ICOからSTOへ(1月14日)
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仮想通貨バブルの時は、瞬時に100億円以上の資金を集めるICO(Initial Coin Offering)が注目を集めましたが、その後、下記記事にある様な法改正が行われ、ICO定義はICO(新たな仮想通貨を募集するもの)とSTO(将来的な何らかの利益配分を約するもの)に分かれました。 ☆STOは今後、どの様に進むか これらICOやSTO実行の為には、自主規制(通常の証券会社が関わるものは、日本証券業協会の自主規制を遵守することが求められます。)が必要で、ICOについては日本仮想通貨交換業協会の自主規制が昨年7月末に制定されていますが、STOの方は、SBI証券や野村證券など大手証券により日本STO協会が新たに設立され、3月までには自主規制が制定されるはずです。 今後、ICO、STOの自主規制整備を受けて、金融庁による関連の内閣府令が5月末までには制定される予定です。 一方、国土交通省の後押しもあって、不動産流動化のクラウドファンディングとして不動産特定共同事業法の改正が行われ、電子取引業務として昨年4月には実行の為のガイドラインも整備されています。 ☆STOと不動産クラウドファンディング STOについては、トークン設計の自由さや、販売ルートの拡大しやすさなどでは、新たな資金調達方法として注目されています。 ☆STOへの期待 STOが、今後新たな資金調達方法として、上場企業のファイナンスの代替、ICOの代替、ソーシャルレンディングの問題解決策、不動産流動化案件の一般投資家への拡大などに展開していく可能性は大きいのではと想定しています。 ☆STOビジネス展開可能性のイメージ |
第198回国会において”情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案”が2019年5月31日に成立し、仮想通貨に関して資金決済に関する法律と金融商品取引法が改正されました。
☆仮想通貨に関する法制度整備(2019年6月公布)の概要
【資金決済に関する法律】
◇仮想通貨の呼称は、国際的な動向を踏まえて、仮想通貨から暗号資産へ変更
◇カストディアン業者の様に暗号資産の管理だけ行うものも、暗号資産交換業に追加規定。カストディ業者に対して、暗号資産交換業規制のうち、本人確認義務、分別管理義務など暗号資産の管理に関する規制を適用。これは、FATF(マネロン対策等を扱う国際会議)が、暗号資産のカストディ業者について、各国協調して規制を課すことを求める勧告(2018年10月)を受けたものです。
◇移転記録が公開されずマネロンに利用されやすいなどの問題がある暗号資産が登場していることに対して、取り扱う暗号資産の名称、業務の内容、方法を変更する場合は事前の届出が必要になります。
◇交換業者の広告及び勧誘に際して、虚偽表示・誇大広告の禁止や、投資を助長するような広告、勧誘の禁止など広告・勧誘規制整備が求められます。
◇暗号資産の流出リスクへの対応として、業務の円滑な遂行等のために必要なものを除き、顧客の暗号資産を信頼性の高い方法(コールドウォレット(オフラインで仮想通貨の管理をするのに必要な秘密鍵を保管)等)で管理することを義務付けます。また、交換業者の倒産時に、預かっていた暗号資産を顧客に優先的に返還するための規定として、ホットウォレット(常時ネットワークに接続された環境にある仮想通貨の管理方法)で管理する顧客の暗号資産は、別途、見合いの弁済原資(同種、同量の暗号資産)の保持を義務付けます。
【金融商品取引法】
◇国内の暗号資産の取引の約8割を占める証拠金取引について、現状では規制対象外でしたが、FX取引と同様に、金融商品取引法上の規制(販売・勧誘規制等)を整備します。金融資産の定義に、暗号資産を追加し、暗号資産を用いたデリバティブ取引を規制の対象とします。また、この業務に関して、説明義務等の規定を整備することが求められます。
◇収益分配を受ける権利が付与されたトークンについて、投資家のリスクや流通性の高さ等を踏まえ、金融商品取引法が適用されることを明確化しました。発行者による投資家への情報開示の制度やトークンの売買の仲介業者に対する販売・勧誘規制等を整備しました。ICOなどで発行される所謂トークンは、「電子記録移転権利」と定義されて、金融取引法上の第1項有価証券となり、この売買を行うものは第1種金融取引業となります。また、トークンの発行者は、金融商品取引法の開示制度の対象となります。
◇暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引を業として行う場合における金融商品取引業の登録、業務の内容及び方法の変更に係る事前の届出等に関する規定を整備することされました。
◇暗号資産の取引において、不当な価格操作等が行われている、との指摘があることに対して、暗号資産の取引及び暗号資産を用いたデリバティブ取引等に関する風説の流布・価格操作等の不公正な行為を禁止することされました。
なお、金融商品の販売等に関する法律の改正でも、金融商品の販売の定義に、暗号資産を取得させる行為を追加しています。また、以上は公布から1年以内に施行されます。
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ICO(Initial Coin Offering)は、トークンを発行し資金調達(仮想通貨払いを含む)を行う行為ですが、2018年も巨額の資金を集めています。
一方、金融審議会(金融庁)においては、仮想通貨関連規制の整理の中でそのルールが纏められており、新たな資金調達手段としての期待も高まっています。
☆ICOの金融審議会定義
予想される投資型ICOに対する規制は、次の様な事項が考えられます。
(2018年12月21日 金融庁公表「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書)
☆ICO規制の概要
ICOは、今まで新たな仮想通貨やブロックチェーン技術への期待として主に仮想通貨建てで巨額資金を集める事例が目立っていましたが、設計の自由さや新しいイノベーションに対する期待から、企業の新たな事業資金調達手段となる可能性もあります。
☆ICOの可能性
ICO(Initial Coin Offering)は、トークンを発行して仮想通貨で払込みを行う資金調達方法として、企業及び事業者、投資家、金融当局者それぞれの立場から大きな注目を集めています。
【企業及び事業者にとって】
ICOは現在の以下の資金調達方法の資金調達サイドからみた不便さを解消してくれる可能性があります。
◇ベンチャーファンドからの調達の代替=ベンチャーキャピタルの、企業の経営権や事業への影響を抑えることができます。
◇上場企業のファイナンスの代替=公募であれば引受証券会社の審査作業、第三者割当であれば出資者探しや条件交渉などを行う必要があり、実質的なファインナンス準備期間の時間がかかりますが、これらの作業・期間を大幅に短縮・簡素化できる可能性があります。
◇投資型クラウドファンディングの代替=現在の投資型クラウドファンディングの調達金額上限は1億円未満ですが、ICOには上限金額はありません。(トークンの募集上限数はあり。)
【投資家にとって】
基本的には、トークン発行の事業目的に賛同して投資しますが、仮想通貨での払込みなので現在は仮想通貨取引と同様に国境を越えた投資が容易です。今後、トークンへの払込みの本人確認は厳格化されることが予想されますが、投資家が居住する国の規制でICO投資を禁止していなければ、現在の法定通貨での投資より決済の利便性が向上します。
また、既に仮想通貨を保有している投資家のEXIT投資として機能する可能性もあります。
【金融当局】
現在(2018年6月現在)、金融庁が管轄する金融審議会において「仮想通貨交換業等に関する研究会」が設置されて、仮想通貨やブロックチェーンに関する技術、取引のネットワークやプレイヤー、仮想通貨交換業の更なる制度整備が検討されています。
☆資金調達としてICOへの期待(概要図へ)
☆仮想通貨交換業等に関する研究会
((金融庁関連ウェブへリンク)
米国のコインデスクによると、2017年のICOは54億ドルで、2018年1月~3月実績は63億ドルと既に昨年実績を超えています。日本においても、昨年は仮想通貨交換業者による大型の資金調達や上場会社が韓国で実施した事例などが注目を集めており、現在、相当数の企業(上場企業を含む)がICO実施の検討を行っていることを表明しています。
☆ICOを巡る環境(2018年6月時点)
仮想通貨取引は2017年に20倍以上に拡大していますが、我が国ではその取扱いを行う事業者を仮想通貨交換業と改正資金決済法で定義し、登録制を2017年4月より開始しています。今年1月のコインチェック社への不正アクセスによる”ネム”の大規模流失事故で、改めて交換業者の業務運営体制がチェックされ、多くの事業者が業務改善命令等を受け、セキュリティー、顧客資産の管理体制、業務遂行上の社内ルールの整備などを強化しているところです。
取引の実態を見直しますと、現物と先物取引がありますが、FX取引との相似している部分が多く感じますが、FX取引は金融商品取引法で定める金融商品でありデリバティブ取引の一つです。
今後、金融審議会での議論・検討が待たれますが、資金決済法で定める取引であっても投資家保護の観点から金商法での対応若しくはそれに準じたものが交換業者に求められていくのではないかと想定します。
☆仮想通貨取引を巡る環境(2018年6月時点)