ようやく東京でも桜も満開になった新年度であるが、公開会社のディスクロージャーに関しては、一連の不祥事や法改正・経済環境の激変もあって、企業側でご担当されている方々は、なかなか大変な思いをされているのではないかと思う。
そのポイントに関しては、金融庁より3月31日、
有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項について(平成21年3月期版)
という形で、公表されているが、なんといっても大変なのは、この6月から提出が始まる“内部統制報告書”ではないか。
これは、米国でのSOX法施行や、会社法での内部統制の義務化を受けて、金融商品取引法が定める開示制度においても、有価証券報告書とは別に提出義務が課されたものである。
平成20年4月から始まる事業年度について、企業は対応をしなければならない。4月2日に、これも金融庁から公表された“内部統制報告書制度に関するQ&A”には、107のQ&Aが載せられてはいるが、内容を拝見すると、やはり企業側の負担感は、相当なものだとも感じた。(この内容については別途、取り上げたい。)
この制度は平成19年の金証法施行時には決まっていたので、準備期間は長かったが、今後はむしろこの報告書を使う側、投資家や金融機関がどう使いこなしていくのか注目される。
他には、前年度の有価証券報告書に対する重点審査(3月決算期)での不備の指摘が21%の提出企業に対してあり、特に、定款の定めにより役員等の任務懈怠責任の一部を取締役会決議により免除できるとしていることにつき、その旨と理由の記載不備が409社であると指摘している。
有価証券報告書に対する新たな記載としては、“継続企業の前提に関する注記”として、
(1) 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
(2) 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策
(3) 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由
(4) 当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否か
が求められてもいる。
それ以外の概要は、
○関連当事者の開示については、会社や組合に準ずる事業体や親会社の役員等が追加など
○リース取引について、ファイナンス・リース取引を通常の売買取引に準じた会計処理へ
○棚卸資産の評価について、トレーディング目的のものは、通常の販売目的のものと区分、等
○稀の場合において満期保有目的の債券へ変更が可能になったが注記事項等について
○市場価格が無かったり、オファーとビットの乖離が大きい金融資産に対するプライイシングモデル関連の記載等
○監査報酬に関する開示内容の明確化等
いずれの項目も、使いこなさなければならないのは投資家であり、その投資家が使いこなす為の支援は、市場仲介者の責務でもある。
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