あえて想定する5年後の個人の投資の在り方(2024年2月29日)

 2024年1月に新NISA制度が始まったところでですが、今後、個人の投資がどう変わっていくのか、先ず政策面から見直してみます。

「貯蓄から投資へ」が政策スローガンとして打ち出されて久しく、個人への金融商品組成や販売の在り方、仲介業を含む販売チャネルの多様化、金融商品取引業者等の顧客本位の業務運営原則など、金融行政上でも個人の投資に係る施策が進められているところです。


☆あえて想定する5年後の個人の投資の在り方

・個人の投資に関する政策の推移

・個人の投資に関する変化について

個人の投資に関する注目点

・投資の仲介者はどのように変わるか

種類株式について~多様な調達ニーズと投資ニーズへどう応えていくか(2024年1月31日)

 ソフトバンク株式会社による「社債型種類株式」が2023年11月に1,200億円発行され、東証プライム市場に上場されました。
日本での上場企業が発行する公募の種類株式としては、ソニー、伊藤園、トヨタに次いで4事例目となるものの、4社其々の発行目的が異なっていて、種類株の発行スキームは多様です。


 また、第三者割当で発行される上場企業の種類株式については、2022年は8社、2023年は5社あるが、いずれも資本毀損をカバーしたり財務基盤強化を目的にしたものが多く、政府系のファンドや取引先に対して発行されています。

種類株式について~多様な調達ニーズと投資ニーズへどう応えていくか

・種類株式の利用と基本的な構成について

・主な公募種類株の発行事例

種類株式の発行プロセスと論点について

・資本政策全体から見た種類株式

資産運用立国にむけた取組みについて~制度の変更や活用、運用力向上にどう対応するか(2023年12月30日)

 資産運用業の高度化とは、投資信託などの運用する資産運用業者が、委託された資産の運用についてより高い運用力向上が求めれていることと、それを支える運営体制の透明性確保を両立させることを指しています。

 この高度化の取組みは、金融行政により2020年から開始され、毎年公表されている「資産運用業高度化プログレスレポート」では、課題とその背景について説明されており、その記載内容は論点が明確になるよう毎年深堀りされています。

資産運用立国にむけた取組みについて~制度の変更や活用、運用力向上にどう対応するか

・資産運用業の高度化について

・資産運用会社の現状と運用状況、運用力向上の取組み

大手運用業者の高度化と新興運用業者増加策について

・資産運用業高度化プロセスのイメージ

投資型クラウドファンディングについて~期待と現状、そして課題(2023年11月30日)

 クライドファンディングは、インターネット環境を利用して、広くかつ不特定多数から資金を集める手法ですが、寄付型、購入型、そして投資型を含めて社会に定着してきた観があります。

 また、現在、金融審議会においては、政府の新しい資本主義実行計画におけるスタートアップのための資金供給強化として、投資型クラウドファンディング(以下、投資型CF)の活性化が検討されているところです。

投資型クラウドファンディングについて~期待と現状、そして課題

・投資型クラウドファンディング制度の見直しについて

・投資型クラウドファンディングの現状

・資本市場における投資型クラウドファンディングの特徴と課題

・エコシステムとしての投資型CF

見直されるかグロース市場のあり方(2023年11月1日)

 日本の資本市場の見直しが進んでいます。

 2014年から始まったコーポレートガバナンス改革が持続的に取り組まれていることや、東京証券取引所(以下、東証)による市場区分変更後のフォローアップで上場会社に対して資本コストを意識した経営を求めていることが、投資家から評価され、海外投資家などによる日本株見直しも伝えられています。

この様な日本市場の中にあって、高い成長可能性を有する企業向けのグロース市場の在り方が問われていますが、2022年4月からの市場区分におけるグロース市場の上場維持基準は次のようなものです。

 


見直されるかグロース市場のあり方

・日本市場の見直しとグロース市場の課題について

・グロース市場の現状

・グロース市場改革の目的と求められる機能

・金融行政、市場機能改革の取組と市場仲介者の役割

高齢化社会に向けた投資の在り方~顧客の高齢化、世代間資産移転にリテール証券はどう関わっていくのか(2023年9月30日)

 国民が投資による資産形成を具体的に目指す政策として「資産所得倍増プラン」が2022年11月に政府より公表され、NISAの抜本的拡充やiDeCo制度の改革が示さました。


 NISAは令和5年度の税制改正大綱で大幅に非課税投資枠が拡大され、iDeCoの方は、今後、確定拠出年金法を改正して加入や運用などに関する年齢引き上げる予定です。


両制度改革の効果を上げる為に、中立的アドバイザーや企業の関与、金融経済教育の充実、顧客本位の業務運営の確保などが示されています。


高齢化社会に向けた投資の在り方~顧客の高齢化、世代間資産移転にリテール証券はどう関わっていくのか


・高齢化に向けた投資に係る最近の動向

・プレシニア・シニアは、どう考えているか

・高齢者の投資に係る課題

・高齢者向けの投資・資産管理サービスは、どう確立されるのか

ファンドラップの現状と課題について(2023年9月4日)

ファンドラップは個人向け投資一任契約ですが、近年取り扱う証券会社や金融機関が増えています。

 その主な理由は、個人の投資スタンスに合わせて運用方針を設計・管理するので、資産管理型営業を推進する中で営業員が中長期の運用を目指す個人に薦め易いということがあります。

 一方、投資による個人資産形成推進を目指すため、顧客本位の業務運営原則強化を販売会社に求める金融行政にとって、販売状況のモニタリングが必要とする商品として、仕組債・外貨建一時払い保険そしてファンドラップがあり、同商品に対しては「契約金額が小口化していく中、顧客にとって投資一任運用に係る報酬とサービスの対価関係が不明確であり、説明が十分になされていない」といった指摘がなされています。


ファンドラップの現状と課題について

・ファンドラップの現状

・ファンドラップ販売の分析について

・ファンドラップの各機能と役割

・ファンドラップ拡大に向けた課題について

投資による個人の資産形成への取組み ~NISA拡大からIDeCo・DC改革に向けて(2023年7月29日)

 昨年11月に政府が公表した資産所得倍増プラン(以下、倍増プラン)では7つの柱となる取組みが示されましたが、個人が資産形成に為に利用する制度としては、ⒶNISA(非課税口座)の拡大ⒷiDeCo(個人型確定拠出年金)改革が上げられています。 

新NISAとiDeCo・企業型DCの制度比較については、表に示しました。


投資による個人の資産形成への取組み~NISA拡大からIDeCo・DC改革に向けて

・資産所得倍増プランで、個人に提供される制度について

・iDeCo制度の課題について

・個人の取組みと企業等の支援について

・個人投資の仲介者はどう対応していくのか

仕組債販売問題とは何なのか~個人の求めるデリバティブ商品としての在り方とリテール営業に与える影響(2023年6月30日)

 個人への仕組債販売については過去、「見直される仕組債販売~強まる行政の監視と投資家リスクリターンバランス問題」(2022年10月)として、「個人投資家向け仕組債の動向について~リテール証券会社の取組みと金融商品としての在り方」(2021年7月)として取り上げましたが、昨年10月以降は大手証券会社や銀行系証券会社で公募債の取り扱い停止の動きが強まり、ネット証券を含むリテール証券会社の一部では、私募債までの取り扱い停止や販売体制の見直しを行ったところも多かったようです。

 このことがリテール証券会社の前年度下期収益にも大きな影響を与えています。

 


仕組債販売問題とは何なのか~個人の求めるデリバティブ商品としての在り方とリテール営業に与える影響

・個人への仕組債販売に関する最近の動向について

・協会の仕組債販売勧誘ガイドライン等の概要

・個人にとっての仕組債投資

・この問題がリテール証券会社に与える影響について

リテール証券2022年度決算の動向~個人の投資拡大で期待されるリテール証券業の進化(2023年6月1日)

 2022年度は、ロシアによるウクライナ侵攻から国際情勢の緊張が続く中、エネルギー価格等の高騰などによる世界的なインフレ懸念が強まり、日本以外の主要国の金融引き締め策が急速に進み、株式・債券・為替・商品の各市場が大きく変動しました。

 その為、個人投資家層が積極的に投資に取り組む環境とはならず、リテール証券会社決算は概ね低調な結果となりました。

期初27,624円で始まった日経平均株価は、海外主要中央銀行の利上げが相次いだことで6月には25,520円まで下落したものの、その後一時的に米FRBの引締め加速懸念が後退したことで8月に29,222円まで戻りました。


リテール証券2022年度決算の動向~個人の投資拡大で期待されるリテール証券業の進化

・2022年度決算の特徴

・リテール営業を取り巻く環境

・リテール証券の動向

・リテール証券業に係る変化と進化について

サステナブルファイナンスの取組みについて~最近の動向と投資家視点からの課題(2023年5月1日)

 企業などによるESG関連債の発行増加や金融機関のグリーンローン等への対応強化、カーボン・クレジット市場創設に向けた関係者の取組みなど、サステナブルファイナンスに係る動きが強まっています。

 2050年のカーボンゼロに向けて、金融の意思決定にESG要素を統合するというのが金融庁の示すサステナブルファイナンスの狭義の定義ですが、広義には雇用、退職後の資金調達、技術革新、インフラ建設、気候変動緩和などへの取組みも含む金融システムとしています。

 この為、金融庁は2020年12月に「サステナブルファイナンス有識者会議」を設置し、金融行政におけるサステナブルファイナンスの推進に向けた諸施策について議論を進め、持続可能な社会を支える金融システムの構築として2021年6月に第一次報告、2022年7月には第二次報告がなされているところです。


サステナブルファイナンスの取組みについて~最近の動向と投資家視点からの課題

・示された東証の今後の対応

・上場会社の課題:資本効率と収益性

・日本市場の課題:市場コンセプトと投資家との対話力

・市場全体のデザインと強化ポイント

取引所における日本株再強化プラン~市場区分見直しから中長期的な企業価値向上の動機づけへ(2023年4月4日)

 東京証券取引所(以下、東証)における市場区分の見直しから新たな上場制度として、グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けのプライム市場、公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けのスタンダード市場、高い成長可能性を有する企業向けのグロース市場が整備されました。


 また流動性の向上や時価総額の増加の為に新たな上場維持基準が各市場に設けられ、改定コーポレートガバナンス・コードへの対応もより深く求められています。


取引所における日本株再強化プラン~市場区分見直しから中長期的な企業価値向上の動機づけへ

・示された東証の今後の対応

・上場会社の課題:資本効率と収益性

・日本市場の課題:市場コンセプトと投資家との対話力

・市場全体のデザインと強化ポイント

金融サービス仲介業と金融商品仲介業の動向~変化・期待と課題(2023年3月3日)

 “金融サービスの提供に関する法律”が2021年11月に施行され、金融サービス仲介制度が創設されました。

 その制度目的は、情報通信技術の発展によりオンラインでの金融サービスの提供が可能になったことや、個人が様々なサービスの中から自身に適したものを選択しやすくするため、プラットフォーマーなどが銀行・証券・保険のサービスをワンストップで提供することを目指したものでした。

 それまでの金融サービスの仲介は、各業法に基づいた銀行代理業、金融商品仲介業、保険募集人として各仲介元の指導や管理を受けるもので、金融サービスの提供でトラブルがあった場合は利用者は仲介元の金融機関に損害賠償請求をすることができるものでした。


金融サービス仲介業と金融商品仲介業の動向~変化・期待と課題

・金融サービス仲介業の動向

・金融商品仲介業の現状

・金融商品取引業者等にとってのIFAについて

・今後の仲介業務の可能性と課題について

ETFの動向について~個人への定着に向けて期待と課題(2023年2月3日)

 米国を始めとする各国金融当局の金融引締め政策により世界的に株式市場は調整局面に入っていますが、ETF(上場投資信託)の拡大は続いています。


 2022年11月時点で、世界全体の運用資産は9.25兆ドル(1ドル133円換算で1,230兆円)、1.1万銘柄以上の商品が世界の取引所に上場されており、11月月間で785.8億ドルの資金が流入していまする。

 特に資金流入が大きいのは、NASDAQ市場のハイテク株や中国株、債券関連などの指数に連動するものです。

 日本のETFについては、東京証券取引所(以下、東証)に上場されているものが11月時点で280銘柄(内、海外ETFは34銘柄)、時価総額は62兆円となっており、世界のETF市場全体の20分の1程度の規模です。


ETFの動向について~個人への定着に向けて期待と課題

・拡大続くETF

・日本市場でのETF

・個人にとってのETF

・期待と課題について

日本の資本市場の在り方についてか~行政、企業、そして投資家からみて(2023年1月2日)

 資本市場は、企業や事業などが必要な資金を調達するための発行市場機能と、そこで発行された有価証券が売買されることで流動性を確保する流通市場機能で成り立っています。


 また、取引される有価証券としては、主に株式等の資本性資金を調達するものと、債券などの負債性資金に分かれますが、債券の一種ではあるものの証券化証券も別途分類しておく必要があります。

 証券化商品については、ローン債権をパッケージ化したものと不動産資産を流動化したものに概ね分類されるます。


 日本の資本市場が、その経済規模に比して相応しい規模と機能であるかについては、常に行政の課題となっていますが、最近ではニューヨークやロンドンのような金融機能を有する国際金融都市構想の実現の為、さらに加えてアジアの中核となる金融市場を目指し、金融行政の中で市場インフラを整備する取組みが進められているところです。


日本の資本市場の在り方について~行政、企業、そして投資家からみて

・日本の資本市場概況

・株式市場の現状と課題

・債券市場の現状と課題

日本の資本市場が目指すものと、いくつかのポイント

見直される不動産投資~海外投資家の評価は個人まで広まるか(2022年11月29日)

 日本の不動産投資が見直されています。特に海外投資家から見て注目するポイントは2つあって、一つは世界的なインフレ懸念で各国金融当局による金利引き上げが続いている環境で、先進国の中では唯一金融緩和姿勢を継続していること、もう一つは大幅な円安が大幅に進行していてドル建てで見た場合の不動産価格が割安になっていることが上げられます。


 不動産投資は、投資利回りにレバレッジを掛ける為、自己資金以上の借入を行うことが多く、他の先進国での不動産に比べて、日本の持続している低金利を利用すれば比較的高い投資利回りが期待できます。

また、拡大してるESG投資においては、機関投資家にとって利用目的や運営方法が明確な不動産投資は、ESGの視点から選別しやすい利点があります。


見直される不動産投資~海外投資家の評価は個人まで広まるか

・見直される日本での不動産投資と証券化動向

・リートの機能とJ-REITの状況について

・デジタル証券等に関する動向

個人の投資活動の中で、不動産投資をどう扱うか

見直される仕組債販売~強まる行政の監視と投資家リスクリターンバランス問題(2022年11月2日)

 金融庁から2022年8月31日に公表された「2022事務年度金融行政方針」において“仕組債を取り扱う⾦融機関に対しては、経営陣において、取扱いを継続すべきか否かを検討しているか、継続する場合にはどのような顧客を対象にどのような説明をすれば顧客の真のニーズを踏まえた販売となるのかを検討しているかといった点についてモニタリングを行う。”とされました。


 これを受けて、9月に入ってからメガバンクや主要地方銀行では、仕組債の新規勧誘(証券子会社への仲介を含め)を停止するような動きが広まりつつあります。

 また、大手証券においても仕組債販売の一部停止や積極的な勧誘を自粛するような動きとなっており、勧誘基準や販売方針を見直す動きも強まっています。


見直される仕組債販売~強まる行政の監視と投資家リスクリターンバランス問題

・仕組債販売に関する規制等の動向

・仕組債販売の現状

仕組債の背景と課題

市場仲介者としての対応について

改めて見直すプライム上場企業の課題(2022年9月30日)

 この市場区分の見直しは、これまで我が国の株式市場が東証に統合されていく過程の中で市場のコンセプトが曖昧になってきたことや、上場企業に求められているコーポレートガバナンス・コードへの取り組みや情報開示への対応が、企業規模などによって一様ではなくなってきた現状が影響しています。


 新市場区分の在り方については2018年11月に東証の懇談会で論点整理の議論が始まり、2019年12月の金融審議会の市場構造専門グループによる報告書を受けて、東証は2020年2月に新市場区分の制度概要を公表しました。

 2021年9月~12月まで上場会社による市場選択の手続期間とし、2022年1月11日に上場会社の新市場区分の選択結果の公表、2022年4月4日から新市場区分における取引が行われています。


改めて見直すプライム上場企業の課題

・市場区分見直しの背景と最近の動向

・プライム市場の課題①~流動性の問題

・プライム市場の課題②~コーポレートガバナンス等の課題

投資家にとってのプライム市場とは

最良執行義務とSOR・PTSの課題~市場仲介者として問われているもの(2022年9月2日)

 最良執行義務の強化によってPTSの利用が拡大する可能性があります。

PTSそのものについては、市場間競争の推進や取引所の代替市場としての機能が期待されており、ダークプールとは異なり取引価格の透明性が高いとされています。その為、PTS利用拡大を目的とした政策も取られているところです。

最良執行義務とSOR・PTSの課題~市場仲介者として問われているもの

・最良執行義務の強化について

・PTSの動向と課題

・SORとダークプールについて

市場仲介者の課題と可能性

資産所得倍増プランについて~経済財政運営と改革の基本方針からの可能性(2022年8月1日)

 岸田政権による最初の成長戦略となる「経済財政運営と改革の基本方針2022」(以下、骨太の方針2022)が、6月7日に公表されました。


 個人の投資に関する部分としては、「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」と銘打たれており、その内容として、投資による資産所得倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、高齢者に向けたiDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設などが上げられています。


これらを含めて、本年末までに政府としての総合的な資産所得倍増プランを策定するとしています。また、この政策を支援するものとして、金融リテラシーの向上、将来受給可能な年金額等の見える化、デジタルツールを利用した情報提供の充実、金融商品取引業者等による適切な助言や勧誘・説明を促すための制度整備など、現在関係者によって検討が進んでいることなども取り上げられています。

 

資産所得倍増プランについて~経済財政運営と改革の基本方針からの可能性

・資産所得倍増プランの動向について

・個人の投資関連税制について

・老後資産形成の為の有効な手段は何か

証券業界としての資産所得倍増ストーリーはどう描くのか

改めて見直す投資助言業務~残高連動手数料普及を前に(2022年7月1日)

 顧客本位の業務運営原則強化の動きが強まる中、対面営業のリテール証券会社では、顧客の資産形成に係るコンサルティングやアドバイスに重点を置いたビジネスモデル(以下、資産管理型営業)への転換の動きが一層進んでいます。


 この中核になっているのが残高連動手数料で、顧客の預り資産残高に応じて包括的なフィーを顧客から受け取るものです。

 今迄は金融商品の購入や売買毎に投資家が手数料を支払っていましたが、顧客資産の増加に合わせて手数料率を拡大する設計も可能で、顧客の投資収益増と証券会社の手数料増が連動することが期待されています。

 

 

改めて見直す投資助言業務~残高連動手数料普及を前に

・投資助言業務に係る動向

・投資助言業の問題と証券会社の投資助言業務の課題

・金融商品の販売に伴う助言の位置づけ

顧客からみた証券会社の投資助言について

リテール証券2021年度決算の動向~進む提携戦略と顕在化した課題(2022年6月3日)

 2021年度のリテール証券会社決算は、第3四半期までは比較的好調に推移したものの、第4四半期には大きく落ち込んだ影響で、全体の収益としては前の年度とほゞ変わらず、各社毎にはまちまちな決算内容となりました。


 期初29,441円で始まった日経平均株価は、1年延期された東京オリンピックが開催される中、新型コロナウイルス感染拡大で軟調に推移しましたが、米国株高を背景に9月中旬に30,795円まで上昇しました。

 個人投資家の投資活動も、米国株を中心に取引が拡大、投資信託などの募集も比較的好調に推移したました。

 

リテール証券2021年度決算の動向~進む提携戦略と顕在化した課題

・2021年度決算の特徴

・リテール営業を取り巻く環境

・リテール証券の動向

進む業務提携と課題

改めて見直す不公正取引~ブロックオファーと相場操縦行為について(2022年5月6日)

 SMBC日興証券の“ブロックオファー”に係わる相場操縦事件で、東京地検特捜部は3月24日に同社副社長を逮捕し、3月4日に先に逮捕されてた同社幹部4名を含めた5名及び、法人としてのSMBC日興証券を金商法違反で起訴したことで、証券業界に衝撃が走りました。

 同事件は、2021年11月2日に同社に対して証券取引等監視委員会の強制調査が入り、調査が進められていたものですが、起訴対象となったのは2019年11月から2020年10月までの“ブロックオファー”に係わる取引で、取引された株式は、小糸製作所・モスフードサービス・アズワン・ファイバーゲート・京葉銀行の5銘柄とされています。

なお、その他のブロックオファーを実施した銘柄でも疑いがあることが報じられています。

 

 

改めて見直す不公正取引~ブロックオファーと相場操縦行為について

・“ブロックオフォー”の構造と課題

・相場操縦行為の定義と違反動向

・ブロックオファーの代替手法と牽制機能

事件が及ぼす影響について

個人の特定投資家制度はどう見直されるか~新たな富裕層ビジネスとしての可能性(2022年3月29日)

 アベノミクス以降、日本の新規・成長企業向けのリスクマネー供給強化を目的に、投資型クラウドファンディング(以下投資型CF)、株主コミュニティ制度、プロ向け市場のTOKYOPROMarket(以下、TPM)などが整備され、IPO(新規株式公開)への取組みも強化されてきました。


しかし、日本の資本市場は未だにIPOに偏っていて、これら新たに整備されてきた制度が市場の裾野として充分に広がりをみせているかといえば、米国など諸外国には見劣りしていて新規・成長企業へのリスクマネー供給が充分に行われていないと見られています。

 

個人の特定投資家制度はどう見直されるか~新たな富裕層ビジネスとしての可能性

・期待されるプロ投資家

・未上場株式取引に関する新制度

・新たな個人の特定投資家定義は何を目指しているか

リテール証券の新たなビジネスとしての可能性

資産運用会社の高度化~運用力と求められるガバナンス(2022年3月4日)

 資産運用会社の“高度化”とは、投資家から委託された資産運用について国際競争力のある運用力をつけながら、投資家が負担するコストを引下げ、かつ社会的にも求められているESG投資などにも対応していくことを指しています。


 その資産運用会社は、金融商品取引法の投資運用業と投資助言業の役割を担っていますが、元々は投資信託の運用を行う証券投資信託法(1951年施行)の投資信託委託会社と、年金などの運用を行う投資顧問業法(1986年施行)の投資顧問会社が、1997年以降大手証券系を中心に統合されて現在の資産運用会社となっています。

 

資産運用会社の高度化~運用力と求められるガバナンス

・資産運用会社の概況

・高度化が必要とされる背景

・更なる高度化を進める為に

・資産運用会社の高度化がもたらす個人の投資への影響について

ESG関連債の動向~グリーンボンド、ソーシャルボンドなどの在り方とそれぞれの取組み(2022年2月4日)

 SDGsを達成し持続可能な社会を構築していく為に、政府・企業・金融・投資家の其々の責任と取組みが重要になっていますが、投資や融資した資金が企業・団体のSDGs活動を支え、それが目標達成の為の具体的成果を上げるところまで見ていこうとすることは、サステナブルファイナンス(持続可能な社会を実現する為の金融)という考え方に繋がっています。

 このサステナブルファイナンスは、金融機関によるローン、機関投資家による債券投資、多くの投資家が関わる株式投資やESG関連投信などにも及びますが、今回はグリーンボンドなどのESG関連債(SDGs債)の動向について見ていきます。

 

 

ESG関連債の動向~グリーンボンド、ソーシャルボンドなどの在り方とそれぞれの取組み

・ESG関連債とその動向について

・グリーンボンドとソーシャルボンドのガイドライン(国内)について

・地域における取組とその可能性

・個人投資家にとってのグリーンボンドとソーシャルボンド

個人投資家にとってのデリバティブ市場とその課題について(2021年12月29日)

 個人の投資とデリバティブ取引の関係について取り上げますが、先ずデリバティブ取引の日本における全体像から見ていきたいと思います。(以下の数値は、日本銀行「デリバティブ取引に関する定例市場報告」2021年6月末の残高、金融機関等による報告ベースで報告金融機関相互の取引における二重計上の調整なし)


 デリバティブは相対で取引がなされる店頭取引(632兆ドル)と取引所を通して行う取引所取引(37兆ドル)がありますが、その9割方は銀行などが行う金利スワップなどの金利関連取引が占めています。

個人の取引が相応にあるもとしては、外国為替取引(個人のFX取引を含む、店頭が8兆6,322億ドル、取引所が9億ドル)、エクイティ関連取引(店頭が2,090億ドル、取引所が3,433億ドル)、コモディティ関連(店頭が49億ドル、取引所が12億ドル)などがあります。


 

個人投資家にとってのデリバティブ市場とその課題について

・デリバティブ市場の概況

・個人投資家のデリバティブ取引

・デリバティブ市場を巡る問題とその動向

・個人のデリバティブ取引拡大に向けて

コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、顧客本位の業務運営原則~三位一体の日本市場改革(2021年12月1日)

 コーポレートガバナンスは、経営者が企業価値の向上に努め、株主に対して最大限の利益の還元を目的とすべきという考え方が中核を為していますが、不正会計や不法行為など不祥事を防止し、効率的な経営を進める為のものでもあります。


 日本においては、商法改正で2003年4月施行の委員会設置会社(2014年6月以降は指名委員会等設置会社)や2008年4月以降適用されている財務報告にかかる内部統制報告制度(J-SOX)などのガバナンス強化の取組みがありました。

 2014年6月公表の政府の日本再興戦略においては、「コーポレートガバナンスを見直し、公的資金等の運用の在り方を検討する」として、機関投資家が、対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど、受託者責任を果たすための原則(日本版スチュワードシップコード(以下、SSコード)) 導入が決定され、2015年6月の「日本再興戦略」改訂 2014では、コーポレートガバナンス強化としてコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の策定が決定された。これを受けて、SSコードとCGコードは次の様に取り組まれています。

 

コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、顧客本位の業務運営原則~三位一体の日本市場改革

・CGコード及びSSコードの概要とその推移

・CGコードを取り巻く環境と建設的な会話促進に向けた動き

・顧客本位の業務運営原則の強化とSSコードの関係について

・2つのコードとFD原則は何を変えていくか

存在感を増す若年投資家~多様化する投資家層の中で(2021年11月4日)

 20~30歳代若年層の投資が注目を集めながら、その存在感を増しています。

ウイズコロナ時代の市場においては、行動規制や給付金などの影響で個人が投資に向ける資金が増加し、個人の投資行動が拡大していますが、その中核となっているのが若年層です。

また、若年層は投資家として多様な側面を持っています。

将来必要な資産形成の為に積立投資を始めるもの、ロボアドバイザーや自動売買を使いこなして投資を行うもの、暗号資産取引で独特のコミニティを形成するもの、など既存の投資家とは異なる価値観が、将来の市場や投資の在り方などを変える可能性もあります。

 

存在感を増す若年投資家~多様化する投資家層の中で

・若年投資家の動向

・若年投資家層の特性について

・若年投資家の増加を支えるもの

・若年投資家増加が影響を与える投資の在り方

資産形成の為の金融教育~より実効性のある投資教育を目指して(2021年10月4日)

 個人の金融資産において預貯金が半数以上を占める状況は、貯蓄から投資への政策推進が進められている20年来変わっていません。

 しかし、高齢化して成長力が鈍化した社会において、国策として個々人の老後資金を含めた資産形成には投資を中心とした自助努力を促していきたいので、その為に個人の金融リテラシーを向上させる金融教育が政策として求められています。

 政府・地方自治体から各金融関係の業界団体、個々の企業が支援する学校教育から社会人・高齢者層まで及ぶ広範囲の金融教育が取り組まれているところです。

 

☆資産形成の為の金融教育~より実効性のある投資教育を目指して

・金融教育の全体像について

・投資の現場における教育について

・投資教育に関する新たな取組みについて

・身近な投資教育について

SPACに関する論点とその背景~成長戦略の後押しで日本でも実現するか?(2021年8月31日)

 SPAC(Special Purpose Acquisition Company)が6月の成長戦略実行計画にも取り上げられています。

SPACは、元々は旧アメリカン取引所(現NYSE American)など一部で取り扱われていましたが、2010年にナスダック、2017年にNYSEにより上場が認められたことから拡大が始まり、2020年に新型コロナ禍にあって更に急増してるのは個人投資家の参加が増えているためとされています。

その基本的な流れは次の様になっています。

【SPAC設立】→【SPAC上場による資金調達】→【買収候補の選択と交渉】→【SPAC株主総会での承認】→【Ⅾe-SPAC 】

 

SPACに関する論点とその背景~成長戦略の後押しで日本でも実現するか?

・SPACについて

・SPACに関する最近の動向

・SPAC待望論の背景とメリット・デメリット

・日本で実現するための課題と今後の取組みについて

個人投資家向け仕組債の動向について~リテール証券会社の取組みと金融商品としての在り方(2021年7月31日)

 リテール証券会社にとって、仕組債は収益性の高い金融商品であり、数億円の規模であっても仕組債組成のオリジネーションに参加できる利点がありますが、債券とデリバティブを複合させたものなので、投資家への販売に際してはその投資目的や金融資産内容に適合しているか確認する必要もあります。

 その為、リテール証券会社での仕組債の扱いは、積極的に進めているところと、特定の富裕層中心に対応しているところに2分されています。

 2021年3月期の決算内容をみていくと、中堅証券会社や地方・地銀系証券会社の一部では仕組債を積極的に取り扱った結果、募集手数料やトレーディング収益を中心に営業収益を大きく伸ばしています。

 

個人投資家向け仕組債の動向について~リテール証券会社の取組みと金融商品としての在り方

・リテール証券会社にとっての仕組債と取扱動向

・個人向け仕組債の構造と販売上の留意点

・仕組債組成と投資家への情報提供について

・仕組債取扱いによる証券会社の進化の可能性について

それでも不動産証券化は進む~期待される地方案件とクラウドファンディング、そしてESG投資へ(2021年6月29日)

 不動産証券化は、事業者にとっては事業資金の効率化や資金繰り改善となり、投資家にとっては投資対象の多様化に繋がります。

 いずれにおいても、都市や地方における経済の活性化の為に不動産証券化の推進は欠かせないとして、国土交通省は勿論、政府の未来投資戦略2017(2017年6月閣議決定)では2020 年頃までにリート等の資産総額を約30 兆円とする目標が掲げられています。


 証券化の対象となる賃貸オフィス、賃貸商業施設等の収益不動産は約224兆円とされており、投資家の参加が可能なリートやファンドでの残高は2020年3月末で約26.6兆円まで増えています。

 また証券化に絡んだ売買では、2019年度の証券化の対象不動産の取得は約4.12兆円、譲渡が約3.87兆円となっています。


それでも不動産証券化は進む~期待される地方案件とクラウドファンディング、そしてESG投資へ

・不動産証券化の現状

・証券化スキームの基本要素と買い手としてのリート

・不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディング

・個人投資家から見た不動産証券化

リテール証券2020年度決算の動向~良好な環境の中での新たな戦略選択(2021年5月25日)

 2020年度のリテール証券会社決算は、新型コロナ感染拡大により各国の金融当局による金融緩和策が進められ世界的に株式市場が大きく上昇したことや、個人の行動が規制されたり、給付金政策などが進められたことなどが大きく影響しました。

 全体的には潤沢となった個人金融資産から、資金が投資に向かった為、各社とも国内外の株式取引を中心に好調な決算内容となっています。


 主要なリテール証券会社21社の2021年3月期ベースの決算数値ですが、純営業収益が合計1兆7,274億円となり、前年度比12.2%増加。

 株式委託手数料は概ね前年に比べ2~8割増加したものの、大手の1部と準大手では、新型コロナ感染防止の為の行動規制等の影響で、年度前半は投信販売が低調となった為に投信関連収益が伸びず各社の増収率のバラツキが目立ちました。

リテール証券2020年度決算の動向~良好な環境の中での新たな戦略選択

・2020年度決算の特徴

・リテール営業を取り巻く環境

・リテール証券の動向

・新たな事業モデル策定の為の段階的選択

再考!最良執行のあり方~SORとダークプール・PTSの利用拡大の中で(2021年4月30日)

 証券会社が顧客の売買注文を取り次ぐ際に求められる、投資家保護の為の“最良執行義務の導入”は、2005年の改正証取法で、”取引所集中義務の撤廃“や”気配情報等のリアルタイム公表の整備“とともに導入されました。

 この法改正の主旨は、代替市場としてのPTS(私設取引システム)利用を促す目的でしたが、現在、金融審議会において「最良執行のあり方に関するタスクフォース」が立ち上げられ、最良執行義務強化の為の議論が行われています。

背景としては、次の様な状況があります。

☆再考!最良執行のあり方~SORとダークプール・PTSの利用拡大の中で

・最良執行義務強化の背景

・個人投資家にとってのSORと最良執行

・執行先としてのPTSとダークプールとHFT業者について

・最良執行義務強化がもたらす変化について

30年ぶりの高値更新の中の変化~増え続ける個人金融資産、日銀ETF買入れ、個人投資の在り方(2021年3月26日)

 世界的か株高の中で、日本市場も2021年に入って上昇ピッチを早め、2月16日には場中に日経平均株価は30,714円と場中で1990年8月1日以来30年半ぶりの高値を更新しました。この様な好調な市況にあって、個人の投資を取り巻く環境で、変化しているもの或いはその兆しがあるものについて取り上げます。

 先ず個人の金融資産は増え続けている。日銀の資金循環統計(四半期ごと)によると、2020年12月期の“家計の金融資産”は1,948兆円となっています。

 その主な要因は現預金の増加で、残高は1,056兆円と過去最高額になっており、資産全体の54.2%を占めています。


☆30年ぶりの高値更新の中の変化~増え続ける個人金融資産、日銀ETF買入れ、個人投資の在り方

・増え続ける個人金融資産

・日銀のETF買入れと金融政策について 

・個人投資での変化について

・個人投資の変化を支えるインフラの進化

改めて見直すIPOへの期待と課題~新興企業へのリスクマネー供給と個人投資家誘因の役割(2021年3月5日)

 資本市場における最も関心の高いテーマとして新規公開株(以降、IPO=Initial Public Offering)がありますが、2020年の東京証券取引所におけるIPOは、新型コロナ禍で一時新規公開は中断したものの、99社と(市場区分の変更等を含む。新たに上場したのは92社)ここ最近の上場数水準を維持しました。

また、海外市場においてはDoordashやAirbnbのIPOが話題となったり、SPACやダイレクトリスティングなどの動向が市場関係者の関心を集めています。

このIPOに関して、期待されていることと、それを実現する為の課題について見直してみますが、先ず各市場関係者のIPOへの期待は次の様なものです。

☆改めて見直すIPOへの期待と課題 ~新興企業へのリスクマネー供給と個人投資家誘因の役割

・IPOへのそれぞれの期待

・IPOに関する其々の課題

・IPOにおける証券会社の役割

・IPOの進化・増加の可能性について

これからのリテール証券会社の展望(2021年2月2日)

 新型コロナ禍で日本経済も大きなダメージを受けた中にあっても、2020年の株式市場は31年ぶりの高値で取引を終え、金などの商品市況や暗号資産も高値を更新しましたが、この上昇トレンドを支えているのは個人投資家だと言われています。

 確かに、過去1年で個人投資家数は増加(大手ネット証券だけで今上期中に100万口座以上)しており、彼らの投資を支えているのがリテール証券会社ですが、この業種に対する株価などの市場評価などを見ても、現状では余り高いものではありません。

 この市場環境と市場評価の中にあって、改めてこれからのリテール証券会社の展望について見直してみました。


これからのリテール証券会社の展望

・リテール証券の全体像(現状)

・個人の投資に係わる主要課題とリテール証券としての業務テーマ

・最近の個人の投資環境とリテール証券会社の対応

・ビジネスモデルとしての成長の可能性

証券DXの進め方と新たな可能性について~リテール証券の変化から進化へ繋がるか(2020年12月25日)

 新型コロナウイルス禍の中、日本社会においても一層のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。


 リテール証券会社にあっても、全体のDXやフィンテックの進展に加えて、顧客本位の業務運営の深化が求められていることや株式手数料無料化など投資家コストの低下圧力が掛かる中、それぞれの事業戦略を踏まえたDX対応が喫緊の課題となっています。 


リテール証券業務におけるDXの現状については、営業活動は商品・サービスと密接に繋がっていますし、顧客管理の在り方は営業戦略上も重要度を増しており、各機能のデジタル化は密接に連環しています。


証券DXの進め方と新たな可能性について~リテール証券の変化から進化へ繋がるか

・証券DXの全体像(現状)

・リテール営業におけるDXの進め方

・証券業務におけるDXの進め方

・証券DXはリテール証券の何を変えるか

拡大するESG投資~投資にも浸透するSDGs、そして課題(2020年12月1日)

 十数年前は社会的責任投資(SRI:socially responsible investment)は、現在はESG投資の概念として取り組まれ、今年に入ってから投資全般において拡大しています。

 ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字ですが、弊社が2019年12月に公表したレポート“再び注目されるESG投資について”では、持続可能な社会を目指す(SDGs)企業への投資として取り組んでいるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などESG投資に係わる関係者の取組みや、関連する国際的な基準に関する動向などを紹介しました。

 今年に入ってからは、新型コロナ禍の影響が市場のみならず社会全体を覆っていますが、この様な感染症への対応も含めて、持続可能な社会のあり方を目指す為のESG投資の考え方は、個別企業への投資にも影響を及ぼしています。

今回は、日本においても、その注目度が増しているESG投資の動向を中心に取り上げます。

 

 
拡大するESG投資~投資にも浸透するSDGs、そして課題
・ESG投資拡大について
・ESG投資に関する国内動向
・企業のESG対応をどう見るか
・ESG投資を投資家としてどう捉えるか

市場外取引の動向について~PTSとダークプールの利用増加とToSTNeT取引の制度整備(2020年11月5日)

 我が国の資本市場においても、市場外取引が存在感を増しています。


 PTS(私設取引システム)の機能が本格化し始めた2012年辺りから取引増加傾向が顕著になっており、最近3年間(2017年9月~2020年8月)では上場株式の取引全体の約14%(月間シェア平均)を占めるようになってきました。


 市場外取引は、PTSとダークプールなど証券会社内での取引によりますが、証券会社の最良執行義務などにより取引所取引とも密接に関連しており、特にToSTNeT取引ではダークプールでの取引が実行されることもあります。

その為、PTS・ダークプール・ToSTNeT取引とも昨年からそれぞれの制度整備が進んでいます。


先ず、PTSでの信用取引が昨年4月に解禁された。

 
市場外取引の動向について~PTSとダークプールの利用増加とToSTNeT取引の制度整備
・市場外取引の概況と制度整備
・PTSの動向
・ダークプールへの取組み
・市場機能進化と取引公正性確保の課題

更に進む顧客本位の業務運営~金融審議会報告書より(2020年10月1日)

 2017年3月に顧客本位の業務運営原則(以下、FD原則)が策定・公表されてから3年以上が経過しましたが、同原則の一層の進展を目的に金融審議会で議論されたものが報告書として8月5日に公表されました。

現在、FD原則を採択し、取組方針を公表した金融事業者は1,925社(2020年3月末時点)で、その内、自主的なKPI公表は990社、共通KPIの公表は380社となっています。


 金融審議会における金融機関や証券会社などの今までの取組みに対する評価では、顧客の投資信託の平均保有期間の長期化や積立投資信託の顧客利用比率の上昇などで徐々に成果が出ている部分もありますが、日本郵政グループの金融商品の不適切販売問題など未だ顧客利益より業者利益を優先する事例が指摘されていました。

その為、原則の実効性を高めるのに、具体的内容の充実や新たな方策の導入が必要としています。

 
更に進む顧客本位の業務運営~金融審議会報告書より
・顧客本位の業務運営の進展と深化
・現状はどうか~直近のモニタリング状況等から
・リテール営業現場の何か変えるか
・個人向け投資サービスに進化をもたらす可能性について

フリンジマーケットなのか~株主コミュニティ制度・プロ向け市場・地方取引所(2020年9月2日)

 日本の株式市場の在り方について、2019年に東京証券取引所(以下、東証)及び金融審議会で市場構造の問題と改善策として議論が行われ、2020年2月21日に東証より「新市場区分の概要等について」が公表さました。

 現在の市場第1部・市場第2部・JQスタンダード・JQグロース・マザーズが、2022年4月を目途にプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の新たな市場区分へ変更し、現在上場している銘柄も新市場区分へ移行するスケジュールも併せて示されました。(※新型コロナウィルス禍の影響で一部遅延する可能性あり)

 この市場区分の見直しの目的は、上場企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を支え、国内外の多様な投資者からのより高い支持を得られる現物市場を提供することとされていますが、日本市場全体が拡大していく為には、市場の裾野が大きい方が良いはずです。

 この市場の裾野=フリンジマーケットの現状を見直すとともに、フリンジマーケットとしての課題とその可能性について考えてみます。


フリンジマーケットなのか~株主コミュニティ制度・プロ向け市場・地方取引所
・市場構造見直しの中でのフリンジマーケットの在り方
・株主コミュニティとプロ向け市場の現状の役割と課題
・地方取引所の現状と課題
・日本市場の中でのどの様に繋がっていくべきか

存在感を増す個人投資家(2020年7月31日)

 市場において、最近は個人投資家の存在感が増していると言われています。

特に、最近は新型コロナウイルス禍の経済への影響が中長期化が懸念される中にあって、日米とも株価が比較的高水準を保っている理由として、個人の投資活動が活発化してることを上げる市場関係者が出始めています。

 確かに、経済のファンダメンタルズを重視する機関投資家や、市場取引や制度の歪みを利用したりトレンドの転換点を重視するヘッジファンドとは異なる投資家として、個人の投資行動が再び注目されています。


存在感を増す個人投資家
・個人投資家の存在感
・市場での個人の動向
・個人投資家の存在感増加とその背景
・投資家の中での個人

リテール証券2019年度決算の動向~業務改革と提携戦略の狭間で(2020年7月2日)

 2019年度のリテール証券会社決算は、全体としては若干の減収に留まりました。

前半は、顧客本位の業務運営の定着を目指す中、米中貿易摩擦が激化し市況環境は厳しい状況でしたが、後半は米中関係改善期待が強まり米国株式が上昇トレンドに入って日本市場も底上げされましたが、3月には新型コロナウィルス感染が広まり市場が大幅な下落する局面もありました。


 主要なリテール証券会社21社の2020年3月期ベースの決算数値は、純営業収益が合計1兆6,620億円となり、前年度比3.1%減少。株式委託手数料は、(米国株取扱いで差がでて)各社まちまちでしたが全体では微減となりました。

☆リテール証券2019年度決算の動向~業務改革と提携戦略の狭間で
・2019年度決算の特徴
・リテール営業を取り巻く環境
・リテール証券の動向
・新たなリテール証券モデルを求めて

東証“現物市場の機能強化”に向けた取り組みについて~改革の課題と進化の方向性(2020年6月3日)

 株式等の取引において、テクノロジーの進化でより効率的かつ公平に売買執行できることは資本市場にとって重要なことです。問題は、それが誰にとってかということですが、勿論全ての投資家の為に公正性を確保することが市場関係者の最優先事項となります。

 実際の取引においては、取引所・PTS(私設取引システム)・ダークプールと取引の場があり、今や海外投資家から個人まで利用することが可能となっています。
また、取引所取引を中核にそれぞれの取引が関連性を強めています。
これら取引機能の改革に関して、東京証券取引所は”現物市場の機能強化に向けたアクションプログラム“を1月30日に公表し、金融庁はダークプール取引の透明化等に向けて関係法制度の改正のパブリックコメントを実施してるところです。

☆東証“現物市場の機能強化”に向けた取り組みについて~改革の課題と進化の方向性
・打ち出されたアクションプログラム
・市場改革の課題
・変化する市場機能
・テクノロジーと公正性確保等の問題

地方企業等へのリスクマネー供給と証券会社~協会の自主規制改正の意義(2020年5月4日)

 現在、日本証券業協会において地方企業等へのリスクマネー供給の円滑化を目的に、非上場株式の取引に関する自主規制改正が検討されています。規制緩和として、株式コミュニティ制度を利用した資金調達を容易にすること、プロ私募はプロの定義を緩和すること、クラウドファンディングを併用した私募を認めることなどです。これは、政府の「骨太方針2019」(2019年6月)において“地域に根ざした企業等における、株主コミュニティ制度などを利用した、株式による資金調達の円滑化を図る。”とされた政策目標を受けたものです。

☆地方企業等へのリスクマネー供給と証券会社~協会の自主規制改正の意義
・リスクマネー供給の政策とその現状について
・株主コミュニティの活用について
・クラウドファンディングと私募の問題
・証券会社のリクスマネー仲介機能についての可能性

ネット手数料ゼロ時代のリテール証券の在り方~新たな証券ビジネスモデルの可能性(2020年3月31日)

 ネット証券を中心に手数料無料化の動きが強まっています。昨年10月末にSBIホールディングスが3ヵ年計画で株式関係の手数料(SBI証券、SBIネオモバイル証券)の完全無料化を目指すことが公表し、米国においても11月にチャールズ・シュワブが株式等の手数料を無料化しました。
その後、ネット証券を中心に株式売買手数料を一部無料化する動き強まり、その中の数社は信用取引の金利を引き上げる動きもありました。
また、投信関係についても、一部投資信託のネットでの募集手数料を無料化する動きが、大手証券や金融機関・運用会社の直販でも拡がっています。

☆ネット手数料ゼロ時代のリテール証券の在り方~新たな証券ビジネスモデルの可能性
・手数料無料化の動向とその背景
・証券業務におけるインターネット利用と新たなネット証券ビジネス
・デジタル化時代の証券ビジネスモデルの可能性
・ネット手数料ゼロ時代の対面営業での成長戦略の可能性

日本銀行によるETF買入れ動向~ETF貸付制度と出口議論の行方(2020年3月3日)

 日本銀行によるETF買入れが、日本市場を支えているのは多くの市場関係者の一致するところでしょう。2019年、日本銀行は合計4兆2,820億円のETF等の買付を実施していますが、内訳については指数(TOPIX、日経225、JPX 日経400)に連動するETFが3兆9,472億円、設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するETFが2,940億円、J-REITが408億円となっています。
実際の買入れについてみると、指数連動ETFは市場が大きく下落した時(3ケタの下落した場合との市場関係者の指摘が多い)、また設備投資・人材投資ETFについては毎日12億円ずつの買付けが続いており、J-REITは市場が大きく下げた場合や下落トレンドに入ったと見られる時に1日12億円の買付けが実施されています。

☆日本銀行によるETF買入れ動向~ETF貸付制度と出口議論の行方
・ETF買入れの現状と政策動向
・ETF貸付制度について
・ETF買入れの影響に関する論点について
・敢えて考える出口戦略について

個人投資家の実像と変化~高齢化とフィンテックの中で(2020年2月3日)

 “貯蓄から投資へ”の政策が始まって20年近く経ちますが、その間、小泉改革・リーマンショック・東日本大震災・アベノミクスなどがあって、個人の投資を増やすという目的は変わらないものの、背景とするものは少し変化しているのではないかと思われます。
小泉政権による「骨太の方針」(2001年6月)で政府の政策として初めて掲げられた後、前半は投資に係わる規制緩和と個人投資への税制優遇(軽減税率など:例えば2013年末までの申告分離課税20%→10%)など個人の資金をより多くリスクマネー供給に向かわせる政策が中心でしたが、アベノミクスでは、我が国の高齢化社会進行を睨んで、多くの個人が投資により老後資金を確保することを可能とするような少額投資非課税制度(NISA)や長期投資を促すような施策が取られています。

☆個人投資家の実像と変化~高齢化とフィンテックの中で
・個人の投資と個人投資家
・個人投資家はどう動いたか 
・個人投資家の実像をどう捉えるべきか
・個人向け投資サービスは何が変わるか

再び注目されるESG投資について(2020年1月6日)

 ESG投資に係わる動向について、市場関係者の間にも再び関心が高まっています。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮した投資ですが、これらの基準に基づく企業への株式投資に限らず、グリーンボンドなどの債券投資においても、運用成果が優れているとの考え方が浸透してきました。
 個人投資家にとってのESG投資は、老後資産形成の為などのiDeCoや積立NISAなどの長期投資であれば、GPIFの様に運用成果向上が期待できそうです。また、直接の投資効果だけではなく、環境や社会問題への投資を通じた貢献ということでは、資金使途が明確でその利用効果なども報告されるグリーンボンドやソーシャルボンドは一層の拡大が期待できます。

☆再び注目されるESG投資について
・ESG投資に係わる動向について
・ESG投資を取り巻くもの
・ESG投資への取組みについて
・投資家視点から、どう見るべきか

市場構造問題の動向~問題とその論点について(2019年12月9日)

 市場構造の在り方に関する議論が、金融審議会「市場構造専門グループ」で10月5日に再開されています。この問題は、今年5月(2回開催)に検討がスタートしましたが、6月初めの年金2000万円不足問題や東京証券取引所(以下、東証)の「市場構造の在り方等に関する懇談会」での東証1部時価総額基準の水準が野村證券委員により同社営業部門への漏えいした問題の影響もあって、4ヵ月間の中断となっていました。
本来ならば市場運営の問題なので、取引所と直接の取引参加者たる証券会社で決定されるべきことですが、コーポレートガバナンスや企業価値向上などの問題も絡み、経済産業省などの要望もあって、金融制度を議論すべき金融審議会と取り上げられていました。年内12月中に報告書案が示されるようですが、改めて市場区分の意味(例えば、東証1部とは何なのか)を考えさせられます。

☆市場構造問題の動向~問題とその論点について
・日本の市場構造は何か問題なのか
・市場構造議論の背景
・目指すものと現状のギャップは何か
・投資家視点から、どう考えるべきか