンドになっていますが、デリバティブの様なETFもあり、個人の投資スタイルや個人トレーダー層の在り方も変わりつつあります。

その為、市場仲介者としての証券会社の役割は、より多様で複雑になってきていますというのがオチですが、・・・
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個人の海外投資動向について (8月15日)
 アベノミクスは、日本の株式市場に大きな影響を与えましたが、個人の海外投資にどの様な影響を与えたかを見直しますと、現状では以下の通りです。

☆ 個人の海外投資動向(2013年7月末の状況)

【FX取引】
 今や外国為替取引の四分の一が、個人を中心としたFX取引のカバーと言われ、その影響力も大きくなっていますが、
○7月の売買高も400兆円(店頭FX取引)を超えて、アベノミクス相場以前の3倍程度の高水準が続く
○円売りポジションに関しては、一旦6月に減少したものの、再び増加へ
○通貨別では、ドルのロングポジションの高水準が続いている
○ユーロ売りのポジションが減少したが、直近対ドルでショートする傾向が出始めている

【投資信託を通じた海外投資】
○米国経済の回復に合わせ、米国投資が大きく増加
(昨年の11月から本年7月にかけ、株式36%・債券27%・リートなど33%、対円資産が増加している)
○オーストラリア債券・ブラジルや中国株が売られている
○5月以降は、新興国投資が滞っている

【外国株・外債投資】
○アベノミクス相場で、外国株投資が増加している訳ではなく、逆に4月以降は売り越し
○月間の外債買い越し額は3~4000億円と通常ベースだが、取引量が倍以上に増加

以上の一言コメントです。
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未公開株投資の実像と増加策 (8月13日)
未公開株に関する詐欺的行為が断たれない一方、創業や新興企業に対するリスクマネー供給の重要性は一層高まっています。クラウドファンディングも新グリーンシートも重要なのですが、これらは投資インフラの問題であって、そもそも未公開株投資を増加させる為には何が必要なのか。成長戦略としての未公開株投資の推進策が望まれます。

 先ず、個人の未公開株投資の実像について、本年2月時点で経済産業省の依頼により野村総合研究所が行った調査から以下の姿が浮かびあがります。(調査対象は、ベンチャー企業投資を行った経験がある企業経営者や個人投資家協会のメンバー)

・年収2000万円以上
・金融資産1億円以上
・経営者・会社役員(男性で比較的年齢が高め)
・起業経験者
・株式や投資用不動産など他のリスク資産も保有

【未公開株投資の実態】
・未公開企業への投資数は、約3割が3社以上の未公開企業への投資を行っている。
・実際の投資のきっかけは、77.3%が投資先からの依頼によるが、一方11.3%は自ら投資先を探していた。
・未公開投資の際の評価項目では、勿論一番重要視されるのが企業の成長力だが、経営者に対する評価や関係を重視するものも多い。
・投資決定理由で最も多いのは、「企業の成長プロセスを楽しみたかった」で44.4%。
・未公開株は、72.8%の投資家が持ち続けている。
・売却した場合の価格は、約半数が購入価格以下だが5倍以上になったものも12.5%ある。(値が付かないものも同比率)

【エンジェル税制について】
・エンジェル税制の活用状況は、同税制を認知している人の29.5%に留まる。
・活用内容は、年間の他の株式譲渡益からの控除(優遇措置B)が3.8%に留まり、総所得からの控除(最大1000万円:優遇措置A)75.9%となっている。
・企業側、投資家とも手続きが煩雑で、分かり難いとの評価がされている。
・エンジェル税制の利用者であっても、自社への投資も対象になることの認知している投資家は29.7%に留まる。

【未公開株の投資増加策について】
・同アンケートによると、未公開株投資を行わない投資家サイドの理由として、投資先企業の情報が無い事・投資先の評価を行うことが出来ないこと・株式を売却できないことなどが上位にあげられている。現在、中小機構が行うベンチャー投資情報共有プラットフォームが開設後2年目に入ったが、これらのインフラの充実で、ベンチャー企業情報が投資家サイドに提供されることが望まれる。
・エンジェル税制の手続きの煩雑さが指摘されているが、ベンチャー企業などが初期段階で接することの多い政府系金融機関や支援組織なので認知を徹底させてはどうかといった意見が、上記調査の報告でなされている。
・ベンチャー投資関連3団体による提言として、法人版エンジェル税制(課税所得からの控除やベンチャー企業の製品・サービス利用に対する優遇税制等)の導入を求めている。

 最後に、増加策に対する筆者の個人的な感想ですが、エンジェルはやはり個人(若しくは個人が設立した基金 等)の役割で、個人が行う一連の投資行動の中で、促進策を考えていくべきではないでしょうか。例えば、証券会社が富裕層ビジネスの一環として、ベンチャー企業情報・税制活用・投資リスク管理などのサポートを行い、これに対して対価を得る仕組みが可能になれば、未公開企業への投資が今以上に拡大する可能性は大きいと考えます。(現在は、証券会社における未公開株投資は、自主規制によって殆ど取り扱われていない状況です。)
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HFT(超高頻度取引)の功罪 (8月6日)
ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)の進歩は、金融取引の有り方を大きく変えましたが、その代表的なものは売買注文の発注・取消ルールを一定法則(アリゴリズム)でプログラミングし、それを実際の取引システムにおいて超高速で執行するHFT(High Frequency Trade=高頻度取引若しくは超高速取引)ではないでしょうか。

 例えば、米国株式市場においては、HFTによる取引は全取引高の6割を占めていると言われていますが、日本の株式市場においても5割を超えてきたようです。(※東京証券取引所の公表資料では、昨年10月~12月期においてHFT取引を行うコロケーション・サービスを利用した取引が、全取引量の5割を超えました。)

 また、外国為替取引市場においても、取引の3割を超えてきたようです。(Celent調べ、なお外国為替市場の直接参加者は金融機関等で、概ねプローカー・若しくは相対の電子取引で行われるものを指す。)この外国為替取引の個人向けサービスであるFX取引においても、HFTは行われているようで、最近のニュースでは、FX各社は個人トレーダー層が行う超高速取引の一部を制御する方向に転換したことが報じられています。

 個人の金融取引までにHFTの影響が及び始めていることに、率直に驚きを覚えます。勿論、大々的にシステム投資を行って実行する株式のHFT取引と、FX取引における現在の超高速取引は異なりますが、取引の根底にある短期的な鞘取り行為や注文を細分化するなど基本的な考え方は同じです。筆者は、システムに関しては専門外ですが、前述のFX取引における超高速取引制御の背景を簡単に纏めてみました。

●先ずFX取引における超高速取引(超スピード取引、HFT取引と呼ぶ場合もある)の基本的な注文方法は次のようなもの。
・売買注文を発注画面で入力したら、その反対売買も同時に同一の画面で入力。注文を受けるFX取引会社では、これを一つの注文として扱う。
・注文した売買の価格が、実際の成立した取引と異ならないように、許容可能な価格幅(ゼロにすることも可能)を設定。このことで所謂スリッページを防止する。
・以上の注文を売買単位を細分化して大量に発注する。
・注文発注は、個人トレ-ダー側が準備した発注ソフト(システム)によって行われることもある。

●上記の注文を受けるFX各社は、店頭FX取引なのでカバー先の金融機関等に取り次ぐことになるが、FX各社の取次ぎシステム、金融機関側の受注システム双方にシステム負荷が増す結果となっている。

●その為、他の利用客にも提示する取引価格が急変したりするケースが増加している。

●FX各社は、取引所とは異なり超高速化のシステム投資を行うメリットがないため、結果として超高速取引を制約(売買スプレットを拡大する等)する方向に動かざるを得なかった。

 上記のことは、FX店頭取引における超高速取引における動向ですが、株式市場の方は、HFT取引は流動性を増加させるとして、この取引に対する対応を強化する方向です。その為、現在の取引システムのスピートを2年後には2倍以上にアップさせることを計画してます。(日本取引所中期経営計画 等)

また、株式市場においてはHFTの影響は中立的ではないかとの見方が主流になっています。
(ご参考:日銀レビュー“株式市場における高速・高頻度取引の影響”2013年1月)

しかし、株式市場に時として起こる短期間の急変などを考えると、HFTのアルゴリズムが短期的に一方的に偏る可能性も否定できないと筆者は考えます。また、HFTの短期的な鞘取り行為が、市場で中立である為には、取引参加者の多様性が確保されることも前提の様に思います。

 いずれにせよ、HFTを市場のイノベーションとして受け入れる為には、HFT利用者以外に対して、HFTの取引情報を公表していき、他の投資家がHFT取引に対して自らの判断が出来るようにする必要があるのではないでしょうか。
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株式市場の進化について(7月17日)
一言でいうなら、インフラの充実と多様性ではないかと考えます。現在おきている日本の株式市場の進化について、以下のように主要項目別に見てみました。

【インフラ】
 言わずもがな取引の超高速化は進んでいますし、これからも進むでしょう。取引スピードで言いますと、ミリ秒単位のスピート競争(グローバルな取引所間)から既にマイクロ秒の競争に移行しているようです。
何故、このような競争が世界の取引所間でおきるかと言えば、各取引所によるグローバルな投資家の争奪ですが、背景としては指数やETFによって、各市場において似たよう投資対象が上場しやすくなっていることも大きく影響しています。

 また、取引スピートが上がれば当然取引関連情報の伝達スピードがアップします。その為、取引スピードを重視する投資家に対して、専用サーバーを取引所システムの近くに設置するコロケーションサービスが強化されてもいます。

 一方、これらの取引インフラ機能強化とは直接関係ない個人投資家に対して、超高速取引のHFTやコロケーションサービスを利用したアルゴリズム取引の状況をどの様に伝えるかが課題になっています。例えば、超高速で注文発注やその取り消しがされる銘柄に対して、専用ウェブ上でその注文状況の変化やその可能性について視覚的に見せる取組みが試験的に行われています。また、将来的にはHFT取引がどの程度のシェアを占めているか個別銘柄の情報開示が求められるかもしれません。これらは、取引参加者(投資家)の多様性を維持するために必要な対応になります。

【取引ルール】
 本年1月より信用取引の保証金利用緩和が行われ、同一の保証金を使って日中に複数回の信用取引を行うことが可能になっていますが、空売り規制の改正により、原則信用取引の売り下がり禁止が原則撤廃されます(本年11月目途)。これにより、個人投資家が利用する信用取引の利便性が向上し、信用取引の拡大や利用の多様化が図られるはずです。しかし、この問題を詰めて考えていきますと、信用取引は市場に注文を取り次ぐ証券会社が、投資家(主に個人)に対して、お金か株式を貸し、信用リスクを管理していくビジネスという事に思い至ります。株式を貸すためには貸株市場(制度信用の場合は、証券金融会社)より調達することになりますが、この株式調達力については証券会社間で相当の差があります。結果、個人投資家が信用取引を使って売る事が出来る銘柄数に差があるのが現状です。

 今後、信用取引機能の拡充や空売り規制改正の目的を考えていくなら、貸株市場(金融機関間の店頭市場)の情報をどう個人投資家レベルまで開示し、また個人投資家を主体とするネットやリテール証券が株式を調達しやすい仕組みができるかが課題になるように思います。

【上場の変化】
 世界各国の取引所動向でいいますと、多様なETFを上場させて内外の投資家売買を取組むというのが潮流になっています。勿論、自国の成長企業にリスクマネーを供給する為、上場企業数を増加させていくということは資本市場としての大命題です。しかし、通常の新規上場企業と異なり、企業内容審査などが必要ないETFは、始めから内外機関投資家の売買参加を想定したものが大半です。言い換えると、取引所にとっては、売買高が期待できる上場商品となります。日本市場では、東証・大証合わせても150銘柄程度ですが、欧米では1000を超える銘柄のETF(ETNを含む)が上場されています。逆に言いますと、日本市場ではETFに関してまだ伸び代があるとも言えますが、増加が期待される投資対象はグローバル投資やレバレッジ投資に関するものです。

【市場の裾野拡大の為に】
 長期的には影響の大きな問題なのですが、上記の3つに比べ市場関係者(証券会社や金融機関等)の動きは活発ではありません。例えば日本市場の裾野拡大として考えられるのは、地方取引所の新興市場、プロ市場、グルーンシート市場、ベンチャーファンド間の情報交換プラットフォームなどが考えられますが、個々の案件(ディール)の規模が小さい為、対応能力や組織的インフラを保有する証券会社や金融機関では逆に出がけ難いのが現状です。これを活性化するためには、小規模な専業者の参入を認めたり地方証券会社の参加ルールを緩和すること、裾野拡大のインフラコストを業界全体で負担する仕組みを作ること、などが考えかれますが、一方投資家として参加する個人の場合は、リスクを限定するような仕組みも必要です。

☆株式市場の進化について
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本年前半の世界の株式市場~海外からみたアベノミクスの影響は(7月15日)
今年も、もう半年が過ぎましたが、世界の株式市場の中で日本市場はどう変化しているかということを、取引面で見直してみます。

 先ず、本年前半の世界の株式市場は、前年同期(2012年1~6月)に比べ売買金額が5%増加(米ドルベース)しています。地域別の内訳をみますと、アジア・太平洋地域が日本・中国本土を中心に32.2%増加していますが、南北アメリカは6.1%減少し、欧州・中東なども同率の減少となっています。
 各取引所別では、東証が89.34%、ジャスダックを含む大証が157.4%とアベノミクスの影響で取引高が膨らんでおり、世界市場での日本株取引割合が13.0%まで上昇しています。(※昨年11月時点(月間)での、世界市場に於ける日本株売買は金額ベースで7.9%)

 一方、時価総額ベースでは米国市場の堅調さや中国市場の下落を示すものになっています。6月末の時価総額は世界全体では56兆1061億ドルと1年前より12.4%の増加ですが、個別にみるとNY市場が20%、ナスダックが17.4%、東証が18.9%の増加ですが、上海は5.5%の減少となっています。欧州債務危機の再燃不安が払拭されない欧州も、意外に堅調で各国2割前後の増加なので、先進国市場が現在の市況をリートしていることが分かります。

 また、海外企業の上場数が少ないというのも東証の特徴になっていますが、今後の規制改革等で伸び代が有る部分という見方も出来ます。

☆2013年前半の世界の株式市場
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リスクオン相場で個人の海外投資はどう変わるか(7月2日)
 昨年の11月から始まったリスクオンのアベノミクス相場。その中で、個人の投資活動の主流と見られる海外投資関連において、何か変わって何か変わらないか。そして、それらに関与する金融関連ビジネスにおける変化は、若しく変化の可能性はどの視点にみられるか。金融商品取引業関係の方々に、少しビジネスの先行きをお考えいただきたく、現状を纏めてみました。

☆リスクオン相場で個人の海外投資はどう変わるか
・アベノミクスの影響(最近の個人海外投資)
・投資手段の多様化とその進展
・投資インフラと証券会社の事業戦略
・収益性向上へ向けた証券ビジネスへの取り組み

情報を取り扱う証券関連ビジネスは、いつもイノベーションのおきる機会(チャンスがあるということを、期待しています。
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個人の金融資産と海外投資の概要(6月21日)
 アベノミクスが個人の投資にどの様な影響を与えたか、今後様々な検証がされることと思いますが、第1ラウンド(多分昨年12月から本年5月)まででの影響について、いくつか触れておきたいと思います。

 6月19日に公表された日銀資金循環統計速報版では、個人金融資産において久しぶりに現預金が減少しました。本年3月末の数値は、848兆円で昨年12月末に比べ6兆円の減少となっています。これが、アベノミクスによる成長戦略に期待した個人のリスクテイクの兆しとなることを期待しています。リスク資産の本年第1四半期の変化をみれば、債券は変わりませんでしたが、投資信託が10兆円・株式などが18兆円の増加となっており、株式市場の上昇を反映したものとなっています。ただし、それでも、欧米の個人リスク資産の状況からみると、個人の金融資産全体の14%程度と相当低い水準(米国の54.1%、ユーロ圏の28.6%)です。逆に考えれば、それだけ個人の投資について“のびしろ”があるということかも知れません、

一方、個人の海外投資に関して、全体では外貨資産が3月末で37.9兆円と3ヵ月間で1.5兆円増加しています。その内訳は、外貨建投信が2.5兆円の増加となったものの、外貨建証券は1兆円減少しており、主に個人の外債投資などの利食い売りが出たようです。アベノミクスにより、個人のリスク資産投資が増え、その中で海外投資も増加していくのが理想ですが、成長戦略に対する評価が定まるには少し時間がかかるようで、相場の第2ラウントを待つ必要がありそうです。

☆個人の金融資産と海外投資動向


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改めてプロ市場の機能を考える(6月5日)
6月4日、プロ投資家向け市場「TOKYO PRO Market」に4社目の上場となる“碧”が上場しました。同社は、沖縄県などでステーキ店を展開していますが、2~3年後に東証マザーズへの上場も目指す経営者のコメントも伝えられています。この銘柄の上場は、証券会社以外で初めて上場審査を行った株式会社OKINAWA J―Adviser(沖縄県産業振興公社などが出資)の件でも注目されますが、このことは別の機会にふれるとして、改めてプロ市場の機能について考えたいと思います。

 証券取引法が、現在の金融商品取引法に替わる時(2007年9月末施行)、資本市場関連ではファンド関連(集団投資スキーム)が整備され、市場に関連した業者も基本的には参入が緩和方向でした。プロの投資家(特定投資家)に限ったプロ市場の開設もこの時に認められましたが、実際の市場開設は2009年6月に東証がロンドン取引所との合弁(2012年3月に合弁解消で東証の100%子会社の取引所)でTOKYO AIM(現在のTOKYO PRO Market)を設立し、2011年7月にメビオファームが初めて上場されています。同市場のお手本となったのは、ロンドン証券取引所の新興市場AIM(Alternative Investment Market)ですが、新興企業に不足しているディスクロージャー態勢をサポートしたり、流動性(上場後の売買)の向上の為の仕組みなどが工夫されています。

☆TOKYO PRO Marketの基本構造と機能、プロ投資家

 先ず、このプロ市場の参加者ついて簡単に説明しますと、通常のプロと呼ばれる運用会社や金融機関などの適格機関投資家だけではなく、法人や金融資産を3億円以上保有する個人も、証券会社に申し出ればプロとして認定され、プロ市場で売買することが可能です。勿論、プロ市場に上場する企業の個人株主は、売却注文を出す事も出来ます。

 次に、プロ市場の基本構造は、通常の新興市場などに比べ、上場企業のディスクロージャー負担が軽くなっており、成長企業などが早期の上場を目指すことが可能です。その為に、プロ市場機能を支える仕組みが準備されており、上場企業を上場準備や上場後のディスクロージャーをサポートするJ-Adviserと、流動性供給に努める流動性プロバイダーが制度化されています。

 最後に、プロ市場の機能についてですが、基本的には一般投資家が参加可能な新興市場と同様です。つまり、価格発見機能・流動性の確保・ファイナンスなどの企業の資本調達ニーズへの対応・企業情報の獲得などですが、プロ市場に上場した企業が、次にどのようなステップアップで成長していくか示すことも重要なことだと考えます。 
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リテール証券2012年度決算の動向~アベノミクスで証券業は変われるか(5月30日)
先に、リテール証券の決算概要を公表しましたが、今後、どの様な成長戦略をとっていくのか探る為に、背景や各社の動向などをコメントしました。

☆リテール証券2012年度決算の動向~アベノミクスで証券業は変われるか

各社の決算資料を読み込んでみて、筆者の感想を以下に述べます。
(※ディスクロージャー姿勢の感想なので、投資判断にはお使いにならないで下さい。)

【大手3社】
・野村=中堅証券以下で、野村のリテール戦略を参考にするところは多いのですが、リーマン買収後、ディスクージャーに関してはホールセール(つまり買ったリーマンの効果を示す部門)の戦略アピールが多かったように思います。しかし、昨年の経営トップの交代で、全体の開示バランスは取れてきたように思います。リテール営業は、それなりの規模と機能なので王道をいくという感じでしょうか。
・大和=それなりの事業戦略を書き込んでいますが、リテールについては外国株式やSMAなど投資一任口座の獲得に力点があるように思われます。
・SMBC日興=過去は特色あるリテール戦略が示されていましたが、銀行色が強まってからその部分が縮小し、銀行との連携強化に開示の力点が置かれるようになりました。

【銀行系証券】
・統合などを重ねているので、リテール証券部分に関しては、銀行グループ全体のディスクロージャーに埋没しているような印象が強まりました。

【ネット証券】
・各社とも特色のあるディスクロージャーを行っていますが、今回の開示資料では、楽天の開示が今までのグループ全体から証券戦略を丁寧に書くようになりました。一方、GMOについては、証券事業での開示部分が大きく減ったように感じます。

【中堅以下のリテール証券】
・開示内容に関しては、同業(他の証券=ターゲットは中小・地方証券)との提携強化を事業戦略にいれるところが増えてきたように思います。東海東京・岡三・いちよし・丸三・極東・藍澤は、ディスクロージャー内容がそれなりですが、その他のリテール証券は、せめて決算説明資料を作成して欲しいという思いがいつも出ます。
 
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2013年3月期リテール証券決算概要について(5月24日)
 少し遅くなりましたが、リテール証券会社の決算概要を纏めましたので公表します。
(※リテール証券の業務内容を知っていただくためのものなので、投資判断等にはご利用にならないで下さい。別途アナリストが作成する資料をご参考に)

☆リテール証券主要20社の2013年3月期決算概要

・収益面は、概ね2~3割の増収となっている。
・株式委託手数料は各社とも大きく伸びており、特に対面営業を主体とする証券会社の増加が目立つ。
・投信販売は概ね増加しているが、大和・SMBCフレンドは減少している。
・株式投信の残高増加に関しては、野村・大和は増加しているが、その他対面営業中心の証券ではまちまち。ネット証券では、投信の販売額・残高とも少ないが、残高増加傾向は続いている。
・外債販売もまちまちで、藍澤・マネックス・極東などが大きく販売額を増加させている。
・表ではわからないが、対面営業での外債・外国株式の取り扱い増加、ネット証券での店頭FXの取り扱い増加で、トレーディング益を拡大している証券会社もある。
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アベノミクスでFX取引はどう変わるのか(5月22日)
 少し俗っぽい設問の標題ですが、先ず、どう変わっているのか現状を見ていただきたく思います。

☆店頭FX取引におけるアベノミクスの影響

上記の図には、金融先物取引業協会の統計資料を使いましたが、アベノミクス相場が始まった昨年の12月以降、取引量(金額ベース)は増加傾向となり、日銀による異次元緩和が実施された4月には、初めて400兆円を超えています。過去取引が多かったのは、2010年5月のギリシャ危機の時に、一時的に323兆円を記録しましたが、統計を取り始めて5年間の月間平均取引金額は154.7兆円なので、4月の443兆円はこの約2.8倍となっています。
また、円売り外貨買いの4月末ポジションをみると、約2.5兆円の円売りで、これも過去平均の約1.9倍に膨らんでいます。但し、過去の円売り外貨買いの月末ポジション推移をみると、2兆円を超える月は10回あり、この4月が突出している訳ではありません。

以上から推測して、急激な円安によりFX取引は急増していますが、4月末の時点では取引参加者増加はそれ程でもないのかも知れません。なお、通貨別ポジションでは個人のFX取引傾向にも変化は見られませんが、利下げが相次いだ豪ドル買い円売りのポジションの増加は抑えられているようですし、ユーロは相変わらず買われる通貨ではないようです。

 アベノミクスの市場への影響はリスクオンですから、FX取引においてもドルや新興国通貨などに注目が集まることが予想されています。今後、FX取引を起点にして、個人の海外投資ニーズ(外国通貨、外国債券、外国株式など)が拡大することを期待する業界関係者も、また増えているように思われます。
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復活するFX取引、低迷するCFD取引(5月14日)
 4月の日銀による異次元緩和の後、円安が更に進んでいるが、個人のFX取引が通常(昨年の平均)の4倍の水準に膨らんでいることが伝えられている。また円安傾向が続くのではといった見方が大勢なので、外為市場における個人のFX取引の存在感が強まりそうだ。
 ネット証券の決算状況をみても、店頭FX取引の増加による為替益の拡大傾向も定着し、リテール証券では、外債販売強化によって債券トレーディング益を拡大しているところも目立つので、証券会社などは個人投資家のFX取引強化を目論むことも予想される。

 一方、FX取引と同じ仕組みのCFD(Contract for Difference=差金決済)取引は低迷している。
どちらも証拠金を担保に、数倍~数十倍のレバレッジをかけて取引し、反対売買を行ってその差額を決済する。FX取引はその売買対象が外国為替、CFD取引は個別株・株価指数・債券などの金融商品は勿論、金や穀物などもあり、理論的には市場があるものならその対象は何でも可能だ。元々は、大手金融機関などとファンドなどの機関投資家間での相対取引だったが、これが個人向けに小口化してデリバティブ商品として取引が始まった。日本においては、FX取引増加後の4年程前から取り扱われている。
 当初は、個人投資家のデリバティブ取引拡大の為に寄与することが期待されていたが、現状は以下の様なものだ。

☆CFD取引の概況
(日本証券業協会の統計資料を基に作成したので、商品関連CFDは含まれない)

 また、世界的なCFD取引サービスの提供者(ホワイトラベルとして、証券会社などにシステムと取引商品を提供)が日本には4社進出していたが、うちCMCマーケッツは昨年11月、GFTは本年3月に撤退した。CFDを個人投資家に提供する証券会社の方も、大和・SBI・楽天などの大手の撤退が相次いでいる。

このCFD取引低迷の理由について考えるにあたり、いくつかの要因を上げておきたい。

【時期的な問題】
・この4年間は、基本的にはリーマンショック後のリスクオフの時期と重なった為、リスクオンしてレバレッジ投資を個人が拡大する環境とは異なっていた。(現在は違った状況かもしれないが、・・)
・証券会社にとって、ペーパレスや超高速化など源市場でのシステム対応や通常のIT化推進が中心となり、新たな商品へのシステム投資等が控えられる傾向にあった。

【制度的な取組みとマーケンティング問題】
・4年前は、ちょうとFX取引拡大後の弊害が目立った時期で、個人のデリバティブ取引全般に規制強化する方向が行政方針として打ち出されていた。レバレッジ規制・証拠金管理の強化などとともに、CFD取引に対する不招請勧誘規制は徹底された時期でもある。この様に、FX取引の様に拡大する以前にCFD取引はマーケティング手段が限定されていたが、本来個人投資家へのマーケティング活動を行う証券会社なども不況期で、限られた取組みしかされなかった。
 
【代替投資手段の開発・改善】
・例えば海外株価指数や商品指数などのCFD取引が期待されたが、ETF・ETNの商品多様化の中で同様の投資対象となる商品が開発されたり、信用取引制度の利用でレバレッジ取引も可能となっていた。
・また、本年1月からの信用取引制度改善で、同一の保証金(CFD取引の証拠金に相当)利用が複数回可能となったことから、個人にとっての取引所上場商品や信用取引の取引効率が上昇した。

今後、CFD取引がこのまま低迷を続けるのか拡大に転じるかは、個人のデリバティブ取引全体から見直す必要があるだろう。 
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アベノミクスで証券ビシネスはどう変わるのか(5月2日)
 大幅に業績改善した証券会社の決算発表が相次いでいますが、アベノミクスで個人投資家の株式市場回帰が鮮明になりつつあります。

 先ず、市場はどう変わったかですが、取引量は以下の様に拡大しています。

【一日当たりの平均売買代金】現物市場
・東証1・2部合計=2011年度12,893憶円⇒2012年度14,765憶円⇒本年4月34,039億円(前年度平均売買代金の2.3倍)
・マザーズ=2011年度156憶円⇒2012年度236憶円⇒本年4月816億円(前年度平均売買代金の3.4倍)
・JASDAQ=2011年度203憶円⇒2012年度303憶円⇒本年4月1,306億円(前年度平均売買代金の4.3倍)

【一日当たりの平均出来高枚数】デリバティブ市場
※miniを10分の一に換算して合算
・日経平均先物・mini合計=2011年度119,396⇒2012年度153,086⇒本年4月269,465(前年度平均売買代金の1.7倍)

最近は、新興市場での取引拡大が目立っていますが、これらの市場は価格変動も激しく企業規模も小さいのでリスク選好の個人投資家向きといわれています。

以下は、証券会社(大手は、リテール部門)の決算資料などから、この3月末までのアベノミクス効果途中の状況です。

【個人の投資資産はどう増えたか】
・大手のリテール部門の個人預かり資産は、約1割程度増加しています。
・大手ネット証券では、約2~3割の預かり資産増加です。

【証券会社は、個人に何を販売したか】
・個人投資家への投信販売は、概ね2~3割増加したようですが、銀行系証券や中堅証券などの多くは顧客の投信残高が減少したようです。つまり、これらの証券では顧客の投信資産の回転は効いたが、投信販売での新規資金獲得は大きな流れになっていないようです。
・証券会社によって、個人への外債販売に注力したところと、そうでないところに分かれたようです。外債販売注力によって、債券関連のトレーディング益を積みましたというのが、中堅以下の証券会社における収益回復の一つのパターンでした。

【個人の株式売買は】
・一時は2割を切っていた売買委託注文における個人比率も、4月第三週には34%を超えています。
また、売買単価も5割以上(昨年10月比較)上昇しているので、リテール証券会社の収益改善には大きく寄与しています。ただし、一部ネット証券では、手数料や信用取引の引き下げ競争が続いているので、それほど株式関連収益が伸びていない証券会社もあります。また、東南アジア株式の取り扱いを増加させ、為替や株式トレーディング収益を拡大させている中堅証券会社の動きも目立ちました。

 リテール証券会社にとって、まだアベノミクス効果の影響は始まったばかりかもしてませんが、個人投資家のニーズに合ったサービスや金融商品を提供するのは当然の戦略です。  
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こうあって欲しい日本版ISA(4月30日)
 日本版ISA(少額投資非課税制度)が、証券や運用会社で盛り上がっています。この制度は、来年1月から個人が利用できる非課税の投資制度ですが、本年10月から証券会社や金融機関に口座開設することができます。その為、この専用口座獲得に向けて口座開設事前予約というキャンペーンをネット証券が始めたり、運用会社が専用サイトを立ち上げて個人向け情報提供を強化したり、証券業協会などが同制度の愛称を募集したり・・

 同制度の簡単な解説は、拙稿“日本版ISAは、個人の投資に何をもたらすか(2月7日)”に記載しましたので略しますが、利用する個人の視点からみて、同制度がこうあって欲しいと思う点をあげてみました。

(※同制度は、個人の株式等譲渡益課税の軽減措置(原則20%を10%に軽減)撤廃に合わせて、暫定的に導入された経緯があります。今後、“貯蓄から投資”政策の推進や、投資による個人資産形成の為の制度として、整備・強化されることを期待しています。)

【個人の資産運用として】
○年間100万円までの投資に関して、5年間の運用期間中の収益が非課税となりますが、現制度案では当初投資したものを売却してしまえば、この非課税処置は終了となります。個人投資家が、この非課税枠を期間中フルに利用しようとすれば、5年間売却せずに元本部分を保有し続けるような投資信託などの金融商品が適しているかも知れません。しかし、個人の投資家を育てて個人からのリスクマネーの供給を拡大させるのであれば、この非課税制度を期間中は何度も利用して投資効率を上げる制度の方が個人にとってはベターです。よって、運用期間中は売却後の再利用も可能な非課税枠が好ましいと考えます。

【個人の資産形成として】
○投資による資産形成として、現行の制度では日本版401Kや財形貯蓄がありますが、これらの制度は個人が所属する企業が制度参加する必要があり、かつ利用できる金融商品も限定されています。しかし、日本版ISAは、20歳以上の方々(居住者)なら誰でも利用可能な制度です。非課税である以上、年間投資額や投資元本総額に上限は必要だと思いますが、非課税の運用期間を10年にしたり、投資総額を現行の500万円(年間100万円×5年)から1000万円に引き上げれば、個人にとって非課税投資による資産形成のイメージが強まります。

【個人利用の利便性向上のために】
○日経の報道によれば、2014年から始まる日本版ISA制度で、2015年には同制度の非課税口座を金融機関間で移管可能にするということです(今年度の税制改正要望で金融庁)。現行制度では、個人が1度金融機関に設けた非課税口座は、移管不可能ですし、かつ次の年に違う金融機関に新たな非課税口座を開設しようとうした場合、もう一度居住者証明のような必要書類を個人が用意する必要があり、個人にとって手間のかかる作業となります。つまり、一度同制度の口座開設作業を個人にしてもらえば、金融機関にとって顧客として囲い込みやすくなります。その為、口座開設キャンペーンのようなことが今後も強まると予想されます。しかし、利用する側の個人にとっては、いつでも自分にベストの金融機関を選択することで、そのサービスが向上し、同制度利用の利便性は向上するはずです。

 制度には政策目標があるのと同じように、利用する個人にとっても利用目的があります。個人の目的に沿った制度になるよう、業界においては暫定的な制度から、本格的な制度に向けた議論が必要ではないでしょうか。 
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個人投資家の海外投資動向について(4月25日)
 現状の個人投資家の興味の中心は、アベノミックスと日本株動向かも知れませんが、円安傾向を反映して、いずれ海外投資にその関心が向かうことが推測されます。生保などの大手機関投資家も、運用の配分で外債投資を増やすことが報じられていますが、実際の個人投資家の海外投資動向について見直してみたいと思います。

☆個人投資家の海外投資動向について
(※財務省の国際収支統計“対外証券投資”の金融商品取引業者(証券)経由分からの推測)

・2012年度の個人投資家による外債投資買い越し額は5兆867億円と、ほゞ前年度と変わらない水準ですが、売買が約3倍となっています。

・2012年度の個人投資家による外国株式投資動向では、買い越し額が2,557億円と前年度の377億円に比べて大幅に増加しました。

 実際に、中堅や地方の証券会社においても、東南アジア市場へのアクセスを強化したり、外国債券の仕入れ強化する為に共同購入を試みたりする動きがあり、個人の海外投資増加を見込んだ対応が強まっています。

但し、海外投資を行っている個人投資家は、証券業協会調査では国民全体の1.7%という水準に留まっているようで、これは株式投資を行う人々の7分の1です。個人の海外投資余地は、まだまだ大きいとも言えますが、問題は個人のニーズに合わせた海外投資情報の提供ではないでしょうか。
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進化する株式売買環境(4月9日)
 取引所の売買システムが超高速化したり、呼値が細分化されるのは、ハードウェアでの市場の進化でしょうが、取引ルールなどのソフト面での見直しも最近は進み始めており、日本市場はその取引環境においても進化していると言えます。
 そのイメージを、概略図に示しました。

☆日本株に係る売買の環境変化

最近の変化は、主に4つの起点から始まっていると考えます。

・2009年1月~株式の完全電子化=これによって株式の移動(売買以外にも貸し借りを含む)が容易になりましたが、このメリットは海外・機関投資家の貸株市場拡大に繋がり、結果として流通市場の拡大にも寄与したはずです。

・2010年1月~売買取引の超高速化=東証の売買システムarrowheadが稼働し、このシステムに物理的に近いサーバーを、投資家に直接提供するコロケーションサービスが始まったことで、超高速取引(HFT)が本格化しました。このメリットは、アルゴリズム取引を多用する海外ファンドなどが中心でしたが、最近は個人トレーダーの一部もシステム売買を強化する動きもあります。

・2013年1月~信用取引保証金利用制限緩和=個人投資家が利用する信用取引において、同一保証金の日中での複数回利用可能になったことで、市場での個人売買シェアが拡大へ。

・これから、多分2013年11月頃~空売り規制見直し=売り下がりを禁じたアップティック・ルールが原則撤廃される予定です。これにより、個人の信用取引における空売りが行い易くなりますが、課題はその個人の株式を貸す証券会社サイドの株式調達力(貸株市場への参加)にありそうです。

以上の変化を簡単に纏めますと、一昔前ならヘッジファンドのような投資家しか出来なかったことが、個人トレーダー層でも可能になるという事ではないかと思います。これらの変化により、市場参加者の多様化が進むのであれば、その変化は市場の進化とも呼べるのではないでしょうか。
 
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次の1手、資本市場の成長戦略は?(4月4日)
 4月4日、注目されていた日銀の新金融政策“量的・質的金融緩和”が公表され、取りあえずの市場の評価は期待以上ということの様です。特に市場関係者が注目していたリスク資産買入れでは、ETFが1兆円、J-REITが300億円、年間で保有残高を増加(今後2年に渡り)させる事を決定しています。
(ETFは、現在16,010億円の残高、これを2013年末2.5兆円、2014年末3.5兆円へ。現在の取得枠は2.1兆円なので、今後取得上限枠を増加してくると予想。J-REITは、現在1,231億円、これを2013年末1,400億円、2014年末1,700億円へ。)

☆今までの日銀リスク資産内入れ状況

 昨年12月の政権交代から始まったアベノミクスは、“財政出動”“金融政策”“成長戦略”の3つの構成から成り立っていますが、次はいよいよ本丸の成長戦略ということでしょう。その主役は、政府や日銀から企業及び企業活動に移っていますが、市場関係者も単純に政策評価を行い、相場動向に一喜一憂する段階から、その関心が成長戦略に寄与できる資本市場機能という事に移っていっても良いのではないでしょうか。

 政府の産業競争力会議では、新規・成長企業へのリスクマネーの供給について、金融面から以下の3点を検討することが示されています。

◎クラウドファンディング(現在の寄附や協力金主体のものではなく、創業時のリスクマネーを集める為の新しい金融機能として検討。米JOBS法の影響を強く受けている。例えば、証券会社がポータルサイトを運営し、投資家の投資上限などを管理するようなイメージ)

◎地域における資本調達を促す仕組み(未公開株投資市場としては、現在、グリーンシート市場があるが特定の証券会社しか扱っておらず、事実上ファイナンス機能はない。これを発展的解消させ、地元企業のリスクマネーニーズと地域投資家の投資ニーズを、地域金融機関や地域証券などが仲介するイメージか)

◎新規上場の為の負担軽減(現状の金融商品取引法上の開示負担を軽減する措置の検討。例えば、必要とする監査済み財務諸表の必要年数の減少、内部統制報告書作成義務の免除等。)

 全員参加型の成長戦略こそ、持続的で奥の深い“日本再生”への取組みが可能だと思います。その為にも、上記の3点を含めて、インターネット時代に相応しリスクマネー供給の仕組みを、資本市場関係者の皆様が、実務的に検討し実現していく事を信じています。
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個人投資家の実像(3月27日)
 日本証券業協会が個人の投資実態を把握する為、3年に1度行っています“証券投資に関する全国調査
平成24年度調査報告書(個人調査)“が3月22日に公表されましたので、その中から個人投資家の実像を把握する為の資料を下記に纏めました。ご参考下さい。
(なお、ベースになった調査報告は約200ページ近くあるので、簡易に把握する為、弊社で纏めたり加工しています。詳細をお調べの際は原資料へ)

☆個人投資家の実像

また、個人投資家といっても、その投資目的により投資行動や手段が異なりますが、調査資料より便宜的に以下のように分類して集計しています。(個人トレーダー層など特殊な投資家は別途解説します。)
・プレ資産形成層(20~30歳代)
・資産形成層(40~50歳代)
・資産運用層(60歳以上)
 
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個人の金融資産と海外投資の概要(3月25日)
 最近の証券会社株式の上昇を見ていますと、何か個人投資でもレジームチェンジが起きるのかも知れないと期待したくなります。特に、対面営業中心の中小型証券株の上場ピッチは速いものがありますが、実際の変化はこれからかも知れません。

 リーマンショック後、個人のリスク資産(株・債券・投信など)の比率は減少し続けていましたが、3月25日に公表された日銀資金循環統計速報版では、ようやく変化の兆しが見えました。少し前の時期になりますが、昨年末の個人金融資産の中では全体の12.9%と昨年9月末に比べ1.1%上昇しています。但し、米国の54.1%、ユーロ圏の28.6%とは大分距離があります。

 一方、個人の海外投資は昨年末の円安急展開局面において、その内容が変化しているようです。3ヵ月前(9月末)に比べ外債などの海外証券が減少し外貨建投信は反対に増加していますが、海外投資自体はそれ程増加していないようです。
 その増加した外貨建投信における最近の変化は以下のようなものです。
(※投信協会統計資料より2013年2月末と2012年11月末を比較)
・投信を通じた海外投資は、約2.8兆円増加している。
・外国株式への投資は、約6,800億円増加しているが、その7割は米国株式で残りは新興国株式。
・外国債券への投資は約7,700億円の増加だが、投資国に変化がある。
○オーストラリアへの債券投資残高は、7%・約3000億円減少した。
  ○米・ユーロ・新興国債券への投資が増加している。
・REITなどへの投資は、約1.3兆円円増加しているが、その7割は米国REIT。

☆個人の金融資産と海外投資動向
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個人投資家の最近の売買動向について(2月22日)
活況な今の株式市場において、個人投資家の回帰が指摘されることが多くなりました。確かに、個人投資家の売買シェアも3割を超える様な状況が続いていますし、2月に入ってから個人投資家の買い越しも伝えられています。

 ☆個人投資家の最近の売買動向について

この図は、東証の投資家別売買統計から作成しましたが、前週分を翌週の木曜日に公表するものです。
売買傾向を簡単に見直しますと、以下の様な特徴があります。

○当然ですが、個人の売買代金も増加傾向にあります。
○現物取引では、2月第2週時点でようやく買い越しに転じました。昨年の11月国会解散からは、売り越しが続いていました。
○信用取引では、昨年の総選挙後、買い越しが続いています。

円高・大震災後の日本株低迷で、保有株式は大きく下落していた個人投資家は、ヤレヤレの戻り売りが多かったというところでしょうか。一方、信用取引を活用する個人トレーダー層は、総選挙の結果を受けて積極的に売買をしているようです。特に、1月からは同じ保証金を何度でも売買に利用できる信用取引制度に変りましたので、取引が膨らんでいるようです。株式アナリストによりますと、個人でも信用取引を使って個別銘柄のアルゴリズム取引を行う方々が出始めたようです。(最多は、1日に400回売買された方がいるようです。←アナリストコメントより)

ヘッジファンドが使うような売買手法を、個人も使いこなすということで個人トレーダー層が育つこと。
この事は、市場での多様な参加者を確保する為に必要なことだと思います。
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デイトレーダーと環境変化(2月13日)
最近のアベノミックスに後押しされた上昇相場の中で、個人投資家の回帰が指摘されています。市場参加者が増えるのは好ましい事ですし、その中で多様な投資行動をする個人投資家の増加は、市場全体の成長を支えると期待されます。
また、今年から個人が利用する信用取引において、保証金の利用が1日1回転という制限がとれ、反対売買さえ行えば同一の保証金を何度でも利用することが可能となっています。
   
 一方、ネット証券の方は、この機会にデイトレーダーの囲い込み競争が活発化しています。一定額の信用取引では、手数料ゼロキャンペーンが複数のネット証券で実施されていますし、信用取引の金利引き下げ競争も続いています。松井証券の様に、デイトレーダー向けサービスとして、取引が300万円以上の信用取引で、その日の内に反対売買を行えば、手数料も金利(通常の信用取引では、その日に決済されるものでも1日分の金利がかかる)もかからないものもあります。
 多様な個人投資家は、一概に分けるのは難しい問題ですが、証券会社などのリテール戦略のベースに沿って大概に分類してみると、個人トレーダー層・個人資産運用層・個人資産形成層の3階層に分けられます。つまり、個人投資家の投資目的によるものです。

 本題のデイトレーダーですが、このうち個人トレーダー層の中核をなしていますが、どの位の人数かといいますと、推計では個人投資家の0.2%程度・約3~4万人程度とされています。

☆個人投資家で短期売買するものの推計

 この僅か4万人程度のデイトレーダー層を、ネット証券が囲い込もうと競争する訳ですが、先に取り上げました信用取引の保証金制度改革で、このデイトレーダー層の取引は、1日に一回転しか出来なかった時に比べ、5~6倍にも増加しているようです。(1月中旬時点での、松井証券社長のコメントより)
その為、ネット証券としてはデイトレーダーを囲い込めば取り扱う売買量が拡大する可能性が大きくなります。敢えて、信用取引の収益性を下げてまでも、デイトレーダー囲い込み競争を行うのは、売買量増加に伴う以下の様なネット証券側のメリットが考えられます。
○売買量増加に伴いシステム費用などの固定費の負担比率を下げることが出来る。
○大量の取引量を取り扱うことで、売買動向を自社顧客に提供する機会が増え、他の個人投資家の取引を誘引することが出来る。
(注:相場操縦行為の様に、他人の取引を誘引する目的で行う取引行為は不正行為として禁止されています)

 デイトレーダーは、デイトレードで生計を立てる個人投資家という意味も含まれますが、証券会社や金融機関でトレーディングの仕事をされていた方々が、そのままシフトしたのが現在の中核ではないかと言われています。資産家の方々もおられるでしょうし、かってそのイメージが強かったITに強い若い方々のおられると思いますが、それぞれの多様性を保ちながらデイトレーダー層が更に拡大していく為には、以下のこと、ポイントとなっていくのではと予想しています。

○空売り規制の中の、アップテック(売り下がり禁止)ルールの緩和若しくは撤廃
○信用売り銘柄の増加、その為の個人向け貸株制度の充実
○個人向けアルゴリズム取引としての、システム売買の機能強化
○個人のデリバティブ利用拡大の為の、建玉や担保資産のリアルタイム評価と、それに伴う証券会社から個人投資家への信用供与及びリスク管理サービスの提供

 機関投資家(海外投資家)⇒デイトレーダー⇒一般個人投資家へと提供されるサービスや使える機能が拡大していけば、少数のデイトレーダーを囲い込む意味も、また異なったものになると考えます。

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日本版ISAは、個人の投資に何をもたらすか(2月7日)
 株式等の譲渡益課税等に対する軽減措置が撤廃され、来年からは税率が10%から20%に上昇します。この見合いで、少額の投資に対する非課税制度が導入されます。その内容は次のようなものです。

・年間100万円までの投資に対して、非課税口座を金融機関に設けることが出来る。
・非課税口座で利用できる投資対象は、上場株式や公募株式と投信
・利用できるのは、20歳以上の居住者
(これを証明する税務署の書類が必要)
・この口座で投資されるものの譲渡益・配当・分配金が非課税となる
(一旦、売却すれば終了。100万円を超えて再投資されるものは、課税される。)
・最大、5年間口座開設をすることが出来るので、累積投資額は500万円まで非課税
・この制度は、取りあえず10年間維持される
(当初より、限度額100万円を毎年投資した場合、6年目に最初に開設した口座が終了する。その為、6年目に新たに限度額100万円で非課税口座を開設することが出来る。制度が維持されている間は、この様に5年経過した非課税口座の元本部分を使って、口座を開設していくことが可能)

 この制度は、実際に非課税口座を取り扱う証券会社や銀行などにとって、以下の様な影響があると考えられています。

○来年から始まるこの制度は、本年10月から金融機関を通して、税務署に届け出る手続きが開始される。
○一旦、非課税口座を金融機関に開設すれば、その口座を別の金融機関に移すことが難しい制度となっている。
○また、口座開設手続きに必要な税務署から受け取る書類の基準日は、平成25年1月1日となって、次の基準日が平成29年同日(その次は平成33年同日)となる為、少なくとも当初の4年間は同一の書類が利用できる。その為、一旦非課税口座を開設した金融機関を続けて利用する確率が高くなると見られている。
○実際に証券会社や銀行が、個人に対して非課税口座開設の勧誘活動をしていくのは、4月以降とみられるが、主要な投信運用会社では日本版ISA専用サイトの立ち上げが早々と行われ、個人投資家に向けた情報提供と制度浸透の為の啓蒙活動を行っている。
○制度上から主要な投資商品は投資信託が中心になると予測されているが、投信の運用会社にとって直販を拡大するには良い機会とみられる。

 また、この制度に合わせた投資対象が金融商品の供給サイド(証券、銀行、運用会社)でも検討され、個人に向けたプロモーション活動が活発化することも期待されています。

○株式に関しては、高配当や高成長が予想される銘柄での投資に利用されることが期待される
○投信に関しては、分配金重視よりは基準価格の上昇を優先させる商品設計が予想される

 最後に、この制度の見合いとなる譲渡益の軽減措置が終了する影響について触れますが、税率アップを睨んで、本年末の株式市場に向けて売却ニーズが顕在化してくるかも知れません。しかし、実際は株式よりも投資信託の解約ニーズの方が大きくなる可能性もあります。

税制の変更を睨んで、投資家の要望にあった投信の乗換えスキームを提供する業界の逞しさに期待しています。
 

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2013年の日本市場を瞰る(1月31日)
 少し遅くなりましたが、2013年の日本市場を見直していただきたいと思い、纏めました。
ただし、市場の先行き予想ではありません。市場がどの様に変化しているか、少し目元から離し、改めて瞰ていただければ。

☆2013年の日本市場を瞰る
○取引インフラはどう変わるか
○市場ルールの変更と期待される改善
○市場を動かす要因
○個人投資家は、どう変われるのか

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活するIPO市場、望まれる新興市場裾野拡大(1月23日)
政策期待で上昇した株式市場も、政府・日銀の物価目標2%などの共同声明で、今後は政策実行力に投資家の注目が集まりそうだ。久しぶりに日本の政治が注目を集めているが、グローバルに日本そのものが見直されていく事を期待したい。

 ところで、新規に株式市場に上場するIPOの方も復活している。新興企業の不正会計問題やその後の金融危機の影響で、IPO数は大きく落ち込んで2009年には19社まで減少したが、昨年は46社とリーマンショック前の水準まで回復した。また地方の新興市場でも、札幌証券取引所は約4年3ヵ月ぶり、福岡証券取引所は約5年4ヵ月ぶりの新規上場があった。

市場関係者の努力もあるが、クラウドサービスやソーシャルネットワークサービス(SNS)が普及し始めたことで新しい企業群が成長しつつある。昨年のIPO市場の概況については、あずさ監査法人が以下の様にまとめているので、ご参考にしていただきたい。

☆2012年のIPO動向について(1月11日、あずさ監査法人)

昨年上場した主要な企業をビジネスモデルことに以下の様に簡単に紹介している。
 (1)『既存の事業分野において、独創的、革新的な取り組みを行っている会社』
 ライフネット生命保険(M:生命保険業)
 日本エマージェンシーアシスタンス(M:医療機関等の医療アシスタンスサービス等)
 エー・ピーカンパニー(M:外食店舗事業及び地鶏や鮮魚等の生産流通事業)
 モバイルクリエイト(M:各種通信網インフラを利用した移動体管理システム提供)
 ユーグレナ(M:微細藻ユーグレナを活用した機能性食品の製造・販売等)
 シュッピン(M:インターネット等における中古品の買取と販売等)
 地盤ネット(M:住宅地盤の調査、解析及び地盤品質証明サービスの提供)

(2)『SNSプラットフォームを事業基盤とする会社』
 アイスタイル(M:化粧品口コミサイト運営事業等)
 エイチーム(M:ゲーム・デジタルコンテンツの企画・開発及び運営等)
 エニグモ(M:ソーシャル・ショッピング・サイトの運営)
 トレンダーズ(M:ソーシャルメディアマーケティング事業等)
 enish(M:ソーシャルアプリの企画・開発・提供)
 コロプラ(M:位置情報ゲームプラットフォーム等の開発・運営等)
 IBJ(JQS:ソーシャル婚活メディアを中心とした各種婚活サービスの運営等)

(3)『再生ファンドやMBO(マネジメントバイアウト)の会社』
 日本航空(東1:航空運送事業等)
 チムニー(東2:飲食店の運営及びフランチャイズチェーン展開)
 大泉製作所(M:サーミスタ半導体等の各種温度センサーの製造・販売)

 一方、市場の裾野拡大に関しても昨年は新しい動きがあった。

IPOの目指す企業に対して、通常、上場時の主幹事証券会社が上場準備作業の段階からサポートする。しかし上場まで1~2年かかる為、IPO企業を引き受ける証券会社にとっても負担だった。証券会社としては、IPO時の新興企業株式の販売は魅力的なビジネスだが、事前の準備が長く相応のコストもかかる為、対応するのは、ある程度収益性が見込める(つまりマーケットキャップが大きなもの)企業に絞られていた。

 昨年7月に、このIPOを目指す企業を専門にサポートする会社が沖縄県に設立された。沖縄県産業振興公社が半数を、残りは地元の金融機関などが出資するOKINWA J-Adviserである。取りあえず、沖縄県内の新興企業を、プロ市場に上場させ、その企業が成長すればマザーズなど次の新興市場でのIPOを支援する専業者だ。証券会社ではないので、投資家には接しないが、プロ投資家を抱える証券会社とタッグを組みことが出来る。証券会社にとっては、引受審査や売買サポートなどのインフラ機能を代替してくれることとなる。

 このようなIPOサポートの専業者と、今までIPOに関与してこなかったような証券会社が、お互いの機能を利用することで、IPOの裾野が拡大することが期待される。

☆プロ市場の機能と現状

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個人の金融資産と海外投資動向 (12月25日)
 この一月半で株式市場の様相が今までと大きく変って、もしかしたら20年来の右肩下がり相場に終止符を打つかもしれないといった期待もある。個人の投資行動も大きく変って欲しいが、直近発表された個人の金融資産動向(日銀による資金循環統計:12月21日公表)は、9月末の推計ということもあって、今までのトレンドが変化する兆候はまだ見られない。

 個人のリスク資産(株・債券・投信など)の比率は、個人金融資産全体の11.8%で株式資産が減少した分が響き、3ヵ月前より比率が0.3%低下している。この数字は、いつも比較されることだが、米国の53.9%に遠く及ばず、ユーロ圏の28.3%と比べても半分以下となっている。
半数以上が金利の殆どつかない現預金となっているのは、デフレの影響も大きいだろうが、投資促進の為の政策が進められることも、新政権には期待したい。

 一方、個人の海外投資の方は僅かながら増えている。3ヵ月前(6月末)に比べ外貨建投信は減少したものの、外債・外株への投資増加分が上回った。また、直近の11月末時点の投信を通じた海外投資を見てみると、この3ヵ月(8月末時点より)で以下の様な変化が起きている。
(※投信協会統計資料より)
・投信を通じた海外投資は、約5000億円増加している。
・外国株式への投資は、3.6%約1000億円増加しているが、その半分は米国株式。
・外国債券への投資は1%の増加だが、投資国に変化がある。
   =オーストラリアへの債券投資残高は、7%減少した。
   =ユーロ圏への投資減少は歯止めが掛かり、4.8%増加している。
   =その他の国への投資は、36.7%と大きく増加している。
・REITなどへの投資は、4.1%の増加だが、その増加分の殆どがオーストラリアへの増加分(約2200億円)となっている。

☆個人の金融資産と海外投資動向
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投資からみた確定拠出年金制度(日本版401K)の問題 (12月10日)
 現段階で資産形成の為の最大の非課税制度は、約440万人が加入する確定拠出年金制度だ。今後、日本版ISA(少額投資非課税制度)が整備されても、当面は非課税の投資制度としての首位は代わらないだろう。公務員や専業主婦などがこの制度に参加すれば、更に拡大が期待される。
 ただし、この制度は国の年金制度の中に組み込まれているので、その年金に関する政策などの影響を大きく受ける。12月7日に東証で開催されたシンポジュウム“転換期を迎える年金制度~年金の将来と確定拠出年金の拡充に向けて”から、投資という視点での問題点を取り上げてみたい。

タワーズワトソンの浦田氏は、次の様な指摘をされた。
●低い拠出限度額=給与に対する拠出限度額の比率が、後発のアジア諸国よりも低い。その為、全体で6兆円のマーケットで規模が小さいので、運用機関にとって不採算ビジネス。
●60歳引出し要件=本来、この制度は中小企業にとって退職給付の為の退職一時金が原資。60歳まで引き出せない現制度では、途中で退職することも多い中小企業での本格導入は望めない。
●商品入れ替え規制=確定拠出年金法第26条によって、投資商品の除外が容易に出来ない。その為、投資商品の入れ替えが起きにくく、新しい商品も追加しにくい。結果として、運用会社による競争を阻害している可能性がある。

また、名古屋市立大学の臼杵教授、企業年金連合会の山崎氏を加えたパネルディスカッションでは、確定拠出年金制度加入者の投資運用に関する意識の低さも指摘されていた。これについては、次の様な考え方が示された。
○当初の運用開始時に、企業側がいくつかの運用パターンを示し、従業員に選択させる方法
○当初の運用開始時に、運用のポートフォリオを組んだファンドを強制的に割り当てる
○企業側が、運用を行わない従業員に代わって、従業員資金の運用を指図する(企業による運用受託)

確定拠出年金制度で運用されている資金の約3割強が投資信託(その他運用の半数が預貯金、残りが保険)ということだが、現在約1.8兆円の投資信託残高がある。これを200近い運用機関(加入者の口座の管理する金融機関)で対応しているので、現状では確定拠出年金制度での投資信託販売は、金融機関にとってのビジネスとしてメリットが小さい。しかし、上記の問題に加え、この制度での投資には、次のような実務上の運用障害のような事がある。

●Aファンドを売って、Bファンドを買うと言う場合、株式などの売買の様にこれを同時に行えない。Aファンドを売った代金が入金されてから、Bファンドの買付けが実行される。確定拠出年金制度は、少なくとも60歳までは個人が口座から資金を引出せないのだから、投資商品の乗換えはもっと利便性を向上させるべきだ。

●運用機関によって、投資可能なファンドが違う事は仕方がない。しかし、運用機関を変更しようとした場合、企業型は事実上難しいし、個人型も移行までに一月近く時間がかかる。また、会社を替わったり、辞めたりした場合も、加入制度の変更が求められ、一旦保有ファンドを売却し、新しい制度で買い直すという事になる。この制度の定着・拡大を望むなら、加入者個人にとって、運用機関の変更・就業先の変更などの際、運用商品を持ち運び容易とする仕組みが必要なのではないだろうか。

以上、国が進める投資制度としては、投資家の立場に沿った改革が求められている。
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FX取引の現状 (11月6日)
10月は、欧州債務危機問題も少し落ち着いていたこともあって、FX取引は前月比で2割程度増加しているようです。このFX取引は、今や為替市場にも大きな影響を与える個人の外国為替取引ですが、その取引イメージは次の様なものです。

・FX取引の口座数 320~330万口座
・主要な取引年齢層 30~40才代
・女性の比率      約2割程度
・証拠金の平均残高    25万円程度
・平均取引金額     150万円程度(平均レバレッジ5倍程度)
[金融商品先物業協会公表:6月末顧客証拠金残高とレバレッジは、店頭FXが8,507億円で4.3倍、くりっく365分が2,023億円で4.2倍、大証分が120億円で5倍]

株式や投資信託の投資家層のイメージからみると、年齢層も若く、証拠金も少額で、小粒の投資家層に見えます。しかし、株式や投資信託とは異なり、FX取引は短期間で売買を繰り返しますので、取引額は大きく膨らみます。例えば、この4月から6月の間に、上記のようなFX取引が何回取引しているかというと以下の様になります。(以下数値は、4月から6月の取引総金額を、6月末の建玉残高金額で割ったものです。)
・店頭FX  112回 
・くりっく365 17回 
・大証FX   23回
[同じく金融商品先物業協会公表:4~6月の取引金額は、店頭FXが411兆9,426億円、くりっく365が14兆8,830億円、大証分が1兆4,381億円]

FX取引の投資家は、平均で日に2~3回取引していることになりますが、主な取引戦略は次の様に大別されます。
○日中の上昇や下落のトレンドに沿って、少しの値鞘確保をねらった売買(スキャルピング)
○短期的なトレンドを読んだ売買(1日内はデイトレード、1週間程度はスイングトレード)
○高金利通貨への投資だが、逆張りで下がったとこを買い、金利差分の収益確保も狙う売買(金利差相当分のスワップポイント獲得が主目的)
○政策的な歪み是正や期待に沿った売買(例えば日銀の円売り介入を期待)
○債券や株式投資の代替手段として売買(例えば保有するリスク資産のヘッジ目的など)
FX取引は、売買は単純だが、その取引目的は多様化しています。

 FX取引は、一時の高成長期が終わり、現在は取扱業者間の生き残りをかけた競争段階に入っています。しかし、FX取引の多様化が次なる成長に繋がると予想されており、特に代替投資手段として利用されるなら、新たな成長ストーリーも描けると考えます。その為には、現在のFX取引で大きなシェアを握る専業者と、個人投資家資産を押える証券・金融機関などの競争・協働の為の新たな関係構築が注目されます。

☆FX取引の現状
 
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クラウドファンディングと投資の間に (10月23日)
 今年4月に米国で成立したJOBS Act(Jumpatart Our Business Startups Act)に含まれていたクラウドファンディング条項が一時話題になりました。今までも、100万ドル以上の純資産を持つ富裕層相手に500万ドル以下の資金を集めるのは、米SEC(証券取引委員会)への簡易な手続きで行うことが出来ましたが、この調達上限を5000万ドル以下として、投資家の基準も、年収か純資産が10万ドル以上の場合には投資額上限はその金額の10%以内、それ以下の場合は投資上限額が5%若しくは2000ドルとするなどの緩和策です。つまり、中小企業にとって、殆ど必要な資金を、簡易な手続きで一般の投資家から集めることが可能になったという事です。また、調達金額が100万ドル以内なら、SECへの登録なしに募集が可能となる少額発行枠の条項も新たに設定されています。実施は、これからSECの関係ルールが定まってからですが、個人にとって未公開投資が身近になるということです。

この法案の目的は新興企業の育成を目的にしたもので、ひろく個人から資金を集めるのでクラウド(crowd:群衆)ファンディング条項と呼ばれています。なお、同法の詳しい内容は“クラウドファンディングの幕開け~JOBS Act成立の意義とその内容~”(資本市場研究会発行月間資本市場7月号千田氏)をご参考ください。

 このクラウドファンディングは、比較的少額のお金を不特定多数の個人から集める事を想定していますので、インターネットを利用したクラウド・コンピューティングのcloud(雲)にも架けられているようです。

 さて、日本におけるクラウドファンディングの状況についてはどうかと、上記の米国法の目的とは少し異なる状況です。ネット上でクラウドファンディングを取り扱うサイトは、この半年で随分増えたように思います。但し、ファンディングの目的はイベントやキャンペーンなどへの寄附行為が殆どです。
クラウドファンディング・運営サイトの対応を簡略化すると、以下の様な手順になります。

①ネット利用でプロジェクトと申請させる。
②運営サイトによる審査
③プロジェクトのキャンペーンページの作成
④ファンディングする寄附に対して、何を対価として出すか決定(運動選手ならサイン入り写真や、社会貢献的なものなら簡易な報告書など)
⑤ネット上でプロジェクトを一定期間公開して、寄附を募集
⑥目標額に達すれば、運営サイトに成功報酬として10~20%の手数料を支払う
⑦プロジェクトの終了時に、④で決定したものを出資者に提供

つまり、ネット上でのプロジェクトの公開と寄附集めというのがコアになっていますので、運営サイトの注力はキャンペーンページの作成に重点があるように感じました。その為には、解り易く、アピールしやすいプロジェクトというのが中心になるようです。また、原則は寄附集めですから、特別なライセンス(業法上の許可や登録)は入りません。

 ただし、米国法の改正主旨のように、クラウドファンディグをベンチャーや中小企業の資金調達に使う目的に進化させていく為には、単発のイベントやキャンペーンではなく、継続的な事業の情報の提供の仕方や、寄附行為から投資行為に進化させる仕組み、そして投資家のリスクへの対応などのサポートが必要です。

この為、クラウドファンディングを、ベンチャーキャピタルや証券会社などの既存の金融商品取引業者が、先ず理解し、そして正しい未公開株投資の為にも、使い込んでいくことが必要だと考えます。そうすることで、ベンチャー投資や資本市場の裾野が広がるのではないでしょうか。

☆クラウドファンディング、マイクロファイナンスとその応用の概略図
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未公開株の正しい買い方 (10月19日)
どんな形であれ、詐欺行為は許せない。オレオレであろうが、未公開株であろうが、高齢者を中心に甘言で人を騙す犯罪には、社会を上げて撲滅する取組みも必要だと思います。

だた、証券会社の店頭に貼られる未公開株詐欺の注意喚起を行うポスターやホームページ上での撲滅キャンペーンの文言を見る度、いくらかの違和を感じます。そもそも、証券会社を訪れる個人にとって、未公開株投資は身近なのでしょうか。確かに、公開株は証券会社で扱っていますが、公開しそうな未公開株の情報を証券会社に求める個人は殆どいませんし、多くの証券会社でも未公開株式を取り扱っていないので、営業員は未公開株投資に関する説明をしません。むしろ、この事の方が問題で、少しでも未公開株投資に
関して興味のある個人に、正しい未公開株投資のあり方を周知していくことに、業界としての責任があるよう思えます。

 そこで、現状での未公開株の正しい買い方を考えてみました。

【上場を目指す未公開企業の株式】
上場を目指す未公開企業が、上場の準備段階(取引所に上場申請する為の)に入ったところで、取引先や従業員などの株式を発行する事はあります。しかし、この段階の企業が、見ず知らずの個人に自社への投資を募ることはありません。また、上場準備と上場希望は大きく違うので、上場する為には企業が最低限どの様な状況になっていなければならないか、これらの情報提供は証券会社で行うことが出来ます。
簡単に言えば、上場準備に入っている企業の株は、個人が未公開株をして入手することは先ずないという事になります。

【有望な未公開株は買う事が出来ないのか】
世の中の変化や進化にあった仕事をされる企業に投資する。投資した企業が大きく成長するかも知れませんし、残念ながら破綻する可能性もあるのでベンチャー企業への投資となります。個人は自分でその商品やサービスを使ってみて、投資リスクを承知で有望だと判断した未公開株を買う事になります。
◎有望さの判断は、自分で行う(ベンチャー企業が自ら勧誘する場合はありますが、仲介者が一般の個人に勧誘する事は法的にありません。)。
◎企業から示された財務データは、多くの場合、監査法人は確認したものではありません。
◎投資した後の株券は、自分で保管するか、不発行の場合は、株主名簿の確認を行う事も必要です。

一般の投資に比べ、相当にリスクの高いので、その投資額に対して、条件さえ満たせば1000万円近くの所得部分が非課税になったり、株式の譲渡益から控除するエンジェル税制の適用を受けることが出来ます。どの様な企業への投資が、このエンジェル税制の対象になるかについては、関東経済産業局が作成した以下のチェックシートを利用すれば、個人も容易に判断することが出来ます。
☆エンジェル税制要件判定シート
また、この税制適用を企業自ら事前に確認した企業名は、現在10社、経済産業省のホームページ上で開示されています。(※勧誘している訳ではありません。)
☆事前確認書交付企業一覧

【未公開株投資の態勢整備に関する私見】
個人が未公開株に興味を持つのは、高い成長力ですが、同時に高いリスクにどう対応するか、投資家の資産や投資スタンスに合わせて適正な助言を行うのは、証券会社の営業員やファイナンシャル・プランナーの仕事ではないでしょうか。その為、未公開株をちゃんと取扱い、正しい未公開株投資の説明を店頭で行う態勢整備を、金融商品取引業者に行っていただけたらと思います。

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ところで、今いくら? (10月17日)
 投資の世界でも、リアルタイム化が一層進んでいます。

例えば、市場の今の状況を知ることは、インターネットを利用することで、1個人であっても比較的容易になっています。パソコンを起動し、情報ベンダーか証券会社のホームページを開くと、市場の状況を知る事が出来ますが、今はスマートフォンやタブレット端末でインターネットへのアクセスが容易にかつ早くなって、デジタル・デイバイドといった言葉はそのうち死語になりそうです。
ちなみに、スマートフォンの音声対応アプリに向かって、“ソフトバンクの今の値段は”と聞いたところ、リアルタイムな同社の株価と日中のチャートが表示され、少し感動しました。この意味は、意識的にインターネットに接続しなくとも、情報ベンダーや証券会社のウェップサイトを選択しなくとも、個人がリアルタイムな市況などを知ることが出来る環境が整ってきたことを示しています。

個人にとっての重要な“今いくら?”のもう一つの意味は、自分の資産がどうなっているかいうことです。それも可能な限りリアルタイムで、自分の資産状況を知りたい。最初の“今いくら?”で、自分の興味のある投資対象の状況を知ったとしても、実際の投資行動に移る為には、今自分が負える投資のリスクを計る必要があります。その為には、自分の資産状況を正確に把握したとういニーズは一般的なものだと思います。

 証券会社や金融機関にとっては、この個人投資家の2つの“今、いくら?”に対応していくことが求められています 。リアルタイム対応は、何もネット証券だけの専売ではありません。最近の動向としては、対面営業の証券会社であっても、営業員にタブレット端末を持参させ、リアルタイムな市況の説明は勿論、顧客資産の状況から投資判断やリスク管理の助言も行うことを実践し始めています。また、一部のネット証券においては、自社のみならず他の金融機関などでの預り資産も統合して、個人資産を総合的に管理するソフトの提供も始めており、個人が“今、いくら?”リスクを負う事が可能なのか、可視化・パターン化して示すサービスを行っています。

 このように書いていくと、投資の世界でのインターネット利用が進み、ネット上でのサービス提供で一日の長があるネット証券が優位になっていくように思われますが、個人の投資の世界では必ずしもそうと言い切れないと思います。

 それは、3つ目の“今、いくら?”投資すべきなのかという判断は、結局個人の判断に頼るしかない事に依ります。投資家の基本的な行動を大きく括ってみますと次の4つになります。
①情報を集める
②投資判断
③投資実行
④投資資産の管理

ここで、①と④については世の中のインターネット利用が進むことで、対面営業でもネットでも証券会社がそれなりに対応してきています。また、③については、デイトレーダーの様にトレーディング主体の個人にとって、ネット証券の売買機能が使いやすいのは間違いありません。しかし、個人投資家にとって最も重要な、“今、いくら?”投資をすべきかの投資判断については、未だネット上で個々に示すサービスは提供できません。本来の対面営業の強みは、株式であろうが投資信託であろうが、この個人の投資判断に対する助言機能にあると考えられます。

インターネットの機能を十分に活用し、個人投資家の投資判断に十分な助言機能を提供する証券会社本来の姿に戻ることが、ネット証券や他の金融機関との差別化に繋がり、証券業として生き残る道だとも思います。
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投資の日に個人投資家は何を考えるか (10月5日)
 10月4日は、語呂合わせで投資の日ということで、新聞も特集を組んでいるし、個人の投資への興味を喚起しようとう証券業協会や取引所がイベントを行う。個人の金融資産は相変わらず貯蓄に偏ったままだが、政策として“貯蓄から投資へ”は推進されていると信じたい。
ところで、その個人の方は投資に対して考えているのだろうか。聞くに如かず。

投資に関する個人投資家のアンケート調査は、次のようなものがある。

個人投資家の証券投資に関する意識調査(結果概要)(2012年9月)
日本証券業協会が毎年行うものだが、個人投資家の中心帯がシニア層に偏って、若年層の投資家層が薄い。
証券関連税制の其々のテーマに関するアンケート調査も行われている。

投資信託に関するアンケート調査報告書-2011年10月
これも、投資信託協会が毎年行っているものだが、個人にとって纏まった金額を投資する投信の購入には、証券会社や金融機関などのアドバイズや友人などのクチコミ情報が有効なことが読み取れる。

MONEX グローバル投資家サーベイ 2012 年 9 月調査
マネックス証券が個人投資家の相場環境に対する意識調査を毎月行っているもの。最近の傾向は、中国市場離れか。

インターネット証券4社共同実施「投資信託に関わるアンケート」
SBI、楽天、マネックス、カブドットコムによるインターネットでの投信販売促進プロジャクトの一環。
共同調査というのもめずらしいが、ネット投資家である点に留意して投信協会のものと比較するのも面白い。

ノムラ個人投資家サーベイ(2012年9月)
野村證券が毎月実施しているが、直近では国内政治情勢に対する注目度が上がり、円安方向への期待も高まっているようだ。

以上をみれば、日本の個人投資家像が何となくイメージ出来るかもしれないが、個人金融資産の実態は以下のようである。

☆個人の金融資産・外貨建資産
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個人投資家にとってのデリバティブ取引とインターネット利用 (10月2日)
 個人投資家の株価指数取引などのデリバティブ取引は、市場全体の2割程度で現物株と同程度です。この比率は、アジアの中でも韓国や香港などに比べ低いものとなっています。また、今後の金融市場においては、デリバティブの市場拡大が期待されていますが、日本の個人投資家の現状を見ると、期待ほどは取引が伸びていないようでもあります。
 何故かということを考えていただくとともに、個人のデリバティブ取引を拡大させる要因や可能性について見ていただくため、下記の資料を作成しました。ご参考までに。

☆個人投資家にとってのデリバティブ取引とインターネット利用
・個人のデリバティブ取引の現状
・デリバティブ取引が伸びていない理由・今後伸びる要因
・証券会社がインターネットで提供するサービスの変化
・リテール証券会社としてのデリバティブ取引拡大戦略

 対面営業の証券会社においても、デリバティブの組み込まれた投信や仕組み債を販売するだけではなく、顧客資産のリスク管理にデリバティブを利用していくような資産管理型のビジネスが出来れば、その利用は大きく拡大する可能性がある。というのがオチになっています。

 
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投資を取り巻く環境はどう変わるか (9月28日)
 個人投資家を取り巻く環境が、今後どの様に変化するのかについて、証券業界の環境変化から考えてみました。主なテーマが次の4つです。
【総合取引所に向けた取組み】
東証と大証の統合に伴い、先ず来年7月目途に現物株、再来年初にはデリバティブ市場が統合されます。
これに合わせて、代替市場としてのPTS(私設取引システム)の機能充実が図られますが、先ずは機関投資家が利用しやすいように取引所以外の取引に係るTOB規制5%ルールの適用が免除され、次に個人の信用取引が可能となる整備が行われるようです。その為、今は余り意味が薄い証券会社の最良執行義務について、各証券会社間で差が出て来る可能性もあります。リテール証券会社でのPTS利用は進むと推測します。

【証券税制の変更】
いよいよ来年で譲渡益課税等の軽減税率(現行10%←本来20%)が終了するかどうかですが、厳密に言えば20%の税率だけの適用時期は過去にありませんでした。財務省からは、非課税投資制度である日本版ISA導入が人質に取られたようなかたちで、軽減措置の撤廃を迫られる構造になっていますが、来年に向け、政局や市況環境等も大きく影響しそうです。但し、現在のISA制度は、当初の案から随分後退して、試験的な取組みにしか見えませんので、本格的な同制度導入は経済界も含めた要望になっています。

【投信販売の強化と改善】
個人にとって、投信はもっとも身近な投資商品になりつつありますが、販売する証券会社にとっても、残高に合わせた収益が見込める投信販売は、安定収益確保の中心商品です。この投信販売に対する主な政策は、投信目論書の平易化・簡素化で解り易い説明を求めるものでしたが、これが概ね定着したので、現在は分配金とネット利益の関係を明確にすべきということで、運用報告書の改善に向けた制度改正に進む予定です。

【個人の海外投資支援機能】
個人の海外投資については投信を介して行われる部分が大きい(個人向け投信販売の7割の資産が海外投資へ)のですが、最近は外債販売を手掛ける証券・金融機関も増えています。一方、現在の日本市場は、海外市場の動向に影響されることも大きくなっているので、個人のトレーディングでは海外指数や為替動向に合わせたデリバティブ活用も進んでいます。

☆証券業界を取り巻く環境の変化
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個人投資家にとってのヘッジ3様 (9月7日)
 本稿の目的は、個人投資家にとってのリスク・ヘッジを考えることです。そもそも、そのリスク・ヘッジのヘッジとは何か、個人の視点でみる為、以下の3つの事を取り上げてみました。
【個人投資家のヘッジに対する認識】
日興アセットマネージメントが7月中旬に実施した、『「ヘッジ」の理解度に関する調査』に関する調査(自社サイトを利用したインターネット調査)では、ヘッジファンドについて次の様なイメージをもっています。
・リスクが高い(78%の個人がそう感じている)
・個人では出来ない難しい投資手法を駆使して、個人ではできない投資を行う(同、59%)
・ギャンブルに近い(同、57%)
マスコミで報じられるヘッジファンドの動向などが大きく影響しているようで、個人にとって親近感がないようだというのが調査者のコメントです。

なお、ウィキペディアではヘッジファンドは次の様に定義されています。
=代替投資の一つ。通常は私募によって機関投資家や富裕層などから私的に大規模な資金を集め、金融派生商品などを活用した様々な手法で運用するファンドのこと。

また、同調査による“為替ヘッジ”については、58%が海外投資を行う際、為替変動リスクを抑える手法として理解しており、こちらの“ヘッジ”の方は個人投資家にとっては身近なようです。

【ヘッジの定義】(goo国語辞典より)
株式・債券・商品・外国為替などの取引で、価格の騰落による損失や不利を避けるため、信用取引や先物取引で売買を行っておくこと。掛け繋(つな)ぎ。保険繋ぎ。繋ぎ売買。繋ぎ取引。繋ぎ。

【個人投資家にとってのリスク・ヘッジ】
例えば、筆者は証券会社に永く勤めていましたが、この状況で証券会社の株式を保有するのは賢明な資産運用ではないかも知れません。つまり、証券会社の業績が悪い時は、報酬も減り株価も下がるのでダブルパンチです。また、不動産を沢山保有されている方が、リート投資に注力するのも資産管理上好ましくないという意見もあるかも知れません。問題は、生活設計や資産の運用管理において、そのリスクをヘッジ(何かに替えて置く)する方法が分かり難いということです。

その点、金融資産においては、個人に提供されるリスク・ヘッジ手段は明確です。数多くの銘柄に投資する投資家に対しては、株価指数先物や同オプション、債券を大量に保有する投資家には、国債指数先物や金利先物、外貨資産の保有に対して為替ヘッジに利用するFX取引を利用することが出来ます。所謂デリバティブの利用です。

デリバティブは直訳すると派生商品ですが、本来は原資産の保有リスクをヘッジする目的で取引が始まったものです。しかし、個人が受けるイメージは、レバレッジ効果や値動きの激しさからリスクの高い投資手段といった印象が定着しています。実際、現状の個人投資家のデリバティブ取引は、短期間のトレーディングが中心ですので、投資とは少し距離があるように感じられています。

 個人投資家の短期トレーディングは、それなりに意味がある行為ですが、これとは別に保有する投資資産に対するリスク・ヘッジ目的でデリバティブが利用されることが望まれます。そうすることで、個人の金融資産運用は厚みを増し、かつデリバティブ市場でも新たな個人投資家のヘッジニーズを取り込むことが可能になります。

 とは言っても、トレーディングを行わない個人投資家がデリバティブを扱う為には、方法やタイミング・反対売買(ヘッジはずし)などのアドバイスが必要で、これは現段階でのネット証券ではできません。対面営業の証券会社やファイナンシャル・プランナー(証券仲介業者など)の助言機能が期待されますが、言い方を変えると、対面営業など証券業務において、個人のリスク・ヘッジ目的のデリバティブ利用が、資産管理型ビジネスへの転換を進める契機になる。そのような証券会社の変化を期待しています。
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株式の値段の決め方について (9月5日)
 上場されている株式の値段は、当然取引所で決まるが、その取引所においてシステムが超高速化し、アルゴリズムを利用したシステム売買HFT(High-Frequency Trading)が取引量の4割も占めるようになって、改めて株式の売買価格決定のあり方を考える必要があるのではないかと思う。日本証券経済研究所の福田主任研究員“取引を行うことは意外に難しい〜袋セリからHFT まで〜”を読んで、改めて考えさせられた。
 株式の値段の決定方法は、オークション方式(個別競争売買)とマーケット・メーク方式に分けられるが、東証の株式売買ではオークション方式が取られておりその定義は次の様なものだ。

“売呼値の競争と買呼値の競争を個別的に行い、最も優先する売呼値と最も優先する買呼値とが値段的に合致するときに、その値段を約定値段として売買契約を締結させる方法”

つまり売値と買値の株数が合えば売買が成立するのだが、ここでひとつの問題がある。この方法だと、例えば大口の売り注文が入った場合、買い注文の出し手が発注行為を控える傾向が強まる。買い手にとって、何か自分達の知らない不利な情報があるのではないかとの思惑が先行しやすい事と、その指値の直ぐ下で売って大口注文の売り指値が引き下げられたところで買い戻すサヤ抜き行為を誘発しやすい事など、本来の需給関係より決定される価格より押し下げられやすくなる。

 その為、大口注文者は発注を細分化して連続して注文できるシステム売買(取引所や売買を仲介する証券会社が機能を提供)を利用するのが最近の傾向だ。
また、金融商品取引法では故意に約定の意図のない大口注文を発注しかつ取り消す行為を、公正な価格形成を阻害するとして禁止している。(不公正取引行為)

 ところで、HFTはプロップハウスや証券会社による極めて短期のマーケット・メークやサヤ取り行為に利用されるが、ヘッジファンドなどもHFTを利用した戦略を用いるとされている。
冒頭に紹介した資料では、これらのHFTプレーヤーがポジションを保有してから反対売買までの時間に分けて戦略を示している。

・1分未満=最適な価格と執行を推定する計量的なアルゴリズムを用いてマーケット・メークを実行する
・10分以内=価格推移を観察しながら、他の取引者の注文パターンを解析、それを利用して取引を行う
・1時間以内=マクロ経済に関連するイベントを利用して、短期取引を行う
・1日以内=均衡からの乖離を利用して統計的裁定取引を行う

これらのHFTは、他の取引者より少しでも早く発注を行うという行動特性と、既に細分化されて通常の発注状況には隠れている大口注文を探すというのが、大きなテーマとして上げられる。
よって、他者の注文が入り難い銘柄はHFTの対象にはなり難い。つまり、HFTが流動性の向上に役立っているのは、一部の銘柄ということになる。
また、言葉の遊びではないがマーケット・メークと他の取引を誘引する目的で行う裁定取引の区別は、分かり難い。

 勿論、時代の進化に合わせて売買方法も変わっていくべきだと思うが、個人投資家まで含めて理解できる売買制度の議論と維持が必要なのではないだろうか。
 
 
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取引所が求めるもの、求められるもの (9月4日)
 東京証券取引所による大阪証券取引所の公開買付も成立し、いよいよ総合取引所を目指す日本取引所(仮称)が年明けにスタートする予定です。商品取引所まで取り込む総合取引所構想を後押しする金融商品取引法の方は、参議院通過までは良かったのですが、現在、衆議院で審議中となっており、最近の政治情勢で少し雲行きが怪しくなっています。
 しかし、政治情勢如何に係らず取引所を取り巻く環境は変化しています。その変化を後押しするものは、本来、投資家や取引参加者の方の変化ですが、この双方の変化は噛み合っているのでしょうか。またその中で仲介者たる証券会社の役割はどう変わっていくべきなのでしょうか。

以下のレポートを纏めてみました。

取引所が求めるもの、求められるもの
-取引所の変化と進化 
  -総合取引所構想がもたらすメリットとは
  -投資家は何を取引所に求めるのか
  -市場仲介者としての証券会社の対応は
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アナリストについて改めて考える (8月24日)
 株式市場の活性化議論の中で、よくアナリスト・カバーされる上場企業が少ないことが取り上げられる。今では多少増えていると思われるが、それでも3700以上もある上場企業の内、アナリスト(証券アナリスト)が分析対象としているのは約2割程度に留まる。新興企業などでは、個人投資家の認知度が低い銘柄も多く、東証のマザーズ・大証のジャスダックとも新興市場での中小型銘柄取引増加策として、独自にアナリスト・レポートを作成支援し、それを個人投資家向けに情報プラットフォームで公開している。

 この様に投資家への上場企業に関する情報提供の中心にアナリストがいるが、そもそもアナリストとは何なのか改めて考えてみたい。

 日本アナリスト協会によると、同協会に加盟するアナリストの数は現在約24,600名いるが、ファイナンシャル・プランナーの約16万人、証券外務員の約9万名に比べると随分少ない。また、実際に上場企業などのアナリスト業務を行っているのは、セイサイド・アナリスト(証券会社など商品供給側で、投資家の為に分析を行うもの)、バイサイド・アナリスト(運用機関側で、ファンドマネージャーなどの為に分析を行うもの)含めて、協会加盟アナリスト数の十分の1にも満たないだろう。
株式市場が問題とするのは、アナリストの不足ではなく、アナリスト・レポートの様だ。

元来、アナリスト・レポートは機関投資家向けや投資銀行業務推進の為に書かれるものだったが、個人投資家も証券会社や情報ベンダーを通じてその分析に関する情報に接することが多くなり、また個人投資家向けアナリスト・レポートも作成されるようになってきた。この事に加え、個人投資家に接している証券会社の営業部員の営業姿勢の変化も、アナリスト・レポートへの依存度を高めている。証券会社にとっての個人営業の重心は、手数料が自由化された株式取引から投資信託や外債など金融商品の販売に移っているし、金融商品取引法の証券営業に対する行為規制の厳格化なので、全体的にみて営業部員が個別銘柄を語ることが少なくなっている。

 個人投資家にとって、アナリスト・レポートはその投資判断に大きく影響するものになってきたが、その為、レポートを作成するアナリストに要求されるルールも厳格化されている。

一つには、金融商品取引法の扱いであるが、“金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者”としてアナリストは“重要な使用人”と定義され、投資助言業務又は投資運用業に関して届出が義務付けられている。

もう一つ重要な事は、投資家に分析情報を提供する立場のアナリストに対して、投資情報の提供や利益相反などに対して厳格な対応が求められており(証券アナリスト協会の職業行為基準)、これに違反して誤った内容のアナリスト・レポートを投資家に提供した場合、レポートを使用した証券会社が行政処分された事例もある。

特に、アナリストと投資家に利益相反部分は重要だと思われるので、行為基準の記載内容を容易化して示しておきたい。
○証券分析業務に支障がある事は、投資家に示さなければならない。
○投資推奨を行う銘柄を、原則保有してはならない。
○自ら保有している銘柄を売買推奨する場合、顧客の取引の取引を優先させなければならない。
○投資家との取引の当事者(代理を含む)になってはいけない。
○証券分析の対価として受ける報酬を、投資家に示さなければならない。
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総合取引所とCFD取引 (8月9日)
 総合取引所構想は、金融分野での数少ない日本の成長戦略だ。2010年6月に閣議決定された新成長戦略では、“新金融立国”に向けた施策として、2013年度まで証券・金融、商品の各取引所間の垣根を取り払い、全てを横断的に一括して取り扱うことのできる総合取引所的な取引所創設を、可能な限り早期に図るとしている。

この国家戦略に沿って、先ず東証による大証へのTOB(公開買付)が現在行われている。両取引所による合意では、年明けには経営統合され、上場は維持されたまま日本取引所グループ(仮称)として総合取引所を目指すことになる。具体的には、東証と大証の現物株市場とデリバティブ市場が来年以降に其々早期の統合を目指し、商品分野の中核となっている東京工業品取引所を日本取引所グループが来年度(?)にも買収するといったシナリオが考えられる。

これを後押しする法案整備として、総合取引所における行政上の規制・監督機能を金融庁に一元化(現在、商品先物は経産省・農水省管轄)する改正金融商品取引法が、7月26日に参議院を通過し現在は衆議院において審議中となっている。今国会での突然解散でもない限り、衆議院も通過して法案成立する見通しだ。

 ここまでは行政主導の総合取引所構想だったので、主体となる証券・金融業界においては少し醒めたような反応だったが、総合取引所は間違いなく日本にもあった方が良い。投資家からみると、グルーバル化が進んでいるので、商社などのように海外市場で商品先物を取引すればヘッジや投資が済んでしまうのが現状かもしれない。しかし、取引所というインフラが活発に稼働するなら、それに伴う取引業者が増加し、決済の為のサービスも拡大する。市場を分析し、助言する業者も増える。つまり、産業として取引所を起点にした金融サービスが拡大していくことが期待できる。
当然のことだが、その為には多様な投資家を取引所に呼び込む強みも必要だ。

例えば、個人投資家にとって総合取引所では何がメリットかを考えた場合、一つの証拠金枠で証券指数先物でも商品指数先物でも利用可能なることだろう。さらに同じ資金なら、信用取引の保証金にもデリバティブ取引の証拠金にも両方に転用できる方が良い。その為には、先ず金融デリバティブの清算機能と商品先物の清算機能が一体化される必要がある。
しかし、総合取引所においてそれが実現する為には、
日本取引所スタート(来年1月)⇒現物株市場、デリバティブ市場毎の統合⇒日本取引所における東京工業品取引所の買収⇒商品も含めた精算機関業務の統一
と、少なく見積もってもまだ数年かかりそうだ。

 実は、現在でも個人投資家にとっての総合取引所的機能を提供するサービスが既にある。CFD(Contract for Difference=差金決済取引)取引だが、取引対象は個別株式・金融指数先物・商品先物指数・債券先物など世界中で市場のあるものが対象となり、個人からみるとまさに総合取引所的取引機能を提供しているCFD専業者も数社ある。取引の仕組みは、店頭FX取引と全く同じで、投資家にはオファー(売値)・ビット(買値)が提示され、投資家がそれをヒット(インターネット取引ではクリック)すれば取引が成立する。4年程前から、日本におけるサービスが始まっているが、実はこのCFD取引が当初期待したほど取引が拡大していない。日本証券業協会によると、本年3月末の口座数は145,258口座で前年比僅か5%程度の伸び、証拠金残高は82億円と、ほぼ前年度並みに留まる。
理由は、個人にとっての投資環境が良くなかったことと、CFDが拡大する前にレバレッジ規制や不招請勧誘禁止などの勧誘規制が先行してしまったことが挙げられている。

 しかし、本当にそれがCFD取引の拡大していない理由だろうか。個人投資家にとっても総合取引所的機能サービスが必要なら、問題はむしろサービスの提供者(CFD業者及びCFDを取り扱う証券会社・FX事業者)の方にあるのではないだろうか。
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拡大が期待される個人海外投資のあり方 (8月7日)
 日本の個人金融資産は、今年3月末で1,513兆円あり、よく日本の国力を示す数字の一つとして取り上げられている。この数値は、過去順調に増加していたものの、この5年ほどは株式や投資信託・債券などの市況環境の影響を受ける投資資産の影響で、1,500兆円を挟んだ増減を繰り返している。
その中にあって、個人の海外投資を示す外貨建資産は、日銀による試算値では38.6兆円、個人金融資産の2.5%を占めている。・・・(以下レポートへ)

○個人の海外投資の現状と変化
○海外投資への仲介者としての証券、そして取引所
○個人投資家の意識と現状
○望まれる海外投資プラットフォーム

☆拡大が期待される個人海外投資のあり方
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日本の投資銀行はまだまだ出来る事が多くある(7月20日)
 最近は、投資銀行という言葉を使うのも少し気恥ずかしい。金融危機の主因とされるCDS(信用リスクのデリバティブ)を証券化したCDO(合成債券)での悪いイメージもあるが、最近でもCDS取引に絡んだ米証券の巨額損失や、世界的に不信が拡がっているLIBOR(ロンドンの銀行間貸出金利=グローバルな金融取引の基準)問題での英銀行の作為。そして、日本では金融危機後にリーマンの一部を取り込んでグローバルな投資銀行を目指していた野村の挫折と、増資インサーダー問題等で揺れる証券会社の対法人ビジネス。いずれにせよ、投資銀行という言葉の最近の響きは余り良くない。

しかし、投資銀行の実態が良かろうが悪かろうが、企業にリスクマネーを供給する仲介機能を担う投資銀行業務は重要な金融の役割だ。そして、金融危機後は日本の投資銀行(投資銀行業務を行う銀行や証券)がこの業界で最前線に追い付く良い機会だったはずだ。そんな事を、以下のレポートを読んで、思い出した。

・復活する日本のLBOファイナンス~金融危機後に需要が高まるメザニン・ファイナンス(大和総研7月18日)

詳しくは、同レポートをご覧いただきたいが、日本企業による最近のM&Aの増加や2000年台央のLBOローンなどの借り換え時期が重なって、LBOローン市場の規模が金融危機前の水準に近づきつつあるという。
 そもそもLBO=レバレッジド・バイアイトは買収対象会社が将来生み出すキャッシュフローや資産を担保にして金融機関からローンの調達する手法だが、日本のLBOローン市場では2.5~4.5%の利ザヤ(調達金利であるTiborとの差額)が稼げると言われている。このローンは通常メガバンクを中心に引受のシンジケートが組まれるが、金融機関の引き合い(融資するニーズ)は強いようだ。同レポートの筆者が注目しているのが、通常のローンよりも返済順位が劣る劣後ローンや優先株だが、所謂メザニン・ファイナンスと言われる手法で、株式やREITなどよりリスクは少ないが、同程度の期待収益率(年率5~6%)は確保できるとしている。このメザニン・ファイナンスは、普通株の希薄化も防ぐことが出来るので既存株主にも配慮したファイナンス手法だ。

 一方、増資インサイダーに揺れる日本の発行市場だが、低迷する株式市場にあっても企業のリスクマネー調達ニーズは意外に強い。海外展開や事業再構築など、纏まった資金ニーズがあるからだろうが、公募増資や第三者割当など既存のファイナンス手法に頼りすぎると、株価下落や大幅な希薄化を招いて既存株主にダメージを与える。日本の投資銀行は、今こそ多様なリスクマネーの調達方法で上場企業のニーズに応えるべきだろう。
制度的は、4月以降随分と改善されたライツ・オファリンングを利用することで、既存株主の希薄化に配慮することも、CB(転換社債型新株予約権付社債)の商品設計を今一度も直し、株主・投資家双方に配慮した発行条件とすることも、発行市場のプロとして日本の投資銀行に求められている事だ。また、特定の事業に投資する資金調達なら、その事業業績に配当などが連動するトラッキングストックや優先株式の発行もある。買収先の企業のIPOを前提にした交換社債の発行などがあっても良い。
勿論、ファイナンスは投資銀行の業務の一部に過ぎないが、大型公募増資のインサイダー問題に揺れる今こそ、発行市場のプロとして多様なファイナンス手法を企業と投資家双方に示す時ではないだろうか。
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信用取引制度の現状(7月18日)
 前回は、信用取引制度の保証金に関する改革をレポートしましたが、信用取引制度全般に関する問題点の現状について、その概要図を以下に示します。

☆信用取引制度の現状(平成24年7月時点)

同制度に関する証券会社の当面の課題として、以下の4点があります。

○保証金の取り扱い=現行のルール(内閣府令や取引所ルール)では、同一の保証金が利用できるのは1日1回(売買で1往復)となり、日計り商い(デイトレード)では現物より制約があります。(現物では、差金決済の禁止があるので、同一銘柄については1回転半までですが、銘柄が異なれば同一資金で売買を繰り返すことは可能)また、保証金は取引の決済が終了するまで、他の先物やFX取引の証拠金に転用することが出来ません。しかし、ルールの緩和により、反対売買を行った時点で保証金の増減が見直され、かつ新たな株式取引やデリバティブ取引の証拠金に利用できれば、複数の取引において資金(保証金)が有効に活用されることとなります。

○融資能力=現在、日本株取引の手数料引下げ競争は一段落していますが、大口の信用取引ではまだ手数料ゼロキャンペーンなど信用取引顧客の獲得競争が行われています。ネット証券にとっては、信用取引客に対する融資が収益の大きな柱となっていますが、顧客獲得競争が激しくなれば、この融資の金利部分で引き下げ競争が起きる可能性もあります。この場合、重要になってくるのが顧客への融資資金の調達能力ですが、金融機関などとの関係強化の動きが強まることも考えられます。

○貸株調達力=信用取引ですから、売りから入ることも可能なのですが、証券会社は投資家に貸す株を調達してこなければなりません。その為に、貸株市場とのアクセスを良くしておく必要がありますが、この貸株調達力は証券会社によって相当の差がある為、結果として売り建て可能な銘柄数の差も拡大しつつあります。

○アップティック・ルール=売り下がりを禁じたこのルールは、その運用面で全体のバランスが悪くなっています。小規模の取引に関する除外規定も、売買単位が違えば、同業の銘柄で同金額の売付けが、一方では可能で、一方では不可といった状況も放置されていますし、このルールの影響でアルゴリズム取引やシステム取引などに制約を掛けなければなりません。

これ等の課題の為、信用取引といっても各証券会社で投資家に提供するサービスが、相当異なっていく可能性が強いと感じています。
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証券業界を取り巻く環境の変化について(7月7日)
一般の方々には余り興味がないことかも知れませんが、標記の俯瞰図を1枚に纏めてみました。証券業は、当然投資家がいて成り立つ訳ですから、業界の変化は同時に投資家の変化でもあるはずです。下記の図を一旦ご自分から少し離してご覧いただき、気になる語句の周りを見ていただければ、現状の環境イメージが伝わるかも知れません。
また、本来は投資家の変化が業界や取引所の変化をもたらすはずですが、時として取引所の変化の方は早く感じる事もあります。それは、既に海外投資家の間で起きた変化ということで、代表的なものはアルゴリズム取引ですが、これが取引所間の高速化競争を後押ししいています。この取引きの高速化・高度化の影響は個人投資家にも及んでいます。個人向けシステムトレードなどがそうです。
この図の目的は、ご覧になられた方々が、投資家・取引所・証券業界・行政それぞれどの様な変化のベクトルを持とうとしているか感じていただく為のものです。願わくは、それぞれの方向が同じところを目指していることを願っています。

☆証券業界を取り巻く環境の変化について
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拡大が期待されるPTS(6月27日)
長引く欧州債務危機の影響で株式市場のリスクオフの流れは続いて取引も低調だが、その中にあって私設取引システム(PTS=Proprietary Trading System)の存在感は増している。
数こそは一時7社あったものが、2社(SBIジャパンネクスト、チャイエックス・ジャパン)に減ってしまったが、昨年からの取引量増加傾向が鮮明になっており、取引所取引の約6%までPTS利用の株式取引が増加している。また本年2月に発生した東証のシステム障害では、証券業協会ルールによってPTSでの取引も中断されたが、PTSの代替市場機能を重視すべきとの業界や投資家の意見も多く協会に寄せられた結果、このルールも改定された。結果、例へ取引所の取引が停止していても、代替市場として株式を取引することが可能となり、その存在感が増した。

ところで、投資家にとってのPTSのメリットを上げると、以下3つある。
○取引所より取引コストが安い。(売買注文を取り次ぐ証券会社のコストが取引所より安いので、結果、投資家の取引コストも安い)
○取引所よりも取引時間が長い。(震災を理由に一時中断されていた夜間取引も、本年1月末より再開=SBIジャパンネクスト)
○取引所より、呼値が細分化。これにより、100円台の大型株のデイトレードなども行い易くなっている。

反対にデメリットとされてきたことは、次の2つが主なものだ。
●TOB規制(取引所以外で上場株式の取引を行う場合、5%以上の取引はTOB【公開買付】を行わなければならない)により、大口取引が制限されていた。
→この規制で、PTSでの取引を適用除外とする金商法施行令改正が10月に行われる予定。但し、投資家保護要件として以下の対応がPTSに求められる
・ 当該取引に係る有価証券の種類、銘柄、価格、数量等が直ちに公表されること
・ 売買価格の決定方法が競売買の方法等であること
・ 投資者が当該取引にかかる有価証券を売却する機会が適切に確保されていること
●個人投資家の取引の6割を占める信用取引が出来ない。
→PTSとして空売りの注文を取り次ぐことは2010年10月から可能だが、個人が利用する信用取引は、取引所取引の一環として規定されているので、可能とする為には法改正が必要だ。ただし、現在でもPTS(チャイエックス・ジャパン)の売値・買値を提示する方法で個別株CFD(差金決済取引)は行われている。この方法は、個人投資家にとっての擬似信用取引と言えるが、個別株CFD取引を行う証券会社数は少なく、個人にとってのアクセスは不便で、かつ取引数量なども制限されている。

現在、PTSが利用できるリテール証券は、SBI・楽天・GMOクリックのネット証券3社のみだが、拡大するPTSのメリットを個人投資家も利用できるよう、対面やその他ネット証券を含めたリテール証券の参加が望まれる。

☆PTSの現状と概要

(少し実務的すぎる話だが、PTSの呼値の細分化に一般の証券会社が対応する為、自社システム内でそれまで呼値を単位引き下げ実施しなければならない。つまり、システム修正のコストが掛かるが、業界環境の厳しい中、リテール証券にとっては負担が重いものだった。加えて、ナイトセッションを行う場合の態勢整備も証券会社の負担を増す。その為、SBIジャパンネクストは、既存のリテール証券が参加しやすいように呼値も細分化せずナイトセッションを行わない別の取引プログラムを用意して、7月からその取扱いを開始する。)
 
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最近のFX取引動向について (5月28日)
 少し乱暴な言い方だが、外為市場は何でも有りの市場で株式などの資本市場とは大きく異なる。資本市場にあるインサイダー取引や相場操縦などの不公正取引規定は無い。逆に通貨当局による介入はあるし、各国首脳による相場誘導発言もあるぐらいだ。また、投資家だけではなく実態の経済に密接に繋がっているので、市場の参加者も多い。
この市場に、個人がFX取引で参入して一定の影響を及ぼしているが、最近の取引動向に関して言うと、概ねリスクオフの流れから、円やドルを買って新興国通貨など売っても良さそうだ。しかし、個人のFX取引の現状は、どうも市場トレンドの逆張りで外貨買い円売りのポジションが多く、その為損失を抱えた取引が多いようで、全体の取引金額も減少している。
 図表に示したものは、少し古いが金融先物取引業協会が公表している“店頭FX月次速報”の4月末時点の主要通貨のポジションで、円を売って外貨を買うポジションは、4月の円高進行化でも増加している。
つまり個人のFX取引は、外貨を対円で買い下がっているイメージとなるが、5月に入ってからもこの傾向は余り変わらなそうだ。

 一方、FX取引サービスの多様化は進んでいるが、その目的は当然顧客層の拡大だ。
現在、FX取引口座は主要なFX業者14社ベースでも220万口座(3月末時点、矢野経済研究所調べ)あるが、デイトレードやスイングトレードするベビーユーザー向けには、トレーディングシステムの高速化・高度化やスマートフォン対応は勿論、システムトレードのサービスが提供されるようになっている。
また、顧客の裾野拡大目的で、海外旅行向けに現物の外貨を受渡したり、外貨預金口座に送金するサービスも行われている。

また、証拠金に対するレバレッジを1倍・3倍と低く抑えたサービスもあるが、これは通常のFX取引が短期間の為替変動のサヤ抜きを目的にしているのに対し、外貨への投資若しくは外貨資産のヘッジに利用することも出来るので、外債投資の拡大に繋がったりその代替手段となることも考えられる。

株式などの有価証券を証拠金の代わりに担保化するサービスも増え始めているが、株式投資家などをFX取引に誘う目的であれば、ある程度その効果はあるだろう。ただし、現在は担保化出来るのが株式のみなので、外国債券や外貨建投資信託も加われば、個人投資家の外貨建て資産に対するヘッジとして利用が更に拡大する可能性もある。

顧客層の拡大とは別に、取引量を拡大する目的では、自社のシステムや取引カバー先を他社にも利用させるプラットフォーム化の動きもあり、FX専業者が証券会社などにホワイトラベルとしてFX取引機能を提供することは依然から行われていた。最近は、それに加えて証券会社の自己売買部門や一部の機関投資家などの外貨トレーディングも取り込んでいこうと、レバレッジ100倍の法人向けサービスの提供を始めたところもある。

FX業界も、現状は生き残りをかけた生存競争の段階に入っていると言われているが、顧客層の拡大策とともに証券会社など他社との協働が欠かせなくなっている。

☆最近のFX取引とFX取引サービスの動向
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株式取引超高速化のメリットを享受する為に (5月20日)
 東京証券取引所は、7月中旬より株式売買システム“arrowhead”の取引スピードを現在の2倍以上高速化して1ミリ秒以下に抑える(20日、日経)。この対応で、東証の売買スピードはニューヨーク取引所並になるという。
 一般に取引の超高速化は、流動性の向上をもたらし、市場参加者全体にそのメリットが及ぶとされているが、実際に超高速化対応する為には、直接の市場参加者のシステムの超高速化や取引情報を超高速に処理する為にアルゴリズムを利用する必要がある。所謂高頻度取引High-Frequency Trading(HFT)だが、この取引の目的は、大きく分けて次の2つになる。

○機関投資家やヘッジファンドなどが、注文を細分化したり、売り買い目的とは反対の売買を繰り返し行って、大口注文の取引コストを引き下げる。
○プロップハウスと呼ばれる裁定取引業者や証券会社の自己売買部門が、可能な限り短期間(取引リスクの極小化)で自らの利ザヤを稼ぐために行う。

また、上記の目的に沿ったアルゴリズムは、超高速で市場情報を判断し、超高速で売買注文の発注・取消しを行う必要がある為、東証のシステムに物理的に近い場所で情報処理される。これは東証のコロケーション・サービスにより、取引参加者である証券会社のアルゴリズムを取り込んだシステム設置が“arrowhead”の近くで可能となっており、またその証券会社のシステムの中に投資家のアルゴリズム取引を組み込むことも出来る(Direct Market Access=DMA取引)。

 HFTなど株式取引の超高速化は、IT技術の進歩であり、また人より早く情報を仕入れて、人より早く投資判断したいというのは、人でもシステムでも同じだろう。一体どこまで高速化が進むかという議論は専門家にお任せするとして、取引高速化のメリットが出来るだけ多くの市場参加者に及ばなければ、市場全体の発展には寄与しない。その為には、HFTなどに対抗するような取引・情報を個人投資家など非HFT利用者に提供するサービスが望まれる。

 一方、取引はシステムだけで成り立つのではなく、当然遵守すべき市場取引ルールがあり、大きくは金融商品取引法など法規制、そして取引所ルールから証券業協会ルールまで整備されている。
金商法でみると、市場における以下の行為は禁止されているし、売買注文を取り次ぐ証券会社もチェックしなければならない。
●不正行為の禁止(法第157条)=不正の手段、計画又は技巧の禁止。虚偽の表示若しくは重要な事実の表示を行わないこと。誘引目的での虚偽の相場の利用。
●風説の流布、偽計、暴行又は脅迫の禁止(法第158条)=相場の変動を図る目的をもって、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。
●相場操縦行為等の禁止(法第159条)=仮装取引、馴合い取引の禁止。取引を誘因する目的を持っての行為、不実表示や見せ玉などの禁止。など

ここで市場取引ルールを敢えてあげたのは、HFT取引が市場全体の6割近くに及ぶ米国や4割近くなっている欧州において、HFTを取り次ぐ証券会社の取引内容チェック強化が行政当局より求め始められている。(詳しくは、日本証券経済研究所、清水氏“高頻度取引をめぐる規制動向”2012年4月)
簡単に言うと、ヘッジファンドであろうがプロップハウスであろうが、その売買注文は取引所の直接参加者の証券会社を通じて発注される形(例えDMAによるHFTのアルゴリズム取引でも)になるので、その軒先を貸している証券会社がちゃんと不公正取引のチェックをしているか如何が問われている。

この不公正取引行為に対するHFTのアルゴリズムチェックも然りだが、一般の投資家がHFTなどに持つ最大の反感は、一部の関係者以外にアルゴリズム取引の実態が良く分からないことにも依る。せっかくの技術革新の結果、進展している超高速取引について、実態の把握と問題点の共有こそが市場参加者全体へのメリットの享受に繋がると考えるが、その為には東証などのこの分野の情報開示が進むことを期待している。
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クラウドファンディング、マイクロファイナンスとその応用の概略図 (5月7日)
 前回触れたクラウドファンディングの概要と、マイクロファイナンスへの展開、そしてそれらの応用としてベンチャー企業の資金調達への関与に関するイメージ図を作成しましたので、ご参考までに。

☆クラウドファンディング、マイクロファイナンスとその応用の概略図
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資本市場からみたクラウドファンディング (5月3日)
  最近テレビ(TV東京)でもとり上げられたクラウドファンディグは、ちょっとした事業やプロジェクトの資金調達を行う方法として注目されている。ネットで事業内容を示し、賛同する人たちから資金を集めるが、資金の性格は寄附又はファンド(匿名組合)の出資金・若しくはその組み合わせとなっているので、一人当たりの出すお金は概ね数万円程度に留まる。寄附形式の場合は事業での成果物(例えば、スマフォのアプリやプロジェクトの記念品など)がお金の出し手に渡される場合が多いので、コミニティ・ビジネスへの参加・協力といったイメージが強い。また、出資金を集める場合は、事業ファンド(匿名組合方式)の出資分となり、事業立ち上げ後の一定期間後に、利益等の配分を約束するものある。こちらの方は、大震災で被災された地域企業の再建資金や、ベンチャービジネスの立ち上げ資金などの資金集めに利用されている。
どちらも、インターネット上で事業やプロジェクトの情報を流し、広く賛同者を募って資金を集めるということになるが、企業の株式や債券の募集でないので直接的には金融商品取引法の対象外だ。つまり、現在のところ資本市場との関わりあいはない。

では、これらのクラウドファンディングを業として行う場合はどうなのか。

ネット上では、既にクラウドファンディング用の複数のサイトが立ち上がっていて、これら小規模な事業やプロジェクトの資金集めを仲介しているが、寄附集めの仲介に留まる限り、現在の金融規制とは関係ない。但し、ファンドの出資分のファイナンスを仲介しようとすると、一般の投資家からファンド募集を行う第二種金融商品取引業に該当すると考えるのが順当だ。

 スマートフォンの普及により、インターネット利用層が拡大し、SNSなどでコミュニティを利用して情報を拡散・共有していく仕組みが出来つつある現状を考えると、それがベンチャー企業のファイナンスに利用されても良いのかも知れない。例えば、クラウドファンディングで一定規模の出資者を集めたベンチャー企業に対して、ベンチャーファンドが出資する基準を持てば、クラウドファンディングと資本市場の距離は近づく。また、ベンチャー企業に対する直接の出資(事業ファンドの出資金ではなく、株式への投資)は、エンジェル税制があるものの個人投資家にとっては難しいとされてきたが、クラウドファンディング的手法で、事業内容が公開され、それに対する評価情報などが得れれば、ベンチャー企業投資は分かり易くなる。

 このクラウドファンディングが注目されたもう一つの理由としては、4月に米国で成立したJumpstart Our Business Startups Act(JOBS Act)に、“クラウドファンディング条項”があったことだ。同法の目的は、新興企業の資金調達に関する規制を緩和するとともに、すべての企業を対象に株式公開の方法や時期について柔軟性を高めることとされているが、一般投資家からの募集行為に対してはSECへの届出などが厳格な米国では、新興企業のファイナンスに対して大きな変化をもたらす可能性がある。
特に“クラウドファンディング条項”では、1年内に100万ドルまでの資金調達ならSECの登録義務が免除される。ただし、個人への販売は投資上限額が制限されたり、一定額以上の収入・資産規模が求められる。

 なお、日本の金融商品取引法では、一般投資家からファイナンス(株式又は社債)の募集を行う場合、有価証券届出書が必要だが、募集する金額が1億円以内なら記載内容が簡易な有価証券通知書、さらに1000万円以下ならその通知書も不要となっている。クラウドファンディング的な新興企業のファイナンスは、制度的には今でも可能だが、問題はそのファイナンスを投資家に仲介する証券会社(第一種金融商品取引業)の業規制(自主規制も含む)の方が厳格となっているので、新興企業の小規模公募ファイナンスに資本市場が関与するのが難しい。
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投資銀行のイメージ図 (5月1日)
前回、投資銀行のビジネスモデル概要について触れましたが、投資銀行の比較的新しい4つの機能が金融危機の原因となりました。4つの機能は経済にとって重要な機能ではありましたが、欧米投資銀行は収益性が高いビジネスとして人材を多く投入し、同時にその組織の予算を積み上げたので、業務全体がバブルを生み、信用バブルへと繋がりました。

 日本では、まだ機能のキャッチ・アップをしている時期でしたので、金融危機は日本の投資銀行にとっては欧米の投資銀行一部リーグに追い付く好機と感じたとしても不思議ではありませんでした。しかし、金融危機の要因となったことが広く世間にも知られるようになってからは、4つの投資銀行機能のバブル制御をターゲットにした金融規制改革法が欧米で整備され、また海外の世論も反金融(反投資銀行)に大きく傾いています。

 しかし、日本経済が本当にテイク・オフする為には、やはり金融において投資銀行機能の充実を行っていくべきと考えます。その視点で見ると、先週末に出揃った大手・銀行系証券の決算発表は、投資銀行部門=対企業や機関投資家に対するビジネスをどう強化していくかの戦略が全く見えないのが残念です。

元々、投資銀行部門はビジネスのリードタイムが長いので、恒常的な組織立てが重要ですが、決算発表で示されたことは、この部門の大規模なリストラの敢行が中心で、投資銀行業務の戦略的な展開が語られなくなっています。別にリストラの事を残念に思っている訳ではなく、余計な人員は整理して当然ですが、企業や投資家の信頼を回復する為、投資銀行業務をこう展開していくという戦略を見たかったと思います。
(M&Aの様に、外部の専門家を活用すれば、スリムな組織でも投資銀行機能を充実させていく事は可能だと考えます。)

☆投資銀行とは何か

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投資銀行ビジネスモデルは何処へいくのか (4月26日)
 金融危機まで、投資銀行(代表的なものはゴールドマン・ザックス)は日本の金融業界にとって憧れの的であり目指すべきものでもあった。大手証券も外資系証券を横目でみながら機能整備をしていったし、金融機関の中には投資銀行宣言をするところまであった。別に大手金融機関を揶揄する為に書いたのではなく、それは各々の戦略として正しかったと思う。しかし、今世紀に入ってからの投資銀行は、それまでの投資銀行モデルとは少し実態が異なっていた。

 投資銀行とは何かということを、ウィキペディアでは次の様に記載している。

【投資銀行(investment bank)とは、顧客企業の有価証券発行による資本市場からの資金調達をサポートし、合併や買収などの財務戦略でのアドバイスを行う金融機関である。】
つまり企業のファイナンスやM&Aのビジネスを行うことが投資銀行の中核であることは、今も昔も変わらない。
ただし、ここ10年来は次の事が加わっていた。

①証券化(不動産やローンなど実体経済に関わりの深いものを、証券化して市場で流通しやすくする。若しくは市場からのファイナンスを行う。)
②自己投資(自ら纏まった案件などに出資するのだが、さすがに他の投資家を擁する営業部門との利益相反を考えて、子会社化した。)
③ファンドとの関係強化(プライマリー・ブローカーレッジビジネスなど、ファンドに対するサービス強化(売買・決済機能の提供)でヘッジファンドなどへの与信行為も含まれる。)
④それぞれ異なるニーズを、両者の問題解決を計ろうと仕組む行為。証券化やデリバティブ活用など所謂金融工学を利用することもあるし、M&Aやファンドを活用する場合もある。

これらのことは、今でも投資銀行にとって重要だ。いや、経済全体に対しても大切な機能を果たしている。
日本の金融機関に関しては、②の自己投資こそ相応の規模で行ったが、それ以外は欧米の投資銀行に比べ完全に周回遅れだった。それで、欧米の主要な投資銀行のキャッチ・アップを行おうとしていた。

 金融危機の引き金を引いたのは米国のサブプライム・ローンだが、主犯格は信用リスクのデリバティブ(CDS)を証券化した合成証券CDOだ。しかし、背景にあるのは上記の4つの機能をバブル的にやり過ぎたことがあるのではないだろうか。それ故、欧米の金融規制改革法案(米ドットフランク法など)では上記の4つの機能に関する規制や報告体制を強化する方向で、現在法案の成立から実行段階に移るところだ。

 日本もG20の合意としてこの欧米の金融規制改革の流れに沿うことが求められるが、本来ならこの機会に遅れていた上記の4つの機能を強化することを先行するべきだろう。その意味では、評判は悪いが野村のやろうとしている投資銀行強化は、グローバルな金融機関として生き残る為には正しいと考える。
但し、評判の悪さは事業モデルとして投資銀行部門の収益構造を説明できていない事と、投資銀行にありがちな投資家との利益相反に対する対応が、少なくとも外部(顧客)から分かり難いことだろう。特に顧客との利益相反は投資銀行全ての問題だが、増資インサイダー問題なども情報管理だけではなく顧客との利益相反問題として見直す必要があるのではないだろうか。

そうでなければ伝統的投資銀行業務であるファイナンスも失うことになる。
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個人の外貨取引について (4月24日)
 3月28日に日銀の資金循環統計速報(昨年12月末)での個人金融資産の状況を紹介しましたが、それによると外貨建て資産の比率は1.9%で、比率も金額(全体の1,483兆円に対して28.7兆円)も減少しています。
 外貨建て投信が減少して、外債が増加しているようですが、確かに外債については、家族からも聞かれるし、証券会社のセールスの方からも勧誘の電話が掛かってきます。ただし、こちらの方は投資家のニーズに合った品揃えが充分な証券会社は限られていると思います。
 (※実際の外債販売状況については、今週末の上場証券会社の決算状況を分析したものを、来月に公表しますので、お待ちください。)
一方、個人の外貨取引であるFX取引に関しては、再び取引が増加し始めているようです。2度にわたるレバレッジ規制や、昨年後半のリスクオフの流れを乗り切って、今年に入ってからは、取引金額をみると毎月前月比2ケタ増加が続いています。少し前の状況ですが、店頭FX取引の3月末の状況を以下の様に纏めてみました。(データは金融先物取引業協会が、主要業者から集計したもの)

☆最近のFX取引動向(3月末時点)

なお、店頭FX取引の規模の1割程度になりますが、取引所FX取引について、東京金融取引所が通貨別の取組み状況を毎日公表(前日の残高ベース)しています。主要な通貨の取組みは以下の様な状況です。
4月23日の状況
・ドル円=売り建玉数量:買い建玉の比率=1:3.6
・ユーロ円=同、=1:1.02
・豪ドル円=同、=1:3.2
・ユーロドル=同、=1:0.22
詳しくは、同取引所のホームページへ
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東証と東京都 (4月20日)
 標題の様に並べて書くと違和感があるかも知れない。しかし、最近の両者の動きをみていると、どちらも資本市場の問題・日本の問題で大きな課題に取り組もうと発信している。政治的なことは専門家の方々にお任せするとして、本来は国や経済界・業界全体の問題に対して、取引所として何らかの対応をしようとする姿勢は、やはりトップのマネージメントに依るのだろう。例え、外部から要請があるにしても。

 少し例をあげれば、コーポレートガバナンスの強化の為に、独立役員制度という仕組みをつくって対応しようとするのは、本来の会社法の問題のように思うが、日本企業に対する投資家の信頼回復の為に取引所の上場ルールを改定した。また、最近では本来証券会社が行うべき投資家層の拡大(個別投資家へのプロモーション活動)に関して、本年度の取引所事業計画として次の様なアクションプランを公表している。(3月27日日本経済応援プロジェクトより)
アクションプラン1=機関投資家への日本株キャラバン
 ・海外機関投資家への個別プロモーション活動(海外金融センターに年2回以上のトップ営業)
 ・国内機関投資家へ、ETF利用法を個別提案
アクションプラン2=新たな個人投資家層の裾野拡大
 ・セミナーやSNSなどを通じて100万人以上の方々に日本株の魅力を発信など

ところで取引所を取り巻く環境について触れておきたい。

 取引所の一番重要な部分は、市場のインフラとしての取引機能だ。この部分は、超高速化対応が進み世界的に見ても遜色ないほどになっている。また、上場商品としてのETFを通じて、投資のグローバル化・多様化・多機能化にも対応していて、一般の投資家が利用可能な投資方法は増えた。
だから、日本の取引所自体は随分と進化している。
しかし、一般的に日本市場が世界の先端を走っているイメージはない。それは、国内の投資家が充分に取引所機能を使いこなしていないからだろう。取引所はあくまでも市場インフラであって、実際にそのインフラを利用して取引サービスを提供するのは証券会社になる。

取引所は顧客の売買注文を取り次いだり、自ら売買を行う証券会社で成り立っている。その事を考えれば、直接取引所では売買に参加する証券会社側が、取引所の変化に附いていっていないのではないだろうか。確かに、証券会社は対面営業でもオンラインでも金融危機後の厳しい環境の中で新しいビジネスモデルも模索している。
例えば、オンライン証券は、FXなどデリバティブ取引や投信・外債のネット販売に注力しているし、対面営業では今や収益の中心は投信と外債販売の募集物中心になっている。証券会社が取引所と接する面が個人営業の部分では少なくなっているのではなだろうか。
せっかく多機能化した取引所。それを部分的にでも専業で利用し、投資家にサービスを提供する専門家した証券会社の出現が待たれる。その為には、現在の証券会社が得意分野に特化しながら、取引所機能を使いこなす新しいビジネスモデルの出現に期待している。

東京都を支えるものは勿論都民だが、東証を支えるものはやはり証券会社だ。
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大震災後の1年間、投資からみた風景 (4月9日)
 先ず東日本大震災で、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方が一刻も早く“日常”を取り戻されることを願っています。

 もう1年も経ってしまったというのが実感です。地震・津波の大きな被害に加え、原発事故とそれに伴う電力問題は、日本は戦後最大の危機と言われましたが、それにどの様に対応し、また乗り切ろうとしているのか。国は勿論、企業も国民一人一人も問われた一年でした。
このことについて、投資という視点から今までの動きを纏めてみました。

☆大震災後の1年間、投資からみた風景
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信用取引の基本的な問題とその代替策について (3月23日)
 株式の信用取引を簡単に説明すると、証券会社が投資家に株式を購入するお金を貸すか、売る株式を貸すかで、何らかの信用を投資家に供与することになる。その為、担保となる保証金が必要で、その金額は金融商品取引法では最低30万円が必要と定められている。また、必要とする保証金額は供与する信用枠の30%と定められているので、30万円の保証金だと100万円分の信用取引をすることが可能だ。なお、保証金代わりに流動性のある有価証券を代用することも可能で、こちらの方は信用を供与する証券会社が時価の80%以下の掛け目で保証金として見做す。
何故、投資家にとっては分かり切ったことを書いたかというと、今一度、現行の信用取引制度の問題点についてなるべく平易に考えてみたいからだ。代替手段がある場合は、その点も触れたい。

【検討点1=信用取引は30万円から始められるか】
この答えは少し難しい。信用取引は、証券会社が投資家に対して信用を供与する仕組みなので、それに足る相応の金融資産を有するものと証券会社自身が判断できなければならない。昔の信用取引は、最低でも1千~2千万円の預かり資産が必要だったが、投資家が信用取引を決済する場合、反対売買以外に借りたお金や株式を投資家が別途調達して証券会社に返すことも可能だ。信用供与する側から見れば、もしも投資家が損失を被った時の事を想定するので、追加の保証金が出せるか、現引きや現渡しが可能か、ある程度の金融資産があると判断されなければ信用取引は行えなかった。

しかし、ネット取引が一般化することで、原則預かった範囲の保証金内に損失が収まるよう強制的にロスカット取引を行うことを前提に、資産家でなくとも信用取引を行うことが出来るようになった。ネット証券が信用を供与する場合に考える投資家の相応の金融資産とは、現状では3~500万円相当だろうか。それも他社の金融資産を含めてという事だから、預貯金を含めると多くの投資家が信用取引適格者としてクリアする。だから、証券会社の判断によっては30万円から信用取引を始めることが出来る。ただし、投資家によっては、信用取引の仕組みである追加保証金(マージンコール)や現引き・現渡しなどを全く想定していない場合もある。

【検討点2=保証金もしくはその代用とする有価証券は効率良く使えるか】
現行の信用取引は投資家によるデイトレードを想定したものではない。個人投資家が行うデイトレードの善し悪しは別にして、アルゴリズム取引やマーケットメーカーの取引と同様にある種の流動性向上には寄与しているだろう。そのデイトレーダーが信用取引を利用する場合、同じ保証金による信用枠の利用は日に原則1回転となる。このルールの中心となる考え方は、当日中に売買したものの決済が終わっていないからだ(取引所ルール)。しかし、取引も決済も電子化された現在、このルールは少し古いように思う。確かに決済は4日目で終了していないが、保証金も売買した株式も証券会社にある投資家の口座内のあるのだから、同じ保証金を利用して何回も売買が可能となる仕組みに変えるべきだ。

今は、信用取引の保証金も代用となる有価証券の評価も前日の終値を使って1日1回行う証券会社の仕組みだが、これをリアルタイムで行えば、日に何度でも同じ保証金を利用して売買を重ねることが出来る。その為には取引所ルールの改正と、証券会社側のリアルタイムな投資家ポジションの管理が必要になってくる。

この問題に対しては、ネット証券A社が取引所の立会外取引を利用してデイトレーダー用に取引回数の制限ない取引を試みているが、同社間顧客の売買注文のマッチングになるので取引量や銘柄が限られている。また、信用取引と同様のレバレッジ取引効果がある個別株CFDについては、FX取引と同様にリアルタイム決済なので、日に何度売買して保証金(CFDの場合は、証拠金)を有効に利用することか可能だ。しかし、信用取引が収益の中心であるネット大手証券は、信用取引と競合するのでこれを取り扱わないし、FX取引の様にオファー・ビットをヒットする取引きする方法なので、寄付きや引けの様な通常の株式売買手法が使えない。

【補足検討=値付けが取引所より細分化されたり、夜間取引が可能なPTS(私設取引システム)では、信用取引は使えないか】
信用取引は、流通市場の中核である取引所取引を活性化させる目的で仮需用をつくる制度という位置付けなので、現行の法規制ではPTSでは利用できない。しかし、最近個別株CFD取引サービスを提供するネット証券B社が、東証の売買価格情報を止め、C社のPTSの価格情報で売買させる方法に替えた。
この事の意味を考えてみると、個別株CFDで投資家がヒットしたPTSの株価は、C社を通じてカバー業者(外国証券会社)がPTSで売買することを前提にしている。CFD取引は、店頭デリバティブなのでカバー業者が必ずしもPTSでの売買を取り次がなくともいいが、投資家からみると信用取引と同様のレバレッジ取引効果がある個別株CFD取引で、PTSでの取引に参加していることになる。
但し、現状では個別株CFD取引は、デイトレーダー間に定着しているかというと、まだまた遠い道程だ。
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最近のFX取引動向 (3月21日)
 長期円高傾向が終了したかどうか分かりませんが、個人が中心となって利用されるFX取引は1月、2月と前月比で2割以上取引金額が増加しており、昨年3月以上続いていた取引の減少傾向に歯止めがかかったかも知れません。
 店頭FX取引は、金融先物取引業協会が毎月の取引の速報データを公表していますが、それによると2月の取引は金額ベースで152兆円となり、前月比27%の増加です。また、通貨別取引金額ではユーロ絡みが取引全体の約6割を占めていますが、ドル円は取引量が急増して前月比62%の増加となっています。また、2月末時点でのポジションでは、ユーロ、ドル、豪ドルの主要取引通貨でみると対円でのショート・ポジションが増加していて、特にドル・円ではドル上昇局面で逆張りスタンスの投資家が多かったようです。このことが、3月に入ってからの円軟調を支えているのかも知れません。

☆最近のFX取引動向

なお、FX業者の最近の動向としては以下の様なことがあります。
・実質的な手数料であるスプレッドを縮小する傾向が強まっています。主要業者は概ね0.5銭程度のスプレッドですが、各社ではキャッシュバック・キャンペーンなど実質的に更なる手数料引き下げ競争が行われています。なお、野村は0.1銭単位まで取引値を表示し始めていますが、スプレッドは0.8銭程度を確保しているようです。
・法人向けサービスを強化する動きがFX業者間で強まっています。一つは、個人と異なりレバレッジ規制対象外なので、資金効率良く取引が可能となる点をアピールしています。この流れで、ディーリングを行う証券会社向けサービスを強化する動きもあります。一方、一般の事業会社向けサービスは、貿易為替などの取込みと狙うものですが、こちらの方は、事業会社側でのポジション管理やリスク管理機能が問われるのではないでしょうか。
 
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取引所のIPO活性化策について (3月16日)
 日本の資本市場に関する様々な問題への取組みは、最近は取引所中心に行われることが多い。日々動く市場相手なので、当たり前の事かもしれないが、法律や業界のルールを改定する前でも、取引所の諸規則をかえることでスピード感のある対応をしている。最近のコーポレートガバナンス強化の取組みなどみていると、やはり取引所中心に日本の資本市場がまわっていると率直に感じる。

 東京証券取引所は昨年12月に、雇用の大部分を支えるなど日本経済において重要な役割を果たしている中堅・中小企業の活性化を目的に、施策を発表している。その概要は次の様なものだ。
(※以下は本則市場で、新興市場マザーズの基準は別)
      
① 経済情勢に合わせたIPO(新規公開)の為の上場基準の整理・緩和
形式的な基準を以下の様に整理している。
・利益基準について
経常利益及び税金等調整前当期利益→経常利益
これにより、特別損失が発生した場合でも上場申請が可能となる。また、利益水準について2年間で総額5億円以上とすることで、直前の一時的な業績悪化の場合でも上場申請を可能とした。なお、この利益基準を満たせない場合は、上場時の時価総額基準で救済されるが、この数値を1000億円以上から500億円以上に引き下げた。
・純資産の額は、上場時点で10億円となる見込みがあることして、上場時点の数字で判断することにした。
・上場審査に要する時間を標準審査期間3ヵ月と定め、審査スケジュールを予め提示することで上場時期の予見性を向上させた。
・直接一部に上場する場合の時価総額基準を、500億円から250億円に引き下げた。

②一部指定のルールの合理化
既に上場している企業が、東証一部に指定替えする際の審査に関して、審査内容を簡略化・整理している。具体的な一部指定基準は下記の東証HPへ
○一部指定基準

なお、一部に指定替えされれば、流動性も向上して株価も注目されるようになる。
みずほ証券リサーチ&コンサルティングは、次のレポートを公表している。(3月15日)
○東証一部指定候補銘柄を探る

③IPOに関する情報発信の強化
取引所が各地でIPOの説明会を積極的に行うのは、当たり前のことだろうが、実際企業を取引所まで誘導してくれるIPO対応可能な証券会社の機能が必要だ。IPOの検討段階であれば、財務的な検討などは、会計系のコンサルティングでIPO準備を行うことが出来るが、実際の上場申請は証券会社を通じて行わなければならない。東証は新規上場の主幹事業務を円滑に実施できる証券会社の一覧をHPで公表することを始めた。
少し厳しいかもしれないが、投資家や利用した上場企業からみたパフォーマンス評価があれば、もっとリストは有効になると思う。

○主幹事候補証券会社一覧

※以上の東証上場規則に関する改定は、3月9日から施行されている。

今回のテーマは、あくまでも既存産業の活性化策としての中堅・中小企業向けIPO活性化策だが、新規産業育成目的の新興市場マザーズでのIPO活性化策は、昨年の3月から東証において実施されている。

○マザーズの信頼性向上及び活性化に向けた施策の概要

なお、IPO活性化は資本市場の中核をなす政策だが、市場からの退出基準の厳格化や、その受け皿としてのフェニックス市場(上場廃止銘柄の店頭取引市場)の整備も急ぐべきと考える。
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PTSの機能を今一度考える (2月29日)
 2月2日の東証のシステムトラブルで、日本証券業協会がPTS(Proprietary Trading System=私設取引システム)の取引を止めたと言う記事が、24日の日経に載っています。協会がシステムトラブルで売買停止の対象となった241銘柄について、協会規則にある“取引所が上場株の売買を停止した場合、取引所外での売買も停止出来る“という条項を根拠に、PTSを含む取引所外取引の停止を証券会社に要請したので、PTSまで止まったということです。PTSは、行政の認可を受けた証券会社が運営していますが、この件で改めてPTSの代替市場としての機能を考えさせられました。

日本の資本市場の中核となる取引所の方は、高速化や多様な金融商品の上場によってその機能を強化していますが、PTSはその何を代替しているのか。主に次のようなことが上げられます。

○取引所での取引時間以外での売買を執行することが可能です。
例えば、取引所が取引を開始する前、昼休みの間、そして海外市場が取引を行っている夜間などに日本株を取引きすることが可能です。但し、取引は完全な売買注文のマッチングなので、寄付きや大引けの様にオークション方式で値付けされることはありません。

○取引所での値幅以外にも、細分化された価格で取引することが可能です。
例えば、株価100円台の株式の取引所での最少値幅は1円ですが、これだと概ね株価の1%に相当します。PTSの方は、0.1円刻みのですので、投資家は売買コストを低下させることが出来ます。

○投資家は、取引所での売買株価とPTSのそれを比較して、最良の売買取引を選択することも出来ます。
例えば、東証と大証に両方上場されている銘柄などは、両取引所の取引値段を比較して、売買注文を出すということがあったかも知れません。現在のPTSでは、取引所に上場されている銘柄が殆ど取引できますが(一部、地方取引所の単独上場銘柄は取り扱われていません)、投資家が取引所とPTSの取引値段を比べて、最良の値段で取引を行うのが理想です。取引所の方もPTSの方も取引がミリ秒単位と高速化されているので、人の目で値段を追う事は無理かもしれません。それで、システムで取引所・PTSどちらが投資家の注文にとって有利なのか自動的に選択するサービスを提供している証券会社もあります。

○新たな価格発見機能の提供をしている可能性もあります。
上記に挙げたように、取引所が取引しない時間帯での取引、取引所が取引しない値幅での取引をPTSが行いますので、取引所にはない価格発見機能を提供しているとも言えます。

欧米での代替市場(名称は欧州MTS=Multilateral Trading Facilities、米国ATS=Alternative Trading Systems)が取引全体に占める割合は3~4割と言われとおり、日本ではようやく5%(1月末、5.7%)に達したところです。日本のPTSは、一時8社の証券会社で行われていましたが、昨年は撤退が相次ぎ今は3社で、その内2社に9割程度の取引が集中しています。また、PTSへの取次ぎを行える証券会社も20社程度で、個人投資家が利用できるのは10社に届きません。PTSは、取引の決済の仕組みは取引所取引と同じになっており、インフラ面では取引所取引と遜色ありませんが、ビジネスモデルとしては未だ確立期といった状況のようです。

ただし、PTSと同じ様なことが、嘗ての証券会社内のダークプールや海外の取引システムで行われていたことを思えば、国内で取引の透明性も高く、個人も参加できるPTSの代替機能には、大いに期待したいところです。

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大震災後、個人投資家は何か変わったか (2月27日)
 あれからもう少しで1年。大きな被害とたくさんの悲劇を東日本にもたらした大震災は、日本の社会を大きく変えていく契機となりました。個人にとっては、生きることの意味と、リスク、そして何が出来るか自ら問われる方々も多かったと思います。企業もまた、被災地の復興に向けて多くの取組みを行っていますが、それまで言われていたCSR( Corporate Social Responsibility)とは少しイメージが違い、現場にニーズに密着した持続的な取組みをみていると、日本企業もやるなとの思いを強くします。

 個人投資家にとっても、それまでの投資観を大きく変える出来事でした。安定的な投資対象と思われていた電力会社の株式は、原発停止問題から大きなリスクを抱え、反対に新たな復興需要を見込んで、建設関連の企業に大きな期待が集まりました。業種にたいするイメージが、それまでと全く異なります。

一方、投資リスクに考え方については全体としてそれ程変化が無いようです。時々引用させていただく投信協会の投資信託に関するアンケート調査報告書-2011年(平成23年8月実施)で、東日本大震災後の資産運用やリスクについての考え方の変化を尋ねたところ、76.5%の方々が特に変化ないとしています。つまり、投資はもともとリスクなので、リスクを感じる対象は変わったとしても、リスクそのものへの考え方は、大きくは変わらなかったということでしょうか。

ただし、個人投資家であっても投資の意味については、少し変化があったかも知れません。それは、投資の第一の目的は、自分の将来の為に利益を上げることですが、投資を通じて被災者や被災企業を支援したいという考えをもつ投資家層が、増えてきているように思います。

個人が投資を通じて被災地支援を行うものとしては、以下の様なものがあります。
○国債・地方債のほか震災復興に寄与すると考えられる企業の社債に投資し、信託報酬の一部を義援金として寄付する仕組み=東日本復興支援債券ファンド1105(単位型の投信で、昨年5月に515億円設定)
○新規設定の投資信託の手数料の一部を被災地に寄附する公募投信=ニッポン応援ファンドVOL3フェニックス(昨年6月末設定)など
○個人向け復興応援国債=現行の変動10年の個人向け国債をベースに、東日本大震災からの復興を応援する観点から、当初の3年間は低い金利(0.05%)でその後変動金利。3年間保有者に対して、金貨(1000万円保有毎)銀貨(100万円保有毎)を贈呈。

過去何度か取り上げていますが、被災地の中小企業を直接支援する仕組みとして事業ファンドと寄附を組み合わせた復興支援ファンドがあります。これは、支援する企業とその事業内容が、一般の個人にもインターネットでの情報提供を通じて分かるということで、今までの金融にない役割を果たしてします。
普通の金融商品に比べて、1ファンド当たり集めるお金が少額なことから、マイクロインベストメント(投資)とも言われていますが、インターネットを使って販売コストを掛けない事・寄附に加えて支援する中小企業の事業に出資者が何らかのかたちで参加(消費者や利用者・見学者=対象企業は食品関連が多い)出来ることがその特徴となっています。

このファンドは、よくマスコミの注目を集めます。個人投資家の行動の変化とまで言うのは早計かもしれませんが、大震災を機にした個人の行動の変化であることは事実です。
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投資家は何を望んでいるか(2月22日)
 どんなビジネスでも、利用者が何を望んでいるか知るのは基本中の基本ですが、証券会社や金融機関などは、よく顧客満足度調査を行います。その結果に基づき、顧客=投資家戦略を立てるのが普通です。
今回は、個人投資家が何を求めているかということをテーマに、次の3つのアンケート調査から、その結果を取り上げてみました。

○「証券投資についてのアンケート」(日本証券業協会 平成22年11月実施)サンプル数35,176
当然のことですが、ネットと対面では投資家が求めているものが違います。ネットは、投資家が負うコストと取引機能が重視されますが、対面では営業部員に求められることの1位が誠実さであり、2番目がアフターケアとなっています。“誠実さ”とは定義が曖昧な言葉ですが、おそらく自分のお金を信頼できる人に託したいとの投資家の思いではないでしょうか。証券会社や金融機関の人間が、個人的にはそれぞれ誠実であるとは思いますが、組織として投資家の求める“誠実さ”に応えていくか、少し難しい問題かもしれません。どの様な方法を用いるにしても、投資家と営業部員のコミュニケーションを強化することをサポートする以外に、この“誠実さ”への対応はないのではないでしょうか。

○投資信託に関するアンケート調査報告書-2011年(投信協会 平成23年8月実施)サンプル数1,509
個人がどの様な手段で投資情報を取得するか見てみると、新聞なテレビなどの身近なマスコミからニュースとして流されるものを参考とすることが多いようです。ただし、この比率は年々低下しているようで、替わりにインターネットから情報収集する割合が増加しています。テレビの経済番組では70代の女性が、パソコンでSkypeを利用してニューヨークの娘さんと連絡を取りあっている様子は報じられていましたが、今やシニア層のデジタルディバイドの意味は少し違っているのかもしれません。スマートフォンやタブレット端末は、更にシニアの投資家層とインターネットの距離を縮めています。

○「個人投資家株式市場活性化アンケート」(楽天・マネックス・カブドットコム共同実施 平成24年1月実施)回答4,234 名
これは、インターネットを利用する個人の株式投資家というふうに対象が限定されますが、日本の株式市場に対する要望は概ね3つに分かれるようです。
・取引の決済を短縮して欲しい=即日決済は無理でも、現行の4日目決