新政権が確定した9月に入っての株式市場で、米国や中国などは景気回復基調を織り込み始めたのに比べ、日本の市況が何とはなく力弱く感じるのは、新政権への不安があるのかも知れない。
しかし、いよいよ16日から民主党政権が発足し、亀井氏が郵政民営化・金融行政の担当大臣に起用されると報じられている。予算執行への対応などから、どうも今までより政治家(民主党)主導で行政がおこなわれそうだと市場は感じ始めており、また政権の状況や民主党のスタンスから大臣任期も長くなるかも知れない。つまり、業界にとって亀井新大臣による金融行政が、今後4年近く続く可能性を、明確に認識しておく必要がある。
一部には、亀井新大臣の郵政民営化に対する姿勢を不安し、また民主党の大企業には厳しそうな姿勢を懸念する見方もあるが、大手金融機関への行政関与が厳しくなりそうなのは、グローバルでみても金融危機再発防止の視点では避けられない。むしろ、業界としては、大手金融機関のビジネスに関与する部分が大きいグローバルなルールや基準作りにおいて、日本の金融・資本市場強化を目的として、戦略的に関与する部分を強化し、方や中小企業向け融資返済猶予だけではなく、中小企業も成長企業なら利用できる資本市場の整備等を、進める施策を早急に政策提言していくべきではないか。
【グローバルな金融・資本市場の基準作りに関する戦略】
・新BIS規制において、グローバルに活動する金融機関の自己資本規制が強化されることがG20で決定されているが、普通株を中心にしたコア自己資本規制に動きが欧米当局中心に強まっている。既に公的資本注入した欧米金融機関に比べ、優先株等の比率の高い日本の金融機関には不利になる可能性があり、この基準づくりにグローバルな金融競争力戦略として、積極的に関与して欲しい。
・IFRS(国際財務報告基準)への早期適用は既に金融庁から示されているが、金融危機によって現在IASB(国際会計基準審議会)では、金融商品会計に関する見直しも進めている。金融商品区分では、金融機関の国債保有や企業の持合い株、時価問題(IFRSでは公正価値という)では欧米金融機関が多く保有する証券化商品、また保険契約の時価測定の問題もある。これらは、当然ではあるが日本の企業に大きな影響を及ぼす。
・民主党政権は、温暖化ガス25%削減政策を進め、排出量取引についてはキャップ・アンド・トレードの市場整備を唱っている。欧米に比べ、相当遅れている排出量取引市場の早期創設を後押していただきたい。排出量取引は金融商品として既に定義付けられているが、グローバルな取引とリンクし、かつ他の金融商品(含む電力量取引や天然資源取引)と相関しあう整備なされれば、日本の金融市場の機能も充実する。その為にも、年末に予定されているCOP15(国連気候変動枠組み第15回締約国会議)に向けて、排出量取引市場整備を、炭素税議論とは切り離し進めていただきたい。
以上、グローバルな金融の基準づくりは、国益として関与強化を提言していくべきと考える。 【中小企業が便益をうける金融・資本市場の整備】
一方、中小企業向けには救済型の政策も必要かもしれないが、成長支援型の政策も期待したい。
・中小企業基盤整備機構や地方自治体中心に、地域ベンチャー・ファンドが整備されてきているが、この中から成長企業をピックアップしていく仕組みとして、ファンド間でベンチャー企業株式を売買したり、ファンドそのものを売買するプロ市場があっても良い。
・エンジェル税制活用を促進する為、経済産業省と共同で対象企業やファンド売買の仕組みを整備してはいかがか。
・金融行政としては、新興市場改革やグリーンシート市場整備など、中小の成長企業が活用できる仕組みには、当然注力して欲しい。(多くは、業界自体の責任ではあるが)
【生活者視点の金融機能の整備】
日本版401Kの一層の促進の為に、主婦や公務員も参加させれば参加者は一ケタ増加し、国の制度として定着する。また、既に導入が決定されている日本版ISA(少額投資優遇措置)の取組みを着実に進めることも、業界として要望すべだ。チャイルド・ファンドなどの考え方も、民主党政策に合うかもしれない。業界としては、証券優遇税制廃止(既に日本版ISA導入を前提に、2012年には廃止予定)に怯えるのではなく、金融一体課税推進の流れの中で、生活者視点の要望を強く行うべきだろう。
以上のような事が、金融行政として取り組んでいかれるなら、業界としては、郵政関係の民営化案件IPOに頼らなくても、業務の拡大に取り組んでいける。
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